カテゴリー別アーカイブ: 研ぎ講習

先週の砥石館イベント

 

先週末は、亀岡にある天然砥石館のイベントに参加していました。イベントは土曜と日曜に渡っていて、肥後守を刀剣風に仕上げる一日目、砥石の目利き講座とハマグリ研ぎ講習の二日目でしたが、その内容の全てに申し込まれている方も居られ、その熱意に驚かされました。

 

 

(館内には新し設えも増えていました。)

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一日目の肥後守の研ぎからですが、意外と研ぎ自体が初めてと言う方もいらっしゃったので適宜、説明や形状の修正も加えながら進んで行きました。

基本的には人造の400番あたりからのスタートで、次に1000番を経て青砥、中硬の巣板(相当の合砥)の順に移行します。

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青砥も個体ごとに個性が有る為、相応に使い勝手も異なり、幾分は手こずる場面も。硬さ・泥の出方・滑走の程度がマチマチで、目的に応じて選択出来たりを楽しめるとも言えますが。

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最後は巣板です。

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仕上げに、天井巣板(奥殿産)の小割りを用いて、化粧研ぎです。より、地金部分の曇りを強調したり、研ぎ目を細かく揃えて綺麗に。

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二日目の前半の砥石の目利き講座ですが、事前の打ち合わせで私の砥石選びに於ける、選別の基準となる見解を砥石館側と共有しました。イベント進行用の簡易な分類表を作る場面から、白熱した議論も交えつつ大枠での指標が完成。

 

現館長と前館長も熱が入る打ち合わせ時の画像

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当日は、田中館長の仕入れた砥石と、下画像の私が持ち込んだ砥石を三つの分類に分けて並べました。其々、イメージが伝わり易い様に簡略に、サラサラ・スベスベ・ツルツルと呼んでいます。

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私自身が普段使っている砥石から、三つの代表的な物を俎上に上げて研ぎ跡を観察し、確認して貰う手筈だったのですが。地金が過敏に反応して研ぎ斑が出易いタイプ・少し敏感なタイプ・敏感で無いタイプの切り出しを用意し、その過敏な切り出しと難渋しそうな砥石達との組み合わせで挑んだにも関わらず、何れも問題無く仕上がってしまいました(笑)。

砥石選別に影響する要素の一つに上げていた、「研ぎ手の技量」が悪い方?に作用した形でしたが、参加者のY様の砥石が登場したので御本人の刳り小刀を試し研ぎ。見事、砥ぎ難いと言われた当該砥石で問題無く仕上げられ、申し訳無いですが持ち主との研ぎ上がりの差で御理解いただけたと思います。

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面白かったのは、と言うより新たな気付きを与えて貰う出来事も有りました。上記のY様(地元の生産者の自家消費分っぽい物や、鰹節の部位別などの御土産も御持参でした)が、御自身のポータブル顕微鏡で砥面を覗くと、私が分類した三種に一定の差が見られると教えてくれました。

自分では、指先の感覚で相当にハッキリ触知できる事・過去に見た拡大画像(低倍率のルーペ・200倍相当のモバイル顕微鏡)では余り判然としなかった事から、選別時に目視を重視して来ませんでした。けれど、今回は100倍前後の倍率が最適だった様で、砥粒の集まりの密と粗・先端の尖り具合・高低差が、かなり明瞭に比較できました。

そのポータブル顕微鏡ですか?勿論、帰宅後にAmazonから購入しました(笑)。御本人は以前、とても格安で購入との事でしたが、当日に複数人が検索・購入したからか相当、価格が上がって居ましたが・・・其れでも安価でしたので予備を含めて二つ。

 

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本体にはLED内蔵ですが、スマホのカメラを通すと白く飛ぶ為、側面から別の光源を当てて撮影しました。肉眼では、内臓の光源との相性が良いのか観察し易くて便利です。

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二日目の後半、ハマグリ研ぎ講習でも、Y様の装備が活躍しました。元々、砥石館で用意されていた、XYZ軸からの角度変化の其々を、リアルタイムでパソコン画面上に表示出来る機材の後継機種の様でした。

他の方は、砥石館の物を使って御自身の手振れのチェックに挑まれたり。

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中には、プラスチック素材に鉋を掛ける作業をされて居る方も。切れと永切れの両立を図りたいとの事で御参加でした。

此方には、(切れ優先の本体のハマグリは措いて置き)刃先ハマグリとしての多段研ぎ、つまり最先端へ向かうに連れて急激に鈍角に、且つ面積を狭く研ぎ進める研ぎ方を試して頂きました。

研ぎ上げた鉋の刃先を拡大してみれば、正に言葉通りの仕上がりに成って居り、驚きました。言われて直ぐに実現可能な難易度では無いと思って居ましたので(笑)。しかし同時に、安定した研ぎが出来る方にとっては、理屈通りに操作すれば別段、不思議では無いだろうとも。

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流石に、普段に相手にしている素材は御持参では無かった為、代替として檜の肌を確認されると、過去に例の無い位に鈍角に研いだ差は気にも関わらず、マズマズの艶を保っていた様子で、効果を実感して頂けたと思われます。

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あと、各種包丁類で切れのテストには新聞の束や、其れを捩った物・サランラップの芯を用いて確認しました。

どんどん手強い対象を相手にして行くと、抜けの軽さが重要に成って来るので、刃先の処理だけでは足りず、刃体本体の仕立ても問われる事に成るのが分かって頂けたと思います。

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土・日の各イベントに御参加下さった皆様には、有難う御座いました。

あと、今回は参加されないと認識していたのですが、直前に御参加を決定されて当日に対面を果たしたM様には、別れ際に失礼しました。意識から若干、離れてしまって居たので「出来上がったら連絡を」との御言葉に対して咄嗟に「先輩からは四月中に完成の予定との文面が」と答え損なってしまいました。そんな訳で、もう暫しの御待ちを御願い致します。

 

 

 

 

 

最近の事(近所の方への研ぎ講習や御返送の柳)

 

手伝い先の方(一応、担当部署は隣ですが御一緒する事も)の包丁を、仕事場で名刺大の砥石にて簡単に刃先調整した所、その性能から興味を持たれた様子で・・・早速、研ぎ講習を依頼されました。

砥石での研ぎは初めてとの事でしたので、完全に壱からの説明と動作の見本を示し、試し切りで切れを確認しつつ、その結果を拡大画像から推測する流れで進めました。

御持参の18cmと21cmの牛刀で其々、紙一枚・紙の束・捩った紙の束・サランラップの芯も使い、切れと切れの軽さを比較しつつ、320番⇒1000番⇒対馬⇒丸尾山の巣板⇒中山の順で仕上げました。勿論、各工程で私が研ぎ直しを加えながら。

取り敢えず、切れと永切れ・抵抗の低減を企図して、初期状態の小刃より少し鋭角に研ぎ直し。その後、刃先に鈍角目の糸引きを入れ、逆に小刃の開始部分の凸部に対しては、鋭角目に(寝かせて)砥石を当てて貰いました。

 

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工程を経る毎に、切れの滑らかさと鋭利さが増すだけでなく、抜けや走りの軽さ(側面抵抗の低減)を実感して貰えました。此の先も、自主練で研ぎの向上を目指して頂ければと思います。

 

 

 

 

後、先日に研ぎ上げて御返送済みの柳に付いてですが、結果を知る事が出来ました。現地に集まった其々、研ぎ済みの包丁(同一鍛冶屋・同一寸法での比較も有った由、レギュレーション?)による対決で、優秀な成績だったと。

と言っても、他の殆どはベタに糸引きだったそうですので、二種類のハマグリ(+切っ先への角度変化)を盛り込んだ私の研ぎ方は、もしかすると反則と言うかレギュレーション違反に問われる可能性も(笑)。まあ当然、現実には制限など有る訳も無いのですが。

しかし此れは、例えばボクシングや柔道のテクニックのみで総合格闘技の大会に出場するが如きで、客観的に不利と言わざるを得ないでしょう。評価が「切れ・永切れ・掛かり・走り・抜け」の各項目を問われる内容であるなら、ベタ研ぎ乃至はベタに糸引きでは刃先の強度に不安が出たり、段差による抵抗・側面抵抗の不可避が付き纏うからです。まあ仮に、世間一般でハマグリと認識される研ぎ方であっても、効果的な形状や計算通りの角度変化で無ければ、期待外れと成りますが。

従って今回、私の研ぎが他の全てと一線を画す評価に成ったとしても殊更、驚くに値しない事に成ります。審査項目に最も合致した方法論が、其の儘の結果に結び付いたに過ぎないからです。しかし乍ら巷間、特に最近に散見される尤もらしい言説、「ハマグリ研ぎにはデメリットが多い」に与する方々には、再検討を願いたい所です。少なくとも、何処の誰のハマグリ研ぎも同じでは無い、と言う当然の事実から目を背ける事無く向き合って頂けましたら幸甚です。(因みに大阪サミットでしたか、あれが有った際にも同様の試し切りが行われたそうですが、今回と同様の結果だったと聞き及んでいます)

 

ハマグリはロマン???私にとっては、実用一点張りですね。

 

 

 

 

現在、ホームページ不調の為、御面倒を御掛けして居ります。研ぎの御依頼・御問い合わせの方は、下記のアドレスから御願い致します。

togiyamurakami@gmail.com

 

 

 

 

 

名古屋のM様が、再度の研ぎ講習に

 

砥石館でのハマグリ研ぎイベントに御参加下さった後、私の自宅にて研ぎ講習を受けられたM様が、再び研ぎ講習に御出で下さいました。

事前のメールにて今回は、私が行なっている複合的なハマグリ研ぎの内、切れ優先のハマグリに御興味が有るとの由。そこで、先ずは切り刃自体に切れ優先を施した後、永切れ目的の鈍角化ハマグリを加える事無く、其の儘の性能を体験して頂きました。

とは言え、ほんの僅かに刃先の角度は起こして居ますが、初期刃付けの切り刃と大差ない状態から。明確に効果の判定をする為には、強靭さを持つ物が相応しいので今回は、サランラップの芯を選びました。鈍角化が殆ど為されていない刃先は、食い込む一瞬こそ確かに鋭く切り進むものの、其処から先は進行を阻むに充分な重さを感じられました。

これは刃先から切り刃の終わり迄、一定角度の(ほぼ)平面が続く為、刃が進む程に切り込んだ対象からの摩擦による側面抵抗が増すばかりと成るからです。其の上、刃先最先端は大き目の捲れが複数、発生していました。

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次に、刃先の角度を更に5度ほど鈍角に研ぎ直し、同様に試して貰いました。予想されていたよりも、刃先の切れが鈍る感触は少なく、逆に切り込む際の抵抗は僅かに軽減している事を実感された様子。刃先の捲れの程度も半減していました。

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更に、もう一段階だけ5度ほど鈍角化してみると、(浅く削るのでは無く)深く切り込もうとすれば、多少は意図的に刃体を起こす必要は有るものの、切れの重さは相当に軽減され、刃先の損耗は殆ど見られなく成りました。

下画像の切断面の艶が物語る様に、初期刃付けの角度から10度以上の鈍角化を施しても、充分な切れが得られて居ます。柔弱な対象では、刃体が受ける抵抗が小さく、刃先角度の違いに因る効果の差が判然としないので一見、ベタに研いだ鋭角な刃こそが最も抵抗が小さく、対象に負担を与えないかに見えるかも知れませんが、この結果から見ると何処まで其れが真実なのか疑問も感じます。切断する際に使用者の負担が少ないなら、切断されている側の負担も少ないのでは?と。

因みに、私が良くイメージを伝えるのに使うのは、大小の傘の組み合わせです。大きな傘(ベースの切り刃)を小さく開いて、その上に小さな傘をフルに開いて翳せば、大きな傘に雨が掛かるの(刃が切り進む際に対象から受ける抵抗)を大幅に低減してくれると言う物です。

切り刃に小刃を付ける場合でも、ベースの切り刃の角度より一定以上に大きな角度(私のテストでは1.5倍前後、つまり1.4~1.7倍の範囲内)で無ければ意味を成しません。其れ以下では明確な効果が薄れ、其れ以上では切れ自体が別物に成る傾向に在ります。

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御持参の包丁でも研ぎと試し切りをして頂きましたが概ね、ナイフでの実験結果を後押しする格好に成り、私が刃先にも鈍角化のハマグリを施す理由に納得して頂けた模様。

最終的には、薄物に仕立てられた牛刀(焼き入れも特別に硬い訳では無い)の刃先でも、切れと永切れの両立を狙った仕様の研ぎで、サランラップの芯に対応でき始めていたので良かったです。

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あと、下画像の砥石も御買い上げに。元々の御希望であった水浅葱は大判(60型2本分)しか無かったので、其れを分割して貰ってから御送りする予定にしました。色合い的には浅葱系統にも見える此の砥石なのですが、中硬~やや硬口の質でした。しかし御手持ちの中に少ない其の性質が、逆に御気に召したそうで。

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御土産も頂きましたので後日、有り難く食べたいと思います。多少は各地の御菓子も見聞きしている心算でしたが、まだまだ知らない品が有るんですね(笑)。

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数日後、田中砥石にて大判の水浅葱を3分割して貰って来ました。訪問前に依頼していた、相岩谷の在庫も見せて貰え、中硬メインで2つ、選別して来ました。

 

元々、底面が一定では無く厚みも差が有りましたので、出来上がりも若干ですが個体差が。現状、現れている砥面での比較に限れば、右端の物が僅かにキメ細かく均一かなと。減って来れば又、変わって来るでしょうから入れ替わりも出そうですが。ただ、何故か他より幅が狭いですね(笑)。

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相岩谷は、ほぼ同寸ですが色味が異なります。強いて言うなら、左の方が柔らか目で泥も出そうです。

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対馬の名倉も追加で。戯れに、手近に有った箱も付けてくれましたが何となく、判も相俟って焼き物っぽい印象に成りましたね。

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日本でも、凡そ十年後には量子コンピューター、十五年後には核融合炉が稼働しそうな情勢に成っているにも関わらず、鎌倉時代から珍重されて来た自然の石(中山を始めとする高雄の砥石)が未だに活躍の場が有るのが面白いですね。勿論、その他の仕上げ砥・中砥・荒砥の天然も含めて。

科学の力で、性能を再現して代替品を造るとなると、採算度外視にせざるを得ないので、コスト面から市場に出せないのが大きいのでしょうけど。

 

 

 

 

M様には此の度も、遠くからの研ぎ講習受講、有り難う御座いました。11時間の講習は最長記録タイでした。以前の13時間の方は、最後の2時間がマクドナルドでのインタビューと成りましたので、純粋に自宅での滞在時間としては、と言う意味で(笑)。

水浅葱に付きましては、厚目の物をとの御要望でしたので、最も薄い物を除いた何れかを御送りする事に成ると思いますので、宜しく御願い致します。

 

 

 

 

 

最近の事(砥石館イベントの御知らせ)

 

来月の下旬、亀岡にある天然砥石館で、イベントが行われる予定です。二日間で三種類を楽しめる(一種類は二回)盛り沢山な内容で、聞いた時は私も驚きました(笑)。

過去にも開催された実績の有る、肥後守の研ぎとハマグリ研ぎ講習の他に、今回は砥石の目利き(選別の基準)に触れる講座も含まれます。

 

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また少し前に、田中砥石店へ出掛けて来ました。理由は二つで、上掲のイベント(砥石の目利き講座)に関連し、私の選別した砥石群を展示即売用に準備する為です。殆どがコッパになると考えて居ますが、砥石館の田中館長が用意する中には少し、立派な物も含まれるかも知れません。

もう一つの理由は、三月の上旬に個人的に当方で研ぎ講習を希望されているM様から、砥石に付いても御要望を承ったからです。仕事場で使える水浅葱と、他にも何か有ったら・・・との事で。

M様は以前に砥石館で行なわれた、第一回目のハマグリ研ぎ講習に参加された後、私の自宅での講習をも受けて頂いた経緯が有ります。そして昨年末に、再び研ぎ講習をとメールを頂いて居たのですが今年、内々に砥石館での第二回を打診された事を御伝えした所、やはり「多人数よりも個人的に」との御意向を尊重しました。余談ですが、従って今月末に掛けては普段サボり続けている、身の回りの整理整頓は避けられない見通しと成って居ます。

 

 

持ち帰った分ですが此方は、殆どが前々回までに取り置きして頂いて居た物です。水浅葱(二年くらい前に採掘の分を発見)から巣板っぽいの・戸前っぽいの迄、様々です。

この水浅葱は恐らく、当時に持ち帰る途中で買いたいと申し出が有って御買い上げに成った、砥石館の常連かつ手伝いに活躍中のY様の水浅葱の、片割れと思われます。面白いので今度、御会いした時にでも渡そうかと。殆ど全く、同一と言って良い天然砥石を持つ事は、中々に難しいので。

前回の選別前には、M様の要望に適う水浅葱の注文をしていたのですが其れは、また改めてと成ってしまいました。ですので、明日(もう今日ですが)の全別では、私の予備も含めて2~3個を持ち帰る事が出来ればと期待しています。

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此方は、一~二年前から自宅で保管していた(まさかの時用の?)販売予定の在庫の分です。

M様の御要望には少し薄いので、(ここ最近での選別分が充足するか如何ですが)北海道のS様に送る分に成るかも知れません。

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下画像は、最近に採掘の巣板層だそうですが、此処までハッキリと蓮華が出たのは初めてらしいです。此れは村上が持っていて欲しいと言う事で、他の物と一緒に。

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砥面を直し、試し研ぎした所、蓮華部分は結構なジャジャ馬で。もう少し減って来ると安定するかも知れませんが、筋など難の有る所も極端に邪魔には成らず、其れ以外の部分は相応に扱い易くて充分な性能でした。

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下画像も、二~三年くらいは取り置きボックスに入れっ放し立った物で、相岩谷の中硬・やや軟口です。

私は超硬口から軟口まで使うのですが、中硬から軟口の砥石は減りが速い為、多めに確保して置きたい種類と成って居ます。従って、立派な箱も探し出して付けて貰ったにも関わらず、販売用にした物かどうか悩み処では有りますね。今後も相当数の当該種類が頻出するなら話は別なのですが(笑)。

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おまけは、田中さんがサンプル的に製造した人造だそうで、天然砥石の粉末を混入した砥石です。特に左側は、黄板の粉が使われて居るそうです。此の先、何かの機会に試してみるのが楽しみです。

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あと、しばらく前に頼んでいた味方屋作の三層利器材(ステンレスで炭素鋼を挟んだ鋼材を鍛造した物)の三徳が届きました。

思い出したかの様に、偶に問い合わせを頂くのですが、司作だけでなく昨今は味方屋作の方も普段、注文してから長期間の待ち時間を要するので、最低限の在庫として用意しました。

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現在、ホームページ不調の為、御面倒を御掛けして居ります。研ぎの御依頼・御問い合わせの方は、下記のアドレスから御願い致します。

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数年振りに?自宅で研ぎ講習

 

少し前、砥石館で行われたハマグリ研ぎ講習に参加下さったM様から、当方(私の自宅)でも個人的に講習を受けたいとの御要望が有りました。

コロナ関係で、かなりの期間に亘って講習が途切れて居た為、完全に来客を想定していない状態(いや元からですが更に悪化)と成って居り、かなり慌てて掃除と片付けを終えました(笑)。

とは言え、此れも珍しく研ぎの御依頼が続いていた中でしたので、其方が完了してからの対応と成る関係上、本来は事前準備期間として充分な時間は有った筈なのですが・・・研ぎ作業に集中するには少々、雑然として居ながらも手近に道具類が配置された環境を変え辛かった面も有ります。

 

 

今週初め名古屋から(京都経由でしたが)遥々、車とは言え多くの包丁と砥石を御持参の上、到着されました。仕事上、必要だそうですが出刃の本数が多くて驚きましたが・・・先ずは砥石の品質と特徴の見立てに関しての助言から。

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次に、包丁の鋼材と熱処理のバランスから、どう云った性格に成るか・判別出来る要素の説明を経て、其れ(例えば焼きの甘い刃物の方が低温に心配が少ない等)を逆手に取った使い方まで説明しました。

以下の画像は、当日に行なった内容の再現です。ペットボトルに水を積めて冷凍庫で作った氷を削って見せました。柔らかい刃物かつ切れと永切れの両立を図った研ぎ(通常仕様)の組み合わせのデモンストレーションですね。

(鋼材にも因りますが、硬く焼き入れした刃物では刃先の持続に優れる反面、特に低温では欠けに繋がり易く成ります。但し其れを避ける為とは言え、刃先の持続に難の有る柔らかい刃物を用いるには、刃先の耐久を企図した研ぎが前提には成ります)

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然る後、そのペットボトルに巻かれていたラベルを切り、刃先の摩耗や損耗が見られない事を確認。

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序でに、YouTubeで見かけた事の有るテストも戯れに。両手で持ったナイフを、支え無しの状態で立って居るペットボトルに切り込みます。条件が違うとすれば、此方は炭酸水用かつ、取り分け硬い質の物です。

当日は、氷を取り出した(切り開いた)残骸のペットボトルでしたので、軽く切れ込むだけで済ませましたが、新品だと御覧の通りです。ただ余りに硬いので、両手で無いと切り進むのが困難なのは想定外でしたが(笑)。

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御手持ちの各種出刃包丁を例題に、切り刃の状態と刃先の処理の整合性や、より効果的に切り進められる組み合わせの研ぎ方を模索しつつ試し研ぎも。

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砥石の種類による刃先の仕上がりの違いを確認する為、左右の小刃を異なる砥石で研ぎ、拡大画像を用いて比較。下画像は、奥の巣板で右側を研いだ所です。

因みにテスト対象は、私の手持ちの柔らか目のVG10の包丁(昔に服部の先輩に貰ったファルクニーベンで普段はバゲット切り担当)

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下画像は、手前の水浅葱で左側の小刃を研いだ所です。

巣板も幾分は硬口寄りだったので、予想よりも違いは少なかったのですが、水浅葱の方が僅かに細かく反射も明るく仕上がりました。研ぎ感からは、当たりの滑らかさ・下りの良さで相性的に水浅葱を最終仕上げに勧めました。

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其の後は、特にネギを切って居ると刃の持ちに不満が出る包丁の状態確認と、対処法を試し切りで実証しつつ研いで行ったり。

基本的には、その刃物のバランス(硬さと粘り)から耐えられる範囲内での刃先角度を探る事・相性の良い砥石との組み合わせを見付ける、には成ります。抜けや走りまでも考慮するなら、角度のテーパー化まで視野に入れる必要が出て来ます。

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紙の束を切る事で、刃先のみの切れ加減では無く、刃体側面が対象を切り抜ける際の抵抗の強弱も比較可能。更に捩ったバージョンでは難易度が上がるので、刃物と研ぎの良し悪しが如実に現れます。此処まで来れば、切る者の技量にも大きく左右されて来ますが(笑)。

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結果を踏まえて、研ぎ方の方向性を探って貰いました。

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私が研いで、小刃の中に先側・手前側で二段階の研ぎ分け(手前は鋭角化・先側は鈍角化)が為されて居るのを拡大画像で確認の上、試し切りで体感できたと。

実は、ハマグリ研ぎイベントでの取っ掛かりの説明では、何を喋って居るか分からなかったそうです。其処から進んで、御自身の仕事場での出刃包丁の持ちが向上したとのコメントを頂き、良く投げ出さずに取り入れた頂いたなと嬉しく思いました。

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合間では、ダージリンやコーヒー(パック入りのドリップパックでしたので、そのパックも切り方講座に利用)に茶菓子を合わせて休憩も。

何時もの御近所の和菓子店から、マスカット大福(シャインマスカットの良品が入手できた時限定の品)と生麩餅を購入していましたので、其れ等を出したのですが座興にと生麩の方を切って見せたり。

 

 

下画像は、その再現です。モチモチの外側と一部、ふんわりした中に粒の生きている餡が、切り難さを引き立てています(笑)。

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実際には、当日に切って見せた訳では無いですが、参考までに。余りの完熟度合いに感心した、シャインマスカット入りの大福です。片栗粉の層・包んでいる層を崩さずに切れるなら、比べてマスカット部分は簡単ですね。

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M様には御土産も頂きまして、私が好きな系統で感謝です。研ぎの講習の御依頼と合わせまして、此の度は有り難う御座いました。

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ハマグリ研ぎ講習受講者の方から御質問

 

少し前の天然砥石館でのイベント、ハマグリ研ぎ講習に参加下さった方からメールにて、御質問を頂きました。当日も皆さん、熱心に取り組んで頂けたとは認識していますが、やはり其の後の自主トレで、行き詰まったり疑問に思う事柄が出て来ても不思議は無いだろうと感じました。

其れは勿論、先日にメールを下さったO様に限った話では無く、極端に言えば(殆ど)全員?に言える事では無いかと。ですので、O様にはイベント参加者を代表して質問して頂いたとの体裁で、ブログの記事にする許可を頂き、其れに対する御返事を記載する事で皆さんに広く参考にして頂く機会としました。

以下は、苗字をイニシャルにした以外の全文を、其の儘に転載した物です。

 

 

「お世話になります。

先月の天然砥石館のハマグリ刃講習に参加したOです。

あれから約一ヶ月ほど出刃を仕事で使っています。

長切れ重視の研ぎを教えていただいたのですが、、

欠けや刃こぼれはあまりないのですが、なまってくるので研ぎはするのですが切れ味がいまいちイメージ通りに仕上がりません。。。

70度くらいから、50度、20度くらいにして1000番から中砥、天然で仕上げています。切刃も整えているつもりです。

魚を捌いたあとの身の艶もよくないです。身にざらつきのような感じが出て艶がありません。

おそらく味と食感や鮮度のもちにも影響ありと思われます。

教えてもらったとおりにしているつもりではあるのですが、、、

順番に角度をつけて1000番でカエリが出て、、

中砥でも角度を順番に寝かせていきカエリは出る。

丸尾山の巣板で仕上げるのですが、角度を順番に付けていきますがここでもっとしっかりカエリを感じるくらいまでしあげないといけないものなのでしょうか??

最終の裏押しで裏スキのカエリを取ったあとに20度くらいに「サーっ」と切刃側を滑らしてもう一度裏押しして、切刃側から「ササッつ」と滑らして裏も「ササッつ」で終わっています。

切れ味重視ではないので鈍い切れ味にしかならないのでしょうか??

角度を変えていけば解消されるものなのでしょうか??

説明があまりうまくないので申し訳ないです。

なにかアドバイスいただければ有り難いです。

よろしくお願いいたします。」

 

 

其れに対する、私の返信を以下に転載します。

「O様

イベント当日は御世話に成りました。更に、私の説明に則った研ぎを実践して頂いた上での御質問を有り難う御座います。

文面を拝読して、完全に実情を把握していると言えるか分からないものの、いくつか考えられる傾向と対策を考えてみました。

先ず、刃先から研いで行く方式での話との前提で。刃先最先端・少し手前・もっと手前、の三段階ほどの角度の研ぎ分け(但し研ぎ面は先に行く程に狭い)に成りますが、恐らくは1000番で全ての下地を作られて居るのかなと。その際、1000番で研がれた部分が適切な面積であったのか?次に、砥石の番手を上げて行く段階で正確に1000番で研いだ範囲が踏襲されて居るのか?が重要に成ると思います。其の辺りが上手く行かないと、御話しの「切れ味がイマイチ」「滑らかな切れに成らない」に繋がりそうです。

あと、角度の研ぎ分けの全ての段階で、余り明確な返りを出し過ぎても最後の処理で困る可能性も有りますね。番手を上げて行くに従い、研ぐ回数・力加減に留意しつつ「薄く短い返り」にして行く意識が必要です。それが最後の返り取りで、刃先にダメージを与えず・また取り残しを防ぐ事に貢献します。

(此処までの原因の予想:粗い研ぎ肌の残存・鈍角化された面積の増大・返りの残存・研ぎ角度の安定性?)

後段の「中砥でも寝かせて行くと返りが出る」「裏梳きの返りを取った後、20度くらいで・・・」の内容では、研ぎ角度を変えて居るのに(鈍角化された刃先最先端を一端、作ったなら、其れより鋭角な切り刃を研いでも)各研ぎ段階の全てでは返りは出ませんね。飽くまでも、最も鈍角に研いだ際の返り取りに焦点する事に成ります。

(問題点の予想:全ての研ぎ段階で返りを出そうとする事で、狙う切り刃の構造から逸脱している・返りを出す意識から大きな返りが残存している可能性)

対処法は、上記内容のチェックと言うか見直し、問題点が洗い出せたら改善する方向で修正する、に成る訳ですが・・・ここは一つ、逆から進めるのも頭の整理に役立つかも知れません。つまり、刃先から(最終刃先角度を決めてから逆算で)切り刃を研ぐのでなく、切り刃の全体を研いでから刃先の処理を行なうと。

元々、切り刃の研がれ方はベタ寄りの鋭角的な物だったかと拝察しますので、刃先の3~5mmの範囲だけ鈍角化する意図で研ぐ方が、狙いが絞れそうでは有ります。その際は、切り刃本体の角度(20度に成って居ましたか)から、30度⇒50度と起こしつつ研ぎますが、研ぐ面積は先端に行く程に狭くしなければ成りません。つまり、等高線で言えば先に行く程に間隔が狭まって行く並びと成ります。

(問題点の予想:私の説明では、刃元が70度・中央が50度・切っ先が30度に研いで居ますが(角度のテーパー化)、一般的には慣れるまで一律の角度で良いと思われ、付いては40度~50度で研ぎましょうと説明しましたが・・・全体を70度で研がれて居るのでしょうか。其れでも、極小面積に正確無比な角度での研ぎが施されて居れば、大きな問題は出ない可能性が高いのですが、角度のブレや刃先最先端の面積が大きいと切れが鈍る結果と成ります。)

そして、最後の天然仕上げ砥石での研ぎでは、目視は勿論、手触りでも判別が難しい程度でしか返りを出さない配慮で研いで頂きたいと思います。

以上の様に成りますが、これ等を参考に研ぎ進め、更に不明な点が出て来ましたら再度、御質問を頂けましたら幸いです。また他にも、講習に参加して頂いた方々の中で、この様な疑問を持つ方がいらっしゃる可能性を鑑み、(何処の誰かは伏せますので)今回の質問状と回答文をブログにて紹介させて頂いても良いでしょうか?サンプルの包丁をよういして、一つのブログの記事にする事により、御理解を深められるのではとも考えましたので。

村上浩一」

 

 

先ずは上掲の内容を踏まえて、イベントで説明した研ぎ方の大まかなトピックを記載してみます。とは言え行き成り、理想的な(凝りまくった複雑な)形状を整えるのは困難ですので、初心者向きにデチューンした形状を示唆した範囲に留めて有ります。

次いで私が最良(切れと永切れと使い手の負担軽減・・・刃物の寿命延命・研ぐ手間の軽減・手応えの軽さ)と捉えて標準研ぎとして居る、二種類のハマグリを組み合わせた研ぎ方の説明です。此れの詳細に触れるのは考えてみれば、久々かも知れません。

 

➀刃角度(刃物の厚みと切り刃の幅で切り刃角度が決定される・刃厚と刃幅により、ほぼ小刃角度が決定される)は設計段階で其の目的に応じて指定されて居る為、使用者と言えども余りに切り刃を鋭角にする事は避けるべき。

➁余程の刃厚・切り刃の凸部残存で無い限り、刃先まで一定角度で研ぐ必要性は低い(但し起こして研いでも安定性を保てる研ぎ手である事が前提)。

➂ベタ研ぎが必ずしも薄さで最高とは限らない(ベタ研ぎの面から更に厚みを抜きつつハマグリにする事も可能、但し切れ優先タイプのハマグリによる)。

④鋭角のベタ研ぎであっても、対象との接触面積が広く、切断完了まで一定の摩擦が継続する為、抜けの重さ・使い手の手応えの重さ・要する筋力の増大は相応に避け難い。

 

 

これ等に対応する為に考えたのが、二種類のハマグリを組み合わせた研ぎ方です。前提条件として、一般人が多く行なう、刃を対象に押し付けるだけでの使い方には対応していません(とは言っても刃筋が通って居れば相当に切れるのですが)。前後への押し引きを伴う(本来は丸鋸を押し付ける様な動き、或いは輪の太刀に準じるのが正解との認識)動作での使用を想定しています。

切り刃の厚みの残存が酷くなければ、可能な限り不必要には削りたく無い点。そして刃元から切っ先方向へのテーパーを活かしたい(初期から存在する場合)・テーパーを作りたい(初期には一定だったり出鱈目だったりする場合)点から、特に刃元に近い部分に近付く程に厚みの減らし方は緩やかです。此処までは下地作りの段階にて、次から切れ優先タイプのハマグリ研ぎの始まりと成ります。(刃体の厚み自体にテーパーが付いて居れば、切り刃の角度的テーパーへの依存は低く成ります)

鎬筋(洋式では小刃の始まり)から刃先へ向けて切り刃を研ぎ減らすのですが、幾つかの角度変化を付けて研ぎ分けます。幾つに分けるのかは刃厚と切り刃幅の比率・切り刃の強度優先か切れ優先か・・・・要は切り刃の厚みの残存レベルと、其れを活かすか変更するかで異なります。

当然ですが、厚みを残せば残す程に(厚みの落差が大きい程に)段階分けが多く成ります。しかし、薄目・厚めの仕様に関わらず研ぎ方の法則は存在します。

鎬筋から刃先へ向かって研ぎ始めるのですが、その始まりは角度変化が大きく、研がれる面積は小さい。それが刃先へ近付くに連れて徐々に変化が小さく、研がれる面積が大きく成ります。表現を変えれば、等高線が広がりつつ刃先へ向かう、と成ります。

 

 

【 サンプルとしての画像ですが、私の尺の柳では厚みの変化が少な過ぎたので(ハマグリ度合いも最低限度)。

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僭越ながら次回、投稿予定の記事に登場するK様の研ぎ上がり画像を俎上に上げます。同じく本焼きながら、尺越えの為に重量感と相応の肉厚を持っています。後ろ寄りの研ぎ傷の残存は、元の厚みが減り気味だったので其れ以上、減らしたく無かった為。

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ほぼベタ研ぎでしたので等高線は均等に見えます。但し、刃先直前からは明らかに狭く成り始めています。】

 

 

上記の研ぎ方では、切り刃自体の角度と大きくは違わない最終刃先角度と成りますが実際は、その角度では刃先が耐えられない場合が多いです。鋼材の種類と熱処理の加減にも因りますが、滅多に其のままで使用可能とは行きません。勿論、使用者が丁寧・且つ切る対象が負担の少ない強度であれば、問題は無いかも知れません。包丁で言えば更に、俎板も刃に優しい素材であれば言う事無しです。

しかし実情は、刃先に対して負担が過ぎるのが一般的なので、何らかの改善策が必要になります。其処で考えられるのが永切れ(頑丈さ)優先タイプのハマグリです。此れは刃先(主として刃先2~3mm、小刃の刃先では0.5~1mm)の処理として、言わば無段階の小刃・・・但し無自覚な成り行き任せのラウンド形状による小刃では無く、等高線が刃先に向かって、徐々に狭まって行く方法で研いだ正確な角度変化を伴ったハマグリです。当然ながら、此方も必要とする強度から逆算した最終刃先角度に応じて、切り刃角度から必要な数の角度変化で刃先まで繋げます。

 

 

つまり総合すると、私の研ぎ方では此の二つのハマグリ(和式では切れ優先ハマグリで研いだ切り刃に、永切れ優先ハマグリの刃先とします)の双方で、顎から切っ先へ向けて徐々に鋭角化をも加えている訳です。此れに因り、一定角度の切り刃や小刃とは違って、前述の押し引きのスライド時に明確な効果が得られます。

引き切りの際は、最も厚みがあり角度も鈍角な刃元から対象に接触し、僅かでも切り込めば其処から先は、厚み・角度の双方で抵抗が少なくなって行く刃体が通過するので、受ける抵抗の軽減は自明です。逆に押し切りの際は、一定角に比べて厚み・角度が増して行くので上滑りする事は無く、寧ろ押し開く効果が強く期待出来ます。押し開く効果が大きいと、徐々に必要とされる入力も増大して行きますが、引き切りと異なり持ち手の部分(柄・グリップ)が対象に近付いて行く動作と成るので、より大きな入力にも不足を感じる可能性は低いです。

平たく言うと、下手に圧力を掛けて押し潰し勝ちな魚肉・鶏肉等は(抵抗の少ない切れ優先タイプハマグリの)引き切りにより、食材が纏わり付かず使い手の労力が少ない。牛蒡や根菜類の切断に対しては、頑丈な相手に刃先(永切れタイプのハマグリ)が負ける事無く、また急に切れて刃先が俎板に激突しても傷みが少ない。更には押し切りで刃が食い込んで止まる事無く、より切り開ける効果が期待されます。

 

【 サンプルとしての画像は、昔の購入の酔心の出刃。店頭にて長年展示の物で、硬さと粘りのバランスに優れる物。久々に手入れを兼ねて登場願いました(笑)。

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刃先最先端へ向かって、等高線が狭まって居るのが分かります(縞々の幅が狭く成って居る)。】

 

 

 

O様の他にも、疑問を御持ちの方には御気軽に御質問を頂ければと思います。

また今月、下旬に当方に御越しの予定の、やはりハマグリ研ぎ講習を受講して頂いたM様にも折角、個別講習で御足労を頂くからには、出来るだけ御満足を頂ける様、努めたいと改めて考えて居ます。

 

 

 

現在、ホームページ不調の為、御面倒を御掛けして居ります。研ぎの御依頼・御問い合わせの方は、下記のアドレスから御願い致します。

togiyamurakami@gmail.com

 

 

 

あと、以前に留守電にコメントのみで連絡が・・・のO様には、たまたま再度の電話に私が出られた為、本焼きを送って頂きました。此れから其方の研ぎに取り掛かりますので、もう少々の御待ちを御願い致します。

 

 

 

 

 

先週の砥石館でのイベント

 

先週の土・日曜には、二種類のイベントが有りました。

画像は、最新の砥石館の内部。

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両日の午前中に行われたイベントの一つ目は、子供向けの講習(簡単な講義と実技指導)で、文化庁とのコラボ的な物。日本の職人文化や纏わる道具・技術に親しみ、将来の選択肢の一助と成れば・・・との御意向で開催との流れ。

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先ずは、私の手持ちの刃物を俎上に上げ、館長の用意してくれたモニターに移される画像と共に、日本の刃物の特徴と其の効果を説明しました。(特に、片刃と両刃での切り進む方向の差異)

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参加各位、御家庭で御使用の包丁を持参下さったので、現状の把握と対処法を共有し、研ぎを進める方向性を示唆した上で、研ぎ始めました。

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刃先の損耗や摩耗を取ればOKな物の他、刃線が乱れている物も有りましたので、其れ等は私の方で整えた後に仕上げて行って貰いました。

そして、充分な切れが出せたと判断した時点で試し切りを行ない、御本人に知識だけでなく体感を通して理解して頂けた様子でした。

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事前のイベントで既に、刀剣研磨師を招いての講習を受講済みの子供達でしたが、実際に刃物を研ぐ経験は殆ど無かった様子で。次に控えるイベントの、料理を体験する際には、今回の包丁類が活躍してくれる事。そして使い手にも楽しんでくれる事を願っています。三段階でセットのイベントは珍しいので、全てに参加できる人を募集する時点で間口が狭く感じましたが、其れなりの人数の希望者が手を挙げて頂けて、ただただ感謝です。

 

 

 

一方、大人向けの方はハマグリ研ぎに特化した内容の講座でした。

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モバイル顕微鏡は、通常通りに繋いだパソコン画面で見たり、更に特大のモニターに映し、全員への解説にも活用できました。

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中には、ブルートゥース?の角度計を装着し、研ぎの際の角度のブレを計測する勇者も。最初は6~7°のブレでしたが、段々と6°、5°前後に下がって行くのを見るに、やはり基準と成る目安を明確にして意識しながら練習する大切さを実感しました。

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更には、仕事で御使いの特殊な刃物を研ぎ、対象と成る素材も持ち込んで、実地に試される方も。

最初は、素材に対する切れと永切れに付いての追及から。次いで、紙の類の複数枚の切断にも不満が出ない様・・・との御意向でしたが、一つの刃物で二種類の用途に完璧を期するのは難しそう(研ぎ直せば可能でしょう)との結論に。勿論、砥石の選択と研ぎ方の工夫如何では、不可能とも言い切れませんが(笑)。

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仕上がりに関しては、私が切って見せたり御自身で試したりのテストで、ほぼ不満は解消された様子でした。

持ち込まれた刃物は基本的に和式が多く、しかも切り刃に大きな凹凸や、不自然な厚みの残存が少ない物が殆どで。従って、「切れ優先ハマグリ」と「永切れ優先ハマグリ(上手く研げば吃驚する程切れるけどね)」の内で、後者の説明と実践と成った講習でしたが、其れは其れで興味を持って取り組んで頂けたと思います。参加を頂いた皆さんには改めて感謝致します。

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途中、研ぎの説明と実践の補助として、私の普段使いの砥石も活躍してくれました。中山の水浅葱、研磨力重視タイプ・当たりがソフトで磨きに優れるタイプの二種です。

砥石館側で用意されている砥石の中では、数に限りが有る種類でも有りますので、最上級に細かい砥石での仕上がりに付いて例示したい時にと持参しました。

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子供向けイベントでは、他の砥石と組み合わせて打音検査による砥石毎の硬さの違いを示してみたりしましたが、大人向けでは同じ中山の水浅葱と言えど、僅かながら硬さが異なるのみならず、砥粒の目の立ち方・その積層の成り立ちの違いで個性が湧かれる事を、手指の感触でも確認して貰いました。

此れが契機と成った訳でも無いでしょうが、館長との今後のイベントの方向性を探る話し合いで、砥石の目利き講習もアリかなと纏りました。

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特に上画像の二つが役立った場面の一つは、ステンレスの包丁を御持ちの参加者の方との遣り取りで。(特に人造を想定しての事かも知れませんが)曰く、ステンレスに細かい砥石を当てる意義は有るのだろうか?との事。前述の文言は意訳ですが、確かに巷間、取り沙汰される問題?では有りますね。

私は自らの体験(調理)と実験(試し切り)から、ステンレスこそ細かい砥石を当てるべき、特に天然の優秀な超仕上げ砥石では。そして、滑るのは角度が安定していない事が殆ど。と答えました。刃先最先端の返りが取り易い点、刃先の研ぎ目が細かく成り、接地圧が分散され、より摩耗に耐え得る点などからの判断でしたが、お隣さんが挑戦した角度計の威力を間近で観察し、私が研いだ超仕上げ砥石仕上げの刃物をテストした相手ですので、通じると見て御話ししました。

その結果、水浅葱に関する御問い合わせを頂きましたので、販売用に少量ですが手持ちが有る事を御伝えした所、御買い上げの御意向を伺えました。二つの内の一つを選んで頂きましたので、其方を本日午後に発送しました。因みに左の大きい方です。御手元に届き御使用の後、御満足頂ける事を願っています。

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最後は、イベントにて展示・試し切りに使用した刃物の手入れです。本当にヘビーローテーションで普段使いしている一部を除き、基本的に一度でも使ったら研ぎ直しています(仕上げ砥・超仕上げ砥なので減りは僅少)。

 

司作の柳

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水野鍛錬所の廉価版の相出刃

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ファルクニーベンの牛刀と昔の三層利器材三徳

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味方屋作竹割鉈

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司作の三寸五分角鉈

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追伸ですが、間が空いてしまいましたので、もう事は済んでいるかも知れません。

イベントの数日前に砥石館を訪れた際、来館者の中の有る方と会話する機会が有りました。研ぎや砥石に付いての遣り取りを続ける内、砥石館側のスタッフの不手際で、御持参の砥石ケースが落下。薄目と成って居た砥石が割れました。

其れが気に成って居たのでイベント当日、代替として私の手持ちの中からサンプル程度のサイズですが天然砥石(梅ケ畑産の緑板)を館長に預けて置きました。館長の方から取り継いでくれる筈ですが、其れが無ければ御手数ですが御申し出を御願い致します。今回のイベントには仕事のスケジュール的に厳しかったと伺いましたので、又の機会を楽しみにして居ります。

 

 

現在ホームページ不調に付き、御面倒を御掛けしております。申し訳有りませんが、御問い合わせ等は下掲のアドレスから御願い致します。

togiyamurakami@gmail.com

 

 

 

 

 

砥石の日のイベント

 

毎年、砥石の日は10月14日なので、イベントも当日と思われがちです。そうで無くとも、(日曜にズレると既知の人でも)14日の直近だと考える様です。実際には14日の前にも後ろにも、そして結構、離れた日付にも成ったりします。

私の知人にも何人か、22日以外だと認識していた人も居ますし、自分でも近年まで同じ感覚でした。其れ位、余り関係性が強くないと言うか、自らも出向く様に成るとは思って居なかった訳ですね。やや引き籠り気味、までは行かずとも、大勢が詰め掛けるであろう場所は苦手な方ですので。

しかし偶々、去年は御誘いを頂き、田中砥石のブースの手伝いをして来ました。其れが如何なる経緯を辿ったのか、今回は研ぎに関する講演をする事に成りました。直前まで、技術指導的な方向かと思って居たので、喋る役割だと発覚してからは幾分、困惑しつつも取り上げる項目を選んだり、その際に話す内容を纏めたりして行きました。

 

其れとは別に、話した内容を実証実験的に反映できる様、幾つかの刃物も研いで置きました。結果的には、用意した全てを見せたり切ったりに使えなかったのですが、実際に手にして試して貰った方々には、或る程度は楽しみつつ納得して頂けたのではと感じました。

 

下画像は、単に普段使いの包丁ですが私の研ぎ方の特徴が少しでも伝わるかなと・・・持参したのですが出す余裕が無かったですね(笑)。他の、出刃・ビクトリノックス・モーラで手一杯に。

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此方が其の、モーラです。何方も緩いハマグリ(切れ優先)に研いであった物を、片方はベタ研ぎ気味に・もう一方はハマグリを強めにして、差を体感できるかなと。

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二本目も

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さて当日は、13:00からの講演に合わせ、午前の遅めに到着しました。前回は裏の搬入口からでしたので、正面入り口は今回が初です。

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予想以上に広くて、複雑な構造でした。御蔭で中々にたどり着けず、予定より余計に到着が遅れてしまう事に。

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案内板に従って進みますが

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一階だと思って居た会場は、前回もそうですが、地下だったと。そう言えば、エレベーターに乗ったのだから一回な訳は無かったですね。

下りた所から進んで行くとリフォームに関する展示や、当日は関係する会場も。

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無事に到着です。

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砥石の画像は少々、ピンボケになってしまいましたが

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隣の研ぎ場では、来場者が熱心に研ぐ姿が見られました。

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手挽きの体験も継続で

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会場では、三重の松阪から来訪の理容師かずけんさんや、特に関東の採掘場の歴史などを研究されているチヨウさんと旧交を温めたり。近況を尋ねたり、砥石関連の情報を交換したり。

他にも、嘗て研ぎ講習を受けて頂いたH様と御会い出来、3~4年前に私がお出しした紅茶の御礼にと、下画像を頂戴しました。

当日は砥石の購入も考えて居るとの事でしたので、丁度?一つ残って居た小振りな水浅葱(超硬口+目の細かい)を薦めました。僅かな可能性ですが相性の如何は未確認ながら、砥石その物は剃刀用としては一級品なので、名倉なども含めて使いこなして頂ければと思います。頂いた紅茶も興味深く、感謝致します。

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チヨウさんからは、調査した資料を纏めた物と、現場を回って地元の方からの協力を得て、集めた砥石の内の一つを頂きました。いつも有り難く活用させて頂いて居ます。

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肝心の講演ですが、自己採点では何とか及第点かなと。如何せん老若男女のプロ・ベテラン・中級者・初心者・一般の方の混成と思しきグループ相手ですので、どの範囲に合わせて解説しても不満や不足が出ると考えて居ました。

そこで窮余の策として、包丁・ナイフの一般的な刃体形状をカタログ風に図示して並べ、刃の付け方の概論、研ぎの基礎・応用と其の効果を、体験を交えて語りました。また使用する俎板や切り方の適不適で、刃物の耐久力や研ぎ直す頻度は変わり、切る対象や使い手の好みでも研ぎ方を変える必要性にも言及。但し砥石の扱い方・手の位置・研ぐ方向などの実技面は、隣の本会場で実際の研ぎを指導されて居るので、其方でと。

更に、予定では合間合間で質問コーナーを設け、受け答えを交えて進行をとの想定にも関わらず反応は薄目、其の為、最後の余興?として並べかけていた横の机の上の刃物類と新分類を移動、試し切りの実演で間を持たせました。

最後には凡その予定通りに、興味を持ってくれた方々が演壇?の周りに集まってくれ、刃物を手に取ったりビニール・新聞の束を切って見たりしつつ、刃物談議に花を咲かせました。唯一、心残りだったのは其の中に、普段は包丁にシャープナーを掛けているが砥石なら如何なる物がと聞いて頂いた方。どんな不満が有るのか・包丁の状態の程度は・砥石の揃えられる数と予算は、と余りにも聞き出す事柄が多かったので、不満が出るまではシャープナーで済ませ、いざと成れば砥石に進めば良いのではと、答えるに留めた事です。

刃先の厚みが増し過ぎたり、欠け等の損耗が激しければ、粗砥から。そうで無くても中砥が必要。面直しにはダイヤモンド砥石。切れに拘るなら仕上げ砥(人造でも天然でも)の購入も視野に入ります。シャープナーからのステップアップとしては、最低でも中砥とダイヤを買えと勧めて良い物かどうか、思案のしどころでは有る訳です。加えて、鋼材や硬さによって選択する砥石の製造法・メーカーの特徴も考慮しなければ成りません。況してや相性の良い天然砥石の選別などに至っては、徒に推奨するのも憚られます。

生活の中で研ぎに割ける時間の多寡も関わって来ますので、其の方がこのブログを見て下されば、当時の私の苦悩も御理解いただけるのではと微かな期待をしてみたり。

 

 

 

田中さん達がブースを片付け始めた所で、最後まで並んでいた砥石が多い事に気付き、自分用に一つ選びました。実は会場に着いて早々、田中さんから村上も買わないか?と聞かれ、少し前にエネキーを止められた人間に言われてもな(笑)。と返したのですが(笑い事では無い)、講演の謝礼として幾許かの収入には成るだろうとの皮算用(何時ものドンブリ勘定)の下、コッパを差し出しました。まあ、結果的には田中さんから当日の御礼として頂戴してしまい、恐縮です。

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ほんの少し、ブースの片付けを手伝い下画像のタオル迄も頂き会場を後視したのでした。

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表通りでは、時代祭りの余波が未だ続いている雰囲気で、国内外からの観光客が三々五々、帰路に就く所の様でした。

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イベントでは、私の拙い説明にも関わらず、最後までご清聴を頂き有難う御座いました。之までの人生で縁の無かった、殆ど喋りだけの仕事でしたので、不調法も有ったと思われますが、大阪の人間としましては面白さの不足も合わせ、今後の課題として活かして行く所存です。

 

 

 

 

 

1対1での研ぎ方説明会

 

先週の土曜は急遽、田中砥石店まで出かけて来ました。此の二週間ほどの間に偶々、司作の包丁を断続的に注文して貰う事が続いたのですが、其の中に砥石の採掘を手伝っている方も含まれていました。

私の研ぎ方を含め色々と話す内、調理師学校で経験も御持ちとの事ですし、研ぎのバリエーションと其々の効果を理解して貰えれば、今後の御本人の役に立つばかりで無く、砥石の購入に来られた御客さんへの対応に活かす事で、顧客サービスにも繋がると考えました。

先ず準備として前日の金曜には、説明に使う小道具を入手する為に梅田まで買い出しに。元々の手持ちのナイフ類のみよりも、効率よく伝わるのを狙ってのサンプル追加です。

手持ちの№8カーボンに関しては、ブレード自体の厚みのムラ(刃線中央が薄い・カーブ周辺は厚い・刃元と切っ先は中庸)を削り、簡易的ながらテーパー化した上で刃先方向へもハマグリ化して有ります。

其の手持ちとの対比として、新入りの二本の内、カーボンの方は最低限の小刃を一定角度で付けます。ステンレスの方は幾分、広目の小刃を付けた上で、刃先へ向かって鈍角化ハマグリ+切っ先方向への鋭角化も。

 

 

 

オピネルの№8、カーボンとステンレスです。ステンレスの方は説明の最後にプレゼントするつもりの物で、カーボンの方は自分用の予備として。

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しかしステンレスモデルは購入時に店員の方が、入れる箱を間違えたんでしょう、紐付きのモデル用の箱に入って居ました。

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一目瞭然、現物は紐が付いていないタイプなので、余分な価格の上乗せを食らった事に成りましたが、急いで研ぎ、次の日には渡す予定でしたので置いて置きました(笑)。

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当然ですが鋼材が異なっても、基本的にブレードの形状は共通です。

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研ぎ前の状態、カーボンの方の刃部アップ。此の状態では、やはり刃先角度が不安定+荒い刃先なので研ぎ直しました。

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同じく、ステンレスの方。若干ですが、刃先の状態はマシな気がしました。試し切りでも僅かながら差が付きましたし。

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研ぎ始め、320番と1000番です。

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次に対馬砥です。

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八木の島の蓮華巣板、馬路の戸前で仕上げ研ぎ。

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最終仕上げは、中山の巣板(やや硬口)からの水浅葱です。

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研ぎ上がりです。

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カーボンの方、刃部のアップ。殆ど全て、オピネルのカーブ付近は右側面の方が厚みが勝っている様です。従って、小刃を同一角度で研いでも右側面にのみ小刃以外に砥面に接触する確率が高いと感じます。

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刃先拡大画像ですが、殆ど一定角度で単純な小刃付けとして居ます。

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同じく、ステンレスの方の刃部アップです。此方の方が幾らか、ブレード側面の厚みが不均等な研削だった様で、小刃の幅も不均等に成って居ます(或る程度は切っ先方向へ鋭角化したので徐々に広がって行くなら分かりますが)。

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刃先拡大画像です。此方は、小刃の幅の中で数段階を経て刃先に向かって鈍角化している等高線が見えます。

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そして、手持ちの№8です。ブレードは厚み調整後に鏡面化し、ハンドルはカシューで防水したりして有ります。

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刃部のアップ。刃先周辺の厚みは最も薄目ですが、より重要なのは刃元から切っ先方向に向かって、大まかにですがテーパー化して有る事です。此れに因り、引き切りの際に抵抗が軽減され、手応えは軽く成り、対象の切断面の乱れも減ります。

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刃先拡大画像です。上掲のステンレスの方と同様、刃先に向かって多段階の研ぎでハマグリ化が分かります。

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手伝いの方には店内で説明の後、此の三本による三種類の研ぎの違いを、実際に切り比べて体感して頂きました。新品に単純な小刃を付け直したのみでは、紙の数枚では苦にしない物の、量が多く成ったり捩って有ったりすると走りや抜けに抵抗が大きい。

小刃に漸次鋭角化・刃先に向けたハマグリ化の工夫がされていると、其の抵抗が少なくは成るが刃体(ブレード本体)自体の厚みの不均等による影響(切れ加減が一進一退)は残る。

刃体の形状から整えた上で、刃先の調整(漸次鋭角化・ハマグリ化)まで行なった物では、最も抵抗が少なく切れも良かったと、当然と言えば当然の結果に納得して頂きました。

 

 

 

序でに、もう少し広い切り刃状のベタ研ぎ・ハマグリ研ぎの差も実験すべく、モーラのナイフを用意したのですが、新品時から薄目の刃体+ベタ研ぎに近い刃付けですので、ハマグリ化の効果が感じ難かったですね。本来は多少なりとも、より広く取った切り刃の中で構造を変えるべきでしたが、新品時の幅を変えずに研いだので、切れ込んでからの僅かな進み具合の軽さを切っ先側の半分で実現した程度で。

此れは新聞の分厚い束を切り分けるなど、ハードな対象に限った結果でしたので、厳しい条件で無ければ違いも出ましたが、帰宅後に明確な差が出せるまで研ぎ直して置きました。

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ベタ気味+軽度の糸引き

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ハマグリ気味

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あと、最近に採掘された砥石の方も見て来ました。特段、カラス好きと迄は行かないのですが、硬さと細かさ・グレーの地肌に細身のカラスを気に入って購入。ただ、私よりもカラスに拘りの有る、ブログを通じた知人に送って見るのも良いかな?とも。

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下画像は、合いさとの事でしたが戸前・並砥の何方の特徴も含んでいる印象です。砥面の難は少なく形状も整って居り、砥石の御希望が有った場合に備えて置きましょうか。

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あと、不定形な小さ目を幾つかです。先ずは、完全に上掲の合いさと御仲間の細長五角形。どうも、此の形状はちょくちょく、出てくる気がしますね。

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多少、密と粗の組み合わせが目立つのと、砥面の硬さも程々かつ砥粒の細かさも中庸と感じさせながら、鏡面の仕上がりに。

刃先の緻密さと切れ加減は最上クラスと思われ、特筆すべきは裏押しへの適正です。水浅葱などの強情さを持つ浅葱系での裏押しと異なり、比べれば若干、刃物への追従性過多かと思われるも万全の仕上がりに。此れを知ると、上掲の砥石も自分用に・・・と云う気に成って来ます。

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本当に、手の平サイズの超硬口です。切っ先・刃先の部分調整用に持ち帰りました。

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同じ砥石から割られた相方と思しき方。

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少し薄い此方は、層割れの取っ掛かりが確認されましたので、小割りにするつもりで。超硬口の小割りは、そうで無い小割りより相性探しにシビアさが求められるので、機会を見付けて追加して行く必要が有ります。今後も合いさ・並砥・戸前の各系統のバラエティーも、追加して行きたい所です。

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そうそう、話の途中で田中さんとも合流でき、その際に以前から話が進んでいた砥石の日イベントのチラシを受け取れました。

イベントでは過去から、恒例の研ぎに関する講義を開催されて居ましたが、実技の方を分離して行なうに当たり、私に任が回って来た格好です。

去年は、田中さんの店のブースの手伝いをして居り、隣の研ぎ場で苦労している方へ簡単なアドバイスもしていた関係でしょうか。兎も角、流行らない研ぎ屋としましては砥石館イベントの合間にも、こうして御呼びが掛かるのは有難い事ですね。

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週末の研ぎ講習

 

一昨日は、以前にも遣り取りが有ったY様が研ぎ講習に御出で下さいました。関東に御住まいの折りには、中々に難しかったと思われますが、関西に移られるとの事で実現しました。

新たな人造砥石を含め、天然仕上げ砥石にも興味を持たれている現状、先ずは研ぎを見つめ直そうとの御様子でしたので、基本的な洋包丁の研ぎの実演と説明をさせて頂きました。(ブログ記事としては残念ながら、講習に成ると画像や拡大画像が少なく成ったり、失敗して使える物が少なく成りがちですが)

 

 

 

下画像は、特定のタイミングに限らず、研ぎの各段階(荒砥による大まかな修正段階・中砥による正確な刃付け段階・仕上げ砥による刃先の整形段階)毎に効果を体感して頂く為にテストして頂いている様子です。

勿論、私が実演した結果の刃先・御自身による研ぎの結果も双方、モバイル顕微鏡を用いての確認も併用しています。

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先ずは現状を拝見し、特に右側は切り刃状の研がれ方をしているものの、角度の変化が不安定な点、そして切っ先カーブ手前(其れ以外にも中央部点前にも)の厚みの残存が気に成りました。

実用の場面でも、例えばカボチャの切断時の引っ掛かりとして現れているとの事で、私の動きを参考にして頂くべく、上記両方の改善を目指しつつ研いでみました。刃元から切っ先へ向けて、鋭角化した小刃を付ける研ぎです。

中央部の厚み・カーブ手前の厚みを取るのは、やや広目の切り刃状に成って居る幅の、鎬寄り(峰側)半分程の範囲で修正し、刃先側半分で上記に如く、角度変化を実現します。

最も鋭角に(薄く広い切り刃に)成って居る刃元に合わせて研ぎ落すと、全体の肉厚が強度不足に成るだけでなく、刃先角度との兼ね合い次第で欠けが頻発するからです。万が一、刺身包丁的な使用に限るならば其れでも良かったのですが。

とは言え、御本人には一番重要な「角度一定で正確に研いだ小刃」を付けて貰う練習に専念して貰いました。私の(少々拘った)研ぎ方のベースが出来ていれば、刃先に一定の小刃を付けるだけでも走り・抜けの効果は持続しますので、御本人の練習と修正や高性能化を同時並行で可能な訳です。

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人造の320番、平面維持に優れつつ研ぎ傷が浅い物。

 

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人造の1000番、滑走良く研磨力もマズマズな物。

 

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人造の3000・6000番を経て、敷き内曇りです。

 

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最終は、中山の水浅葱(偶々ですが440との相性にも優れていました)で仕上げました。

 

 

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上画像も、各段階でテストして来た内容ですが、ラップに対しての切れ込み方・切り続ける際の容易さ共に、仕上げ砥に近付く程に向上する経験をして頂きました。当然ながら、新聞の束を捩った物に対する効果も同様です。

新聞の一枚⇒束⇒束を捩った物、の順に効果の違いが大きく成りますので、楽しんで頂けた様子でした。

 

 

Y様には先々、田中砥石店や天然砥石館で御一緒出来ればと話し合えたり、司作の包丁に付いても問い合わせを希望されたりしましたので、今後とも御役に立てましたら幸いです。此の度は雨の中、当方まで御足労を頂きまして有り難う御座いました。