原石が出たとの御誘いで

 

数日前に、原石が出たとのお誘いが有ったので高雄に出掛けて来ました。中山の加工場近くの電柱を立て直した?際に掘り起こしたそうで。

緑の硬いのと赤ピンに跨る範囲での事ですから、結構色々と出ていました。端から暫く、叩きつつ割っては選別させて貰った所、幾つか狙っていた石が見つかりました。

北海道のS様からは現在、尺三の本焼き柳を御送り頂いて居ますが、以前に私が褒めていた砥石にも興味を御持ちで。硬口の中山赤ピン・超硬口の奥殿天井巣板がそれですが、出るまで待っているからと御依頼を頂いて居ます。

今回、全く其れに相応しいとまでは行かずとも、近い感触の物が有りましたので先ずは一度、御送りしてみますのでお試し頂ければと思います。

 

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到着時の状態

 

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暫く選別した分です。真ん中の幅広が、今回持ち帰った中で一番大きい石です。切って貰って、面を付けて来ました(下画像)。

 

 

 

赤ピンから黄色に掛けての辺りで、主として緑が強いです。原石の時は結構、赤味も見えたのですが。研いで見ると、中山の赤ピンと緑板の中間らしい砥ぎ感で、やや軟~中硬でありながらも切れと掛かりが良い仕上がり。

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対して此方は、正に赤ピン其の物ですね。砥ぎ感は他のどの砥石にも無い感触。中硬ですが、弾力と研磨力を強く感じます。切れも其れに相応しい仕上がり。

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序でに、浅葱も一つ。外観的には、やや模様がハッキリし過ぎで癖があるかなと思われましたが、却って滑走も良く砥ぎ易いし仕上がりも問題有りませんでした。来月の新潟行きの際に、日野浦さんへの御土産にしても良さそうかなと考えたりしています。

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あと、切り落としも出て来たので三つ程、持ち帰りましたが層の並びなどの点で、サンプルレベルの物も在りました。

下画像は普通に使えますが、研磨力が有りながら軟質ですので、平面刃物には向かないかも知れません。鋼に対する下りと仕上がりは良いのですが、地金を均等に仕上げる難易度が少々上がります。此の辺りは、長四郎引きの中硬と同様です。

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最後に、少し前から難の有る原石を、何処まで加工で改善できるかのテストをしていた物です。層の境界が砥面に出ている点と巣の入り方が酷かったのが問題でしたが、かなり改善されましたので此処までとしました。

S様には、赤ピン・中間の石と共に、此方も御送りしたいと思います。先の二つは、試してみての御判断次第で結構です。気に入った方でも、今回は両方パスで次を待つ、でも。自分で使う用にしても良いかなと考えて居りますので。

最後の石はサンプルとして、お納め下さい。天井巣板超硬口とは少し違いますが高性能ですし、始められた切り出し研ぎにも有用かと。研ぎのペースを、私の自由にさせて頂いて居ますので其の御礼も兼ねて。

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御話ししていました通り、この段階までは(中硬の巣板仕上げ)来ています。角度と形状は整いましたので後は、奥殿の蓮華巣板か天井巣板、もしくは中山の三毛で仕上げる事に成ると思いますので、もう暫くの御待ちを御願い致します。

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今日の砥石館

 

今日は、天然砥石館のイベントを手伝って来ました。過去にも好評だった刀匠監修の小刀作りと、法螺貝の演奏・ミニライブと盛り沢山。

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展示されていた、村正と将大刀匠の刀

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甲冑も

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撮影も順次行われています

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何か、其れっぽい感じで活躍の掲示板

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法螺貝の音を確り聞いたのは初かも。甲斐でなく、若狭の武田さんもゲストで。

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特設ステージ

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演歌や

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河内音頭を披露。あと、サクラ大戦でしたか。

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私は今回、ライブなどを披露してくれる「刀ガール♡杏ちゃん」さんが事前に体験で作っていた、刃紋入り小刀の仕上げに付き添いです。

その前に、御持参頂いた包丁を使用して研ぎのビフォーアフターです。研ぐ前にトマトを切る画像を撮り、私が砥いだ後の切れと比較。違いに驚きつつ、喜んで頂けた様子。

 

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其の後、真打の小刀を砥いで行きます。ベルトサンダーで研削した状態からのスタートで、形状は流石に刀匠仕上げですが兎に角も砥ぎ目を消すのに荒砥を延々、掛けて行きます。次に人造中砥で中仕上げ。

 

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其処からは大きすぎる研削痕に見切りを付けて、巣板で傷を浅くします。最後は小割りの各種、千枚・奥殿天井巣板・奥殿内曇りで刃と地の対比を出します。基本的に、刃金は砥石館に在った中山の並砥で最終仕上げとしました。

下画像は、取り敢えず撮影の流れでキリの良い所で止めた状態。皆が食事に行っている間に、更に研ぎ進めました。ですが其の画像は撮り忘れたみたいです。

 

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現場での急ぎ仕事では有りましたが、御本人的には割と満足して頂けた様子にて安心しました。

また、砥石関連の情報を引き出したり、研ぎに纏わる信条に付いても聞き取るなど、意欲も有り理解も速くて感心しました。砥石や研ぎに興味を持ち、情報を発信して貰えればと小さなサンプルもプレゼントして来ました。

 

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ライブ終わりには、来場者・子供と記念撮影に勤しんでいらっしゃいました。画像の得物は、上野館長所蔵のです。杏ちゃんさんを始め、演者の皆様・市職員の方々・応援頂いた方々、お疲れ様でした。良いイベントを手伝う事が出来、感謝致します。

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昨日の出会い

 

昨日も、拙宅に御二方が御訪問下さいました。掃除や整頓が行き届かない、居住性の悪い所で恐縮なのですが・・・構わないと言われれば是非に及ばずと言う所です。

連絡を頂いたのは以前に岸菜屋さんと御出でになった、椿包丁の鍛冶屋さんの弟ぎみである、桶職人の宮崎光一さん(桶光)。もう一方は、鋸の目立てを生業とされる須藤聖一さん(鋸研ぎ 須藤鋸店)です。あ、全員名前に一が入りますね。共に、御土産を頂いたり御茶を振る舞ったりしつつ、砥石と研ぎに付いて話す傍ら、研いで見せたり切って見せたりで確認して貰いました。

更に桶を作る際の刃物に付いてや、鋸を取り巻く環境、関連する事柄など楽しく勉強になる御話しも御聞き出来ました。貴重な内容に感謝です。

 

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実際に御自身で試し切りもして頂きました。

 

 

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後半には現在、御使いの砥石の情報を御聞きした上で手持ちの販売用から御提案。試し研ぎの上で選んで頂きました。やや軟・やや硬口・硬口と、バランスの良い組み合わせと成りました。

 

宮崎さんには、岸菜屋さんとのイベント?に御誘い頂きました。五月の佐渡島では又、樽の作成現場にて御世話になってしまうかも知れませんが、楽しみにして居ります。その際は又、宜しく御願い致します。

 

 

そうそう新潟と言えば、三月初旬に三条の日野浦さんの所へ行く予定です。柳を待つのに痺れを切らしまして。出来れば今回で複数持って帰りたい所ですが、どう成りますか。

宮崎さんの兄上にも、日野浦さんとの良い関係を築いて頂きたいと思いますので、機会があれば御案内したいですね。

 

 

 

 

 

砥ぎ目の違いと錆

 

今回、人造と天然の砥石で其々、砥ぎ目の細かさに因る錆の違い(錆び易さ・取れ易さ)に付いて簡易なテストをしてみました。結果的には方法がいまいち適正で無かったのでしょうか、特に画像上では分かり難い内容には成ってしまいました。

ただ、実際に行なった立場では予想の検証や再確認には役立ちました。錆の除去に付いては普段の印象通りだったり、本格的に錆び始めると意外に外見的には大差なく見える、等。

 

 

 

先ずは、人造砥石の1000番・3000番・6000番・10000番で試料(日野浦さん提供の極軟鋼に白紙二号を鍛接した角棒を、手作業で切断した物)を其々、砥石の番手が反映される程度に研いで仕上げました。

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鋼の研ぎ肌。左から高番手に成っています。

 

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同じく左から高番手の、地金側。

 

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其れを、千鳥酢に漬けました。(ポッカレモンでは変化に乏しかったので此方にしましたが、少し効果的過ぎたかも知れません)

一目瞭然、左端の10000番仕上げが撥水効果を発揮しています。次の6000番も、表面に乗っている水分が少な目です。

此の儘では、普通に弾かれた部分の錆が出ないのは自明ですので、濡らしては静置、を数回繰り返しました。

 

 

 

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つまり途中からは共通して、表面を常に酢の膜が覆っている状態で10分放置した事に成ります。それだと流石に、錆びた状態の外観上に違いが少なくなってしまいました。

因みに、上画像は鋼側のテスト後です。それでも、僅かですが高番手の方が錆が薄く見えます。画像を撮り忘れた地金側に比べると、炭素量の所為でしょうか刃金側は錆の程度がやや酷い印象でした。

 

 

 

 

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次に、天然砥石各種でも砥いで調べてみました。左から奥殿の水浅葱(硬口)・中山の赤ピン(中硬)・奥殿巣板茶色(中硬)・やや軟らかい巣板です。

 

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刃金側のテスト前画像ですが、天然砥石の並び順と同じく左から水浅葱仕上げで以下、巣板までです。

 

 

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テスト後の状態。此方も、弾く効果を打ち消す様に酢を付けては置いてを繰り返したので、似た様な外観に。強いて言えば、砥ぎ目が細かいと目される方が赤い錆・逆側は黒い錆が強い気もします。

 

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上画像は、テスト後にジフ(クリームクレンザー)で軽く洗ってみた結果です。

 

 

 

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地金側、テスト後の画像です。

 

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此方もジフで。やはり刃金側よりも錆が弱い様で、より綺麗に成りました。

 

 

 

再度、天然砥石で研ぎ直しました。目的としては初期に研がれていた同じ砥石で、錆びの影響を何処まで落とせるか調べる為でした。

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再研磨の結果は同じ砥石では問題無く落とせて、番手としては一つ上の細かさの砥石でも可能でした。しかし、二つ上と成ると難しい事が分かりました。二つ上に関しては、下の二つのみのテストと成りましたが。

 

 

 

 

結論として薄っすら・物によってはハッキリ分かったのは、錆び難さの主要因が撥水性(錆びの要因となる成分を含んだ溶媒としての)にある事です。腐食を惹起する成分に触れ続けていれば、表面の研ぎ目の細かさでは大きな差が現れ難い事も観察できました。

砥ぎ肌が細かいと、其れが付着し難い・流れ去り易い・拭き取り易いので錆び難さに直結する訳ですね。それらが無い環境で付着し続けたり乾燥までしてしまえば効果は薄いと。

あと、鋼は軟鉄よりも錆が進行し易く(あらゆる製品でそうとまでは言えませんが)、其れを落とす際も比例して大変です。まあ一度錆びると硬い鋼材の方がが大変では有りますが。そして砥ぎ目を一度細かい番手まで仕上げて置けば、除去する際に荒い番手まで戻る必要性が低く成ります。

錆びに関して総合的に見ればやはり、砥ぎ目は荒いよりは細かい方が低減できる可能性が高いし、錆を除去する時も手間が省ける可能性が高いと考えられます。