カテゴリー別アーカイブ: 研ぎ講習

砥石の日のイベント

 

毎年、砥石の日は10月14日なので、イベントも当日と思われがちです。そうで無くとも、(日曜にズレると既知の人でも)14日の直近だと考える様です。実際には14日の前にも後ろにも、そして結構、離れた日付にも成ったりします。

私の知人にも何人か、22日以外だと認識していた人も居ますし、自分でも近年まで同じ感覚でした。其れ位、余り関係性が強くないと言うか、自らも出向く様に成るとは思って居なかった訳ですね。やや引き籠り気味、までは行かずとも、大勢が詰め掛けるであろう場所は苦手な方ですので。

しかし偶々、去年は御誘いを頂き、田中砥石のブースの手伝いをして来ました。其れが如何なる経緯を辿ったのか、今回は研ぎに関する講演をする事に成りました。直前まで、技術指導的な方向かと思って居たので、喋る役割だと発覚してからは幾分、困惑しつつも取り上げる項目を選んだり、その際に話す内容を纏めたりして行きました。

 

其れとは別に、話した内容を実証実験的に反映できる様、幾つかの刃物も研いで置きました。結果的には、用意した全てを見せたり切ったりに使えなかったのですが、実際に手にして試して貰った方々には、或る程度は楽しみつつ納得して頂けたのではと感じました。

 

下画像は、単に普段使いの包丁ですが私の研ぎ方の特徴が少しでも伝わるかなと・・・持参したのですが出す余裕が無かったですね(笑)。他の、出刃・ビクトリノックス・モーラで手一杯に。

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此方が其の、モーラです。何方も緩いハマグリ(切れ優先)に研いであった物を、片方はベタ研ぎ気味に・もう一方はハマグリを強めにして、差を体感できるかなと。

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二本目も

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さて当日は、13:00からの講演に合わせ、午前の遅めに到着しました。前回は裏の搬入口からでしたので、正面入り口は今回が初です。

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予想以上に広くて、複雑な構造でした。御蔭で中々にたどり着けず、予定より余計に到着が遅れてしまう事に。

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案内板に従って進みますが

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一階だと思って居た会場は、前回もそうですが、地下だったと。そう言えば、エレベーターに乗ったのだから一回な訳は無かったですね。

下りた所から進んで行くとリフォームに関する展示や、当日は関係する会場も。

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無事に到着です。

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砥石の画像は少々、ピンボケになってしまいましたが

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隣の研ぎ場では、来場者が熱心に研ぐ姿が見られました。

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手挽きの体験も継続で

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会場では、三重の松阪から来訪の理容師かずけんさんや、特に関東の採掘場の歴史などを研究されているチヨウさんと旧交を温めたり。近況を尋ねたり、砥石関連の情報を交換したり。

他にも、嘗て研ぎ講習を受けて頂いたH様と御会い出来、3~4年前に私がお出しした紅茶の御礼にと、下画像を頂戴しました。

当日は砥石の購入も考えて居るとの事でしたので、丁度?一つ残って居た小振りな水浅葱(超硬口+目の細かい)を薦めました。僅かな可能性ですが相性の如何は未確認ながら、砥石その物は剃刀用としては一級品なので、名倉なども含めて使いこなして頂ければと思います。頂いた紅茶も興味深く、感謝致します。

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チヨウさんからは、調査した資料を纏めた物と、現場を回って地元の方からの協力を得て、集めた砥石の内の一つを頂きました。いつも有り難く活用させて頂いて居ます。

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肝心の講演ですが、自己採点では何とか及第点かなと。如何せん老若男女のプロ・ベテラン・中級者・初心者・一般の方の混成と思しきグループ相手ですので、どの範囲に合わせて解説しても不満や不足が出ると考えて居ました。

そこで窮余の策として、包丁・ナイフの一般的な刃体形状をカタログ風に図示して並べ、刃の付け方の概論、研ぎの基礎・応用と其の効果を、体験を交えて語りました。また使用する俎板や切り方の適不適で、刃物の耐久力や研ぎ直す頻度は変わり、切る対象や使い手の好みでも研ぎ方を変える必要性にも言及。但し砥石の扱い方・手の位置・研ぐ方向などの実技面は、隣の本会場で実際の研ぎを指導されて居るので、其方でと。

更に、予定では合間合間で質問コーナーを設け、受け答えを交えて進行をとの想定にも関わらず反応は薄目、其の為、最後の余興?として並べかけていた横の机の上の刃物類と新分類を移動、試し切りの実演で間を持たせました。

最後には凡その予定通りに、興味を持ってくれた方々が演壇?の周りに集まってくれ、刃物を手に取ったりビニール・新聞の束を切って見たりしつつ、刃物談議に花を咲かせました。唯一、心残りだったのは其の中に、普段は包丁にシャープナーを掛けているが砥石なら如何なる物がと聞いて頂いた方。どんな不満が有るのか・包丁の状態の程度は・砥石の揃えられる数と予算は、と余りにも聞き出す事柄が多かったので、不満が出るまではシャープナーで済ませ、いざと成れば砥石に進めば良いのではと、答えるに留めた事です。

刃先の厚みが増し過ぎたり、欠け等の損耗が激しければ、粗砥から。そうで無くても中砥が必要。面直しにはダイヤモンド砥石。切れに拘るなら仕上げ砥(人造でも天然でも)の購入も視野に入ります。シャープナーからのステップアップとしては、最低でも中砥とダイヤを買えと勧めて良い物かどうか、思案のしどころでは有る訳です。加えて、鋼材や硬さによって選択する砥石の製造法・メーカーの特徴も考慮しなければ成りません。況してや相性の良い天然砥石の選別などに至っては、徒に推奨するのも憚られます。

生活の中で研ぎに割ける時間の多寡も関わって来ますので、其の方がこのブログを見て下されば、当時の私の苦悩も御理解いただけるのではと微かな期待をしてみたり。

 

 

 

田中さん達がブースを片付け始めた所で、最後まで並んでいた砥石が多い事に気付き、自分用に一つ選びました。実は会場に着いて早々、田中さんから村上も買わないか?と聞かれ、少し前にエネキーを止められた人間に言われてもな(笑)。と返したのですが(笑い事では無い)、講演の謝礼として幾許かの収入には成るだろうとの皮算用(何時ものドンブリ勘定)の下、コッパを差し出しました。まあ、結果的には田中さんから当日の御礼として頂戴してしまい、恐縮です。

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ほんの少し、ブースの片付けを手伝い下画像のタオル迄も頂き会場を後視したのでした。

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表通りでは、時代祭りの余波が未だ続いている雰囲気で、国内外からの観光客が三々五々、帰路に就く所の様でした。

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イベントでは、私の拙い説明にも関わらず、最後までご清聴を頂き有難う御座いました。之までの人生で縁の無かった、殆ど喋りだけの仕事でしたので、不調法も有ったと思われますが、大阪の人間としましては面白さの不足も合わせ、今後の課題として活かして行く所存です。

 

 

 

 

 

1対1での研ぎ方説明会

 

先週の土曜は急遽、田中砥石店まで出かけて来ました。此の二週間ほどの間に偶々、司作の包丁を断続的に注文して貰う事が続いたのですが、其の中に砥石の採掘を手伝っている方も含まれていました。

私の研ぎ方を含め色々と話す内、調理師学校で経験も御持ちとの事ですし、研ぎのバリエーションと其々の効果を理解して貰えれば、今後の御本人の役に立つばかりで無く、砥石の購入に来られた御客さんへの対応に活かす事で、顧客サービスにも繋がると考えました。

先ず準備として前日の金曜には、説明に使う小道具を入手する為に梅田まで買い出しに。元々の手持ちのナイフ類のみよりも、効率よく伝わるのを狙ってのサンプル追加です。

手持ちの№8カーボンに関しては、ブレード自体の厚みのムラ(刃線中央が薄い・カーブ周辺は厚い・刃元と切っ先は中庸)を削り、簡易的ながらテーパー化した上で刃先方向へもハマグリ化して有ります。

其の手持ちとの対比として、新入りの二本の内、カーボンの方は最低限の小刃を一定角度で付けます。ステンレスの方は幾分、広目の小刃を付けた上で、刃先へ向かって鈍角化ハマグリ+切っ先方向への鋭角化も。

 

 

 

オピネルの№8、カーボンとステンレスです。ステンレスの方は説明の最後にプレゼントするつもりの物で、カーボンの方は自分用の予備として。

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しかしステンレスモデルは購入時に店員の方が、入れる箱を間違えたんでしょう、紐付きのモデル用の箱に入って居ました。

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一目瞭然、現物は紐が付いていないタイプなので、余分な価格の上乗せを食らった事に成りましたが、急いで研ぎ、次の日には渡す予定でしたので置いて置きました(笑)。

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当然ですが鋼材が異なっても、基本的にブレードの形状は共通です。

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研ぎ前の状態、カーボンの方の刃部アップ。此の状態では、やはり刃先角度が不安定+荒い刃先なので研ぎ直しました。

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同じく、ステンレスの方。若干ですが、刃先の状態はマシな気がしました。試し切りでも僅かながら差が付きましたし。

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研ぎ始め、320番と1000番です。

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次に対馬砥です。

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八木の島の蓮華巣板、馬路の戸前で仕上げ研ぎ。

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最終仕上げは、中山の巣板(やや硬口)からの水浅葱です。

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研ぎ上がりです。

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カーボンの方、刃部のアップ。殆ど全て、オピネルのカーブ付近は右側面の方が厚みが勝っている様です。従って、小刃を同一角度で研いでも右側面にのみ小刃以外に砥面に接触する確率が高いと感じます。

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刃先拡大画像ですが、殆ど一定角度で単純な小刃付けとして居ます。

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同じく、ステンレスの方の刃部アップです。此方の方が幾らか、ブレード側面の厚みが不均等な研削だった様で、小刃の幅も不均等に成って居ます(或る程度は切っ先方向へ鋭角化したので徐々に広がって行くなら分かりますが)。

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刃先拡大画像です。此方は、小刃の幅の中で数段階を経て刃先に向かって鈍角化している等高線が見えます。

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そして、手持ちの№8です。ブレードは厚み調整後に鏡面化し、ハンドルはカシューで防水したりして有ります。

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刃部のアップ。刃先周辺の厚みは最も薄目ですが、より重要なのは刃元から切っ先方向に向かって、大まかにですがテーパー化して有る事です。此れに因り、引き切りの際に抵抗が軽減され、手応えは軽く成り、対象の切断面の乱れも減ります。

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刃先拡大画像です。上掲のステンレスの方と同様、刃先に向かって多段階の研ぎでハマグリ化が分かります。

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手伝いの方には店内で説明の後、此の三本による三種類の研ぎの違いを、実際に切り比べて体感して頂きました。新品に単純な小刃を付け直したのみでは、紙の数枚では苦にしない物の、量が多く成ったり捩って有ったりすると走りや抜けに抵抗が大きい。

小刃に漸次鋭角化・刃先に向けたハマグリ化の工夫がされていると、其の抵抗が少なくは成るが刃体(ブレード本体)自体の厚みの不均等による影響(切れ加減が一進一退)は残る。

刃体の形状から整えた上で、刃先の調整(漸次鋭角化・ハマグリ化)まで行なった物では、最も抵抗が少なく切れも良かったと、当然と言えば当然の結果に納得して頂きました。

 

 

 

序でに、もう少し広い切り刃状のベタ研ぎ・ハマグリ研ぎの差も実験すべく、モーラのナイフを用意したのですが、新品時から薄目の刃体+ベタ研ぎに近い刃付けですので、ハマグリ化の効果が感じ難かったですね。本来は多少なりとも、より広く取った切り刃の中で構造を変えるべきでしたが、新品時の幅を変えずに研いだので、切れ込んでからの僅かな進み具合の軽さを切っ先側の半分で実現した程度で。

此れは新聞の分厚い束を切り分けるなど、ハードな対象に限った結果でしたので、厳しい条件で無ければ違いも出ましたが、帰宅後に明確な差が出せるまで研ぎ直して置きました。

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ベタ気味+軽度の糸引き

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ハマグリ気味

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あと、最近に採掘された砥石の方も見て来ました。特段、カラス好きと迄は行かないのですが、硬さと細かさ・グレーの地肌に細身のカラスを気に入って購入。ただ、私よりもカラスに拘りの有る、ブログを通じた知人に送って見るのも良いかな?とも。

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下画像は、合いさとの事でしたが戸前・並砥の何方の特徴も含んでいる印象です。砥面の難は少なく形状も整って居り、砥石の御希望が有った場合に備えて置きましょうか。

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あと、不定形な小さ目を幾つかです。先ずは、完全に上掲の合いさと御仲間の細長五角形。どうも、此の形状はちょくちょく、出てくる気がしますね。

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多少、密と粗の組み合わせが目立つのと、砥面の硬さも程々かつ砥粒の細かさも中庸と感じさせながら、鏡面の仕上がりに。

刃先の緻密さと切れ加減は最上クラスと思われ、特筆すべきは裏押しへの適正です。水浅葱などの強情さを持つ浅葱系での裏押しと異なり、比べれば若干、刃物への追従性過多かと思われるも万全の仕上がりに。此れを知ると、上掲の砥石も自分用に・・・と云う気に成って来ます。

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本当に、手の平サイズの超硬口です。切っ先・刃先の部分調整用に持ち帰りました。

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同じ砥石から割られた相方と思しき方。

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少し薄い此方は、層割れの取っ掛かりが確認されましたので、小割りにするつもりで。超硬口の小割りは、そうで無い小割りより相性探しにシビアさが求められるので、機会を見付けて追加して行く必要が有ります。今後も合いさ・並砥・戸前の各系統のバラエティーも、追加して行きたい所です。

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そうそう、話の途中で田中さんとも合流でき、その際に以前から話が進んでいた砥石の日イベントのチラシを受け取れました。

イベントでは過去から、恒例の研ぎに関する講義を開催されて居ましたが、実技の方を分離して行なうに当たり、私に任が回って来た格好です。

去年は、田中さんの店のブースの手伝いをして居り、隣の研ぎ場で苦労している方へ簡単なアドバイスもしていた関係でしょうか。兎も角、流行らない研ぎ屋としましては砥石館イベントの合間にも、こうして御呼びが掛かるのは有難い事ですね。

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週末の研ぎ講習

 

一昨日は、以前にも遣り取りが有ったY様が研ぎ講習に御出で下さいました。関東に御住まいの折りには、中々に難しかったと思われますが、関西に移られるとの事で実現しました。

新たな人造砥石を含め、天然仕上げ砥石にも興味を持たれている現状、先ずは研ぎを見つめ直そうとの御様子でしたので、基本的な洋包丁の研ぎの実演と説明をさせて頂きました。(ブログ記事としては残念ながら、講習に成ると画像や拡大画像が少なく成ったり、失敗して使える物が少なく成りがちですが)

 

 

 

下画像は、特定のタイミングに限らず、研ぎの各段階(荒砥による大まかな修正段階・中砥による正確な刃付け段階・仕上げ砥による刃先の整形段階)毎に効果を体感して頂く為にテストして頂いている様子です。

勿論、私が実演した結果の刃先・御自身による研ぎの結果も双方、モバイル顕微鏡を用いての確認も併用しています。

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先ずは現状を拝見し、特に右側は切り刃状の研がれ方をしているものの、角度の変化が不安定な点、そして切っ先カーブ手前(其れ以外にも中央部点前にも)の厚みの残存が気に成りました。

実用の場面でも、例えばカボチャの切断時の引っ掛かりとして現れているとの事で、私の動きを参考にして頂くべく、上記両方の改善を目指しつつ研いでみました。刃元から切っ先へ向けて、鋭角化した小刃を付ける研ぎです。

中央部の厚み・カーブ手前の厚みを取るのは、やや広目の切り刃状に成って居る幅の、鎬寄り(峰側)半分程の範囲で修正し、刃先側半分で上記に如く、角度変化を実現します。

最も鋭角に(薄く広い切り刃に)成って居る刃元に合わせて研ぎ落すと、全体の肉厚が強度不足に成るだけでなく、刃先角度との兼ね合い次第で欠けが頻発するからです。万が一、刺身包丁的な使用に限るならば其れでも良かったのですが。

とは言え、御本人には一番重要な「角度一定で正確に研いだ小刃」を付けて貰う練習に専念して貰いました。私の(少々拘った)研ぎ方のベースが出来ていれば、刃先に一定の小刃を付けるだけでも走り・抜けの効果は持続しますので、御本人の練習と修正や高性能化を同時並行で可能な訳です。

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人造の320番、平面維持に優れつつ研ぎ傷が浅い物。

 

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人造の1000番、滑走良く研磨力もマズマズな物。

 

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人造の3000・6000番を経て、敷き内曇りです。

 

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最終は、中山の水浅葱(偶々ですが440との相性にも優れていました)で仕上げました。

 

 

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上画像も、各段階でテストして来た内容ですが、ラップに対しての切れ込み方・切り続ける際の容易さ共に、仕上げ砥に近付く程に向上する経験をして頂きました。当然ながら、新聞の束を捩った物に対する効果も同様です。

新聞の一枚⇒束⇒束を捩った物、の順に効果の違いが大きく成りますので、楽しんで頂けた様子でした。

 

 

Y様には先々、田中砥石店や天然砥石館で御一緒出来ればと話し合えたり、司作の包丁に付いても問い合わせを希望されたりしましたので、今後とも御役に立てましたら幸いです。此の度は雨の中、当方まで御足労を頂きまして有り難う御座いました。

 

 

 

 

 

久し振りの研ぎ講習

 

そこそこ以前から、神奈川のA様から研ぎ講習の御依頼を頂いて居ました。始まりは、長四郎挽きのコッパを御買い上げ頂いた流れで、その他の砥石の御購入も考えているとの事。(其れに合わせて砥石の選別は進めて来ました)

付いては仕事に纏わる出張で、大阪まで来られる機会が有る為、実際に現物を確認の上で購入したいし、使用目的である彫刻刀の研ぎも教えて欲しいとの御意向でした。

自分では、余り彫刻刀の系統の経験は多く無いのですが、御要望としての複合的な研ぎ(角度変化を伴う・ハマグリなど)に関してはアドバイスなりが出来るのではと御受けしました。

 

 

 

御自身は鎌倉彫りを習って居るのだが、ベタ研ぎでは木材からの抵抗が強いので改善出来ないかと思い至っての講習でしたが、初期から「短い刃渡り・狭い切り刃」の刃物よりはと、難易度が低目と思われるナイフから始めて貰いました。

鞘付きの、所謂果物ナイフでの研ぎと成りますが、先ずは(余り切れない初期状態から)私が人造荒砥320番を用いて同一刃角・同一小刃幅の研ぎを行ない、その切れを確認。続いて砥石は変えないままで角度変化(切っ先へ向かって鋭角化・小刃の幅も漸次拡幅化)を付け、再び切れを確認して貰いました。

砥石は変えて居ないので、純粋に研ぎ方のみの変更による切れ加減の差が、大幅に異なる現象に驚かれた様子でしたので、其れを踏まえて実地に研ぎ指導へ移行しました。(画像は、人造中砥石を経て人造仕上げ砥石の段階。今回、初めて実践投入の新型です。ビトリファイドで6000番は珍しいそうですね。)

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勿論、切れが落ちていた初期状態・私が研いだ状態・御自身に研いで貰った状態の各段階を、パソコンに繋いだモバイル顕微鏡の画像も活用して説明し、理解を深めつつの進行でしたが形状の変化・変化に因る狙いを即座に感得されたのは驚きでした。

しかしながら、ブログ上で何度か詳細にも解説して来た私の(実用的なオリジナルの)研ぎ方、此れを把握し切れて居なかったとのコメントを頂くに及んで、聊か以上にショックを受けました(笑)。まあ確かに複雑な工程を組み合わせて形成する形状ですので、自分でも止むを得ないとの思いは有りましたが。それでも真面目にブログを読んでいる、理解力に優れる方でさえも分かり難いのは、偏に伝え方の拙さによる所が大なのでしょう。

 

 

 

引き続き、主たる目的である彫刻刀、特に薙刀型の研ぎです。初期状態でも、そこそこ切れると感じましたが詳細に観察すると、裏押しが刃先まで届いていない・或いは不十分な平面で極僅かに角度が付いている様子。中でも切っ先は、特に裏押しの効果が期待し難い程の別角度に成って居ました。

 

表の切り刃の研ぎと並行して、(普通は行わない)裏押しも粗砥320番で或る程度、砥ぎ下ろします。表は刃線の一部(切っ先手前)が凸に成っても居ましたので、其れを軽減する狙いも込めての工程です。

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狙いの達成まで半分程度、進んだので御自身でも研いで貰います。途中で気付いたのですが、左利き用でしたね(笑)。研ぎ始めても違和感が無かったのは、両刃の刃物を右は右手・左は左手で研ぐからでしょう。

刃物自体、峰側の厚みが上回って居るので、切っ先へ向かって厚みが増す構造ですね。抜けが良くなる為には切っ先へ向かう程に、より厚みを抜く(鋭角にする)必要が有ります。

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表は、試行錯誤しつつ目的の形状に近付いていますが

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裏を見ると、あたかも小刃が付いているかの様に別角度の状態

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表を研ぎ進めつつ、裏も結構な頻度で研ぎますが

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刃先までツライチには成り切れず

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荒砥・中砥での再研磨を挟み、頃合いかと天然での仕上げ研ぎ

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外観の綺麗さまでは手が回らないものの、切れる形状には近付いて来ました。

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どうやら焼きの加減が柔らか目である所為か、刃先にヨレが出易い印象も。其処で砥石の方を極力、硬口で纏めようかと浅葱系統で。結果的には此れが奏功し、完全では有りませんが刃先が整って来ました。少なくとも、全体的に均一化には成功。

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A様は普段使いのルーペも持ち込みで取り組まれましたが、御自宅ではモバイル顕微鏡も併用の由、想像以上に研ぎには拘って来られた事が伺い知れます。

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小振りな浅葱、4種類ほどで反応を見つつ研ぎ進め、可能な限りは追い込んで見ました。

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研ぎ上がりのチェックは、肉眼での光の反射・顕微鏡での拡大画像で殆ど確実に把握は出来ますが、最後に肝心の試し切りをクリアしなければ画竜点睛を欠きますね。

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中硬の巣板仕上げ・硬口の巣板仕上げ・浅葱仕上げの各段階で、試し削りを行なわれましたが最後の仕上がりが最も、切れ・手応えの軽さ・材の艶に優れるとの事でした。

材の種類や刃物の個性に由っては、最終仕上げに最適な砥石が変更に成る可能性も有りますが、当日のテストでは硬く細かい砥石である程に性能の向上が見られました。

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あと、A様からは水のPHを測れる様にと画像の物を頂戴しました。特に夏場の水道水に含まれる塩素が炭素鋼に与える影響を危惧する旨の記載をした、過去のブログ記事を気に留めて頂いて居たとの事で。加えて、研ぎの際に使用するアルカリに傾けた水のアルカリ加減にも注意しろとの親切に感謝です。確かに、過去には強過ぎるアルカリで皮膚を傷めた経緯も(笑)。

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早速に試してみましたが現在、多用している割合では弱アルカリとの判定が出ました。普段は此のレベルでの使用が多く、特別に用心する場合は1.5倍にしています。悪くない加減かなと・・・。

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おまけに、ブログの内容から甘い物が好きそうだと予想され、御菓子も頂きました。過去に食した事が無さそうな物で、有り難う御座います。抹茶風味も良かったですが、本体の生地との相性的に、より小倉風味が馴染んでいる気がしました。

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A様には遠い所を御足労頂き、有り難う御座いました。砥石も御購入の上、御土産まで頂き感謝に堪えません。ただ、私の研ぎ方は実直と言えば聞こえは良いですが、只々目的に向かって地道な作業を繰り返すのみとの方法論であるので、大変だったかと思われます。

会話でも出ましたが以前の記事での記載通り、小刀等の表裏を平面にする為の苦労、その一旦なりとも共有出来たとも言えますが、身に染みて懲りられたのではと危惧もして居ります(笑)。

新たな砥石の発見と選別は続けて行きますので、今後も研ぎ・砥石関連で御役に立てそうな場合は、宜しく御願い致します。

 

 

 

 

 

追加のワークショップ

 

前回の「まちのえんがわ」のワークショップでは、コロナ関係で予定が延びた為、予定が狂って参加が不可に成った方も。他に、後からの参加希望の方も含めて対応する為に再度、開催されました。

 

今回は作業場を御借りするのでは無く、木村様の御自宅のキッチンを使わせて頂ける事に。そして参加人数も、2~3人の予定から6人に増えた事で、途中からはホームパーティーみたいな様相に。

 

 

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かなり大きなアイランド型ですね。

 

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その横にもスペースが有るので、ソーシャルディスタンスが可能。

 

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説明後、実際に研いで貰います。

 

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経験者の方が多そうでしたが、改めて説明通りに、となるとバラツキも。

 

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途中で何度か、チェックしつつ研ぎの不足を手助けして回ります。

 

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休憩を挟むように御気遣い下さいました。美味しい珈琲と御茶請けを頂きます。

 

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ステンレス包丁同士で、粗と仕上げ・天然仕上げの差を体感して貰ったり。

 

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難易度高目の野菜の切り方をアドバイスしたりもしました。

 

 

 

此の度も、木村工務店の「まちのえんがわ」を通して、熱心な方々に研ぎの説明を聞いて頂けた事を嬉しく思いました。予想以上に興味を持って頂けた様子にて、今後の調理に幾許かの寄与が見込めましたら幸甚です。

木村様と御家族、スタッフの皆様と御参加下さった六名の方々に感謝致します。有難う御座いました。今後も需要が有りましたら、宜しく御願い致します。

 

 

 

 

 

砥石館での研ぎ講習

 

この前の日曜は、久し振りに砥石館で研ぎ講習でした。

 

 

 

それにしても砥石館の装備の充実度合いは、留まる所を知らない様で・・・簡易的ながら、切れ味試験機が。

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ナイロン?でしょうか、糸を切断する際に必要な荷重を測定する事で判定。元は剃刀のテスト用だったらしいですが。

剃刀的には、数十グラムが基本の様ですが、包丁類では200を切ればマズマズな感じです。強度・永切れを考慮するならば、170を切るか否かが分かれ目な印象でした。

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羽布やグラインダーの他、湿式の砥石切断機(びしょ濡れになる)も二台、設置されていました。

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研ぎ講習は地元、亀岡に在住の方からの御依頼で、和包丁を対象とした内容に。しかし先ずは、御持参の中から筋引きをお借りして、現状の把握と刃先の研ぎを進める際のポイントを説明する事に。

現物の包丁画像は撮り忘れましたが、刃先の最先端まで安定して研ぎ目が届いていない部分を指摘し、一定の角度で安定して研ぐ必要性を説きました。

其の証拠?として、三段階ほど角度を変えて顎から切っ先まで均一な線を入れて見せました。元の状態で気に成っていた、刃線中央やや切っ先寄りの微細な荒れも消退したので、使い勝手も改善される事と思います。

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さて本命の和包丁ですが、薄刃の新品は手強そうとの共通認識から、柳を選択。

二本を御持ちでしたが、より状態の整って居ない方を俎上に載せました。御自身に研いで貰う事に先行して、私が歪みを少し減らしてから、切り刃中央に残る厚みを取りつつ、裏を少しづつ研ぎ進めました。

其の後、切り刃の研ぎ方・刃先の研ぎ方の基本的な所を実践して頂きました。

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研いでは、其々の段階で拡大画像にて御確認。

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切り刃も整い、刃先の研ぎもマズマズと成った時点で、切れの確認も。片刃のテストは、若干ですが難易度高目みたいです。

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おまけとして?、研ぐ際のブレも実感して貰う為にセンサー付きで。此方も、意外と楽しんで頂けた様で何よりでした。

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最後は、御土産に頂戴した最中。丹波大納言として有名な小豆の中でも、大きさで有名な馬路大納言を使用との事。変な混ぜ物も無い、すっきりとした甘みで美味かったです。

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H様には、研ぎ講習の御依頼を頂きまして、有難う御座いました。最中まで頂き恐縮です。砥石・研ぎ関連に付きまして、御不明な点が有りましたら御遠慮なく御問い合わせ下さい。今後も宜しくお願い致します。

 

 

 

 

 

今日は自宅で研ぎ講習を

 

ワークショップを終えて間を置かず、本日は兵庫県のフレンチレストランの方が拙宅まで御足労下さいました。現在、御使いの包丁の性能を引き出したいが、疑問点なども有って改善策を求めていらっしゃるとの御依頼でした。

 

 

研ぎ方・使用砥石も関わって来るとは思いますが、特に返りの処理に纏わる事柄に御興味が。(条件・道具で多様な結果になる)その為もあって説明が多目に成り画像が少なかったのですが、初期状態の刃先拡大画像です。砥石は中砥・仕上げ二種を御使い乍ら、偶にスチール棒も併用と。荒い研ぎ目は、その際の物でしょう。当て方は、適切そうに見えます。

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先ず全体を拝見した所、少なからず刃線に不均等(刃渡りの切っ先寄り半分・刃元寄り半分の摩耗差)が有る他は、刃角度が作業内容に適切な状態なのか判然としない?印象程度。まあ、切っ先の小さな欠けは有りましたので、其方を対処(ダイヤ砥石)してから軽く刃線を整えつつ若干、小刃の幅を鋭角にして広げます(人造400番)。

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其の後、1000番の二種と3000番で見本を示しつつ説明、実地で試して貰います。合間には適切に角度・形状修正も加えながら。

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人造3000番の後は、中硬の巣板⇒やや硬口の砥前系統や奥殿の硬口巣板。

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慣れない左手での研ぎを強要(笑)したのですが、キッチリ練習の成果が時間内に現れました。一応、最後は修正して置きましたが是非とも研鑽を続けて欲しいと思います。

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右側は当然、其れよりは練度が高かったのですが矢張り、修正を。練習の段階としては、私の通常仕上げ迄は達しなかったのですが(当たり前とも言えます)、実用してみて従来の御自身の研ぎと比べて貰おうと。

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今回、御持ちの包丁は、確かに返りの処理が容易なタイプとは言い難い物でした。熱処理の仕立てが、やや粘りを重視した感じと言うか、返りが出易く取るのには工夫が要ると。研ぐ際の注意点と使用砥石の選択方法など、私に出来る限りのアドバイスをさせて頂きました。

顔合わせから何故か、マニアックな内容が相応しいとの予感がしたので?話が長くなってしまったのですが・・・余り嫌がらず御聞き下さったので、難易度も気にせず一気呵成な説明に。O様には、此れに懲りて居られなければ御気軽に御質問などを御願いしたいと思いますので、宜しくお願い致します。此の度は研ぎ講習の御依頼、有難う御座いました。講習の内容を、今後にお役立て頂けましたら幸いです。

 

 

 

 

 

地元でのワークショップ

 

先の日曜は、初めて地元(少し離れていますが)でワークショップを行なう機会を得ました。定期的にワークショップを開催して来た実績のある、木村工務店の企画「まちのえんがわ」からの御誘いを受けていたのですが・・・イベント等の自粛期間に跨ってしまい、延期となっていました。

 

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普段から、地域の共有スペース的に解放されている一区画。

 

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隣接する、作業所・加工場などに充てられている場所を流用しての開催です。

 

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入り口付近

 

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各自で実際に砥いで貰う前に、軽く説明するスペース

 

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午前は四人、午後からは八人の受講者に参加を頂きました。其の中には、私の実家(食堂)の近所に位置していた、餅や菓子の店舗の方も。子供の頃にみたらし団子など買いに行っていましたし、実家では正月に長細い木箱に二杯の餅を届けて貰っていた記憶が。三十年振りとかに成るのでしょうか、懐かしかったです。

 

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オピネル(フランスの折り畳みナイフ)を御持参の方も二人ほど

 

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御手持ちの包丁も、多くの方は複数を持ち込みで。上画像の砥石は、キングの1200と共に月山さんに送って貰った希少な物です。砥石を御持参の方以外には、それらを事前に購入して頂いていました。

 

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牛刀などの洋包丁だけでなく、両刃ながら和包丁も。

 

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此方も同じく。但し、菜切りと言うよりは両刃の薄刃と言った風情?二種類の和包丁は、洋包丁と違って切り刃の刃先側に半分弱を含んで砥いで貰いました。その後に改めて、刃先の調整。

 

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何れの方も作業途中から、研ぎの進捗をモバイル顕微鏡で確認しつつ進めました。私の説明内容が目視で理解できると好評で、私物のパソコンごと持ち込んで正解でした。

 

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研ぎ上がると、切れの確認です。一般に出回っている野菜各種で試し切り。一様に、切れの向上具合に驚いて貰えた様子。

 

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序でに、炭素鋼のペティ+天然仕上げ砥・ステンレスペティ+天然仕上げ砥・ステンレスペティ+人造仕上げ砥の三種で切った野菜の味覚テスト。今回は意外とバラつき、ステンレスペティ+天然仕上げ砥も高評価。しかし炭素鋼ペティで切った後で、ステンレスペティに接触させたトマトは、接触無しと比べて全滅の評価となりました。やはり此処は、違いが明確に成りますね。

 

 

今回は、場所の提供から希望者の募集など、多岐に渡って「まちのえんがわ」チームの方々には御世話に成りました。コロナ自粛後のワークショップ再開一号として、相応しい内容・顧客満足度だったかは聊か不安も有りますが・・・参加された方々が帰路に就く際に見せてくれた表情からは、悪く無かった印象を受けました。兎にも角にも今回、見知らぬ講師であったにも拘らず、受講下さった皆さんには感謝致します。今後の包丁の運用に、お役立て頂ければ幸いです。

 

 

 

 

 

試しに送って貰った人造砥石

 

数か月前ですが自宅からは幾分、離れているものの地元で様々なワークショップを開催されて来た会社の方から、研ぎ講習の声をかけて頂きました。予定している来月末に向けて打ち合わせ等を進めていた所、使用する砥石に関する問題が。余りに初心者向けの安価な物では、直ぐに摩耗したり(慣れない人には)サイズが不足な印象が。

刃物店の知人に相談した所、最近の人造砥石の傾向と言うか変更点などと共に、開発中の砥石が近日仕上がるので試してみるか?との事。それが届きましたので即日、試してみました。

 

 

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水分を吸収させ(未だ不足気味でしたが)、隅々に有る若干のバリの除去・平面向上を狙い、ダイヤで摺ったらテストです。

 

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相手は普段使いに一番、活躍中でもある試し研ぎ兼用の切り出し(そう言えば此方も同じ刃物店での購入)。研ぎ前の状態ですが、通常は最終に若狭の切り落としで仕上げています。

 

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外観の印象からは、キングハイパーに近いのかと思って居ましたが中々、確りしています。どちらかと言えば面の狂いが遅い方向性を狙った設計なのでしょう。

研磨力が有る上に硬目、という事で研ぎ目は浅くは無いですが、研承の緑の1000番よりは均一で控え目。ガンガン減らしたい時は前者を選択、それ程で無ければ此方で・・・との使い方が浮かびます。

 

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奥殿の巣板の切れっ端で傷を浅く

 

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中庸の戸前系(合いさ気味?)で更に

 

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八枚の切れっ端で追い込み

 

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中山の切れっ端で仕上げ。かなり前に採って来ていた物を最近、ハツって面を付けました。

 

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充分な仕上がりでしたが、通常の状態に戻す為に若狭の切り落としで最終仕上げ。

上のテストでは、何時も通りに天然砥石で段階的に仕上げて行きましたが、予定している講習では一般人の洋包丁向けの設定ですので、人造の仕上げ砥(研承の緑3000とか6000辺り)を併用するつもりです。

一応、天然も数個は持参の予定ですが、上画像までの様に不定形だったり砥面が底面と平行で無かったりは有りませんので御安心を(笑)。自分では性能が良ければ気にせず使っていますが(特に自前の刃物)、流石に初心者が大半と合っては直方体メインの品揃えで臨みます。

 

 

 

今回の人造砥石は、平面の刃物よりも包丁の刃金の厚みを狙う意図を明確に開発されたそうですが、普遍的な使い勝手も持ち合わせていて好感が持てました。少なくとも私の手持ちの中では性格が被っている物は無く、研ぎ講習云々は置いておいても幾つか手元に・・・との思いが。

仕上げ砥を使うのが前提との事で、その部分は(一般的な製品と比べれば)割り切った設計思想とも言えますが、単独の使用でも普通の人が普通に使う分には問題とは感じないかも知れません。研ぎの最後で圧力の加減や左右の合わせは必須でしょうけれど。

ただ話によると販売用と言うよりは、自身での使用・講習用らしいので、今回の当方の予定が確定したら少量だけ譲って貰えればと考えています。

 

 

 

 

 

今日の講習 柳などを御持参

 

昨日の昼過ぎに、偶々ですが私の出られるタイミングで電話が。講習の問い合わせで、明日か明後日に希望との事。何とか双方の時間や予定をを繰り合わせて本日の午後、受講して頂きました。

九州に在住ですが、大阪に里帰りでしたかM様は、柳二本と出刃を御持参で。切れの説明と実演をしていると、研ぐ前と後で刺身を切って見たいなと。此れ又、偶々ですが天然のハマチの柵が有ったので切って貰う所から始めました。

 

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研ぎ前の状態。左は、玄海さんの河豚引きだそうで。右の柳も、恐らく作者は同一ではと。此方は結構研ぎ減って居り、練習用にしているそうです。

右上に見切れているのは、私の18cm正夫で状態の悪いのを直し直し使っている物です。

 

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刃先拡大画像。ほぼベタに糸引きですが、角度にブレが見られます。加えて、切り刃の厚みにも不均等が。河豚引きには切っ先カーブ手前にS字状と云うべきか、凸部が二か所と間に凹。柳はカーブ辺りに緩やかな盛り上がりと言った所。

 

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その所為も有って、私の正夫(短い上に鈍角)に比べて刃渡り・鋭利さで有利な筈の河豚引き・柳ともに切れが鈍く感じたと。加えて、切っ先周辺の切れに格段の違いが有り衝撃とも。

 

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上画像が、私の正夫。30年以上前に、初めて和包丁を買って見た物で、可成り安価でした。刃体の精度も甘く、焼きも甘いので常に修正研ぎが必要+鈍角仕上げで無いと刃先が捲れる始末。

但し現在は、適した研ぎ・砥石により、目の前で荒っぽく氷を削ってから紙を切って御覧に入れた通りの性能を発揮しています。

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M様にとっては客観的な情報や、既成概念から予見される結果と異なる体験に、悔しくも有り興味深くも有りとの事。一概に、薄く鋭利にしさえすれば切れる訳では無いとの事前説明に、納得の様子。

 

 

 

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私が研ぎの説明と凹凸の均し方を例示をした後、御自身でも切り刃を整える研ぎを実践。敢えて残存させた痕跡を仕上げて貰いました。

切り刃の後は、糸引きでの角度維持や砥石の使いこなしも。思っていたよりも安定していないと御理解して頂く為に、拡大画像も併用しながら練習。

徐々に刃先も揃って来ましたが、意図せぬ多段階の当たり方を払拭するのは今後の精進を期待ですね。以下の画像は、私の修正研ぎも含んだ刃先です。

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河豚引きの方が、若干ですが鋼の状態が良い様子。紙を切るテストでも良好だった様に見受けました。

 

 

 

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研ぎ後です。切り刃の厚み調整と、刃先の糸引きの状態も先ず先ずに。

 

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折角なので、少し比較実験を。切れで河豚引きに劣る筈の、研ぎ減りして刃幅狭く切り刃鈍角の柳ですが、刃先の調整だけで河豚引きに迫る切れが出せるのか?刃元から切っ先へ向けて角度変化を加えます。元は、45度の一律でしたが可変に。更に、刃先から少し後方もなだらかに切り刃に繋ぎます。結果は、遜色ない切れ・・・と言うより刃の入り・抜けが良く手応えが軽いと。双方、講習前より格段に改善されているのは同様ですが。

しかし総合的な評価では、複雑な研ぎを駆使し最も多機能を盛り込んだ私の正夫が際立って居り、その値段分を鑑みるに(私のは数千円でしたから数十倍になりますね)大差が付く筈の性能差を、逆転させる事が砥石と研ぎで可能だと御理解頂けました。

 

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M様には、自宅まで御越し下さり有難う御座いました。少し想像以上の内容で複雑な心境に成られたかも知れませんが、本来の仕立てや成り立ちでは御持ちの包丁の方が圧倒的なアドバンテージが有りますので、じっくりと安定した研ぎを心掛けて頂ければ納得の性能を見せてくれる筈です。

練習に当たっての御質問なども御待ちして居りますし、今後も御役に立てる様でしたら宜しくお願い致します。