砥石選別その他

 

砥石館で上級者コースを受講して頂いたK様の御依頼に応えるべく、三種の砥石を選別し終えました。但し、一つは未だ保留としたい気持ちが有ります。

 

以下の画像が其の三つで、何れも硬目・細か目の種類です。

先ずは千枚で、特に平面の刃物に向いていると思われる物。サイズは14cm×8.5cm×3.5cmです。

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次に大谷山戸前浅葱。変形ですが質とサイズは充分かと。16.5cm×10cm(広い部分)×3.5cmです。

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最後に中山の浅葱と思われる物。水との御希望でしたが、やや白っぽいか?しかし裏は水っぽい。サイズは20.5cm×7.5cm×1.3cmで、やや薄いですね。

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しかし気になるのは、砥ぎ感と仕上がり。浅葱シリーズにしては少しく柔らかい印象。研ぎ上がりも、刃金は先ず先ず明るく仕上がるものの地金は曇りがち。

使用目的としては、もう一声硬さのレベルが欲しいのではと感じましたので、再度選別の交渉をと考えております。ですので、最終報告は次回に持ち越しとなります事を御許し願いたいと思います。

 

 

 

 

あと、先日は別のテレビのプロデューサー氏とミーティングを持つ事が出来、土橋さん・上野館長と私で取材を受けると言うか、撮影に臨む次第と成りそうです。対象は、砥取家の作業場と丸尾山の採掘現場はいつも通りですが、研ぎと砥石の違いや鋼材の違いによる味の変化まで言及する事に成りそうです。

その際、味の確認の為に野菜などをカットする場所として、天然砥石館が選定されると良いのですが、どうなるかは未定です。砥石館のコンセプトや認知度合い向上の面からは望ましいのですが。

包丁の違い・砥石の違いによる味の変化に付いての着眼や研究は、月山さんの「月の会」(現・日本包丁研ぎ協会)が先行して進めていた内容です。従って、其処に触れるのが筋なので、限られた時間内ですが捻じ込んでやるつもりでした。しかし月山さんからは柔軟に対応して良しとの返答を得ましたので、現場の流れを見て動こうと思います。

トマト・人参・胡瓜・パプリカ・カンパチ等の、切りの実演(予行演習)に使用した包丁達も研ぎ直しておきました。当日はミソノの牛刀(同一モデルの鋼・ステンレス)が主体となる予定。

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そして本日の夜は、北新地うの和さんの御主人に或る御願いをする為、土橋さんと館長と共に出掛けました。

 

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新しくなった店舗に伺うのは私は初めてです。

 

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砥石と原石が。

 

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普段は余り、料理の写真を撮ったりするタイプでは無いのですが一枚だけ。鰹の叩きは藁で炙られた物です。使用する藁に付いて、産地や日照時間などで性能や値段に違いが出るなど、勉強になります。

 

仕込みの最中から早々お邪魔し、その他にも様々尋ねまくって御迷惑をお掛けしましたが、この先の少し特殊な料理イベントへの御協力を快諾して頂きました。之までも一方ならぬ御助力を賜り、感謝しきれない所に重ねての御願いで恐縮です。

是非とも、その御厚情に恥じない体制で臨むべく、準備万端怠りなく進めて参りたいと思います。

 

 

 

 

最近の天然砥石館

 

最近の天然砥石館は、ある程度の興味を持ち、来館の機会を窺っていた層の方々の入りは落ち着いて来ていました。対して、二週間前に付近の道路脇に立てられた大き目の看板の効果か、ふらりと立ち寄る方々が増えて来ました。

そんな中、本日はイベント的に木材を自ら削ってマイ箸を作る機会を提供されている方々に活躍頂きました。各種大工道具類、作業台など自前で準備・設営をこなす御三方です。

 

トップバッターとなった、主婦の御二人の手元を画像に。

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そうこうして居ると、砥ぎ体験に御越しの御夫婦が其々、一本づつ研ぎ始められたので適宜アドバイスらしきコメントをしつつ、仕上がりのチェックを。

差し向かいで、仲睦まじい御様子。

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それとは別に、何かと御世話になっている刀剣研磨師の方が御子息と御来場。なんでも、夏休みの自由研究を兼ねて有る場所で手に入れた砥石を御持参との事。

上野館長が早速切ったり割ったりして吟味。其れなりの性能を持つ巣板らしいとの見解を得ました。私も同様の感想を持ちましたが、産する山とは認識されていない場所でも、砥石型珪質頁岩は出るのだなと思い知らされました。

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途中から最後の方まで賑わしてくれたのは、近隣住民のお孫さんと見られるトリオ。小学校低学年と、もっと低学年。そして入学前あたりとの事。

上に行くほど暴れん坊、いや元気一杯なのは個性なのか成長過程の相場なのか?それでも、砥石の面付け作業は各自それなりに楽しい様子です。

中でも一番下の子は一心不乱です。丁度の高さが無かったからかも知れませんが、椅子にも座らず没頭していました。他二人は合間に走ったり騒いだり。

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才能の片鱗を感じさせます

 

興味深かったのは、一人を除いて加工した当の砥石には余り興味が無く、持って帰ろうとしない所です。その一人も、最後に成ってやっと持ち帰ると。途中経過そのものが面白かったのでしょうか。

自分の子供の頃と比較しての違いは、時代によるのか男女差か、はたまた地域性か。周囲に豊かな自然が身近にあれば、価値の軽重・興味の有無・使い方など知識の多寡にも因るでしょうが、所謂都会の子供とは見ている物や受け取り方は一様では無いのでしょう。

ともあれ、本日は最近に無く濃い一日を過ごさせて頂きました。箸作り体験で御足労願った御三方を始め、来場下さった皆さんに感謝致します。有難う御座いました。此の後も砥石館をお楽しみの場として活用頂けましたら幸いです。

 

 

 

あ、以前に記載しました、砥取家その他を取材していたクルーに研ぎと切りの実演をした事に関連する情報です。8月18日放送の中で一瞬、私の砥いでいる所か切っている所かの手元が映るかもとの事。

使用したのは自分が半分程の工程を担当して作って来た菜切りです。もしそうなれば、新潟の日野浦刃物工房で迷惑を掛けたり世話になったりした埋め合わせの一部には成るかと喜んでいます。

丁寧に作られた包丁の価値や、入念に砥ぎ上げた切れの違いに付いて、日頃から説明時には使っていますのでクルーに披露した際には其れだけでも、義理を果たせたかと思っていましたが。

映像を使われるとしても、手付きや包丁のみらしいので願い通りです。技術や刃物が重要であり、私個人に付いての情報は大して意味を成さないと考えています。と言うか、そもそも恥ずかしいので丁度その位が望ましいです。

 

 

 

 

砥石館での出会いから御依頼

 

少し前の週末、天然砥石館に気になる包丁を御持ちの方が来られました。最初は「いやいや、そんな偶々では?」と思いましたが(形状は把握していましたが実際のサイズも知らないし)、さりげない風を装って課題の包丁みたいですね。と水を向けました。

答えは当たりで、某所での某企画に用意された物。其処から色々と研ぎや包丁に付いての意見を交換したりしました。その流れから、手持ちの包丁を研いでみてくれないかとの事で、後日御送り頂きました。御希望の仕上がりは、切れと永切れの両立です。

 

 

 

下画像の包丁が其れで、コスミックスチール製の少々厄介な砥ぎ感だと御聞きしました。届いた時には既に、刃先の厚み取りは充分以上で鋭い切れ味。

しかし刃先までの砥ぎ下ろされた部分の厚みの取れ方は不均等と言うか「抜け」や「走り」に貢献し難い部分も。特に刃元周辺の、顎に近付くほど薄くなっているのは(目的次第ですが)改善したい所です。

過去の研ぎの都合どうこう、或いは製造段階の精度、要因は様々考えられますが何れにしても、目標が明確であれば其れに適した形状に近付けて行くに如くは無し。

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全体画像

 

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刃部のアップ

 

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刃先の拡大画像

 

 

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人造の3000番で刃先と周辺の大まかな研ぎ⇒小割りした同程度の人造で形状を均し研ぎ⇒耐水ペーパーで軽く磨き。

 

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その後、天然砥石(白巣板・黒蓮華)で仕上げ研ぎ。そして中山の並砥で最終仕上げ。

 

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その刃先拡大画像ですが、目視では問題無くも切れのテストでは若干の不満が。永切れを企図しての選択、且つ金属組織に手頃だとの判断だったのですが・・・。

 

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次に相性が良さそうに感じた若狭の戸前ですが、此れは結構良かった様です。

 

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当然でしょうが拡大画像でも問題無しです。

 

 

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研ぎ上がりの画像です。

 

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同じく刃部のアップ。磨きに関しては道具も一家言も御持ちの方の包丁ですから、殊更には追い込んでいません。

逆に、薄く仕立てられている状態からのスタートでしたので、最低限の刃先の調整レベルに留めようとしたのに厚み調整にも手を付けてしまいました。薄いだけに、削り代の問題も有って完成形に対して6割前後迄の追い込みですが。

これ等の「厚み調整・刃先に掛けての緩いハマグリ」に加えて、いつもの(小刃の範囲で)刃先に行くほどキツクなって行くハマグリにより、「走り・抜け・通り(押し付けるだけの切れ)・永切れ」の面で違いが出ていると思います。

純粋な初期の食い込みは絶対的な薄さに依存する所が大ですが、上記の項目には対応し切れないと考えますので、御自身での研ぎの際に参考にして頂ければと思います。

 

 

 

二つ隣の区に御住まいのM様、メールにて御知らせと御伺いをしましたが如何でしょうか。先に御意向も聞かぬままの掲載としてしまいましたが、此方にての確認の方が伝わり易いかもと。

現状の仕上がりで問題無しとの了承を頂けましたら、直ちに御返送致します。ブログ掲載に関しての可否に付きましても御意向に沿います。

 

コメント欄にて御連絡頂きましたので、念の為にメール内容を再度送信の上、クロネコからの着払いに成りますが御返送致します。そして御待ちしている間にふと、試し切り等してしまい更に好みを追求する為に若狭戸前の後に戸前浅葱も使ってみました。

自分的には、より良い状態(つまり私好み)に成ったと喜んでおりますが、M様におかれましても好ましい状態でありましたら幸甚に存じます。

 

 

 

 

剃刀の研ぎ直しと、御知らせの直し

 

天然砥石館から持ち帰った剃刀ですが、大まかに錆を落として研ぎ直しをしました。

 

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この状態から、耐水ペーパー・布ペーパー?・ラッピングフィルムで状態を見つつ錆取り

 

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シャプトンの100番で裏押しを強めに。その後は会津砥で表の荒研ぎ

 

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白巣板各種で中研ぎ

 

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卵色巣板と本戸前で面精度向上と仕上げ研ぎ

 

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最終仕上げは大谷山のカミソリ砥

 

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以前の研ぎ上がりに比べて、全体的には向上。細かく観察すると、斑の取り切れていない部分も。しかし恐らく、今後も手入れが必要に成りそうですので錆びの痕跡同様、完全には追い込まない事にしました。

取り敢えず痕跡として小さな錆は見え難く、大きな錆は半減以下にまで減耗せしめ得たので、次回以降の追い込みと更なる砥ぎ肌の向上を目指したいと思います。しかし、余り短期間で次の機会が訪れるのは有難く無いですが。

 

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あと、先日記載しました中屋平治作の包丁に付いてです。その時は、今後の入荷予定は無しとしましたが(卸価格では仕入れられない・鋼材の在庫が無くなり次第同一モデル中止らしいので)、知人から意見を頂きました。

もしも希望が有れば再度仕入れて、むらかみが砥いで販売すれば良いのでは?少なくとも、その可能性は残しておくべきと。成程と思いましたので、御要望が有りましたら承る事に致します。

その際、当方以外から御買い上げの包丁に研ぎを施す場合と違って、(左右に切り刃が有る)三徳包丁としては御得な研ぎ料金と致します。具体的には購入時の初回のみ、本刃付け(実用研ぎレベル)料金は三徳(六寸)が6000円。イカ割き(五寸)は片刃なので2500円です。

当方から平治作包丁を購入の時には、それぞれの研ぎ料金が本体価格に上乗せになると言う訳です。本体のみの購入であれば、当方からである必要は無いので、素直に製作元からの購入をお奨めします。

 

 

 

 

砥石選別その他

 

土曜に続いて昨日の日曜は、いつもの如く天然砥石館に詰めていたのですが、帰りに砥取家に寄って来ました。月山さんからの白巣板選別の強い要望を受けて、次男氏に少々無理を言っての偵察です。

実は一度、在庫から見繕って貰った物に適う石が見当たらず、次回制作時に気に掛けておいて下さいとの流れに成っていました。結果、在庫と取り置きの中から四つの候補に絞って月山さんへの発送を頼みました。

そうこうして居ると、テレビ取材を受けていた御主人が御帰還。クルーの方々も降りてこられて暫しの後、彼奴(私ですね)は誰か?の流れに。何時もの「大阪で細々と研ぎ屋をしています」の返事で華麗にスルーを狙うも興味を持たれて研ぎ・切りの実演と説明をしてきました。

自分の姿は勿論、包丁や研ぎシーンも流れはしないと思いますが、少しでも此の世界への御理解が深まればと思います。以前、〇の壷の取材に同席しましたが、制作会社の女性デイレクターには私の説明や実演が響かなかった様子でした。恐らく台本と脚本の流れに関わらない傍流の事象には用が無かったのでしょう。

今回は現場の女性ディレクターやカメラマン氏にも、聊か以上に興味を持ち楽しんで頂けた様です。切られたトマトの味の違いまで体感して納得されたとの事。民放関係故かチームのカラーなのか、接触した対象に貪欲と言うかアグレッシブな取材姿勢で、楽し気な陽気さをも感じました。以前のココイロにも通じますね。でも、説明は訳が分からんと。「後は検索して調べて」で逃げました。

 

 

 

最後に自分用の砥石を。選別途中に目を付けていた小さな二つです。片方は、次男氏が砥いでいた包丁の最終仕上げを担当した対価に頂戴し、もう一方は(小さくて変形なので)お買い得価格にて購入。

 

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敷内曇りですが、特に砥粒の目が微細な物。泥の出方も程々で、邪魔にならずに適度な滑り方を提供してくれます。大変小さいですが、使い処を心得ていれば活躍させられます。

 

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上画像の物よりは大きいですが、此方も小振り。しかし丸尾山産の白巣板としては、やや変わった質で、すべすべとさらさらの中間。細かくて目が立っている砥粒からは、地金よりも刃金向きな性質を感じますが、結構泥が多く柔らか目なので対応範囲が広いです。

 

 

 

天然砥石館で展示していた道中剃刀?に錆が出て来て、気になっていました。上記の二つの砥石を手に入れた直接の理由と言う訳では無いですが、早速にも活躍の場が与えられた格好ですね。

 

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刃線上に点々と育ちつつある錆

 

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峰の端に広がってしまった錆

 

再び、柔らかくて薄い刃物の平面研ぎに苦労しそうですね。余り光ってもくれないし、傷も消し難い難敵の攻略ですが、追加砥石の余勢を駆って前回以上に仕上がればと思います。

 

 

 

あと、砥石館での上級者コース受講一番目のK様の御依頼、千枚・大谷山・中山浅葱ですが、千枚は手持ちの・中山は水浅葱よりは白浅葱に近いかも、は確実ですが大谷山は少々時間を要する確率が高いかも知れません。今暫し、お待たせしてしまいますが宜しくお願い致します。

 

 

 

 

刃先の形状(追記として)

 

之まで、ハマグリの説明としては少し、観念的に過ぎる部分も在ったかも知れません。具体例として画像を上げるのに手頃な物を購入したので其れを絡めて書いてみます。

 

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アトマの厚板バージョンその他を買い求めようと、月山さんへ行った折りに購入。以前から興味があった白柿ですが、砥石の試し研ぎ用の一つ(小さくて刃線が短い)として目を付けていた物です。

 

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本来は木材に罫書き線を入れる道具という事ですが、試し研ぎと汎用(軽作業)・観賞用?にしようかと。ですので、完全平面にはしないかもですし、その方が使い易いでしょう。そもそも、平面の試し用には切り出しが有る訳で。

 

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なので、かなり緩いハマグリの状態で砥いであります。此れが私が良く記載している、切り刃の緩いハマグリ(~極緩いハマグリ)です。その反対はキツイ(角度変化の大きい)ハマグリ。

当然、刃先は糸引き・段刃・刃先ハマグリの何れも付いていません。一番ベタ(平面)に近い形状ですね。鋼部分が僅かにふっくらしているのですが、分かり難いかも知れません。

 

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因みに、此方はいつも試し研ぎに使っている(例の鍛接不良の有る)切り出しの刃先。その物ズバリのベタです。上画像よりは分かり易いかと。

 

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此方は、更に前に試し用としていた両刃の小刀。ベタに研いだ切り刃の先だけ、糸引き程度の幅でハマグリに。

 

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最後は、普段使いの古い鋼のペティ。分かり難いですが、側面の殆どを「極緩いハマグリ」に砥いだ上で刃先(へ行くほど鈍角がキツイ)ハマグリにしてあります。切れ味試験の結果からは現状、此れが性能を最大限生かす研ぎだと判断しています。

緩いハマグリの先に、急激にキツクなって行くハマグリを加える事によって、刃先の耐衝撃・耐摩耗性の向上に加え、対象から受ける抵抗も(張り付かずに)受け流せます。其れが所謂、「走り」や「抜け」への貢献にも繋がります。

 

 

 

以前から、「刃先が一番鋭角な」切れ優先のハマグリと表現していたのは一番目の画像の状態です。しかし、理屈の上では少々変な表現でした。

正確には「最も厚みが少ない」か「最も曲面が緩く平面に近い」でしょうか。この様に個別の画像を指して説明出来ない時に、イメージとして伝わり易いかと考えての事でした。

主に包丁を研いではいますが、上記の内容を織り込んで切り刃や刃先の形状を研ぎ出しています。勿論、刃体全体に掛けての厚み抜きや、各要素を複合的に組み合わせてもいますが。

其々の刃物の形状や仕上がり(鋼材・熱処理)、使い方を鑑みて適切に研ぎ分けて行ければと考えていますので、余り極端な仕上げ(仕様)を御希望されても叶えられない場合も有ります。実用性無視とかなら可能かも知れませんが、基本的に実用研ぎしか出来ない不器用者ですので宜しく御願い致します。

 

 

 

 

売り切れの御知らせ

 

一本のみ残っていました中屋平治作の三徳ですが此の度、東京のM様の御注文分で売り切れとなりました。

イカ割きの方は以前に完売しており、同じく仕入れの予定は有りませんので、平治作は二種類共に当方での販売は終了となりました。御買い上げ頂いた皆様には感謝申し上げます。

卸では買えないものの、気に入った包丁を拘りの有る方へ御紹介といった気持ちで販売していた二種類でした。恐らくは御使用くださった方々には御満足頂けたものと思います。今回の三徳を含め、可愛がりつつ活躍させて頂けましたら幸いです。

 

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仕入れから少々、期間が有りましたので地金にくすみが有ります。初期に簡易的な研ぎは施していたので錆びや欠けは無し。

 

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巣板で刃金・八枚と千枚で地金に軽くですが当ててみました。巣板でも結構刃金は光って来ますが、画像では伝わり難いですね。

 

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本日、発送致しますので少々、お待ち頂きたいと思います。此の度も有難う御座いました。

 

 

 

 

切れの標準仕様

 

少し前のハマグリに付いての記載ですが、もっと前からの背景と言うか切っ掛けに成った事柄が有ります。研ぎ進める上での砥石の種類・性質に基づく組み合わせや、そのバラエティとしての複数のルートは標準的なものが決まっていました。勿論、刃物の形状や素材に対応してです。

そして、刃体の形状に対応して切り刃・小刃・糸引き、更に其れらは平面かハマグリか複合か。この辺りも最適解は初期状態と目的により変動するものの、大まかには角度・厚み・その変化の付け方の相場みたいな基準も確立に近付いている気がします。

包丁を主体とした一般的なナイフ類については、程度には絞るべきかも知れませんが。飽くまでも初期の形状から大きく外れない範囲で性能を引き出す方向。

上記の手順に則って、形状を整えつつ切り刃・小刃の調整を済ませれば、後は返りを取るだけです。ですが、此処まで仕上がった刃体の御蔭で、返り取りの結果が多少バラついた(ミクロの世界的なレベル)としても、誤差の範囲と言える影響程度です。例えれば、髪の毛が真横から押し付けるだけで上半分が落ちるか、部分的に繋がっているか。

特に、紙一枚~数枚を切るテストよりも、数十枚を切る性能を重視して来た事も有り、十分以上に切れていれば問題無しとしていました。拡大画像でも(200倍ですが)明らかな不備は見えない仕上がりに纏めては来ました。

しかし何時からか、返り取りをしていて、左右(表裏)の感触の僅かな違いを気持ち悪く感じる意識が強くなり、其れを打ち消す試みを繰り返す様に。紆余曲折は省きますが、結果的に返り取りの成否は、返り取りをする前に決していました。つまり、条件が整っていない返りを出した時点で、取り方を相当工夫しても好結果に結び付き難い。

必要な条件とは、出来るだけ目の細かい返りを殆ど有り得ない位に出す(出ないのが理想ですが困難)訳ですが、此の時に左右(表裏)均等に出すのが肝要です。過去を振り返れば、此れら各項目の一つ・或いは二つに気配りしていた記憶は有るのですが、三つ同時に且つ完全を目指していたか、自信が有りません。

後年は恐らく、二つ目までを重視して何度かに一度は返りの左右の不均等を、やや強引に落としに行っていた気がしますし、其れが結果的に誤差レベルでは有れど(理論上)最高の仕上がりとの差を生んでいた気がします。

サイズの大きな返りを取る・目が大きいままの返りを取る。この二つの悪影響が明白であれば、左右差(量・角度)を有する返りも又有害で当たり前でした。刃先が荒れる要件を潰して行くに如くは無く、今後はより返り取りの操作中の感覚に留意すべきと得心しました。

返り取りが「返りの状態チェック」を兼ねる訳で、手間も費用も増えないので同様のお悩みを抱えて来た諸兄にも、お勧めしたく記載してみました。チェックで合格しなかったら、強引に落としに行かず最終仕上げのやり直しへ。やはり、何かが心に引っかかったら検証して対処するのを徹底するべきですね。中々、物事全てにとは参りませんが。

 

 

 

※ 紆余曲折とは、左右の砥ぐ回数を同数に。其の上、仕上げ前には徐々に回数を減らす。圧力を均等に心掛ける。等、従来やって来た方法に加え、返り取りの素材各種や新たな方式を試行錯誤したけれど、変に出た物を取る努力は出さない努力に敵わない事が判明。出さなければ、返り取りの素材や状態への依存度も低くて成功率は高い。硬さと粘りのバランス的に厳しい素材(形状保持に不利)への攻撃性も低い結果と成りました。と云う内容です。

 

 

 

 

甲伏せの剣鉈

 

本焼きの御依頼が続いていましたが、更に特殊な(表面の殆どが鋼)甲伏せの刃物が届きました。通常、それ程には本腰を入れていないものの、此方も刃紋が付き物で。因みに合わせの方では鍛接線とか刃境の名称になります。飽くまでも鋼の表面に現れる硬度差や組織の違いから来る景色

割り込みが軟鉄で鋼鉄を包んでいるとすれば、甲伏せは鋼鉄で軟鉄を包んでいる構造。四方詰めとか三枚と並ぶ、刀の作り方の一つですね。四国で作られており、知ってはいましたし一度は砥いでみたいとも思っていましたが、この流れで来るとは少々驚きました。

 

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到着時には、持ち主により欠けと傷を取る目的で少々、砥がれた状態でした。特に刃線の乱れが気になったとかで、刃引きの状態。刃紋もハッキリせず。

 

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刃元から切っ先へ向けて厚みをテーパー状に減らします。特に切っ先カーブ前の厚み。切り刃も左右差があり、左を減らして右に合わせます。これらを人造の400番、1000番で整え、耐水ペーパーで全体の磨き。

 

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その後、人造から天然の小割りした砥石で微調整と磨き。

 

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地金は各種巣板で、刃金は巣板からの千枚仕上げ。最後に刃先を中山の卵色で調整です。

 

 

 

仕上がり

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刃先拡大画像

 

 

今回、御依頼時点での御希望は刃先を整え、大きな傷を消し、出来れば刃紋もと。しかし元来、手持ちの砥石達は地砥や刃砥の様に、刃紋出しに適する性質を重視した物では在りません。そして自分の好みにも成りますが、刀で定石とされる「刃は白く、地は黒く」の逆を行く事。

つまり、切れを目的とした天然砥石で普通に刃物を砥ぐと、刃金は艶々・黒々、地金は白・灰色に成りますが、それでこそ刃金の組織の状態を確認し、その刃物の個性を見極められるとの考えです。そして美しさでも軍配が上がると思っています。

上記の内容を説明の上で御理解頂き作業に当たり、相性の良かった白巣板・黒蓮華と千枚との対比で纏まったのですが、刃先の切れに少々不満。砥ぎ目を揃える観点から、切り刃の刃金部分と同じ千枚仕上げでと考えていたのですが、数種をテストして中山の卵色仕上げに決定。

その為、画像では砥ぎ目が均一でない様子から角度の急変と見えるかも知れませんが、拡大の画像で見て取れる様になだらかに繋がっています。表面上の纏りよりも、切れと永切れを取ったのですが、そもそも私の研ぎは実用最優先ですので其れに従いました。差し込みとか拭いはとてもとても。研ぎっぱなしが好きで。

刃紋のコントラストは薄目では有りますが、尺の甲伏せ剣鉈として、様になる外観に仕上がったのでは無いでしょうか。刀剣研磨に準じたり、新品をより完璧な精度に、とかの完全観賞用には御応え出来かねますので、この辺りで御容赦願いたいと思います。

 

 

香川県のK様、此の度は御依頼を頂きまして有難う御座いました。こんな仕様に成りましたが、御満足頂けましたら幸いです。

 

 

 

 

砥石を頂きました

 

砥取家の次男氏から、砥石を頂きました。去年と同様、誕生日にとの事ですが今回はちょっと早過ぎですね。でも、有難く活用させて頂きます。

 

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此れですが、八枚やら巣板際大上やら、種類としてははっきりしない雰囲気での試し研ぎを勧められ、その流れで私の下へ。

 

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サラサラ系の八枚と違い、ツルツル寄りですので千枚的な光り気味の仕上がり。

 

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角度を変えた画像でも其れが分かります。

 

 

 

後で思い至ったのは、数年前に購入した恐らく八の尾の八枚だった筈の此方。

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仕上がりが可成り近い感じです。多分、同系統の石ではと思います。

 

 

他にも親戚筋として

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此れも更に前に購入した物。下画像の左端は裏?の表情。元は其方が表とされていましたが、裏の面を出した折りに試した研ぎの結果が良く、逆転して使っています。

 

 

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近しい性質の砥石三種です。八の尾には、もう一つサンプルとして頂いた巣板際大上(水色と云うか浅葱色)が有ります。この山も、様々な種類の石が採れますが巣板際大上の予備をもう一つ、購入できる機会を心待ちにしています。

 

 

 

 

近々、月山さんから依頼の巣板選別の開始予定の所へ、講習受講者のK様から浅葱二種の御依頼が有りました。

天然砥石の魅力にハマったとの事で、御同慶の至りです。上記と併せて好適な質とサイズで狙いたいと思います。

かずかずけん様からの分は、手持ちのデッドストックから選別完了していますので遠からず月山さんの所へ出かける際にでも預けて来るつもりです。御確かめ下さい。

 

 

 

 

研いだ包丁のビフォーアフターなどを載せていきます。