カテゴリー別アーカイブ: 依頼の刃物

京都から日本剃刀の御依頼

 

京都のN様から、日本剃刀の研ぎ依頼を頂きました。ほぼ梳きが無く成って居る状態故にか、今一つ?切れが出ないとの事で。

 

研ぎ前の状態、殆どベタ研ぎの状態ですね。理屈の上では、裏と表から平面で研ぎ、必要な刃先角度に成って居れば実用に足るのでしょうが、現実的には難易度が上がるとは思います。

KIMG2007

 

KIMG2009

 

KIMG2010

此方は対照的に、万全に近い状態でしたが・・・先端に近い部分は角度が不安定に成って居ました。

 

 

 

リューター・ダイヤモンドシート・荒い布ペーパー・細かい布ペーパーで梳き直し、人造の1000番三種で。先寄りの刃先が幾分、角度が不安定・元寄りの刃先が他の部分に比べて、若干ですが直線に揃っていない様子も見受けられました。

気に成る箇所が無くなる迄、砥石を交代しつつ研いで居ると又、梳きが狭く成って来ましたので、再度の梳き直しから3000番。

KIMG2067

 

KIMG2068

 

KIMG2069

 

KIMG2070

 

 

天然砥石に移行し、奥殿の天井巣板二種で。

KIMG2071

 

中山の巣板、中硬・やや硬口・硬口で順に研ぎます。

KIMG2074

 

最終仕上げは、中山の水浅葱。奥殿の浅葱と研ぎ比べつつ、より相性の良かった方を選択しました。

KIMG2080

 

 

 

研ぎ上がりです。

KIMG2083

 

KIMG2085

 

KIMG2089

 

刃先拡大画像

Still_2022-04-12_001340_60.0X_N0004

 

元寄りの部分ですが、僅かに欠けの痕跡が見えます。この後、更に研ぎ込んで見えない程度には仕上がりました。此処に至るまでにも、相当に研ぎ込んで有ったのですが。その所為で、やや砥面に接する面積が増えてしまいました。

中仕上げの段階で、幾ら研いでも無く成らない欠けが数個、出たり消えたりしました。恐らくは、表・裏の角度と面の精度を上げて行く途中、最も誤差のしわ寄せが出た部分だったのかなと。

Still_2022-04-12_001157_60.0X_N0003

 

 

 

今回の岩崎の玉鋼ですが、過去にも触れた事の有る同等品を含めて、全ての刃物の中で一・二を争う程の切れが出ました。硬さ・粘りのバランスも良く、何より組織の細かさを感じました。

N様におかれては(恐らくは研ぎ易さも改善されている筈の)此の切れの良い剃刀を、大事にしつつも存分に活躍させて頂けましたら幸いです。此の度は研ぎの御依頼、有り難う御座いました。

 

 

 

 

 

静岡のM様からの御依頼、司作副鉈

 

M様から司作の副え鉈の研ぎ依頼を頂きました。鍛え地の磨きでしたが、形状的には新品状態ながら幾分は表面に傷や錆が有り、何方かと言えば外観の仕上がり重視でとの事でした。

とは言え、使用に於いての性能向上を目指して形状改善、を旨とする自分の研ぎ方ですので、先ずは切り刃の厚みを正確なテーパー状に・鎬鋤から刃先へ向けて鋭角化の緩いハマグリ・刃先手前から最先端へ向けて鈍角化のハマグリに整えつつ、錆も落として行きました。

 

 

研ぎ前の状態

KIMG1963

 

全体的には、不備も無さそうに見えますが。

KIMG1964

 

刃先手前に擦過傷と言うか、木材でも切った後の灰汁の痕跡にも見えます。あと、平も所々に傷が。

KIMG1965

 

左側面と峰に錆が少々・・・ですが、積層された地金の小さな陥凹を中心に軽い腐食と言った風情。

KIMG1966

 

 

 

人造の1000番、研磨力の強い物から。いつも通り?左側面はフラット気味・右側面はふっくらですので、右のカーブ近辺の厚みを低減。

KIMG1969

KIMG1970

 

同じく1000番ですが、傷の浅い物。より、面の連なりと傷消しを重視して進めます。

KIMG1972

KIMG1973

 

更に、研ぎ目が細かい物で刃金部分を重点的に。此処で基本的な刃先へ向けた角度調整を終えます。最先端は、天然に入ってからに成ります。

KIMG1974

KIMG1975

 

平に関しては、特に御要望も無かったと思いますが・・・部分的に傷が気に成るのと、最終的な切り刃の研ぎ肌との違いが目立つ事を考慮し、おまけで簡易的ながら磨いて置く事に。

日野浦さんの積層には、ついつい力が入ってしまう傾向は自覚しています(笑)。先ずは人造1000番の小割りから開始です。

KIMG1976

 

峰の錆を除去。

KIMG1978

 

 

 

丸尾山の中硬の巣板で切り刃の傷を浅く。平も同じく、奥殿産巣板の小割りで。

KIMG1979

KIMG1980

 

 

丸尾山の八枚の小割りで、平と切り刃を均します。

KIMG1983

KIMG1984

 

 

切り刃には天然の仕上げとして、中山の巣板各種。平は更に、丸尾山の千枚の小割り二種。中山の巣板でも同系統と言えど、4~5個も順に当てて行けば、僅かな硬さ・細かさの違い以上に弾力の多寡による反応の違いが相性の差となって現れますね。

KIMG1982

 

刃金部分の全体は、最終仕上げとして中山の水浅葱、二種で。

KIMG1985

KIMG1986

 

 

 

研ぎ上がり、全体画像です。今回の個体は最近の(刃金は白紙の統廃合後・極軟鋼は近年仕様)モデルでは無く、以前の物の様でしたので、10年ほど前の自分の手持ちに合わせて揃えた砥石・小割りが存分に効果を発揮してくれました。

まあ、極軟鋼の単体地金よりは、錬鉄との積層である鍛え地・雲竜の方が差異は小さいので、最近のモデルでも困る程では無かったとは思いますが。

KIMG1999

 

刃部のアップ

KIMG1992

 

刃先拡大画像

Still_2022-03-03_223538_60.0X_N0003

 

左側面です。やはり此方側は刃金の出方が多いですね。

KIMG1995

 

 

 

静岡のM様には、此の度は研ぎの御依頼を頂きまして、有難う御座いました。本日、御返送を完了しましたので、到着後に何か問題など有りましたら御知らせ頂きたいと思います。

或る程度以上の外観には仕上がっていると思われますが、形状・面の連なりを崩してまで小傷を消す方向には成って居ませんので御理解を頂けましたら幸いです。観賞用としては完璧では無いかも知れませんが、もしも何かの機会に御使い頂ければ形状の意味を実感して頂ける事と考えて居ります。内心、そんな機会が巡って来てくれる事を期待する気持ちも抱きつつの御返送でした。

 

 

 

 

 

T様からの三本目、重延の牛刀

 

T様からの三本目は、刃渡りが尺一を超える牛刀でした。此方は、入手されるまでに何年も掛けて店舗に通ったそうで。希少な大物だけあって?手に入れるまで簡単には行かなかった様ですね。

研ぎに関する御希望としては、左右の切り刃を揃えて微ハマグリに。地金は曇り仕上げとし、刃とのコントラストを。顎(マチと言うべきでしょうか)と峰の磨き、と言ったところ。

 

研ぎ前の状態、全体画像ですが右の切り刃は、かなり厚みが抜かれており、ややベタ過ぎに近い印象。所々に研削痕と云うか大き目の引け傷も見られます。右側に限りませんが余り深い物は、削りシロに乏しい部分では取り切れない箇所も出て来そうだなと。

KIMG1876

 

刃部のアップ。刃先の状態は、厚み・角度共に充分、良さそうですね。

KIMG1878

 

 

顎の辺りは、荒目の研削痕が。

KIMG1877

 

 

峰は、見えにくいですが幾本かの筋が。ですが殆どは、三枚打ち故の鍛接線に由来する物でしょう。

KIMG1879

 

 

左側面。左の切り刃は、右に比べて肉厚と言っても良く、刃体の断面は(嘗て見られたと言う)両刃の鉈の半諸、つまり6:4とかの感じでした。従って左利きの方なら、より使い易かったかなと(笑)。

KIMG1880

 

 

 

磨きの作業からです。ダイヤモンド鑢と(此処で鑢が其れて、平に一本傷を増やしてしまいました。申し訳無いですが、手を付けない場所指定故、其のままに。)ダイヤモンドシートで粗削り。

後は耐水ペーパーの数種で目を細かくし、布ペーパーの6000番・8000番で仕上げました。

KIMG1884

KIMG1885_01_BURST1001885_COVER

KIMG1887

 

 

 

峰の処理も、同様です。

KIMG1888

 

 

 

研磨力と、クッション性のバランスが良い人造の小割り1000番をメインに、峰から刃先へ向けて・刃元から切っ先へ向けてテーパーに。右は厚みに余裕が無いので、刃元の厚みが減らし辛いですし、初期からの傷の位置によっては余り浅くもし辛いですね。

左側面は逆に、右と釣り合う程度に減らしつつ、同形状に揃えて行きます。

KIMG1889

KIMG1890

 

 

 

人造の小割り、手持ちで最も傷が浅く柔らかい1000番、次に3000番で、より傷を浅く。

KIMG1891

KIMG1892

 

 

 

最後は天然の小割り、奥殿の天井巣板各種で傷を浅く・研ぎ目の均一化を狙って仕上げます。

KIMG1893

KIMG1895

 

 

 

刃先の研ぎですが、傷の浅いキングハイパー硬軟で注意深く。地金もそうですが、刃金も少し傷が入り易く取れ難い質の様で。

KIMG1897

KIMG1899

 

同じ1000番ですが、より傷の浅い砥石で人造での仕上げとします。

KIMG1901

KIMG1903

 

 

 

天然に入り、小割りでも相性が良かった奥殿の天井巣板各種。

KIMG1904

KIMG1905

 

最終仕上げは、中山の巣板各種で。画像の物は中硬ですが、もう少し硬い物まで実際は使いました。

KIMG1906

KIMG1908

 

 

 

研ぎ上がりです。画像では見えにくいですが、初期の引け傷は或る程度までしか浅く成らなかった物も残存しています。

ただ、外観上の綺麗さを期待して下さる向きも有る物の、私自身は刃体の形状と刃先の処理で性能を引き出すのが本分ですので、美観的には御期待に応えられる範囲に限りが有ると心得ています。一応、納得して頂いては居ても、心苦しい気持ちはどうしても出て来ます。

今回は、やや柔らか目かつ、組織に密粗が有ると思しい軟鉄の幅広切り刃を巣板で仕上げる際も、万全とは行かず難しい相手でした。しかし、刃金も硬さより粘り優先ながら切れに優れる質でしたし、刃体の形状も抵抗が減る状態に整ったと思いますので、実用面では過不足無く御使用頂けるのではと。

KIMG1911

KIMG1912

KIMG1913

KIMG1914

 

KIMG1915

 

Still_2022-02-09_221019_60.0X_N0006

 

 

 

T様には、何時も御用命を頂きまして有り難う御座います。過去の名品や、今と成っては貴重な製品も含めて、様々な素材や仕立ての刃物と触れ合え、勉強させても頂ける事を感謝して居ります。

 

 

 

 

 

T様からの御依頼、二本目

 

一本目の切り出し、も作に続いて二本目は興光の作です。地金は同じく和鉄っぽい物ですが、作風が立体的かつ複雑な面や線で構成されて居るのは、包丁や篆刻刀などと共通だなと感じます。

 

研ぎ前の状態です。T様が御自身で、かなり研ぎ込んで来られただけあり、切り刃の状態は凹凸が少ないですね。しかし、切っ先周辺(峰から刃線への繋がり)や裏の押されている部分は、独特な造形と言いますか。押された部分が、刃先の真裏の刃元側まで未だ届いて居ないのは切れに影響しますし、切っ先の真裏は反って居ます。

KIMG17983.

KIMG1799

KIMG1800

 

 

人造の320番から。

KIMG1801

KIMG1802

 

続いて1000番。

KIMG1803

KIMG1804

 

同じく1000番。

KIMG1805

KIMG1806

 

更に1000番。

KIMG1807

KIMG1808

 

駄目押しで1000番と3000番。1000番を多用しているのは、硬さ(平面維持)・研磨力・傷の深さ・研ぎ肌の違い(仕上がりの確認)を利用して、合目的的に研ぎ進める為です。

KIMG1809

 

 

 

天然は、伊予砥から。

KIMG1811

KIMG1812

 

丸尾山の巣板の各種。

KIMG1813

KIMG1815

 

奥殿の天井巣板各種。やっと裏押し部分が刃元迄、届きました。

KIMG1820

KIMG1821

 

中山の巣板の各種。

KIMG1823

KIMG1825

 

巣板中硬と天井巣板カラス硬口。

KIMG1826

KIMG1827

 

水浅葱で鏡面に。

KIMG1834

 

 

地金部分を再度、天井巣板カラスで。此処で、一応の完了と考えていたのですが・・・T様から、も作の切っ先まで残さず追い込んで研いで欲しいとの御希望が。

KIMG1838

 

 

 

興光の刃先も、一部に極僅かな角度違いが残存していましたので、合わせて追い込みます。成の800・1000⇒研承の白い1000⇒伊予砥⇒丸尾山の巣板⇒中山の巣板。

も作、切っ先まで一律に平面に成りました。

KIMG1864

 

 

興光・・・此方は、より容易に切り刃は万全な状態に。

KIMG1865

 

 

しかし、裏の不均等な当たり方も、今一歩の追い込みをと中山の天井巣板中硬で。肝心の、裏の画像は撮り忘れです(笑)。

KIMG1867

 

 

 

最後は其々、水浅葱と天井巣板カラスで仕上げました。研ぎ上がりです。先ず、切っ先の裏が反って居る部分以外は整った興光。

反って居る部分に向かって、切っ先側へ行く程に裏を多く減らすと柄に対して可笑しな角度変化が付きますし、押されている部分全体を均等に(切っ先裏が当たる迄)削れば、刃金は減るし段差が出来ます。順当に研ぎ減らして行けば、何れは解消されるので其れを待つのが得策でしょう。

KIMG1859

KIMG1860

 

KIMG1861

KIMG1863

 

刃先拡大画像、平面に成って居る様子。

Still_2022-02-01_013726_60.0X_N0003

 

 

 

さて、も作の方です。御希望通り切っ先まで研ぎが届き、より平面度も向上した様です。

KIMG1872

KIMG1873

 

 

 

興光の印象ですが、刃金は前回の(硬さと粘りが均等に近いバランスだった)も作に比べて、やや硬さが勝つ感じです。組織の細かさも奏効してか、若干ですが切れも上回っていた気がします。とは言え、どちらも性能は上級なのは間違い無いでしょう。

T様には御依頼の際、特に興光の方だったでしょうか、研ぎを仕損じて鎬が真っ直ぐで無く成ったので修正をと御希望でしたが、造形的に厚みや角度が一定でない場合は、止むを得ない事だと思います。今回の研ぎを直に確認頂ければ、伝わるかなと考えているのですが、三本揃って御返送できる時まで、もう少しの御待ちを御願い致します。

 

 

 

 

 

北海道のT様からの御依頼

 

北海道のT様には今回、切り出し二本と大き目の牛刀を御送り頂きました。何れも名の通った品で、見た限りでも確りとした作りである事が伺えます。

 

KIMG1756

も作

 

KIMG1757

興光

 

KIMG1758

重延

 

 

 

切り出しから研いで行きますが、鎬筋は直線・切り刃は平面を目指す方向が御希望です。も作の下研ぎ、先ずは人造砥石の320番から。

KIMG1759

 

1000番を当てて、研ぎ目の違いから現状の確認。結構、凹凸は少なかったのですが、やはり切り刃の中央から砥石に当たって居ますね。

KIMG1760

 

裏押しは、どうしても凹凸が出るんでしょうか。真っ当な切れを出す為には、少なくとも刃先側の裏は安定して砥石に当たる様にしなければ成らないでしょう。

KIMG1761

 

下りの良さを期待して、久々に黒幕の1000番。まだまだ、砥石に当てっている中央部分が狭いですね。

KIMG1763

 

同じ系統の製造法でしたか、研磨力は強い物の少し、傷の浅い仕上がりを狙って成の1000番。中央部分が広がって来ました。

KIMG1764

 

当たっている部分の平面度を上げる事も鑑み、1000番と3000番で様子を見て見たり。

KIMG1765

 

中央部分はマズマズ、刃先の切っ先寄りが手強い状態です。

KIMG1767

 

後は、1000番と3000番で交互に確認しつつ研ぎ進め。

KIMG1769

KIMG1771

KIMG1772

KIMG1773

 

 

 

天然に入って丁度、近くに出ていた伊予砥の中硬。

KIMG1774

 

丸尾山の巣板二種と大平の蓮華巣板。

KIMG1775

 

奥殿の天井巣板、二種。

KIMG1777

 

赤ピンの中硬。

KIMG1779

 

奥殿の敷巣板、茶色硬口と白色超硬口。

KIMG1781

 

中山の巣板、やや硬口。

KIMG1782

 

中山の巣板、やや軟口。

KIMG1783

KIMG1784

 

中山の巣板、中硬。此方は弾力と研磨力に優れて居り、相性的にも仕上げ研ぎとしても良いレベルでした。

KIMG1785

 

刃金と地金のコントラストにも言及されていたかと思われるので、中硬の巣板と硬口の天井巣板カラスで地金を仕上げます。

KIMG1788

 

刃金の方は水浅葱で仕上げると、光り過ぎない範囲で適度な状態かと。此の後、改めて上の巣板二種で地金を狙って完了としました。

KIMG1790

 

 

 

研ぎ上がりです。刃先部分の切っ先寄り三分の一は、他の部分が仕上がった時点で完全に平面でツライチと迄は行かなかった為、仕上げ砥レベルながら刃先荷重の研ぎで均しました。

初期状態から、可能な限り研ぎ減りを少なくしようとしたのですが、用心し過ぎでしたね。下画像の三枚目、切っ先の最先端は極僅かに当たり切らない部分がの頃ましたが、問題は無いとの返答を頂きました。

KIMG1793

 

KIMG1794

 

KIMG1795

 

刃先拡大画像ですが、ほぼ平面と言って良さそうです。

Still_2022-01-24_192315_60.0X_N0002

 

裏は、取り敢えず刃先に影響する部分の形状が整えられたので、切れに関しては問題無しです。

KIMG1791

KIMG1792

 

 

今回の切り出しは、鋼材としては組織が細か目、硬さとしては適度な範囲で少し硬目だったと感じました。その硬さに見合う粘りも併せ持ち(欠け難い・研いでも返りが出過ぎない等)、切れだけでなくバランスが良い強度で仕上がって居たと思いました。

T様には、此の度も御依頼を頂きまして、有難う御座います。いつもながら、普段は関わる事が少ない名品・良品と触れ合える機会ともなり、感謝です。後の二本も順に進めて行きますので、もう暫くの御待ちを御願い致します。

 

 

 

 

 

知人への御礼と再度の御依頼

 

少し前の投稿で、二足の草鞋のもう一方への比重が増えそうですと御知らせしました。研ぎ依頼が少ないのは元からの想定内でしたが、研ぎ講習・イベントの双方が激減・延期などが想定以上でした。其れが此の度、上手く次へのバトンタッチが出来たので一安心?です(笑)。

そこで、久し振りにインド・ネパール料理の店に出掛けたり。

KIMG1673

 

KIMG1674

 

 

何くれと無く御世話に成って居る、近所の和菓子店の店主の包丁を研いで見たり。元は、私の研ぎ方のデモンストレーションを兼ねて、新品を研いでプレゼントした物でした。

しかし切れが落ちたと思われる其の時に、奥方が研いで見たそうですが若干、砥石に不安定な当て方だったとか。後に、御主人が研ぎ直して使って居たという事です。

研ぎ前の状態ですが、やはり相応に摩耗していますね。後、切っ先の丸さと刃線の不均等が気に成ります。直線的に過ぎるのもそうですが、右の刃元・左の切っ先カーブ手前の小刃が軽く凹面に。使用している砥石の形状か、或いは研ぐ際の操作の癖でしょうか。

 

KIMG1688

KIMG1689

KIMG1691

 

 

峰から刃先方向へのテーパーを上乗せする意識で、側面の傷を大まかに消した後は人造の中砥各種で。

KIMG1692

 

同じく、人造の中仕上げまで

KIMG1693

 

天然の硬口赤ピンですが、相性的に今一歩です。

KIMG1695

 

大平の硬口蓮華巣板は相性抜群でした。最終仕上げは何が良いかなと考えて。

KIMG1699

 

柔らか目のステンレスである事を鑑み、中山の水浅葱で。しかし切れは充分ながら手応えが重い。

KIMG1698

 

硬口の中山の巣板、やや弾力タイプで仕上がりました。

KIMG1701

 

 

研ぎ上がりです。

KIMG1708

KIMG1706

KIMG1704

 

刃先の拡大(下画像一つ目)ですが、刃元の小刃の凹面だった部分。最後まで僅かながら痕跡が残りましたが、その他に関しては改善されたので(下画像二つ目)、其処で留めました。

Still_2022-01-11_230925_60.0X_N0003

 

Still_2022-01-11_231020_60.0X_N0004

 

 

 

と云う様な事をしていると、以前も研ぎの御依頼を下さった割り合い御近所のO様と、北海道のT様からご依頼が。仕事の比重を変えた途端にと不思議に感じつつも、有り難い事です。

先ずはO様の牛刀ですが、前回よりも切れ味鋭くとの御要望で。

KIMG1675

KIMG1676

KIMG1678

 

 

先ずは、全体の錆を落として人造の320番・1000番で。小刃の幅を広げつつ(切っ先へ向かって刃元から20度⇒15度⇒10度強)、刃先の摩耗や微細な刃毀れを研ぎ落します。

KIMG1679

 

同じく1000番と3000番で、研ぎ目を細かくしつつ刃先の精度を高めます。最終刃先角度は、刃元から30度⇒20度⇒15度程度としました。此れ以上、鋭角な最先端にしたり、刃先周辺を薄くすると強度が半減以下に成るとの判断です。

そうで無くとも今回の標準以上の鋭角仕上げでは、切れの良さが3~4割り向上する代わりに耐摩耗・耐衝撃がトレードオフに成るのは道理です。鋼材的に(熱処理との兼ね合いも有りますが)、硬く粘りも持ち合わせ、組織も細かい等の条件が整う程に、追い込んだ仕様でも余裕が見込めます。

KIMG1680

 

天然に繋いで、奥殿の天井巣板の中硬(やや砥粒の目が立っていない)から。

KIMG1681

 

やや硬口の中山の巣板は、中々の相性で砥ぎ易く、仕上がりも上々。

KIMG1682

 

ですが、もう一声の切れを求めて中山の戸前系で。更なる向上を実現できました。

KIMG1683

 

 

 

研ぎ上がりです。

KIMG1684

KIMG1687

KIMG1685

 

刃先拡大画像ですが、普通より厚みを取りましたので、研ぎ目の縞々は少な目と成って居ます。

Still_2022-01-11_205006_60.0X_N0001

 

 

O様に於かれましては、包丁に負担を掛け過ぎない範囲の今回の仕様で、御満足頂ければ幸いです。今回も研ぎの御依頼、有り難う御座いました。

 

 

 

 

 

御近所からの持ち込みで

 

前記事の研ぎの最中、電話にて研ぎの問い合わせを頂きました。正規の御依頼としては立て込んでは居なかったので、御持参下さいと御願いしたのですが。

のんびりコツコツ進める心算であった先の作業、其処からペースアップし、御依頼主である御近所のU様が来られる迄には何とか、作業を終わらせて包丁二本を受け取りました。

 

研ぎ前の状態、全体画像両側面。

KIMG1652

KIMG1653

 

 

刃部のアップ、大・小ですが・・・小の方が刃先の損耗が大きいですね。大きい方は、単純な摩耗が大半です。何れにしても未だ新品に近く、刃先の厚さは問題が無いので簡単な研ぎで行けそうです。

KIMG1656

KIMG1657

 

 

 

人造の400番・研磨力が強く平面維持に優れる1000番から。

KIMG1658

KIMG1659

 

 

同じく人造の1000番・3000番。今回の鋼材は、研ぎ始めに感じた耐摩耗性の高さの割りに、研ぎ進めると結構な粘りで返りの出方が大きい様子。其処から予見される、研磨力の強い砥石への反応・・・引け傷が入り易いかと危惧しましたが、特に困らずに作業が出来ました。組織の細かさと、均一さによる物でしょうか。

KIMG1660

KIMG1661

 

 

 

天然に移行しても、研ぎ易さは変わらずで。中硬の赤ピン一つで、傷消しから殆ど仕上げまで済んでしまいました。中硬の巣板から始めたり、間に各種硬さの砥石を挟む必要性は皆無。

KIMG1662

KIMG1664

 

 

もう一声の性能向上を目指し、超硬口の奥殿産の天井巣板で仕上げ研ぎです。

KIMG1666

KIMG1667

 

 

 

研ぎ上がりの全体画像、大・小の両側面。

KIMG1668

KIMG1669

 

 

大きい方、刃部のアップと刃先拡大画像。

KIMG1671

Still_2022-01-07_172836_60.0X_N0002

 

 

小さい方、刃部のアップと刃先拡大画像。此方は、最も損耗の酷かった付近なので一部、其の痕跡が残存しています。

KIMG1672

Still_2022-01-07_173104_60.0X_N0003

 

 

 

U様には、此の度は御近所とは言え、包丁の送迎を含めて研ぎの御依頼を頂きまして有難う御座いました。御返しする際には、使うのが楽しみとのコメントを頂きましたが、如何でしたでしょうか。もしも御気に召した様でしたら、今後も私で御役に立てる場合は宜しく御願い致します。

 

 

 

 

 

御世話に成って居る方からの御依頼

 

年末にパソコン持参で、稽古事の纏め役として御世話に成って居る方を訪問しました。メールサーバーの不具合や、DVDが映らなくなった事などの相談を兼ねてでしたが、其処で包丁の相談も受けたり。仕事も立て込んでいないので、御礼に研いで来ますよ・・・と安請け合いの仕儀と成りました(笑)。

 

件の包丁は親類の方から譲り受けたそうなのですが、良く切れて使い勝手が良かったそうです。特に野菜などに便利だったとの事ですが、様々な用途で使って居た所、冷凍食品で問題発生。硬い部分など無かった物の、大き目の欠けが。

 

研ぎ前、全体画像

KIMG1633

KIMG1635

恐らくは低温脆性なのでしょう、三層の利器材(刃金となる芯材が炭素鋼・地金のステンレスが両側面)が使われていますが元々の鋼材自体が薄い上に、刃先部分が以上に薄く仕上げられていました。

 

 

やっと導入出来た、マキタの小振りなグラインダ―を用いて、過熱に留意の上で少しずつ削った所。

KIMG1636

顎の部分も欠けていましたが、御意向により今回は其れを上回る大欠け部分まで削り落とす事に。結果的には、ほぼ全ての刃金部分が無く成りました。

 

 

 

未だ未だ薄目では有りますが、使用の上で薄さのメリットを享受して来られた事を鑑み、地金部分を調整。視覚的には、平と切り刃に分かれているかの様な仕上げでしたが、実際には段差は皆無と成って居ましたので、新たに切り刃を作る感じで。

KIMG1637

ダイヤモンドシートを使って、ステンレス地金を削ります。相当に薄い鋼材から作られて居ても、切っ先カーブ周辺に厚みが残って居るのは、もうお約束なんでしょうね。其処への対処も含め、刃元から切っ先へ向かい、厚みが漸減する様に進めて行きます。

 

 

ダイヤの研削痕は深いので、更に形状を整える意味も含めて人造砥石の小割り各種を用いて均して行きます。

KIMG1638

 

 

 

切り刃を大まかに仕上げたら、電着ダイヤ砥石で刃先周辺の研ぎを行ないます。

KIMG1639

 

 

人造砥石の400番・1000番各種

KIMG1640

 

人造の最後は3000番で。

KIMG1641

 

 

 

天然砥石に繋いで、奥殿の天井巣板中硬のカラス其の他。

KIMG1642

 

 

 

相性的に優れていた、硬口の中山の巣板で仕上げました。相性が良ければ、砥面の硬さを感じずに下りの良さと仕上がりの良さを齎してくれます。仕上がりとは勿論、切れと永切れですね。

KIMG1644

 

 

 

研ぎ上がりです。一気に数ミリの刃幅が減ったので、流石に全体画像で見るとスリムに成ったのが分かります。良く見て貰うと、(特に右側面)刃金の出方が切っ先へ向かう程に多く成って居るのが確認出来るのですが、切り刃の厚み・刃角が漸減している為です。

KIMG1646

KIMG1648

 

 

刃部のアップですが、通常よりも荒さが目立ちます。実は、作業中に包丁の持ち込み依頼を頂いたので、かなり駆け足に成ってしまいました。

まあ、御受けする時点で「使える状態にしてくれれば良い」との事でしたので、今回は此れで様子を見て貰います。

KIMG1649

 

KIMG1651

 

 

刃先拡大画像。地金の外観は兎も角、刃先の仕上がりは充分だった様です(笑)。

Still_2022-01-07_134533_60.0X_N0001

 

 

 

 

 

 

最近の事

 

数年前に小刀の研ぎ依頼を頂いた、奈良のY様からの新たな御依頼・・・数十年前の作に成る、豆ナイフ。日本のカスタムナイフ界黎明期の草分けとも言うべき作家の方の名品の様ですが、刃毀れと表面の傷みを改善して欲しいとの事で。

本来は、製造段階で用いた電動工具・手動具・研磨剤などが違えば再現性が低く、本人または後継者で無ければ分解組み立ても困難なので、其の辺りをお含みおき願ってからの作業でした。

 

折り畳めば、百円玉の1.5倍ほどの長さ。

KIMG1456

KIMG1457

 

 

磨きの見本として、新品の左側も送って頂いて居ました。基本的に、初期の研削痕が刃線と直交して残存しているものの、其の表面の研磨痕は殆ど目視が叶わないレベルで仕上がっていました。

KIMG1458

KIMG1459

 

 

 

到着時の状態、拡大画像。

Still_2021-10-28_174608_60.0X_N0001

 

同じく、磨きの見本の方。

Still_2021-10-28_210359_60.0X_N0010

 

 

 

精緻な造作のハンドルに養生を施し、耐水ペーパーと研磨剤で表面を研磨。後々、刃先を研ぎ直す事によって小刃の幅が広がらない様に、刃先周辺を僅かに念入りに厚みも調整。

KIMG1460

 

 

人造の1000番と3000番で、刃先を研いで行きます。表面の研磨は敢えて居るのですが、鋼材と熱処理の組み合わせの結果、研磨痕が残り易い傾向の様で。

KIMG1462

 

光源との角度次第では、余り目立たないのですが。

KIMG1461

 

 

天然に入り、中硬・硬口の巣板から水浅葱で仕上げました。

KIMG1464

KIMG1463

 

 

研ぎ上がりです。何度か研磨剤も変え、方法も模索してみたのですが、此れ以上は相当な期間と試行錯誤が必要(しかも打開出来るかは未知数)ですので、一応の仕上がりとしました。

恐らくは鋼材的にも、やや柔らか目なので研磨の際にも(トルクの有るバフなどで)低速でジワジワ磨くのが良いのかなと感じ、其の儘にY様に御伝えしました。

KIMG1466

 

KIMG1470

 

KIMG1468

 

KIMG1469

 

Still_2021-10-28_210010_60.0X_N0007

取り敢えず、切れに関しては大丈夫だった様ですが・・・磨きに関しては、もう少し追求してみたいと更に方策を探って見られるとの事です。

やはり、私にとっては切れる様にする事が本筋で、天然砥石を使う上では刀剣研磨のレベル・人造の研磨剤量を扱う上ではカスタムナイフレベルとは行きません。磨きは、何処まで行っても余技ですので、実用に問題が無い錆予防・見た目も程々の所までしか御役に立てず、申し訳無く思います。何らかの形で、御本人の御希望に沿う仕上がりに成る事を願って居ます。

 

 

 

 

一昨日は、東の刃物会社の方が拙宅を御訪問下さいました。また其の方を通じて、有る方から私に人造砥石をプレゼントして頂くと云う一幕も。

下画像が其れで、私は余り多種多様な製品を手広く試せる環境に有りませんが、存在自体は側聞して居ました。人造の中砥(1000番前後)から天然に繋ぐのに、3000~6000番の砥石は案外、重要な場合が有りますので感謝です。

KIMG1475

 

御自身からも、御土産を手渡されましたが・・・此れはカステラ一番、電話は二番の奴でしたか。此方も、相当な昔から存在は知って居ましたが、縁が無かった物。癖も無く、特に風変りでも無いのに、他の店舗の製品とは何処か異なる風味で感銘を受けました。

当方からはキャスルトンのセカンドフラッシュと、近所の和菓子店で購入のマスカット大福を繰り出しましたが、上手く迎え撃てたかどうか(笑)。取り敢えず、一口飲んで美味いとの反応は頂けましたが。紅茶と和菓子とは言え、同じマスカットフレーバー同士で、相性的には悪く無かったのではと。

 

 

 

 

砥石を頂いたのは、四国のK様と御聞きしましたので、御礼の文面を添えて何か使える物を・・・と考えました。しかし中々、其れに相応しい気の利いた品も持たない身ですので、恐縮乍らせめて自分なりの小技を加えた小道具でもと。

 

下画像は手持ちのオピネルNO9、カーボンモデル(炭素鋼)とステンレスモデルですが、予期せぬ作業に備え、その辺に置いておくには少し大きいかも知れません。確りと使うには、最適の一つだと思うのですが。

KIMG1471

 

下画像は、その一つ小さいモデル(NO8)、炭素鋼で柄をカシュー仕上げとした手持ちの一本。本格的に使うには最低限のサイズながら、使い難い程には小さくないのが良いバランス。

ブレード側面は、錆予防と厚み調整を兼ねて軽く削りつつ磨きました。ネイルマーク周辺の刃体中央には、未だ若干の厚みが残存しては居ますが、切れ込みや抜けは相当に改善されています。

あと、私は使い場合にブレード後端付近にダイヤモンド鑢で切れ込みを作り、其処から後ろは刃を落としています。使用時に指先が不意に接触したり、織り込む際の怪我を避ける為です。所謂、リカッソを仮に設けている様な物で、研ぐのも切れ込みから先のみとして居ます。もし後端迄も研ごうとした所で、何れは破綻するでしょうから。

KIMG1473

 

 

御礼の品は、同じくNO8のカーボンモデルとしました(二本有るのは、ブログを通じての知り合いへ送る為の物を含むからです。此方も御礼の品)。下画像は、新品の状態。手持ちと同じく、ブレード側面の厚み調整をしつつ、磨いてからの研ぎです。

KIMG1474

 

人造の研磨力優先の1000番で大まかな形状と刃先の角度決め。その後には頂いた4000番で微調整と研磨痕の軽減です。当たりがソフトで研ぎ易い砥石に付き、天然直前の処理には重宝しました。

KIMG1477

KIMG1476

 

 

奥殿の天井巣板、中硬で更に細かく。小刃の本体は20度以下で研いであるので、刃先最先端を鈍角化。そして刃元~切っ先に向けては、漸次鋭角化。

KIMG1480

 

KIMG1478

 

 

超硬口の中山の巣板で仕上げ研ぎですが、相性的に次の砥石が欲しくなります。最終刃先角度は、片側25度近辺が切れと永切れのバランスポイントの印象。30度以上で切れ方に不満が出るのは、組織が幾分は荒目なのか。

KIMG1482

KIMG1481

 

 

中山の水浅葱(切り落とし)で満足な状態に。因みに、掌サイズ以下の此の砥石ですが、四国への御礼の付属品として同梱して置く事にしました。研ぎ易さの相性は程々では有りますが、切れが鈍った際には、タッチアップ程度には使って貰えるのではと。

KIMG1484

KIMG1483

 

 

余りに急いで発送してしまった為、研ぎ上がりの全体画像は有りませんが、御二方には御笑納を頂けましたら幸いです。

 

 

 

 

 

千葉県から西洋剃刀の御依頼

 

千葉のH様から、かなり珍しいと思われる西洋剃刀を送って頂きました。珍しいと言うのは其の素材で、刃体全てがダマスカスで出来ていました。私が流行りに疎いだけな可能性は有りますが。

近年のダマスカスと言えば、包丁・ナイフ類を連想しますが其れ等は、ラミネート的に芯材を挟み込むだけの物が殆どで、例外的なのはコアレス(V金の10と1でしたかの積層)だけの印象で。

あと、届いた時点でも結構な切れが出ていましたが・・・御希望としては、刃線を直線的に・刃先(小刃と言って良いのか?)の幅を均一にとの内容で。ビニールテープを同梱して頂きましたので、其れを使いつつ研ぐ事に。ただ、一度でも使い出せば、角度が変わるので使わずに研ぐ選択は無しに成りますね。荒研ぎから遣り直すなら別ですが。とは言え、テープの厚さ・粘着剤の精度は如何ほどかと若干、気には成りつつ。

KIMG1410

KIMG1414

Still_2021-10-21_194050_60.0X_N0001

上画像、研ぎ前の状態。特に悪いとも見えない様な(笑)。剃刀のベテラン方やマニアレベルの方々から見て、何処まで改善できるか定かでは有りませんが、幾らかでも御希望に近付けばと。

 

 

 

先ずは人造の1000番、研磨力と平面維持を兼ね備えた物。刃線を直線に近付けつつ、研がれた部分の幅の様子を観察。

KIMG1415

 

次に、同じく1000番ですが傷が浅く細かい物。此処で大まかな形状や角度が決まります。研がれた部分の幅は、一定以上には揃わない事が判明。特に、左側面ですね。研ぐ前に触察した時点で、薄々は感じていましたが、ホローグラインドの精度的な問題に起因しています。厚みの残存箇所は、他の部分よりも同角度で研がれても幅広に成ります。

KIMG1416

 

人造の3000番、研ぎ目を細かく本格的に切れを出します。

KIMG1417

 

 

天然に移行して、赤ピンの中硬と奥殿の天井巣板の中硬。

KIMG1418

KIMG1419

 

中山の巣板を二つ三つ。

KIMG1420

KIMG1421

 

中山の白浅葱からの水浅葱。

KIMG1422

KIMG1423

 

 

 

研ぎ上がりです。刃線が或る程度、直線に近付いた時点で切れが出ました。そして刃先の幅を均一にするには、通常の研ぎのみでは限界が有る事が分かった為、研ぎ減らすのは最低限にする事を優先しました。

KIMG1428

KIMG1429

KIMG1430

Still_2021-10-22_014428_60.0X_N0002

拡大しても、刃先にダマスカス模様が見えます。やはり不思議な感じがしますね。

 

此の度、H様には貴重な剃刀を研ぐ機会を頂き有難う御座います。本日、御返送しましたので、到着後に御使用の上で問題が無いか御確認を御願い致します。何か有りましたら、御気軽に御連絡下さい。

(メールにての御感想に加え、鋼材のデータも送って頂きました。XC100とXC130で、其々が炭素量1と1.3も入っている様です。HRC64も狙えるみたいですが、研いだり切ったりした限りでは、少しソフトな印象で、研ぎ直し易さを考慮かなと。錆に強かったのでセミステンレスかとも思われましたが、純炭素鋼で。)

 

 

 

 

剃刀を砥ぎ上げた次の日は、砥石館のイベントに向かったのですが・・・途中で田中砥石に寄って見ました。以前から砥石の御相談を頂いたり、推薦砥石を御送りしていた東京のH様との会話により、先々には水浅葱も幾つか用意しておこうかと。

其の時には随分と良さそうな原石を出して貰え、田中さんの兄弟子に当たるんでしたか?の方が、其処から大きな砥石を切り分けて欲しいとの流れで。私は其れではと、残りの分から大き目のレーザー型を希望して置きました。出来れば、自分用も含めて二つは欲しいですね(笑)。

当日は又別に、少し変わった性格の水浅葱も手に入りました。白っぽい色調ながら、モヤモヤした模様の有る物ですが可成りの硬口です。

KIMG1453

 

先ず試したのは何時もの切り出しの一つで、地金の性質が気難しく無く、仕上がりに難が少ない物。この時点では、普通に研ぎ易くて良い仕上がりの砥石だなと(若干、食い付きが強過ぎる気も。そんな時に奥殿の水浅葱は、粉末っぽいパサッとした研ぎ感の物が共名倉に好適です)

KIMG1447

 

只でも下画像の様に、少し当たる筋・凄く当たる筋の二つを物ともせずに仕上がる様な切り出しでしたので、余計に美点が引き立ちましたが・・・切れ加減が今一つ。まあ、普通に近い性能なのですが、「青紙二号・此の製品の製造工程」との相性かな?と。

KIMG1448

 

 

続いて、青紙一号と若干の気難しさを見せる地金の切り出し。此方も刃・地共、相当に上手く仕上がります。切れは幾分、向上しました。

KIMG1451

 

 

最後に、一番の新入り且つ、最も砥石を選り好みする地金の切り出し。未だ面が出揃って居ませんが、中硬の巣板でしか地を引かずに研ぐのが難しい性格です。浅葱・水浅葱は言うに及ばず、硬口~やや硬口の巣板・合砥程度でも(筋や砥面の不均一が有れば更に)十字傷の様な状態に。

しかし此の浅葱では症状が出難く、研磨に時間は掛かるものの上手く仕上がります。(ダイヤでの泥出し・奥殿の水浅葱による共名倉を併用で効果大)因みに此の切り出しも青紙二号と思われますが、今回の三本中では一番、切れが出ました。

KIMG1452

他にも、炭素鋼・ステンレスの洋式刃物で試すと抜群の切れが。総合的に見ると、切れに関しては平面の刃物よりも立体的な刃先を研ぐのに向いている印象ですが、平面の刃物を綺麗に仕上げる性能にも特化している様です。仕事の上では、そう言う砥石も必要だなと考えて来た訳ですから、良い出会いでは有りました。

しかし、自分としては珍しく尖った性格の砥石を選んだ物です。従来から、天然砥石は其々が唯一の物で相性次第で結果も変わると説明して来ましたが、半分は保険みたいな感じでの補足でした。基本的に私が選ぶ砥石は、意図しなければ守備範囲の広いマルチパーパスながらも高性能との認識でしたし、実際もそうでした。従って平面の刃物を磨くのを得意とする此の浅葱は、手持ちの中では少数派な、専門的な役割を持つ石でした。

 

 

オマケに、細身の巣板も質が良さそうでしたので(笑)。

KIMG1454

KIMG1455

 

浅葱と遜色の無い仕上がりで、硬口の高性能な巣板で在る事が分かりました。そろそろ、周辺にも試掘が進みそうですが巣板の良い物も、ついつい気に成りますね。

KIMG1449