T様からの包丁、三本目は司作の出刃、流水飛紋です。
御自身で軽く研いで見たものの、狙い通りの仕上がりに成らなかったとかでしたか・・・刃先の状態は殆ど問題無かったのですが(裏押しとの整合性は少し不足気味?)、切り刃の角度の最適化・厚みのテーパー状の変化は要改善でした。
研ぎ前の状態
結構、良く纏っている様にも見えます。実際、刃先その物の切れ・刃先から数ミリの範囲での切れ込みは、マズマズ。
しかし切り刃は、切っ先から5cm・10cmの辺りに凸部が。又、初期刃付けからの傾向か、切り刃の角度自体が少し鈍角気味。加えて切っ先へ向けての角度・厚みのテーパーが不足。
其の辺りを改善しつつも、外観が大幅に変更に成らない様に仕上げて行きました。刃金部分近辺は、何時もの刃先へ向かって二次曲線的に鈍角になって行くハマグリ(切っ先へ向かって可変鋭角)です。
裏押しは、もう少し追い込むと揃って来そう。
人造の400・1000の二種・3000番で均して行きます。
人造の小割りで、微調整。此の作業は、後に何度も必要に成る工程でした。
天然に移行し、中硬の巣板で。
最終仕上げで、中山のコッパ二種を試します。結果、緑よりも黄色の方が相性的に優れて居り、万全の仕上がりに。
研ぎ上がりです。
研ぎ乍ら、何度も切れ加減をテストした甲斐があり?、切り刃の外観は初期と比べても著変無しに。複雑な計算を盛り込み、刃先の変更と合わせ、切れ込み・抜け共に性能的には大幅改善なのですが・・・(笑)。
刃金部分では、何時も通りに刃先へ向かうに従って角度が急に(砥ぎ目の幅が狭く)成っていますね。
拡大しても同様。刃元~切っ先まで、柳の50度➡40度➡30度に対して70度➡50度➡30度と成っていますので、角度変化が顕著に。
裏も、切っ先周辺の数ミリ以外の部分は裏押しが整いました。
T様には、今回も大事な包丁達を御任せ下さり、有難う御座いました。仕上がりに関しては、メールでもOKを頂きましたので明日にも御返送の予定です。
いつも研ぎの御依頼、有難う御座います。今回は、奥殿天井巣板の小割り三種の内、二種を多用しましたが御自身での御手入れ用に、幾つかの小割りを同梱しておきますので、お役立て頂けましたら幸いです。