カテゴリー別アーカイブ: 砥石の選別

1対1での研ぎ方説明会

 

先週の土曜は急遽、田中砥石店まで出かけて来ました。此の二週間ほどの間に偶々、司作の包丁を断続的に注文して貰う事が続いたのですが、其の中に砥石の採掘を手伝っている方も含まれていました。

私の研ぎ方を含め色々と話す内、調理師学校で経験も御持ちとの事ですし、研ぎのバリエーションと其々の効果を理解して貰えれば、今後の御本人の役に立つばかりで無く、砥石の購入に来られた御客さんへの対応に活かす事で、顧客サービスにも繋がると考えました。

先ず準備として前日の金曜には、説明に使う小道具を入手する為に梅田まで買い出しに。元々の手持ちのナイフ類のみよりも、効率よく伝わるのを狙ってのサンプル追加です。

手持ちの№8カーボンに関しては、ブレード自体の厚みのムラ(刃線中央が薄い・カーブ周辺は厚い・刃元と切っ先は中庸)を削り、簡易的ながらテーパー化した上で刃先方向へもハマグリ化して有ります。

其の手持ちとの対比として、新入りの二本の内、カーボンの方は最低限の小刃を一定角度で付けます。ステンレスの方は幾分、広目の小刃を付けた上で、刃先へ向かって鈍角化ハマグリ+切っ先方向への鋭角化も。

 

 

 

オピネルの№8、カーボンとステンレスです。ステンレスの方は説明の最後にプレゼントするつもりの物で、カーボンの方は自分用の予備として。

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しかしステンレスモデルは購入時に店員の方が、入れる箱を間違えたんでしょう、紐付きのモデル用の箱に入って居ました。

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一目瞭然、現物は紐が付いていないタイプなので、余分な価格の上乗せを食らった事に成りましたが、急いで研ぎ、次の日には渡す予定でしたので置いて置きました(笑)。

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当然ですが鋼材が異なっても、基本的にブレードの形状は共通です。

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研ぎ前の状態、カーボンの方の刃部アップ。此の状態では、やはり刃先角度が不安定+荒い刃先なので研ぎ直しました。

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同じく、ステンレスの方。若干ですが、刃先の状態はマシな気がしました。試し切りでも僅かながら差が付きましたし。

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研ぎ始め、320番と1000番です。

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次に対馬砥です。

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八木の島の蓮華巣板、馬路の戸前で仕上げ研ぎ。

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最終仕上げは、中山の巣板(やや硬口)からの水浅葱です。

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研ぎ上がりです。

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カーボンの方、刃部のアップ。殆ど全て、オピネルのカーブ付近は右側面の方が厚みが勝っている様です。従って、小刃を同一角度で研いでも右側面にのみ小刃以外に砥面に接触する確率が高いと感じます。

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刃先拡大画像ですが、殆ど一定角度で単純な小刃付けとして居ます。

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同じく、ステンレスの方の刃部アップです。此方の方が幾らか、ブレード側面の厚みが不均等な研削だった様で、小刃の幅も不均等に成って居ます(或る程度は切っ先方向へ鋭角化したので徐々に広がって行くなら分かりますが)。

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刃先拡大画像です。此方は、小刃の幅の中で数段階を経て刃先に向かって鈍角化している等高線が見えます。

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そして、手持ちの№8です。ブレードは厚み調整後に鏡面化し、ハンドルはカシューで防水したりして有ります。

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刃部のアップ。刃先周辺の厚みは最も薄目ですが、より重要なのは刃元から切っ先方向に向かって、大まかにですがテーパー化して有る事です。此れに因り、引き切りの際に抵抗が軽減され、手応えは軽く成り、対象の切断面の乱れも減ります。

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刃先拡大画像です。上掲のステンレスの方と同様、刃先に向かって多段階の研ぎでハマグリ化が分かります。

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手伝いの方には店内で説明の後、此の三本による三種類の研ぎの違いを、実際に切り比べて体感して頂きました。新品に単純な小刃を付け直したのみでは、紙の数枚では苦にしない物の、量が多く成ったり捩って有ったりすると走りや抜けに抵抗が大きい。

小刃に漸次鋭角化・刃先に向けたハマグリ化の工夫がされていると、其の抵抗が少なくは成るが刃体(ブレード本体)自体の厚みの不均等による影響(切れ加減が一進一退)は残る。

刃体の形状から整えた上で、刃先の調整(漸次鋭角化・ハマグリ化)まで行なった物では、最も抵抗が少なく切れも良かったと、当然と言えば当然の結果に納得して頂きました。

 

 

 

序でに、もう少し広い切り刃状のベタ研ぎ・ハマグリ研ぎの差も実験すべく、モーラのナイフを用意したのですが、新品時から薄目の刃体+ベタ研ぎに近い刃付けですので、ハマグリ化の効果が感じ難かったですね。本来は多少なりとも、より広く取った切り刃の中で構造を変えるべきでしたが、新品時の幅を変えずに研いだので、切れ込んでからの僅かな進み具合の軽さを切っ先側の半分で実現した程度で。

此れは新聞の分厚い束を切り分けるなど、ハードな対象に限った結果でしたので、厳しい条件で無ければ違いも出ましたが、帰宅後に明確な差が出せるまで研ぎ直して置きました。

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ベタ気味+軽度の糸引き

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ハマグリ気味

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あと、最近に採掘された砥石の方も見て来ました。特段、カラス好きと迄は行かないのですが、硬さと細かさ・グレーの地肌に細身のカラスを気に入って購入。ただ、私よりもカラスに拘りの有る、ブログを通じた知人に送って見るのも良いかな?とも。

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下画像は、合いさとの事でしたが戸前・並砥の何方の特徴も含んでいる印象です。砥面の難は少なく形状も整って居り、砥石の御希望が有った場合に備えて置きましょうか。

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あと、不定形な小さ目を幾つかです。先ずは、完全に上掲の合いさと御仲間の細長五角形。どうも、此の形状はちょくちょく、出てくる気がしますね。

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多少、密と粗の組み合わせが目立つのと、砥面の硬さも程々かつ砥粒の細かさも中庸と感じさせながら、鏡面の仕上がりに。

刃先の緻密さと切れ加減は最上クラスと思われ、特筆すべきは裏押しへの適正です。水浅葱などの強情さを持つ浅葱系での裏押しと異なり、比べれば若干、刃物への追従性過多かと思われるも万全の仕上がりに。此れを知ると、上掲の砥石も自分用に・・・と云う気に成って来ます。

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本当に、手の平サイズの超硬口です。切っ先・刃先の部分調整用に持ち帰りました。

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同じ砥石から割られた相方と思しき方。

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少し薄い此方は、層割れの取っ掛かりが確認されましたので、小割りにするつもりで。超硬口の小割りは、そうで無い小割りより相性探しにシビアさが求められるので、機会を見付けて追加して行く必要が有ります。今後も合いさ・並砥・戸前の各系統のバラエティーも、追加して行きたい所です。

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そうそう、話の途中で田中さんとも合流でき、その際に以前から話が進んでいた砥石の日イベントのチラシを受け取れました。

イベントでは過去から、恒例の研ぎに関する講義を開催されて居ましたが、実技の方を分離して行なうに当たり、私に任が回って来た格好です。

去年は、田中さんの店のブースの手伝いをして居り、隣の研ぎ場で苦労している方へ簡単なアドバイスもしていた関係でしょうか。兎も角、流行らない研ぎ屋としましては砥石館イベントの合間にも、こうして御呼びが掛かるのは有難い事ですね。

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最近の砥石の確認へ

 

先週の後半、少し間が空きましたが田中砥石へ出掛けて来ました。途中まで、田中さんが所用で不在の中、採掘・加工を手伝っている方に御相手を願いました。

直近までは天候不順なども有り、採掘が断続的だった話を伺いつつ、加工途中の砥石を見せて貰ったり、御薦めの砥石を手に取ったり。そうこうしていると、田中さんも帰宅したので三人で近況報告に移行。幾つかの取り置きを選別した後、当日に持ち帰る事に成った二つの小振りな砥石を決めました。

 

 

其れが以下の砥石です。加藤鉱山にて田中さんが、之までに主として採掘された巣板層(近縁の層も含む)にも含まれては居たのですが、割合的に少なかった個性の砥石が増えて来たかも知れません。

私は産地や層の違いを超えて、砥石の個性としては大きく三つに分けられると感じています。石自体の硬さの影響も大きく受ける物の、其れだけでは語れない質や砥面の性状として、サラサラ・ツルツル・スベスベに。極論すれば其々の特徴として、研磨力はサラサラ、切れはツルツル、研ぎ易さはスベスベが優れます。

勿論、鋼材(炭素量・添加物の種類と多寡)と熱処理(組織の細大・硬軟、特に粘り)に由来する相性にも関わるので、組み合わせ次第で上記内容も入れ替わる可能性が有ります。加えて特に最近は、刃物の地金にも同様の傾向が有ると、強く認識する様に成りました。

砥石のスベスベには、他のサラサラ・ツルツルに対して、より弾力に優れる傾向も持ち合わせている印象ですが、地金に関しても近い印象を受けます。触って来た中では明確にツルツルの地金と云うのは少数派でしたが、サラサラな物とスベスベの物はステンレス地金を含めて案外、はっきり分かれました。

特筆すべきは砥石・刃物の相性として、切れ・下りの速さは一端置いておくならば、最も研ぎ易さに直結する組み合わせは双方がスベスベである場合です。そう言った特性への御理解の一助と成ればと、御希望者には私の選別砥石へオリジナルの押印をしていた事も有ります。

 

 

つまり、少数派であったスベスベタイプが二つ、同時に手元に来た訳です。此れを嚆矢として、地金の特性が異なる切り出し二本で試し研ぎを通し、相性の検証をしてみます。

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二本の切り出しですが先ずは、下地を揃える目的で丸尾山の千枚(中硬)による下研ぎを行ないます。

鋼は青紙2号で極軟鋼地金。この段階の研ぎ目の細かさで、既に艶が出て居り刃・地共に、かなり光り易い傾向が伺えます。

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鋼は青紙1号で地金は極軟鋼かと思われますが・・・鍛造の加減と熱処理に因るものか、サクサクと下りが速い。もしかすると、極軟鋼では有っても製造年代や製造方法、成分に違いが有る可能性も。上の切り出しの地金に比べると、硬さ的に削れ易いのと粘りが少ない(此れも下りの速さに貢献)ので、曇り易さに繋がります。恐らくは硬さが上がれば、下りの遅さに繋がるでしょうが、光り易い方向に近付くでしょう。

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持ち帰った内の、やや硬さで優る薄い方から試します。

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青2の方は千枚の後に、順当に光り方が向上しました。刃・地共に砥粒の目の細かさを素直に反映しています。

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一方の青1の方は、刃金の仕上がりに比べて幾分、地金は控え目な仕上がりに。砥粒の形状や均一性、力加減への依存が強めで、かすれ気味な研ぎ肌に成りがちです。

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もう一つの、やや弾力に勝る方の厚い砥石。

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研ぎ易さは、更に優位では有りますが・・・硬さが少し控え目だけあり、光り方も其れに倣っています。弾力に加えて、泥も出るタイプですので研ぎ手には親切な性格では有ります。

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控え目な硬さと泥に因り、光り方が若干ながら弱く成って居ますが、或る意味で神経質な地金を相手にしても、相当に気が楽ですね。従って地金の仕上がりも、僅かに光り方の低減と引き換えに、相応の均一さを得やすいです。

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比較用に、もう少し硬くて砥粒の目が立って居る手持ちの砥石(以前、手伝っている方からサンプルに頂いた物)でも研いでみます。殆ど原石に近い状態でしたので、表裏に渡って削り出しました。

砥石の質としては、多少の難を抱える物です。砥面の層は斜めに合流して来ている部分も有りますし、其れ以外にも流れの向きが不均等だったり、酷くは当たらないものの数本の筋が入って居たりします。

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青1の光り方は、今回の持ち帰った二つを超える仕上がりです。前述の通り、難点も有りますが其れ等を避けたり、より状態の良い部分を選んだりすれば充分に満足すべき結果を得られます。

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青2の方も、光り方は向上しました。但し、砥石の研ぐ部分選びや研ぐ際の力加減・水加減・速度加減に留意を要します。

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やはり、此の地金を真に光らせるには超硬口の浅葱クラスによる研ぎが必要な様です。当然ですが、浅葱にも三つの個性の分布が有りますので、研ぎ目(擦過痕)の付き方・消し方は様々です。

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もう一つ、私の手持ちの切り出しでは神経質な地金を持つ物を挙げて見ます。

青紙の2号だったと思われる刃金に極軟鋼地金ですが、此方は組織が細かそうな割りに、地を引き易い印象です。硬さはヤワ目だと感じますが、やや粘りが強い様です。ですので、上掲の貰い物の砥石(最も良い部分使用)では鏡面まで今一歩、しかし目の立って居る砥粒の浅葱では地を引く厄介さです。

そこで下掲の、やや硬口~硬口の巣板で試すと、妥当な仕上がりと成ります。巣板ならではの滑走に加え、或る程度の泥も助けてくれて有り難いです。

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画像では判別不可能ですが、軟鉄部分は金属組織の模様が現れて居ます。砥面の硬さ・砥粒の細かさ・泥の出方・研磨力(摩擦力の働き方の種類にも因る、消しゴム的・鑢的・クレンザー的な違い)の影響で変化が。

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砥石本体のまま研ぐ場合は言うに及ばず、小割りにしても付き纏う相性問題ですので、今後も新たな砥石との出会い・その相性探しは永遠に終わる事が無さそうです。従来の鋼材でも、作り手と作り方で千差万別な上に、今後も様々な鋼材が出て来るでしょうから。

 

 

 

 

 

手持ちの本焼き包丁に合いそうな砥石のテスト

 

珍しく暫くの間、研ぎの御依頼が続いていたのが落ち着いて来た事も有り、手持ちの包丁と砥石の相性を確かめる機会だと考えました。手持ちの包丁と言っても、たかが知れているのですが年間を通して、余り使用する機会が無い包丁類は、結構な数に上ります。いや寧ろ、主として使っている包丁は殆ど決まっているのが現状です。

その使っていない代表が本焼きの二本なのですが、少し前、相性的に好適と思われる砥石を入手しましたので、試してみる事にしました。しかし、幾ら全体が鋼で出来ている(熱処理的にマルテンサイト未満のパーライト部分も有りますが)とは言え、無駄に刃金を減らすのは気が引ける部分も有りました。

そこで、料理(鳥牛蒡)の途中に試し切りを兼ねて使用してみる事に。御蔭で、目的には少々そぐわない形状にしてしまった部分も有りますが、まあ食べるのは自分なので問題無しです(笑)。

 

 

 

尺の柳と五寸五分の鎌型薄刃の二本、共に白紙の本焼きが今回、俎上に上げる包丁です。因みに過去の研ぎで仕上げに使った砥石は、神戸の削ろう会を見学した際に購入の奥殿産巣板、硬口~超硬口です。

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薄刃の方、研ぎ前の状態、全体画像です。

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同じく刃部のアップ。

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裏です。

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牛蒡の端切れを輪切りで薄く。

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千切りも少し。

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柳の方、研ぎ前の状態、全体画像です。

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同じく、刃部のアップ。

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裏です。

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人参での千切り。

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今年の山椒も出回り出したので?冷凍していた去年の分の山椒の実を解凍し、スライスに。

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途中で空腹を覚えたので、フランスパンとチーズを食べる序でにトマトも用意しました。折角なので、試しに此方は賽の目に。

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切るテストの最後は、氷を削って見ました。季節的には少々、早いですが・・・過去最大量を試すと驚く位、かき氷でした。

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硬さと意外な弾力に加え、金属にとっては低温脆性も関わって来ますので、対象としては結構、ハードな氷ですが刃先に損耗は無し。私の通常仕様である、切れと永切れの両立を目指した研ぎ方ですので、狙い通りの結果が確認出来ました。

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今回、最終仕上げに使って見た砥石。中山の合いさと見られる物、硬口です。

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薄刃の方から、丸尾山の本焼きの中継ぎに向く巣板各種の後、上画像の砥石で。

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研ぎ上がりです。

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同じく柳も。

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研ぎ上がりです。

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今回の砥石は、以前からの「本焼き用の最終仕上げ砥石」に比べ、やや硬口でしたので、複雑な面構成の研ぎ方をするには、薄い研ぎ斑が出易かったり、傷を消すのに時間が掛かったりしました。

ただ、時間を掛ければ傷が消えるに留まらず、より輝く研ぎ肌と鋭利な刃先が得られるのが分かりましたので、従前の砥石の代替よりも、使い分けで活躍して貰う事にしました。

 

 

 

形状の最終仕上げ・傷消し・研ぎ肌の均し・切れの各要素を兼ね備え、最も重宝して来たのは下画像の中山です。これ等の後継と言うか代替に成る砥石も、おいおいに追加したいと思っては居るのですが・・・殆ど同じ性格の物を見付けるのは、中々に難しい様ですね。

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他にも既に期待出来そうな物は、有るには有るんですが何となく、使い易そうなのは「もっと難儀な局面で使おうかな」との思いが拭い切れず(笑)。ついつい取って置きたくなったりで。

従って現在、本焼き用の主力として居る砥石達が、大幅に擦り減る迄に相応の砥石を追加できることを目指し、引き続き選別に出掛けねばとの思いは持ち越しですね。

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一週間前の砥石選別、その他

 

事前に、Y様の御都合を伺った所では出張中との事でしたので、久し振りに?単独で出かけて来ました。とは言え、御薦めが有れば取り置きを・・・との事でしたので、その点も念頭に選別して来ました。

引き続き中山の加藤鉱山主体での採掘品から、今回は薄目とは言え砥面の広い、大き目レーザー型を含めた様なサイズを入手する事が出来ました。何時もながら、親切に対応して頂き感謝です。

 

 

一つ目は、中硬~やや硬口の大型レーザー型ですが、質的に炭素鋼に向いている印象です(巣板と戸前の中間?)。層の境界の一端が、極一部に現れてはいますが余り邪魔になる程では無かったです。

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二つ目は、やや硬口のレーザー型の巣板です。質的には炭素鋼・ステンレスの両方に使えそうで、此方はY様に試して貰っても良いかも知れません。現在の手持ちの包丁はステンレスの牛刀であったと思われますので。

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三つ目は、上画像の二つ目が少し砥面の不均一さを増した感じの巣板です。サイズは大き目のレーザー型で同じく、やや硬口で研磨力・滑走に不足は無く、普通に使える物です。性格としては、特にステンレスに好適でしょうか。

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四つ目は、薄目ながらも使い勝手の良さそうな巣板、薄っすらカラス混じりです。カラス巣板で難が無く、性能も良い物は少数派(尚且つ砥ぎ易い物は更に希少)ですので、以前にカラスに関して御興味を御持ちかと御見受けした、直近のナイフ類を御返送したM様へ同梱してみました。

何回か前の記事に成りますが、私の手持ちの超硬口のカラス巣板よりも、扱い易い硬さと細かくて均一な砥粒で、容易に仕上がり良く研げます。

先々で、改めてカラスを探される事に成るかも知れませんが、其の前に予備知識として参考にして貰えればと。勿論、一番は試し研ぎ自体を楽しんで頂けるのが何よりですが。

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此方は、幅は狭いものの厚みは充分で、包丁・ナイフ用として扱い易そうな合いさっぽい物。側面・砥面上に幾らか、難が有りましたので自分用にしようかと。砥面の難は部分的に避けたり、研ぐ方向を合わせるなど出来れば、普通に使えるレベルでは有ります。寧ろ相性的に良さそうな、本焼き包丁を研ぐ際には抜きん出て活躍してくれるでしょう。

まあ其れだけでは勿体無いので、積極的に相性探しの場面では試して行きたい位には、扱い易いサイズで有り難いですね。

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以下は小振りなコッパの二つです。浅葱と戸前の中間的な感触で、未だ皮から減らして行く内に硬さも向上して行く途上ですが、粒度の細かさと合わせて、確り感と滑走も適度に備えた研ぎ易さが特徴です。

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カラス巣板の出る層からの物と思われ、明らかなカラスは確認出来ませんが砥面の模様・砥粒の密粗が入り混じる(均等に分布していて問題無く研げる)様子から、同質の石と思われます。

やや確りした筋・弱い筋は有りますが、研磨力に優れ研ぎ易い性質で、此方と上画像の二つで小さい刃物であれば何れか一方・或いは合わせ技で仕上がりそうです。将来的に選別できる可能性の有る砥石の御依頼も頂いている、ブログを通じた知人向けにサンプルとして送って見る事にしました。

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他にも、人造の320・1000・1500・2000・3000番を一つずつ。特に興味が有ったのは、2000と1500です。2000は黒幕を持っていましたが、1500は之までに触れて来ませんでしたので、如何な物かなと。聞く所に由れば、木工関連で重宝されるとの事でしたが、事前に購入の6000が引け傷の入り難い特性でしたので、其れを引き継いでくれている事を期待しつつ、間を飛ばさず仕上げて行く使い方との相乗効果で、良い結果が得られればとの狙いです。

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最後は、田中さんの所で一緒に採掘に携わっている方から、やや大き目のコッパを頂きました。質は良いと思うので、自分で面を付けて試して見て欲しいとの事で。

有り難く、ボチボチ加工して使えるように仕上がったら自分用に使わせて頂きます。戸前層の近辺の、薄っすら緑色の並砥よりかと予想しています。

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オマケは、砥石選別の前に立ち寄った店舗で購入の、御菓子です。十年以上前に一度、買いに行ったきりでしたが珍しく、何とか場所は覚えていた様です(笑)。

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籠に入っていた物は、近場の知人向けに。「

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此方はイベント時に御世話に成っている、砥石館の常連さん向けに。

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一応、自分用に。別に、特に祈願する物も無いのですが、苺とバニラの組み合わせに惹かれて。

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他には、自宅から比較的ですが近い場所に鯛焼きの店が有る事を知り、出掛けてみました。偶々、コラボ商品も有る期間で時節柄、文字通り桜鯛?という事に成りますね。

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現代風のカスタード以外を購入。天然鯛焼きの意味は、鉄の型が一匹ずつ作られているとの意味なんですね。確かに、大分前に成りますが一度、聞いた事が有った様な。

自分では、きんつば・餃子・パン類でも、皮が薄くて具が多いタイプを敢えて好む方では無いのですが、此方の薄皮仕上げには違和感が少なかったです。ただ、薄く成って居る尻尾の先まで餡が入って居たので、此処くらいは生地の味だけでも良かった気がします(笑)。

良く焼けた皮の風味が強いからか、くどくない中身に負けないからでしょうか。特に、鳴門金時の餡は外側の焦げと相俟って、焼き芋感が強かったです。桜餡は、桜の葉の塩漬けを利かせた白餡な感じかと。しかし、東京観光大使の一人に就任したエリートさんには恐縮ながら、一番のお気に入りは小豆でした。

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最後は御近所の和菓子店で、この時期に数回は買いに行ってしまう此れです(今年二回目)。草餅とは異なる、草団子もそうなのですが、桜餅は季節の内に・・・な意識が強くて。少なくとも、あと一回は買ってしまいそうです。

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先週の砥石選別(Y様と共に)

 

先週は少し久し振りに、砥石の選別へ出掛けました。先方の田中さんには、事前に御一緒する事を希望されていたY様の帯同も、諒承して頂いた上で現地集合と成りました。

挨拶後は、面付け後の加工済み・ほぼ原石のままと色んな様態の石達の中から、自分用・Y様御希望の両方を、説明を交えつつ見て行きました。

最終的に、Y様は日照り山のウロコ(でっかいサン型)と中山の水浅葱(硬口~超硬口)のスタンダード品?を。私は先月末に御依頼を頂いたS様用のカミソリ砥として、中山の水浅葱の超硬口、自分用にも同種のサンプル、そして対馬砥の四つ割りを購入。

 

 

 

依頼済みにより、用意して貰って居たカミソリ用の水浅葱、硬口~超硬口。下りと滑走の両立を感じさせる物で、性能的に不満は無いものの剃刀としては、やや掛かりの良過ぎる刃先に仕上がるかも知れません。とは言え、ほんの小さい共名倉でも添えて置けば、軽く研いで貰う事で回避も可能かと思われます。

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下画像はサンプル用の水浅葱。上画像の物とは、採掘された層が離れていたのか、砥面の質・裏の色柄共に異なる石です。此の系統のはみ既に幾つか持っていますが(サンプルとは?)、使い勝手の良さそうなサイズや形状を見ると、追加してしまいます。

とは言え、未だ皮から少しだけ削った部分が砥面に成って居る為に、色調の混ざり具合から予想される以上に研ぎ感(下り・細かさ)にバラツキが残って居ます。この点は、上掲のカミソリ用と大きく違う現状ですが、あと1mmも減れば落ち着いて来るであろう事は、他の先行して使用済みの同系統から明らかです。

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実は、砥石の日イベント時の応援への対価として、私の取り置きボックス内の幾つかとは別に、対馬の四つ割りも付けて頂いたのですが、今回の訪問に際して、もう一つ分の対馬も注文し、合計で八つに。

其の内、半分程は身近で御世話に成って居る方々へ贈ろうかと考えて居り、自分用にも一つ二つ・・・と成ると、販売用の在庫としては心許無いので、あと一つ分は切って貰うのが良さそうですね。

何しろ、取り回しに優れるサイズに加えて手頃な価格、取っ付き易い硬さと細かさなので、天然砥石初心者の方にも薦め易いのは有り難いです。

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先ずは手持ちの会津砥で切り出しを研ぎます。中々の食い付きで、研磨力が有りますが傷の深さは控え目と言えます。

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対馬砥で研ぎ。白っぽかった刃金部分も光って来ますね。今回の対馬は硬口でしたので滑走が良く、食い付きも程々で研ぎ易い質でした。従って光り方も、やや強い仕上がりに。

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しかし念の為に中継ぎとして、やや硬口(今回の対馬の方が硬い位ですが)の中山の合いさカラス入りで。

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カミソリ用の水浅葱では、ほぼ完全鏡面と言って差し支えない結果に。茶褐色の砥面では有りますが、既に硬口~超硬口の水浅葱としての性能を遺憾なく発揮しています。

このまま使い減らすと、徐々に浅葱色系統の色調が大半を占めて来るでしょうが、其の硬さ故に相応の期間は要すると思われます。しかし面積は充分ながら、厚物とは言えない寸法なので、減りが遅いのは歓迎すべき利点に成りますね。

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前述通り、安定した砥面の状態では有りませんが、砥石の向きの選択・砥面の使える部分の選択により、下画像程度には仕上がります。

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Y様には此の度の田中砥石訪問が、幾らかでも今後の砥石の見方や使い分けに資する体験と感じて頂けていましたら幸いです。

 

 

 

 

 

先日の砥石選別

 

数日前に、田中さんの所へ出掛けて来ました。一つには、少し前から御希望の砥石に付いて問い合わせを頂いて居たG様への浅葱系統の砥石を。もう一つには、かずけん様から御希望の小さ目かつ硬口の砥石群。更には、今月末に(砥石の試し研ぎ・研ぎ講習で)御越しに成るA様への用意の追加として。

 

 

先ずは、今回で一番大きい砥石である幅広40型水浅葱(田中さんの呼称では此れも惑星と)。一部、不定形では有りますが長さも幅も充分な物。G様の御要望は、サイズ面でも余裕の有る物では在りましたし。

硬口で粒度細かく研ぎ感は、かなり研磨力が強く食い付きも強烈。従って滑走は手応えが重いものの、ダイヤで摺る・共名倉の使用で改善しますが御依頼の内容的には、刃先の処理と裏押しですので寧ろ好適かと思われます。

一つの砥石で延々と研ぎ続ける場合は、滑走も或る程度は欲しく成ったりしますが、食い付きが強く上滑りし難いと云う事は、即ちストローク時の角度維持に優れる事をも意味しますので。(平面で無く不安定に成りがちな立体的な研ぎ方)まあ平面の刃物でも当然ながら、研ぎ手次第で如何ほど充分な仕上がりに成るのかは、画像で御判断下さい(笑)。

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此処からは、かずけん様への小振りな五個と成ります。一つ目は水浅葱のレーザー型相当。硬口~超硬口の物です。裏が未だ手付かずですので、相当に不安定ですので補助付きで板などに貼って貰うのが良さそうです。剃刀研ぎでは、手持ちで可能かと。

研ぎ感は少し食い付き重め、滑走は力加減とストローク幅で調整可能なレベルです。僅かにシャリシャリの感触が有りますので、吸着型(弾力タイプ)や泥型(研磨剤供給タイプ)では無く鑢型っぽいですね。

一定の硬さ・細かさの水準を満たしていれば、画像の状態までは仕上がるものですが・・・刃金・地金の癖(鋼材別:添加物に因る耐摩耗性の大小。熱処理の加減に因る組織の細かさ・粘り加減)次第で反応や仕上がりは異なります。其の次元に至っては、使用者(研ぎ手)の感覚と判断に委ねられて来ます。

田中さんの呼称に従えば、デイダラボッチに近い種類かも知れません。純然たる物は、もっと紫がかった暗褐色部分が目立つ独特な外観です。

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二つ目は、何故か之までに少数派?だった浅葱。硬口で粒度細かいですが、その割に泥も幾分は出て滑走良く研ぎ易い性格。研磨力は泥に依拠するタイプと言えますが、その割には曇りがちと迄は行かない仕上がりです。

形状的には、砥面と底面で斜めに成って居ますので、板などに掘り込んだり補助を付けて貼って貰うと良いかも知れません。私は変な形状に成れているので、普通に研げましたが。

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三つめは巣板(少し並砥寄り?)ですが、やや硬口~硬口の粒度細かい物。上滑りする事無く、滑走もマズマズですが少しシャリシャリするタイプ。丁寧に研げばシャリシャリの副作用たる研ぎ斑や研ぎ傷も抑えて仕上げられます。

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巣板ですが、相当に細かい粒度です。硬さは、やや硬口レベルですので泥も適度に出てくれ、研ぎ易いです。その割には曇り加減が弱目で、明るい仕上がり。上の三つより更に小さ目ですが全体的に難も無く、形状面からも此の系統としては完璧と言えそうです。

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此方も、より小型な物ですが硬口~超硬口、そして超微細な砥粒との印象です。然るに研磨力も相当に持っており、仕上がりは御覧の通りです。僅かなシャリシャリとソコソコの吸着、二つの要素がそうさせていると思われます。

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実用、或いは資料(サンプル)として自分の分も幾つか。

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印刀用並みのサイズですが、カラス入り巣板です。カラスが有ると、やや研ぎ感が(違いを強いて挙げれば)ゴロゴロしますが研磨力が強い場合が多いですね。仕上がりや切れは、難さえなければ相当に優秀です。

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対して、此方は通常?の巣板。一定の感触で研ぎ易く、普通に研いで普通に仕上がります。ただ、其の仕上がりのレベルは普通以上と言えそうです。

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珍しく、白巣板が有ったので期待を込めて試してみました。予想通り相当な研磨力と共に、斑が少なく纏った仕上がりでした。此れを見越して、既に当日の時点で、自分用に幾つか採って来てくれる様、注文済みです。聞く所に因れば、採掘し難い箇所だか取りに行き難い場所らしいので、悪いなあとは思いつつ(笑)。

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水浅葱、正真正銘のデイダラボッチです。此れの特徴は、砥面の確り感が上乗せされている印象で、圧力を掛けて研ぐ際の狂いが少ないと感じます。

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選別の後半、田中さんから此れも持って帰らないか?と言われて砥石群に入れました。砥粒は結構な細かさで、弾力タイプかつ泥タイプですので研磨力の有る、中硬~やや硬口砥石でした。筋の類が難点ですが、其れ等を避けて研げるなら問題無いですし、このタイプの質は相性探しの面からも有用だと思われます。

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普段使いにも秘蔵品にも、純然たるカラスは持ち合わせていないので、偶々ですが見付けた難の少ないカラス巣板を、完全に資料として持ち帰りました。

カラス混じりでも多少はゴロゴロしますので、紛う事なきカラス故に研ぎ感は推して知るべしでしょう。ただ、安定してストローク出来れば別に、普通に使って普通以上の仕上がりまで持ち込めます。

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あと態々、当方に来られるA様には、出来るだけ色々な用意をしておきたいので、合いさと思しき物も持ち帰って置きました。

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G様からは先々、カウリ用に向いた砥石も御依頼を頂いていますので、事前のチェックとして現在、採掘中の加藤鉱山産出品の中から適不適を試しました。先々では、採掘されていく層の中で適合品を見付けるべく、探求を続ける予定です。

其れが結果的に、マニアックナイフ詰め合わせの御依頼を頂いたM様の、恐らくカウリと思われるナイフに役立ちそうでも有ります。作業開始まで、あと御一人の先行分が有りますので、もう暫くの御待ちを御願いしますが。

 

 

 

おまけで、以下の画像三枚は色合いは近いですが其々、合いさ・戸前・巣板でのテスト結果の拡大画像。サンプル刃物は自作のカウリ(積層地金・ロックウエル硬度66.5~67のナイフ)。

 

合いさテスト結果

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戸前テスト結果

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巣板テスト結果

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勿論、同一産地の同一層の砥石でもバラツキは有るので、飽くまでも私の手持ち同士での比較ですが、合いさは対象の表面を自らの性状に馴染ませて均してしまう印象。戸前は其れよりも、研磨力強めに因る結果か、自然な研ぎ肌に見えました。巣板は今回に限っては、やや研磨が進み難い研ぎ感でした。

何れも、人造の研削力が強大な物に比べれば、刃先最先端を超薄く研ぎ下ろす能力は控え目かも知れませんが、特に合いさ・戸前は充分に使える刃先を形成してくれていますので、永切れでの優位性と合わせれば充分に使えそうです。

之までに手持ちで試して来た範囲内では、若狭の超硬口かつ弾力タイプの浅葱くらいしかカウリには難しいかと思って居たのですが、(並砥はテスト不足ですが)中山の合いさ・戸前の中で行けそうな手応えが得られて一安心です。ただ、マニアックナイフ詰め合わせの中には、ZDPと思しき「Z」の意刻印が入って居る物も有り、油断は禁物ですね(笑)。

 

 

 

 

 

砥石の日のイベント

 

10月の16日は、砥石の日(10月14日)に関連するイベントが「みやこめっせ」で行われました。かなり昔から存在を知っては居たものの、訪れる事無く過ごしていたのですが・・・田中さんからの御誘いで、出店のブース?を御手伝いする事に。

 

 

当日は、朝の七時に田中砥石の店の前に集合しましたが其の際、扉の前に張り出されていた案内を撮影しました。

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其の後は車に載せて貰い、会場に移動。裏の搬入口から砥石・資材と共に、かなり大きなエレベーターで内部へ。

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入って見て初めて知りましたが、結構な展示も有りそうでした。特に、砥石の日イベントの会場の横でも行なわれていた絵画的な参加型?イベントも盛況そうで。

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最初は、長机を配置して椅子を並べ、展示物に移りました。

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田中さんのブースの隣では、人造砥石の試し研ぎ体験が行われましたが、実技指導と共に、隣の教室での講演の講師も兼務されて居て大変そうでしたね。

空いている時に訪れた研ぎ希望者の方、数人には簡単な説明やアドバイスをさせて頂きました。

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あと、中央のスペースでは二人掛かりでの手挽き鋸の体験も。

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天然砥石の他にも、人造砥石や研磨に必要な素材や道具の展示も豊富に有りました。

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天然の中には、非売品で展示のみの石も。

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各社とも、イベント価格と思われる御買い得品を並べていた様子で、来訪者も満足そうな表情が多く見られました。相当に低い価格設定で在った、明らかな良品は流石に瞬殺でしたね。始まる前から私も、気に成って居た位の物だったのですが・・・(笑)。

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上記の石は、前列右寄りの鎌砥サイズの物です。その他、人造も合わせて、大小様々な産地の天然砥石。私以外には、田中砥石側として御三方が対応。

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試し研ぎを出来るように、研ぎ桶も一つ設えてはいたのですが手狭な環境で恐縮でした。

中には、主として水木原の内曇り二種で迷われている方も。多少、感想も交えて遣り取りさせて貰ったのですが、此の方からは二日後の今日、意見など聞ける機会が有るかとのメールを頂いたりしました。

実際の私の来訪者への対応としては、砥石の販売に資すると言うより、砥石と研ぎに纏わる四方山話・切り方と研ぎ方に付いての身体操作・果ては鍛冶屋との会話などで、田中さんの役に立ったか甚だ疑問だったのですが・・・多少なりとも反響が有ったと云う事は、無駄では無かったかなと納得する事にします(笑)。

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他にも、久し振りに関東周辺の天然砥石の研究をされて居る高野さんとも御会い出来たので、望外の喜びでした。

当日、イベントに参加する機会を頂けた事、御来場下さった方々には、感謝致します。

 

 

 

 

会場を後にして店舗に戻った所で、取り置き分の対馬を受け取りました。その際、当日にざっと見渡した中で目に付いた、小振りな石も貰って帰って来ました。

下画像が、本当は一番初めに目を付けて取り置いていた方で、難の無さと硬さ・細かさでは(左記に持ち帰った対馬より)上の物です。

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下画像の左が、先の分。

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此方は、中山の合いさです。超硬口と言える硬さと、相応の細かさですが層割れが有ったので、カシューで入念に養生しました。

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人造の1000番で研いでから、今回の対馬。やはり人造中砥の後で、天然仕上げ砥に繋ぐのに重宝しそうです。特に、やや軟口~中硬の巣板が手元に無い場合、傷消しの役割を担ってくれます。

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流石に、同じく持ち帰った硬口以上の合いさとは、硬さも粒度も差が大きいので、やや硬口の戸前を挟みます。此れが無くても、対馬の泥を合いさに載せたり、合いさ自体をダイヤで泥出しすれば、時間は掛かるものの、近い仕上がりには出来ます。

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戸前を挟み、改めて超硬口の合いさで。浅葱もかくやの仕上がりに、狙い通りだと嬉しく成ります。自分では、今後も戸前・並砥・合いさと出て来るであろう中でも、合いさの使い勝手が良さそうな感触を得ているので、なるべく小まめに通って見て行きたいと考えています。

同一品目の小さ目のコッパを各種、取り揃えて試して行く事で、刃物形状や鋼材に対して如何なる仕上がりに成るか、判断が出来るので使い方の目安が掴めるばかりで無く、何れ来たる大き目サイズを購入する場面に備えた、情報収集にも役立ちます。大きな出費となるレベルの砥石には、自分にとって有用な質と性能で有って欲しい物ですね。

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最近の事

 

先週末は砥石館で、鋸刃を素材とした切り出し作りイベントの予定だったのですが・・・参加希望の申し込みが無かった為に、中止と成りました。前回の同一イベントでは、ソコソコの人出が有ったのですが、コロナが小康状態に成って来たからでしょうか、地味なイベントへの需要が減ったのかもと(笑)。

しかし当日飛び込みの方が有るかも?の想定の下、念の為に砥石館へ向かったのでしたが、その道中で田中砥石店へも立ち寄り、以前からの取り置き+当日に見つけた手頃な砥石を入手。見つけた物は上野館長にサンプルとして渡し、残りを持ち帰りました。(館長には田中さんの所の対馬の紹介と、頼めば小さなサイズへの切り分けもしてくれる旨の説明も)

 

下画像は、前述の取り置き分です。表裏共に正確な面は未だ付いていません。

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上画像の大きい方、巣板層近辺の戸前・並砥に近く成って居る物で、硬さも中硬~やや硬口で扱い易い性質。仕上がりは鏡面近くと言うか殆ど鏡面ですね。

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此方は小さい方ですが、中山の超(超)硬口で、細かさ共に超硬口の浅葱と遜色ない種類の石。ただ特徴的な、何故か巣の入り方のピッチが狭め、従って巣の層に当たった時が少々、心配に成ります(笑)。とは言え、中々に其処までは到達しない(研ぎ減りしない)だろうと思われる硬さです。

若干、食い付きの強さから来る滑走時の重さは感じるものの、仕上がりの良さは、性質の硬さ・細かさに恥じない物。

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浅葱系統の二つの内、形状が素直な方にのみ面を付けました。偶々ですが、其方は白っぽい方で。

研磨が早く、滑走は僅かに弾力を感じさせる適度な食い付き。そして仕上がりは、硬さの割りに一段階上の硬さの砥石に匹敵する性能です。白っぽい物は、砥粒の目が立ち過ぎていると気難しさも出ますが、そうで無ければ研磨が早くて便利です。

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此処までは、カートを通じてコッパを御買い上げ下さったA様が、一月後あたりに砥石の選別・試し研ぎに来られる予定との事で、その際に提案してみるシリーズとして確保。更に、当日までに田中さんの所へ通う内にも、御要望に適いそうな追加も持ち帰る予定です。何とか御探しの物を見付けられると良いのですが。

 

 

 

此処からは、以前からカートにアップしようと予定している分です。中々、操作が煩雑そうで手付かずに。

現地で軽く面を付け、判を押して貰った為に辺縁部は平面まで到達していません。とは言え、実用に足る性能は確認出来ました。現在、頂いて居る研ぎの御依頼が完了すれば、また暇が出来るでしょうから其の折にでもアップを試みようかと(笑)。

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あと、前回に貰って帰った小割り用の石ですが、砥石館の鋸で切り分けてから鑿で薄層に。最後はダイヤで摺って仕上げました。恐らくは天井巣板の卵色(カラス入り)かなと言う印象で、このタイプは弾力が有り引け傷の心配は少なく、研磨力は結構な物だと思います。

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定期的に御依頼を下さる、北海道のT様から送って頂いた、昨日到着の長いのにも丁度、良いかも知れません。しかし御依頼を頂く度に五分五分の割合で、直前に他にも御依頼を頂いて居まして・・・偶々、今回も御近所の方から持ち込んで頂いて居ります。普段はガラガラなのに不思議ですし、そういった御期待?に応えられないのは恐縮なのですが(笑)。

先行する御依頼が完了、加えて砥石の日のイベントの手伝いを終えましたら、粛々と取り掛かる予定ですので、宜しく御願い致します。

 

 

 

 

 

昨日の砥石選別

 

昨日は、かずけんさんの御依頼である「水浅葱の白っぽいの」を探すと共に、前回訪問時に御聞きした、倉庫の整理の結果を見てきました。

多分、此れがそうかなと思われる物の一つは、大平の所謂、いき紫の戸前が有りました。初めて見る位に濃い紫で、其れが全体に渡って居る逸品。やや柔らか目で、傷消しに適する質でした。

ただ、山と積まれている原石・仕上げ間近の加工済み砥石のチェックで、現場の画像を撮ったりは出来なかったのですが(笑)、週一ペースで採掘に出ているそうですので当方は、月一か二のペースで覗きに行ければと。

 

 

 

下画像は水浅葱の層の中でも、数個の白い物の中から選んだ物。他の石は小振りなレーザー型近辺であり、かつ白さと砥粒、双方の均一さで此れに一~二歩譲る物でした。

比べて此方は、23cmの長さと7cmの厚みを持ち、片手で気軽に取り廻せるサイズの上限に近いかも知れません。

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砥粒が細かく、適度な硬口では有るのですが、結構な研磨力を発揮しつつも超硬口並みの鏡面に仕上がります。

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続いては、ブログを通じての友人の御希望で。恐らくは天井卵色巣板のカラス、硬口です。何処かのネット画像で、此れと近似の物を目にして強く食指が動いたそうで。

探し出した此方は、拝見した当該画像の物と色柄・厚みのみならず、砥面以外を皮が覆って居る点も含めて酷似している為、代替品としては申し分無い筈。まあ、そもそも出元も採掘時期も同一ですしね(笑)。実用面よりも色見本としての用途との事です。

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あと既に購入済みの、巣板から並砥の系統に成って来たサンプルと共に、合いさに成って来ているサンプルも合わせて送ろうと考えていましたので、下画像の石も。

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5cmの厚みでしたが、中央付近に一部、層割れの端緒が有りましたので、割って貰いました。下画像は、上側であった一枚目裏側と、下側であった二枚目に付けた砥面。

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上側の一枚目を濡らした所。相当に鮮やかな色彩が。田中さんに拠ると、基本的に紫が出るのは合いさだそうですが・・・戸前でも黄色・緑系に加え、紫が出るとの事です。

しかし、黄色っぽくても分類としては合いさに成る石も有るそうで、見極めは一筋縄では行かないですね。とは言え私としては従来通り、高品質の砥石かどうか・研ぐ刃物と合うのかどうか、が最大の関心事でしか有りません。

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上側に比べて、如何にも地味な下側の試し研ぎ。殆ど超硬口ながら、食い付きの良い砥面に因り滑走は控え目。其の分、研磨力は強く、仕上がりは硬さに応じたレベルを達成しています。

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もう一つ、やや硬口~硬口の殆ど合いさを。此方は、最初の大型水浅葱と同程度の長さです。幅は狭い部分が目立ちますが、普通に中型の刃物も研げるでしょう。

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硬さ・細かさは二つに割った合いさより、僅かに劣るものの其の分、研磨力は明らかに上回り仕上がりは近いレベルに迫ります。

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下画像は、もう戸前と呼んで差し支えないとの事でしたが、確かに色柄のみならず研ぎ感も巣板とは懸け離れています。

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やや硬口~硬口ですが、泥は少ないままに研ぎ汁は出て来ます。つまりは砥石自身の摩滅よりも研磨対象たる刃物の方を多く下ろしている訳です。

合いさの系統は此れに比べると、下ろす・食い付くとは言いながら、研ぎ減らすよりも磨く方向での性能に強みが有る印象です。

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下画像は巣板では有るのですが、合いさの要素・並砥の要素も混じっているかの研ぎ感を強く感じ、仕上がりも其れに準じます。大まかな傾向としては、純然たる巣板に近い程、相当に硬く無ければ鏡面的な仕上がりには成らない様子。然るに、若干ですが硬さ控え目ながら鏡面・ほぼ鏡面に成るのは、巣板以外の要素を含むと考えて良さそうですね。

従って、遠目には薄っすらカラス混じりの巣板と見える、中硬~やや硬口程度の砥石ながら、仕上がりは鏡面に迫ります。研ぎ感も幾つかの要素が入り混じった滑走・食い付きで複雑な印象。

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最後は、小割りにする為に分けて貰った石。此の系統は、弾力を持った当たり方をするので、刃物に引け傷が入り難く、その割にグイグイと食い付く研磨力が有ります。

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其の他、販売用の小振りなコッパも2~3、選別しましたが今回は、取り置き箱に入れて来ました。愈々、戸前・合いさ・並砥を直接狙いで採掘する時期が近付いて来ている様ですので、順調に選別を進めて其方の種類でも、バラエティーを含めシリーズ各種を組めたら良いなと考えて居ます。

 

 

 

 

 

一昨日の砥石の選別

 

一昨日は又、砥石の選別(頼んでいた物の引き取り?)に行って来ました。主にはブログを通じた知人からの御依頼品ですが、日野浦さんからも鎌研ぎに使うのでと依頼されていました。

 

前者からは三河対馬のペア、後者からは大村砥の御要望でした。偶々、少し前に店先に並んでいた三河の数本を見て、一つを自分用に取り置きして居た事。その後の御依頼で対馬を選んだ結果、置かれている対馬の性能に感心した事から話題を振った所、次の御依頼に繋がりました。大村砥に関しては、此れも以前から電話による日野浦さんとの遣り取りで、話題に出ていた為です。

 

 

先ずは、三河です。此方(下画像)は、私用に取り置きしてくれていた物です。少し前には数本、纏めて並んで発送待ちのシーンを目撃したので、未だ相当数の三河が有ると踏んでいたのですが・・・もう此れと、田中さん本人の分しか無いとの事で。

従って、ブログ友さんには私の分を。私には田中さんの分をという事に成り、残すは店舗用の見本のみに。

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(空いた私の取り置きボックスに自分のを入れてくれましたが)

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当日は、珍しく希少な日照り山(戸前の蓮華入り)を試し研ぎ出来る機会も有ったのですが、余りに珍しい物は自分用に(私は実用本位なので使う事が前提)持ち帰るのは躊躇してしまいます。

ですので、上の譲ると言ってくれた三河に関しても、先々で追加が見込めなさそうな場合、御返しするつもりでは有ります(まあ、過分に高価な砥石なので、という理由も有るのは言わなきゃ分かりません(笑))。

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ブログ友さんは、対馬も御希望でしたので・・・私の取り置きと双璧を成す(大袈裟)ほどに良さそうなのを。

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後は、御世話に成って居る人用への分と。

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取り置きとは別に、追加の自分用に。上の砥石と比べ、確り見ないと判別不可能な程ですが、若干の難が有ります。

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更に、追加の小型対馬と中山のコッパ。

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最後に、日野浦さん用の大村砥です。何でも、鎌研ぎ用に使うが人造とは仕上がりが違うので新たに欲しいと。

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前回に購入の150番(今回も二本追加購入しました)から、切り出しを修正研ぎ。裏が不安定だったので、糸引きを入れて居ましたが、もう随分と表裏から研ぎ進んで来たので消そうかと。

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研磨・平面維持に優れた1000番に繋ぎ。

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対馬砥です。適度な研磨力と、明るめの仕上がりが特徴的だと感じます。硬さと平面維持は、天然中砥としては中庸かと。

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対馬砥の後は、やや軟口と中硬の巣板各種で仕上げ研ぎをして、最終は水浅葱で元通りに。

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砥石の御依頼を頂いた御二方には、有り難う御座いました。御満足を頂ける質だと思いますが、御試しの上で御確認下さい。

また田中さんには何時も通り、御高配を賜り感謝致します。当日、「近傍の倉庫」の整理をしに行くので、珍しいのが有ったら取って置く・・・との御誘いを頂いたからには、遠からず伺いたいと思って居ります。