司作包丁の第一陣、到着

 

今回の依頼のスタートは一年前でしたか、待ちかねた三徳包丁三本が先ずは到着しました。

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磨きが一本

 

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黒打ちの一本目

 

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同じく二本目

 

御待ちの期間は長短まちまちですが、御注文を頂いておりました御三方には、御負担をお掛けしました。早速、黒打ちの一本は発送し、到着したとの事で良かったです。

あと、受講生のK様にはメールにて御伺いしましたが、御届けの条件など御連絡頂けましたら御送り致します。

 

 

初期には柳の数本も、同時に送られてくると思っていたのですが到着が伸びたので手が空きました。ですので、面倒な手順が必要な食材は避けていたのですが此の隙に、春の楽しみである蕗と若牛蒡を調理したりしておりました。

 

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上が蕗で下が若牛蒡ですが、結構長いまま売られているので持ち帰り時に工夫が要りますね。

 

 

普段は簡単な煮炊き・炒め程度の内容で、下画像みたいな場合も多いです。

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しかし下処理が必要な此れらは、精神的にも少しゆとりが無いと敬遠しがちな食材だと思います。

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灰汁抜きの後で筋張った皮を剝き、事前に取っておいた鰹昆布出汁で煮るとか

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炒めてから煮るなど、ひと手間多く掛かりますが

 

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何より、洗ったり皮を剝いたりの難易度が少し高い事もネックでしょうか。まあ、野草に近付く程にその傾向が高いのは致し方ありません。とは言いながら、独活なんかも楽しみにしているのですが。

 

 

 

もう一本の黒打ちは、天然砥石館の一番の常連様からの御注文でした。味方屋作の三徳・ペティは次回到着分に成りますが。

 

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感謝を込めて、「納品時の簡単な研ぎ」を施しておきました。此れも手が空いていたからこそですが。

 

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地金は巣板の後、三種類の八枚の小割りの内で最も相性の良かった物。刃金は巣板の後、千枚と御廟山で仕上げました。司作は刃先角度が鋭角気味なので普段使い用に角度調整も兼ねています。

砥石館常連様には司作の切れとは通常、此れ位だと覚えて頂き、先々の御自身の研ぎに於いて参考にして貰えれば幸いです。

次の柳の特注品が待ち遠しいですが、砥いでからの販売となりますので、到着したらしたで行き成り忙しくなります。と思っていたら、四国の常連様から結構な難敵が送られて来るそうですので、既に暢気にしていられなくなって居る様です。

 

 

 

 

 

 

数年ぶりに再会

 

前回の砥石館で、思いがけず懐かしい方の訪問を受けました。地域住民で、且つ砥石関係者だった方。特に天然砥石粉末を高濃度で配合した、人造砥石製造に携わっていた経歴を御持ちで。実は数年前に、関係者数人で自宅脇の工房に御邪魔した経緯があります。その際には見学のみならず、嘗ての製品の試し研ぎまでさせて頂いたり。帰りに頂いた数個を、自宅で試して気に入り、数日後に一人で買い増しに行ったのも良い思い出です。

使ってみての感想は、吸水が少な目で当たりがソフト。その割に研磨力と平面持続も悪くないと云う物でした。見学時の説明で、販売していた頃は研磨力の強さが全盛の時代だったので、うちの製品は不満を述べられる事もあった。しかし、自分は仕上がりの傷が浅くて当たりの柔らかい砥石を作ろうと努力していたと聞かせて頂いた通りの砥石達でした。

今回の訪問を受けて、同日の夕方には上野館長と工房を訪ねました。館でも貴重な御話しを頂いたのですが、機械類を前に更に詳細な説明を受けました。更に所有されている各種天然砥石と、残存している可成りの数に上る製品の在庫も確認。そして今回も、帰りには製品のサンプルを持たせて頂きました。

 

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今回の分。合砥をベースに研磨剤やボンドで整形した物。

 

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上画像以降は前回の分ですが、同様の物です。色合いは原料のバラつきなどで様々。一応、色粉も使用して範囲内に収めてあるそうですが。

 

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此方は赤門前がベースの物。

 

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対馬の黒名倉がベースの物。

 

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巣板ベースの物は特に気に入って買い増し、四本持っていました。

 

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やはり、原料の違いで色のみならず性格にも違いが。ある意味、天然砥石感に富んだ面白さにも繋がっています。でもそうなると、バラエティの幅が欲しく成ったり試し研ぎで選びたくなったりするのは、人造砥石としては痛し痒し?

 

 

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研いだ仕上がりを御紹介。先ずはシャプトンの1000番で。

 

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巣板ベースで砥いだ所。

 

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その拡大画像です。結構光っていますが、傷は浅いし均一な砥ぎ目です。

 

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次に合砥ベースで砥いだ所。

 

Still_2018-03-20_233951_60.0X_N0001.jpg天人戸

光り方が強まり砥ぎ目も細かく成っています。此処からならば天然仕上げ砥石に繋ぐのも容易です。まあ、普通に切れるし持ちもまずまずなので、重症の方で無ければ此処で留めても良いのですが。

 

現在は研磨力の有る砥石で形状を作り、刃先の仕上げには返りの出難い砥石で仕上げるのがスタンダードだと思いますが、遥か以前の当時から其処に拘った製品造りをしていたとは、驚かされます。其の成果なのでしょう、人造は得てして永切れに付いては天然に及ばない物ですが、合砥ベースの黄色い砥石での仕上がりは明らかに持つ方です。切れも悪く無く、そういう傾向は研承シリーズの高番手を彷彿とさせます。

場合によっては、天然砥石館での商品として御目見えするかも知れません。実現すれば往時の郷土の産品として又、現地へ行かねば手に入らないレア物として、楽しい存在に成るのではと期待してしまいます。

 

 

 

 

 

手持無沙汰で(最近の考察)

 

本日、日野浦さんからの包丁到着が凡そ確定しましたので受講生のK様(長らく御待たせ)、もう一人のK様(運良く短め)、砥石館常連様(三本中の一本、残り二本は次)には三徳包丁納品の目処が立ちました事を御報告いたします。

磨き・黒打ち(二本)が週明けには当方に到着予定です。柳を御待ちの方々には、もう少々我慢の程を御願い致します。これ等を待っている間、手が空いていたので最近気になった事柄を試していました。(柳の大半は私が研ぎを施してからの発送なので)

砥石館に置いてある、商品としての包丁や研ぎサンプルとしての包丁の直しをしている際に、現地の様々な砥石を使う訳ですが、大抵は御決まりの数種に成ります。其れは研ぎ体験希望者への最終仕上げ砥石としても使われ易い物で、中山産水浅葱・若狭産戸前・菖蒲産浅葱です。

個体として最も硬いのは菖蒲で以下、若狭・中山と並びますが右二つは大差有りません。しかし、明らかに研がれた刃物の切れが違います。(硬さは勿論、砥粒の目の立ち方・泥の出方の何れも各産地・各層に固有の特徴では無いので、此処では余り重視せずに願います)特に違いが顕著となるのは組織が粗い刃物と熱処理が不正確と思われる刃物(焼き入れ温度が低いか戻し損ない・加工時の焼き戻り?で硬度が低い・保持時間が長いか鍛造不足?で炭化物が大きい)

一般に、正しいとされている考え方に「硬くて細かい砥石を、返りが出ない範囲で刃先の左右(表裏)撫でてやれば、最先端の整列と細かい仕上がりになり、大抵は切れる刃先に成る」というのが有ります。私も基本的には同意ですが、それだけでは解決困難な事例もあります。砥石館では各人各様の刃物を持ち込まれますので、自分の手持ち以外の色んな状態やレベルの物に触れられました。それに比べれば上記の研ぎ直した二種は標準の範疇では有りますが、性能をフルに引き出すのが難しい部類だと感じました。普通~普通以下で良ければ簡単なのですが。

最初は炭素鋼とステンレスの違いも有るのに、揃ってAの砥石で切れず、Bの砥石では切れるのが不思議でした。しかし更に試すと、切れる砥石Bと他の切れる砥石Cの結果が同一では無い事にも気づきました。切れのレベルと其の持続の違いですが、砥石館に複数備えてある顕微鏡で逐一確認しつつ、試し切りをして傾向が見えて来たと考えます。

やはり、人造と天然の大きな違いである砥ぎ目の多寡と深浅は、天然砥石同士の比較に於いても厳然と影響する様です。殆どの場合、研磨が速い(つまり研磨力が大)砥石は刃物表面に研ぎ傷が付き易いです。しかし、研ぎ傷が(実用上・或いは理論上悪影響を与えない程に)小さい場合は、寧ろ対象物への掛かりが良い刃先として機能します。此れに対して、更に研ぎ傷が小さい・或いは殆ど無いと表現可能な刃先には、刃物の(鋼材由来の但し製造段階で千差万別の)組織その物の荒さが現れた状態に成っています。

上記、二つの状態は、初期切れには前者・永切れには後者が優れる可能性が高いです。何故なら、(高品質な砥石前提ですが)明確で均一な刃先の研ぎ傷の方が、金属組織由来のランダムなセレーション(波刃)よりも、安定して対象に接触し続ける事が出来ると考えられ、逆に(強引に研磨剤で消すのでなく)砥ぎ目が付かないレベルの控え目な研磨力で砥がれた刃先は、強度が高い構成物(炭化物など)の残存が耐摩耗性に有利だと考えるからです。余り砥ぎ目が明確だと、それが摩耗した時との差が大きいのも有りますね。

此処までは、以前から記載していた内容に準じる部分が多いです。しかし鋼材によって最適な粒度が違う等と言われて来たレベル以上の、相性の本質は、「組織の荒さ(山と谷の頂上)の先端に明確な砥ぎ目を付ける・或いは砥ぎ目を消す」のか、「砥ぎ目の先端に更に細かい砥ぎ目を付ける・或いは砥ぎ目を消す」も含まれるのでは無いか。前者は天然同士でも良いし、後者は人造から天然が適するでしょう。少なくとも、一筋縄では行かない難儀な刃物には効果的でした。飽くまでも、粒度の差が少ない仕上げ砥石同士が前提です。荒砥・中砥ベースでは永切れしませんので。あ、引き千切るのは出来るでしょう。(出来の良い刃物であれば、此処までの工夫は必要ない場合が大半です)

以上の事を踏まえると、砥石館に有った(個体差は有ります)最終仕上げに適した砥石三種は、①研磨が速くて形状を整えて掛かり良い砥ぎ目を付ける若狭戸前。②優しい当たりで傷を入れず寧ろ傷消しに働く中山水浅葱。③硬く滑らかな砥面で刃先の細かい整列を促す菖蒲浅葱。と言う、図らずも各々の特徴的な働きで仕上がりの差別化を齎(もたら)してくれていた訳です。しかし、ハマグリ刃なら刃先への異なる砥石でのアプローチも可能ですが、両面が平面の場合は困難ですね。精々、砥石の効果の上書きで二種のミックス狙いと言う所でしょうか。

結果的に、研ぎ直しは巣板仕上げからの最終、若狭(田村山戸前浅葱)で仕上げましたが、組織が粗く硬度も低い二丁の包丁をキッチリ切れる様にしてくれました。今回は、研磨力の強さと其れに伴う適度な砥ぎ目を利用して砥ぎましたが、平面の刃物ならば砥ぎ目は付き難いですし、泥を出してから・共名倉の使用など、幾つも仕上がりを変更可能(そもそも石毎に個性も有り)ですので、此れしか無い・こう使うしか無いとは受け取らないで欲しいです。寧ろ様々な知識を駆使して最大限、砥石の性能を発揮させ、然る後に刃物を活かす方向に繋げて行かれる事を願います。

 

 

以下は、例として手持ちの観察をした画像です。モバイル顕微鏡では、砥石館の光学の明るい奴には描写力で及びませんが、参考までに。

 

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青紙の切り出し

 

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炭素鋼のペティ

 

 

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田村山の戸前

 

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Still_2018-03-20_220113_60.0X_N0001.jpg若戸

 

 

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Still_2018-03-20_220237_60.0X_N0002.jpg若戸

 

 

 

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中山の並砥

 

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Still_2018-03-20_220903_60.0X_N0003.jpg若浅葱

 

 

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Still_2018-03-20_221023_60.0X_N0004.jpg若浅葱

 

 

 

 

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中山の水浅葱

 

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Still_2018-03-20_222041_60.0X_N0005.jpg中並砥

 

 

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Still_2018-03-20_222144_60.0X_N0006.jpg中並

 

 

 

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奥殿の天井巣板

 

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Still_2018-03-20_222952_60.0X_N0008.jpg中水

 

 

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Still_2018-03-20_224103_60.0X_N0009.jpg中水

 

 

普段、仕上げに使う事の多い砥石達で普段使いの刃物に試してみました。研ぎ目の大きさや付き方、光り方(仕上がりの細かさ)が其々に異なっています。従って、刃先の性状も其々です。

此の違いこそが刃物の個性を引き出す武器であり、好みの切れに調整する際も役に立ちます。鋭く掛かる刃先・滑らかに切れる刃先・耐摩耗性に優れる刃先等、使い方や組み合わせ方で、かなりの幅を持たせられます。全ての刃物に、自在に随意の刃を付けられれば良いのですが、簡単では無いですね。

 

 

 

 

 

北海道から再度の御依頼

 

数か月前に御依頼頂いた、北海道のT様より再び和包丁二本が届きました。柳の方は一部の欠けを取り、刃と地の対比が際立つ仕上がりを御希望でした。

 

柳刃

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研ぎ前、全体画像

 

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欠けも大した事が無いので、研承1000番(白緑2種)からです。

 

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3000番の白

 

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3000番の緑

 

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巣板で傷を減らして、更に小割りで(主に地金を)均し研ぎ。巣板から八枚、千枚と進みます。後者に成る程に錆・変色を抑え、汚れ落ちも速く食味の向上にも貢献してくれます。

 

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千枚で仕上げ研ぎです。

 

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最終は、此れで。

 

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研ぎ上がり全体画像

 

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刃部のアップ

 

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刃先拡大画像

 

刃と地のコントラストを強調するなら、地金は巣板や八枚仕上げの方が良かったかも知れません。しかし地金の質が千枚向きでしたので、つい普段通りの仕上げにしてしまいました。御好みの仕様と、かけ離れていなければ良いのですが。

 

 

 

 

出刃の方は御任せだそうなので、調子を見ながら相性次第で。

出刃

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研ぎ前、全体画像

 

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研承の400番で形状の土台を。

 

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1000番の緑で確認と正確な刃先を。刃元側の鎬下に、少し砥石に当たらない部分が現れます。(切り刃の地金の光沢部分)

 

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1000番の白で更に精度を上げて

 

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3000番の白まで掛けましたが、当たらない部分が未だ大きく

 

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久々にキングハイパーを使いました。研承以外で使っているのは、殆ど此れ(標準と軟)くらいですね。

 

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研承に戻って3000番の緑

 

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巣板で傷を減らして

 

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小割りで均し研ぎ。八枚の小割りは、砥粒の目が立っているのと滑らか二種ですが、前者との相性が良かったので其れで仕上げました。千枚よりも八枚が合う地金も、結構在るものです。

 

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最終は此れで

 

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研ぎ上がり全体画像

 

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刃部のアップ

 

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刃先拡大画像

 

 

今回は、両方とも青紙だったのですが硬さと粘りのバランスには違いが見られました。柳の方は少し硬さが控え目で、出刃は硬さと粘りが均等な印象です。

一般的には、柳は強引な使い方が少ないので硬い刃で永切れを。出刃は、其れに比しては荒く使う場面が有るので大きく欠けない硬さで。と成るでしょう。

しかし何れも、目的の使い方に照らして適切な刃先角度に砥ぎ上げれば問題無いと思いますし、その様に仕上げましたので御確認頂ければと思います。

北海道のT様、今回も研ぎの御依頼を頂きまして有難う御座いました。今後も、私で御役に立てる様でしたら宜しく御願い致します。本日、発送しましたので明後日には到着との事です。