前回の記事で触れましたが先週の後半に、上野さんへの選別を持参した結果(続き?)です。
当日は、最近の砥石館の例に漏れず、平日でもマズマズの人出でした。上野さんが対応していた訪問者の方は、九州からキャンピングカーにて一泊二日の予定で来られたとの事でした。
そのYさんは、かなりの研ぎ・砥石フリークらしく、研ぎ場での研ぎにも熱心に見受けられ、お気に入りの砥石も見付けられた様子。その後は上野さんから紹介され、研ぎ・刃物に付いての四方山話に移行しました。
途中、件の銘無し司作の三徳を渡した所、上野さんからは砥石館所蔵の小振りなカミソリ砥(菖蒲)を頂きました。砥石館を始める事前準備として、集め始めた時点の物だと聞いていた筈ですが、手持ちに無い種類でも有り、思い出の品に成りそうです。
ただ三徳は、その場に居た前述のYさんと上野さんのみならず、現館長の田中さんも巻き込んで研ぎ肌の違いと仕上げ方、研ぎ方の違いと切れ加減の差異(試し切り有り)のサンプルとして、俎上に上がる事に。序でに、同じく厄介な地金の例として持参した私の三層利器材の三徳と合わせて、簡易研ぎ講習の様相を呈して来ました。
刃先の角度変化の痕跡たる、研ぎ目の確認中
最終的に、司作の三徳は他人に持たせたり、何かを切ったりする事なく、郷里に持ち帰ると(笑)。其れではと、帰りがけに砥石館所蔵の包丁を何か研いで来るので、切れ味テストのサンプルにしようかと水を向けると、薄刃を研いで欲しいと。よりによって難易度の高い薄刃とは・・・相変わらず遠慮が無いですね。其の上、綺麗に研げたら切る用途には供さないとも。
何だそれは?と思ったので、適当な包丁を選んで此方は、完璧に切る役割り用にと持ち帰った包丁と合わせ、二本の研ぎを進めました。
持ち帰った二本。帰り道に買い出しした奴も映って居ます。
上掲画像の下側、両刃の三徳は元々、大らかな造形ですので細かいチェックは省きますが、流石に薄刃は確認しました。切っ先の欠けより初期の研削痕より、刃線の乱れ(W状)が気に成りますね。
研ぎ始め、人造の320番
人造の1000番
同じく1000番ですが、研ぎ目が浅く柔らか目
対馬砥石
中硬~やや軟口の巣板
各種合砥
水浅葱
研ぎ上がりです
刃線のWは高低差が数分の一に減少。その代わり、一部の裏押しが途切れ気味に成りました。刃金の部分・地金の部分の双方、所期の研削痕(深く削られ過ぎ部分)は、大まかに全体が揃った時点で追い込むのを留めました。元々が天然砥石に因る、研ぎ肌のサンプルの心算ですし先々、現館長や手伝いの若者たちが練習で研ぎ減らす際、削りシロを残す意味でも。
もう一方の三徳は、平の部分が大らか過ぎるので或る程度、正確な切り刃を研ぎ進めても均一には目視し辛いきらいは有ります。ただ、切り刃・刃先共に切っ先方向へ向けて鋭角化。刃先最先端は漸次、鈍角化の状態に成って居ますので、切れ込み・抜け共に改善されて居ます。従って、切れのテストは此方でという事ですね。
帰りがけの最後、次の送別会の本番にはベイカーズを持って来る予定だと伝えた所、上野さんからはハーパーの15年が欲しいと。検索してみれば既に現物が希少な上、高価且つプレミアが付いているらしく、10万とか12万・15万などの数字が目に入りました。
関係者の中でも、他の追随を許さない程の貧乏な人間に、そんな無茶振りをする様な悪い子には御褒美は無しとの結論に達しましたので、バーボン的な傾向の香味かつ手頃な値段で気に入って居る、キリンの陸でも渡し、大手のブランドや年数表記に惑わされない選別に目覚めて貰う予定です(笑)。
あと、参考までに・・・御注文の味方屋作の三徳で、まさかの長期の御待ちを頂く事に成ったK様には、その間の気を紛らわせて貰う為に?砥石の試し研ぎを勧めてみました。
下画像は、かなり上物の品質と形状である事から、特選品レベルの物です。
此方は、厚みが薄くて砥面も若干、柔らか目ですが高品質です。何方も、いざと成れば仕事用として使うのに、何の不足も無いどころか楽しみでさえ有ります。
上掲の二つとは異なり、形状の面や筋や欠けなど、難が有ったり更に小振りな実用品レベルの物も少量、持ち帰って居ましたので其方を御送りしてみました。御本人からも、砥面を満遍なく使うのは難しく、面積が広いと余計に気を使うとのコメントも勘案しての事です。
やや筋の数が多いのですが、其れ程には邪魔に成らずに適度な硬さと研磨力で、良い刃が付きました。
上の砥石よりも柔らか目で、かつ難の少ない砥面により扱い易さでは此方に軍配が上がります。
試すにしては幾分、近い性質の二つですが、逆に殆ど同じ採掘場所から採れたとしても、必ずしも同じでは無いとの確証を得られる資料とも言え、その点も含め楽しんで頂けましたら幸いです。