少し前に、共名倉用の肌理が細かく柔らか目で刃金を光らせる石は?との質問を頂いたので、其れについて自分の手持ちを参考までに。
昨日は本来、天上戸前うぐいすを狙っていましたが探し当たらず、代わりに卵色巣板のこっぱと共名倉用の戸前いきむらさきを選んできました。
購入時
持ち帰って面付け後
購入時
表裏面付け後
卵色巣板は、鉋の刃や切り出しなど特に平面を研ぐ用途専用に、面が崩れる間もなく小振りな砥石をローテーションする為、複数揃えています(白の後で卵複数はお奨めです)。今回の卵もそれに役立つと思いました。
平面用卵色シリーズ
1 やや黄色巣板寄りと思われる物
2 少し紅葉の混じった物
3 黒付け坊主に近いらしき物
4 これも少し紅葉混じりですが茶・灰でなく緑褐色
5 一つだけ有る天上巣板層の卵
何故此処まで卵を載せたかと言えば、砥取家に贈った切り出しの手入れを兼ねて共名倉の実例を示そうと考えたからです。それらの切り出しは、欠けや錆が出る度に研ぎ直しをして来ており、一度仕上げてから確か三度目の手入れになります(錆びや欠けを狙って研ぐので初期よりも平面度合いが甘くなっており、次回行なうとしたら人造の1000番辺りから再び精度を出して進める事になりそうです)。
左久作 大小刀 アーサーバルファー鋼に和鉄地金(三原鉄だったかと)
中屋平治 錬鉄切り出し スェ-デン鋼に錬鉄地金
これの手入れに使うのが卵シリーズと言う訳で、その後に大谷山と共名倉で仕上げる場面では今回購入したもう一つを俎上に上げようと。
自分が鏡面を狙って使う共名倉は以下の通りです(共名倉に求める性能・性質はHPの記載も御参照頂ければ)。
八枚
大上
やや軟らかい大上
いきむらさき寄りの戸前系
硬軟二種の戸前(一本松)
千枚系らしきもの
特に大上二種は適応範囲・扱い易さ・仕上がりで抜群です(但しこれらは、この目的に沿って選別した石であり、同銘柄でありさえすれば同じ働きが期待できるとは限りません)。
先ずは裏の錆を落とし、梳き部分を磨いた後、白巣板で裏押しをしました。表は白巣板からですが、砥粒の目が立ち気味とまったりの二種で刃金・地金双方の反応を窺いながら進みます。
まずまずの結果だったので、続いて購入し立ての卵を試しますが、これも充分な性能。砥ぎ感は黒付けと紅葉入りの中間、つまり目が細かく泥も出るが多すぎず、研磨力はやや目の立った砥粒で(トロトロではなく)さらりと研げる(地金・刃金共に均等に仕上がる)印象です。過去の3つ程の経験上、黒付けに近いほど、(特に硬くない限り)泥がやや多めで地金に優しい様です。
念の為、従来の卵と比較してみても遜色ない様子。
ここから、本来はやや硬口で目の細かい合砥(千枚・八枚系か、特に細かい大上・戸前系)に繋ぐ所ですが、鋼材・砥石の質・更に相性も良かったのでこのまま大谷山(三つ有る手持ちの中で扱い易さが最も優れた石)へ。
そして合わせる共名倉はいよいよ、新入りのいきむらさきです。
使い勝手・仕上がり共にまずまず。
しかしもう一声と、万能タイプの大上(やや軟らかめ)を使用。
潤滑性・クッション性が適度で、接点の状態が正確に伝わる研ぎ心地で扱い易い上、仕上がりも更に向上しました。此方に比べると、このいきむらさきは共名倉としては中の上くらいでしょう。
只、そんないきむらさきも通常使用では、鋼を結構明るめに仕上げてくれます。逆に言うと、この段階でこうならない合砥は鏡面狙いの共名倉としては不足と言う事になります。
裏側の緑褐色ではやや粗い砥粒なので扱い難いですが、これはこれで共名倉のコンビ砥石?みたいで面白くもありますね。
小鮎様には参考にして頂けましたでしょうか。お役に立てば幸いです。