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次の研ぎを前に

 

数年前に一度、研ぎ依頼を頂いた事がある方から御連絡が有り、二度目の送付を御待ちしている間に・・・。

 

 

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北海道のS様に御依頼を頂いていた、VG10の無垢で出来たペティが届きました。服部に居た頃の先輩に頼んでいた物ですが、序でに自分用にも一本、余分に作って貰いました。(画像下側)

仕様は、1050度焼き入れ(硬度62)・160度焼き戻し120分・数か所の計測で硬度61±0.5です。

 

 

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此方は、数年前に譲って貰った同様のペティ。ブログでも度々、例として取り上げて来ました。仕様も殆ど同じはずですが、ブレードもグリップも仕上げの磨きが違うので、かなり印象が違いますね。ステンレスでは普段から一番、使っていますが切れと永切れに不満は無く、扱い易いです。天然砥石で追い込もうとすると、幾分は砥石に好き嫌いを言いますが其処も面白いと感じます。

 

 

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此方は購入依頼を頂いた際に、運良く日野浦さんの元に在った出刃です。私の研ぎが入っているのが条件との事で、後は研ぐばかりと成っています。

次の送付を頂く時期次第では、ボチボチ砥ぎ始めていても良いかも知れませんね。何れにしても、出刃の御届けもゴールが見えて来ましたので、もう少しだけ御待ち頂ければと思います。

 

 

 

 

 

業務連絡 御依頼に付いて

 

先月の中頃、洋包丁の研ぎ依頼で御問い合わせを頂きました。翌日に御返答を返信しましたが以降反応は無く、キャンセルかなと考えていました。

しかし三日前に砥石の問い合わせを頂き、同日に御返信しましたが此方も同様で。こうなると、以前にも記事にした内容が心配になって来ます。

「研ぎ講習を申し込んだが、素人だから無視されたのかと思った」「安い包丁だから、研ぎ依頼を無視されたのかと」・・・以上は、後に連絡が付いた方からのコメントです。どうも、メールが此方に届いて居なかったり先方に届いて居なかったりする場合は有る様です。

間違っても、相手が素人だから・安い包丁だから、と云った理由で扱いが変わる事は有りません。当方は一介の市井の研ぎ屋ですので。プロ用と家庭用・合わせと本焼きの価格設定も同一な位です。只、不器用なので作業が遅く、待ち切れないとの非難は有り得ますが、其処は御判断に御任せします。

当方に着信した御依頼のメールや問い合わせに付いて、通常は一両日中に返信しています。留守にしている期間が有っても、精々一週間程度迄です。従って、10日から二週間経過しても連絡が来ない場合は、問題が有ったと御考え下さい。最悪、ブログのコメント欄にでも結構ですので書き込み頂ければ。私が承認しないと、反映されない仕様ですので自動的にアップされる事も無く問題有りません。

電話には相変わらず中々出られませんので、ホームページやブログの方、何れでも御利用下さい。そうでないと、キャンセルなのか行き違いなのか判然としませんので宜しく御願い致します。御依頼の内容や対象の刃物などに因っては、「技術的に対処不可能・料金的に御薦め出来ない場合」に御考え直し頂く事は有っても、無視などする理由が有りません。少なくとも過去には例が無い事を御伝えしておきたいと思います。

 

 

追伸です:

その後、砥石の御相談を頂戴した方からは返信が有り、御提案した石の購入申し込みを頂けました。有り難う御座いました。

 

 

御知らせ(御挨拶?)

 

パソコン関連が得意でないので、御協力のもと形にして貰ったショッピングカートでも、砥石の販売その他を始めました。その場での呼称と云うか名称ですが、「硎ぎ屋 むらかみ」に成っています。硎の字は、砥石や砥いでいる姿を表しているそうです。石の右側の刑は、刑罰の刑でも有りますが型・形と同じと見做し、「見本・あらわれる」の意味もあるとか。

最近の研ぎ講習を受けて頂いた方から、私のやっている内容は研ぎ道だと指摘を受けました。自分では、まだまだ其処までは達していないと感じましたが、上記の協力者の進言も受けて共に考えてみました。特徴的なのは、砥石と刃物の相性を研ぎ技術と不可分と捉えて、仕上げに使う砥石に重きを置く点。となると、「研ぎ」の道よりも「砥石」の道の方がより近いのでは無いか。少なくとも、対外的にイメージとしても理解を得られ易そうです。

そう言った訳で砥と道で「砥道」と成りますが、読みとしては「しどう」に成ります。士道にも通じる音で恐縮ですが、縁起は良いかも知れません。折角ですから海外向け表記?もと奨められ、4do(shido)との案を頂きました。私としても真の切れに求められる各要素は、刃物(鋼材・鍛冶技術含む)・砥石・研ぎ技術・切る技術の四つが不可欠と言って来ましたので、其れを体現している感じもして不思議ですが。

研ぎ講習に付いても受け付けたり(受講者様から要望も)、砥石山見学も受け付ける(常連の方から賛同が)準備中ですし、小割りの砥石も作ってアップして行ければと思っています。御興味のある方は宜しく御願い致します。

 

 

砥ぎ屋 むらかみ4do 砥道

 

 

天然砥石の使い分けに付いて簡単に

 

研ぎ講習を受けて頂いた小坊主さんから、天然砥石の使い分けに付いて御質問が。序でに近所の知人からも、天然砥石が分からない。記事を読んでも分からない(産地や名称も全く知らないとあっては無理も無いですね)。との意見が。個別の案件に答えるには、一般論や前提らしき物を下敷きにしなければ成りませんので、此処では其れを簡単に記載してからにしたいと思います。

先ずは私が考える砥石の分類や役割分担ですが、飽くまでも経験則が大きく影響しています。文章からの知識や、専門家・経験者からの伝聞も交えての理解と捉えて下さい。

 

 

 

天然仕上げ砥石の層には様々な層が在り、本口成り(ほんくちなおり)や合い石成り(あいいしなおり)に因っても違いますが、大きく巣板(すいた)と合砥(あわせど)に分かれます。昔は、天然仕上げ砥石=合砥で、巣板も含めた総称だったのかも知れませんが、合砥が「戸前・並砥・合いさ」に分かれる様に、巣板にも幾通りかの種類が有ります。白や黄色や卵などの色による違いが、必然とは言えずとも大抵は質の違いを伴っています。(巣板層は合砥層の上・下に堆積した層ですので、巣板同士で性格の違いが最も大きくなりがちなのは天井・敷の違いでしょう)

大まかに言って、巣板層は合砥層より柔らかかったり砥粒が粗かったりする傾向が有り、其の為に研磨力が強かったり砥ぎ肌が霞む・曇る仕上がりに成り易いです。合砥は其の逆で、硬く細かい物が出易く、明るい仕上がりや鏡面・半鏡面を狙えます。特に浅葱(原則的にはあらゆる層に出る色)と言われる黒系統・青灰色・暗緑色の戸前層では顕著です。其れに比して、並砥や合いさは一歩譲る印象です。

仕上げ砥石の役割は、中砥石の後に使って砥ぎ目を微細化し、より鋭利な刃先を得るものです。上記の内容から順当に行けば、巣板の後に合砥を使う事に成ります。但し、同じ産地の巣板同士の中でも質の違いを活かして組み合わせ、軟⇒硬・荒⇒細と研ぎ進める事も稀では有りませんし、其れは合砥でも同様です。

厄介なのは戸前・合いさ等の質・性格が相場の逆に成っているイレギュラーが出たり、産地(採掘される山)によっては巣板(しかも柔らかいとされる天井)でありながら、他所の大抵の巣板は云うに及ばず合砥をも凌駕する硬さ・細かさを示したりする場合です。この場合は、定説ともなっている「東の山は西より硬い」「合砥は巣板より硬く細かい」「戸前は合砥で最高」「~の山は~の山より硬く細かい」等の固定観念に囚われず、其の砥石自体が如何なる性質・性格なのかを的確に見抜いて活用しなければ成りません。

当然、普通とはあべこべの並び順で組み合わせて研ぎ進める状況も起こり得ますが、飽くまでも研ぎの効率や仕上がりの良さを優先して使い分けるべきです。実用を旨とする者に在っては、間違っても産地のブランドや層の銘柄に惑わされる様な事態は避けねばならず、其の為にも試し研ぎや触察で正確に砥石を評価したい所です。

 

 

 

上記を踏まえて、小坊主様に御渡ししたサンプルに付いてです。片方は奥殿産、天井巣板の中硬。もう一方は中山の戸前、緑色の此方も中硬。硬さは幾分、戸前が上回り細かさでも同様かと思われます。

以上は双方、二つの比較。問題は御購入頂いた、他の三つとの兼ね合いですね。三つの内訳は千枚っぽいカラス・千枚際の戸前・中硬の巣板で、硬さ順では1・2・3。細かさでも1・2・3(もしかすると2・1・3の反応に成るかも知れません)。

注意点としては、唯一カラスのみ砥粒の目が立ち気味なので、細かさの割りに傷が消え難い可能性が有ります。鋼材の種類・熱処理・研ぎ方で変化します。その代わり、刃金の研磨が速く鋭利に仕上げ易い傾向も見られます。

さて、いよいよサンプルと三つの関係性を絡めた使い分けです。(繰り返しに成りますが、今回俎上に上がっている砥石同士の比較検討)緑の中山戸前は質的に千枚際戸前に近く、硬さと細かさでは僅かに上回ります。奥殿天井巣板は中硬巣板よりも少し硬いですが、細かさは同程度だと思います。従って、巣板に関しては平面維持には寄与する硬さが、少ない水分量や高い圧力の影響下での研ぎで引け傷に注意が必要です。

逆に言えば砥石の平面度合いが重要で、軟鉄ほど傷に敏感で無い鋼で出来ている和包丁の裏押しに向いています。少なくとも、最終仕上げの前段には持って来いでしょう。例として片刃和包丁を研ぐ場合には中硬巣板で切り刃を研ぎ、その刃金部分を千枚際戸前で仕上げる。不足が有れば中山戸前で糸引き。裏押しは奥殿天井巣板で研ぎ、不足が有ればカラスで仕上げる。となります。

 

 

 

 

 

御知らせ

 

本年は、之までよりも多く(それでも一般的には極少数でしょうね)研ぎ講習を受講して頂きました。研ぎの御依頼と合わせて、感謝致します。

年明けからも、既に予約を頂いて居る方々の御蔭で張り合いの有るスタートに成りそうです。ただ一月中は、ゆっくり出来る(可成り時間が押しても余裕が有る)日時が埋まってしまいましたので御報告致します。

それら以外では、標準~少々延長レベルでしたら問題無く行える日時は有りますので、講習受講を御考えの方がいらっしゃいましたら上記を御勘案の上、御判断頂きたいと思います。宜しく御願い致します。

 

 

 

 

 

小割りの砥石に付いて

 

此の所、研ぎ講習希望の方(受講済み・受講予定)に説明する機会が有りましたので改めて。私の基本的な仕様としては、均し研ぎの一環として形状や表面処理を整える目的、つまり切れ抜けの向上・錆や変色の予防と除去時の補助を狙って行なっています。

現在は、巣板(硬・軟・曇り・光り系)と千枚・八枚系統、硬口戸前・浅葱・水浅葱などが各数種ずつ用意してあります。刃物と御依頼内容に合わせた石を使うのですが、基本的に刃金には鏡面近くなる砥石を最終仕上げにしており、地金には半鏡面狙いが可能な千枚系統を標準としています。(刃金への小割りの使用は例外的)

地金(軟鉄)を鏡面にするのは、刃物・砥石共に平面同士でも其処まで簡単では無いので、曲面を持つ刃物に鏡面砥石の小割りを当てても時間と手間の観点から、意義は殆ど見出せないとの判断からです。性能は大差無いのに、コストばかり嵩みます。

 

最初に戻って・・・講習御希望の方から、前回の記事に記載しました鏡面にする(正確には鏡面にする手助けになる)手順と、其れに使う小割りの砥石に付いての問い合わせを頂きましたので、同様に興味を持たれた方がいらっしゃるかもと考え、御返信を此方にも転載してみます。

 

 

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「鏡面にする手順」ですが、此れは自宅に講習に来て貰った(画像の)人にも説明した内容に成ります。つまり、①平面に研いだ刃物を平面を出した鏡面砥石に刃・地共に当てる以外の方法として、小割りを使う。それでも、可能な限り刃金は鏡面レベル砥石に当てる。②小割りは、或る程度細かくなるまで角砥石で刃物を砥いでから使う。(刃は勿論、地も硬口戸前・千枚以上の砥石を当ててからで無いと効率が悪い)③巣板・戸前系統(私は千枚八枚を多用)で数種の小割りを用意する必要あり。地金に硬い砥石の傷が入っていれば巣板で消すしか無い。④用意した小割りに習熟する。

以上が最低でも必要です。加えて、用意した石が砥ぎたい刃物に合っている必要が有ります。ですので、私の持っている小割りを渡しただけでは(しかも最終仕上げ用のみでは)余り効果が見込めない事も有り得ます。最終的には、各自が各自の刃物と研ぎ方に適する石を探し出さなければ成らない訳です。あと、私の使う為の砥石は小割りを含めて不特定多数へ販売できる様な数は有りません。理由は前述の通りですね。従って、サンプル程度に一つ二つはプレゼント可能、というだけです。勿論、それで最大限の効果が期待出来るとは限りません。

以上の様な所でしょうか。余り、耐水ペーパーや研磨剤ほどには汎用性が高い性格の品物では無いので、御理解頂ければと思います。此の辺りの事情に関しては、同じ印象を持っている方もいらっしゃるかもしれませんので、ブログの方にも情報として載せておいた方が良いかもと感じました。

 

 

 

 

 

研ぎ方の基本形

 

御依頼主とのメールでの遣り取りから、必要かなと感じて少し説明を。嘗ての記載内容の整理にも成るかなと・・・。

最初は切れても直ぐに鈍る物が多い中、「切れと永切れの両立に感心」との文面への御答えとして。(洋包丁も基本的な構成要素は同様で、和包丁の縮小版とも言える刃先ですが)和包丁の切り刃に於いて、先ずは刃元から切っ先への厚みの漸減を図ります。当然、元の厚みや想定される凹凸の程度と個数によっては或る程度、汎用性の高い厚みと減らし方・目的に応じた理想の厚みと減らし方から外れる場合も有ります。それでも妥協点を探ったり方向性を変えない努力は欠かしません。応用を効かせる訳です。以下は其の項目でも有ります。

前述の縦方向の厚みの調整ですが、平の厚み(刃体自体)が一定に近かったり殆ど変わらない場合は、縦方向にもハマグリを付ける意識で(平面的で無く)極緩いカーブを意図して厚みを抜く事も有ります。最近のT様の御依頼内容の様に、平の研磨が含まれていたりすれば僅かながらも平の峰側よりも鎬筋側の厚みを減らしつつ面を出したり。

鎬から刃先に掛けては、切り刃を全体的にベタに近いハマグリに。刃先側三分の一から四分の一は少し急なハマグリに。この時点で、刃先は最も薄い(鋭角な)状態ですので切れの追及は満足させられます。刃先の後部に控えるアールで、斬り進んでも張り付き・摩擦と言う抵抗も減少。一般的に言うハマグリは此れですね。私が言う切れ味優先ハマグリ。

しかし、永切れをも満足させたいとなると、刃先の最先端へ向けて一手間必要です。刃先側の1.5mm~2mm程の範囲で、先へ行く程に鈍角なハマグリに仕上げます。つまり、刃先から鎬筋までに掛けて後部が未完成の紡錘形にする訳です(切り刃の長軸方向のハマグリも、同じく刃元側が未完成の紡錘形ですね)。先端に強度を持たせた紡錘形。切り刃の中に三種類の砥ぎ分けです。

刃先最先端を鈍角にするのは、ひとえに切れ止むのを遅らせるばかりで無く、切り込んで行く際に刃先ハマグリの直後に続き、切削対象からの抵抗を受ける箇所の負担を減らす為でも有ります。必要とされる、見かけ上の刃先の薄さと耐久力に優れる厚さの両立を図れます。

最後に、そうやって揃えた刃先ハマグリの角度を可変にします。刃元は鈍角で切っ先へ向かう程に鋭角に。(此処で言う鋭角や鈍角は数学で言う直角を基準としての物言いとは違い、刃物の相場となる角度。例えばスポーツナイフの刃先は片側が大体20°、合わせて40°が標準。それと比較して~的な事です。)

因みに私は普通、(切り刃全体は更に鋭角ですが)刃先の最先端つまり最終刃先角度を柳で50°⇒40°⇒30°、出刃は70°⇒50°⇒30°で砥ぎます。牛刀なら片側40°⇒30°⇒20°です。此れでも殆どの包丁が、刃元で髪の切断くらいは可能ですし問題は無いでしょう。ただ単に、薄く均一に研いだだけの形状とは違う性能を必要とする方には、御薦めです。

 

 

 

あと、コメントに「芸術的かつ実用的」と言う文面も頂戴し恐縮ですが、綺麗と感じて頂けるのは之まで記載した研ぎ方を進める際に、可能な限り面構成と言うか面の連続を滑らかに繋いで凹凸を均し研ぎしているからです。

押し切り・引き切り・押し付けの如何に関わらず、凹凸は抵抗にしか成らないからです。単に視覚的に粗が見えなくする為に施した化粧研ぎでは、機能性が伴わず見た目だけで使うとがっかりと評価されるでしょう。

天然砥石を使うのは、こういった様々な効果を底上げしてくれる効能を見込める為であり、ただ人造とは違う色柄を狙っての事と思われては不本意と言わざるを得ません。其処を否定はしませんが、最大の目的は矢張り汎用性が高く切り込める刃先・永切れです。(食味への貢献も大きいですが。可能な限り傷を消すのも同様の狙いです)

その上で、見た目にも拘る方には御好みの仕様に出来るだけ御応えしたいとは思います。と言い乍ら、霞仕上げの御要望に巣板で無く八枚で仕上げたりしてしまうのは、少しでも錆・変色を遅らせたいからですが悪い癖ですね。

最終的には、なるべく複雑な研ぎ方をした痕跡が現れない様に、特徴的な外観に成り難い様に、普通の仕上がりと見紛う状態を目指しています。多様な要素を盛り込みつつも、一見しての判別は不可能。それが出来るのも手研ぎならではであり、仰々しいのは気恥ずかしいですから。

 

 

 

 

 

御知らせ(御願い二回目?)

 

一度は記載した事柄かと思いますが、再度の御願いです。前回記事の小刀を御依頼のY様も、最初の問い合わせメールが当方に着かず、反応が無いのを不審に思って、確認を兼ねた二番目のメールを送るに至って初めて届きました。

ですので、当方からのリアクションが数日以上も無い場合は再度、メールやブログのコメント欄にでも確認を頂ければと思います。コメント欄への其の類の確認が、ブログに載る事は無いですので御安心を。

同じ理由で、当方からの返信には出来れば御返答を御願いしたく思います。送信先のフィルター機能によっては弾かれている事も考えられるので、何らかのコメントを。送受信の可否は双方の懸案でしょうから。問い合わせ結果を見て「今回は見送る」でも「お前の技術に其処まで払えん」でも結構ですので。

 

 

 

 

序でに経過観察中の、手持ち新入り包丁の現況です。

最新の購入品

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少し前の、半自作品

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段階的に使いつつ研ぎ進める事で、無駄減りをさせずに適切な形状に近づけられます。かなり自分好みの切り刃構造(厚み・刃先角度・)と、錆び難い砥ぎ肌に成って来たので使い勝手が向上。もう少しで完成形になりますね。

但し、現状は通常用途の要素から汎用性の高い仕上がりを目指していますので、特定の用途に専一に使われる場合は、その方向性に特化した厚みや刃先角度・角度変化や刃線にアレンジする必要性が出て来ます。

 

 

 

 

あと一つ、業務連絡が。

昨日は、少し振りに日野浦さんと話せて柳の進捗状況を聞けました。色々と落ち着いて来た事も有り、そろそろ仕上げに入れそうとの事で、御待ち頂いている方にも明るい兆しがと報告出来そうです。

ただ、当初予想していたよりも少量づつ送ってくれそうですので、複数御希望の料理人の方には間歇的に御用意する事に成りそうです。尤も、到着後に私が研磨を施す一段階を経てからの御渡しなので、万一大量に送られて来ても一括でとは行きませんね。

しかし、希望していた仕様にはして貰えそうですので、その点は安心しました。楽しみに待ちたいと思います。

 

 

 

 

 

砥石選別の基準

 

稀にでは有りますが、砥石選別の御依頼を頂く事が有ります。何故、わざわざ砥石の採掘や加工を生業としている訳では無い、一介の研ぎ屋に過ぎない私なのか、と不思議に思う事が有ります。只でも、適正に研げさえすれば砥石の種類・銘柄は問わない。刃物との相性次第で問題が無い物を選ぶと公言している訳ですから尚更です。

例えば、肉の料理が食べたいとの御意向を受けて牛肉を選ぶ場合、その料理がステーキ・焼肉・肉じゃが・シチュー・青椒牛肉絲なのかによって変わって来ると思います。必ずしも単独の、例えば神戸牛のシャトーブリアンが常に最良の結果に繋がるとは限らない筈です。

同様に、或る山の或る層の砥石でさえ有れば最良、とは行かないのではないか。刃物や鋼材・研ぎ手・使い道、更に好みまで入れると条件が定まらない場合すら有るからです。一応、産地や砥石層によって大まかな傾向は見られる様です。しかし之も、個別の砥石其々の性能や質的な個性を体験すれば、全くとは言わないまでも別物ではとの印象を強く受けます。

従って研ぎ屋にとって重要視するべきは、産地や層の鑑別・同定が出来る鑑識眼を持つ鑑定家の能力より、その砥石がどれだけ良いか・何処まで仕上がるか(研磨力・外観仕上がり・切れ・永切れ)・質の個性(硬さ・泥の種類と出方・砥粒の目の立ち方・砥粒の均一性・凝集性)等を読む判別眼だと考えます。

特に、銘柄の指定無しで御相談を受けた場合は其の能力が頼みに成ります。過去に使った・試したあらゆる砥石の中から、現在入手可能で相手の求めている働きをする種類。しかも予算や使い方から、サイズや価格を判断しなければなりません。私などを当てにしてくれる方々は、この辺りを勘案の上なのだろうと愚考し、感謝しております。

相手の研ぎ方や御持ちの刃物を把握していれば、御提案する際の砥石の適合の確度は上がりますが、前述の項目から判断すれば大きく外れる可能性は低くなります。自らに置き換えて研ぎの仕事でも、使用砥石の違いに因る研ぎ料金の違いは皆無です。仮に、大突・奥殿・中山・マルカで差が有って、後者に成る程に研ぎ料金が上がるなどナンセンスでしょう。

砥石の説明として情報が限られている中で、二択の内から区別が逆に成る事は有り得ましたが御依頼頂いた砥石を意図的に、より一般的に高価と認識されている銘柄と偽って別物を渡すなど有り得ませんし、そうで無くても有り合わせを無理やり別銘柄で渡す事も有り得ません。

とは言え、産地や層の銘柄を最重要視される方の御気持ちも理解しているつもりですので、そう云った向きの一番確実な入手方法は、現地で採掘・加工している方から直接が良いでしょう。私の場合は其の山の其の層の石が有っても、質や個性で満足いかなければ見つかるまで御待たせし続ける可能性も有りますので、早く手に入れたい方も同じく直接を御薦め致します。

 

 

 

 

 

序でに形状に付いても

 

前回、記載を飛ばした形状に付いてですが、説明は過去に数回記載しました。ですので具体的に身近な物で試した画像を上げてみます。

特に、新聞は広告などを挟んだままの朝刊で多用しています。これは、刃先の最先端だけの切れでは判別が付かない「走り・抜け」、あと私が個人的に気にしている「通り(刃通り)」もテスト出来るからです。

刃通りは、余り押し引きせずに一定の角度で入った刃が押し付けるだけで切り進めるのか。更に意図しない方向に刃筋が逸れて行かないかを見ています。ギロチンみたいな使い方ですね。

御依頼頂いた包丁は砥ぎ上げた後に和・洋問わず、以下のテスト或いは其れに準じた物で確認後、御返送しています。当然、鋼材の種類や熱処理・製造工程の違いに因り、切れも永切れも違って来ますが、テストを一定レベルでパスする形状(刃先とその周辺・角度変化や厚みの変化)と成らずに終える事は有りません。

 

 

 

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関の先輩から頂戴したVG10(焼き戻し無し)のペティ。最終仕上げは中山の並砥です。

新聞は挟まれている広告を含め、普通の厚み。左手で保持して切り下します。先ず切れないと入りませんし、形状が整っていないと楽に真っ直ぐ進みません。当然、一挙動です。最後まで切り落としたければ、刃通りを活かせば大半の包丁で可能に成ります。

中級以下の鋼材でも研ぎで後押ししてやれば、垂直に5~10回までは切れが続き易いです。15回前後で鋼材に因る永切れが垣間見えます。TV撮影では100均包丁で披露したのですが、残念ながらカットでした。

やって見た方は御存じでしょうが、そう簡単には切れないし(適正形状)、切れても刃先の損耗が酷い(適正角度)ので良いテストに成ります。刃物と研ぎの双方が問われますね。

 

 

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上記のテスト後に、刃先の荒れ(摩耗や捲れ)をテストします。通常は此処でやっと紙一枚を切る意味が出ます。今回は分かり易くする為にエアパッキン、通称プチプチを丸めて切っています。

紙の束や厚みのあるプチプチを切るのは、カッターと違って包丁の仕事が薄物一枚切る事で無い場合が多いからです。繊維質や粘弾性の有る、厚みを持った対象に、刃渡りや刃幅の可成りの部分が接触しつつ通り抜ける訳ですから。

 

 

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ペティのテスト前、刃先拡大画像

 

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ペティのテスト後、刃先拡大画像

 

割と高性能なVG10の硬焼きとも言える仕立てですが、テスト後の刃先の最先端は、流石に少し摩耗が見られますね。其れは先端部が僅かに白っぽくなっており、厚みが増している事から伺えます。

硬すぎると、此処で微細な刃毀れが。柔いと刃先が撚れて捲れに成ります。その点からは此のテスト対象程度の硬さに対しては、適切な熱処理と言えるでしょう。もっと硬い相手には、毀れる可能性は有りますが。

ですので、硬い焼き入れの刃物程、柔らかい素材を切る必要が有ります。過剰な圧力・衝撃・角度のブレという外乱には御用心。その代り、純然たる摩耗に対しては永切れを期待する事が可能です。

 

 

 

同じく、和包丁でもテストです。半自作の菜切り。

 

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相手の新聞は、広告などの影響で少し厚目に成っていますが和包丁ですのでハンデ代わりです。切り刃構造は、刃先へ向けての角度調整の他、切っ先へ向けての厚みと角度の変化を二段構えで調整できるメリットが有りますので。

結果、ペティよりも楽に、正確に(刃幅や刃渡りに因る面接触の安定性も有るでしょう)永く切れてくれます。

 

 

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新聞の後でプチプチの切れ方も同条件のワンストローク。上記ペティより鋭利に深くまで切れ込みます。刃渡りは少し上回るとは言え、ペティはカーブ・菜切りは直線的と、刃線の違いにより切り込むには不利ですが和包丁の面目躍如と言った所でしょう。

 

 

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菜切りのテスト前、刃先拡大画像

 

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菜切りのテスト後、刃先拡大画像

 

白紙二号のAを確りと鍛造し、熱処理にも大きな瑕疵が無かったからでしょうか、テストに因る刃先の損耗は見られません。勿論、厳密に切れを比べれば落ちているとは思いますが、視覚的には著変無しです。いや、僅かに艶は落ちていますか。

鋼材と熱処理、研ぎと切り方の総合的な効果が、今回の対象を歯牙にも掛けなかったのでしょうが、その証拠に最後まで切れ心地が大きく下がらず、引き切りを意識せずとも(前述の)刃通りを実感できました。

 

 

 

 

テストでは、敢えて調理における必要性最低限を上回る要求を課しています。それは、使用する方の利益(労力削減・食材への刺激低減・正確な作業向上)に成るだけで無く、包丁を気に入り大事にして貰えると考えるからです。

包丁の性能を引き出し、有用性を認識される事で粗末に扱われない様になったり、より愛着を持って手入れされて欲しいと希望しています。ですので私が施している研ぎの標準では、刃先周辺の研ぎ直しを持ち主自らが行なう事で、当分切れを維持できます。

つまり、(主に和式に成りますが)切り刃の大まかな形状が整っているので刃先を潰さない限り、私の研ぎ上がりに近い切れを数回以上、自力で回復可能です。其の為もあっての緩いハマグリ(切り刃)から、きついハマグリ(刃先)への組み合わせです。

これは平や裏の磨きも同様で、私は特殊な機材や道具を使わず、一般的に市販されている範疇を用いて磨いています。持ち主の手元に帰って来た包丁は、其の気に成れば御本人でも維持管理可能なのが理想だと考えているからです。あと、特殊な能力や機材には手が出ないのも在りますが。

その他、各種テストを経て現在の標準的な研ぎを定めた訳で、拾い集めた要素に「角度・厚みの変化」で切り抜け(走り・抜け・刃通り)を。「天然砥石」で耐摩耗性の向上と錆・変色の予防・リカバリーの向上を。との二大項目が有ります。後年、切られた食材の味と香りの違いに気付かされたのは嬉しい追加でしたが。

 

興味を御持ちの皆様は勿論、疑念を御持ちの諸賢にも是非一度、御試し置かれる事を御薦め致します。(あ、私に依頼をと言う意味では無いです。研げる方は御自身で、同一仕様にてどうぞ)