オピネルの新入りの研ぎ

 

様々なカラーリングのハンドルを持つオピネルは、以前から知ってはいたのですが・・・ハンドル材のバリエーションをしたのは結構、最近に成ってからでした。

中でも、オーク材とオリーブ材のハンドルには興味が有ったので、必要な分(カーボンとステンレスの其々№8と№9)は持って居ながら、追加で入手してみました。

因みに、何れもステンレスモデルしか無さそうでしたが目的はハンドルの方でしたので、問題は無しです。

 

 

オーク材の方。確かウイスキーの熟成で使われる、アメリカンホワイトオークや、ヨーロッパで輸送に使われたとか聞く、スパニッシュオークなどの仲間に成るのでしょうか。日本で言う所の樫よりも、楢に近いとかでしたか。

緻密さは少ない様ですが、適度な硬さと滑らか過ぎない手触りだと感じました。使用される方向性的に、その割に水分には強そうですね。木目や色調的に、余り大き目のサイズよりは小振りな方が締まって見えそうなので、此方を№8にしました。

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オリーブ材は、先々には俎板としても視野に入れていた事も有り、楽しみにしていました。

だからと言う訳では無いですが、二本を購入しました。理由は後述しますが、材としてはオークよりも目が詰んでいて、硬さは僅かに柔らかいかなと。

面白い事に(予想はしていましたが)、微かにオリーブオイルの香りがしますね。本当に油分が多いかは不明ながら、此方も俎板に使われる位ですから、水分には強いでしょう。

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オリーブ材ハンドルの一本と、通常モデルの一本です。今回は、前者の刃体自体を厚みのムラ無く削り直し、刃先のみの研ぎで済ませた後者との比較用のペアとして、天然砥石館へのプレゼントとするつもりです。

同じステンレス、同じ刃先の処理で在っても、刃体自体に手を入れた物と新品時では切れ込み、抜けの違いが有る事を体験できるサンプルに成ると考えての事です。

和包丁を二本用意して、其々の刃先の研ぎを同一にした上で、片方だけ切り刃を整えるのは相当に、面倒だろうとの御節介です(笑)。しかし、或る程度の幅と厚みを持つ刃物で、或る程度の厚みと抵抗を持つ対象を切り分けたりする場合には、付いて回る問題ですので。

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鋼材の硬度の設定が低目ですので、荒いペーパー(180番程度)から数段階(240・320・400番)を掛けて、1000・1500番まで進めました。

其の際、ネイルマーク周辺と其処から切っ先に向かう辺りが厚みの残存ポイントですので、集中して削り落とします。この際、ストレート部の刃先を薄くし過ぎがちなので要注意です。

オピネルの製品の厚みの不均等は、体感で上・中・下のバラツキが有るとの認識ですが、今回は中から上・上という二本でしたので差が少なかったです。

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前段階の完了で、殆ど目的は済んだ様な物ですが、刃先も手は抜けません。320番から丁寧に研いで行きますが、先ずは片側30°ずつの均等な小刃です。

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研磨力と平面維持に優れる1000番と、研磨痕が浅く平面維持に優れる1000番で、刃先に角度変化を。刃元は片側、30°で切っ先側は片側、25°に。

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3000番で更に正確且つ傷を浅く。刃元は片側35°で切っ先側は片側30°に。

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対馬で上記内容を踏襲。

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仕上げは中山の戸前、中硬で。

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最終仕上げは、水浅葱です。

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研ぎ上がりです。外観としては遠目には、大雑把に磨いてみた手抜き鏡面と完全なオリジナル初期状態にしか見えませんね。ただ、紙の束などに切り込んで見れば、切り進む際の軽さ・顎から切っ先までの手応えの変化の無さが際立ちます。刃先最先端の切れの良さに限れば、遜色ないのですが。

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現在ホームページ不調に付き、御面倒を御掛けしております。申し訳有りませんが、御問い合わせ等は下掲のアドレスから御願い致します。

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最近購入してみた洋包丁と手持ちの分

 

手伝い先で使おうと、二本の洋包丁を追加で購入しました。

作業場に用意されている主として野菜を対象とした包丁類は、ほぼ私が最低限、手の平サイズの砥石を持ち込んで研いで居る為、ホルモン類を対象として居る隣の部署からも借りに来る人が居る状況で。加えて、私の直ぐ後から入った方が隣に手伝いに行く際は、此方の包丁を持って行く事を勘案し、(一応は自分でも使う予定ですが)肉類対象の包丁を共有的に置いて置こうかと。

 

 

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先ずは一本目。購入前のネットでの説明には刃体に関してホローとの表示が有りましたが、現物が届いてみると言う程では無く。逆に頭の何処かで少し、ホローグラインドの洋包丁には興味が有ったりしたのですが(笑)。

其れよりも気に成ったのは所謂、筋引きとして扱われる内で如何なる刃体構造の物なのか?でした。恐らく、片刃の和包丁的に裏梳きが有る物は極少数だろうとは思って居ましたので、問題は「刃体の片側に一定の平・切り刃の境界が有る物」と、「刃体も小刃も両面均等に研削された実質は刃幅の狭い牛刀」の何方か?でした。

結果的には後者でしたが、製品自体の重量バランスや柔らか目ながら良く切れる刃の仕上がり、手頃な価格故に此れは此れで目的に適うと考え納得できます。24cmのオールステンレスとしては軽量な点も、女性の長時間の使用の想定からも安心です。

ただテールの筋を引く等の面では、明確な片刃寄りのほうが重宝するでしょうし、極端に柔らかくて脆い素材(茹でた肺とか)を薄切りにする際にも同様と思われますが、其の場合は先に用意したパンスライサー改筋引きっぽい包丁が役立つ事でしょう。(下画像下側、おまけに裏は若干ながらホロー状で裏梳きに近似)

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充分に薄く研削された刃体であり、小刃のみの調整で済む為、研ぎ始めは320番です。

小刃自体の角度は鋭角で広目にしたものの、ほぼ一定角度の割には幅に斑が出るのは、刃体自体の研削の際(出荷時の初期状態)に均等に成って居なかった箇所の反映でしょう。此れは新品時(研ぎ前の刃部のアップの画像参照)から見られましたが、幅を広く取る程に余計に目立つ傾向は已む無しです。右側の小刃は元々の約二倍、左側の小刃は元々の幅の半分程度の研ぎ方にしています。行く行くは、6:4から7:3に近い刃先の配分を予定しての事です。刃先の最先端は切っ先方向に向かって漸次、僅かに鋭角化しています。

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研磨力と滑走に優れる1000番と、平面維持と研削痕の浅いのが特徴の1000番で精度を上げつつ研ぎ目を消して行きます。

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天然に移行し、対馬砥石です。

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相性的に良さそうだと感じて、奥殿の天井巣板です。掛かりの良い切れ加減と、鋭利な刃先としては充分でしたが・・・思ったよりも組織が細かそうな鋼材と熱処理のバランスを考慮し、更に試します。

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中山の巣板層近辺(褶曲等で並びが複雑)の並砥から戸前っぽい物(中硬)で。より安定した刃先性能に仕上がりに成りましたが、尖った個性を求める向きには、優等生過ぎるかも知れません。

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研ぎ上がりです。何時も通り、小刃のみの研ぎは外観の変化に乏しいので、見た目が地味ですね。

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二本目は、本当に保険と云うか万が一の為で。半分は三徳との仕立ての違いを確認したかった面が大きいです。

作業場で準備されているステンレス三徳と、小振りな牛刀が相応しい業務(胡瓜とゼンマイの処理)が増えたので、誰かが使用中だったり特に大量のを急いで済ませる必要が生じた際、使う目的で購入しました(刃持ちが一段階上)。

トージローと藤寅は、実質的には同等で銘の違いだけらしいので、後者を選びました。因みに刃渡りは18cmの物です。

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下画像は、かなり前(十数年前)から使用中の17cm三徳で、刃幅の3~4割りの範囲で厚みを抜いて切っ先方向へのテーパー化が施してあります。

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二本を並べると、数値通りに牛刀の方が少々、長い事が分かります。

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しかし、顎の付近から刃体の厚みを比較すると、右側の牛刀の方が薄いですね。

此れは恐らく、牛刀の建前は肉切り・その他で問題無く使える事を目的として居り、料理人の使用(使い方を理解している)を想定している為でしょうか。対して三徳は、文字通り肉・魚・野菜を対象として広範に用いられ、使用者も一般人(無茶もしかねない?)を想定して居るので強度的に猶予を持たせているのかと思われます。

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上記内容が間違いで、たまたま厚みの取り方に誤差が有ったのでは無いと考える理由の一つは、下掲の比較結果です。

下画像は、同封されていた礼状によると2011年に送って貰った三徳です。刃渡りは16.5cmだったと思います。

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そして此方は、4~5年前に送って貰った牛刀、21cmです。

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長さでは牛刀(右側)が勝って居ながら、又しても左の三徳が厚いですね。やはり、モデル毎に厚みの仕様は考えられていて必要な分が研削されていると考えるべきなのでしょう。勿論、同型モデルで長さが違えば、長い程に刃元が厚く成る傾向なのだと思われます。

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その意味では、積層モデル(下画像)と三層モデルで少しの違いが有るのは、当然かもしれません。しかし、前者の方が薄目に感じたとしても購入時期が十年以上前であり、三層の方は不明(オークション品)ですので製作時期の違いでは無いと言い切れない点は、考慮する必要が有ります。

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画像下の上側が三層の牛刀

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こうして見て来ると先々には、藤寅の24cm筋引き等も如何なる構造か見て見た上で実用に供し、その個性や性能を確認してみたいですね(完全に趣味の世界)。画像や説明文からは21cmのカービングに比べ、より筋引きらしい形状の様に拝察出来ますので。

 

 

 

 

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御依頼に沿って砥石の選別

 

先日は、前回の京都行きで空振りとなった、「以前より範囲が広がった採掘場所からの砥石を」との御要望に沿う為、再度の選別に出掛けました。

今回も前回に続いて、多忙な店主には御目に掛かる事は叶いませんでしたが、代わりに?留守居役の方には親切に対応して頂き、採掘場所や周辺の状態、取れる石の種類や傾向に関して詳しく伺えました。

前回よりは大き目の原石が混じって居たのですが、以前に採れていた種類と質に比べて、幾らかでも異なる砥石をと見て行く内に珍しく、扱い易そうなカラスを発見しました。硬くて神経を使う様な物は偶に見て来ましたが、難が少ない・又は実際には邪魔に成らない難だけの中硬のカラスは珍しいと思います。

 

 

二回り程、大きな原石から余分な所を切り落とし、形状を整えて貰いました。採掘時に相方と呼べる、もう一つの砥石と一緒に出たそうですが其方は、更にカラスが明瞭に見られたものの、難の性状が強面過ぎて敬遠しました。

全体に薄目で、其処の皮の一部が浮いていた為に、カシューで養生しました。多種・多様な筋などが見えますが、研いで見ると部分的に地金に対して影響する可能性が有るレベルに収まって居ます。

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試し研ぎは、刃金が青紙・地金が極軟鋼の切り出しです。刃・地共に鏡面に仕上がりました。砥面は研磨力を感じる「食い付き」と、滑走の良さを同時に伝えて来る不思議な印象。

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上記、砥面の性質から特殊鋼やステンレスに適していると判断し、VG10でもテストしました。結果は、極めて研ぎ易く研磨も速い・刃先の切れは充分以上でした。

硬く細かく滑る砥石では無く、泥が出過ぎて精細な刃先が形成し難い砥石でも無い、絶妙なバランスなのでしょう。御待たせしている方には、近日中に御送りして試して頂こうと思って居ます。

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参考までに過去、持ち帰った同じく薄目の巣板です。基質の色調や砥面の硬さは同様ながら研磨力は若干、控え目で切れは殆ど同等です。強いて使い分けるならば此方は神経質な刃金や地金の仕上げ・最終仕上げの手前に向いていると言えそうです。

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あと、少し早いですが(八月の下旬の事なので)イベントのお知らせです。と言っても、半分は参加に制限が有るのですが・・・主として子供(小学生高学年~高校生)を対象とし、全三日間に参加が可能な方と成って居ます。

当該イベントは一日当たり90分程度ですので、亀岡まで出かけて置いて残りの時間を如何にするか?と思わなくもなかった所、館長のアイデアで研ぎ講習の上級向けを設定しようと成りました。内容としてはハマグリ研ぎを俎上に載せた講義と実習を予定しています。どうやら、過去からも通常の一定角度の刃付けでは飽き足らない方々からの要望が有り、其れを受けての判断だそうで。

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上記とは別件ですが、パート先でも研ぎに興味のある方々を集めて講習をして欲しい旨を打診されたりもしましたので其々、コロナを挟んで御無沙汰に成って居た分、経験を思い出すに留まらず不断に重ねて来た修練をも反映させ、再構成した内容で挑みたいと考えて居ます。

 

 

 

 

 

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自分用の其の後と、御依頼の包丁

 

前々回に取り上げた、オールステンレスの二本なのですが・・・其の内のパンスライサー改の筋引きは、本職の方から二日間の試用の後で改善点(と言うか使用上の好み)を伝えて貰えました。

➀刃の切れは充分乍ら、より抜けが軽いと更に良い。➁切っ先の鋭さが向上すると自分の使い方に合致する、との事。自宅に持ち帰り、小刃を広げて切り刃状にした範囲を更に広げ、丸みを帯びていた峰から切っ先に掛けては、直線的に削り落として鋭利さを増しました。

最終テストでは不満点も解消し、御自身の筋引きを同じ方向性で砥いで欲しいとの依頼を頂きました。

 

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牛刀の方は完全に自分の作業様でしたが、柔らかく崩れ易い対象を引き切りする際、側面の厚みがテーパー状に抜けていない点が気に成って居た為、側面の殆ど全てに小割りの砥石・耐水ペーパーを当てました。画像は、その途中で刃先周辺の厚みを集中的に作業している場面です。

余談ですが側面とは言え、此処まで複数回に亘って全体的に削って行くと、手にした時の重量感が違って来ますね。厳密には重量自体の減少加減と言うより、フロントヘビーだった重量配分が改善されたのだと思われます。

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対馬砥石で中仕上げ。

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中山の合いさで仕上げ研ぎ。

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研ぎ上がりです

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そして下画像が、御依頼品の筋引きです。初期状態では、刃線がW状(波)に成って居り、切っ先周辺は鶴首に成りそうな状態。

従って、刃線を整えるにはWの谷間の部分まで研ぎ減らさねばならず、然る後に御希望どおり、小刃を切り刃的に広く研ぎ下ろす事に。

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先ずは、ダイヤモンド砥石からです。刃線を整える為、鈍角目の当て方で谷間迄を削ります。

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刃線が整ったら、小刃を広げて行きます。此の段階で、切っ先手前の幅が狭過ぎ・切っ先が鋭利過ぎる程に成りましたので、通常は峰側から数ミリを削る所なのですが、其の状態が御好みと言う事で、其の儘に。

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180番の荒砥でダイヤの研ぎ目を消しつつ、形状を正確に。

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320番で、より正確な角度変化を付けます。刃元側が30度弱・切っ先側が25度程に。

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裏は、御使用方法からは20度でも問題は無さそうでしたが、鋼材が幾分は柔らか目でしたので念の為に。

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1000番の中砥で、ほぼ完成形にまで整えます。

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3000番で、研ぎ目を細かく。

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対馬砥石で中仕上げ。

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丸尾山の巣板、中硬で仕上げ研ぎ。

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中山の合いさ・カラスで最終仕上げです。

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と思ったのですが一応、もう一段上を目指して水浅葱で。此れは、鋼材(熱処理の結果の性格)の繊細さから来る刃先の追い込み難易度が高い事も理由です。

少しでも左右(表裏)からの角度が揺らぐと(砥石の上で1~2ストロークさせただけの摩耗でも影響される)、刃先に最上の切れが出せない(拘り過ぎのレベルです)タイプの刃物は、まま見られますので驚くには値しないのですが(笑)。

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研ぎ上がりです。

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刃部のアップ

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刃先拡大画像

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裏ですが、小刃が見え難いですね

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光の当たる角度を変えました

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此の度は研ぎの御依頼、有り難う御座いました。今回は私のの包丁を見本にした上での研ぎ作業でしたので、実際の仕上がりも予想し易く安心して頂けたのではと思います。

 

 

 

 

 

ホームページが不調ですので、御問い合わせ・御依頼をと御考えの方は、togiyamurakami@gmail.com の方からメールを御送り頂けましたら幸いです。

 

少し振りに、砥石の選別(御知らせと御願い)

 

先週末は、少し振りに田中砥石店へ出掛けて来ました。事前に聞いていた、採掘場所の範囲の拡張は堅実な程度に収まって居た様子で、面付け・加工中の原石群を観察してみると、天井巣板に見える種類が混じっているものの、その他は以前からの各種砥石のグラデーションと見受けられる、地続きの変化と言えそうな感じでした。

そして私が訪ねた当日のタイミングでは、サイズ・形状の面で狙っていた個体が少なかった事も有り、ブログを通じた知人へのサンプルを選んだ後、以前に取り置きをしていた中から、水浅葱を持ち帰る事に。

 

 

一つ目は超硬口で砥粒も細かい、カミソリ砥に相応しい砥石です。ただ、泥が出難い硬さに加えて砥面の食い付きも強力ですので、平面の刃物を研ぐには滑走の重さを御せるかどうかがカギと成ります。どうしてもと成れば、名倉の類の使用・ダイヤ砥石に因る泥出しの併用で改善は容易です。しかし素の状態でも使いこなせれば、砥石自体が研磨力に優れるだけに、刃の掛かり加減も砥石の性質を反映し、出色の出来と成ります。

砥面の色調は、やや白浅葱に寄っているかと思わせる、やや明るめ且つ(田中さんが言う所のデイダラボッチの色合い)紫と紺色が僅かに混じる物です。

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試し研ぎの結果です。刃・地共に鏡面です。鍛接線が明確に成り、刃金に接している地金の端が(炭素の移行を受けて)地金らしく無い光り方をしている事からも、光らせる性質が伺えます。

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二つ目は、戸前と合いさの中間に感じられる砥石。以前からの砥石と色柄的には近しい印象ですが、巣板の要素が少なくなりつつ硬さが微増、研ぎ感も巣板系統のサラサラよりスルスルと滑る手応えです。

実用品としては少々、(余り邪魔に成らない質とは言え)筋の多さは否めませんが、砥面以外の五面が皮付きで尚且つ其々が、自然な風合いを感じさせ乍、異なる表情を持っている点が喜ばれそうな気がしました。砥石の好みが実用一点張りに近い自分とは違い、其方の観点も重視される先方を意識しての選別です。

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試し研ぎの結果は、上掲の水浅葱よりも数段、研ぎ易い性質でした。硬さは殆ど同様ながら、若干の泥が出る事・砥面に多少の弾力が有る事が、扱いを容易にしてくれて居ます。仕上がりは、ほんの僅かに半鏡面寄りの鏡面です。

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過去からの加藤鉱山採掘の砥石を御持ち頂いて居て、新たな種類の砥石を御待ちの方々には又、今月末に選別の機会を持ちたいと考えて居ますので、その際に良い報告が出来ればと期待しています。

それ以降に関しましても随時、採掘の進捗を追って行きたいと思って居ますので、御希望の砥石の入手を企図される場合は宜しく御願い致します。

 

 

 

 

あと、御知らせと御願いなのですが・・・当ブログを、偶に御覧下さっていた様子のH様から、御指摘を頂きました。私のホームページの問い合わせフォーム等、一部(直接やり取り出来る分のみ?)が繋がらないとの事で。予想もしていなかった為、当該事象に気付くのが自力では相当程度、遅れて居た筈ですので驚きと共に感謝のメールを返信させて頂きました。

ホームページの製作を御願いした専門家の方は、年数が経過した事も有り住所や電話番号・メールアドレスが変更に成って居りますので、遠からず身近な協力者の方に相談してみる心算では有ります。

それで改善できない場合は、資金面の目処が立ったらとの条件付きですが(笑)、新たなホームページの製作も視野に入れる事も検討したいと考えて居ります。

付きましては当座、お問い合わせ等で御連絡をと御考えの皆さんには御面倒をお掛けしますが、togiyamurakami@gmail.com の方からメールを御送り頂けましたら幸いです。

 

 

 

 

 

最近の事

 

流行らない研ぎ屋は相変わらずなのですが・・・ここ三ヶ月程は、何度も有った閑散期に匹敵するレベルでしたので、以前にも増して副業に重点を置かざるを得ない状況でした。つまりは仕事先を変更すると共に、掛ける時間も延長する事に。まあ、近場で短時間で手伝いに行ける場所と言う条件は共通ですが。

業務内容的に、店置きの道具で問題は無い範囲だとは思ったのですが、より自分の扱い易い物をと考えて、新たに入手したのが下画像です。

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初めから使い易い形状にして置きたいとの意向も有り、寧ろ新品では無い方が良いかと、自分としては極めて珍しく(初めてかも)ヤフオクで。御蔭で?価格的にも負担が少なくて済みました(笑)。

或る程度は研ぎ減って居るであろう事と、刃幅が少々、刃元より切っ先側が狭く成って居るのかな程度の状態で、大きな問題は無さそうでした。

 

 

研ぎ始めは刃線をチェックしつつ、180番の荒砥により厚みの不均等を均して置きます。顎から切っ先に向け、刃幅の三分の一~二分の一位の予定でテーパー化。結果的としては刃線中央付近を多めに、次いで切っ先カーブから先の厚みを重点的に減らす事に。特に切っ先寄りは、峰の部分に掛かる程(刃幅全体)に砥石を当てました。

左側面に対して、より厚みを持っていた右側面は余分に薄くしましたが、初期からの小刃の強さの違いによって、右側だけは刃先最先端まで砥石が当たって居ない状態です。

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320番で、より正確な形状にして行きます。刃元から切っ先に掛けて鋭角化+刃元寄りの刃線を直線気味にしつつ、刃幅を減らしました。

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ペーパーの200番前後を用いて、更に面を均しつつ研ぎ目を消して行きます。その後は400番まで。

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同じく、1000番・1500番で。

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実用上は充分でしたが、2000番まで進めて置きました。

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人造の1000番・3000番を経て、対馬砥石で。

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中硬の巣板で仕上げ研ぎ、そして中山の合いさで最終仕上げ。

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もう一本、テールの筋を引いたり切り分けたりに向いている物を、と言う訳で此方も。レギュラー品の筋引きは240cmの様でしたので、もう少し短めで且つ片刃仕様(三層利器材では無い)であるパンスライサーが目に付きました。

ほぼ新品であり、綺麗なセレーションでしたので勿体無く感じましたが、筋引き的に改造させて貰いました。21cmながら上掲の24cm牛刀よりも厚い背厚と、三層では無いので刃金が刃先まで出るかどうかの心配が要らない点が適しているとの判断でした。

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ベルトサンダーで大まかにセレーションを削り落とした後は、ほぼ牛刀と同じ工程でした。ただ、牛刀は側面の厚み調整を広い範囲で行ないましたが、改造筋引きでは或る程度、広目の明確な切り刃を付けましたので、厚み調整(角度の研ぎ分け)は其の部分の中で済ませました。従って、平に当たる部分は手付かずです。

もしも実用に際して、走りや抜けの面で問題が生じれば、改めて必要に応じて手を加えるつもりです。前身が前身なので、途中で若干のカーブを持たせる様、研ぎ進めた程度の未だ直線的過ぎる刃線ですが、デザイン上は柄に対して刃体が後ろ反りである事を踏まえて当座は経過観察でと。

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此方も人造は、3000番まで。

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対馬で天然に繋ぎます。

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最終も同じく、中山の合いさです。

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研ぎ上がりです。元々、オールステンレスの系統ではオーソドックスなデザインのトージローが好みでしたので、(手持ちには三層の三徳・多積層地金の牛刀有り)同じシリーズで揃えられて結構、嬉しかったりします(笑)。

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以前は、研ぎの御依頼を頂いた場合、到着した当日に作業を完了し、翌日には発送・御希望により日程を双方で調整して持ち込みを頂く、等も場合によっては可能でした。しかし、今後は相当に難しく成りそうです。同じく、私の自宅へ御出で頂いての研ぎ講習も。

ブログに関しましても、従来ほどには更新が出来なく成るとは思いますが、研ぎ・砥石の御依頼を頂いた方への報告・参考にして頂いて居る数少ない方々への情報発信として、トピックが有ればポツポツとアップして行きたいとは思って居ます。

取り敢えず次回は、遠からず砥石の選別に関する内容に成りそうです。御待ち頂いて居る御二方には、良品を御用意出来る様、努めますので宜しく御願い致します。

 

 

 

 

 

先月末の事

 

少々の期間が空いてしまいましたが、先月末の土曜日の事です。亀岡の天然砥石館に於いて、前館長である上野さんの送別会が有りました。

しかし当日、到着した所では上野さんの姿は無く、後ほどに合流するとの事。元々送別会は閉館後の予定でしたので、その時点では通常の開館日の様相を呈して居り、最近の相場通り、結構な人出が見られました。仕方なく展示の変化した点の確認など・・・と見て回って居たのですが、新館長たる田中さんから研ぎ指導の手伝いの要請が。主婦と御見受けした御二方の包丁研ぎに、アドバイスと簡単な手本の提示に努めました。

 

 

双方、複数の包丁を御持参でしたので、大き目の包丁で練習した後、小さい方は御自身のみで研いで貰おうかなとの狙いで進めました。

初めに刃線の修正と簡単な解説をして、実際に研がれた結果を拡大して確認して頂く事を繰り返しました。

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小刃の研ぎは安定して行くものの、刃先最先端の欠けが取れないのは、未だ其処まで砥石が当たって居ない様子です。

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切っ先やカーブ部分には、また直線的な部分とは異なる難しさが有りますので、苦労されていました。

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私の手直しも交えつつ、徐々に研ぎ上がって行く過程を体験して頂けたのではと思います。究極的には、研ぎの手順と確認方法が確立できれば、精度や角度の適格性は自力で向上して行く事が可能と成ります。

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改めて、展示物を見ていると英字新聞でしょうか、見慣れない媒体にも記事が上がって居ました。

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其れ以外にも、ももクロさんのイベント情報が。何でも事前に一度、メンバーの二名ほどとスタッフが砥石館に訪れた経緯があるそうで。

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その際に、青砥に注目されたりしただけで無く、(恐らくリーダー?)刀で試し切りもされたそうで。もう一方の方はストップが掛かったとの事で、向き不向きも有るでしょうね(笑)。

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あと、ももクロさんは13日・14日の両日がイベントだそうですが・・・もののふ諸氏の要望も有ってか、通常は休館日となる月曜も開館日とする様に聞き及んでいますので。来館を希望される方はホームページ等で御確認の上、御来場を頂ければ幸いです。

 

 

 

 

さて肝心?の送別会ですが、先ずは参加メンバーの其々が、手料理や菓子類を持ち寄っての細やかな食事会と成りました。

イベントの助手も務める常連のYさんや、此の後に及んで私は初対面と成った上野さんの奥方の力作が並びます。

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私は、往路の途中で立ち寄った行きつけのパン屋で購入のバゲットを、その場で切り分けました。序でに手伝いの若い衆の一人と、新館長にも体験して貰い、カリカリのバゲットを牛刀でワンストロークにて切断する困難さが伝わった様です。

其の上に、カマンベールチーズと生ハムを載せて完成です。

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いよいよ上野さんが地元に帰ると成ると、同志と言うより遊び相手の一人が居なくなった様な気がして、予想以上に寂しい物だなと感じます。そこで、久々に気分転換で行きつけの料理店で食事をしてみたり。

だと言うのに昨日は又、砥石館に顔を出していたそうです。何やら、故郷の家の片付けと並行して、亀岡で住んでいた自宅の掃除が終わって居ないとか。この分では先々、偶に顔を合わせる機会も皆無では無さそうかなと。

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上野前館長の引退に向けて

 

前回の記事で触れましたが先週の後半に、上野さんへの選別を持参した結果(続き?)です。

当日は、最近の砥石館の例に漏れず、平日でもマズマズの人出でした。上野さんが対応していた訪問者の方は、九州からキャンピングカーにて一泊二日の予定で来られたとの事でした。

そのYさんは、かなりの研ぎ・砥石フリークらしく、研ぎ場での研ぎにも熱心に見受けられ、お気に入りの砥石も見付けられた様子。その後は上野さんから紹介され、研ぎ・刃物に付いての四方山話に移行しました。

途中、件の銘無し司作の三徳を渡した所、上野さんからは砥石館所蔵の小振りなカミソリ砥(菖蒲)を頂きました。砥石館を始める事前準備として、集め始めた時点の物だと聞いていた筈ですが、手持ちに無い種類でも有り、思い出の品に成りそうです。

 

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ただ三徳は、その場に居た前述のYさんと上野さんのみならず、現館長の田中さんも巻き込んで研ぎ肌の違いと仕上げ方、研ぎ方の違いと切れ加減の差異(試し切り有り)のサンプルとして、俎上に上がる事に。序でに、同じく厄介な地金の例として持参した私の三層利器材の三徳と合わせて、簡易研ぎ講習の様相を呈して来ました。

 

刃先の角度変化の痕跡たる、研ぎ目の確認中

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最終的に、司作の三徳は他人に持たせたり、何かを切ったりする事なく、郷里に持ち帰ると(笑)。其れではと、帰りがけに砥石館所蔵の包丁を何か研いで来るので、切れ味テストのサンプルにしようかと水を向けると、薄刃を研いで欲しいと。よりによって難易度の高い薄刃とは・・・相変わらず遠慮が無いですね。其の上、綺麗に研げたら切る用途には供さないとも。

何だそれは?と思ったので、適当な包丁を選んで此方は、完璧に切る役割り用にと持ち帰った包丁と合わせ、二本の研ぎを進めました。

 

持ち帰った二本。帰り道に買い出しした奴も映って居ます。

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上掲画像の下側、両刃の三徳は元々、大らかな造形ですので細かいチェックは省きますが、流石に薄刃は確認しました。切っ先の欠けより初期の研削痕より、刃線の乱れ(W状)が気に成りますね。

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研ぎ始め、人造の320番

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人造の1000番

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同じく1000番ですが、研ぎ目が浅く柔らか目

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対馬砥石

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中硬~やや軟口の巣板

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各種合砥

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水浅葱

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研ぎ上がりです

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刃線のWは高低差が数分の一に減少。その代わり、一部の裏押しが途切れ気味に成りました。刃金の部分・地金の部分の双方、所期の研削痕(深く削られ過ぎ部分)は、大まかに全体が揃った時点で追い込むのを留めました。元々が天然砥石に因る、研ぎ肌のサンプルの心算ですし先々、現館長や手伝いの若者たちが練習で研ぎ減らす際、削りシロを残す意味でも。

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もう一方の三徳は、平の部分が大らか過ぎるので或る程度、正確な切り刃を研ぎ進めても均一には目視し辛いきらいは有ります。ただ、切り刃・刃先共に切っ先方向へ向けて鋭角化。刃先最先端は漸次、鈍角化の状態に成って居ますので、切れ込み・抜け共に改善されて居ます。従って、切れのテストは此方でという事ですね。

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帰りがけの最後、次の送別会の本番にはベイカーズを持って来る予定だと伝えた所、上野さんからはハーパーの15年が欲しいと。検索してみれば既に現物が希少な上、高価且つプレミアが付いているらしく、10万とか12万・15万などの数字が目に入りました。

関係者の中でも、他の追随を許さない程の貧乏な人間に、そんな無茶振りをする様な悪い子には御褒美は無しとの結論に達しましたので、バーボン的な傾向の香味かつ手頃な値段で気に入って居る、キリンの陸でも渡し、大手のブランドや年数表記に惑わされない選別に目覚めて貰う予定です(笑)。

 

 

 

 

あと、参考までに・・・御注文の味方屋作の三徳で、まさかの長期の御待ちを頂く事に成ったK様には、その間の気を紛らわせて貰う為に?砥石の試し研ぎを勧めてみました。

 

下画像は、かなり上物の品質と形状である事から、特選品レベルの物です。

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此方は、厚みが薄くて砥面も若干、柔らか目ですが高品質です。何方も、いざと成れば仕事用として使うのに、何の不足も無いどころか楽しみでさえ有ります。

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上掲の二つとは異なり、形状の面や筋や欠けなど、難が有ったり更に小振りな実用品レベルの物も少量、持ち帰って居ましたので其方を御送りしてみました。御本人からも、砥面を満遍なく使うのは難しく、面積が広いと余計に気を使うとのコメントも勘案しての事です。

 

やや筋の数が多いのですが、其れ程には邪魔に成らずに適度な硬さと研磨力で、良い刃が付きました。

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上の砥石よりも柔らか目で、かつ難の少ない砥面により扱い易さでは此方に軍配が上がります。

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試すにしては幾分、近い性質の二つですが、逆に殆ど同じ採掘場所から採れたとしても、必ずしも同じでは無いとの確証を得られる資料とも言え、その点も含め楽しんで頂けましたら幸いです。

 

 

 

 

 

業務連絡(何時もの?御願い)その他

 

少し前にも記載をしたと思いますが、御問い合わせや研ぎの御依頼に関しては基本的に、ホームページの「御問い合わせフォーム」などから御願いして居ります。

もしも留守電に伝言を入れて頂いたとしても、機会が余りに古いので自動的には相手方の電話番号が表示されません(私の操作が駄目な可能性は有りますが)。従って、御自身の電話番号と御都合の良い日時を提示して頂けた場合は(さらに私が可能な場合)例外的に折り返しの電話が出来るかも知れません。

普段、電話に出られないのは不規則な時間帯で研いで居たり(珍しく依頼が有った場合)、他に掛け持ちで働きに出て居たりする為ですので、御理解いただけましたら幸いです。直近の、A様からの留守電に掛け直せないのも同様ですが、有難い事に私のホームページやブログを御覧に成って居るそうですので、ナイフの研ぎの記事と並んで、今回の記載内容にも目を通して頂ける事を願って居ります。

(A様からは、この記事を書き込み中に、以前の記事のコメント欄へコメントを頂けました。ホームページのフォーム、又は次のアドレスまで御願い致します。togiyamurakami@gmail.com コメント欄に承認済みとして、御本人のコメントを載せると本名である点を懸念しています。イニシャルに書き換えて載せたものかどうか・・・)

 

 

 

他にも、K様からの御注文にて発覚したのですが、私のホームページに記載の販売用包丁(大抵は品切れ)の価格、此方が製造元の価格改定前の儘に成って居ます。済みませんが御注意の程、宜しく御願い致します。

 

 

 

あとは私事、でも無いですが・・・亀岡の天然砥石館の前館長こと上野氏が、新館長(田中氏)に完全にバトンタッチした上で三月一杯にて郷里に戻られる、と聞き及びました。

砥石館設立以来、色々と御世話に成りましたし、或る意味では苦楽を共にした場面も有りました。そんな上野さんには、之までも私の最推しの包丁(司作)を何とか贈れないかと考えた機会が有ったのですが、如何せん資金力に難の有り過ぎる生活に変化は無く、断念せざるを得ませんでした。

流石に、今回ばかりは何か・・・と思いめぐらし一計を案じた結果?苦肉の策を思い付きました。数年前に、日野浦さんから「買い取るから戻せ」と言われていた共柄黒剣鉈八寸と、交換に入手した四本の包丁の内の一本を餞別に贈ろうと。

既にミニサイズの柳は、サンプル兼モニター(かの地で試して頂きたい方々が居られた為)として北海道のS様に御贈りしていましたが、黒打ちの菜切りや三徳が御好みと御見受けした上野さんには、黒打ち(おまけに槌目入り)三徳が相応しそうです。更に、特別なルート?で入手した事により、銘が入って居ないモデルは私以外は殆ど(皆無かも)持っていない筈ですので、「村上と苦労した記念」には寧ろ最適な気もします(笑)。

(因みに以前、常連様から伺った話では、「焼きムラが有る司作の包丁」との触れ込みで廉価に販売している業者が居たとかで。其れを日野浦さんに話した所、「焼き入れミスの製品は出さないので、怪しいな。無銘の包丁に偽の銘切では無いか」との返事。「(村上の)ブログで注意喚起しても良さそうだな」とも言われて居たのを思い出しました)

 

 

やや鋭利気味に研いであったので、耐久と切れを五分五分に狙った刃先に研ぎ直しです。相性的に良かった水浅葱の一つを選択。

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研ぎ上がりですが、この(時期以降の)モデルは、それ以前の地金よりも研ぎ目細かく仕上げるのは難易度が上がって居ます。

先々、上野さんが使用しつつ研ぎ直す際は、相当に歯応えの有る対象として楽しんで頂ける筈です

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地金の仕上がりの難しさと言う点では、ステンレスも引けを取らないのですが、ステンレスも様々ある中で下掲はマシな方と判明しましたし、上掲の軟鉄(極軟鋼)地金は別方向の難しさ乍ら更に一枚、上手(うわて)と言う他は有りません。

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何はともあれ、交換で手元に来た銘の無い司作の内、(下画像の)上から一本目に続き二本目も離れる事に成り、残すは中央の二本です。

日野浦さんの引退までに、銘有りの司作を三本(出刃・柳・三徳か牛刀)は追加したいと希望していますが、叶うかどうか。日野浦さんからは一応、まだまだ現役で製作すると聞かされていますので、諦めずに機会を待ちたいと思います。

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上掲の一本目、飛紋の磨きです。これ等は、偶々に所有していた柄を自分で仕込んだ物ですから、余り確りとは出来ていないのが恐縮です。しかし刃体の方は特に問題が無い筈なので、相応に活躍してくれているのでは無いでしょうか。

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残りの一本、雲竜の黒打ち。自分用に柳を発注するとすれば、雲竜の磨きに成る筈ですので、黒が入手できたのは望外の僥倖でした。

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残った二本目は、鍛え地の黒打ちから磨きに移行している最中の物でしたので、引き続いて自分で最後まで仕上げました。黒打ちだった名残りとして、マチの部分は磨かずに置いて居ます。作業は予想以上に大変でしたが、今となっては良い思い出です。

他の三本と同様、仕立て直し途中で在ったこのモデルは、柳としては切り刃が狭かった為、願わくは将来、牛刀か長目の三徳(鍛え地)を手に入れる迄の万能包丁の位置づけと成って居ます。片刃ですが鈍角気味な分、強度の高さを活かした恰好です。

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砥石館には近々に、三徳を持参する予定ですが・・・月末(上野さんの完全引退間際)には再度、酒でも持って伺おうかなと考えて居ます。

昔(アイリッシュを渡した際)バーボンが好きとの事でしたので、次にフォアローゼスのシングルバレルをプレゼントした記憶は有ります。今度はベイカーズか、ノブクリークのシングルバレルでもと。ブラントンは、フォアローゼスを万人向け且つ上品にした感じでしたので、ベイカーズの方が良さそうでしょうか(パワフル且つ複雑なので。比べるとノブクリークは端麗辛口過ぎるかも)。ブッカーズは流石に、希少且つ高価に成って居ますので、手が出ないのは高級包丁と同様で悲しい所です。

 

 

 

 

 

常連様から二本の包丁の御依頼

 

何時も御世話に成って居る、ベスパのディーラの方から、御馴染みの包丁の研ぎ依頼を頂きました。二本共に炭素鋼ですから、(黒打ちの方は黒皮部分以外)錆も程々に出て居ます。

其れなりに使われている証拠と言えますが、その割に刃先の損耗は少なく、俎板の材質の選定・使い手の扱い方が、包丁の負担に成らない運用なのだと想像できます。

 

 

研ぎ前の状態です。青紙スーパーを芯材とした物だったと思いますが、独特のシェイプと薄い作りが特徴的ですね。

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刃部のアップ

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左側面

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人造の320番からです。刃先を整える事で、僅かに減った切り刃の幅を維持する程度に鎬筋を上げつつ研ぎます。やや硬目・平面維持に優れた砥石の特性を活かして、カーブ周辺の厚みの残存を特に狙って減らします。

後は、何時も通りに切り刃幅を切っ先方向へ、少しずつ広げながら鋭角化させて行きます。

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人造の1000番、研磨力と滑走に優れるタイプで刃先近辺に、最先端に向かって鈍角化・切っ先方向に向かって漸次、鋭角化するハマグリにします。

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人造の1000番、やや柔らか目で研ぎ目が浅く、複雑な面にも追従性の高いタイプで全体を均します。

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天然に移行し、相性の良い対馬で傷を浅くしつつ中仕上げです。

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丸尾山の中硬の巣板で仕上げ研ぎ。

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中山の合いさっぽい石(三色混じり)で、最終仕上げです。

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研ぎ上がりです。

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二本目の牛刀、研ぎ前の状態です。

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人造の320番からのスタートは変わらず。少し、刃先が厚く成り掛けて居ましたので、小刃を広目に研ぎます。僅かに切っ先方向へ鋭角化しつつ進めます。

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1000番、滑走の良いタイプで小刃の上側との段差を均し、より広げます。

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耐水ペーパーを用いて側面の錆を落とすと同時に、刃先近辺の厚みの低減を狙います。

其の上で人造の1000番.3000番の研ぎ目の細かいタイプにより、刃先最先端へ向かって漸次、鈍角化させて行きます。

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相性の良い対馬を選んで、中仕上げです。

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梅ケ畑の研磨力重視タイプで仕上げ研ぎ。

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最終仕上げは、中山の合いさっぽい石(薄い墨流し?)で。

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研ぎ上がりです。

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T様には、此の度も研ぎの御依頼を頂きまして有り難う御座います。結構な確率で、整備や修理のタイミングに合わせて御依頼を頂けるので、流行らない研ぎ屋としましては常々、御気遣いに感謝して居ります(笑)。

本日は休業の様でしたので(予定を確認しとけと)、改めて一週間後に又、御届けをと考えて居ります。宜しく御願い致します。

 

 

 

 

 

研いだ包丁のビフォーアフターなどを載せていきます。