先週の砥石館でのイベント

 

先週の土・日曜には、二種類のイベントが有りました。

画像は、最新の砥石館の内部。

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両日の午前中に行われたイベントの一つ目は、子供向けの講習(簡単な講義と実技指導)で、文化庁とのコラボ的な物。日本の職人文化や纏わる道具・技術に親しみ、将来の選択肢の一助と成れば・・・との御意向で開催との流れ。

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先ずは、私の手持ちの刃物を俎上に上げ、館長の用意してくれたモニターに移される画像と共に、日本の刃物の特徴と其の効果を説明しました。(特に、片刃と両刃での切り進む方向の差異)

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参加各位、御家庭で御使用の包丁を持参下さったので、現状の把握と対処法を共有し、研ぎを進める方向性を示唆した上で、研ぎ始めました。

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刃先の損耗や摩耗を取ればOKな物の他、刃線が乱れている物も有りましたので、其れ等は私の方で整えた後に仕上げて行って貰いました。

そして、充分な切れが出せたと判断した時点で試し切りを行ない、御本人に知識だけでなく体感を通して理解して頂けた様子でした。

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事前のイベントで既に、刀剣研磨師を招いての講習を受講済みの子供達でしたが、実際に刃物を研ぐ経験は殆ど無かった様子で。次に控えるイベントの、料理を体験する際には、今回の包丁類が活躍してくれる事。そして使い手にも楽しんでくれる事を願っています。三段階でセットのイベントは珍しいので、全てに参加できる人を募集する時点で間口が狭く感じましたが、其れなりの人数の希望者が手を挙げて頂けて、ただただ感謝です。

 

 

 

一方、大人向けの方はハマグリ研ぎに特化した内容の講座でした。

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モバイル顕微鏡は、通常通りに繋いだパソコン画面で見たり、更に特大のモニターに映し、全員への解説にも活用できました。

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中には、ブルートゥース?の角度計を装着し、研ぎの際の角度のブレを計測する勇者も。最初は6~7°のブレでしたが、段々と6°、5°前後に下がって行くのを見るに、やはり基準と成る目安を明確にして意識しながら練習する大切さを実感しました。

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更には、仕事で御使いの特殊な刃物を研ぎ、対象と成る素材も持ち込んで、実地に試される方も。

最初は、素材に対する切れと永切れに付いての追及から。次いで、紙の類の複数枚の切断にも不満が出ない様・・・との御意向でしたが、一つの刃物で二種類の用途に完璧を期するのは難しそう(研ぎ直せば可能でしょう)との結論に。勿論、砥石の選択と研ぎ方の工夫如何では、不可能とも言い切れませんが(笑)。

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仕上がりに関しては、私が切って見せたり御自身で試したりのテストで、ほぼ不満は解消された様子でした。

持ち込まれた刃物は基本的に和式が多く、しかも切り刃に大きな凹凸や、不自然な厚みの残存が少ない物が殆どで。従って、「切れ優先ハマグリ」と「永切れ優先ハマグリ(上手く研げば吃驚する程切れるけどね)」の内で、後者の説明と実践と成った講習でしたが、其れは其れで興味を持って取り組んで頂けたと思います。参加を頂いた皆さんには改めて感謝致します。

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途中、研ぎの説明と実践の補助として、私の普段使いの砥石も活躍してくれました。中山の水浅葱、研磨力重視タイプ・当たりがソフトで磨きに優れるタイプの二種です。

砥石館側で用意されている砥石の中では、数に限りが有る種類でも有りますので、最上級に細かい砥石での仕上がりに付いて例示したい時にと持参しました。

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子供向けイベントでは、他の砥石と組み合わせて打音検査による砥石毎の硬さの違いを示してみたりしましたが、大人向けでは同じ中山の水浅葱と言えど、僅かながら硬さが異なるのみならず、砥粒の目の立ち方・その積層の成り立ちの違いで個性が湧かれる事を、手指の感触でも確認して貰いました。

此れが契機と成った訳でも無いでしょうが、館長との今後のイベントの方向性を探る話し合いで、砥石の目利き講習もアリかなと纏りました。

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特に上画像の二つが役立った場面の一つは、ステンレスの包丁を御持ちの参加者の方との遣り取りで。(特に人造を想定しての事かも知れませんが)曰く、ステンレスに細かい砥石を当てる意義は有るのだろうか?との事。前述の文言は意訳ですが、確かに巷間、取り沙汰される問題?では有りますね。

私は自らの体験(調理)と実験(試し切り)から、ステンレスこそ細かい砥石を当てるべき、特に天然の優秀な超仕上げ砥石では。そして、滑るのは角度が安定していない事が殆ど。と答えました。刃先最先端の返りが取り易い点、刃先の研ぎ目が細かく成り、接地圧が分散され、より摩耗に耐え得る点などからの判断でしたが、お隣さんが挑戦した角度計の威力を間近で観察し、私が研いだ超仕上げ砥石仕上げの刃物をテストした相手ですので、通じると見て御話ししました。

その結果、水浅葱に関する御問い合わせを頂きましたので、販売用に少量ですが手持ちが有る事を御伝えした所、御買い上げの御意向を伺えました。二つの内の一つを選んで頂きましたので、其方を本日午後に発送しました。因みに左の大きい方です。御手元に届き御使用の後、御満足頂ける事を願っています。

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最後は、イベントにて展示・試し切りに使用した刃物の手入れです。本当にヘビーローテーションで普段使いしている一部を除き、基本的に一度でも使ったら研ぎ直しています(仕上げ砥・超仕上げ砥なので減りは僅少)。

 

司作の柳

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水野鍛錬所の廉価版の相出刃

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ファルクニーベンの牛刀と昔の三層利器材三徳

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味方屋作竹割鉈

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司作の三寸五分角鉈

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追伸ですが、間が空いてしまいましたので、もう事は済んでいるかも知れません。

イベントの数日前に砥石館を訪れた際、来館者の中の有る方と会話する機会が有りました。研ぎや砥石に付いての遣り取りを続ける内、砥石館側のスタッフの不手際で、御持参の砥石ケースが落下。薄目と成って居た砥石が割れました。

其れが気に成って居たのでイベント当日、代替として私の手持ちの中からサンプル程度のサイズですが天然砥石(梅ケ畑産の緑板)を館長に預けて置きました。館長の方から取り継いでくれる筈ですが、其れが無ければ御手数ですが御申し出を御願い致します。今回のイベントには仕事のスケジュール的に厳しかったと伺いましたので、又の機会を楽しみにして居ります。

 

 

現在ホームページ不調に付き、御面倒を御掛けしております。申し訳有りませんが、御問い合わせ等は下掲のアドレスから御願い致します。

togiyamurakami@gmail.com

 

 

 

 

 

イベント前の打ち合わせ

 

先週の木曜日に、砥石館まで出かけて来ました。月末に行われる、イベントに向けての最終的な打ち合わせの為です。

最終的と言っても其処は、通常の開館日かつ結構な来場者数でも有った為に、人出が落ち着いて館長の手が空くのを待つ必要が有りました。おまけに、海外からのツアー客が閉館前に来るとの事で、隙間時間で簡略に必要事項を最低限のみ遣り取りしました。当日の細かいテーブル・モニター等の配置や、参加者に私が持参するサンプル(各種刃物)を見て貰うタイミングに関しては、ぶっつけ本番に近い事に成りそうです(笑)。

2日間に亘る期間の内、子供向けの内容が午前中×2回の予定でしたが、午後からの時間で大人向け(ハマグリ研ぎ講習)が2回、追加と成りましたので丸々2日間のイベント(二種類)と成りました。

 

 

多くの来館者へ対応する館長の手が空くのを待つ間、試し研ぎ中の方の数名と言葉を交わしたりも。其の内の御一人は、料理関係の方と御見受けしましたが、以前から私の研ぎ方に興味を持って頂いて居る御様子で。そして今まさに研いで居る最中の、御持参の包丁を題材にして研ぎ方の説明や、ちょっとしたアドバイス等の会話をしていると、館長から急かされて打ち合わせに。ただ、先刻の御当人はイベント(大人向け)に意欲を見せられ、可能なら参加したい旨の御申し出を頂けたのが、少し驚きつつも嬉しい出来事でした。

 

 

直近の砥石館の様子。展示物が増強され、販売品の種類も豊富に成って居ました。中には、前館長である上野さんからの寄贈品も有り、地元に持ち帰るには多過ぎるコレクション故、むべ成るかなと(笑)。

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最後の画像は、御買い上げの包丁の柄に名前を彫る為の機械だそうです。レーザーで彫刻できるとの事ですが、そんなサービスまで始めている事に感心し、予想以上に簡易な装置で可能な事にも驚きでした。

 

 

また館長には、来館者が「刃先のみの研ぎ・刃体全体を整えた上での研ぎ」の対比を体感して貰える様に、私が用意したオピネルのナイフ二本を渡して置きました。紙の一枚程度では大きな差が出難い筈ですが、数枚以上の厚さに成ると違いが顕著ですので、その場で試し切りをした館長にも、違いを感じて貰えました。

此の違いは和式で言う所の、刃先(小刃)のみをハマグリに研いだ事に対して、切り刃全体をハマグリに研いだ結果に相当する対比とも成ります。

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おまけで、手伝い先の共用にする目的で、最近に取り寄せた包丁の研ぎです。先行の筋引き(二つ前の記事)が、刃体の薄さと刃幅の狭さで突出していた為、特殊な用途の専用品にしようかと。

研ぎ前の状態。かなり広めの小刃は、やや荒い研削痕ながら磨き段階で光らせて有りましたが、最先端は少々ですが荒れがちで。ただ価格面から考えれば妥当な気もします。自分で購入した中では、最高クラスに御手頃でしたので。

デザイン的には、珍しい程にハンドルの辺りが後ろ反りで特徴的ですので、実用の際にどんな使い勝手か気に成って居ました。実際には、引き切りに特化している印象乍ら、慣れで如何様にも成るだろうと結論付けました。

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研ぎ始めですが、小刃の仕様を大きく変更する必要も無く、研削痕を完全に消すまでも無いので、(砥石への給水時間的な面からも)手軽に済ませようと何時ものビトリファイド以外で。

600番と1000番で、刃線上の厚みの残存している箇所は多目に研ぎつつ、若干ですが顎から切っ先方向へ鋭角化。そして小刃が広目(つまり刃先は鋭角目)ですので刃先最先端に向けては逆に、明確な鈍角化としました。とは言え、刃先も顎から切っ先方向へ向けては、鋭角化として居ます。

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天然に移行し、対馬です。此の段階で、所期の研削痕の粗さを確認出来ました。同時に、対馬で容易に取れて行かない面から、特別に柔らかい熱処理の塩梅では無い事も。

僅かな差では有りますが、試し切りの結果も含め、前回に追加した筋引きよりも硬い気がします。代わりに?組織の細かさと均一さでは彼方に一歩、譲る気も。何方にしても、気にする人の方が少数派だと予想されますが(笑)。

その筋引きに付いては組織の細かさと均一さ、そして研ぎ易さを勘案しての(他には欠けるより捲れを狙ってか)柔らか目の設定としては、昔に購入したマサヒロのMVSでしたか、オールステンレスモデルを想起させます(緻密な切れ加減)。そして今回の、ややザックリとした掛かりの切れ方は、ヌメッとしていたりガサガサした切れ加減に成りがちなステンレス刃物の中では双方、自分の好みに合う性格の物で良かったと思います。

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丸尾山と馬路で仕上げ研ぎ。

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中山の巣板(硬口)と、あいさ(やや硬口)で最終仕上げです。研ぎ易く、適応範囲の広いと目される筈の、やや硬口程度且つ砥粒の目が立ち過ぎていない「あいさ」よりも、研ぎ手には特に優しくない硬さの巣板の方が相性的に良かったのは意外でした。

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研ぎ上がりです。やや柔らか目では有りますが(返りは丁寧に角度を合わせて散る必要あり)、ステンレスとしては相当に掛かりの良い刃が付くタイプだと感じました。

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