カテゴリー別アーカイブ: 依頼の刃物

変わり種?の御依頼

 

三つ前の記事に挙げましたのと同じ、近所の御若い知人から少し変わった刃物の依頼を頂きました。特別な物では無いのですが、之まで扱ってこなかった斧です。

事前の話しからの印象では、片手で使える手斧レベルの物かと思って居たのですが、届けて貰った其れは中々に手応えが有りました。大物を固定できる作業台か、電動の便利な奴が無いと大変だなと考えましたが、折角持って来てくれたし出来る範囲でと。

 

 

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会話の上では、伐採用か薪割り用か?等と聞き取りに務めていたのですが・・・此れは、そう言った物では無さそうですね。寧ろアメリカ辺りでマスターキーと称されるジャンルなのではと。

 

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刃部側面を見れば、予想通り結構な不均一さ。刃線も多角形を思わせる様相を呈しています。

 

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反対側は、更にガタガタしています。両面ともに、刃線中央の周辺が厚い状態。角度自体が最も鈍角だったのは、先端部分でした。

 

 

 

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レールの切り落としの上に発泡ウレタンを貼り付け、ダイヤの鑢や砥石?で少し削って見ますが、掛かりが悪いし荒さが不足気味でした。

其処で、布ペーパーの120・180・240辺りで地道に削って行きました。次に、400・1000・1500の布ペーパー・耐水ペーパーで研ぎ目を細かく。到着時点で、油まみれでしたので錆びに注意なのか?と感じ、錆予防の観点からでも有りました。

 

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研ぎ上がり、右側面。刃線はマズマズ順当なカーブに。不均一な厚みも揃って来ました。(中央の厚みは仕様でしょうから両端に対して残してあります)

 

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逆側も同様。何故か左右で角度の付き方が4:6?(左が鋭角で右が鈍角)でしたので、少し均等寄りにしてみました。

 

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全体画像。最終刃先角度は強度を保つ為に、40°~45°弱。御要望では切れる状態にとの事でしたので、柔らかい木であれば削れるレベルに仕上げました。切れ過ぎるペーパーナイフと云った所でしょうか。この後、刃部には念の為にオイルをスプレーして置きました。

 

 

恐らく取りに来られるであろうS様には、此れで問題が無いか判断して頂こうと思って居ます。御満足頂ければ良いのですが。

 

 

 

 

 

常連様の御依頼、平治作牛刀

 

北海道のT様から、或る程度の手を入れられた牛刀が送られて来ました。刃先の切れは充分で、紙の束への切れ込みもマズマズ以上。強いて挙げれば、切っ先カーブ手前の厚みが邪魔をして居たり、バトン上に丸めた紙の束には手こずる程度でした。

御希望としては、平と切り刃とまでは行かない物の、「ゴロンとした刃付けをフラットに研いだので、現在の形状を維持しつつも厚みの調整・傷消しを」との事で。サラッと難易度の高目な内容では有りますが、私も元来の素性を激変させるのは反対の方ですので、その方向で進めてみました。あと、普段通り?鍔や柄の磨きも追加でしたので其方も程々に。

 

 

研ぎ前の状態

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同じく、刃部のアップ

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同じく左側面

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タングや顎の周りは、荒い仕上げですね。

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刃その物の研ぎの前に、側面の厚み調整。布ペーパーの180・240・400と進み、続いて耐水ペーパーの400・1000・1500で。

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刃先周辺の研ぎへ。最近送って貰った、硬目で削れる1000⇒細かい1000⇒3000の流れです。

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天然へ移行。奥殿の天井巣板、やや軟~中硬の物で傷消しと刃先全体の均し。

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此処で、更に磨きの仕上げです。人造の砥石の砥粒で傷が増える恐れが無くなるまでは、心配が付き纏うので。

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中山の戸前(並砥寄り?)や奥殿の天井巣板(中硬~硬口)で仕上げ研ぎ。

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切れが普通でしたので、もう一押しと奥殿の本巣板(硬口)で。若干は改善するも、未だ上乗せが出来るのではと。

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奥殿の本巣板(紫ベースの黄色っぽい茶色?)で改善傾向、アップ。なのですが最後に試して置こうかと奥の手。

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奥殿の天井巣板、硬口です。何とか、自分の予想していた此の鋼材の最高性能に近い所まで引き出せたかと。

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研ぎ上がりです

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刃先拡大画像

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北海道のT様には、此の度も御依頼を頂きまして有難う御座います。厳しい目で確認されますと、(いつもですが特にグリップエンドの磨きなど)不満も有るかも知れませんが、ついつい削る量を増やす方向にスイッチが入り辛く・・・。そんな状態でも懲りずに?御用命を頂ける事に感謝しております。

到着予定されている、次の包丁もお待ちして居りますので、今後も宜しく御願い致します。今回の御振り込みも、キリの良い所でとの事で恐縮です。期待に応えられる様に精進をと思います。

 

 

 

 

 

三条から持ち帰った二本の仕上げ

 

此の度の新潟行きでは、鍛冶体験が空振りと成ったのですが其の代わりに?予定外に仕上がっていた北海道のT様の御依頼品、司作鍛え地黒打ちペティが。加えて御土産に貰って来た、自分用の黒打ち三徳も・・・。

 

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先ずはペティの方から・・・なのですが試し切りの結果から、切り刃の状態としては余分な厚みも無く(自分の好みでは多少の研ぎ代が有っても良いのですが)、刃先の調整のみで行けそうです。

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刃部のアップ。結構、鋭角目で薄く仕上げて有ります。

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研ぎ前の刃先拡大画像。特に問題は無いのですが、一か所にコツンと当たった痕跡が。

まあ其れよりも、鋭角な切り刃+細い糸引きから来る繊細過ぎる切れ加減を警戒し、幾分は強度と永切れ・掛かりの強さの向上を目指して天然のみで調整する事に。

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左側面

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で、中硬巣板⇒中山戸前緑・黄緑⇒奥殿本巣板と進んで、納得の切れが出ました。最終刃先角度は片側、刃元35° 中央25° 切っ先15°。つまり両側から研いだので結果、倍の角度に成ります。

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研ぎ後の刃先拡大画像。糸引きの幅と角度を変えました。広げた幅の中で、刃先へ向けて徐々に鈍角化してあります。

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一方、此方は荒く切り刃を仕上げた身のまま。研ぎを施し、有り合わせの柄も付けて見ます。

一応、軽く人造の小割り(320・240・1000番)で厚みの残存箇所(刃元・中央・切っ先手前)を狙って均し研ぎ。巣板の小割りで研ぎ目を変えて観察。刃先は未だ、手を付けていません。

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地金・刃金共に、まだまだ研削痕が目立ちます。其れでも、刃金の素性の良さは伺い知れます。組織の細かさと、充分な硬さを研ぎ肌から感じられます。他に、紙を擦る刃先の音でも同様。

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ダイヤ鑢を何種類か用いて柄を挿げます。

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自分の好みに近いバランスでラッキーでした。ナイフで言うところのヒルト(鍔)か、或いはリカッソ(マチ)が重心だと使い易いです。握る手の位置によって、前方重心にも中央重心にも扱える。長物でなくユーティリティであれば、間違いなく便利。

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もう少し研ぎ進め、刃先・切り刃の厚み・角度調整・傷消しが一定レベルに達したので、後は使いつつ仕上げて行く事に。

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良く見れば、刃先も最低限しか整っていませんが、充分な性能を見せてくれます。

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刃先拡大画像

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左側面

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利器材使用との事でしたが、造形・刃金の性能から司作の鍛接では?と何度か疑ったほどの出来。之まで、「まあ利器材でもこのレベルなら~」と感じた製品は幾つか有りましたが、此方は成り立ちに囚われず純粋に性能で満足させてくれます。自分用の予備と合わせて、数本は取り置きして置きたいと思います。

 

 

 

今回もT様には随分、御待たせしてしまいましたが高性能且つ機能美をも併せ持ったペティをお届け出来るので、安堵しております。去年あたりからは、日立の統廃合を経た白一仕様の司作と成って居り、以前を上回る刃金と成っています。御使用で御確認頂ければ、切れと永切れを実感して頂けると思いますので、御楽しみに(笑)。本日、発送致しますので宜しく御願い致します。此の度も御依頼、有難う御座いました。

 

 

 

 

 

近所の知人からの御依頼

 

オークションで落としたとかで、炭素鋼をステンレスで挟んだタイプの三層利器材で作られた三徳包丁を受け取りました。

研ぎ減りは少ない物の、刃先は欠けと錆で傷んでいます。そして、平との境界が不明瞭な切り刃の中央(刃渡り方向・刃幅方向共に真ん中付近)は、ふっくらしています。

出来れば刃先周辺の研ぎのみで、性能を引き出せればと考えていたのですが難しそうな気配も。

 

 

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研ぎ前、全体画像

 

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刃部のアップ

 

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裏も同様ですが、切り刃の幅は広目。逆に右側は切り刃が狭く、小刃までの段差がキツイ状態。

 

 

 

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先ずは、刃先周辺狙いで性能向上を図ります。人造の400⇒1000二種⇒3000番。この前の御試しの1000番は、こう言った作業に好適でしたね。研磨力の割りに、返りが酷く出るとまで行かず。

 

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刃先と切り刃の兼ね合いです。やはり少々、厚みが気に成る仕立てですね。特に刃先を研ぐと対比で気に成ります。

試し切りで、刃先その物だけでは性能を期待出来ないと結論。切り刃自体の厚みで切れ込んで行かず、押し引きでも最も厚みの残存している中央部分に近付くと動きが止まる。

 

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人造の小割り(320⇒1000⇒GC240⇒ビト1000)で、残存している厚みを均しつつ、刃元から切っ先へ向けてテーパーに。切り刃の峰側から刃先側へ向かってもテーパーに。

 

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奥殿の天井巣板の中硬の小割りで、刃先以外の切り刃を仕上げます。

 

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厚みの変化を見ますが一番、厚みを減らさない部分でも有り、見た目の変化は少ないですね。ふっくら感は減少しているかと。

 

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刃先の形成と、切り刃との繋がり部分の調整。此処でも、新しい1000番が扱い易くで便利でした。やはり自分用にも追加する事を決意(笑)。

 

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相変わらず分かり難いですが、刃元部分。

 

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3000番まで進んだ後は、天然です。

 

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中硬(やや硬目)の巣板⇒中山の赤ピン

 

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最後は奥殿の巣板、茶色です。

 

 

 

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研ぎ後、全体画像

 

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刃部のアップ

 

 

 

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普通に切れていたものの(普通で何も悪く無いのですが)、折角の相性探しが可能な天然ですから色々と。奥殿の天井巣板硬口・やや硬口を試して・・・。

 

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其れでも、切っ先とカーブ部分の仕上がりに納得いかずに奥殿の本巣板の超硬口。此れで本来の性能を引き出せたと思います。

熱処理の仕上がりで言えば、マズマズの硬さを持っていますが少し、粘りが負けているかなとの印象。従って、砥石の相性には好みが煩いタイプに属する気がします。何とか仕上げられて良かったです。

 

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刃先拡大画像。左寄りの刃先に、錆を主因とした欠損の痕跡が見えます。此処が一番、初期の名残りが現れている部分です。

 

 

 

S様には此の度、研ぎの御依頼を頂きまして有難う御座います。初めて研ぎを御利用の御若い方ですので、挨拶代わりに(費用を抑える意味も含めて)幾分は略式の研ぎとしてみたのですが如何でしょうか。外観・御使用でも御満足頂けましたら幸いです。

 

 

 

 

 

予定と変わった三条行き

 

数か月前から、鍛冶体験をさせて貰えそうか日野浦さんに頼んでいました。ただ今回は、一緒に行く相方に対する付き添いの意味合いが強かったのですが。

二日に渡る予定日の前日から、新潟に向かって走り出したのですが・・・相方の方が天候に祟られて、移動できないとの事。初日には間に合わずとも、二日目だけでも参加すればと返信しての出発。

 

 

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往復を含めて唯一、立ち寄ったパーキング。小布施でしたので、栗の和菓子と胡桃(二種)を購入。食事は、八割でしたかザルを一枚、手繰ってサッと出ました。パーキングで出される蕎麦としては、中々に良い部類だと感じました。

 

 

 

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到着して先ずは、依頼主から要望を頂いて居る関連を見せて貰います。

 

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欲しければ、回してやれる物も幾つか有るぞと。依頼品の他、自分用にも欲しい所ですが生憎、資金的に余裕が・・・。儲けが出たら又、御願いしましょう(笑)。

 

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其の他、参考に色々と。其の内、頼む事に成るかもですね。

 

話の途中で連絡が有り相方は結局、二日目にも間に合わない事が判明。一方の日野浦さんも多忙により大変そう。止むを得ないと判断し、私も今回の鍛冶体験は辞退する事にしました。

合間に、古い鉈の研ぎ直しの依頼をしていた方が来訪。日野浦さんとの遣り取りを興味深く拝聴しました。その嘴付き鉈を見て、以前からイメージしていた鉈に関する提案もしてみました、之まで余り注目されて来なかった分野での活躍を期待出来るかと。

 

 

 

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帰路は、打って変わって冷え込んでいた様子。途中、新井パーキングで冬用の足回りでない車はETC出口から下ろされます。現場では、そんなにか?と思って居たのですが・・・。

 

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下道を暫く走ると、妙高あたりで画像の状況。幸い、大通りの車道はキッチリ除雪されていました。

 

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途中の何処かで蕎麦屋が無いかなと探りつつ走っていたのですが、閉まって居たり準備中だったり。塩尻のあたりで情報を求める意味もあって、ワイナリーに立ち寄りました。

自分自身では味見と料理に使う程度ですが、今回は御土産として白と赤を一本ずつ。係りの方に意見を聞きつつ、数種類の中から選びました。

 

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更に進んで行くと、木曽路の道沿いに蕎麦屋が。外観は少し山小屋っぽい、和洋折衷風の店構えですが拘りの店主が居る様子。御品書きによると、原種の蕎麦をハンドメイドの石臼で挽いた玄蕎麦とか、キノコ等は自分で採取とか。

 

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山葵ザルと漬物セット。僅かにもろもろした食感と、ふんわりした風味。しかし、何より後口に余韻を残すのは矢張り、使われている水だなと改めて感じますね。

 

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初めて聞いたすんき蕎麦。スグキとは違いますが、乳酸発酵により結構な酸味を持つ漬物がアクセント。すんき漬け?は汁物の具材としても、味付けとしても用いられるとか。

 

 

 

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北海道のT様からご依頼頂いて居た雲竜鍛え地のペティ。出せる可能性の有る作品について話していると、奥さんが出して来てくれました。と言うか、出来てたんかい!です(笑)。新潟まで出掛けてから手に入るのは中々に大変。

 

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おまけは、私用に此れを。利器材使用ですが、焼き入れ・造形共に高次元と見受けました。切り刃から研いで仕上げて行き、柄を付けて普段用にしたいと思います。知り合いなどには、奨めてみたい位の出来です。

 

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背圧・厚みの変化も適切と思われます。後は、切り刃の角度変化や実用的な刃先の仕立てで、万全に成るでしょう。

 

 

 

土産に買った胡桃は二種類。表示されていた、かしくるみと言うのは、菓子胡桃だったんですね。一般的にクルミと言えば、此れを指すそうで。

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もう一方、名前は有名ですが初めて触りました。見聞きする限り、殻が強いと名高い鬼クルミ。金槌でも中々・・・と理解していましたが、割とキッチリ割れてくれました。小振りだからか分かりませんが。

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何方のクルミにも有れば便利な物としては・・・。鬼クルミには、専用工具みたいなのも用意されている様ですが、其処まで常用するので無ければ、金槌かなと(叩くのに自信が無ければ別)。その後はラジオペンチとか、突っつき易い道具で。

下画像は、レザーマンですが、菓子胡桃なら付属のマイナスドライバーで割る事も容易です。物によっては指で割れる物も有ったり。

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何故か、家の工具箱に入っていた物。歯石でも取る道具に見えますが、何でしょう。対クルミ作戦の役に立ったのは間違い無いです。

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時間と費用を用意して、臨んだ鍛冶体験が延期に成ったのは残念ですが・・・二十年近く前に別冊モーターサイクリストのツーリング紀行で読んだ、馬籠や妻籠の旧宿場の近所。昔に教科書に載っていた野尻湖の傍に立っていたナウマン象の像の傍・小林一茶の生家の傍、などなど普段では通らない場所を(弾丸ツアーで立ち寄れませんでしたが)通れたので、何やら楽しい気分にも成りました。

 

 

 

 

 

北海道のT様から尺の牛刀の御依頼

 

前回までと同じく、既に廃業さた所で作られた包丁です。素材的には異なるとの事ですが、此方も中々に優秀な仕上がりだと感じました。組織は細かく、硬さと粘りのバランスが秀逸。厳密な永切れに限って言えば、前回の方が上回る可能性は有るかなと言ったレベルです。

 

 

研ぎ前の状態

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刃部のアップ

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左側面。右に比べて少々、初期刃付けと言うか研削での角度の違いが見られますね。刃先数ミリの範囲での段刃気味が強い事と、其れ以上に側面中央に薄っすらと切り刃状の形状に。

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全体に深い傷が気に成らないレベルまで磨く、との内容も依頼に含まれていましたので何時も通り、形状を整える(峰から刃先へのテーパー・刃元から切っ先へのテーパー)作業に付随した範囲内で磨きも行ないます。つまり、傷消しを追求するあまり、目指す形状の精度を損なう事態は避けたいと。

今回は、布ペーパー・耐水ペーパーの使用を主体として、削りと磨きを進めました。砥石での削りは精度、イコール性能も向上が明確に見込めるのですが前回、同様の作業を行った際に(和式刃物基準となり両刃扱いでもあり予想以上に?)代金が嵩んでしまいました。ですので、研ぎは飽くまでも洋包丁基準・削りを含んでも磨きの料金(難易度次第で一面1000~3000円)内に含めようと。

 

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180・240・320などの布の方から進めます。その後は400・1000・1500の耐水。

 

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一旦全体を均した後、厚みが気に成る部分を狙います。右は刃渡りの中央を挟んで手前と向こう側・そして切っ先手前。

 

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左は前述通り、切り刃状の連なりと段刃の起こり。この工程には、人造砥石の小割り240・320・1000で。

 

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やっと、本来の研ぎ工程とも言える段階へ。人造の1000と3000.

 

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其の上で刃先直前に掛けて、磨きを施します。

 

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天然砥石で仕上げ研ぎ。中硬の巣板⇒中山の赤ピン。此れで普通には切れますが、更なる鋭利さと刃持ちの向上を目指して。

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奥殿の硬口、天井巣板です。上の赤ピンもそうですが此方も、自分で採って来た砥石です。其れが性能・相性抜群で御依頼品に役立つのは、研ぎ工程の中でも大変に感慨深いです。

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研ぎ上がり、右側面全体です。

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刃部アップ

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刃先拡大画像

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左側面

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鍔や、柄も磨く事に成っていました。鍔とタングは普通に。木グリは鍔との境目が大きな段差でしたので、6~7割方を削って置きました。加えて全体に角張っていた部分の鈍角化。

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表面上の傷を消す事を最優先では有りませんので、特に厚みを残したい部分(刃元の他、刃幅で峰側の三分の一。削ると刃体の強度や剛性が低下)や深い傷だった部分には目立つ傷も残っています。しかしT様には、御使用でも不満の無い性能を鑑み、現状の外観にも納得して頂けた様です。

何時もながら、拘りの外観もさる事ながら、やはり実用面を最優先との方向性に賛同下さり有難う御座います。加えて、私の狙い通り(前回よりは)リーズナブルになった代金を心配して?キリの良い額での御振り込みにも感謝致します。今後も御役に立てる場合は、宜しく御願い致します。

 

 

 

 

 

何時もの常連様からの御依頼、二本

 

少し前、芦屋での食事会の折りにベスパのディーラーの方から預かっていた物です。

二本共に炭素鋼、と言っても片方(下画像下側)は特殊鋼に近い青紙スーパーですね。それででしょうか、地金の方が錆に弱い様子。

 

 

研ぎ前の状態。双方、未だ切れると言える位ですが、全体に軽く摩耗して居り、何箇所かに小さな欠け・捲れが有ります。

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青紙スーパーの方、刃部アップ

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裏です

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人造の1000番二種・3000番から研ぎます。

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天然は中硬の巣板⇒中山の天井巣板超硬。以前に中山の中腹から山頂へ案内を受けた際に、サンプルとして得た物です。ほぼ奥殿の天井巣板超硬と似て居り(まあ隣の山ですし)、滑らか且つ掛かりの良い刃を付けてくれます。

おまけに返りの処理が難しいタイプの鋼材・熱処理の仕上げの刃物への最終仕上げにも向いているので便利。

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研ぎ上がり

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研ぎ後、刃部アップ

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刃先拡大画像

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牛刀の方も、人造に関しては同様。ただし、此方は刃先の厚みが若干ですが邪魔に成って来ていましたので、小刃の幅を広げつつ(その幅の中で特に右側中央~切っ先に目立った)厚みを調整。幅の先側半分で刃先へ向かってハマグリ。切っ先へ向かってテーパー状に刃先を角度調整。

天然の仕上げには、以前に採って来ていた原石(かなり昔の切り落とし)を、昨日ハツって面を付けたばかりの物。手持ちの炭素鋼のペティに対して、嘗て無い種類の刃を付けてくれたので、小さいながらも使って見ましたが大当たりでした。

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研ぎ上がり

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研ぎ後、刃部アップ

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刃先拡大画像。欠けや錆の痕跡が殆ど影響しないレベルに成った時点で研ぎを留めました。

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T様には何事によらず、御世話に成っておりますが此の度も研ぎの御依頼を頂き、有難う御座います。今後もベスパ・パソコン関係その他、御面倒をお掛けすると思いますが宜しくお願い致します。

 

 

 

 

 

五本の御依頼、最後の一本

 

でっかい三徳と言うか、三徳っぽい菜切り(やや大)と言うべきか、多数派には含まれない感じの包丁です。全体に薄い赤錆・一部に深い錆(と黒っぽい錆)が有りましたが欲を出すと大事に成りそうですので、今回は軽い作業で落ちる赤錆びのみを狙って落としました。

 

研ぎ前の状態。

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人造から研いで行きます。刃先の錆と欠け・摩耗をチェックしつつですが、当初は目立たなかった刃元の摩耗が予想外に厄介。

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中砥で傷を消して刃先を揃えます

 

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一旦、巣板まで仕上げたのですが試し切りにて、どうしても厚みが邪魔をするので(仕上げた刃先の後ろ側を)研いで行きます。特に切っ先寄りの三分の一が初期刃付けの段階からと思われますが抵抗に成っていました。

 

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再度、中硬の奥殿天井巣板で。

 

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相手を選ぶ傾向にある、奥殿敷巣板茶色際?で最終仕上げです。かなりの相性の良さを見せてくれました。

 

 

 

研ぎ上がりです。

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刃先の拡大画像。側面からは摩耗や錆の痕跡が刃線に掛かっている様に見える部分も有りますが、切れに影響しない段階までは研ぎ進めました。

 

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此れで、今回の五本は仕上がりましたので本日、御返送の運びと成りました。明日には到着との事でしたので、H様には御手元に到着の際に御確認の上、問題など有りましたら御知らせ頂きたいと思います。

此の度も研ぎの御依頼を頂きまして、有難う御座いました。今後も御役に立てる場合は宜しくお願い致します。

 

 

 

 

 

五本の御依頼、次の二本

 

刃先のみの研ぎで問題が無いと判断された、二本の和包丁です。柳と出刃ですが、切り刃の状態・刃先の状態ともに私の研ぎに若干ですが近い感じ。

紙の束への切り込み・抜けも通常は納得いくレベルでしたが、最終の刃先角度は鋼材・熱処理由来の特性から見ると、ギリギリの強度かと思われました。

あと、出刃の切っ先の欠けは知れていたのですが、双方ともに先寄りの四割程度が表側(地金側)に反っていました。八寸の出刃は厚みが厚みなので現物に合わせて研いで行き、柳の方は三分の一程度まで反りを減らして研いで行きました。

出刃は、本格的に修理すると表から鏨を入れて削っての大手術に成りますし、柳も反りを追い込むと裏の歪みに逃げられない範囲で留めました。砥石への載せ方で対応出来るレベルであれば何とか成るとも言えます。

 

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研ぎ前です。刃金部分の研ぎは、初期刃付けの痕跡と思われる角度の不均一。地金部分も幾分は厚みの不安定も有りますが、一般家庭的には許容範囲でしょうか。

 

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同じく裏。表もですが、薄っすらと錆び(少し濃い変色レベルが大半ですが)も。

 

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柳の刃部のアップ

 

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刃先の拡大

 

 

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出刃の刃部のアップ

 

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出刃の刃先の拡大

 

 

 

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人造の緑1000⇒白1000⇒3000番で刃先の形成。刃先周辺の厚みを増やさずに、先へ行く程に鈍角化。そして、切っ先へ向かって50°⇒40°⇒30°の角度変化。

 

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奥殿の中硬天井巣板で傷消しと形成の仕上げ。次に中硬の中山赤ピン。最終は、同じ中山赤ピンながら硬口の物。

 

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研ぎ後、刃部のアップ

 

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同じく、刃先の拡大

 

 

 

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出刃も、人造は同じ工程です。但し、角度変化は刃元から70°⇒50°⇒30°としています。

 

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巣板までは天然も同じですが、中山の緑板各種で相性を見て。

 

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研ぎ後の刃部アップ

 

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同じく、刃先の拡大

 

 

 

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研ぎ上がりです。切り刃全体も、奥殿の軟質天井巣板の小割りで撫でて研ぎ目を浅くしています。多少は錆対策に成るかと。

 

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裏も、研磨剤(細か目)で変色を減らして置きます。

 

 

 

H様には現在、此れで問題が無いか画像添付メールにて判断を仰いでいます。大丈夫であれば此の二本は終了となりますが、今回の二本は刃先メインの研ぎでしたので、和包丁基準では無く洋包丁基準での研ぎ料金と成ります。

それも、洋包丁基準の中でも低(1cm当たり100円+税)・中(1cm当たり200円+税)の段階。因みに柳が前者・出刃が後者です。切り刃に問題さえなければ、この様な場合も有ります。逆に、当方で切り刃を適切に砥ぎ上げて置けば、暫くは刃先を御自身で研いで維持管理も可能となります。

H様には御連絡を御待ちしつつも、最後の一本を仕上げて参りますので、今少しの御待ちを御願い致します。

 

 

 

 

 

纏めて五本の御依頼、二本分

 

さて東京のH様からの御依頼品です。先行して洋包丁の方が二本、研ぎ上がっていましたので其方から。

和包丁(柳・出刃)に関しては、初期の状態で充分な切れが確認出来ましたので、若干の心配が有る刃先の研ぎだけでも良いか?の質問をしました。併せて、上記二本の画像を添付し状態確認をしてほしい旨、メールしました。結果、和包丁は刃先のみで良いと。洋包丁の仕上がりに言及は無かったので、まあ大丈夫だったのかなと判断しました。

 

 

 

研ぎ前の状態。三徳っぽい牛刀と言うか。

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刃部のアップ。刃先に少し、厚みが出始めています。或る程度の摩耗と、そこそこの欠けも。

 

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人造から研いで行きます。刃先の2mm程度の幅から、3mm程の幅に変更して鋭角目に研ぎます。切っ先10°~刃元15°弱と云った所でしょうか、或る程度は刃先周辺が薄くなった段階で、(1mm前後幅で)先へ行く程に角度を鈍角に。

最終刃先角度は刃元⇒中間⇒切っ先へ、40°⇒30°⇒20°の変化付き。小刃の幅が左右で違っていましたので、右側優先を踏襲。

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軽く錆も落として天然へ移行。中硬の巣板から。

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中山の緑板で仕上がりました。

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研ぎ上がりです。

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次に、ペティです。此方は、殆ど新品の状態。多少、シャープナーで擦った様な痕跡は有りますが。

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人造は、前述の内容と同じ。天然に入ってからは、黒蓮華。

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中山の緑は同様ですが、僅かに硬さと細かさが上回る物。返りの出方や取れ難さへの対処が、変更の主な目的です。其の上で切れの仕上がりに不足が無ければ合格。

440系統にしては、素直な仕上げの熱処理との印象を受けます。ステンレス系統は結構な割合で、(中山なら)浅葱や並砥で仕上がる事が多いのですが。

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研ぎ上がり。小刃の範囲を極僅かに広げて、刃先側と反対側で角度変化を。抵抗の低減と、耐久の向上を図ります。切っ先へ向けての鋭角化も施しますが、視覚的には判別困難でしょう。狙い通りに仕上がりました。

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H様には此の後、錆のより多い菜切り様?の三徳でしょうか、其方に掛かりますので宜しく御願い致します。仕上がりましたら順次、出刃・柳へ進みたいと思っております。