珍しく暫くの間、研ぎの御依頼が続いていたのが落ち着いて来た事も有り、手持ちの包丁と砥石の相性を確かめる機会だと考えました。手持ちの包丁と言っても、たかが知れているのですが年間を通して、余り使用する機会が無い包丁類は、結構な数に上ります。いや寧ろ、主として使っている包丁は殆ど決まっているのが現状です。
その使っていない代表が本焼きの二本なのですが、少し前、相性的に好適と思われる砥石を入手しましたので、試してみる事にしました。しかし、幾ら全体が鋼で出来ている(熱処理的にマルテンサイト未満のパーライト部分も有りますが)とは言え、無駄に刃金を減らすのは気が引ける部分も有りました。
そこで、料理(鳥牛蒡)の途中に試し切りを兼ねて使用してみる事に。御蔭で、目的には少々そぐわない形状にしてしまった部分も有りますが、まあ食べるのは自分なので問題無しです(笑)。
尺の柳と五寸五分の鎌型薄刃の二本、共に白紙の本焼きが今回、俎上に上げる包丁です。因みに過去の研ぎで仕上げに使った砥石は、神戸の削ろう会を見学した際に購入の奥殿産巣板、硬口~超硬口です。
薄刃の方、研ぎ前の状態、全体画像です。
同じく刃部のアップ。
裏です。
牛蒡の端切れを輪切りで薄く。
千切りも少し。
柳の方、研ぎ前の状態、全体画像です。
同じく、刃部のアップ。
裏です。
人参での千切り。
今年の山椒も出回り出したので?冷凍していた去年の分の山椒の実を解凍し、スライスに。
途中で空腹を覚えたので、フランスパンとチーズを食べる序でにトマトも用意しました。折角なので、試しに此方は賽の目に。
切るテストの最後は、氷を削って見ました。季節的には少々、早いですが・・・過去最大量を試すと驚く位、かき氷でした。
硬さと意外な弾力に加え、金属にとっては低温脆性も関わって来ますので、対象としては結構、ハードな氷ですが刃先に損耗は無し。私の通常仕様である、切れと永切れの両立を目指した研ぎ方ですので、狙い通りの結果が確認出来ました。
今回、最終仕上げに使って見た砥石。中山の合いさと見られる物、硬口です。
薄刃の方から、丸尾山の本焼きの中継ぎに向く巣板各種の後、上画像の砥石で。
研ぎ上がりです。
同じく柳も。
研ぎ上がりです。
今回の砥石は、以前からの「本焼き用の最終仕上げ砥石」に比べ、やや硬口でしたので、複雑な面構成の研ぎ方をするには、薄い研ぎ斑が出易かったり、傷を消すのに時間が掛かったりしました。
ただ、時間を掛ければ傷が消えるに留まらず、より輝く研ぎ肌と鋭利な刃先が得られるのが分かりましたので、従前の砥石の代替よりも、使い分けで活躍して貰う事にしました。
形状の最終仕上げ・傷消し・研ぎ肌の均し・切れの各要素を兼ね備え、最も重宝して来たのは下画像の中山です。これ等の後継と言うか代替に成る砥石も、おいおいに追加したいと思っては居るのですが・・・殆ど同じ性格の物を見付けるのは、中々に難しい様ですね。
他にも既に期待出来そうな物は、有るには有るんですが何となく、使い易そうなのは「もっと難儀な局面で使おうかな」との思いが拭い切れず(笑)。ついつい取って置きたくなったりで。
従って現在、本焼き用の主力として居る砥石達が、大幅に擦り減る迄に相応の砥石を追加できることを目指し、引き続き選別に出掛けねばとの思いは持ち越しですね。