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刃物祭りと、最近の事

 

少し前から手伝い先の御一人と、ステンレス包丁に関連する遣り取りをしていました。

偶々、数年前に「鍛造したステンレスの可能性を探って居るので試してくれ」と渡された銀三の小包丁(鎬付きの両刃、小刃有り)を持っていた為、試用して貰いました。多分ですが、ベタ研ぎ気味で無い研ぎ方には余り、期待していなかったと思われる其の方にも大変、満足頂けた様子でした。

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更に、服部刃物に居た頃の先輩から貰った幅広のペティ(VG無垢材ほぼフラットグラインド+小刃)、此方も試して貰った所、感心しきりで。

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話を聞いてみると、仕込みの仕事を含め万能性の高い包丁・筋引きの系統で決定版と言える包丁、の二本を考えて居るそうで。勿論、追加で他に1~2本の可能性は否定しないとの事でしたが(笑)。

曰く、裏方の仕事の殆どは、骨スキ系のデザインが適しているそうで、しかし其れには改良点も有るとの事でした。先ずは万能性を持たせる為、刃厚は4mm前後よりも薄い方が良く(厚いと割れたり切り込む際の抵抗に成る)、刃渡りは6寸前後以上は有った方が良いと。

そして肉関係の切り分け・筋を引く作業には、やはり専用の性能を高めた所謂、筋引きの発展形と言うか、より高性能な逸品を求める方向で考えて居るそうでした。

或る意味、発注の依頼を受けた形に近い話し合いの結果、日野浦さんに筋引きの相談、服部の先輩に骨スキの相談、の方向に。

 

 

電話で連絡を取ると、日野浦さんは内容を理解した途端、其れに近い物が既にあるとの返事。渡りに船では無いですが、話が早い(殊に「マテが長いので定評の有る」日野浦さんですから)と乗り気に成りました(笑)。何でも、某所に納品した残りの、特殊な作り方のでっかいペティ(7寸以上のシリーズ)。最早ペティの意味が不明に成りそうなサイズですが、今回に於いては持って来いでしたね。

鍛造は勿論ですが、熱処理も御自身で加熱後、空冷・油冷の何方でも無い焼き方との事で、私も思わず自分用を含めて二つ返事で発注しました。丁度、十月で良い機会ですので、柄を入れる前の身と、柄に使える選択肢の幾つかの種類を持参頂ける流れを受け、刃物祭りにて落ち合う約束をし、電話を切りました。

 

 

 

刃物祭り当日は、珍しく初日に出掛けました。昨年の二日目と大違いで、雲一つない晴天で暑い一日でした。

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刃物関連の露店は相変わらず大量でしたが、其れにも増して食品関連が充実していました。

下画像は其れ等の露店の一つですが、各種サイズのオピネルのナイフ・同デザインの鋸などが豊富に出ていて目を惹かれました。

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他には、フジタケの売り場で気に成って居たVG1の包丁を購入しました。8A・VG1・VG10の牛刀やペティが並んでおり、8Aは幾分ですが安く、残り二つが同価格でした。

自分では、VG10を多く使った経験は有る物の、VG1は其処まででも無い為、今回は敢えて後者を選んでみました。

 

 

他には、何時もの刃物会館(移転後の新しい洒落た建物)を覗きました。

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刃物研ぎの申し込みをすれば、研ぎのサービスを受けられますが、刃物祭りでは1本300円で一人3本までを受け付けるらしいですね。通りで数千本?にも上る事も納得です。

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内部の展示ブースでは、所々に目新しい商品も。

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更に奥のスペースでは、刃物と直接には関係しない一般的な御土産(特産品)で占められている一角も。

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カフェみたいに成って居る其の近くで、先輩とサイダーを購入して打ち合わせです。

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前述のペティ以外にも、彼は上掲の様にアウトドアナイフも作って居ますので、そのデザインも加えたオリジナル骨スキ?を煮詰めました。

依頼の方向性は、ペティのハンドルの形状(末端に掛けて引っ掛かりの有る形状)が良い、しかしハンドル材はペティの紫檀よりもアウトドアナイフ的な色調の物が希望と。画像のハンドル材はココボロや海外産と思い込んでいましたが、黒柿だったそうで意外に感じました。全体に黒っぽいので気が付かなかったですね。

 

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そして、ペティのカシメ(同質)よりもアウトドアナイフのカシメ(ステンレスとニッケルシルバー)の方が気に入った様です。そもそも後者は、シュナイダーボルトだと思って居たのですが此方もカシメでした。強度的には、遜色ないそうですので問題無いと考えました。

 

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あと、鋼材とハンドル材の間にスペーサーが入って居るのも良かった様です。私の方は、何となくですがペティの兄弟モデルとして相応しい感じのする、紫檀ハンドルを直付けの同質カシメで頼みました。但し、依頼人の寸法は6寸強の刃渡りに3.5mmの刃厚に対して、16cmの刃渡りに4mmで注文しました。自分では、其処まで汎用性を高くする狙いは無く、強度重視かつ取り回しの良いタイプが一つ、欲しかった物ですから。

序でに此の際、サブゼロの効果も確認したいと思って居ましたので、熱処理の行程に加えて貰う事にしました。手持ちのVG10の無垢材との違いが楽しみです。

 

 

 

 

日野浦さんは此の日、随分と遅くに到着しました。私も一宮方面の名神へ合流する直前、5~6km進むのに1時間掛かりましたが、それ処では無かった様です。ブース自体は御子息に任せ、御本人は単独で御忍び?にて訪問でしたが、色んな知人・関係者に捉まって大変そうでした(笑)。

其れが一段落するのを待って、日野浦さんの車まで同行して現物を確認させて貰いました。事前の画像では八寸の方に気持ちが傾いていたのですが、実物のバランス的に七寸が良さそうに感じました。

柄の方は個人的には、両口輪の必要性は低いのですが、エンジュの柄は初めてな気がしますので、右端の物かなと。

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最後は、チェックインするホテルで少し話そうとの御誘いで、コーヒーを頂きながら四方山話に興じてから別れました。日野浦さんと先輩には、色々と対応して頂き有り難う御座いました。これ迄も、何くれと無く御世話に成って居ましたが、改めて今後も宜しく御願い致します。

 

 

 

 

因みに、フジタケの牛刀・ペティは早速、刃先だけですが研いでみました。

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刃先の拡大画像、鋼材はVG1です。

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先輩のペティ(VG10)拡大画像

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日野浦さんの小包丁(銀三)、拡大画像。Still_2024-10-14_151044_60.0X_N0002

 

 

厳密には刃厚・刃角度・使用砥石の相性・熱処理の加減(硬さと粘りのバランス)・切る対象との相性で印象は変わりますが、銀三がザックリした掛かり方。VG1がスルスル切れる感触で、VG10は其の中間的な印象を受けました。

砥石に当てても(これは熱処理の味付けかも)VG1がシットリ研げる気がしましたので、滑らかに研いで滑らかな切れ加減を求める向きには、適しているかも知れませんね。何れにしても、今後も折に触れて使用しつつ比較し、鋼材の性格やメーカー毎の刃体のデザインを感じ取れればと思って居ます。

 

 

 

 

 

ハマグリ研ぎ講習受講者の方から御質問

 

少し前の天然砥石館でのイベント、ハマグリ研ぎ講習に参加下さった方からメールにて、御質問を頂きました。当日も皆さん、熱心に取り組んで頂けたとは認識していますが、やはり其の後の自主トレで、行き詰まったり疑問に思う事柄が出て来ても不思議は無いだろうと感じました。

其れは勿論、先日にメールを下さったO様に限った話では無く、極端に言えば(殆ど)全員?に言える事では無いかと。ですので、O様にはイベント参加者を代表して質問して頂いたとの体裁で、ブログの記事にする許可を頂き、其れに対する御返事を記載する事で皆さんに広く参考にして頂く機会としました。

以下は、苗字をイニシャルにした以外の全文を、其の儘に転載した物です。

 

 

「お世話になります。

先月の天然砥石館のハマグリ刃講習に参加したOです。

あれから約一ヶ月ほど出刃を仕事で使っています。

長切れ重視の研ぎを教えていただいたのですが、、

欠けや刃こぼれはあまりないのですが、なまってくるので研ぎはするのですが切れ味がいまいちイメージ通りに仕上がりません。。。

70度くらいから、50度、20度くらいにして1000番から中砥、天然で仕上げています。切刃も整えているつもりです。

魚を捌いたあとの身の艶もよくないです。身にざらつきのような感じが出て艶がありません。

おそらく味と食感や鮮度のもちにも影響ありと思われます。

教えてもらったとおりにしているつもりではあるのですが、、、

順番に角度をつけて1000番でカエリが出て、、

中砥でも角度を順番に寝かせていきカエリは出る。

丸尾山の巣板で仕上げるのですが、角度を順番に付けていきますがここでもっとしっかりカエリを感じるくらいまでしあげないといけないものなのでしょうか??

最終の裏押しで裏スキのカエリを取ったあとに20度くらいに「サーっ」と切刃側を滑らしてもう一度裏押しして、切刃側から「ササッつ」と滑らして裏も「ササッつ」で終わっています。

切れ味重視ではないので鈍い切れ味にしかならないのでしょうか??

角度を変えていけば解消されるものなのでしょうか??

説明があまりうまくないので申し訳ないです。

なにかアドバイスいただければ有り難いです。

よろしくお願いいたします。」

 

 

其れに対する、私の返信を以下に転載します。

「O様

イベント当日は御世話に成りました。更に、私の説明に則った研ぎを実践して頂いた上での御質問を有り難う御座います。

文面を拝読して、完全に実情を把握していると言えるか分からないものの、いくつか考えられる傾向と対策を考えてみました。

先ず、刃先から研いで行く方式での話との前提で。刃先最先端・少し手前・もっと手前、の三段階ほどの角度の研ぎ分け(但し研ぎ面は先に行く程に狭い)に成りますが、恐らくは1000番で全ての下地を作られて居るのかなと。その際、1000番で研がれた部分が適切な面積であったのか?次に、砥石の番手を上げて行く段階で正確に1000番で研いだ範囲が踏襲されて居るのか?が重要に成ると思います。其の辺りが上手く行かないと、御話しの「切れ味がイマイチ」「滑らかな切れに成らない」に繋がりそうです。

あと、角度の研ぎ分けの全ての段階で、余り明確な返りを出し過ぎても最後の処理で困る可能性も有りますね。番手を上げて行くに従い、研ぐ回数・力加減に留意しつつ「薄く短い返り」にして行く意識が必要です。それが最後の返り取りで、刃先にダメージを与えず・また取り残しを防ぐ事に貢献します。

(此処までの原因の予想:粗い研ぎ肌の残存・鈍角化された面積の増大・返りの残存・研ぎ角度の安定性?)

後段の「中砥でも寝かせて行くと返りが出る」「裏梳きの返りを取った後、20度くらいで・・・」の内容では、研ぎ角度を変えて居るのに(鈍角化された刃先最先端を一端、作ったなら、其れより鋭角な切り刃を研いでも)各研ぎ段階の全てでは返りは出ませんね。飽くまでも、最も鈍角に研いだ際の返り取りに焦点する事に成ります。

(問題点の予想:全ての研ぎ段階で返りを出そうとする事で、狙う切り刃の構造から逸脱している・返りを出す意識から大きな返りが残存している可能性)

対処法は、上記内容のチェックと言うか見直し、問題点が洗い出せたら改善する方向で修正する、に成る訳ですが・・・ここは一つ、逆から進めるのも頭の整理に役立つかも知れません。つまり、刃先から(最終刃先角度を決めてから逆算で)切り刃を研ぐのでなく、切り刃の全体を研いでから刃先の処理を行なうと。

元々、切り刃の研がれ方はベタ寄りの鋭角的な物だったかと拝察しますので、刃先の3~5mmの範囲だけ鈍角化する意図で研ぐ方が、狙いが絞れそうでは有ります。その際は、切り刃本体の角度(20度に成って居ましたか)から、30度⇒50度と起こしつつ研ぎますが、研ぐ面積は先端に行く程に狭くしなければ成りません。つまり、等高線で言えば先に行く程に間隔が狭まって行く並びと成ります。

(問題点の予想:私の説明では、刃元が70度・中央が50度・切っ先が30度に研いで居ますが(角度のテーパー化)、一般的には慣れるまで一律の角度で良いと思われ、付いては40度~50度で研ぎましょうと説明しましたが・・・全体を70度で研がれて居るのでしょうか。其れでも、極小面積に正確無比な角度での研ぎが施されて居れば、大きな問題は出ない可能性が高いのですが、角度のブレや刃先最先端の面積が大きいと切れが鈍る結果と成ります。)

そして、最後の天然仕上げ砥石での研ぎでは、目視は勿論、手触りでも判別が難しい程度でしか返りを出さない配慮で研いで頂きたいと思います。

以上の様に成りますが、これ等を参考に研ぎ進め、更に不明な点が出て来ましたら再度、御質問を頂けましたら幸いです。また他にも、講習に参加して頂いた方々の中で、この様な疑問を持つ方がいらっしゃる可能性を鑑み、(何処の誰かは伏せますので)今回の質問状と回答文をブログにて紹介させて頂いても良いでしょうか?サンプルの包丁をよういして、一つのブログの記事にする事により、御理解を深められるのではとも考えましたので。

村上浩一」

 

 

先ずは上掲の内容を踏まえて、イベントで説明した研ぎ方の大まかなトピックを記載してみます。とは言え行き成り、理想的な(凝りまくった複雑な)形状を整えるのは困難ですので、初心者向きにデチューンした形状を示唆した範囲に留めて有ります。

次いで私が最良(切れと永切れと使い手の負担軽減・・・刃物の寿命延命・研ぐ手間の軽減・手応えの軽さ)と捉えて標準研ぎとして居る、二種類のハマグリを組み合わせた研ぎ方の説明です。此れの詳細に触れるのは考えてみれば、久々かも知れません。

 

➀刃角度(刃物の厚みと切り刃の幅で切り刃角度が決定される・刃厚と刃幅により、ほぼ小刃角度が決定される)は設計段階で其の目的に応じて指定されて居る為、使用者と言えども余りに切り刃を鋭角にする事は避けるべき。

➁余程の刃厚・切り刃の凸部残存で無い限り、刃先まで一定角度で研ぐ必要性は低い(但し起こして研いでも安定性を保てる研ぎ手である事が前提)。

➂ベタ研ぎが必ずしも薄さで最高とは限らない(ベタ研ぎの面から更に厚みを抜きつつハマグリにする事も可能、但し切れ優先タイプのハマグリによる)。

④鋭角のベタ研ぎであっても、対象との接触面積が広く、切断完了まで一定の摩擦が継続する為、抜けの重さ・使い手の手応えの重さ・要する筋力の増大は相応に避け難い。

 

 

これ等に対応する為に考えたのが、二種類のハマグリを組み合わせた研ぎ方です。前提条件として、一般人が多く行なう、刃を対象に押し付けるだけでの使い方には対応していません(とは言っても刃筋が通って居れば相当に切れるのですが)。前後への押し引きを伴う(本来は丸鋸を押し付ける様な動き、或いは輪の太刀に準じるのが正解との認識)動作での使用を想定しています。

切り刃の厚みの残存が酷くなければ、可能な限り不必要には削りたく無い点。そして刃元から切っ先方向へのテーパーを活かしたい(初期から存在する場合)・テーパーを作りたい(初期には一定だったり出鱈目だったりする場合)点から、特に刃元に近い部分に近付く程に厚みの減らし方は緩やかです。此処までは下地作りの段階にて、次から切れ優先タイプのハマグリ研ぎの始まりと成ります。(刃体の厚み自体にテーパーが付いて居れば、切り刃の角度的テーパーへの依存は低く成ります)

鎬筋(洋式では小刃の始まり)から刃先へ向けて切り刃を研ぎ減らすのですが、幾つかの角度変化を付けて研ぎ分けます。幾つに分けるのかは刃厚と切り刃幅の比率・切り刃の強度優先か切れ優先か・・・・要は切り刃の厚みの残存レベルと、其れを活かすか変更するかで異なります。

当然ですが、厚みを残せば残す程に(厚みの落差が大きい程に)段階分けが多く成ります。しかし、薄目・厚めの仕様に関わらず研ぎ方の法則は存在します。

鎬筋から刃先へ向かって研ぎ始めるのですが、その始まりは角度変化が大きく、研がれる面積は小さい。それが刃先へ近付くに連れて徐々に変化が小さく、研がれる面積が大きく成ります。表現を変えれば、等高線が広がりつつ刃先へ向かう、と成ります。

 

 

【 サンプルとしての画像ですが、私の尺の柳では厚みの変化が少な過ぎたので(ハマグリ度合いも最低限度)。

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僭越ながら次回、投稿予定の記事に登場するK様の研ぎ上がり画像を俎上に上げます。同じく本焼きながら、尺越えの為に重量感と相応の肉厚を持っています。後ろ寄りの研ぎ傷の残存は、元の厚みが減り気味だったので其れ以上、減らしたく無かった為。

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ほぼベタ研ぎでしたので等高線は均等に見えます。但し、刃先直前からは明らかに狭く成り始めています。】

 

 

上記の研ぎ方では、切り刃自体の角度と大きくは違わない最終刃先角度と成りますが実際は、その角度では刃先が耐えられない場合が多いです。鋼材の種類と熱処理の加減にも因りますが、滅多に其のままで使用可能とは行きません。勿論、使用者が丁寧・且つ切る対象が負担の少ない強度であれば、問題は無いかも知れません。包丁で言えば更に、俎板も刃に優しい素材であれば言う事無しです。

しかし実情は、刃先に対して負担が過ぎるのが一般的なので、何らかの改善策が必要になります。其処で考えられるのが永切れ(頑丈さ)優先タイプのハマグリです。此れは刃先(主として刃先2~3mm、小刃の刃先では0.5~1mm)の処理として、言わば無段階の小刃・・・但し無自覚な成り行き任せのラウンド形状による小刃では無く、等高線が刃先に向かって、徐々に狭まって行く方法で研いだ正確な角度変化を伴ったハマグリです。当然ながら、此方も必要とする強度から逆算した最終刃先角度に応じて、切り刃角度から必要な数の角度変化で刃先まで繋げます。

 

 

つまり総合すると、私の研ぎ方では此の二つのハマグリ(和式では切れ優先ハマグリで研いだ切り刃に、永切れ優先ハマグリの刃先とします)の双方で、顎から切っ先へ向けて徐々に鋭角化をも加えている訳です。此れに因り、一定角度の切り刃や小刃とは違って、前述の押し引きのスライド時に明確な効果が得られます。

引き切りの際は、最も厚みがあり角度も鈍角な刃元から対象に接触し、僅かでも切り込めば其処から先は、厚み・角度の双方で抵抗が少なくなって行く刃体が通過するので、受ける抵抗の軽減は自明です。逆に押し切りの際は、一定角に比べて厚み・角度が増して行くので上滑りする事は無く、寧ろ押し開く効果が強く期待出来ます。押し開く効果が大きいと、徐々に必要とされる入力も増大して行きますが、引き切りと異なり持ち手の部分(柄・グリップ)が対象に近付いて行く動作と成るので、より大きな入力にも不足を感じる可能性は低いです。

平たく言うと、下手に圧力を掛けて押し潰し勝ちな魚肉・鶏肉等は(抵抗の少ない切れ優先タイプハマグリの)引き切りにより、食材が纏わり付かず使い手の労力が少ない。牛蒡や根菜類の切断に対しては、頑丈な相手に刃先(永切れタイプのハマグリ)が負ける事無く、また急に切れて刃先が俎板に激突しても傷みが少ない。更には押し切りで刃が食い込んで止まる事無く、より切り開ける効果が期待されます。

 

【 サンプルとしての画像は、昔の購入の酔心の出刃。店頭にて長年展示の物で、硬さと粘りのバランスに優れる物。久々に手入れを兼ねて登場願いました(笑)。

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刃先最先端へ向かって、等高線が狭まって居るのが分かります(縞々の幅が狭く成って居る)。】

 

 

 

O様の他にも、疑問を御持ちの方には御気軽に御質問を頂ければと思います。

また今月、下旬に当方に御越しの予定の、やはりハマグリ研ぎ講習を受講して頂いたM様にも折角、個別講習で御足労を頂くからには、出来るだけ御満足を頂ける様、努めたいと改めて考えて居ます。

 

 

 

現在、ホームページ不調の為、御面倒を御掛けして居ります。研ぎの御依頼・御問い合わせの方は、下記のアドレスから御願い致します。

togiyamurakami@gmail.com

 

 

 

あと、以前に留守電にコメントのみで連絡が・・・のO様には、たまたま再度の電話に私が出られた為、本焼きを送って頂きました。此れから其方の研ぎに取り掛かりますので、もう少々の御待ちを御願い致します。

 

 

 

 

 

御知らせ(御願い)など

 

後述の方が、当ブログを閲覧下さっている事を祈りつつ。

本日、二度に渡って留守電にメッセージを入れて頂いたO様、出られずに申し訳有りませんでした。しかし、折角の研ぎの御依頼の内容でしたが当方の留守電、余りに古く先方の電話番号の表示機能などが有りません。

番号を吹き込んで頂けていれば、折り返しの電話をさせて頂けるのですが之までには殆ど、そう言ったメッセージが無いのが現状です。先々週にも鋏に関する問い合わせが有りましたが、同じく折り返し出来ませず。

ホームページには当方の電話番号を掲載していますが、此れは架空の住所や設定では無い証明がてら載せている意味合いが強く、基本的にはメールでの対応と送付(返送)での遣り取りを行なって居ます。出来ましたら、以下のメールアドレスから御連絡を頂きたく思いますし、万が一、電話で御連絡を頂く場合は御当人の番号を入れて頂けますでしょうか。宜しく御願い致します。

 

togiyamurakami@gmail.com

 

 

 

 

手伝い先では仕事の一部として、偶に豚肉の塊(10㎏程度)を切り分ける作業も有ります。モモ肉と呼んでいますが恐らくは、ランプ周辺と言うべきと思われる其れは、ちょっとした枕位は有りますので、通常の家庭料理では試せない包丁の性能を確認出来ます。

先ずは下掲の二本。24cm牛刀と21cm筋引き(パンスライサー改)です。刃渡りと厚み、何より刃幅の狭さの差が大きいので、完全両刃(左右均等)と片刃寄りの両刃(右側に大き目切り刃風)による違いは出るのか興味が有りました。

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画像上の左右側面が対称な牛刀に比べ、画像下はパンスライサーとしての適正からなのか、裏は梳いてあるかと思われる程にフラットです。小刃の幅を1~2cm程度に広げれば、ほぼ完全な片刃に成りそうな勢いで。

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予想としては、両刃と片刃の違いは有れど、刃先最先端の角度は若干の差(やや筋引き鋭角)のみですので、やや刃厚が薄く刃幅も狭い筋引きが有利と考えて居ました。所が、出自がパンスライサーな事も有るのか、切っ先カーブから先に相当の厚みが残されており、引き切りの最後の抜けで抵抗を感じました。

其れ以外の部分は結構、良い勝負でしたが此れは、牛刀の方が手作業で切っ先方向へのテーパー化・ほぼ峰から刃先まで浅いハマグリにしていた事が奏功したものと思われます。通常は側面の仕様が同等でしょうから、長さと広さに比例した摩擦抵抗を受ける筈なので、逆の結果に成るのでは無いでしょうか。

結果として此の比較では、「抵抗の少ない仕様の長い刃」を持つ牛刀の方がストローク数が少なくて済むので、筋引き(パンスライサー改)よりも優れていると感じました。逆に、肉の塊を端から薄切りにして行く場合は、反対の結果に成る可能性も有りそうですね。

 

 

 

次は、側面片方に平・鎬的な角度分けを設けた方式では無い、牛刀を薄く狭くした方式の筋引きです。全くの別物感は薄いながら、此れは此れで柳に対する河豚引き的な利便性を好まれるタイプです。

刃体全体が切っ先に向けてテーパー化されていると迄は行かないものの、刃厚自体が元来、24cmの刃渡り全域で薄手に仕立てられていますので抜けや走りが期待出来ました。

新品時よりも、やや右側の小刃を広げ気味・鋭角化すると同時に、左側の小刃を鈍角化(小刃の広さを半分程度に)。実際に使用してみると、切れは充分乍ら存外、抜けが重く感じました。其処で、右側の小刃のみ切っ先方向へ鋭角化してみると改善。更に左側の小刃も切っ先方向へ鋭角化すると更なる改善が見られました。

小刃のアレンジ以前から、切っ先カーブ周辺の抜けに関しては(刃厚・刃先角度から見て)妥当で、前述の筋引き(パンスライサー改)に比べて優位でしたが、切っ先方向へ鋭角化アレンジ済みの其れと比べれば直線的な刃線の部分の抜けは大差がない状態で。しかし小刃のアレンジを経てからは同等以上に。ただ、刃先最先端の切れに依存する傾向が強いのが気にはなりました。刃体形状的に、余り切り開く性格では無いからでしょうか。そして、端から薄切りする場合の優劣は此方も未知です。

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最後は、一番の新入りです。かなり広い小刃を付けられていますので、鋭角過ぎるキライも有り、刃先角度を2~3割り程ですが鈍角化しつつ切っ先方向へ鋭角化しておきました。此の仕様での試し切りでは、筋引き(パンスライサー改)に近い切れ感で、まさか21cmの刃渡りが同一故にか?とも思い難く、考えられるとすれば次の二点。刃幅が広く抵抗を受けるデザインの牛刀ながら、両側面に広目の小刃を持つ為に刃先周辺の抵抗は少ない。対してパンスライサー改では、右側面の切り刃的な幅広小刃はアレンジの範囲が広く抵抗をいなすのに有利ながら、左側面の小刃は極端に狭いのでアレンジ幅が狭く抵抗を受けやすい状態。極端に言えば、左右の小刃の広さを合計して二で割ると恐らく、同程度に成ると思われますので、合計の抵抗も近いのではと。

まあ、あらゆる厚さと刃幅・刃先角度・刃線のカーブの度合いをグラデーション的に取り揃えて詳しく比較検討する訳にも行かないので、飽くまでも実用の結果からの推測でしか有りませんが、事前の予想より少し意外な結果・狙い通りの効果など、入り混じって楽しい実験と成りました。

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総評としては、刃体の形状の最適化(此の場合は抵抗の少なさ)が、どれだけ全般に及んでいるか次第に依ると言えそうです。例え、刃厚が薄い・刃幅が狭い・刃先角度が鋭角であったとしても、側面がフラット過ぎたり小刃が単純な一定であったりすれば、切れ込む際の抵抗(摩擦含む)は軽減するにも限界が有るので、刃厚たっぷり・刃幅広い・刃渡り長い鈍重なデザインの包丁(刃体・刃先アレンジ済み)に敵わない結果と成りました。

 

 

 

 

 

少し振りに、砥石の選別(御知らせと御願い)

 

先週末は、少し振りに田中砥石店へ出掛けて来ました。事前に聞いていた、採掘場所の範囲の拡張は堅実な程度に収まって居た様子で、面付け・加工中の原石群を観察してみると、天井巣板に見える種類が混じっているものの、その他は以前からの各種砥石のグラデーションと見受けられる、地続きの変化と言えそうな感じでした。

そして私が訪ねた当日のタイミングでは、サイズ・形状の面で狙っていた個体が少なかった事も有り、ブログを通じた知人へのサンプルを選んだ後、以前に取り置きをしていた中から、水浅葱を持ち帰る事に。

 

 

一つ目は超硬口で砥粒も細かい、カミソリ砥に相応しい砥石です。ただ、泥が出難い硬さに加えて砥面の食い付きも強力ですので、平面の刃物を研ぐには滑走の重さを御せるかどうかがカギと成ります。どうしてもと成れば、名倉の類の使用・ダイヤ砥石に因る泥出しの併用で改善は容易です。しかし素の状態でも使いこなせれば、砥石自体が研磨力に優れるだけに、刃の掛かり加減も砥石の性質を反映し、出色の出来と成ります。

砥面の色調は、やや白浅葱に寄っているかと思わせる、やや明るめ且つ(田中さんが言う所のデイダラボッチの色合い)紫と紺色が僅かに混じる物です。

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試し研ぎの結果です。刃・地共に鏡面です。鍛接線が明確に成り、刃金に接している地金の端が(炭素の移行を受けて)地金らしく無い光り方をしている事からも、光らせる性質が伺えます。

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二つ目は、戸前と合いさの中間に感じられる砥石。以前からの砥石と色柄的には近しい印象ですが、巣板の要素が少なくなりつつ硬さが微増、研ぎ感も巣板系統のサラサラよりスルスルと滑る手応えです。

実用品としては少々、(余り邪魔に成らない質とは言え)筋の多さは否めませんが、砥面以外の五面が皮付きで尚且つ其々が、自然な風合いを感じさせ乍、異なる表情を持っている点が喜ばれそうな気がしました。砥石の好みが実用一点張りに近い自分とは違い、其方の観点も重視される先方を意識しての選別です。

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試し研ぎの結果は、上掲の水浅葱よりも数段、研ぎ易い性質でした。硬さは殆ど同様ながら、若干の泥が出る事・砥面に多少の弾力が有る事が、扱いを容易にしてくれて居ます。仕上がりは、ほんの僅かに半鏡面寄りの鏡面です。

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過去からの加藤鉱山採掘の砥石を御持ち頂いて居て、新たな種類の砥石を御待ちの方々には又、今月末に選別の機会を持ちたいと考えて居ますので、その際に良い報告が出来ればと期待しています。

それ以降に関しましても随時、採掘の進捗を追って行きたいと思って居ますので、御希望の砥石の入手を企図される場合は宜しく御願い致します。

 

 

 

 

あと、御知らせと御願いなのですが・・・当ブログを、偶に御覧下さっていた様子のH様から、御指摘を頂きました。私のホームページの問い合わせフォーム等、一部(直接やり取り出来る分のみ?)が繋がらないとの事で。予想もしていなかった為、当該事象に気付くのが自力では相当程度、遅れて居た筈ですので驚きと共に感謝のメールを返信させて頂きました。

ホームページの製作を御願いした専門家の方は、年数が経過した事も有り住所や電話番号・メールアドレスが変更に成って居りますので、遠からず身近な協力者の方に相談してみる心算では有ります。

それで改善できない場合は、資金面の目処が立ったらとの条件付きですが(笑)、新たなホームページの製作も視野に入れる事も検討したいと考えて居ります。

付きましては当座、お問い合わせ等で御連絡をと御考えの皆さんには御面倒をお掛けしますが、togiyamurakami@gmail.com の方からメールを御送り頂けましたら幸いです。

 

 

 

 

 

最近の事

 

流行らない研ぎ屋は相変わらずなのですが・・・ここ三ヶ月程は、何度も有った閑散期に匹敵するレベルでしたので、以前にも増して副業に重点を置かざるを得ない状況でした。つまりは仕事先を変更すると共に、掛ける時間も延長する事に。まあ、近場で短時間で手伝いに行ける場所と言う条件は共通ですが。

業務内容的に、店置きの道具で問題は無い範囲だとは思ったのですが、より自分の扱い易い物をと考えて、新たに入手したのが下画像です。

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初めから使い易い形状にして置きたいとの意向も有り、寧ろ新品では無い方が良いかと、自分としては極めて珍しく(初めてかも)ヤフオクで。御蔭で?価格的にも負担が少なくて済みました(笑)。

或る程度は研ぎ減って居るであろう事と、刃幅が少々、刃元より切っ先側が狭く成って居るのかな程度の状態で、大きな問題は無さそうでした。

 

 

研ぎ始めは刃線をチェックしつつ、180番の荒砥により厚みの不均等を均して置きます。顎から切っ先に向け、刃幅の三分の一~二分の一位の予定でテーパー化。結果的としては刃線中央付近を多めに、次いで切っ先カーブから先の厚みを重点的に減らす事に。特に切っ先寄りは、峰の部分に掛かる程(刃幅全体)に砥石を当てました。

左側面に対して、より厚みを持っていた右側面は余分に薄くしましたが、初期からの小刃の強さの違いによって、右側だけは刃先最先端まで砥石が当たって居ない状態です。

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320番で、より正確な形状にして行きます。刃元から切っ先に掛けて鋭角化+刃元寄りの刃線を直線気味にしつつ、刃幅を減らしました。

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ペーパーの200番前後を用いて、更に面を均しつつ研ぎ目を消して行きます。その後は400番まで。

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同じく、1000番・1500番で。

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実用上は充分でしたが、2000番まで進めて置きました。

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人造の1000番・3000番を経て、対馬砥石で。

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中硬の巣板で仕上げ研ぎ、そして中山の合いさで最終仕上げ。

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もう一本、テールの筋を引いたり切り分けたりに向いている物を、と言う訳で此方も。レギュラー品の筋引きは240cmの様でしたので、もう少し短めで且つ片刃仕様(三層利器材では無い)であるパンスライサーが目に付きました。

ほぼ新品であり、綺麗なセレーションでしたので勿体無く感じましたが、筋引き的に改造させて貰いました。21cmながら上掲の24cm牛刀よりも厚い背厚と、三層では無いので刃金が刃先まで出るかどうかの心配が要らない点が適しているとの判断でした。

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ベルトサンダーで大まかにセレーションを削り落とした後は、ほぼ牛刀と同じ工程でした。ただ、牛刀は側面の厚み調整を広い範囲で行ないましたが、改造筋引きでは或る程度、広目の明確な切り刃を付けましたので、厚み調整(角度の研ぎ分け)は其の部分の中で済ませました。従って、平に当たる部分は手付かずです。

もしも実用に際して、走りや抜けの面で問題が生じれば、改めて必要に応じて手を加えるつもりです。前身が前身なので、途中で若干のカーブを持たせる様、研ぎ進めた程度の未だ直線的過ぎる刃線ですが、デザイン上は柄に対して刃体が後ろ反りである事を踏まえて当座は経過観察でと。

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此方も人造は、3000番まで。

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対馬で天然に繋ぎます。

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最終も同じく、中山の合いさです。

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研ぎ上がりです。元々、オールステンレスの系統ではオーソドックスなデザインのトージローが好みでしたので、(手持ちには三層の三徳・多積層地金の牛刀有り)同じシリーズで揃えられて結構、嬉しかったりします(笑)。

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以前は、研ぎの御依頼を頂いた場合、到着した当日に作業を完了し、翌日には発送・御希望により日程を双方で調整して持ち込みを頂く、等も場合によっては可能でした。しかし、今後は相当に難しく成りそうです。同じく、私の自宅へ御出で頂いての研ぎ講習も。

ブログに関しましても、従来ほどには更新が出来なく成るとは思いますが、研ぎ・砥石の御依頼を頂いた方への報告・参考にして頂いて居る数少ない方々への情報発信として、トピックが有ればポツポツとアップして行きたいとは思って居ます。

取り敢えず次回は、遠からず砥石の選別に関する内容に成りそうです。御待ち頂いて居る御二方には、良品を御用意出来る様、努めますので宜しく御願い致します。

 

 

 

 

 

1対1での研ぎ方説明会

 

先週の土曜は急遽、田中砥石店まで出かけて来ました。此の二週間ほどの間に偶々、司作の包丁を断続的に注文して貰う事が続いたのですが、其の中に砥石の採掘を手伝っている方も含まれていました。

私の研ぎ方を含め色々と話す内、調理師学校で経験も御持ちとの事ですし、研ぎのバリエーションと其々の効果を理解して貰えれば、今後の御本人の役に立つばかりで無く、砥石の購入に来られた御客さんへの対応に活かす事で、顧客サービスにも繋がると考えました。

先ず準備として前日の金曜には、説明に使う小道具を入手する為に梅田まで買い出しに。元々の手持ちのナイフ類のみよりも、効率よく伝わるのを狙ってのサンプル追加です。

手持ちの№8カーボンに関しては、ブレード自体の厚みのムラ(刃線中央が薄い・カーブ周辺は厚い・刃元と切っ先は中庸)を削り、簡易的ながらテーパー化した上で刃先方向へもハマグリ化して有ります。

其の手持ちとの対比として、新入りの二本の内、カーボンの方は最低限の小刃を一定角度で付けます。ステンレスの方は幾分、広目の小刃を付けた上で、刃先へ向かって鈍角化ハマグリ+切っ先方向への鋭角化も。

 

 

 

オピネルの№8、カーボンとステンレスです。ステンレスの方は説明の最後にプレゼントするつもりの物で、カーボンの方は自分用の予備として。

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しかしステンレスモデルは購入時に店員の方が、入れる箱を間違えたんでしょう、紐付きのモデル用の箱に入って居ました。

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一目瞭然、現物は紐が付いていないタイプなので、余分な価格の上乗せを食らった事に成りましたが、急いで研ぎ、次の日には渡す予定でしたので置いて置きました(笑)。

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当然ですが鋼材が異なっても、基本的にブレードの形状は共通です。

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研ぎ前の状態、カーボンの方の刃部アップ。此の状態では、やはり刃先角度が不安定+荒い刃先なので研ぎ直しました。

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同じく、ステンレスの方。若干ですが、刃先の状態はマシな気がしました。試し切りでも僅かながら差が付きましたし。

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研ぎ始め、320番と1000番です。

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次に対馬砥です。

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八木の島の蓮華巣板、馬路の戸前で仕上げ研ぎ。

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最終仕上げは、中山の巣板(やや硬口)からの水浅葱です。

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研ぎ上がりです。

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カーボンの方、刃部のアップ。殆ど全て、オピネルのカーブ付近は右側面の方が厚みが勝っている様です。従って、小刃を同一角度で研いでも右側面にのみ小刃以外に砥面に接触する確率が高いと感じます。

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刃先拡大画像ですが、殆ど一定角度で単純な小刃付けとして居ます。

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同じく、ステンレスの方の刃部アップです。此方の方が幾らか、ブレード側面の厚みが不均等な研削だった様で、小刃の幅も不均等に成って居ます(或る程度は切っ先方向へ鋭角化したので徐々に広がって行くなら分かりますが)。

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刃先拡大画像です。此方は、小刃の幅の中で数段階を経て刃先に向かって鈍角化している等高線が見えます。

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そして、手持ちの№8です。ブレードは厚み調整後に鏡面化し、ハンドルはカシューで防水したりして有ります。

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刃部のアップ。刃先周辺の厚みは最も薄目ですが、より重要なのは刃元から切っ先方向に向かって、大まかにですがテーパー化して有る事です。此れに因り、引き切りの際に抵抗が軽減され、手応えは軽く成り、対象の切断面の乱れも減ります。

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刃先拡大画像です。上掲のステンレスの方と同様、刃先に向かって多段階の研ぎでハマグリ化が分かります。

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手伝いの方には店内で説明の後、此の三本による三種類の研ぎの違いを、実際に切り比べて体感して頂きました。新品に単純な小刃を付け直したのみでは、紙の数枚では苦にしない物の、量が多く成ったり捩って有ったりすると走りや抜けに抵抗が大きい。

小刃に漸次鋭角化・刃先に向けたハマグリ化の工夫がされていると、其の抵抗が少なくは成るが刃体(ブレード本体)自体の厚みの不均等による影響(切れ加減が一進一退)は残る。

刃体の形状から整えた上で、刃先の調整(漸次鋭角化・ハマグリ化)まで行なった物では、最も抵抗が少なく切れも良かったと、当然と言えば当然の結果に納得して頂きました。

 

 

 

序でに、もう少し広い切り刃状のベタ研ぎ・ハマグリ研ぎの差も実験すべく、モーラのナイフを用意したのですが、新品時から薄目の刃体+ベタ研ぎに近い刃付けですので、ハマグリ化の効果が感じ難かったですね。本来は多少なりとも、より広く取った切り刃の中で構造を変えるべきでしたが、新品時の幅を変えずに研いだので、切れ込んでからの僅かな進み具合の軽さを切っ先側の半分で実現した程度で。

此れは新聞の分厚い束を切り分けるなど、ハードな対象に限った結果でしたので、厳しい条件で無ければ違いも出ましたが、帰宅後に明確な差が出せるまで研ぎ直して置きました。

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ベタ気味+軽度の糸引き

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ハマグリ気味

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あと、最近に採掘された砥石の方も見て来ました。特段、カラス好きと迄は行かないのですが、硬さと細かさ・グレーの地肌に細身のカラスを気に入って購入。ただ、私よりもカラスに拘りの有る、ブログを通じた知人に送って見るのも良いかな?とも。

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下画像は、合いさとの事でしたが戸前・並砥の何方の特徴も含んでいる印象です。砥面の難は少なく形状も整って居り、砥石の御希望が有った場合に備えて置きましょうか。

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あと、不定形な小さ目を幾つかです。先ずは、完全に上掲の合いさと御仲間の細長五角形。どうも、此の形状はちょくちょく、出てくる気がしますね。

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多少、密と粗の組み合わせが目立つのと、砥面の硬さも程々かつ砥粒の細かさも中庸と感じさせながら、鏡面の仕上がりに。

刃先の緻密さと切れ加減は最上クラスと思われ、特筆すべきは裏押しへの適正です。水浅葱などの強情さを持つ浅葱系での裏押しと異なり、比べれば若干、刃物への追従性過多かと思われるも万全の仕上がりに。此れを知ると、上掲の砥石も自分用に・・・と云う気に成って来ます。

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本当に、手の平サイズの超硬口です。切っ先・刃先の部分調整用に持ち帰りました。

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同じ砥石から割られた相方と思しき方。

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少し薄い此方は、層割れの取っ掛かりが確認されましたので、小割りにするつもりで。超硬口の小割りは、そうで無い小割りより相性探しにシビアさが求められるので、機会を見付けて追加して行く必要が有ります。今後も合いさ・並砥・戸前の各系統のバラエティーも、追加して行きたい所です。

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そうそう、話の途中で田中さんとも合流でき、その際に以前から話が進んでいた砥石の日イベントのチラシを受け取れました。

イベントでは過去から、恒例の研ぎに関する講義を開催されて居ましたが、実技の方を分離して行なうに当たり、私に任が回って来た格好です。

去年は、田中さんの店のブースの手伝いをして居り、隣の研ぎ場で苦労している方へ簡単なアドバイスもしていた関係でしょうか。兎も角、流行らない研ぎ屋としましては砥石館イベントの合間にも、こうして御呼びが掛かるのは有難い事ですね。

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香川のK様からの御要望で

 

前回の投稿にコメントを頂いた、香川のK様からの御要望(神経質な地金の切り出しの研ぎ肌の拡大画像)に向けた記事と成ります。一般的な方々にとっては、マニアック(枝葉末節に拘り過ぎて判別が困難)に過ぎると捉えられる恐れは有ります(笑)。

しかし私は基本的に、各種鋼材の様々な仕様(金属組織のサイズ・硬さと粘りのバランス)に向けた相性探しの手段として、天然砥石を使っており、其の為に普段は中々「特定の外観的仕上がり」を求めて砥石を取っ替え引っ替えする事は少ないのが現状です。

天然砥石に限りませんが、研ぎ肌(研がれた表面の傷の痕跡・揃い方・光り方や曇り方)の判別には現物を自然光(日光・陰り気味)で観察するのが最適かと思われます。次いで、電灯⇒蛍光灯⇒優れた画像を画面で⇒下手な画像を画面で、と成りそうですが私のブログは最後に分類されますので、聊か以上に力不足で在るのは否めません。その点、御含み置きを頂きたく思います。

其れを踏まえた上でも、識別能に優れた方には各種砥石における刃物表面の性状を違える結果に、気付いて頂ける事と思われますが、(画像での外見上)小なりとは言え差異を認めるという事は即ち、刃先最先端の状態が異なってる事に成ります。同角度で研がれた金属の表面の光り方や、組織の凹凸の様子に変化が生じた訳ですから。

上記内容に最も影響しそうな要因は、天然砥石の砥粒が人造と違って柔らかく、砥粒の目も立って居ない事と考えて居ます。加えて、泥の出方にも因りますが金属の表面の、言わば軟部組織から研磨が進み、硬い部分を浮き彫りにする(柔らかい人造にも言えますが砥粒の硬さと目の立ち過ぎで一歩劣るので)。研磨力に優れ、金属表面を一律に研磨するが、深い傷が残って錆び易さに繋がる人造砥石との差も、此処から来ると思われます。

従来の殆どを、切れの調整最重要視で用いて来たのが天然砥石であり、綺麗な外観は付随的に現れればラッキー程度の心境が大半を占めていた私ですが、今回の様に改めて研ぎ肌の確認をするのは面白く、また砥石の個性(刃物に対する振る舞い・相性から来る研ぎ易さ・下りの速さ・傷の消し易さと残り易さ)を違った観点から把握でき、認識の整理が進みましたので、香川のK様には感謝致します。

 

 

 

先ずは前回、神経質な地金を持つ切り出しを仕上げた、やや硬口~硬口の巣板(サラサラ+スベスベタイプ)。

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上掲の砥石で仕上げた画像。

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同じく、拡大画像です。拡大してしまえば、(機材が更に本格的であれば別かも知れませんが)余り肉眼による「風情の違い」は現れ難く、味も素っ気も無くなる気はしますね。

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次に、天井巣板と思しき硬口のカラス巣板(スベスベタイプ)。

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拡大画像です。立ち位置的には内曇り相当だからでしょうか、少し曇りがち(表面の凹凸・炭素を吸った地金の境界部分の明瞭さに違い)に成って居ます。その割には明るさが同程度なのは、此方の方が硬さで上回るからかと。

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同じカラス巣板(サラサラ+スベスベタイプ)では有りますが此方は敷巣板でしょう、硬さは更に上の超硬口です。

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砥粒の凝集性に、やや密粗の不均等が見られる物の、砥面の硬さ故か上掲の二つの砥石の中間的な結果に見えます。

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ほぼ超硬口の戸前(スベスベ+ツルツルタイプ)です。砥面の硬さは有りますが、滑走が良く(泥が出ない割りに突っ張らず、傷も入り難い)研ぎ易い上に仕上がりも上々です。

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地金に見える黒・灰色の凹凸のコントラストは最も明瞭で、鋼の光り方も相当に上です。

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手持ちの中では浅葱系統以上とも言える、超硬口の合いさ(ツルツル+スベスベタイプ)。泥は全く出ませんが、今回の切り出しとの相性的には優れていた様子で、やや突っ張り気味ながら刃・地共に良い仕上がりでした。

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刃金の仕上がりでは相当に上、しかし地金としてはマズマズの結果に。恐らく、此の地金にとっては砥石の硬さと目の立ち方の刺激が幾分、強めだったからかと。

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最後は、硬口~超硬口の水浅葱(サラサラ+スベスベタイプ)です。田中さんが惑星と呼称している系統で、少ないながらも同系統を触った経験から、水浅葱の中では研ぎ易さで最右翼ではとの印章です。硬さが控え目の物であれば、浅葱系統でも難易度は下がりますが今度は、泥の種類と出方で又、研ぎ肌が均一に揃うかどうかの分かれ目に成って来ますね。

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拡大画像です。刃金の光り方は、一番の様です。地金のクッキリ加減は、上掲の超硬口の合いさと同様、マズマズレベル。此処から推察できるのは、此の地金にとっては余り、超硬い砥面かつ研磨力が控え目(スベスベ系統)の組み合わせの個性を持つ砥石だと、メリハリのある結果に結び付かない。寧ろ、硬さは一段下の砥石との相性が望ましい傾向に在ると言えそうです。

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実験結果が少し気に成ったので、追加で水浅葱のバージョン違いを。殆ど、誤差でしか無いレベルの硬さの違い(僅かに柔い)で分類はツルツル+スベスベタイプです。

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仕上がりですが、刃金の光り方は同等もしくは其れ(上掲の惑星)以上、地金の模様のコントラストも更にクッキリです。全ての画像を細かく比較すると、地金だけで無く刃金の表面にも少なからず凹凸が有りますが、此処では微妙過ぎるので触れずに置きます(笑)。

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以上の様な結果と成りました。傾向としては、サラサラタイプだと滑走は良好ながら擦過傷が入り易く、(相性はさて置き物理的な)研磨力に優れる。ツルツルタイプだと急な食い付きでつんのめる傾向に在るが(相性はさて置き強引にでも)微細な仕上がりに。スベスベタイプだと滑走・食い付きへの警戒は低いが若干の相性の幅の狭さ(誤差レベルでの切れの差異)を感じる。と成ります。

純然たる研ぎ肌との相性の傾向は、光り方の強さの順にツルツル⇒スベスベ⇒サラサラとなり易いですが、石の硬さ・泥の種類(粘性・均一性・目の立ち方)や出方(多寡・刃物との反応の前後の違いの有無)で異なるので、刃物と研ぎ手との相性との組み合わせで激変の可能性も有ります。実際、使用した切り出しと砥石達を貸し出して試して貰っても、全く同一の仕上がりに成る保証は有りません。

乏しい技術と限られた機材による比較検討ですので、K様の御期待に沿える内容には達していない可能性は高いですが、幾らかでも今後の研ぎの参考にして頂けましたら幸いです。

 

 

 

 

序でに、炭素鋼ペティの次に自炊で良く使っている、三徳包丁の手入れもしました。昔から自宅に有った、三層利器材(ステンレス地金で炭素鋼の芯をサンドしたクラッド鋼)の物です。

鶏の胸肉使用の鳥牛蒡と、ラタトゥイユもどきの野菜スープを仕込むと下画像の状態に。切れ自体は、銀杏の俎板使用で丁寧に切って居ますので、左程の低下は見られませんが、まあ気分的には手入れをしたくなります。

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芯に入って居るのは炭素鋼ですので、外見的には其の部分の錆のみ目立ちます。当然ですが、峰や刃元(マチ)も錆びる時は錆びます。後は、食材から出た水分のこびり付きが顕著。

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前回も登場の、此方で仕上げ研ぎです。相性も良く、下り・切れ・研ぎ肌に問題は出ませんでした。

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中硬の巣板その他も併用し、仕上げ研ぎ。

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錆び・汚れを除去し、刃先も念の為に研ぎ直しました。

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刃先拡大画像ですが、上の二つの画像でも確認できる通り、刃金に鬆(ス)と云うか斑点状の陥凹が無数に出ます。以前から、研いでも次々に出てくる為に金属の仕立てに由来するのでしょう。

そんな性格の鋼材(熱処理も関係?)が鋼に使われて居るので、切れは良くても精細な感触には成り得ず、対象との接触でも今一つ、強度の低下が伝わる印象です。更に、其処を起点として錆も誘発されるので、通常の鋼材を研ぎ上げた後の状態と比較して、手入れの頻度は増大します。

ですので、普段から使用して頻繁に手入れをすれば良かろうとの扱いに成って居ます。ステンレス地金は、半鏡面で維持するには大変ですが、曇らせて置く分には苦労が少ないですし。

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研ぎ上がり、全体画像です。サイズ感・全体のシェイプは相当に良く纏って居るし、適度な重さにも好感が持てるので嫌いでは無いですね。

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因みに、刃金と成る鋼材にピンホール状の陥凹が無い通常の物の例です。此方は刃金と地金が手作業で鍛接されており、地金自体の積層も極軟鋼と錬鉄を複数枚、同じく手作業で重ねた鍛接で作られて居ます。

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拡大画像です。

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久々に砥石館へ(その他)

 

週の後半は、今後の予定を相談する為に天然砥石館へ出掛けたり、届いた司作包丁の調整に勤しんでいました。

砥石館イベントとして、直近で予定されて居るのは七月・八月の下旬のペーパーナイフ作り体験だったと思われますので、御興味のある方には、砥石館ホームページ等で情報を当たって頂けましたら幸いです。

 

 

奥の最大スペースの展示は、相変わらず壮観ですね。其の上、じわじわと内容の充実度も上がっている様子。マイナーな産地の砥石を追加して行く、不断の姿勢には感心します。

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購入可能な物品には、ミニチュア砥石も有るのですが・・・その台は館長の自作です。此れは以前から在った物とは言え、実際に使われている機械は初めて目にしました。

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其れが、この3Dプリンターです。機械の大きさなりのサイズに制限されるでしょうけど、かなり多様な形状も作れそうですね。

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研ぎ体験で使用可能な、人造・天然の各種砥石群が収納されているラックも健在です。

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引き継ぎ中の田中次期館長は、現館長の監修の下でラックの砥石を産地や層、硬さや細かさ等によるジャンル分けに余念が有りません。

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最近の追加で、珍しい砥石も。手引きの跡が側面に付いているので相当、古い物と御見受けします。

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帰る際には、但馬砥の切り落としも頂きました。過去に手に入れた但馬砥は、もう少し不均一な砥粒で柔らかく、色合いもグレーでした。対して、今回の物は本但馬と言われるそうですが、硬さと細かさが上回って居たり、色的には会津砥に近いです。

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裏の状態。

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但馬砥で研ぐ前に一端、柔らか目の伊予砥で研いで置きます。傷が浅く、均一な仕上がりです。但し刃金は、事前の鏡面仕上げの名残りで実際より光り気味と成って居ます。

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次いで、今回の但馬による仕上がり。より光り気味に寄って居ますね。面直しには、同じダイヤを用いていますので、結果の違いは砥石自体の硬さと細かさの違いでしょう。

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試し研ぎに用いた切り出しを再度、研ぎ直して置きます。先ずは対馬砥(硬くて細かめ)で。

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中山の巣板(カラスと薄っすらカラス)と戸前系のコッパで、傷消しを。巣板系では、やはりダイヤで泥を出す事で研磨力は向上させやすいですね。泥を流せば、光らせ易いので両方の使い方に対応可能で便利だと思います。

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最終は、水浅葱です。未だ、極表層の本調子でない砥面が続いて居ませんが、切れ・明るく細かい仕上がり共に充分です。

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やっと届いた司作です。三徳(鏡面仕様)と筋引きでしたが、刃先の調整が必要と判断しました。

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三徳・筋引きに共通した点として、刃元(顎から2㎝前後)が薄く鋭角過ぎ・切っ先が直線的(若干リカーブ気味)が挙げられました。

ですので、中硬の巣板スタートを予定していましたが対馬からとしました。ほぼ切り刃の角度のままで仕立ててあった刃先は、新聞の束の試し切りで不足が出た為、研ぎ角は左右から刃元・35度強、中央・30度弱、切っ先周辺・20度強を選択。合計で刃先角度は二倍と成ります。

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最終仕上げは、硬口~超硬口の中山の合いさで。

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筋引きも同じく対馬から。ただ此方は刃幅の狭さ故、刃先の強度としては若干の余裕が見られましたので、幾分は鈍角化を控えて置きました。

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同じく、中山の合いさで最終仕上げです。薄っすらとカラス混じりの砥石ですが最近、端っこに紫も出て来て面白いです。

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研ぎ上がりですが、糸引きレベルの調整ですので判別は不可能ですね。あ、双方共に、地金部分の研削痕・研磨痕が気に成ったので八枚の小割りで軽く撫でて置きました。故に、到着時の防錆油を塗られた状態よりも多少、均一には見えるかも知れません。

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刃先の調整を終え、近日中には御手元に届けたいと考えて居ますので御依頼を頂いた御二方には、もう暫くの御待ちを御長い致します。

直近で、通常仕様の三徳の御注文を頂きましたS様は、次回の到着時にはと期待しています。ただ、私が司作としては前代未聞の発注として河豚引きを頼んでいるのと、柳系統・副え鉈系統も有りますので、何れから来るのか不確定なのが申し訳ない所です。

数年前に此方(大阪)で購入し、ゲージとして送ったサンプルの河豚引きの里帰りと共に、様々な製品の早期の到着(困難)が待たれますね。

 

 

 

 

 

私の研ぎ方と効果の検証

 

御依頼品に対して、私の研ぎ方は大きく分けて二種類有ります。一つ目は、指定された研ぎ方(例えばベタ研ぎ)に従って研ぐ場合。もう一つは、御任せとの御希望を受けて、ハマグリ状に研ぐ場合です(例外は前記の何れでも無く、元の形状を踏襲する方向ですね)。

前者は言うまでも無く、其の刃の形状を御依頼主が使い慣れている、又は明確な作業目的に合致している事が明らかな為でしょう。ですので当然、其れに従った研ぎ方で作業します。

後者は、使用目的や御好みが把握できない時や、私の体験や研究から導き出した万能性を付加した「御薦め」として、切れと永切れの両立を目指した研ぎ方です。具体的には、和式(平と切り刃を持つ)と洋式(ナイフや洋包丁に見られる小刃付け)で多少、違いは有りますが研ぐ面積の内、より刃先寄り部分と残りの部分で角度を変え、緩やかな面の繋がりでの研ぎと成ります(但し一律のアールでは無く)。

イメージするのが容易と思われる和式で説明しますと、鎬筋(平と切り刃の境界線)から刃先に向かって、充分な切れを確保できる角度で研ぎますが其の際、均一な平面で無く徐々に鋭角に(厚みが減少)研ぎ進めます。此処までであれば切れ重視ハマグリ、つまり刃先が最も薄く鋭角な状態であり、刃先から遠ざかる程に厚さが増す、刃体強度に優れた形状です(何の計算も無く、ただの楕円に近しいカーブでは有効な作用も期待薄かと)。

上記内容に加えて、更に刃先自体の強度・永切れをも向上させるのが、刃先最先端へ向けて徐々に鈍角になって行くハマグリです。その角度変化を付けるのは、刃先の2mm前後の範囲であり刃厚により異なり、少なくとも三~四段階、多ければ五~六段階に研ぎ分けますが、一定の割合で無く放物線の様に徐々に鈍角にして行く関係上、その等高線は最先端へ向かって互いの幅は狭まって行きます。

更に刃先へ向かっての角度変化とは別に、切り刃・刃先の両ハマグリ共通で顎から切っ先へ向かって鋭角化もしています。此れに関しては、切り刃本体のハマグリが真っ直ぐ対象物に切り込む(押し付ける切り方)際の抵抗軽減をも期待しているのに対し、刃物を押し引きする際の効果を期待しての物です。引き切り(後方へスライドさせつつ押し付ける)の際は抵抗の低減を・押し切り(前方へスライドさせつつ押し付ける)に際しては上滑りの防止(楔効果向上)を。逆に言えば刃物の厚みが一定だったり、切り刃・刃先の角度が一定であるならば、上述の効果が発揮され難い訳です。そして洋式では此れ等の角度変化の研ぎ分けが、より狭小範囲で処理される事に成ります。

 

 

 

此処までを踏まえて今回の本題に入りますが、或る刃物を御任せで、との指定で御依頼を頂き研いだにも関わらず、期待した切れでは無かったとの御連絡が有りました。研ぐ前よりは切れる様に成ったが、新品の同型モデルよりは切れなかったと。

私は当該製品の作者とは、或る程度ですが昵懇ですので、之まで相当な時間を意見交換や教えを頂く事に費やして来た経緯が有ります。其の中で、「本当は刃体の厚みは薄過ぎない方が良いし、刃角も鋭角すぎない方が良いとは思うが、特に近年の買い手の意向を受けて其方に合わせている。まあ、鈍角を鋭角にするのは手間だが、必要に応じて鋭角を鈍角にするのは容易だし」との内容も有りました。つまり、初期刃付けは必要以上に鋭角に仕立てて有る事が伺えます。従って、汎用性向上やバランスを中立に戻す狙いで私が御薦めで研ぐとすれば、より強度向上・永切れ重視と成ります。

殆どの市販品では、(コスト的に無制限とは行かないので)鋼材と熱処理の組み合わせの結果、不十分な要素(硬さ・粘りのレベルやバランス具合)を補うために安全マージンを鑑み、過剰に鈍角な刃先を設定される事も。例題として今回俎上の製品は、硬さ・粘りと共に高度なバランスも取れていますが、使用者の扱い方や使用目的が不明な点では、未知数との判断でしたし、製品の種類(ハードワークも含まれる)からの判断でした。

世間的には、紙一枚や刃先が少し食い込むだけで事足りるテストだったり、対象が強度の有る繊維質・粘りの有る素材で無い限り、薄い切り刃と鋭角な刃先の方が一見は良く切れる「良い刃物」と成りがちです。其の上、耐久力を求められる使用を経ないのであれば尚更で、刃先耐久力は不問に成りますね。但し幾ら鋭角であってもベタ研ぎ等、角度一定の平面では対象が刃体側面を接触し続ける距離に比例して、抵抗が増え続けるのを避けられません。従って引き切りでは一般的に刃物が受ける抵抗は、刃先から峰・顎から切っ先への二方向の種類が有り、其々への対処が求められると考えます。

もう一つ、幾ら刃先最先端へ向けて鈍角化のハマグリと言えど、角度さえ正確であれば50度でも60度でも、髪やナイロンにも切り込めます。切り込めれば後は、刃先の形状が切り開いた角度が、直後に続く切り刃の角度よりも大きい為、切り刃が切り開く際の負担を低減してくれます。結果的に、上手く扱いさえすれば、切れと永切れを向上させるのみならず切り分ける時の抵抗軽減により作業が楽にも成ります。

後、細かい砥石で仕上げた刃先は、刃線の接地面積が大きく成るので(ザラザラだと点々と続くがツルツルだと線状に接地する)永切れしますが、刃先のザラザラで其の引っ掛かりを契機として切り込む使い方が良い方には、扱いが難しいかも知れませんね。そう言う事であれば、一段階・二段階、荒い仕上げにも対応しますので御申し出を頂ければと思います。(本来は形状に優れ、刃線に乱れが無ければ、摩擦を頼りとせずとも切り込める物と認識しています。剣術で言う輪の太刀とまでは行かずとも、弓切りが出来さえすればと。例えベタ研ぎのつもりでも刃線が揺れていては効果が見込めませんし、直線に引け無けなくても同様です)

 

 

 

私の手持ちの刃物の中で、上記の疑問のコメントを頂いた組み合わせと、殆ど同一の条件でテスト出来る環境に有りましたので、砥石館へ出掛けた序でに動画も撮って見ました。

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基本的な内容を列挙しますと、十年くらい前に関の刃物祭りで購入した司作の副え鉈(白紙二号+極軟鋼地金の黒打ち槌目)の新品と、数年後に購入の同じく司作の副え鉈(白紙二号+鍛え地磨き)を自分で研いだ物との比較。刃金の種類・仕立ては同一で、地金の違いは切れ味などには関わりません。

切る対象はナイロン袋・新聞紙一枚・新聞紙の束・其れを捩った物・木材の二つ割り・其れにチョッピングと削りを経て、再度の新聞紙シリーズとナイロン袋の切れ方を見ました。フラットに近い新品(人造砥石で刃金は鏡面仕上げ)と、ハマグリに研いだ方(天然砥石で鏡面仕上げ)の比較。途中、新聞一枚テストを飛ばしたりして居ますが(笑)。

結果は、新品は確り見ると刃先最先端にミクロの糸引きが有ったり、私が研いだ方は通常より若干、鋭角気味の刃先であったので結構、刃先の強度的には近かったです。木材の二つ割り・削りは研いだ方が少し手応えが軽く、チョッピングは差が少なかったです。ナイロン・新聞紙一枚は研いだ方が楽に綺麗に切れ、束の方は少し差が小さかったかと。一番の違いは、束を捩った物で新品は刃が切り込んだ時点で押し引きしても食い込んだまま動かなくなりました。

此処から分かるのは、木材へ叩き付けたり削ったりの場面で、副え鉈としての働きは新品の状態で普通に使えると言う事ですね。ただ、切り刃のテーパーを正確に出したり、刃先の精度が高く面構成もなだらかに研ぐ事で、切り込み・割り込みの両面で抵抗が減る。そして、其の効果が出易いのは重層的な繊維質(加えて恐らくは粘りの有る素材も)が対象で有った場合でしょう。

之から新品・研ぎ済み、双方を研ぎ直しますので、通常の標準的な刃先の鈍角化にしても遜色が無いか、念の為に確認するつもりですが・・・取り敢えず今回のテストでは細かく鋭利な仕上げ砥石での研ぎ・切り刃に凹凸の無いテーパー・ハマグリ形状の効果は、充分に確認出来たと考えています。

 

MVI 1776 研ぎ屋むらかみ ブログ記事参考動画 3

MVI 1777 研ぎ屋むらかみ ブログ記事参考動画 4

 

 

(刃先拡大画像で、新品の刃の損耗はミクロの糸引きの部分に沿って、其の糸引き範囲に収まる捲れや丸まり。研ぎ済の方の損耗は、三か所位に其れよりは大きな捲れが。単純に比較は出来ないものの、何方も耐久性に問題は無いと判断しました。)

 

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上画像は新品、使用後の拡大画像。

 

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研ぎ済の方、使用後の拡大画像。

 

 

因みに、横で見ていた上野館長も切って見るとの事で。新品から試した所、捩った束は切断できず。研いであった方は切り落とせたので、改めて違いに驚いて居ました。(いやいや、以前から説明もして来たし、切って見せても居ただろうと(笑))

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此処までの流れを受けて、御依頼前に研ぎによる違いを確かめたいと御考えの方向けに、貸し出し用の刃物を御用意しようと考えました。小振りなペティナイフ二本に其々、小刃仕上げに近い切れ重視ハマグリ・其れに加えて刃先に鈍角ハマグリ追加仕上げ。もう一方は、和式に近い両刃形状の刃体を切れ重視ハマグリ仕上げと、刃先に鈍角化ハマグリ追加の双方です。往復送料の御負担を頂く事を御了承下さる方は、御連絡を頂けましたらモーラ・ペティの何方でも御送りさせて頂きたいと思います。

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つらつらと書き連ねて来ましたが・・・上掲の各記載内容が、相互理解や共通認識への一助と成りましたら幸いです。あと、「自分は刃先を傷めずに使えるので、永切れ・耐久を考慮した刃先最先端の鈍角化ハマグリは必要ない」と言う方には、切れ優先ハマグリでの研ぎも致します。しかし之まで、その状態で紙の束などによるテストをクリアした刃物は殆ど無かったので、御薦めはしないのですが。刃角が初期の角度に準じる場合、刃毀れ・捲れが出なかった例は数件のみでした)

 

 

 

 

 

モーラナイフとペティナイフ

 

ちょっとした目的の為に先日、モーラナイフとペティナイフを二本ずつ、買い求めました。詳しくは、次の記事で記載する予定ですが・・・研ぎ方の違いに因る効果の差を、御興味のある方々に試して貰おうかなと。

 

下画像は、グリップ・シースは色違いながらブレードはステンレスで、同一の仕様です。

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此方は、ヘンケルですが外観も含めて完全に同じですね。

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先ずは、モーラの方から研いで行きます。人造の研磨力の有る1000番。

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二本目も同様に。

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傷の浅い1000・3000番。此処で切り刃には、極僅かに緩やかなカーブで刃先へ繋がる研ぎを施します。

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二本目も同様。但し、3000番の時に刃先の鈍角化ハマグリのベースを作って置きます。

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天然へ移行して、馬路の中硬の蓮華巣板。次に、やや硬口と硬口の中山の巣板。

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二本目も同様に、馬路の蓮華巣板⇒やや硬口・硬口の中山の巣板で仕上げました。

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研ぎ上がり、一本目です。刃元から切っ先へ向かい、鋭角化。加えて、鎬筋から刃先へ向かい、緩やかなハマグリ状に鋭角化。

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二本目、研ぎ上がり。一本目の内容に加え、刃先は最先端へ向かって鈍角化するハマグリも追加。其の部分も切っ先方向へ漸次、鋭角化は変わりません。

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次にペティですが、傷の浅い人造の600・1000番から。研ぎ方は通常の小刃では有りますが、刃元・中央・切っ先の角度は其々、片側30度・25度・20度としました。

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二本目も同じく、此の段階までは通常の小刃。

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天然に移行して、馬路の戸前?から中山の天井巣板。

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二本目も同様に。そして此の段階で、刃先の最先端へ向かって鈍角化も加えます。

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研ぎ上がりです。流石に全体画像では、モーラ以上に判別不可能ですね。刃部のアップをズームしたり、刃先拡大画像では違いが見えると思います。

一本目は、かなり平坦な当て方で砥石を使って有りますので、対象への最初期の食い込みでは相当に鋭利では有ります。

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二本目、刃先最先端の鈍角化ハマグリを施した方です。小刃の幅は幾分ですが広く・鋭角に。対して刃先は一本目に比べ、刃元・中央・切っ先で其々、1.5倍程度の鈍角にしてあります。

其の為、刃先さえ食い込めば、引き切りの最初から最後まで軽い抵抗で切れます。まあ、刃先最先端も角度さえ正確なら切れ自体も、そうそう劣る物では在りませんが。そして、耐久力は言わずもがな。

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今更ですが・・・此処まで研いだ画像では、敢えて研ぎ目(角度変化を現わす縞々)を残してありますが、当然ながら消す事も出来ます(笑)。

次回の記事では、少し前に研ぎの御依頼を頂いた方との遣り取りで、研ぎ方の違いと効果(使い方の当否で効果が解り辛い?)が伝わり難かったので、其の説明をと考えて居ります。

今回のナイフ類は、同じハマグリ(鋭角化オンリーで切れ優先・鈍角化も追加で耐久性アップ)と言えども、其々にメリットとデメリットが有るので、実際に使って体感して貰うべく用意したと言う訳です。後は、切っ先方向へは鋭角化していても、小刃その物はフラット・対して、緩いハマグリの小刃の先を鈍角化した物の違い。

鋼材や熱処理如何では鋭角なままの研ぎでは、実用たり得ない刃物も想像以上に多いです。私は研ぎ後の試し切りで強度不足が判明した場合、不足が無いと思われる角度まで調整して仕上げていますが・・・俎上に上げたナイフ類は何れも、やや軟らかい仕立てと成って居り、鈍角化していない方ではヘタリが早いと予想しています。

従って切れに満足が行く研ぎであっても、実際に使って見ると頻繁に研ぐ必要が有る結果に終わったり、逆に耐久力・永切れに優れる研ぎで有りながら、研ぎ方によっては切れの重さを軽減しつつ、抜け・走りも含めて不満が出難い事も有ります。