オピネルの新入りの研ぎ

 

様々なカラーリングのハンドルを持つオピネルは、以前から目にしていたのですが・・・ハンドル材自体のバリエーションを知ったのは結構、最近に成ってからでした。

中でも、オーク材とオリーブ材のハンドルには興味が有ったので、必要な分(カーボンとステンレスの其々№8と№9)は持って居ながら、追加で入手してみました。

因みに、何れもステンレスモデルの仕様しか無さそうでしたが(日本国内向け或いはAmazonの設定による?)、目的はハンドルの方でしたので、問題は無しです。

 

 

先ずはオーク材の方。確かウイスキーの熟成で使われる、アメリカンホワイトオークや、ヨーロッパで輸送に使われたとか聞く、スパニッシュオークなどの仲間に成るのでしょうか。日本で言う所の、樫よりも楢に近いとも聞き及んでいます。

緻密さは少ない様ですが、適度な硬さと滑らか過ぎない手触りだと感じました。使用される方向性的に、その割に水分には強そうですね。木目や色調的に、余り大き目のサイズよりは小振りな方が締まって見えそうなので、此方を№8にしました。

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オリーブ材は、先々には俎板としても視野に入れていた事も有り、楽しみにしていました。

だからと言う訳では無いですが、二本を購入しました。理由は後述しますが、材としてはオークよりも目が詰んでいて、硬さは僅かに柔らかいかなと。

面白い事に(予想はしていましたが)、微かにオリーブオイルの香りがしますね。本当に油分が多いかは不明ながら、此方も俎板に使われる位ですから、水分には強いでしょう。

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オリーブ材ハンドルの一本と、通常モデルの一本です。今回は、前者の刃体自体を厚みのムラ無く削り直し、刃先のみの研ぎで済ませた後者との比較用のペアとして、天然砥石館へのプレゼントとするつもりです。

同じステンレス鋼材、同じ刃先の処理(研ぎ方)で在っても、刃体自体に手を入れた物と新品のままでは、切れ込み・抜けに違いが有る事を体験できる、丁度良いサンプルに成ると考えての事です。

和包丁を二本用意して、其々の刃先の研ぎを同一にした上で、片方だけ切り刃を整えるのは、相当に面倒だろうとの御節介です(笑)。しかし、或る程度の幅と厚みを持つ刃物で、或る程度の厚みと抵抗を持つ対象を切り分けたりする場合には、付いて回る問題ですので。

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鋼材の硬度の設定が低目ですので、荒いペーパー(180番程度)から数段階(240・320・400番)を掛けて、1000・1500番まで進めました。

其の際、ネイルマーク周辺と其処から切っ先に向かう辺りが厚みの残存ポイントですので、集中して削り落とします。この際、ストレート部の刃先を薄くし過ぎがちなので要注意です。

オピネルの製品の厚みの不均等は、体感で上・中・下のバラツキが有るとの認識ですが、今回は中から上・上という二本でしたので差が少なかったです。

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前段階の完了で、殆ど目的は済んだ様な物ですが、刃先も手は抜けません。320番から丁寧に研いで行きますが、先ずは片側30°ずつの均等な小刃です。

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研磨力と平面維持に優れる1000番と、研磨痕が浅く平面維持に優れる1000番で、刃先に角度変化を。刃元は片側、30°で切っ先側は片側、25°に。

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3000番で更に正確且つ傷を浅く。刃元は片側35°で切っ先側は片側30°に。

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対馬で上記内容を踏襲。

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仕上げは中山の戸前、中硬で。

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最終仕上げは、水浅葱です。

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研ぎ上がりです。外観としては遠目には、大雑把に磨いてみた手抜き鏡面と完全なオリジナル初期状態にしか見えませんね。ただ、紙の束などに切り込んで見れば、切り進む際の軽さ・顎から切っ先までの手応えの変化の無さが際立ちます。刃先最先端の切れの良さに限れば、遜色ないのですが。

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現在ホームページ不調に付き、御面倒を御掛けしております。申し訳有りませんが、御問い合わせ等は下掲のアドレスから御願い致します。

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最近購入してみた洋包丁と手持ちの分

 

手伝い先で使おうと、二本の洋包丁を追加で購入しました。

作業場に用意されている主として野菜を対象とした包丁類は、ほぼ私が最低限、手の平サイズの砥石を持ち込んで研いで居る為、ホルモン類を対象として居る隣の部署からも借りに来る人が居る状況で。加えて、私の直ぐ後から入った方が隣に手伝いに行く際は、此方の包丁を持って行く事を勘案し、(一応は自分でも使う予定ですが)肉類対象の包丁を共有的に置いて置こうかと。

 

 

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先ずは一本目。購入前のネットでの説明には刃体に関してホローとの表示が有りましたが、現物が届いてみると言う程では無く。逆に頭の何処かで少し、ホローグラインドの洋包丁には興味が有ったりしたのですが(笑)。

其れよりも気に成ったのは所謂、筋引きとして扱われる内で如何なる刃体構造の物なのか?でした。恐らく、片刃の和包丁的に裏梳きが有る物は極少数だろうとは思って居ましたので、問題は「刃体の片側に一定の平・切り刃の境界が有る物」と、「刃体も小刃も両面均等に研削された実質は刃幅の狭い牛刀」の何方か?でした。

結果的には後者でしたが、製品自体の重量バランスや柔らか目ながら良く切れる刃の仕上がり、手頃な価格故に此れは此れで目的に適うと考え納得できます。24cmのオールステンレスとしては軽量な点も、女性の長時間の使用の想定からも安心です。

ただテールの筋を引く等の面では、明確な片刃寄りのほうが重宝するでしょうし、極端に柔らかくて脆い素材(茹でた肺とか)を薄切りにする際にも同様と思われますが、其の場合は先に用意したパンスライサー改筋引きっぽい包丁が役立つ事でしょう。(下画像下側、おまけに裏は若干ながらホロー状で裏梳きに近似)

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充分に薄く研削された刃体であり、小刃のみの調整で済む為、研ぎ始めは320番です。

小刃自体の角度は鋭角で広目にしたものの、ほぼ一定角度の割には幅に斑が出るのは、刃体自体の研削の際(出荷時の初期状態)に均等に成って居なかった箇所の反映でしょう。此れは新品時(研ぎ前の刃部のアップの画像参照)から見られましたが、幅を広く取る程に余計に目立つ傾向は已む無しです。右側の小刃は元々の約二倍、左側の小刃は元々の幅の半分程度の研ぎ方にしています。行く行くは、6:4から7:3に近い刃先の配分を予定しての事です。刃先の最先端は切っ先方向に向かって漸次、僅かに鋭角化しています。

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研磨力と滑走に優れる1000番と、平面維持と研削痕の浅いのが特徴の1000番で精度を上げつつ研ぎ目を消して行きます。

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天然に移行し、対馬砥石です。

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相性的に良さそうだと感じて、奥殿の天井巣板です。掛かりの良い切れ加減と、鋭利な刃先としては充分でしたが・・・思ったよりも組織が細かそうな鋼材と熱処理のバランスを考慮し、更に試します。

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中山の巣板層近辺(褶曲等で並びが複雑)の並砥から戸前っぽい物(中硬)で。より安定した刃先性能に仕上がりに成りましたが、尖った個性を求める向きには、優等生過ぎるかも知れません。

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研ぎ上がりです。何時も通り、小刃のみの研ぎは外観の変化に乏しいので、見た目が地味ですね。

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二本目は、本当に保険と云うか万が一の為で。半分は三徳との仕立ての違いを確認したかった面が大きいです。

作業場で準備されているステンレス三徳と、小振りな牛刀が相応しい業務(胡瓜とゼンマイの処理)が増えたので、誰かが使用中だったり特に大量のを急いで済ませる必要が生じた際、使う目的で購入しました(刃持ちが一段階上)。

トージローと藤寅は、実質的には同等で銘の違いだけらしいので、後者を選びました。因みに刃渡りは18cmの物です。

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下画像は、かなり前(十数年前)から使用中の17cm三徳で、刃幅の3~4割りの範囲で厚みを抜いて切っ先方向へのテーパー化が施してあります。

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二本を並べると、数値通りに牛刀の方が少々、長い事が分かります。

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しかし、顎の付近から刃体の厚みを比較すると、右側の牛刀の方が薄いですね。

此れは恐らく、牛刀の建前は肉切り・その他で問題無く使える事を目的として居り、料理人の使用(使い方を理解している)を想定している為でしょうか。対して三徳は、文字通り肉・魚・野菜を対象として広範に用いられ、使用者も一般人(無茶もしかねない?)を想定して居るので強度的に猶予を持たせているのかと思われます。

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上記内容が間違いで、たまたま厚みの取り方に誤差が有ったのでは無いと考える理由の一つは、下掲の比較結果です。

下画像は、同封されていた礼状によると2011年に送って貰った三徳です。刃渡りは16.5cmだったと思います。

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そして此方は、4~5年前に送って貰った牛刀、21cmです。

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長さでは牛刀(右側)が勝って居ながら、又しても左の三徳が厚いですね。やはり、モデル毎に厚みの仕様は考えられていて必要な分が研削されていると見るべきなのでしょう。勿論、同型モデルで長さが異なれば(牛刀同士のサイズ違い等)、長い程に刃元が厚く成る傾向は間違い無さそうですが。

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その意味で、積層モデル(下画像)と三層モデルで多少の違いが有る程度は、驚くに値しないかも知れません。そもそも、前者の方が薄目に感じたとしても購入時期が十年以上前であり、三層の方は不明(オークション品)ですので、製作時期の違いでは無いと言い切れない点も考慮する必要が有ります。

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画像下の上側が三層の牛刀

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こうして見て来ると先々には、藤寅の24cm筋引き等も如何なる構造か見て見た上で実用に供し、その個性や性能を確認してみたいですね(完全に趣味の世界)。画像や説明文からは21cmのカービングに比べ、より筋引きらしい形状の様に拝察出来ますので。

 

 

 

 

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