以前から依頼していたサンプルが鍛冶から届きました。これは刃物として製作した物では無く、細長い刃金と地金を一定の厚みで鍛接・焼き入れして貰ったものです。ほぼ通常の作品を仕上げる工程と同等の作業内容を経て、日野浦さんから提供して頂きました。
刃金側は研磨されています
此方は地金側・打ちっ放し乍ら精度の高い仕上がり
問題は、これを検査機器に掛けられるサイズに切り分けて表裏を研ぎ上げてやっとサンプルの完成となる事です。熱を掛けると金属組織に影響が出てしまう事を考えると、切断方法も限られますので、何とか上手い方法を探そうと思います。
此方も以前から話を聞いていた、サンプルの包丁が同梱されて来ました。確か銀紙三号だったと思いますが、鍛造に適したステンレスは、適切に鍛造を加えると性能が向上するのを確認したいので作ったそうです(鍛造効果による切れ味・長切れ・研ぎ易さに加え、細かく研磨した際の錆びにくさ)。
実際、到着したままの状態で手近に在ったトマトを切ってみた所、之まで経験した切れ味の良いどのステンレスにも引けを取らないものでした(対象はカミソリ砥を含む天然仕上げ)。現状は人造仕上げと思われるので、之を天然で仕上げれば更に切れ味が向上する事も考えられ、そうなると益々トップレベルの性能を見せてくれそうです。
直近の予定としては、今回届いたサンプルを仕上げる前に、刃物の形状や研ぎ肌の精度を測定する検査を、九月上旬に研究の第一弾として取りかかりたいと考えています。
今在る包丁などの現状から、不必要に削り過ぎない範囲で如何に目標、つまり理想と考える形状に近付けられているか、そして望む研ぎ肌のレベルに仕上がっているかが確認出来ると思います。
この度、誠文堂新光社から、社団法人研ぎ文化振興協会の監修になる「包丁と砥石大全」が出版されました。
内容は、専門職用を主体とした各種包丁の紹介・包丁別の研ぎ方・天然砥石の紹介とその使用法、実際に使用した場合の特徴・鍛冶屋探訪・刃付け屋探訪・料理人から見た包丁や研ぎ等となっています。
現在、本は未だ手元に届いておらず、紹介する為に資料となる物は以下だけです。最終稿の随分前に打ち合わせ及び確認用として送付又は手渡された原稿(を撮影した画像)で、刊行された内容とは同一で無いかも知れませんが、却って製作に関わった者からの紹介らしいのでは、と考えました。
従来の同ジャンルの本と比べても、特に拘りの内容の豊富さと探求度合い、更に之までとは違った角度からの視点が印象的で、他と重複する部分が少なく、かなり個性が出せていると思います。既存の出版物に飽き足りなかった人や、常に上を目指す為に情報収集を怠らない人は勿論、「伝統が今に生きる」包丁関連・「現在から将来に亘る」天然砥石関連の情報が収録されており、今、正にこの分野に興味を持った人には最も鮮度抜群の情報をお届け出来る本になっています。
(自分の記事の画像が在りませんが、その部分はメールに添付されたファイルとして送られて来て、上手く取り込めなかった為です。しかし本の実物には少しですが記事が掲載されている筈です。1度目の人物撮影予定では何故か撮られず、二回目の機会では油断して散髪に行き損ねたままを不意打ちで撮られたもので、その顔写真を載せるのは恥ずかしく丁度良かった気もしています。まあ本には載っているんでしょうが。)
前々回に引き続き、研究用のサンプルが届くまでの「予備の準備」シリーズです。豆鉋は、刃先が完全には揃っていなかったり、刃金部分がやや平面が甘かったり(僅かにハマグリに研ぐ癖かも)、研ぎ目が残っていますが、仮の仕上がりました。あと、切り出しの他はイカサキ(柳のスケールダウンとも見做す事が出来る)と三徳が三種よりは、出刃(ハマグリ刃の代表例)を加える方が良いと考え、普段最も使っている小出刃(五寸五分)を加える事にしました。
双方共に、未だ仮の仕上がりと言うのが正直な所で、研究に掛かるまでに出来ればもう少し精度高く研いでおきたい所です。
余談ですが、所属している社団法人で監修した恰好の本が、来週半ばに出版されます。私は自分の書いた文章以外にも、結構な範囲について校正というか校閲みたいな事をしました。しかし、最後の最後でもう一度試し刷りの印刷物で確認出来るとばかり思っていたにも関わらず、そのまま製本の流れになりました。小さい頃から割合、誤字や脱字が気になる方で、印刷物を読んでいると実際、目に付き易いのですが、何故かパソコンなどのディスプレイでは気づき難い様です。ですから、出版後にチェック漏れが出ないかやや心配なのですが、どうせ漏れがあるなら気づかないよりは把握しておきたいので、手元に本が届けば、やはり注意しながら読んでしまいそうです。因みに、姉妹本のように三年前に先行して出版された大工道具 砥石と研ぎの技法 でも気になる箇所が在った覚えが在ります。今回の題名は、包丁と砥石大全 だったかと思いますが、書店で目に付いた折は手にとって御覧頂いても、そうそうがっかりしない内容になっていると思います。
本日、牛刀と筋引きを受け取りに来て頂いたM様、昨日も直接お持ち頂き、てっきりお近くかと思っていましたがそうでは無かった由、恐れ入ります。
本日お渡しする際、之までの通例に従い(ノートパソコンで取り込んだ)研ぎの前後の拡大画像を確認頂きたかったのですが、丁度その時に固まっていて果たせませんでした。そういう訳で、お目に留まるか分かりませんが画像を上げてみます。全体や詳細はお断りしていない手前、省略します。
牛刀 刃部アップ 研ぎ前
牛刀 刃部アップ 研ぎ後
牛刀 刃先拡大 研ぎ前
牛刀 刃先拡大 研ぎ後
筋引き 刃部アップ 研ぎ前
筋引き 刃部アップ 研ぎ後
筋引き 刃先拡大 研ぎ前
筋引き 刃先拡大 研ぎ後
後で気づきましたが、逆向きの画像の方が良かったようです。双方右側を(筋引きは元からの構造に従ってですが)厚みに対応する為、小刃の幅を超えて肉取りをしました。それにより右は初期のオーソドックスな小刃付けから、緩いハマグリに僅かな糸引きとなりました。更に広範囲に研ぎ面が出る為、外観の纏まり上、大部分は天然入り人造仕上げ+刃先側2㎜程の天然仕上げ(黒蓮華・大谷山)にしました。
刃先の構造上の違いによる好みの評価は変わるかも知れませんが、斬れ味以上に刃の通りと抜けが向上していると思います。特に筋引きは魚を対象としているように見受けられたので、刺身もやりやすく仕上がる様に研いだつもりですが、双方共に何か有りましたら御連絡頂きますようお願い致します。有難う御座いました。
研究サンプルの手配が遅れている為、急遽、以前にも東京の先生に試料として購入・研磨(天然・人造、双方研ぎ分け)して送った鍛冶屋に買い出しに行きました。物は同じく豆鉋で、材料も前回同様に青1と和鉄です。
画像は、電着ダイヤ1000の後、キングの1000と1200を交互に数回当て、シャプトン1000と2000で大まかに形を整えた段階です。今後、再びシャプトンで面を出し、天然は合砥まで、人造は8000まで使って研究に使えればと思います。但し、1.3㎝×2.6㎝ほど有り、条件として出されていた、2㎝程の円形では無いので難しいかも知れません。無理なら初回は通常の刃物のみでスタートとなります。
因みに、前回送った二丁の豆鉋は以下の画像です。右が天然(敷内曇り)、左がキングの8000(近年の物より20年程前の方が仕上がりが良かったので、それにしました)
研いだ包丁のビフォーアフターなどを載せていきます。