昨日は砥石館で動画を

 

昨日は、砥石館へ出掛けて来ました。今回はイベントなどの手伝いでは無く、動画の撮影其の他が目的でした。元々は、研ぎ依頼を下さった方からの提言「ナイフ類をアウトドアで使う層が多くなって居る様に見受けられるので、そう言った刃物を研ぐ際の参考に成る動画が有っても良いのでは」を受けての事で。

そう言えば、過去には「ブログ上で研ぎの説明・解説編を」とか、「通信講座的な物を」とかの御要望も有りました。何れも、私の力不足(ブログの編集などが致命的)と研ぎ内容の厄介さ(端的な説明や箇条書きでは伝えきれない)で実現出来ていませんでした。

しかし今回は最低限度プラスアルファで、と言う内容に留めましたので、何とか齟齬無く短時間で伝わるかなと淡い期待をしています(笑)。様々、濃い内容を期待して頂いて居た方々には肩透かしだったり、説明不足・高難易度と感じた方からは分からんと言われたりするかも知れませんが・・・。

研ぎ方の基本は同一刃角(目的に応じて)を維持し、刃元~切っ先まで研いで行きます。カーブ部分は、ハンドルを持つ手を徐々に上に上げつつ砥石へ接して行きます。切っ先は、研ぎ終わりで砥石から浮かさず止める。但し今回は、切れと永切れを意識すると一定角度では不可能ですので、三段階の研ぎ角度を付けています。難しかったり、面倒だと感じる方は一段でも二段でも構いません。其の場合は期待出来る性能を実現困難だったり、性能を妥協できなければ作業の難易度が上がります。

 

https://www.youtube.com/watch?v=rxQ1U0wACZE&t=43s

 

上動画では、荒砥⇒中砥⇒中仕上げの順で研いで居ますが前記の通り、研ぎ角度を其々で変えて居ます。荒砥は20度近辺・中砥は30度近辺・中仕上げは40度近辺。下画像は其の顕微鏡画像をPCモニターに出した物を、スマホで撮影した物です。

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荒砥での結果。見難いですが、光っている範囲の上側の四割。全体的に同一の研ぎ目と光り方。

 

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中砥での結果。同じ光り方の端に、研ぎ目と光り方が違う部分が(幅の狭い黒っぽい範囲)。

 

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中仕上げの結果。大半の光っている(白く飛んでいる荒砥仕上げ)範囲の上の少し濃い部分の上、更に濃い狭めの範囲です。

 

 

切れ込み(刃通り)を考慮して、小刃の本体は20度(其れでも刃体が薄目なので小刃の幅は狭いです)。強度を考慮して、小刃の先端は30度(抵抗の低減の為に研ぎ目も細かく)。切れの精度と刃先強度を考慮して、刃先最先端は更に研ぎ目は細かく鈍角に。

もしも一定角の単一刃角度であれば、特に今回俎上に上げたオピネルの様な硬度の低い仕上がりの場合、耐久や永切れに不安が付き纏います。出来るだけ最終刃先角度は鈍角に、しかし刃先周辺は一定以下の厚みにしたい。其れが単一刃角度では難しい訳です。もしも、其れが可能だとするなら結果的に(又は製品の設計段階から計算ずくで)刃体の厚み・刃幅・刃角度の組み合わせで黄金律的なバランスが取れた時だけでしょう。

後、要求が出るとすれば「走り」と「抜け」ですが・・・カーブを持つ刃物の殆どは、カーブの厚みは減少しています。案外していない物や逆に、もっと厚い物も有りますが(笑)。カーブ以外は先へ向けてテーパーに成って居るとは限りません。其の所為で引き切りや、押し切りの際に抵抗が増えて動かし辛くなります。それ等への対処は、研ぎ角度を刃元から切っ先まで鋭角にして行く必要が有るのですが、此処では割愛した動画内容に成って居ます。飽くまでも、基礎的な研ぎの動作を・・・とのコンセプトに従った形です。

 

 

 

と言いつつ、イレギュラーな展開で可変研ぎ(いつもの私の研ぎ方)も披露する事に。撮影場所として借りていた砥石館の、上野館長から「うちの砥石を使った研ぎも、撮影してくれないか」との申し出が有りました。所蔵の青砥を使って研ぎ、其の上「鉄を切れないかな」と。直前の話の流れで、撮影時に鉄を切れと言われた事が有るが、スチール缶なら兎も角・・・と答えた旨を伝えた結果かと思われます。

館長からスチール缶なら切れるのか?と問われ、多分(刃物と研ぎ方に依る)・・・と答えた所、アルミ缶は?と続きました。私の「まあ、切ろうと思えば切れますよ」との返事を受けて、実際に見せて欲しいと。そして切って見せたテイク2が下の動画です。危うく、スチール缶も切らされる所でしたが・・・直近の販売機には無かったそうで良かったです。流石にスチール缶を相手にするなら、刃物も砥石も幾分は吟味する必要性が高まります。切り込む対象の密度・硬度が高い程、精密な刃先角度と緻密な刃先の性状が求められますので(原理は違う筈ですが、鋸の縦挽きと横挽きの関係に似ています)。

結果的に、用意された硬口の青砥と対馬砥で小刃を研いだ上、刃先へ向かって鈍角化ハマグリ・切っ先に向けて鋭角化。切り始めの鈍角で負担を軽減⇒引き切って行く際の抵抗を低減、の流れが活きて無事にアルミ缶を袈裟に切れました。鋼材が更に高硬度だったり、砥石が緻密かつ相性も選び抜いた物であれば、切れ込みまでの動作に余裕が出たかなとも思われますが、出来はマズマズでしょうか。

可変研ぎの効果は絶大で、缶を切る前と後で新聞の束への切り込みの際に、大きな違いが無かった事からも明らかです。前段の、人造の中仕上げまでの一定角度による三段研ぎでは重かった新聞の束への切り込みに比べ、缶を切った後でも可変研ぎの方が楽だった程で、図らずも無茶振りが比較実験に役立った格好です。

 

https://www.youtube.com/watch?v=oUzssHSxYag&t=17s

 

 

 

その他には、砥石館の一番の常連かつイベントなどでは助手も務めてくれている方に、研ぎの指導も。主として包丁を研いで居るのにも関わらず、研ぎを見直そうと切り出しまで自前で買い揃えての姿勢で。

私が代理で購入したのですが、最も研ぎ易い(持ち易く使い易いとも思われる)24mmを敢えて外した選択。一段細い21mmと一段広い27mmを選びました。未だ形状が状の整って居ない研ぎ始めは27mmで慣らし、平面が出てからは鏡面までが容易に成る21mmで、との想定でしたが、何故か27mmは安価だったので二本を購入してしまいました。

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一定の範囲を砥石に当て続ける・一定の角度を維持して研ぎ続ける、との動作を身に付けて居なければ小刃も段刃も、ましてやハマグリなどは出鱈目をベースにしているに等しいですから、急がば回れで平面の研ぎを覚えて欲しいなと。事前に通告していた通り、最後は指先も擦り切れていたので少し申し訳無い思いも。

しかし、此れを仕上げる頃には一段階と言わず、数段は上達している事でしょうから頑張って頂きたいですね。折角、長く砥石館へ通って居るのですから、其の成果を身に付けて欲しいとの意識は以前から持っていましたし。

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序でに、砥石館の研ぎサンプルとして置いて置いた切り出しの、一部に出ていた錆を落としました。私も特別、切り出しは得意と迄は行きませんが、時間はかかる物の丁寧に進めれば形には成るなと改めて感じます。

ただ、同時に手に入れた27mmは予想以上に整えて行くのが手強そうで、楽しみでも有り大変でも有ると確認出来た次の日。彼方の21mmと競争と言う訳では無いのですが、同時に同様の作業を進める期間が始まるのは、妙な連帯感も(笑)。折角ですから、同時とは行かずとも遠からず双方の完成に期待です。

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奈良のH様から筋引きの御依頼

 

今度の洋包丁は、筋引きと御見受けしました。到着時でも、或る程度は紙の束にも切り込める状態でしたが・・・引き切りして行くと、切っ先寄りの四割り程度に差し掛かった所から重く。

峰から見ると元から切っ先へ向けてテーパーに成って居るのですが、側面には(視覚的には見えにくい物の)鎬筋様の面構成の違いが有ります。そして、側面は刃幅が狭くなって行く⇒鎬筋が刃線に近付く⇒(側面が広い部分に比して)切られた対象が早い段階で段差を乗り越える為、抜けの際の抵抗になる。

そこで、小刃の幅の調整・角度の付け方(始まりと終わりで研ぎ分け)により、後に控える側面の幅・面の段差への切削対象のアプローチをスムーズに。例えて言うと滝の下で水流を受けるとして、大きな傘の上に小さな傘を載せる事で、(そのサイズや骨の開き角度次第では)大きな傘が濡れるのを相当なレベルで低減させる事も可能に成る訳です。

しかし、今回は良くある左右均等な刃付けの牛刀その他では無く、右側有意の研ぎ方である筋引きでしたので、使える手法は効果を上げられる範囲が限られました。止むを得ず、左の側面からも小さな小刃を維持しつつも(返りを取る程度以上の)、角度変化を付けました。

 

 

研ぎ前の画像(今回、全体画像を撮る前に研ぎ始めてしまいました)ですが、三段階程度の研ぎ角が見えます。一度でなのか、何回かで付いたのかは定かでは無いですが・・・最終刃先角度が余りに鈍角な気がしました。もしも此れが、更に狭隘な幅であれば抵抗が小さくなって、切れに対する不満も少なかったかも知れません(特に、切っ先寄り四割の範囲で鈍角)。とは言え角度は兎も角、小刃その物の幅が狭かったので、切る際の大まかな手応えは軽めでした。

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行き成りですが、対比させるべきかと研ぎ後の刃先拡大画像。小刃の幅を広げて、始まりと終わりを研ぎ分けます。先ずは初期に付いていた小刃を研ぎ落とし、同時に鋭角化。小刃の幅の中で、最先端寄り三分の一は徐々に鈍角化に。此れで、やや柔らか目の鋼材(+焼き加)に対する永切れを期待出来ます。最後に、全ての角度を顎から切っ先に向け鋭角化で仕上げました。

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人造の1000番、研磨力の有るタイプで小刃を研ぎ落します。

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同じく1000番ですが研ぎ目が細かく平面維持も適度に優れる物で、刃先角度の研ぎ出しと角度変化のベースを。

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人造の3000番で、全体の研ぎ目を細かく。

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天然に移行し、奥殿の天井巣板中硬と黒蓮華の硬口で。後者は硬さと弾力が両立している上、相性も良くて助かりました。

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最終仕上げは、中山の巣板硬口と戸前系で。後者の砥石は砥面に出ていた茶色部分が減って来て、大人しく無難な研ぎ心地でありながら、高性能仕上がりは変わらず。見込み通りの経過で何よりです(笑)。

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研ぎ上がりです。初期画像が有ったとしても、到着時より小刃の幅が広がった位にしか外観の変化は感じられないと思われます。

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研ぎ後、刃部のアップ。良く見れば光の反射で、研ぎ角を変えて居るのが観察できるでしょう。

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H様には、研ぎの御依頼と共に幾分の待ち時間を許容して頂きまして、有難う御座いました。より良い仕上がりをと心掛けて研いで見ましたので、到着後は実際の御使用で御確認を御願いしたいと思います。もしも何か問題が有りましたら、御連絡を宜しく御願い致します。

 

 

 

 

 

返ってきた砥石と再度送った砥石

 

一月ほど前に北海道に送った砥石が返って来ました。試し研ぎ会を行なって頂いて居たのですが、一部は御要望に適ったと見えて選んで頂けました。

其れ以外の砥石達は返って来たのですが・・・中には自分でも特に気に入っていた物も。勿論全て、御気に入りと言える物ばかりを選んでは居るのですが、性能(下り・切れ・仕上がり)とサイズや形状など、総合的に見て如何にも使い易そうだと感じさせる砥石は有る物です。特に、仕事で使うとなると作業効率も無視できませんので。

 

 

帰参組の一番は、同じ原石から切り分けて貰った中山の浅葱で、不定形の五角形。初期から私用に、と決めていた(切り込みの入った長方形に近い)砥石と兄弟分の一つでした。

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上画像の五角形。もう少し減ると浅葱色が、より鮮明に成りそうです。性能的には既に充分なレベルなので、減らさずに済むなら(色柄的にはビビッドで無くとも)厚みは残した方がメリットに成ります。

 

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此方が、自分用。砥面を付けたのが上の物とは反対側・削り取った厚みは何割か多かったので、外観・研ぎ感だけで無く性能にも若干の差が。此方の方が幾分、食い付きが強い傾向にあります。

 

 

 

帰参の二番手、実は此れも減らす程に見た目が整うのみならず、性能も向上する状態で送り出していた物でした。ナマズ(白い部分)が入って居ながらも、かなりの硬口。砥面の一部に、やや質のバラ付く箇所も有りましたが・・・減って行くに従い、本来の性能が出ると見込んで送り出しました。

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硬さの割りに刃金を良く下ろし、合わせ和包丁の地金部分も研ぎ易いタイプで、便利に使えると踏んだのですが、伝わり難かったのかも知れません。

 

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現状では、もしも扱い難さを感じる様であれば電着ダイヤでの泥出しも有効です。ナマズが減る程に、其の儘でも扱いが容易かつ良い仕上がりに成るでしょう。

 

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硬過ぎない焼き加減の炭素鋼であれば、結構な刃毀れや捲れも、中砥を使わずとも取り切れます。地金を斑無く仕上げるには、やや硬さと研磨力が邪魔をしますが、刃金部分(刃先・裏押し)に関しては充分以上の仕上がりに。

 

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切り刃(地金部分)は小割りの砥石で、錆予防と摩擦低減を狙って磨いて置きました。

 

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自分用なので、少し雑に仕上がりましたが良しとしましょう(笑)。但し、切れと永切れは過去に最高の結果を出した幾つかの砥石と同等以上でした。例え硬さ・細かさでは上位で無くとも、相性次第で(それらに勝る砥石と)同列の仕上がりを見せてくれる砥石は、楽しいだけでなく有難い存在です。本当の意味で当該刃物(鋼材・熱処理)の性能を引き出したと思えるので。

 

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今回の研ぎで更に一層、ナマズが減って来ましたので、切り出しによる試し研ぎも以前に比べて向上したのは読み通り。愈々、今後の変化に期待が持てます。

 

 

 

そして、次の相手先に送り出した二つ。そもそもは、中山の巣板層のサンプルを送る際、念の為に意向を伺って見た事からです。硬口~超硬口の赤ピンが二つ有ると伝えると、両方を御希望で。

どうも以前から、此の系統の砥石には随分と御執心であった様子にて、何れかの時点で御紹介・・・が良いのかな?と悩んでいたのですが、御期待に沿えましたら幸甚です。

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飽くまでも、砥石で刃物を研ぐのが仕事の本筋と自認しては居ますが、時には希望する方に、砥石自体を御届けする身でも有ります。其々の砥石が、在るべき所・求められる処に収まるのが望ましいので、少しでも其れに貢献できれば良いのですが・・・当たりの砥石は当然ながら、量も少なく形やサイズに自由も利き難いです。更に産地や層、色や質を指定するなら難易度は上乗せです。(当たりの確率は経験上、良くても数個に一つ。通常は十数個~数十個に一つの印象です)

その上、多く・早く・安くと来れば、現実的では有りません。探しに行く回数の増加・空振りに成る確率・其の費用と手間の増大から、通常以上のコストが掛かります。加えて天然の物は何でも、大抵が採れる量・サイズ・時期をコントロール仕切れない訳です。砥石も天然の物は同様に(採掘中の物なら余計に)、有る時・有る場所に出向いて、其の中から選別するだけで精一杯、と言うのが実情に成ります。今後は余程、条件が揃わない限りは基本的に、出掛けた際に運良く選べた砥石を持ち帰るスタイルに落ち着きそうです。

 

 

 

 

 

取り置きにしていた砥石

 

一度に多くは購入できませんので、田中さんには取り置きボックスを用意して貰って居ますが(笑)・・・其の内の幾つかを受け取りに行って来ました。

主目的は、前回に持ち帰ったコッパよりも大きい物を、と北海道のS様からの意を受けて。もう一つは、砥石館に届ける為の砥石を再度、選別に。

後者に関しては、館長に意向を問うて用意していた砥石が、思ったよりも難が消えて呉れず。止む無く、同系統の(さらに大きく難も少ない)石を選んでみました。

 

 

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先ずはS様に向けた大き目レーザー型(大き目の一回りオーバーサイズ)巣板、中硬~やや硬口です。此れは質的には前々回に持ち帰った、私の大き目の真四角っぽい巣板と同系統の物。但し、硬さと細かさ・難の少なさから、砥石としてはワンランク上と言えます。

 

 

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次に選んだのは、合いさっぽい外観と砥ぎ感の物。此方も同じく巣板層の産。中硬~やや軟口で、泥も出て研ぎ易く、本焼きに向いている印象。難点は、巣の痕跡が点在する事ですが前回選別の同系統よりもマシな物。

 

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上画像の左では、相応しく無かろうとの思いで右も購入して届けたのですが、どうやら此のレベル程の物は必要なかったみたいですね。両方、私が本焼きに使うとしましょう(笑)。

 

 

 

後は元々、私の分ですね。

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やや硬口~硬口の巣板。

 

 

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あと、田中さんの先代(又は先々代?)が畑中と取引していた頃の、小さ目砥石の集団を見せて貰えたので二つを選びました。北海道のS様には、現地での試し研ぎ会を手配して頂いたりして御手間を取らせてしまったので、左の方の側面が(四面とも)皮の砥石も御送りしましょう。右のは、側面に層割れの隙間・砥面に層の境界が出ていましたので。しかし、研いで見ると此れが絶品で・・・こう言う事が有るから楽しいですね。

 

 

 

他には、加工途中の物が置いてある辺りの物も幾つか、譲って貰いました。其の一はブロック状の石。層の境目を狙って鏨を入れると、綺麗に二つに。最初は、柔らかそうなので小割りに・・・と考えていたのですが、暫くは此の儘で使えそうですね。

場合によっては平面で無い刃物への対処として、意図的に変形させて使う事も想定できます。かなり贅沢な使い方ですが、此れなら勿体無い病の発症も抑え易いかと思われます。

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二つに割って、其々に上側であった面で砥いで見ると、下部分の方が硬いのが分かりました。粒度は殆ど変わらないのですが、天然砥石あるあるで面白いなと。やはり、こんな確認作業を伴った行為は、勉強にも成るし実用道具としての幅も広がって為に成ります。

 

 

以下も同様ですが、砥面を付けて見れば双方とも充分、実用に足る石でした。上の砥石は、ブログをやっている知人へのサンプルとして。下のは、若干ですが当たる筋・積層の向きが乱れている部分も有るので、砥石館で研ぎ体験用のサンプルとして預けて置こうかなと。来訪される方の、経験値が上がる可能性は少しでも確保するのが良いとの思いからです。現行(採掘仕立て)の加藤鉱山からの砥石に触れる機会は、中々に希少だと思われますので。

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因みに、大きい方に面を付けた所です。難の無い部分で研ぐ(又は、いなして研ぐ)と仕上がりに問題は無いですね。

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神奈川のY様からの御依頼

 

始まりは、砥石に付いての問い合わせだったのですが・・・最終的に今回は包丁を二本、送って頂きました。勿論、研ぎの御依頼なのですが既に結構、御自身で研がれている様子で。

到着した時点で、牛刀と三徳なのかと思いましたが・・・メールの遣り取りで判明したのは、使って行く内に厚みを邪魔に感じて切り刃構造に研いだのだと。

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一本目、通常の小刃として研がれていた方。刃先の損耗は大きくは有りませんでしたが、紙の束などを切って見ると切っ先のカーブ手前で抜けが重く。カーブから切っ先に掛けては、自動研磨段階で厚みが減っていたであろう事も有って、マズマズ。

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人造の1000番、平面維持に優れつつ研磨力も有るタイプで。

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人造の1000番、研ぎ目が細かい物で。

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天然砥石、奥殿の天井巣板カラス中硬で。

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中山の戸前系、硬口~超硬口で仕上げです。幸い相性が良く、下り・切れ共に充分な仕上がりに。

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次に、切り刃が施された少し短い方です。どうやら、右の切り刃はベタ気味・左の切り刃はふっくらな研がれ方なのですが・・・刃元の薄さもさることながら、最も気に成るのは顎から切っ先に掛けて厚みが薄い⇒厚い⇒薄い⇒厚い⇒薄い、と交互に成って居る点です。

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先ずは人造の1000番、研磨力と滑走に優れた物で、余分に残存する厚みを減らしつつ、切っ先へ向かってテーパー状に。

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人造の1000番、研ぎ目の細かい物で。厚みのバランスを取りつつ、刃先周辺から刃先最先端に掛けて鈍角化のハマグリに。その角度も、切っ先へ向かって漸次鋭角化。

右の切り刃は、厚みが少ないので幾分ですが刃先へ向かい鋭角化ハマグリに。左の切り刃は逆に、全体に厚みを減らしつつベタ気味に寄せます。しかし、右が薄い分だけ左の厚みは適度に残して置きます。そんな仕様ですが、厚みと角度の漸次低減により走りや抜けは研ぎ前時点よりも改善されます。

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人造の3000番で、更に細かく。

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天然砥石、奥殿の天井巣板の中硬・やや硬口カラスの二種で、更に形状を整えつつ研ぎ目を細かく。

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奥殿の天井巣板、やや硬口・硬口で仕上げますが、相性を探って最終は超硬口の物(画像三つの内で最奥)で。

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研ぎ上がりです。

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Y様には此の度、研ぎの御依頼を頂きまして有難う御座いました。砥石に関して・また研ぎに関しましても、私で御役に立てる場合は今後も宜しく御願い致します。

あと、今回の二本の鋼材と熱処理のバランスから感じるのは、荒い砥石・強い加圧での研ぎ・一度に片側を多く研ぐ、の条件では返りが出易い傾向でした。一気に多く出した返りを強引に除去するリスクより、意図して小さな返りを出す意識で研ぐ気遣いの負担を取るのが良さそうです。

 

 

 

 

 

一連の砥石(後半)のテスト

 

之迄の中山産巣板ですが、大きく分けて後半の砥石達をテストしてみました。

 

 

先ず此れは、予定している行き先が(扱いが分かっていて下処理も可能な)自分仕様に出来る方なので、手を付けていません。そう成らなかった時は自分用にしようかな?等と思ったり(笑)。

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自分用の一つ目。店主からも、「此れは自分が使って呉れよ」と言われた物ですが・・・やや硬口で少々の泥も出る、使い易い範囲内の砥石です。刃金は半鏡面~鏡面で、地金も薄曇り~半鏡面に成りました。

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自分用の二つ目の巣板ですが、少しシャリシャリした感触ながら案外、緻密な仕上がりに。ほぼ上画像の砥石に準じる仕上がりですが、僅かに曇りがちと云った所。

購入時は筋が目立つ砥面でしたが、平面を出しつつ厚み調整を進めるに従い、研ぎに影響も少なく成って来ました。此の先もう少しは消退して行きそうですし、普段使いに加え、仕事用としても活躍してくれそうです。

研ぎ上がりの切れとしては、奥殿の硬口天上巣板とは又少し違いながらも、滑らか且つ掛かりの良い傾向の永切れを狙える為に有り難いですね。研ぎ感・外観的には地味ですが・・・。

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予備・その他として持ち帰った物でしたが・・・切り出しの裏押しで判明した特性として、予想以上に刃金に対しての下り・仕上がりが優れていました。いざという時に備えて、手持ちに加えるべきかも知れませんね。

砥粒の荒さや斑、或いは多くの泥と共にガンガン下ろすタイプでは無い物の、刃金を良く下ろすつつも鏡面に、地金も半鏡面~鏡面にまで仕上がります。前半・後半を含めて、一連の中山産巣板の中では総合(研磨力・砥ぎ易さ・仕上がりの緻密さ)で1~2を争う性能を発揮してくれました。

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予備・その他としての二つ目。之までの中で一番、適度な柔らかさと巣板らしいサラサラの泥を感じさせた鎌砥、其れに次ぐ砥ぎ易さと研磨力の砥石でした。筋も特に苦にならず、硬口・やや硬口の砥石の前に繋ぎで使ったりすれば便利な存在。とは言え、最終仕上げとしても通常は不満も出ないレベルです。此方も、研ぎの各段階に組み込む際、(色々な砥石で組んだ各種コースを跨ぎ)広範囲をカバーしてくれるでしょう。

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それでは、新たな戦力も増強されましたし(休息・気分転換にも成ったので)、次の御依頼品の仕上げに掛かるとします(笑)。此処からは又、暫く洋式の刃物が続きそうです。