一昨日の砥石の選別

 

一昨日は又、砥石の選別(頼んでいた物の引き取り?)に行って来ました。主にはブログを通じた知人からの御依頼品ですが、日野浦さんからも鎌研ぎに使うのでと依頼されていました。

 

前者からは三河対馬のペア、後者からは大村砥の御要望でした。偶々、少し前に店先に並んでいた三河の数本を見て、一つを自分用に取り置きして居た事。その後の御依頼で対馬を選んだ結果、置かれている対馬の性能に感心した事から話題を振った所、次の御依頼に繋がりました。大村砥に関しては、此れも以前から電話による日野浦さんとの遣り取りで、話題に出ていた為です。

 

 

先ずは、三河です。此方(下画像)は、私用に取り置きしてくれていた物です。少し前には数本、纏めて並んで発送待ちのシーンを目撃したので、未だ相当数の三河が有ると踏んでいたのですが・・・もう此れと、田中さん本人の分しか無いとの事で。

従って、ブログ友さんには私の分を。私には田中さんの分をという事に成り、残すは店舗用の見本のみに。

KIMG2818

 

(空いた私の取り置きボックスに自分のを入れてくれましたが)

KIMG2817

 

当日は、珍しく希少な日照り山(戸前の蓮華入り)を試し研ぎ出来る機会も有ったのですが、余りに珍しい物は自分用に(私は実用本位なので使う事が前提)持ち帰るのは躊躇してしまいます。

ですので、上の譲ると言ってくれた三河に関しても、先々で追加が見込めなさそうな場合、御返しするつもりでは有ります(まあ、過分に高価な砥石なので、という理由も有るのは言わなきゃ分かりません(笑))。

KIMG2806

 

 

ブログ友さんは、対馬も御希望でしたので・・・私の取り置きと双璧を成す(大袈裟)ほどに良さそうなのを。

KIMG2828

 

 

後は、御世話に成って居る人用への分と。

KIMG2829

 

 

取り置きとは別に、追加の自分用に。上の砥石と比べ、確り見ないと判別不可能な程ですが、若干の難が有ります。

KIMG2830

 

 

更に、追加の小型対馬と中山のコッパ。

KIMG2823

 

KIMG2820

KIMG2821

KIMG2822

 

 

最後に、日野浦さん用の大村砥です。何でも、鎌研ぎ用に使うが人造とは仕上がりが違うので新たに欲しいと。

KIMG2831

 

 

 

 

前回に購入の150番(今回も二本追加購入しました)から、切り出しを修正研ぎ。裏が不安定だったので、糸引きを入れて居ましたが、もう随分と表裏から研ぎ進んで来たので消そうかと。

KIMG2835

KIMG2836

 

研磨・平面維持に優れた1000番に繋ぎ。

KIMG2837

KIMG2838

 

対馬砥です。適度な研磨力と、明るめの仕上がりが特徴的だと感じます。硬さと平面維持は、天然中砥としては中庸かと。

KIMG2839

KIMG2840

 

対馬砥の後は、やや軟口と中硬の巣板各種で仕上げ研ぎをして、最終は水浅葱で元通りに。

KIMG2843

KIMG2844

 

 

砥石の御依頼を頂いた御二方には、有り難う御座いました。御満足を頂ける質だと思いますが、御試しの上で御確認下さい。

また田中さんには何時も通り、御高配を賜り感謝致します。当日、「近傍の倉庫」の整理をしに行くので、珍しいのが有ったら取って置く・・・との御誘いを頂いたからには、遠からず伺いたいと思って居ります。

 

 

 

 

 

東京のT様から、ペティの御依頼

 

前回の記事でも触れていましたが、御相談を受けた砥石の選別と合わせて、T様にはペティの研ぎの御依頼も頂いていました。

御自身で研いで居る内、両刃の初期状態から片刃寄りに成って来たのを修正する目的での御依頼でした。その際に合わせて伺った御質問への返答、即ち御手持ちの砥石の使用順序などにもアドバイスをさせて頂きました。

 

 

研ぎ前の状態。右側面の切り刃状の部分は、かなり平面で鋭利な状態。但し、カーブから切っ先に掛けては、鎬筋から少し刃先寄りの部分に凸の連なりも。

KIMG2759

 

左側面には、未だ相当な厚みが残存。場所的には、切り刃の中央部分が殆どでしたが、刃元は(右程では無い物の)薄目。

KIMG2760

 

右に関しては、薄くベタに研ぐ、との狙いで有れば合目的的で有ると言えそうですが、左からも同様の研ぎ方をするならば強度や永切れに不安も。届いた初期状態では、左右を合わせてマズマズの耐久性では有ったと思われます。

KIMG2761

 

 

 

人造の1000番、滑走と研磨力に優れる物⇒平面維持と研磨力に優れる物で、右の切り刃の形状を左に寄せ、左の切り刃の形状を右に寄せて行きます。

具体的には、右側の切り刃の刃先側半分の幅で鈍角に角度の付け替え。加えて、左側の切り刃の中央を中心としたベタ研ぎ寄りの研ぎ。

更に、何方の切り刃も切っ先へ向けてテーパー状、少なくとも凹凸を均して行って、刃元寄りよりも厚く成って居る部分は無くします。其の上で刃先(刃金部分)は左右から均等に出しつつ此方は、より正確に切っ先方向へ漸次鋭角化+最先端は軽く鈍角化ハマグリです。軽くしたのは、鋼材的に耐摩耗性が高かったので。

KIMG2762

KIMG2763

 

 

此の段階で、部分的に凸と成っている箇所は、人造の小割りの砥石でピンポイントに。

KIMG2765

 

 

 

天然に移行し、先ずは八木の島の蓮華巣板と丸尾山の敷き内曇り、何れも中硬の物。切り刃・刃先の形状を整えつつ、傷を浅くして行きます。

あと、八枚・千枚の小割りで、地金部分の均し研ぎも併用。

KIMG2768

KIMG2770

 

 

中山の巣板の中硬と、やや硬口の其々で仕上げ研ぎ。より刃金部分の精度を高く。

KIMG2773

KIMG2776

 

 

上の段階で、普通以上の切れは出せたのですが、最終仕上げとして水浅葱を。此の段階まで来ると、刃金部分の最先端側、半分程度を主として研いで行く事に成ります。

KIMG2783

KIMG2779

 

 

 

研ぎ上がりです。何とか、切り刃の左右差を縮められたと思いますが、画像では判別が難しいかも知れませんね。

KIMG2785

 

右側のベタ研ぎ傾向も、幾らか緩和されています。

KIMG2787

 

刃先拡大画像です。刃金部分の鋼材は、硬さ・粘り・組織の細かさで相当に高いバランスだと感じます。総合性能としての耐摩耗性も、相当な物でした。

Still_2022-08-30_005148_60.0X_N0004

 

左側の切り刃が、最も変化が大きいとは思います。画像での目視よりも、指先で触れた方が明確に差を感じられそうでは有りますが。

KIMG2788

 

 

 

T様には、今回の研ぎの御依頼と並び、砥石の選別の御依頼も有り難う御座いました。御送りした砥石の性質・性能が、御手持ちの砥石の間隙を埋める事が出来ましたら幸いです。

更に、研ぎ上げたペティの状態が御試用でも御満足頂けましたら何よりですが、刃先の薄さを求める層もいらっしゃる事ゆえ、その方向が御好みの場合は、御知らせを頂けましたらと思います。

特に御任せで研がせて頂く場合、どうしても私は切れと永切れの両立を狙った最終刃先角度と、刃体の丈夫さに配慮した切り刃(刃先側半分)を想定してしまいますので。

 

 

 

 

 

先週の砥石の選別

 

先週は、前回の訪問時に見つけられなかった、かずけんさんの分を含め、ペティの研ぎ依頼を頂いた東京のT様からの選別分の砥石を見て来ました。あと、取り置きしていた販売用のコッパの引き取りですね。

 

 

先ずは、かずけんさん御希望の中山巣板。下りの良いタイプが御好みかと思われますが、硬口タイプ(目の細かい鑢)・弾力タイプ(吸着的な)・手頃な泥の出るタイプ(研磨剤豊富)の中では最後に当たるかと思われます。

KIMG2739

KIMG2740

 

 

 

 

T様の御希望は、赤環巻きの手前に適任、との事で・・・細か過ぎず、泥も適度に出る物が良いかと考えました。馬路辺りを想定しつつ、偶然、眼前に纏められていた御買い得シリーズの物を見せて貰いました。しかしサイズ的に(特に厚さの面で)悩み、以前に自分用に取り置きしていた相岩谷の中から見繕う事に。

KIMG2728

KIMG2730

 

養生を薦めてカシューを砥面以外に。

KIMG2743

 

 

伊予の次に繋ぐのに適任の砥石・・・との御要望で、対馬の良さそうなのを選んでみました。当初は三河・会津を想定していましたが、物の良さと選択肢の多さで、対馬の中から。

KIMG2731

KIMG2732

カシューの養生ですが、水分保持と傷付き予防で重ね塗りに。

KIMG2741

 

 

 

 

序でに、以前の取り置きの巣板(合いさに成りかけ)を加工して貰いました。切り落とした部分は、共名倉として使用可能です。

KIMG2733

KIMG2734

 

研ぎ感は、硬口且つ弾力も有りで、研磨力に優れる食い付きがやや強いタイプ。

KIMG2754

 

 

もう一つは、水浅葱です。以前、日野浦さんに送る為に極上の大き目を探す目的で、かなりの量の原石などを切って貰ったのですが、その際に幾つか出来たコッパを取り置きして居り、此れも其の一つ。

KIMG2735

KIMG2737

 

超硬口ですが、食い付き・滑走共に標準的です。当たりが若干、ソフトに感じるのは砥粒の目が立って居ないか、層の向き的に大人しい並びなのでしょう、扱い易い質でした。

KIMG2757

 

 

 

 

下画像は対馬を加工した時に出来た物。養生後に極小のナイフを研いでみると、早々に返りが出る程の研磨力で、その後に超仕上げ砥石を掛ければシャキッとした刃を簡単に付けられました。

勿論、単体で砥ぎ上げた状態でも相当に切れますし、此処まで細かければ中仕上げとは言え、或る程度の永切れも期待出来ます。私の感覚では、此の段階の細かさで有れば違和感が少ない粗さかなと。研ぎ易さと早い仕上がりに加え、掛かり重視の刃先としては中々に手頃ながら、返りの取り方には、要工夫でしょうか。

KIMG2738

 

此れ迄の黒名倉では所謂、名倉砥石としての役割で余り鏡面に資するレベルの手持ちが無かったのですが、今回の物は優秀ですね。通常(超仕上げ単体での研ぎ)よりも掛かりの良い刃先が得られます。

ただ、髪の毛に容易に切り込める(技術を求められない)刃先には成りますが、紙の束を捩った物などには抵抗が強く、スルリと抜けの良い切り分けは難しく成ります。

とは言え、天然砥石にしては砥粒は均一で、全体的な分布にもバラツキが無いので、良い意味で人造砥石っぽいとも言えます。其れを泥出しに使う事により、シャキッとした刃先を短時間で作れる事は間違いが有りません。

以前から人造の高番手の泥を、天然の超仕上げ砥石の上に乗せて研ぐ・・・と云った手法も有りますが、其れに近い事が天然同士で実現できるのも面白いと感じました。

KIMG2798

 

 

 

 

あと、新しく造ったとの事で、WAの150番を。ホワイトアルミナなのに赤いのか・・・と、内心では面白いなと感じつつ、説明を聞いてみたのですが、荒く研ぐのにダイヤばかりよりは良いかと思い、一つ分けて貰いました。

手持ちに大きく減らすべき刃物が無いので試してはいませんが、研ぎの御依頼品で大幅に削る必要が有る場合には、実践投入を考えてみましょうか。

KIMG2753

 

 

と考えていた所、小割りの砥石を作る作業で、使って居た鑿に予想を超えた損耗が。前回の手入れで、何時もより鋭角に成って居たか、刃先に付ける小刃が不十分だったのでしょう。

KIMG2799

 

 

渡りに船?で早速、150番を使って見ると、研削力が強い割りに、思った程には傷が深く在りません。そして柔らかい砥石だと聞いて居たにも関わらず、(面積の狭い刃物を研いでも)局所的な減り具合も想定内で。少なくとも、GCの200番少々よりは充分に面の崩れが少ない印象でした。

KIMG2802

 

 

続いて黒幕の1000番⇒やや軟~中硬の巣板⇒中硬~やや硬口の巣板と繋げて、元通りです。スタートの150番の傷が浅目だったので、復活も速くて助かりました。

KIMG2804

 

 

 

 

最後は、販売用のコッパです。巣板メインですが、前述の通りに水浅葱の切り出し祭りの際、目に付いた物も。筋などの難は有るものの、扱いに困る程では無さそうです。

KIMG2745

KIMG2746

 

 

KIMG2747

KIMG2748

 

 

KIMG2749

KIMG2750

 

 

KIMG2751

KIMG2752

 

 

 

 

 

最近の事(砥石館イベントとか)

 

先週の土曜日は、砥石館で小刀造りイベントでした。と言っても、鍛造などを必要とする本格的な物では無く、弓鋸の刃を切断して小刃を付けた簡易的な物です。

普通は、使い古しの刃を再利用するのでしょうが、上野館長の発案で、新品の刃の峰側に小刃を付ける事により、逆側の本来のの小刃をも使用可能に。昔、一世を風靡したサバイバルナイフを彷彿とさせる・・・と感じるのは、年季の入った年代に限られそうですね。

 

 

KIMG2710

 

 

 

先ずは、電動工具で弓鋸の歯を切断しますが、作り手の希望で鋸刃を引き切り方向と、押し切り方向の何れかを選択。

KIMG2681

 

ダイヤモンド砥石で、両側面から小刃を付けます。

KIMG2682

 

KIMG2683

 

 

続いて、御当地産の青砥で仕上げ研ぎ。

KIMG2685

 

KIMG2686

 

 

今回は、同時に革シースも作ります。好みの色の革を選んで貰い、表裏の二枚を加工して行きます。

KIMG2692

 

KIMG2693

 

KIMG2694

 

KIMG2695

 

接着剤で張り合わせた二枚の革を裏表から、二本の針を用いて向かい合わせに縫い、シースは完成です。

KIMG2698

 

 

持ち手には、柄巻きですが此方も好みの色の紐です。

KIMG2708

 

 

全ての工程を終えて、記念撮影です。

KIMG2699

 

勿論、きちんとした鋼材ですので、性格に研げさえすれば結構な切れです。

KIMG2691

 

 

子供の参加者は途中、集中が途切れがちでは有りましたが、出来上がりには満足して貰えた様子。

KIMG2701

 

KIMG2702

 

 

今回も、イベントに御参加を頂いた皆さんには、感謝致します。有り難う御座いました。

 

 

 

 

あとイベントに向かう直前、日野浦さんから鍛え地の黒打ち八寸牛刀が届きました。いつも通り、届くのが不意打ちだっただけで無く、予定に入っていた物だったかなと。来る予定のは、片刃ばかりの筈でしたが・・・オーダーで行き違いがあった可能性も否定できませんが、いざと成れば自分用にと云う手も有ります。

 

しかし記録を確認して行くと、もしかすると北海道のT様への残りか?としか思えず、連絡した所、以前の注文分は終えているが其れも送って欲しいとの事で、無事に行き先が決まりました。

KIMG2675

 

KIMG2677

 

KIMG2678

 

 

私のテストで切れと抵抗を確認すると、之まででも最高レベルの状態の刃付けでしたので、手を入れる必要性は低かったのですが折角ですので、ほんの僅かに耐久向上にと角度を調整の上、中山の巣板の中硬・やや硬口で。

KIMG2714

 

Still_2022-08-21_171639_60.0X_N0003

 

 

T様には、今後も入手可能な情報や、届いてしまった(笑)現物が有りましたら、御知らせしたいと思いますので宜しく御願い致します。

 

 

 

 

追記です。と云うか記載漏れで。

安価な普及品ですが、自分で初期状態の不具合を改善する方向で研ぎ、デモンストレーションで多少は使って来ただけの、ほぼ新品状態です。

KIMG2723

KIMG2724

 

久し振りに、取り出して来て水浅葱で研ぎ直しました。ブログを通じての知人に向け、送って見ようかと。研ぎ方によって、効果の違いを感じて貰えると良いのですが。

KIMG2726

 

 

 

 

オピネルは過去に幾つか購入し、取り敢えずカーボン製の一本は頻繁に使って来ました。それは№8で、形状の改善+磨きとグリップのカシュ―仕上げを施した物ですが、№9のカーボン・ステンレスのペアに合わせて此の度、ステンレスモデルも購入しました。

其れに伴い、近所の世話に成った方に贈る為、もう一本を余分に注文した所、ブレードの形状に結構な違いが。片方は小刃を鋭角に研ぐと、側面に傷が入るだけで無く、相当に刃先周辺の厚みも目立つ物。もう片方は、殆ど傷も入らず刃先の薄さも確保されていました。

まあ、厚みの有る方は強度が有るとも言え、普通に自分用で二本持ちの人なら使い分ける手も有りますが・・・今回はプレゼント用でも有り、折角なのでブレードの厚みのテーパー化を正確に行なった上で、小刃も切っ先へ向け漸次鋭角化をと。

 

過去からの手持ちの分、№9のペアです。

KIMG2721

 

 

購入した№8のステンレスモデル二本。

KIMG2716

KIMG2718

 

 

整って居た方。

KIMG2719

 

整えた方。テストの結果、上の分でも整っているだけ有り、紙の束や捩った物は十分な切れ。ですが、整えた方は更に抵抗が少なく楽に切る事が出来ました。

KIMG2720

 

 

最後は、手持ちのカーボンモデルの№8。炭素鋼は基本的に、錆予防を狙って磨きますが、どうせならと形状の改善も含めて手を入れる事が多いです。

しかし今回、改めてオピネルのステンレスを研いで見ると、研ぎ易い硬さ(イコール刃持ちは程々)ながら、その割には摩耗や捲れも控え目。更には「切れ」其の物も可成り良い事に気付きました。寧ろ、ステンレスの方が最高性能の切れを引き出す際に、砥石と研ぎ手への要求が低い印象でした。普通の人に勧めるなら、錆対策を除外したとしても、此方かなと。

下画像のカーボンは、下りが良いし食材の味と香りが変わり辛い筈ですが、其れ以外には錆予防・変色対策に手間が掛かるので、面倒さを楽しめる人向けでしょうね。

KIMG2722

 

 

 

 

 

京都のY様から三徳の御依頼

 

京都のY様から、三徳包丁を御送り頂きました。数年前に、砥石館で私を紹介されたとの事で、眠って居た包丁の普段使い用化のタイミングで、研ぎ依頼の流れに。実用的な仕立てにとの御要望に沿って仕上げます。

 

 

研ぎ前の状態。重房の三徳ですね。此方は、銘切されて居るタイプで、焼き加減が硬目の様です。

KIMG2646

 

以前に、御自身でも研がれたそうですが、狙い通りに研ぐのは難しかったのかと思いきや・・・刃先に限れば普通に切れる状態でした。

ただ、新品に良くある状態として、刃元が薄く切っ先カーブから先は若干薄く、カーブから刃線中央の切り刃が厚い。従って、紙の数枚程度は問題無くても、厚みの有る(しかも弾力や粘りの有る素材)は抵抗が強く邪魔に成るでしょう。

KIMG2647

 

左側面は、上記内容の厚みの落差は控え目。此れも何故か、良くあると言えば有る現象ですね。

KIMG2648

 

 

 

先ずは、僅かに直線寄りに刃線を整える・切っ先の微細な欠けを含め、刃先の乱れを均しつつ実用的な角度と形状に・・・を狙って研削力が弱め(刃金部分の厚さ調整の要が無い為)の天然砥石配合の人造砥石から。

KIMG2650

KIMG2652

 

 

事前に、洋包丁基準で研ぐ予定を御伝えしていた物の、やはり切り刃の厚さを無視できず、人造の小割り⇒天然の小割りで簡易的ながら厚みの調整。

KIMG2653

KIMG2654

 

 

人造で形成した、刃先の形状と角度を天然砥石で微調整。刃先の最先端に向かって鈍角化・刃元から切っ先へ向けて鋭角化しました。角度的には、片側ずつ刃元35~40度・中央30度・切っ先20度です。

KIMG2656

KIMG2657

 

 

仕上げとして、中硬と硬口の中山巣板。しかし、狙い通りの切れ加減迄は今一歩の感。

KIMG2658

 

KIMG2659

 

 

同じく中山ですが、質の違う硬口と超硬口で。幾らか向上しましたが、鋼材の性能を引き出し切れているかと言えば疑問。まあ此れは、鋼材と熱処理のバランスで多少、神経質な挙動を見せる刃先に翻弄されている部分が大なのですが(笑)。

KIMG2660

KIMG2661

 

 

確認の為、水浅葱で。此方も仕上がりの方向性は異なりますが(得意とする切断対象の違い)、普通以上には切れます。

KIMG2665

KIMG2667

 

 

それではと反対方向?へ振って、中山の並砥の硬口(畑中砥石)・中硬(共栄砥石)で期待通りに仕上がりました。

KIMG2668

KIMG2669

 

 

 

研ぎ上がりです。刃先調整主体の洋包丁研ぎの建前ですので、切り刃の形状・外観は略式です。

KIMG2670

 

刃金部分は、初期刃付けの状態である薄目を活かし、刃先までの半分を徐々に鈍角化のハマグリに。此処で、もしも厚みが余分に有ったなら、刃金部分の後半を薄く調整する必要が有りますが。

KIMG2672

 

刃先の拡大画像からも、上記内容が伺えます。

Still_2022-08-03_214932_60.0X_N0002

 

KIMG2673

 

KIMG2674

 

 

 

Y様には、此の度の御依頼を有難う御座いました。合わせて、ブログへの御協力にも感謝致します。御希望に沿えていれば幸いですが、問題など有りましたら御連絡を御願い致します。

現状では薄い刃先が、先々では研ぎ減りし分厚く成り、未だ整い切って居ない切り刃も合わせて抵抗に成って来た場合、切り刃の調整(面倒なら全体を薄くしても可)を行なって頂く必要も生じると思われますが、その際の不明点に付きましても、御問い合わせを頂ければと思います。

 

 

 

 

 

遅ればせながら、掲載の許可を頂けたので

 

丁度一ヶ月前に御手元に御返送となった小刀?でしたが、次回の御依頼の序でに、件の小刀研ぎ作業の掲載許可を頂きました。

御送りした時点では、外観の美しさに関して過分な評価を頂いてはいたのですが、改めて直近の御使用に於いても問題が無かったとの文面を頂戴し、安心して記事にアップできると言う物ですね(笑)。

 

 

研ぎ前の状態。かなり、小振りな刃部と独特の柄・・・と云うか中子なんでしょうか?刃体は積層した地金で左右から、炭素鋼の刃金を挟んだ利器材と見受けました。

KIMG2491

 

軽症から中等度手前の錆は有りますが、そもそも研ぐ部分に発生した分は手入れの際に消えて行きますし、刃先の損耗は殆どが僅少。精々が、一部に欠けと云うか捲れ・一定の長さに渡る摩耗程度でした。

ただ現物を拝見するまでは、大まかに錆を落とした後に刃先周辺の軽い研ぎで切れが出るかもと考えていたのですが、峰の厚みと刃幅の狭さから切り刃全体を殆どベタ研ぎする必要が認められました。

KIMG2492

 

KIMG2493

 

KIMG2494

 

 

 

大幅に研ぎ落す必要性が低いので、人造砥石は研削力と研削痕の浅さのバランス的に、ややソフトな砥石群で。

600番では刃先の損耗を研ぎ落としつつ、完全ベタ研ぎで。

KIMG2495

KIMG2496

 

 

1000番では、ほんの僅かに刃元⇒切っ先へ向けて、よりテーパーを強調しつつ研ぎ目を軽減。

KIMG2497

KIMG2499

 

 

4000番で、刃先最先端に向けて見分けられない程に角度の鈍角化。此れは、前述の峰厚・刃幅の関係から、鋭さを出すには切り刃角に余裕が無い為です。まあ、そもそも本当に完全ベタではカーブ部分は研げませんけれど。

鋼材と熱処理の関係から、本来は耐久に不安の無い角度まで鈍角な最終刃先にしたい所でしたが・・・文面からは余り、硬い対象・ハードな使用とは限らないのかなとの印象も有り。

KIMG2502

 

 

天然に移行し、丸尾山の白巣板・敷き内曇りで研ぎ目の微細化と形状の仕上げです。

KIMG2508

 

 

中山の巣板、やや軟~中硬・中硬・超硬口の各種で、下ろし方を見極めつつ切れもチェック。

KIMG2514

KIMG2519

 

 

上の段階で普通以上には仕上がったのですが・・・切っ先カーブで妙に返りが出易く、其れが取れない箇所が有り、何とか相性的に収まる物はと試し、硬口~超硬口ながらカラス混じりの同じく中山巣板でギリギリ研ぎ上げました。

KIMG2520

 

 

 

研ぎ上がりです。サイズと形状からは想像できない程に手間暇が掛かってしまいましたが、刃金の敏感さ(研ぎ目を均一にする難易度高目)と、カーブの返りが取れ難い(砥石の面の正確性への要求高目)が原因で。

恐らくは、粘りの割りに全体的に硬度が低めである事と、カーブに関しては何らかの時点(初期刃付け・再研磨時)で過熱が有ったのかなと。

KIMG2531

 

KIMG2535

 

KIMG2533

 

KIMG2534

 

Still_2022-06-24_152234_60.0X_N0001

 

 

T様には、前回の御依頼とブログ記載への御協力に感謝致します。次回以降も小刀は御送り頂ければと思いますし、お尋ねの包丁の方も、御知らせしました条件を御勘案の上、御判断を御願い致します。此の度は研ぎの御依頼、有り難う御座いました。

 

 

 

 

 

割り合い御近所のO様から、重ねて御依頼

 

以前にも研ぎの御依頼を頂いたO様から、包丁を送って頂きました。一度目は、熱処理から来る鋼材の特性を鑑み、やはり常道どおり切れと永切れのバランスを取る為に、自分の中で(テストの結果を反映した)相場と成って居る角度変化(刃元から切っ先に掛けて最終刃先角度は片側35~40度⇒30~35度⇒20~25度)で仕上げて見たのですが。

次の御依頼では、もう幾許かの切れの上乗せをとの御要望を頂戴し、夫々の角度を5~10度ずつ鋭角化。そして今回、その二回目ぐらいの研ぎ方で、との指定で研ぎ進めました。

 

 

 

研ぎ前の状態。炭素鋼ですので、普通に使って居れば薄錆は出て来ますね。浅い錆なら、軽い手入れで充分に維持できます。

KIMG2623

 

恐らくは包丁のコンセプトとして、硬さが売りの仕立てでは無いので(捲れは出ても欠けが少なく、研ぎ直し易い)、通常より鋭角気味の仕様では如何かと多少の心配も有ったのですが・・・適正な御使用を為されたと拝察されます。微細な欠け(と言うか捲れですね)がカーブ辺りに連続・刃元近くに単独の欠け程度で。

KIMG2624

 

KIMG2626

 

 

何れも軽症でしたので、人造砥石は幾分、研磨力の大人しいシリーズから研ぎ進めました。先ずは600番で刃先の荒れを取りつつ、小刃の本体を。

KIMG2627

KIMG2628

 

 

次に、1000番で研削痕を浅くしつつ、刃元~切っ先に向けた角度変化を明確に。

KIMG2629

KIMG2630

 

 

人造の最後は、4000番で。小刃本体の先端、最終刃先へ向かって鈍角化+最終刃先角度も切っ先へ向かって鋭角化。

KIMG2631

KIMG2632

 

 

 

天然に移行し、丸尾山の白巣板・白巣板巣無しを用いて、刃先の形状の仕上げ研ぎ。

KIMG2633

KIMG2637

 

 

梅ケ畑の赤ピン、中硬と硬口で最終仕上げ・・・を狙ったのですが、僅かに相性的に今一歩の感。

KIMG2635

KIMG2636

 

 

中山の巣板、中硬と硬口で更なる向上を試した所、上手く性能を引き出せた様です。此処で言う性能とは、切れと永切れ・掛かりの良さと滑らかな切れ加減の両立の事です。其れ等、全ての要素を網羅しようと欲張るならば、どうしても使用砥石の精選を避けられない事に成ります。

普通で良いと言う事なら、マトモな砥石で適正に研ぐだけで何とか成るのですが、折角研ぐのですから(砥石も刃物も減る訳ですし)可能な限り性能を引き出したい物ですね。

KIMG2639

KIMG2640

 

 

 

研ぎ上がりです。

KIMG2641

 

KIMG2643

 

Still_2022-07-30_222941_60.0X_N0001

 

KIMG2644

 

 

 

O様の様に、切れに対する御自身の御好みを把握しつつ、其れに相応しい扱い方をされるのは、大変に適切な刃物の運用方法だと思います。もし仮に、刃にダメージを与える素材で出来た俎板の使用・乱暴な力加減・刃物の耐久力を超えた対象への切り付け、等を避け得ない方であれば、如何に薄い刃先の鋭角が齎す切れを望んだとて、詮無い事でしょうから。

今後も、私の能力の許す限りに措いては、刃先形状・角度の調整等の種類を問わず、御希望に沿える様に努力して行きたいと思いますので、宜しく御願い致します。

 

 

 

 

 

今週の砥石選別

 

少し前に、理容業界の知人であるM様から、フェイスブックを通じて砥石選別の御依頼が。曰く、「村上が考える此れぞ中山巣板と言える物を」との事で。

其処で今週の頭に田中砥石へ出掛けて来ました。まあ、度々の訪問ごとに取り置きをして貰っても居ますので、其方の引き取りも順次・・・と云った面も有ります。

M様の用途としては恐らく、剃刀用と思われますので(包丁類への御使用も考えられますが)、硬さと細かさ以外に砥面の均一さをも考慮して原石・加工途中の膨大な石を見て行きました。結果的にはサイズ・形状・質的な要件で想定に合致する物が探し当てられなかった為に、次回以降に持ち越しへ。

 

 

 

下画像の左側に見えるのは、中山の水浅葱の中でも珍しい外観と質を持つ石だそうで。結構、前に紹介して頂いた時は二回り程は広い面積の不定形だったので、長方形に加工して貰った状態です。

KIMG2524

 

 

水浅葱としては、やや白っぽい色調に一見カラス的な模様が入って居ますね。田中さんに拠れば、浅葱の風化が進んで行く過程で、緑板?への移行途中ではと。

私の印象では、或る程度の中山(特に浅葱・黄板・一部の巣板)に特有の模様が派手に現れた物かなと。

KIMG2609

 

参考までに、手持ちの中から幾つか。先ずは、以前に購入の近い質の物。

KIMG2614

 

砥取家経由の畑中砥石由来の物。数個を購入した中で、約半分に観察できますが、相当に模様が強く出ている方だと思って居ました。しかし、こうして比べると今回に購入の石は際立って模様が多い様です。

KIMG2612

 

 

硬口で細かいのは浅葱として水準以上で、仕上がりは刃金・地金共に鏡面です。特筆すべきは研磨力ですが、泥が出る・やや荒いと言う要素に頼る事無く良く下ろします。緻密で均一な砥粒が適度に目が立って居る感触で、幾らか組織が荒目の鋼材の刃物でも(個性を潰す事なく)性能を引き出せました。

良く出来た刃物(一部特性が尖っているキワモノを除く)は相対的に砥石・研ぎ手に優しいと言うか、要求が高く無かったりしますが、熱処理的に硬さ・粘りのバランスを欠く仕上がりだったり、組織が粗い・均一さにバラツキを生じた場合には砥石の方でフォローする必要性が高まります。其の場合、高性能な性質である事が前提と成りますが、砥石のバラエティーに助けられる傾向が多分に有ります。

之までの選別で、想像以上のバラエティーを見せてくれた巣板系統に続き、浅葱系統でも相当に幅広く対応出来る砥石が揃って来たので、安心感も一入と云った所ですね。

KIMG2617

 

 

 

今回、取り置きを頼んだ一つは下画像の大きい方。小さい方は持ち帰りましたが、双方ともに合いさに近い質だと見受けました。

KIMG2608

 

其の小さい方ですが、超硬口で相当に細かい砥面に成って居て期待が持てます。目立つ筋が有りますが、側面から判断すると先々では半減する事が見込めます。また現状でも余程、過敏な地金で無ければ普通に使える状態です。

KIMG2610

 

研いで見ると、やはり硬さ・細かさが存分に反映され殆ど鏡面に仕上がります。硬さから考えると、充分以上の研磨力で滑走の加減もマズマズ。

ただ、此処まで硬くて細かいのならば、浅葱系統の同等品との差異が小さく成って来ますね。とは言え、やはり得意とする鋼材×熱処理の状態は全くの同一では無いので、相性探しのグラデーションとしては在り難いと言えます。違いが僅差に成る程、選ぶ難易度は上がりますが(笑)。

自分としては中山の中で一番、馴染みの無い層が合いさですので、今後の採掘が進んで行く中で最も興味深く見守って行きたいと思わされる今回の石の性能では有りました。

KIMG2619

 

 

 

一方、もう一つは並砥に近い質と思われる石でした。此方は硬口~やや硬口で、多少の泥も出て滑走良く研ぎ易いです。

KIMG2611

 

研ぎ上がりは、半鏡面~鏡面です。幾つか有る手持ちの並砥と比べて、泥の質と出方の違いも有り、より滑らかな感触でした。

KIMG2621

 

 

 

今後も御依頼の石・自分用の追加・販売用の少量を選別する為に適宜、出掛けて来たいと思って居ます。とは言え、巣板系統・浅葱系統の手持ちは充実して来ましたので、先々の異なる層へと進んだ際には又、夫々に必要なバリエーションを揃える事に成りそうですね。

 

 

 

 

 

ステンレス刀の残欠の御依頼

 

近所?の知人のS様から、ステンレス刀の残欠を砥いで欲しいとの御依頼が有りました。以前は普及品の斧や普通の包丁も研がせて頂いたりしましたが、刀剣にも興味を御持ちである事も知悉して居り就中、ステンレス製の物に御執心であると。

ただステンレスの刀は、中々に研磨して貰い難いそうで困っている様子も窺えましたので(過去に経験した事も無いし、刀剣などは研がない方針ですが)、今回の残欠は二つ返事で御受けしました。余談ながら自分としては、実用面で刀として使えるならば玉鋼以外の素材でも、別枠としてでも認めてあげれば良さそうな物だと思うのですが、世の中は難しいですね。

 

件の現物は、愛着豊川市に在った旧日本海軍の豊川海軍工廠で作られた軍刀の刀身で、1940年頃のマルテンサイト系ステンレスを用いた物と見られるそうです。御依頼の内容としては、通常の実用的な刃付けでは無く(今回の残欠は刃引きされていました)、日本刀の使用鋼材としての適性・現代のステンレス刃物と比較しての感想等を求められました。過去に例を見ない程のマニアックさですね(笑)。

とは言え、恐らくは二尺三寸程度の刃渡りだったであろう頃の、全体的な弾力・耐衝撃(構造的な強度)等は推し量るにも限界が有りますので、刃物用ステンレス鋼材としての熱処理後の仕上がりを、近年のステンレス製刃物と比べた感想・・・程度に御伝えする事に。

 

 

研ぎ前の状態。中子の一部に、青棒の痕跡も有りましたし人口の研磨剤仕上げ(或いは直近の手入れが其れ)と見受けられます。

KIMG2570

KIMG2572

KIMG2573

KIMG2577

 

 

 

砥石に当てた研ぎ感と、切り刃の研ぎ肌だけでは比較検討が部分的に過ぎますので、一応は刃先を研ぎ出します。先ずはダイヤからですが、左の切り刃が予想以上に不均等。余り追い込んでも右との差異が拡大しますし、双方を大幅に研ぎ減らすのも勿体ないので、刃物としての性能を満たすレベルまで整えばOKかと。

削れ方から見ると、柔らか目の熱処理では有りますが、返りの出方が酷くは無いので鋼材の組織が均一・小さ目なのかも知れません。研削痕が一定で、引け傷に成らないのも研ぎ易さに繋がって居ます。(組織が粗い・粘りが勝ち過ぎでは逆になり易いです)

KIMG2578

KIMG2581

 

 

人造の1000番、やや軟口で研磨力に優れた物。此処でも、引け傷は入らず、何方かと言えばステンレスの割りにサクサク下ります。刃先の返りが少ないのも同様です。

KIMG2582

KIMG2584

 

 

人造の3000番で上記砥石の研ぎ目を細かく。既にこの段階で、鋭利な刃先が揃いつつあります。硬度は低め乍ら、粘りとのバランスは秀逸な印象。

KIMG2585

KIMG2586

 

 

人造の小割り各種(200番台・1000番の二種)で、全体的に均し研ぎ。傷の消え方は普通か、やや消え易い方だと感じます。

KIMG2587

KIMG2588

 

 

天然に移行し、刃先側を優先に当てつつ研ぎ進めます。使用したのは、奥殿の天井巣板(軟口)と五千両の天井巣板(中硬)。

天然砥石に対しても、余り選り好みはしない様子で無難に研ぎ進める事が出来ます。

KIMG2589

KIMG2590

 

 

巣板の小割りで、均し研ぎ。使用したのは、主に丸尾山の白巣板と中山の巣板。此処に至って、流石にステンレスとしての耐摩耗性の片鱗を見せます。(特に、素性の良い)炭素鋼に比べると傷の消え方に遅滞を生じる感じ。砥石の種類を変えても、大きな違いは無さそうで。

KIMG2591

KIMG2592

 

 

セーム革で裏打ちした千枚・八枚系統の小割りが少なく成って来たので、追加製作です。

KIMG2593

 

 

上記砥石を使っての均し研ぎと並行して、刃先最先端を八枚・千枚で仕上げ研ぎ。此方は、適応範囲の広さを見越して選別した石だっただけの事は有り、軟鉄・鋼鉄・ステンレスを問わず仕上がって行きました。

KIMG2596

KIMG2597

 

 

最終仕上げは、硬口・やや硬口の中山巣板を用いて、相性を見つつ慎重に。

KIMG2601

KIMG2602

 

 

 

研ぎ上がりです。

KIMG2604

 

KIMG2605

 

KIMG2606

 

KIMG2607

 

Still_2022-07-13_163007_60.0X_N0004

 

 

今回のステンレス刃物としての私の評価は、研ぎ易さと切れの良さは近年のステンレス製刃物と比べて、勝る事は有っても劣る物では無い。耐蝕性では殆ど、440Cと同等以上と見ても良いでしょう。(研磨済みでは無い、切断面の荒い表面に水分・砥泥の長時間の付着でも錆びず)

往時のステンレス軍刀の優秀さに想到する、と云った結果に成る程には優れたステンレス鋼材と熱処理の妙を実感する研ぎでしたので、S様には感謝したいと思います。ですが、何時でも何個でもどうぞ、とは言い難い程には難易度が高かった事も事実ですので、変わり種は休み休みで御願い出来ましたら幸いです(笑)。近々、御渡し出来ると思いますので宜しく御願い致します。

 

 

 

 

 

一昨日の砥石選別

 

KIMG2527

一昨日は日野浦さんへ送る砥石を選別する為に、田中さんに予約を入れていた日でした。加えて、数日前にショッピングカートを通じて砥石を購入された千葉県のS様から、サイズと予算の御希望を頂いたので、追加の砥石も合わせて見て来ました。

当日は大きな原石を二つと小さ目の原石を一つ、田中さん自ら店先で切ってくれたのですが、二十四型相当の4~5本が取れました。其の中から最も良いと思った一つを先ずは確保。同時に、S様の御希望のサイズ通りに切って貰った二つを含めて数個、小振りな砥石も出来たのですが・・・質的に私が望むタイプとは少し、違って居ました。代わりと言う訳では無いのですが、大きなサイズとして切り分けられた一本が、加工途中で二つに分離。予定とは異なるサイズと成りましたが、大き目のレーザー型を選びました。

もう一方の巣板は、前回の選別で見かけた充分なサイズの物。やや硬口で高性能なのは間違い無いので、いつかは必要に成る事も有るかと取り置きを頼んでいたのですが、こんなに早く出番が来るとは思いませんでした(笑)。恐らく、S様にとっては予定より大き目に成るかと思われますが、端の方に少々ですが当たる筋が有りましたので、其の分は割安に出来ると考えて決めました。

 

 

下画像は今回の持ち帰り分の唯一の大型砥石、24型の水浅葱です。現地でも自らダイヤで平面度を上げて見たのですが、自宅で更に向上をと考えて持ち帰りましたので、判子が無い状態です。

KIMG2539

 

硬口で粒度も細かいですが、力加減次第では研磨力も相当に出ました。仕上がりも申し分ない、優秀な砥石でした。

此の状態で田中さんへ送付し、判子を押した上で新潟へ発送して貰う予定です。

KIMG2561

 

 

 

S様に選んだ水浅葱です。砥石の質としては、上画像の砥石と殆ど同じ物でした。

KIMG2540

 

此方も、平面度を上げる為に自力でも頑張りましたので、砥面の判子は殆ど消えています(側面のは健在)。とは言え、外縁部には平面が届いていない部分も残って居ます。そして砥石の質が同様ですので、仕上がりの状態は判別が困難な程に似通って居ますね。

KIMG2553

 

 

次は巣板です。硬さ・細かさで相当に優秀なバランスを持ちながら、扱い難い程では無いタイプで、滑走よりは食い付きを感じる印象です。

KIMG2542

 

超硬口で無い巣板としては珍しく、半鏡面以上と言えるレベルの仕上がりです。

KIMG2550

 

 

 

下は、白っぽい水浅葱ですが、中央に僅かながら干渉しそうな極細のヒビが有ります。過敏な反応をする地金でも無ければ、そう問題には成りませんので(取り置きしているカラスっぽい水浅葱の親戚らしいですし)、自分用に持ち帰りました。

KIMG2536

 

裏は、之までの浅葱系統でも一番、白い気がしますね。

KIMG2544

 

どうやら、此の手のタイプはクリーミーなパウダー状の感触を持つ様で、研磨力と滑走のバランスが良く、仕上げた刃先の掛かりも良好でした。

期待どおり?面直しを少々、頻回に行なうとヒビも減少して来たので、更に使い勝手も向上し、今後の活躍に期待です。

KIMG2546

 

 

 

最終的にS様は今回、浅葱の方だけを購入されるとの事でしたので、持ち帰った巣板は自分用として養生しました。想定していたよりも大分、早く入手する事には成りましたが、高性能かつ之までの巣板とはキャラクターを異にする砥石の追加は、仕事上で遭遇する様々な刃物に対応出来る幅を広げてくれるので、心強い物です。

S様には、此の度の水浅葱の御買い上げに感謝致します。御手持ちの刃物に適応し、活躍してくれる事を願って居ます。

 

 

下画像の奥は、小さなコッパですが中々に良さそうな巣板を選別出来ましたので、先々には販売用に持ち帰る予定です。

KIMG2525

 

 

後日、到着した水浅葱の性能を確認されたS様から、巣板も送って欲しいとの旨、連絡が有りましたので、予定通りに二つとも御手元に届く事に成りました。

先々、自分用としての活躍も楽しみに成って居た矢先ですが(笑)、S様の元で実力を発揮してくれるのも嬉しい事では有りますね。

 

 

 

 

 

研いだ包丁のビフォーアフターなどを載せていきます。