大阪市内の飲食店の方から御依頼

 

大阪市で、肉関係の店舗のS様から、筋引きを送って頂きました。御要望としては、形状の修正がメインとの事でしたので、刃線を整える事と並行して、刃体の厚みのチェックも行なう事に。

何故なら今回、刃線の修正の為には、相当に刃先の厚みが増すのが予想されるので、どうせなら(要望に含まれて居なくても)軽く厚みの調整も行なっておこうかと。

ただ届いた状態では、ハンドルのサイズと重量感に対して、刃体の(長さは兎も角)先寄りの刃幅が少ない印象でしたので、使用期間が数か月にしては減りが速い気がしました。御本人が新品時から研ぎ進めたのだとしたら、かなり熱心に手入れをされ、試行錯誤もされたのだろう事が伺えます。

 

 

 

研ぎ前の状態です。片刃(裏梳きは無し)の洋包丁として、切り刃的な研ぎが施されて居ます。刃線間際の薄さは、可成りな物ですので、切れに拘って研がれて居るのが拝察されます。

刃線の繫がりに関しては、御気にされて居る通り、緩いWの状態に近い形状に凹凸が見られます。

KIMG2785

 

刃体の幅の半分程度まで、切り刃状に研がれて居ますが、もしも此れが完全に平面に近い角度で為されている場合、そして刃先角度まで一定角で仕上げられて居れば、刃先の強度・耐摩耗性は最低限に成りそうです。

KIMG2786

 

裏(左側面)に付いては、ベタ研ぎ+角度を付けて研がれて居たそうですが、其処まで刃先に別角度が施された感は薄かったです。

KIMG2787

 

 

 

研ぎ始めは、ダイヤからです。刃線上の凸部を意識的に減らしながら凹部迄、揃えて行きます。右側面からのみ研ぎ進めると、左側に厚くて長い返りが延々と繋がって出て来るので、時々は角度を変えて返りを落としたり、左側面から砥石を当てたりします。

加えて、切っ先カーブ手前の側面の厚みが少々、気に成りましたので(右側面の傷消しをしつつ)切っ先へ向けて軽くテーパー化しておきます。

KIMG2789

KIMG2790

 

 

刃線際の厚みが増した部分を、小型のベルトサンダーで軽く撫でてから(執拗に追い込むと焼きが戻ったり、厚みの減り過ぎ・不均等が出て後々に問題に)、人造の荒砥で切り刃的に研いで行きます。左側は、返りを落とす程度に留めます。

KIMG2791

KIMG2792

 

 

320番で切り刃を正確に研ぎ進め、切っ先へ向けて僅かに鋭角化させます。

KIMG2793

 

KIMG2794

 

 

1000番で、より精度の高い切り刃とし、研磨痕を細かく。

KIMG2795

KIMG2796

 

 

3000番で、切り刃の開始地点を僅かになだらかに。刃先最先端は僅かに鈍角化。中間部分は、ほぼ平面に近いですが鋭角化。そして、此処で裏(左側面)もベタで軽く砥面にベタで当てて確認しつつ、形状を調整します。

KIMG2797

KIMG2798

 

 

 

天然に移行し、対馬を経て奥殿系統(天井巣板)で仕上げてみます。下りも早く、切れと外観も悪く無かったのですが、鋼材的に更に細かい砥石で仕上げる方が、より性能を引き出せそうでしたので。

KIMG2801

 

 

中山の硬口の巣板で仕上げ研ぎです。

KIMG2802

KIMG2803

 

 

念の為、水浅葱で最終仕上げとしましたが、予想通りに付いて来てくれたので良かったです(笑)。

KIMG2806

KIMG2812

 

 

 

研ぎ上がりです。初期状態よりも、切り刃幅は狭く成って居ますが、幅の中で切っ先方向へのテーパー化と、刃先から刃先最先端へ向けての鈍角化により、抵抗の低減と刃先強度の向上を企図しての形状です。

刃線の修正の前後も関わるものの、研ぎの前後で試し切り(紙の束やナイロン)を行なっての結果も確認済みです。

KIMG2813

 

とは言え、切り刃であった部分の全域(銘の手前まで)で、傷消し序でに厚みも少し減らしてある為、見た目ほどには大幅に変わって居ません。

KIMG2816

 

刃先拡大画像です。

Still_2025-10-17_231415_60.0X_N0007

 

裏(左側面)は殆どベタ研ぎですので、御自身で刃先最先端に糸引きが必要との御判断に成れば、相応しい仕様に変更を御願いします。

KIMG2823

 

 

 

S様には此の度、研ぎの御依頼を頂きまして有り難う御座いました。もしも御使用で問題など有りましたら、刃先に調整等の対応も可能ですので、御知らせ下さい。維持管理に関するご質問なども、メールやコメント欄まで御寄せ頂ければと思いますので、宜しく御願い致します。

 

 

 

現在、ホームページ不調の為、御面倒を御掛けして居ります。研ぎの御依頼・御問い合わせの方は、下記のアドレスから御願い致します。

togiyamurakami@gmail.com