11月22・23日の砥石選別

 

この連休に、亀岡に行ってきました。目的の半分は、以前北海道から本焼きの柳の研ぎ依頼を頂いたS様に相応しい砥石の選別でした。

結果としては、通常使用では中々の物が多く在りましたが、本焼きに適する上に出された条件に見合う物は、もう少しじっくり探したいと思いました。S様には、値段・期間の幅を取って頂きましたので、短期(週単位)での選別ではなく、やや中期(月単位)で対応したく存じます。

 

 

代わりに、私の仕事用(本当かな?)の砥石で追加と変更をしてきました。

先ずは小さい白巣板ですが、之は特殊用途専用です。和包丁の切り刃を仕上げる際、複雑な面構成に成る所への対応は大きく二つ。一つは狭い範囲毎に小割りした砥石で分割、もう一つは其の面に合わせて砥石表面を変形させ、そこで研ぐ方法です。

下画像の砥石は、後者の方法に使用する目的で選びました。選定基準は、石そのものがやや当たりが柔らかく、肌理細かく尖っていない砥粒で傷が消え易い物です。小さ目が在り難いのは、当然大きい物で同様に使うと平面管理が面倒なこと、作業のテンポが遅くなる事、砥石の性格として、その目的に対して最大に振り切った物が少ない事からです(絶対数と、其に伴う確率の問題)。

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一応、切り出しを研いで見ました。目的通りの仕上がりですね。問題は平面以外での働きですが、それも現地で試し研ぎ用の置き包丁(来週生ハムスライス予定にて)を研いでテスト済みです。

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次は、八枚と表示が在りましたが、ほぼ千枚ですね。此方は、少し前に白巣板と共に購入した敷き内曇りが、やや性格的に似すぎていたので交換して貰った物です。

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刃金は、この系統としても可也良い状態です。

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最後は、砥取家で集合していた常連の一人、小鮎様から頂いた中山の並砥です。どうやら、再生品?に近い砥石で大きく厚かった物を加工されたそうです。経験値を上げて貰えるプレゼントを、何時も有り難う御座います。

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刃金は、上の砥石に比べてやや曇り加減ですが元々は結構、柔らか目だったそうなので其れ故でしょうか。対して、地金は此方の方がやや明るく仕上がり、そう云う違いも面白い所ですね。そして、層が変わって硬さも激変したとの由、又鉄を吸っての変化もあるでしょうから、今後はどうなって行くかも楽しみです。とは言え、充分な綺麗さと切れではありますが。

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次の日曜も、同様の予定ですが前回よりも大変そうです。春からの動きや予定が確定したり方向性が示されるかも知れません。それに亀岡周辺での動きも連動して来る筈ですので。

 

しかし其れとは別に、依頼を頂いた砥石の選別は抜かりなく行なうつもりではあります。

 

 

初のヨーロッパ

 

以前からの予定通り、一週間程オーストリアに行ってきました。現地のレストランから駐日オーストリア大使館を通じて、日本研ぎ文化振興協会に依頼があり、私がイベントでのパフォーマンスを任されました。

出発前から知人(風景・建築好き)に、現地の画像を見せろと言われていましたので先ずは、ウィーンに到着してからのほぼ順番通りに。

 

空港です

離陸(成田)

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着陸(ウィーン)

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宿舎になったホテル。傍には国連のビルも。階段や室内には絵画が。

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道路の向かい側から。中央の車線と側道でちょっと御堂筋風に感じます。人通りを含めて交通量はかなり控えめですが。

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真っ直ぐ行くと川に出ます

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徒歩20から30分で、ドナウ川です。車道と段差を付けて地下鉄と歩道(自転車道併設)が一体になった橋が架かっており、中洲を挟んで向こう岸まで渡れます。橋の中ほどには地下鉄の駅があります。ホテルからの最寄り駅は、橋の手前に在るもう一つです。

 

手前の川岸。鳥も四種類ほど居ました。白鳥と真鴨、ユリカモメみたいな鳥、烏と鳩の間みたいなサイズとカラーリング(白・グレイ・黒)の鳥。

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中洲(左側)に下りるスロープ。自転車、ランニングの人がちらほら。

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対岸の教会と船着場。ドナウの始まりから終わりまでのクルーズや、もっと短距離・短時間のツアーもあるそうです。

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イベントに先立ち、系列の別レストランで研ぎの指導を。

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内部は色々な設えで、此処は最も明るいスペース。試食を兼ねて食事を頂きます。

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その後、厨房にて研ぎの説明と実演。一番切れない包丁を、と言うとかなり丸っ刃になり、裏からも角度の付いてしまっている柳を差し出されました。一応、修復する方向で研ぎ始めましたが、裏押しがまともに出来ない内は、若干両刃的に角度付きで返りを取らざるを得ないと判断しました。シェフに研ぎ上げた包丁で実際にサーモンを捌いて貰いましたが、頭を落として三枚にし、腹膜を梳き取る動きは上々の様子でした。途中では吟味する表情でしたが、最後に笑顔で良かったです。

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次の日は、シュテファンなんとかで待ち合わせです。地下鉄の駅から上がると待ち合わせの時間には早過ぎ、場所も判然としなかったので(どれが約束した教会か)、少し見晴らしの良い縁石に座って待つ間、周辺の写真を。

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ツヴィリングやストウブなど鋳鉄鍋の店も

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教会の中。神様は一人だけれど、聖人が夫々、ジャンルを分担して加護を与えるといった説明を聞いて、日光月光両菩薩みたいだなと思ったり。

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中心部の 広場周辺。

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端っこでハープを弾いていたり。ラピュタのエンディングだったような。

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OECDのヘッドクォーター等が入っているとの事。

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像の向こうは国会的な建物だったかと。それ以外の役所(財務省や内務省?)も城・宮殿式のデザインみたいです。

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広場から少し離れると美術史博物館と、その向かいに瓜二つの自然史博物館が並んで建っています。

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内部(展示室以外)です

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帰りに日が傾き

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彼が今回、通訳とガイドを引き受けてくれたヨハネスさん。日本の文化や宗教にも詳しく、漢字の読み書きも出来る程(私の走り書きのメモも読めたのには驚き)。一時期、日本に居た事も在り日本人の観光案内は御手の物といった風情。

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主要な建築物や有名な通りは勿論、裏通りの老舗や裏路地の地元民御用達の名店も網羅。

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ヨーロッパでペストが流行した時期に、収束した事を感謝して作られた物だそうです。

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ここの左側には呼び込みの(?)お父さんが居て、「コンチェルト、七時、どう?」と日本語で誘ってくれます。

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昔から王侯貴族に金の装飾品を納めていたとか

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サザビーみたいなオークションの会社を通り抜け。

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カフェにも 何軒か連れて行ってくれました。予想以上に御菓子が充実しており、中には一階の売り場がケーキ屋にしか見えない店も。それもあって、観光客には入り難いのも頷けます。実際には二階は落ち着いて飲食できる調度になっていました。ケーキ類は基本的に、街の伝統的な物と店の名物、そして季節の物が並んでいる様です。

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ザッハトルテ(と同系統)の想定を上回る甘さには驚嘆。

 

 

唯一、自分一人で入ったのはザハホテル併設のカフェらしかったのですが、兎に角メニューに日本語の表記が混じっていたので飛び込みました。注文したのはウィナーシュニッツェルとかいうウィーン風カツレツです。団扇みたいな広くて薄い奴に苔桃のジャムの小瓶、レモンの半割りが付いてきました。それらの御蔭と、酸味を効かせたジャガイモも相俟って、さっぱりと食べられました。一緒に頼んだのはアールグレイです。

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オペラ座で行なわれたドンキホーテのバレエも、運良く予約して貰えたので鑑賞する事が出来ました。先の腹ごしらえは此の為です。何と三幕です。

しかし二幕目から到着した隣席のお姉さんに、三幕目との間の休憩中に何処から来たのか、日本なら宮崎駿を知ってるか、どの作品が面白いか教えろ、など聞かれたので焦りつつも片言の英語のみで独断と偏見により答えておきました。

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いよいよイベント会場のドッツレストラン(十周年記念パーティ用内装)で準備です。話してみると当初の話と色々異なる状況に困惑しつつも、代用や流用で何とか整えて開場を待ちます。

駐オーストリア副大使のテラオカさん(名刺が横文字のみ) と名刺交換と挨拶、イベントのオーガナイザーの方と打ち合わせ等している内に騒がしくなり、そのまま始まりに。

御蔭で、会場やゲストなどを撮影する余裕も無く、画像は以下だけです。(イベント会社からの画像を大使館が転送してくれたので、二枚追加します。その後、動画も送られて来ましたが、自分では全体どころか周囲も余り意識していなかったので可也、衝撃的な映像でした。こんな事になっていたとは)

 

 

 

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現場のレストランのシェフや、ゲストの包丁くらいは研ぎましょうと言っておいたのですが、到着してみると2ダース近い包丁が様々なレストランの料理人から届いていました。

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オーガナイザーその他からは、ある程度研いだら酒を片手に談笑でもしてれば良いと言われましたがそんな気分にもなれず、結局8時間くらいのイベント中に全て研ぎ上げて来ました。途中、何度かテレビのクルーが撮影に来ますが、只でも余分な照明が二倍になって厄介な上、レポーターが覚束ない手つきで包丁をカメラに見せるので気が気じゃ無くなります。

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それ以外にも、トマトやキュウリを「ヨハネスさんの研いで居ないステンレス包丁・自分が研いで持って行ったステンレス包丁・司作の三徳」で切り分けて試食させたり希望者には試し切りさせたりしました。切れの違いと共に、切られた食材の味の違いを確認できたとのコメントも結構頂きました。ですので、今回包丁は一本当たり15分から20分位で研いで居ました。普通は40分前後ですので、完全な形状や傷消しは諦めて80点狙いで捌きました。そして最後には、我が通訳殿の包丁も。

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柳で新聞を切ったりビクトリノックスのスーベニアでビニールを切ったりして、喜ぶ人やナイフを欲しがる人(ナイフマニアだかコレクターらしき人)も。結局、まずまずの割合の人に注目されたり、数組のゲストにはかなり食い付いて貰えたので良かったと思います。只、これまで余り切れない包丁しか使ってこなかったシェフ達には、よく切れると喜ばれるか手を切ったと恨まれるかの二つに一つでしょうか。しかし、切れに何らかの問題があるからと預けてくれていたのだから、喜んでくれていると信じたいですね。それでこそ、オーストリアまで出掛けて連続八時間研いだ甲斐があると言う物です。

因みに、夜中?四時辺りでイベントが終わり、此方も後片付けを終えたのは五時過ぎ。ホテルに着いたのは六時を回っていましたが、雑誌のインタビューは其の日の朝九時半です。ヨハネスさんとは二時間半後にロビーにて待ち合わせをし、シャワーの後一時間仮眠、再びタクシーでインタビュー場所のオフィスに移動しました。

此方も事前情報と違って相手は料理雑誌の取材に来たお姉さん三人。相手がシェフやオーナー的な人ではなかったので、普通にヨーロッパにおける和包丁の位置づけや日本の包丁の特徴や優位性に及ぼす要因など、聞かれるままに説明しました。

結果的に、テレビのニュースや新聞に取り上げられた事に加え、上記の料理雑誌でも記事になるとの事で、ヨハネスさんからは画像など手に入ればメールに付けて送ってやるとの事。しかし、今になって考えれば、雑誌の人と話していた時に発行されたら送って欲しいと言っておけば良かったですね。

今回のウィーン行きは、状況が悪くても(準備や設備が整っていない可能性を考慮)何とかなる様に、自分なりに手を打って向かいましたが、此方も急遽変更になった通訳兼ガイドのヨハネスさんの尽力に因る所が大でした。到着初日からホテルのロビーで熱心に打ち合わせに付き合ってくれ、話の理解も早く更に先まで読んで来る。私が研いでいる状況を通訳しながら基本的な研ぎの流れを理解し、イベント中も此方の動きのサポートもこなす。ガイドに至っては街の歴史や建築物の種類にも詳しい。バレエや絵画など芸術の造詣の深さも感じさせる奥行きのある人物でした。一緒に仕事をしても不満を感じさせないどころか性格も良く信用でき、頼れる男。彼との知己を得られたのは最大の収穫かも知れません。

ウィーンを離れる前日から、自分でも思っても見ないほど辛さを感じ驚きました。建物・街並みの綺麗さと人・車が多過ぎない環境、山河・自然の美しさと想像以上に食べ物が旨いのは当然あるでしょう。これらは自分の好みの範疇ですから。しかし、短時間の詰め込み教育的とはいえ、彼から案内された場所、聞かされた話しが幾らかでも具体的に身に染みたので愛着とまで言える感覚になったと思われます。ほぼ毎日、ドナウ川の川岸を散歩していたのが地味に堪えています。まあ、現地に居たときから薄々分かっていましたが・・・日本に居た時はこんなにウィーンにやられるとは、本当に思っても見ませんでした。

いつか再び訪れる機会を持てればと思います。それと同時に、遠からず日本を訪れるであろうヨハネスさんには、御世話になったお返しをと考えますが、関西にも詳しい彼には余り役立てないかもですね。其の分、多少専門分野という事で、包丁・砥石関係で貢献したいです。その頃には渡して来た小さな戸前と巣板を使いこなしているでしょうから、普通サイズの特選砥石やお勧めの包丁でも案内するとしましょう。

 

 

 

最後にお土産です。グラスはボヘミアガラス、焼き物の方は陶器と磁器の間くらいの感じです。どちらも伝統的な物ですが、グラスは三十年も前に母が欲しいと言っていましたのでこの機会にと。

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前祝?

 

前回の本焼きが北海道に届き、使用した際に鮪の脂の乗った筋入り部分が崩れず切れ、抜けも良かったので感激・感動との御返事を頂きました。御手持ちの合わせの方を上回ったそうで、一先ず安心しました。S様、加えて応援も頂き感謝致します。

 

そして夕刻、バイクで帰宅途中に何時もの和菓子店前で、若旦那と目が合いました。帰着後暫くして、何かを呉れるとの電話が。久し振りに店の常連の釣り師からのお裾分けとして、鯛を頂きました。これまで、イサキや太刀魚などはありましたが鯛は初だったかと思います。

 

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鱗を取って

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相出刃で三枚に。特に大きくなくても、頭を割るのは相変わらず難しいですね。あと、白子も入っていました。

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塩焼きです

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イベントでは、結構ちゃんと魚を捌く事も期待されている様子にて、直前に良い予行演習となりました。久々だと感覚が違いますね。現地では生食できる魚が手に入るか不明らしいので、態々やる意味が在るかは分かりませんが、日本人が魚を捌くところを見たいと。料理人では無いので、その部分は気が引ける成り行きですが・・・。それよりも今は荷物の残り半分を詰めねばなりません。砥石が多いと、荷物の各重量制限がかなり厄介です。

 

若旦那には何時も有難う御座います。あと、飴も美味しかったです。出張に向けて此方も応援を頂きましたので、特に迷子にならいように気を付けて行って来ようと思います。

 

 

北海道からの本焼き柳

 

北海道から本焼き柳の御依頼で、鮪の筋への切れと身離れを改善したいとの事でした。お手持ちの合わせの方では問題無いそうですが、其れとの差異が不明確でも有り、私の本焼きの研ぎ基本路線でお任せとされました。

切り刃は極緩いハマグリで、刃先近辺(3mm前後)から徐々に刃先に掛けてきついハマグリへ。切り刃と刃先の二段階のハマグリは双方、刃元から切っ先に向けて厚みと角度を減らして行きます。最終刃先角度は元側50度、中央40度、先側30度前後です。

 

到着時、刃先の厚みはかなり抜かれており、軽く糸引きが入っている様子でしたが、裏と表に恐らく製造段階のラッピング的な名残りが原因してか、紙の束には余り切り込めない状態でした。刃先・・・特に切っ先などは鋭利でしたが、やや滑り加減である事に加えて切り刃の抜けが不足している抵抗感がありました。

研ぎ前 全体

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刃部 アップ

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刃先 拡大

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切り刃の厚みの不均等は少な目でしたので、最初はキングデラックス1000と1200で

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ほぼ柳専用と化している細長シリーズ(白巣板ナマズ)と小鳥砥の名倉

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細長シリーズ(敷き内曇り)

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細長シリーズ(敷き内曇りの卵寄りでやや硬し)

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本焼き専用のやや硬口巣板(白+敷き内)

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千枚で傷消し・・・の筈がもう一つ・・・。

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研磨力+仕上がりの白巣板ですが追い込み切れず。

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白巣板蓮華の一つが覿面でした。良く食い付き、研磨も速いのに仕上がりが綺麗。

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最後は、鏡面青砥で裏押し(一本松戸前の名倉)

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研ぎ後 全体

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先側 刃部

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刃部 アップ

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刃先 拡大

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今回は、荒砥の必要性が無かった為に一寸当たり2000円となりました。刃渡り(刃の実測)が32cmだったので、料金は2000円×10.5寸+税で22680円でした。因みに所要時間は8時間ほど。

 

 

北海道のS様、この度は宝物の柳をお任せ下さり、有難う御座いました。合わせの方に負けない働きをしてくれると良いのですが。特性(製造法・刃の付け方)が違うと思われますので、其々の適性に応じた活躍を期待し、又それを楽しんで頂ける事を願っています。

添付しました画像の仕上がりに御喜び頂き恐縮ですが、現物が届いた際に、確認画像に劣らずの外観であれば幸いです。研ぎの御依頼、並びにブログ掲載への御協力に感謝致します。

あと、天然砥石の世界へようこそ。違いが分かると楽しいと思いますよ。御注文の砥石も狙い定めて選別してきます。其れまでは、御手元に届いたばかりの砥石達と親交を深めてお待ち下さい。

 

貰ったペティ

 

刃物まつりで貰ったペティを使ってみました。殆ど戻しを掛けていないとの事だったので、どれ程扱いづらいのかと思いましたが案外、普通に使えました。

吊るしの状態のままで重ね煮を作りましたが、刃零れが出やすい訳でも無く際立って長切れする訳でも無かったので、焼きと戻しの関係は中々、一筋縄では行かない物ですね。

では、特筆する点も無い平凡な出来だったのかと言えば、此れも違いました。組織の細かさは今までに試したV金10号の中で一、二を争う程で、良く掛かり滑らかに切れます。更に、ブレードの研削で上手く肉が取られている為、やや厚目を選んだにも関わらず切断対象から受ける抵抗も少ない仕上がりです。

使用後、天然砥石で研ぎ直したので本当の切れと長切れを試すのが楽しみですが、ペティは二本貰ったのでもう一本あります。そちらも使って、同等品の研ぎのビフォーアフターというのも出し物に出来るかも知れませんね。

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あと、知人から言われたのが(其の方にもデモでナイロンの掬い切りを見せたので)ヨーロッパで身近なビクトリノックスで袋物を抉って見せては?との事でした。そこで序でにスーベニア(デモで使ったモデル)も研ぎ直しました。

 

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これらも念の為にネタの一つとして加えておこうと思います。

 

 

イベントの見通し

 

此処に来て、徐々に現地側でパフォーマンスとして求められている内容と、往復の足の情報が送られてきました。イベントではバックに音楽を流したり、派手な装束も期待されているそうです。

音楽についてはお好きにと返事しておきました。仲立ちをしてくれている国内担当の方は結構、当方を御理解いただいている様子にて、流石に必要以上の衣装までは・・・と宥めているとの由。逆に、時間帯の規定や持ち時間の指定は、かなり融通を利かして此方の提案を受けて貰えそうです。

当日は一連の研ぎ内容と切れの実演、其れを使った食材のカットと出来れば試食まで持って行ければと考えています。向こうで用意された包丁を研ぐ際に、各工程で段階的に切れが変化していく様子と、此方で用意した包丁の性能を見て欲しい所ですが、どうやら現地ウィーンの人はゆったり気質なのに派手好きらしいので、此方も人前でやった事の無い出し物を用意しましょうか。

と言っても、普段、牛刀やペティに親しんでいる地域では、和包丁では形状が違い過ぎて同条件ではなく分かり難いし、最新高級品・特別仕様(相当)では普段使いとの比較は難しいでしょう。となると、何処にでも在るペティで氷を数回削った後、切れを保ったまま紙を鋭く両断。とか位しか思いつかないですね。遠征予定に入れていなかった、日頃最も使用頻度の高い、雑用係りの古いペティにも働いて貰うとしましょう。

 

因みに、上記のテストをパスした後で研ぎ直した状態。

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取り敢えず一応の準備

 

オーストリアでのイベントに招聘される事になったのは良いのですが、予想外に遣り取りが遅滞気味です。此方の質問項目を翻訳しての問い合わせとは言え、慌ただしい本国から大使館に返答が来ないとの事。最初のごく大まかな当日の予定をメールで見て以来、具体的な要望や現場の設え、観衆の種類やレベルなども不明の為、やらなければならなくなる可能性のある事柄、全てに準備をしています。

パスポートを二十数年振りに申請したり着る物(親の家に在った作務衣的な服)を用意したり近所からスーツケースを貰ったり。研ぎに関しては取り敢えず、人造・天然の砥石を用意する事から始め、簡単な展示が必要かもと、手持ちの包丁(柳と三徳メインで)を研ぎ直しました。人造砥石は五本に絞りましたが天然砥石の方は、機内持ち込みの荷物には重量制限も在るらしい事に加え、移動中の損傷・紛失も警戒すると余りサイズ・性能・値段(知れていますが)のレベルが高い物は憚られます。かといって普段使いの実用一点張りシリーズは、やや見栄えに難があります。

と言う訳で先日の日曜に探しに行って来ました。大き過ぎず、性能にも不満が無く、見た目もまずまず整っている巣板を二つ選び出す事が出来ました。

 

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白巣板にややナマズが入っています。その割りに中庸からやや硬めですが、刃金の傷は直ぐに消し、地金の仕上がりも若干粗め乍ら斑無く仕上がります。

 

 

 

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此方は通常の白巣板よりは敷き内曇りに近い物で、やはりナマズが入っています。しかし硬さは上の石を更に上回り、刃物を当てると巣板より合砥っぽく感じる程で、粒度もより細かいです。その為、仕上がりは刃・地共に先の状態よりも僅かに細かいです。

 

 

 

之まで、同じ役割で使って来たのは下の二つ、敷き内曇りの蓮華と紅葉です。両方、特に蓮華の方は平面ではない刃物の地金に斑が出易い傾向以外は存分に働いてくれます(他の蓮華にも同様の傾向は見られました)。

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しかし、今回は多少形状が整っている新入り二つに初陣を飾って貰うとしましょう。働いて、もう少し鉄を吸って帰ってからは、硬さ・細かさが向上するでしょうから、寧ろ今から其れが楽しみでもあります。あとは戸前系(若狭産)、千枚系、カミソリ砥の合砥を加えて出張用のチームを作ろうと思います。

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あと、研ぎ直した包丁ですが、日中に自然光で写さないと余り様になりませんが、以下の様な感じです。

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最初の通知メールによると当日イベントでは、最後の方で偉い方のスピーチの後、パフォーマンスとか書かれていましたが、持ち時間の長短や説明の内容・レベルとその有無、試し切りの可否や展示の有無も不明なままですので、大半の準備が無駄になるかも知れませんが出来る範囲で万全を期し、ウィーンでの仕事自体が無駄だったと思わずに済むようにしたいと思います。

 

本職用でしょうか、牛刀の御依頼

 

信州から牛刀の研ぎ依頼を頂きました。

芯材は銀紙3号の様です。其れを両側から挟んでいるのもステンレスですが、それ程軟らかい物でもありません。しっかりした手応えは有難いですが、製造段階の研磨痕が結構な深さなので、もし取り切ろうとすれば手強くもあります。

送られて来た時点で、既に刃先の厚みもかなり減らされており、鋭さも充分以上。但し刃毀れがそれなりと云ったものでした。しかし切れ・長切れ・抜けを両立した仕上げをとの御依頼でしたので、刃先2~3mmの調製幅(充分な切れは出ますが)を超えて研いで行きます。因みに、これにより1cm当たり100円でなく1cmあたり200円のコースとなります。

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刃先より少し中央寄りを触ると厚みの不均等、つまり元から切っ先まで自然に減少していない。刃元3~4cmと切っ先手前4~5cmが薄く、中央15cm余りが余分に厚い状態です。加えて、その中央部分も一様ではないので、平面の出た砥石を当てると山と谷(凹凸)が現れます。和包丁の切り刃で言われる所の笑窪状ですが、これらは刃幅の半分程度から下での事です。それより峰側では又、グラインドが変わっている様子にて、其処までの範囲で調整して行きます。

第一段階はシャプトンの1000番で、刃幅の3~4割刃先側の厚みが余分に残る部分を研ぎ落とすと同時に、刃毀れを小さくします。ここで前述した山や谷が出現するので、元から順に高低差が在るなりに整えます。刃元より、中央部最後部を減らすのは不可能なので、此処の対処は刃先2mmの範囲で厚みの変化の代わりに角度の変化で補います。(和包丁で行なう、切り刃による調整と刃先による調整の合わせ技)

中央部もなるべく切っ先に行くに従い厚みを低減していきますが刃幅中央から峰側は、より厚い状態が山脈状に残っており、其方との面構成が極端に違えば切断時の抵抗や切断面の乱れに繋がります。ですので、飽くまでも双方のバランスを見ながら程々に収めます。

第二段階は同じ手順をシャプトンの2000番で繰り返し、研ぎ目を細かくすると同時に刃先の欠けを取りきり、刃先角度を元40度・中30度・切っ先20度で鈍角から鋭角に、滑らかに変化を付けます。勿論、刃先2mm前後と更に上部が繋がる面はハマグリです。(あと切っ先が欠けていたので電着ダイヤと1000番・2000番で形成し直しています)

第三段階は此処までで触った全ての面(結局全面に渡りましたが)を耐水ペーパー400番・1000番・1500番・2000番・研磨剤(三段階)で研ぎ目を消して行きます。この際、各ペーパーで厚みの最終調整を意識しながら進めて行きます。

第四段階は、之までで作って来た刃先の再加工を黒蓮華で行ないます。より細かく、より滑らかに、より刃返りを出さない様に。

第五段階はカミソリ砥により最終仕上げとします。(大谷山戸前浅黄+卵色巣板紅葉の共名倉)

 

 

 

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信州のS様、以上が仕上げる工程の御説明になります。確認画像では申し分ないとOKを頂きましたが、返送後に使用し、性能でも御満足頂けましたら幸いです。この度は有難う御座いました。

 

今年の刃物祭りと業務連絡

 

今年も関の刃物祭り(10月11日)に行ってきました。と言っても、今回は特に購入予定の物も無く、砥石の出店も見当たらなかったので、何時もの鰻屋に寄って食事とお土産だけにしました。

アピセで日野浦さんと話し、今後の展開について報告したり、テレビで米国の少年との交流を見た事については、その後の予定を聞いたり。また鍛冶体験に来ても良いぞと言われた事は嬉しく、いつか再び切り出しを作りに行きたいと申し込んでおきました。

 

現地で、過去の勤務先の元同僚とも年に一度の再会を果たした訳ですが、相変わらず気を使って貰い、恒例のプレゼントを頂きました。仕事に関連するマスプロ製品としてのペティではなく、オリジナルです。アウトドアナイフショーでもチャレンジャー部門で展示している意欲的なグループの一人でもあり、下画像がその作品です。

 

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鋼材はVG10、焼き戻しは殆ど無しの堅焼きだそうで、ハンドルは上がアイアンウッド、下が黒檀だったと思います。そのハンドルにボルトを通す為、タングには戻しが掛かっているとの事。タング後端は軽くテーパーになっており、所謂テーパードフルタングです。

 

4~5本の中から選ばせてくれたので、身が厚い方から2本を採りました。その方が、刃付けによる差別化が顕著に現れるからです。因みに、ヘンケルのペティ(左)と比較すると、中央、右に行くに従って厚みが増しています(現物は峰の角が僅かに丸めてあるので、画像では控えめに写っていますが)。

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四~五年ほど前には、こんなナイフも頂きました。ひと目見て以来、母が気に入って放さないので、其方(親宅)に配備されたままになっている物です。

マイカルタハンドルにVG10の三層クラッドのブレードですが、主にパンやチーズを切る為、テーブル下の引き出し手前に位置を占めています。此方も、やや堅焼きですが中庸な研ぎ感(滑ったり返りの処理に悩む様な研ぎ難さは無い)と結構な長切れで、割り当ての仕事内容では滅多に研ぐ必要を感じません。上のペティは更に硬いのなら、一層の長切れが期待できます。

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あと、半月ほど前、ある大使館を通して研ぎ文化振興協会宛に研ぎの出来る人材の派遣をと連絡があったそうです。一応、私が対応する事になるだろうと聞いてはいましたが、本日振興協会からの転送ではありますが依頼のメールを自ら確認する事が出来ました。今後は相手方と直接情報の遣り取りをして現地でのイベントに備えます。

もし、研ぎの依頼をと御考えの方は、来月前半の海外出張期間と其れまでの準備期間中は、納期の面で御迷惑を御掛けする事になるかと思いますが何卒御理解の程、宜しくお願い致します。

 

(場合によっては、「六月七日の砥石の選別」の導入部分で軽く触れていた計画が本決まりとなり、其方も担当するとなれば春以降、更に長期の御迷惑を・・・となるかもですが、それは又いずれ。)

 

連休中に小鮎様と

 

連休中に、小鮎様と砥取家にてミーティング?をして来ました。旧交を温めると言うか、お土産交換会と言うか砥石の品評会でしょうか。稀少な銘柄や豪華なサイズなど、手持ちの殆どが実用一点張りの自分では適わない砥石たちを披露頂きました。

 

その中で、幾つか共名倉にと頂いた石があります。黄色が中山産、グレーが奥殿産(浅葱)、褐色が関東の合砥?クリームが伊予砥との事です。

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共名倉といえど、当然小さい刃物ならば普通に研げる訳で、実際前回の剃刀研ぎでは、その種類の中でほぼ手持ち中、一番小さいサイズの砥石たちを幾つか使いました。

今回頂いた砥石を試す前に、自分の普段使い用の本戸前の切れ端で砥いで見ます。

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次に千枚(これは最初、極めて形状が歪だったので、面を均しながら使える所を使っています)

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奥殿産

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中山産

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因みに、共名倉は絶対性能よりも馴染みを優先して八枚です

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試した結果、本戸前⇒千枚⇒中山・奥殿の順で刃金が鏡面に近づく様です。地金も同じ順で明るく仕上がりますが、中山と奥殿では刃金の違いが少ない割りには、奥殿の方が地金の明るさ(反射)はかなり上となりました。

小鮎様、砥石の知見を広めさせて頂き、又楽しい石たちを有難う御座いました。前回亀岡から連れ帰った、いきむらさきの共名倉もお役に立てば幸いです。

 

 

 

おまけは、今回の亀岡行きで購入できた新たな千枚です。今現在、最も鉄を吸わせていないので成るべく使用頻度を抑えて性状を維持したいと思っています(使用して行く内、水分・鉄分・塩素も?で硬くなり勝ち・弾力が無くなりパサつきが出る傾向が多い印象です)。

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研いだ包丁のビフォーアフターなどを載せていきます。