御近所からの御依頼

 

少し前に成りますが、近くだから持ち込みで依頼したいとの御連絡を頂きました。そして日程を擦り合わせ、数日後に御持参下さいました。

其の場で軽く説明した際、形状は両刃の和式ながら、未だ切り刃は弄らず刃先のみの研ぎで良さそうだと纏りました。

 

 

初期状態を確認すると、余り酷くは傷んでいない刃先・未だ其れ程には厚みが増していない切り刃だと感じました。

KIMG0569

 

ただ、汚れ主体の変色・粗い研ぎ傷は気に成りました。

KIMG0571

 

反対側も、ほぼ同様の印象。強いて挙げれば、刃元の厚みの薄過ぎが左側により顕著だった事。

KIMG0572

 

 

 

研ぎ始めは人造の320番からで、刃先の損耗を研ぎ落とし、付けられていた小刃の角度を若干、鋭角に。其の上で刃先最先端は角度を僅かに鈍角化。しかし、事前に汚れ落としの心算で切り刃を磨いた所、予想以上に厚みのムラ(片側に三か所ずつ凸の部分有り)と研削痕が気に成り、小割りの砥石を用いて手を入れてしまいました。此れに因り、刃先周辺の厚みも軽減。

刃先のみとの前提でしたので、極端には手を入れずに程々のレベルに留めましたが。もしも、軽めながらも切り刃の調整を行なった今回の作業に効果を見出して頂けたなら、先々に研ぎを継続して頂けるかも知れません。其の場合は、少しずつ改善を重ねて段階的に、完成されたレベルに近付くと思われます。

どうしても、一遍に切り刃を弄ると聊か高額な研ぎ代金に成りますし、更に両刃ですので片刃の二倍に成って来ますので、自分としても多少は気が引ける部分も有ります(笑)。

とは言え、此れが新品の状態であったとすると、其れは其れで異なった意味で触り辛いのも心情では有ります。(手作業で整えてくれとか)何も言われていない段階で、一定以上の水準で無い仕上げ方を、それも段階的に進めて行く前提で留めるのは、勝手が過ぎると言われても仕方が無いでしょうから。

KIMG0574

KIMG0575

 

人造の1000番で形状を整えます。

KIMG0576

KIMG0577

 

同じ1000番乍ら傷の細かい物・3000番で中仕上げです。

KIMG0578

KIMG0580

 

対馬砥石で、より研ぎ傷を細かく。

KIMG0581

KIMG0584

 

梅ケ畑の軟口で傷消しと、刃先の形状の仕上げ。

KIMG0585

KIMG0586

 

中山の合いさ中硬の二種類を試し、相性的に優れていた方で最終仕上げです。

KIMG0587

KIMG0588

 

 

 

研ぎ上がりです。

KIMG0596

 

所期の研削痕の多寡が有り、反射の仕方が部分的に異なるのが、手を入れた割合に違いが有った事を反映しています。傷が浅い・少なく成っている箇所は凸部だった為に、削られた量が多かった訳です。

序でと言うか癖の様な物で、ついつい切り刃の厚みをテーパー状に近付けてしまいますので、刃先寄り・切っ先寄りに小割りを当てる度合いが多く成ります。結果として、鎬筋近辺には深い研削痕が目立ちますね。

KIMG0592

 

Still_2023-12-25_023825_60.0X_N0007

 

KIMG0595

 

 

 

御聞きすれば、想像していたよりも距離の有る中、御持参下さったとの事で恐縮です。御使用に於いて不都合など有りましたら、微調整も承りますので御気軽に御連絡を御願い致します。此の度は研ぎの御依頼、有難う御座いました。

 

 

 

 

 

今年最後の砥石館イベント

 

もう、二週間ほど前に成るでしょうか、今年最後の砥石館でのイベントに参加して来ました。当日の前半は、参加者の希望する枠に空きが出来た事も有り、時折り砥石館から応援を頼まれていると云う近隣の工芸関連の学生さんの御二方、その自主練にも付き合って来ました。

KIMG0501

 

 

KIMG0507

 

KIMG0522

 

KIMG0503

 

KIMG0504

 

KIMG0505

 

 

 

勿論、後半は当日のメインである鏡作りでしたが。

KIMG0502

 

KIMG0539

 

 

 

 

 

メインに先行して学生の御二方には、以前に作られた玉鋼製と工具鋼製の小刀を用いて研ぎの練習を。鋼材が異なるばかりでなく、切り刃の厚みが違って居たりして、一様に研ぎ進められる訳では無かったのですが(笑)。

人造粗砥から中砥、そして天然の巣板系統の後は、如何なる小割りの砥石によって刃紋が出るかの確認も兼ねていました。

KIMG0530

 

KIMG0529

 

KIMG0531

 

KIMG0532

 

KIMG0533

 

どう云う訳か、玉鋼製の方が波紋を出し難くて苦労しました。後に、田中館長が知人の刀剣研磨師の方に意見を聞いた上でしたか、拭いの手法を駆使して効果が上がったとの事でした。

KIMG0537

KIMG0567

 

 

 

 

鏡作りは砂型の作業からスタートです。先ずは鏡の裏側と成る面の模様を選んで貰い、その後は型用の砂をザル等で篩いつつ詰めて行きます。下掲一つ目は、珍しくペンギンが選ばれた所です。

KIMG0550

KIMG0553

KIMG0555

KIMG0534

KIMG0535

KIMG0540

 

 

亜鉛合金を溶かして、完成した砂型(表裏二つセット)へ流し込みます。結構、御自身で挑まれる方が多かったものの、概ね上手に熟されていました。

KIMG0536

KIMG0542

 

 

或る程度、冷えた時点で型枠から出します。

KIMG0544

KIMG0545

 

 

鏡本体から余分な所を切り落とし、各所の面取りの後に鏡面と成る部分をベルトサンダーで削ります。

KIMG0546

KIMG0547

KIMG0548

 

 

其の後は、只管に手作業で研磨して行きます。人造の粗砥と中砥、更に中仕上げの後は青砥に移行します。

KIMG0552

KIMG0551

 

KIMG0563

KIMG0557

KIMG0556_01_BURST1000556_COVER

KIMG0558

 

 

最後は研磨剤(番手違いで6種ほど)を撒いた布の上で磨きます。更に必要であれば、ダイヤモンドペーストを用いて仕上げます。

KIMG0560

KIMG0559

KIMG0564

KIMG0565

KIMG0566

KIMG0562

 

 

 

今回の鏡製作体験も、参加者の方々には楽しみつつ作業をして頂けた様子で、嬉しく思います。現物の仕上がりも大きな瑕疵が無く安心しました。今後も砥石館でのイベントに関心を持って頂けましたら幸いです。

 

 

 

 

(おまけ)何時も通り前日から現地に入っていたのに加え、有志の方宅へ泊めて貰う際に、何らかの料理を要求された事も変わらずで(笑)。

オムライスとのリクエストでしたので、鶏胸肉・エビ・玉葱・人参などを炒め、簡易的ながら固形のコンソメとジュース・荒濾しのトマトで米を炊きチキンライスに。

当初の目論見では柔らかオムレツに切り込みを入れ、ライスの上で広げる心算でしたが、鋳鉄の広いフライパン・慣れないIHの組み合わせに手間取り、薄焼き卵で包みました。其れでも厚くて歪に成ってしまったのが悔やまれますね。

KIMG0510

 

KIMG0514

 

KIMG0515

 

KIMG0518

 

 

後は前回の会話中、黄色いズッキーニを知らないとの事でしたので、持参して切り込みを入れた上で塩を。出て来た水分を拭き取りオリーブオイルでソテーし、塩+黒胡椒した有り合わせのブナシメジにクローブ・シナモン・コリアンダー・千鳥酢でソースっぽい物に。

KIMG0517

 

KIMG0520

 

 

亀岡へ向かう途中に有るので、時折り立ち寄る秋鹿の濁り酒を一本、進呈しておきました。

過去にオムライスは、ケチャップライスの物しか記憶に無い為かピンと来ていない様子でしたが、ズッキーニと濁り酒は分かり易かったのか評判は上々でした。まあ、基本的に酒なら大抵の物は嫌がらない気もしますが・・・。

残りの秋鹿は全て、親への御土産です。自分用(主として料理用)は大阪の量販店で「千秋」・専門店で「秋鹿」等の何れかを買えますので。対して、この種の季節ものは、出荷時期に手間を取らせてしまって恐縮ながら、入手のチャンスかつ現地で買うのが楽しくも有り。

KIMG0509

 

 

未だ来年以降の砥石館イベントに、私が呼ばれる予定も聞いていない内から「次に作って貰う料理を考えて置く」と言われても、そんな機会が有るのかどうかも不明だし、特別に料理が得意でも無ければ、作れるレパートリーが多い訳でも無いぞと釘を刺しておくのを忘れなかったのは、良かったと思います。

 

 

 

 

 

砥石館で肥後守の研ぎ体験イベント

 

先週末は、亀岡の天然砥石館でイベントの御手伝いでした。肥後守の切り刃を極力、ベタに研いで行き、最終は天然の仕上げ砥による刃金と地金の違いをも際立てせ、コントラストが引き立つ完成を目指しました。

 

 

砥石館は、二代目館長の田中さんに変わってからも、変わらず(以前にも増して?)意欲的に新しい分野や過去の方針の拡充に余念が無い様です。

下画像は新製品の小割りの砥石と、其れを納めるホルダーです。

KIMG0458

 

今回の主役となる、肥後守も勿論ですがサイズ別に揃っています。

KIMG0459

 

此れは、過去の直近に行われたドングリを模したアクセサリーです。実物を使って砂型を作り、熱した亜鉛合金を注いで製作する体験だったそうです。

KIMG0473

 

直接の関係は無いのですが、前館長の上野さんの趣味?を活かしたオブジェと言うべきでしょうか(笑)。昭和の時代のラジオをレストアし、放送を聞けるだけでは無く、ブルートゥースでCD音源を鳴らせるとの事。

KIMG0464

 

 

 

当日の主題である肥後守の研ぎイベント、そのチラシも有りました。

KIMG0465

 

用意された現物色々、サイズによりハンドルの材質にも違いが。

KIMG0462

 

下の開いて居る方は、確か田中さんが研ぎ上げた物だったかと。

KIMG0461

 

各種、天然仕上げ・中砥石の小割りも用意されていました。主として使われたのは、青砥・三河・内曇りの三種。

KIMG0460

 

 

 

始めは、メーカー問わず400番相当の人造砥石からです。肥後守は両刃ですので、両方の切り刃(左右の側面)をベタに成るのを目指して研ぎ下ろします。

過去に触れた事が有る肥後守は、大抵が凸の切り刃と成って居たのですが、最近の物はホローグラインドに成っている様ですね。形状の精度は向上していますし、取り敢えず切れる刃を付けるなら適した形状だと思いますが、切り刃全体を整えるにはホローの溝を消すまで終われない気に成ってしまいますね。もしも凸なら凸なりに仕上げれば、見た目的には砥石に当たらない部分と云うのが出ませんので。

KIMG0467

 

KIMG0468

 

KIMG0469

 

KIMG0470

 

 

 

大まかにベタ迄に進めば、次は1000番相当の人造で傷を浅くして行きます。

KIMG0471

 

KIMG0472

 

KIMG0483

 

KIMG0484

 

KIMG0485

 

 

 

傷の低減と切れの向上が得られたら、天然砥石の中砥である青砥に移行します。

KIMG0486

 

KIMG0487

 

 

 

全体が青砥の研ぎ肌に成れば(念の為に青砥の小割りを挟んでいますが)、今回のハイライトとも言える仕上げ砥の小割りです。

青砥、或いはダイヤモンド砥石で擂り、軽く泥を出してから作業に当たります。

KIMG0474

 

KIMG0475

 

KIMG0476

 

KIMG0477

 

KIMG0488

 

KIMG0489

 

KIMG0490

 

 

 

最終仕上げに使った小割りの砥石目が、切り刃の全面に揃った所で完成です。

KIMG0480

 

KIMG0491

 

KIMG0492

 

KIMG0497

 

 

 

切れに関しては、部分的に私が研ぎを手伝ったりしましたが、自力で研ぎ上げる方も。そして、刃先を拡大してのチェックにも余念が有りません。

KIMG0479

 

KIMG0478

 

KIMG0496

 

KIMG0495

 

 

 

実際に紙を切っての確認も。やはり、研ぎや刃物に興味を御持ちの方々ですので、切れの軽さや切り進む際の音の大きさに拘りを見せる場面も。

KIMG0493

 

KIMG0494

 

 

 

ハンドルエンドにソングホールが有りますので、上野さんが切ったのでしたか?革紐を通して完成です。

KIMG0482

 

 

 

 

聞けば、早々に申し込みが満員御礼に成った、その参加者の方々ですので熱心にかつ楽しんで作業に当たって頂けました。拙い説明にも関わらず、清聴を頂き有難う御座いました。

御家庭でも様々な研ぎをなさる時に、今回の内容が幾らかでも御参考に成りましたら幸いです。更に高度な研ぎなどに付きましては、新館長が計画されそうですので、今後も砥石館の情報発信に御注目を頂けたらと思います。

あと、次回のイベントは砂型鋳造に依る鏡作りですが、一部の枠が埋まって居ないとかで、其の部分は今回同様の肥後守の天然仕上げに取り組む枠として用意されるそうです。何故なら、今回のイベントに漏れた方が複数名、居られた為に代替の枠としたいとの事で。もしも、日程に余裕の有る方は再度の御申し込みを検討されてみては如何でしょうか。

 

 

 

 

 

イベント前の息抜き

 

と言うのは言葉の綾で・・・郊外の古民家や、空いている土地を再利用してカフェなどが出来ている現状を、興味深く見ていました。そこで、両親の所に顔を出した序でに下調べをしていた施設に寄ってきました。

 

国道から少々、坂を上がって行った途中に建物が見えました。外観は落ち着いた風情ですね。隣り合った場所には所謂、古民家カフェも。

KIMG0424

 

中に入ると結構、見晴らしが良い事に気付きます。

KIMG0426

 

周辺で収穫された果物や農産品、米の量り売り等が目に付きます。

KIMG0425

 

飲食ができるスペースは、意外に天井が高く、壁際に薪ストーブが備え付けて有りました。

KIMG0427

 

KIMG0435

 

メニューの中から、南山城産の紅茶とアテを。

KIMG0429

 

当日の御薦めは、入ったばかりの和栗との事でした。画像はモンブラン的な奴です。

KIMG0431

 

私の方は、予想以上に大きかったシフォンケーキ(アールグレイ)です。大きくてもフワフワだから簡単に食べきれる、その説明通りでしたが驚きは、横に据えられたクリームの方で。油っこさが無くてミルク感が強い物でした。

後日、話した料理人に依れば、練乳を加えると近い仕上がりに成るかもと。その伝で行けば、コンデンスミルク(無糖)や粉末状のミルク成分を混ぜても可能な気はしますが、この新鮮さ迄も再現できるのか、興味深いです。

KIMG0432

 

席からは下を走る国道・田畑を挟んで向かいの山肌が良く見えました。寒さが厳しく成れば、より紅葉もハッキリするし、冬枯れの草木も目立つのですが、当日は小春日和と言えそうな天候でした。

KIMG0430

 

 

両親の家では、結構なミカンと柿が生って居り。

KIMG0439

 

柿の方から収穫を。

KIMG0436

 

渋柿とは違って甘い方ですので、ジャムにする以外はスライス後に干す位しか無いかなと。

KIMG0440

 

KIMG0442

 

魚を干す際に重宝している網で、試しに干してみました。

KIMG0445

 

 

自宅に帰り付き、次の日には知人からの貰い物が。小振り乍ら、結構な量の太刀魚です。

KIMG0446

 

太刀魚は塩焼きが旨いのも勿論ですが、刺身が好きなので、何種類かの切り方で比べて見る事に。更に余った分は、教えて貰ったしゃぶしゃぶで試しました。

左端のでっかいのは、カフェで購入のレモンとミカンの掛け合わせの物です。皮を薄く剝いて刻んだ物を使いました。

KIMG0448

 

KIMG0455

 

丹波から送って貰ったのを保存していたとの事で、土産に持ち帰った黒豆の枝豆とで頂きました。

KIMG0456

 

 

 

今週末の砥石館イベントに向けて、良い気分転換に成ったのは確かですので、肥後守の研ぎ体験イベントでは楽しんで頂ける様、努めたいと思います。