偶々ですが、前回の物に近く磨耗・損傷が少ない包丁(料理人の銘を冠した二本組)の研ぎ依頼を頂きました。
お問い合わせ段階では添付画像から見て、菜切りタイプの方が和包丁的に研ぎ下ろす必要アリかとも思われましたが、到着した現物は一見して刃先主体で問題なしと判断しました。
よって洋包丁基準、それも1cm当たり100円コースで承りました。料金としては三徳型が17cm、菜切り型が16cmですので、それぞれ税込みで1836円、1728円となりました。
構造的には、ステンレスの地金で恐らくセミステンレスを挟み込んだ三層利器材(クラッド鋼)かと思われ、それを物語るように刃金部分のみ薄い変色と浅い錆があります。
研ぎ前 全体
研ぎ前 刃部
研ぎ前 刃先拡大
研ぎ後 全体
研ぎ後 刃部
研ぎ後 刃先拡大
研ぎ前 全体
研ぎ前 刃部
研ぎ前 刃先拡大
研ぎ後 全体
研ぎ後 刃部
研ぎ後 刃先拡大
先ずはどちらも、小割りした巣板で刃金部分の錆をざっと落とし、ステンレス部分は汚れ落とし・研磨痕の微細化を狙って研磨剤(クリームクレンザーの後、パールクレンザー)をかけました。
次にシャプトンの1000番で欠け・磨耗を研ぎ落とし、新聞の束でテストしながら刃先の厚みや角度の調整(刃元から切っ先へ漸減)をします。
基本的な形が整うと、続いて天然砥石による更に細かい調整と研ぎ目を消す作業です。通常の標準仕様の巣板で仕上げるとやや甘い感触。そこで硬さ・研磨力のある本焼き用の巣板で仕上げました。
もしも地金ごと研ぎ下ろす必要が出た場合、砥石の方から刃物形状に寄り添ってくれるタイプとは異なるこの砥石では、刃金・地金を同時・一律に仕上げる事は困難でしょうが、今回は対象が刃金限定なので良い仕事をしてくれました。
同市内、やや北のI様、此の度は御依頼、有難う御座いました。深い錆が出難いタイプとは言え、出来れば刃先の水分除去に更に留意頂けると、刃金部分の傷みが大きく変わってくるかと思います。それ以外の切れ・刃持ち・柄の耐久は心配ない包丁の様ですので。