むらかみ のすべての投稿

和式の三徳を洋式研ぎで

 

近隣の市に御住まいのY様から、和式(構造的に平と切り刃から成る)の三徳包丁を御送り頂きました。

御依頼時、申し込みフォームに添付されていた画像を確認した所、新品同様で刃先の損耗が少ない事・そして当然ながら厚みも増して居なかった事から、和式の研ぎ方(切り刃ごと研ぐ)では無く、刃先周辺のみの研ぎを薦めました。

 

 

研ぎ前の状態です。刃先に大きな欠け等は見られませんが、小さな凹凸に加え、かなり丸みを帯びてはいました。

KIMG2254

KIMG2256

KIMG2258

 

 

 

人造砥石、研磨力の有る1000番から。刃先の小刃を大まかに二段階に研ぎます。つまり、ベースは初期設定より鋭角に・最先端側を若干ですが鈍角に。

KIMG2261

KIMG2262

 

傷の浅い1000番・3000番で細かく仕上げます。小刃の構造も、前段階と同様に。

KIMG2263

KIMG2264

 

天然に移行し、研磨力の有るタイプの赤ピン、中硬で仕上げて行きます。

KIMG2265

KIMG2266

 

最終仕上げとして、中山の水浅葱を試しましたが・・・普通には良く切れる状態。しかし、此の鋼材と熱処理の組み合わせの特性を引き出せた印象が薄い(普通を超えた異常に切れる刃先が好きなのが良く無いのか)。

KIMG2279

KIMG2275

 

久し振りに中山の巣板層付近、殆ど戸前の質の超硬口で。戸前系統は砥粒の細かさ・砥面の硬さの比較で、巣板系統(硬口・超硬口含む)と浅葱系統の単なる中間と認識される事も有りますが、仲立ち(繋ぎ)の役割のみならず、相性探しにも必要欠くべからざる物ですね。今回も期待通りの効果を発揮してくれました。

KIMG2284

KIMG2281

 

 

 

研ぎ上がりです。

KIMG2286

KIMG2289

 

刃先拡大画像では角度変化の等高線(縞々)が見えますが、今回は薄い刃先でしたので、小刃の幅も狭く成り勝ちです。従って、より正確な勾配の比率が要求されますので、小刃の先側半分では縞々の幅が徐々に狭まって(先に行く程に鈍角に)研がれているのが明確です。

Still_2022-04-29_171958_60.0X_N0002

KIMG2291

 

 

 

Y様には、此の度は研ぎの御依頼を頂きまして、有難う御座いました。小刃の付近にも砥石の跡が薄く残っている部分が有りますが、製造時の切り刃の厚み取りが不均等だった事による物です。

此れを正すには和式に則った研ぎ方が必要なのですが、普通に使う分には現状の仕上がりで問題が無いと思われます。逆に言えば切り刃と刃先の両面から精度を高められるのが和式の利点では有ります。

先々、いよいよ刃先が研ぎ減って、切り刃ごと研ぐ必要性が高まった際には改めて全体的に整えるのが順当かと思われますが、ともあれ一両日中には御返送の予定ですので、到着後の御使用で御確認の程、宜しく御願い致します。。

 

 

 

 

 

使用後の手入れ

 

テスト動画で使用した副え鉈の二丁を、手入れの為に研いで置きます。

研ぎ済みの方は、昔に試用を終えてからは暫く使う事が無く、資料としての保存に徹していました。合間に変色・薄錆が発生する度に、軽く研ぐ程度でしたが其の内、研ぎ易い形状としてフラット寄り(鋭角方向)に成って居ました。つまり私の通常仕様である切れと永切れが五分五分では無く成って居り、切れ重視・強度的には不利に。

新品の方は、新聞の束を丸めて捩った物に対して引き切りが難しく、押し切りで何とか切れた事から形状的にはカーブの当たりが厚く、手前の部分は僅かに薄かったと思われます。

遠心力を効かせて打撃を加える方向での使用には、先端近くの厚み・重みは効果的な面も有るのですが・・・その目的ならフルサイズの鉈が適役ですので、私の使い方では削りメインの工作で活躍してくれればと。

 

 

研ぎ前の状態、鍛え地磨き(研ぎ済み)と黒打ち槌目(新品)。

KIMG2200

KIMG2201

 

KIMG2204

KIMG2205

 

 

 

新品の方は、先ず人造の小割りで厚みが気に成る部分を集中的に減らし、天然の小割りと角砥石で。形状のベースが出来ている鍛え地の方は、天然の角砥石のみで。

丸尾山の敷き内曇り、二種で刃先を大まかに整えます。

KIMG2217

KIMG2218

 

中山の巣板、三種で仕上げて行きます。硬さ・細かさ・泥の出方が異なるので、研ぐ場所・研ぎ方等によって使い分け。

KIMG2224

KIMG2223

 

最終仕上げ(刃金部分)は、中山の水浅葱です。

KIMG2230

KIMG2234

 

水浅葱の研ぎでは途中、切れ方も試したり。動画前では、刃元~切っ先まで片側30度・25度・20度程度でしたが、今回は何時も通りに40度・30度・20度に。とは言え、刃先最先端のみの調整ですので、切り刃のベースが出来ていれば切る際の抵抗が著しく増える事も有りませんし、切り口に艶が出る位には良く切れます。

KIMG2229

 

 

研ぎ上がりです。

KIMG2235

KIMG2237

KIMG2238

 

 

黒打ち槌目の方。形状は整いましたが、人造の研ぎ目は未だ、幾分は残存しています。しかし、怪我の功名と言いますか・・・資料として10年程、眠っていた此の副え鉈ですが、刃金の仕上がりは幾つも所有する、同じ司作の中でも出色の出来でした(レベルの高い物同士での比較ですが)。今後も余り頻繁には活躍の機会が訪れるとは思えませんが、使うのが楽しみでは有ります。

KIMG2239

KIMG2244

KIMG2245

 

 

 

と言いながら、此の流れで手持ちの副え鉈の最後の一角、雲竜磨きの副え鉈迄も研ぎたくなって来そうなのは、聊か注意が必要ですね(笑)。直近で使う予定・又は先々で使う可能性が有る物以外は、研がない主義ですので。オリジナルのままの風合いを顧みる為の新品も、幾つかは残して置きたいなと。

KIMG2250

 

 

 

 

 

私の研ぎ方と効果の検証

 

御依頼品に対して、私の研ぎ方は大きく分けて二種類有ります。一つ目は、指定された研ぎ方(例えばベタ研ぎ)に従って研ぐ場合。もう一つは、御任せとの御希望を受けて、ハマグリ状に研ぐ場合です(例外は前記の何れでも無く、元の形状を踏襲する方向ですね)。

前者は言うまでも無く、其の刃の形状を御依頼主が使い慣れている、又は明確な作業目的に合致している事が明らかな為でしょう。ですので当然、其れに従った研ぎ方で作業します。

後者は、使用目的や御好みが把握できない時や、私の体験や研究から導き出した万能性を付加した「御薦め」として、切れと永切れの両立を目指した研ぎ方です。具体的には、和式(平と切り刃を持つ)と洋式(ナイフや洋包丁に見られる小刃付け)で多少、違いは有りますが研ぐ面積の内、より刃先寄り部分と残りの部分で角度を変え、緩やかな面の繋がりでの研ぎと成ります(但し一律のアールでは無く)。

イメージするのが容易と思われる和式で説明しますと、鎬筋(平と切り刃の境界線)から刃先に向かって、充分な切れを確保できる角度で研ぎますが其の際、均一な平面で無く徐々に鋭角に(厚みが減少)研ぎ進めます。此処までであれば切れ重視ハマグリ、つまり刃先が最も薄く鋭角な状態であり、刃先から遠ざかる程に厚さが増す、刃体強度に優れた形状です(何の計算も無く、ただの楕円に近しいカーブでは有効な作用も期待薄かと)。

上記内容に加えて、更に刃先自体の強度・永切れをも向上させるのが、刃先最先端へ向けて徐々に鈍角になって行くハマグリです。その角度変化を付けるのは、刃先の2mm前後の範囲であり刃厚により異なり、少なくとも三~四段階、多ければ五~六段階に研ぎ分けますが、一定の割合で無く放物線の様に徐々に鈍角にして行く関係上、その等高線は最先端へ向かって互いの幅は狭まって行きます。

更に刃先へ向かっての角度変化とは別に、切り刃・刃先の両ハマグリ共通で顎から切っ先へ向かって鋭角化もしています。此れに関しては、切り刃本体のハマグリが真っ直ぐ対象物に切り込む(押し付ける切り方)際の抵抗軽減をも期待しているのに対し、刃物を押し引きする際の効果を期待しての物です。引き切り(後方へスライドさせつつ押し付ける)の際は抵抗の低減を・押し切り(前方へスライドさせつつ押し付ける)に際しては上滑りの防止(楔効果向上)を。逆に言えば刃物の厚みが一定だったり、切り刃・刃先の角度が一定であるならば、上述の効果が発揮され難い訳です。そして洋式では此れ等の角度変化の研ぎ分けが、より狭小範囲で処理される事に成ります。

 

 

 

此処までを踏まえて今回の本題に入りますが、或る刃物を御任せで、との指定で御依頼を頂き研いだにも関わらず、期待した切れでは無かったとの御連絡が有りました。研ぐ前よりは切れる様に成ったが、新品の同型モデルよりは切れなかったと。

私は当該製品の作者とは、或る程度ですが昵懇ですので、之まで相当な時間を意見交換や教えを頂く事に費やして来た経緯が有ります。其の中で、「本当は刃体の厚みは薄過ぎない方が良いし、刃角も鋭角すぎない方が良いとは思うが、特に近年の買い手の意向を受けて其方に合わせている。まあ、鈍角を鋭角にするのは手間だが、必要に応じて鋭角を鈍角にするのは容易だし」との内容も有りました。つまり、初期刃付けは必要以上に鋭角に仕立てて有る事が伺えます。従って、汎用性向上やバランスを中立に戻す狙いで私が御薦めで研ぐとすれば、より強度向上・永切れ重視と成ります。

殆どの市販品では、(コスト的に無制限とは行かないので)鋼材と熱処理の組み合わせの結果、不十分な要素(硬さ・粘りのレベルやバランス具合)を補うために安全マージンを鑑み、過剰に鈍角な刃先を設定される事も。例題として今回俎上の製品は、硬さ・粘りと共に高度なバランスも取れていますが、使用者の扱い方や使用目的が不明な点では、未知数との判断でしたし、製品の種類(ハードワークも含まれる)からの判断でした。

世間的には、紙一枚や刃先が少し食い込むだけで事足りるテストだったり、対象が強度の有る繊維質・粘りの有る素材で無い限り、薄い切り刃と鋭角な刃先の方が一見は良く切れる「良い刃物」と成りがちです。其の上、耐久力を求められる使用を経ないのであれば尚更で、刃先耐久力は不問に成りますね。但し幾ら鋭角であってもベタ研ぎ等、角度一定の平面では対象が刃体側面を接触し続ける距離に比例して、抵抗が増え続けるのを避けられません。従って引き切りでは一般的に刃物が受ける抵抗は、刃先から峰・顎から切っ先への二方向の種類が有り、其々への対処が求められると考えます。

もう一つ、幾ら刃先最先端へ向けて鈍角化のハマグリと言えど、角度さえ正確であれば50度でも60度でも、髪やナイロンにも切り込めます。切り込めれば後は、刃先の形状が切り開いた角度が、直後に続く切り刃の角度よりも大きい為、切り刃が切り開く際の負担を低減してくれます。結果的に、上手く扱いさえすれば、切れと永切れを向上させるのみならず切り分ける時の抵抗軽減により作業が楽にも成ります。

後、細かい砥石で仕上げた刃先は、刃線の接地面積が大きく成るので(ザラザラだと点々と続くがツルツルだと線状に接地する)永切れしますが、刃先のザラザラで其の引っ掛かりを契機として切り込む使い方が良い方には、扱いが難しいかも知れませんね。そう言う事であれば、一段階・二段階、荒い仕上げにも対応しますので御申し出を頂ければと思います。(本来は形状に優れ、刃線に乱れが無ければ、摩擦を頼りとせずとも切り込める物と認識しています。剣術で言う輪の太刀とまでは行かずとも、弓切りが出来さえすればと。例えベタ研ぎのつもりでも刃線が揺れていては効果が見込めませんし、直線に引け無けなくても同様です)

 

 

 

私の手持ちの刃物の中で、上記の疑問のコメントを頂いた組み合わせと、殆ど同一の条件でテスト出来る環境に有りましたので、砥石館へ出掛けた序でに動画も撮って見ました。

KIMG2176

KIMG2177

KIMG2183

KIMG2182

 

基本的な内容を列挙しますと、十年くらい前に関の刃物祭りで購入した司作の副え鉈(白紙二号+極軟鋼地金の黒打ち槌目)の新品と、数年後に購入の同じく司作の副え鉈(白紙二号+鍛え地磨き)を自分で研いだ物との比較。刃金の種類・仕立ては同一で、地金の違いは切れ味などには関わりません。

切る対象はナイロン袋・新聞紙一枚・新聞紙の束・其れを捩った物・木材の二つ割り・其れにチョッピングと削りを経て、再度の新聞紙シリーズとナイロン袋の切れ方を見ました。フラットに近い新品(人造砥石で刃金は鏡面仕上げ)と、ハマグリに研いだ方(天然砥石で鏡面仕上げ)の比較。途中、新聞一枚テストを飛ばしたりして居ますが(笑)。

結果は、新品は確り見ると刃先最先端にミクロの糸引きが有ったり、私が研いだ方は通常より若干、鋭角気味の刃先であったので結構、刃先の強度的には近かったです。木材の二つ割り・削りは研いだ方が少し手応えが軽く、チョッピングは差が少なかったです。ナイロン・新聞紙一枚は研いだ方が楽に綺麗に切れ、束の方は少し差が小さかったかと。一番の違いは、束を捩った物で新品は刃が切り込んだ時点で押し引きしても食い込んだまま動かなくなりました。

此処から分かるのは、木材へ叩き付けたり削ったりの場面で、副え鉈としての働きは新品の状態で普通に使えると言う事ですね。ただ、切り刃のテーパーを正確に出したり、刃先の精度が高く面構成もなだらかに研ぐ事で、切り込み・割り込みの両面で抵抗が減る。そして、其の効果が出易いのは重層的な繊維質(加えて恐らくは粘りの有る素材も)が対象で有った場合でしょう。

之から新品・研ぎ済み、双方を研ぎ直しますので、通常の標準的な刃先の鈍角化にしても遜色が無いか、念の為に確認するつもりですが・・・取り敢えず今回のテストでは細かく鋭利な仕上げ砥石での研ぎ・切り刃に凹凸の無いテーパー・ハマグリ形状の効果は、充分に確認出来たと考えています。

 

MVI 1776 研ぎ屋むらかみ ブログ記事参考動画 3

MVI 1777 研ぎ屋むらかみ ブログ記事参考動画 4

 

 

(刃先拡大画像で、新品の刃の損耗はミクロの糸引きの部分に沿って、其の糸引き範囲に収まる捲れや丸まり。研ぎ済の方の損耗は、三か所位に其れよりは大きな捲れが。単純に比較は出来ないものの、何方も耐久性に問題は無いと判断しました。)

 

KIMG2204

Still_2022-04-22_193736_60.0X_N0008

上画像は新品、使用後の拡大画像。

 

KIMG2200

Still_2022-04-22_192931_60.0X_N0006

研ぎ済の方、使用後の拡大画像。

 

 

因みに、横で見ていた上野館長も切って見るとの事で。新品から試した所、捩った束は切断できず。研いであった方は切り落とせたので、改めて違いに驚いて居ました。(いやいや、以前から説明もして来たし、切って見せても居ただろうと(笑))

KIMG2185

KIMG2186

 

 

 

此処までの流れを受けて、御依頼前に研ぎによる違いを確かめたいと御考えの方向けに、貸し出し用の刃物を御用意しようと考えました。小振りなペティナイフ二本に其々、小刃仕上げに近い切れ重視ハマグリ・其れに加えて刃先に鈍角ハマグリ追加仕上げ。もう一方は、和式に近い両刃形状の刃体を切れ重視ハマグリ仕上げと、刃先に鈍角化ハマグリ追加の双方です。往復送料の御負担を頂く事を御了承下さる方は、御連絡を頂けましたらモーラ・ペティの何方でも御送りさせて頂きたいと思います。

KIMG2191

KIMG2199

 

 

 

つらつらと書き連ねて来ましたが・・・上掲の各記載内容が、相互理解や共通認識への一助と成りましたら幸いです。あと、「自分は刃先を傷めずに使えるので、永切れ・耐久を考慮した刃先最先端の鈍角化ハマグリは必要ない」と言う方には、切れ優先ハマグリでの研ぎも致します。しかし之まで、その状態で紙の束などによるテストをクリアした刃物は殆ど無かったので、御薦めはしないのですが。刃角が初期の角度に準じる場合、刃毀れ・捲れが出なかった例は数件のみでした)

 

 

 

 

 

モーラナイフとペティナイフ

 

ちょっとした目的の為に先日、モーラナイフとペティナイフを二本ずつ、買い求めました。詳しくは、次の記事で記載する予定ですが・・・研ぎ方の違いに因る効果の差を、御興味のある方々に試して貰おうかなと。

 

下画像は、グリップ・シースは色違いながらブレードはステンレスで、同一の仕様です。

KIMG2136

 

此方は、ヘンケルですが外観も含めて完全に同じですね。

KIMG2138

 

 

 

先ずは、モーラの方から研いで行きます。人造の研磨力の有る1000番。

KIMG2139

KIMG2140

 

二本目も同様に。

KIMG2142

KIMG2143

 

 

傷の浅い1000・3000番。此処で切り刃には、極僅かに緩やかなカーブで刃先へ繋がる研ぎを施します。

KIMG2146

KIMG2147

 

二本目も同様。但し、3000番の時に刃先の鈍角化ハマグリのベースを作って置きます。

KIMG2149

KIMG2151

 

 

天然へ移行して、馬路の中硬の蓮華巣板。次に、やや硬口と硬口の中山の巣板。

KIMG2163

KIMG2164

KIMG2165

KIMG2166

 

二本目も同様に、馬路の蓮華巣板⇒やや硬口・硬口の中山の巣板で仕上げました。

KIMG2167

KIMG2168

KIMG2169

KIMG2170

 

 

 

研ぎ上がり、一本目です。刃元から切っ先へ向かい、鋭角化。加えて、鎬筋から刃先へ向かい、緩やかなハマグリ状に鋭角化。

KIMG2189

KIMG2190

Still_2022-04-24_201037_60.0X_N0006

 

 

二本目、研ぎ上がり。一本目の内容に加え、刃先は最先端へ向かって鈍角化するハマグリも追加。其の部分も切っ先方向へ漸次、鋭角化は変わりません。

KIMG2187

KIMG2188

Still_2022-04-24_200716_60.0X_N0003

 

 

 

 

次にペティですが、傷の浅い人造の600・1000番から。研ぎ方は通常の小刃では有りますが、刃元・中央・切っ先の角度は其々、片側30度・25度・20度としました。

KIMG2153

KIMG2154

 

 

二本目も同じく、此の段階までは通常の小刃。

KIMG2160

KIMG2162

 

 

 

天然に移行して、馬路の戸前?から中山の天井巣板。

KIMG2171

KIMG2172

 

 

二本目も同様に。そして此の段階で、刃先の最先端へ向かって鈍角化も加えます。

KIMG2174

KIMG2175

 

 

 

研ぎ上がりです。流石に全体画像では、モーラ以上に判別不可能ですね。刃部のアップをズームしたり、刃先拡大画像では違いが見えると思います。

一本目は、かなり平坦な当て方で砥石を使って有りますので、対象への最初期の食い込みでは相当に鋭利では有ります。

KIMG2192

KIMG2196

Still_2022-04-24_202359_60.0X_N0008

 

 

二本目、刃先最先端の鈍角化ハマグリを施した方です。小刃の幅は幾分ですが広く・鋭角に。対して刃先は一本目に比べ、刃元・中央・切っ先で其々、1.5倍程度の鈍角にしてあります。

其の為、刃先さえ食い込めば、引き切りの最初から最後まで軽い抵抗で切れます。まあ、刃先最先端も角度さえ正確なら切れ自体も、そうそう劣る物では在りませんが。そして、耐久力は言わずもがな。

KIMG2194

KIMG2216

Still_2022-04-24_201813_60.0X_N0007

 

 

 

今更ですが・・・此処まで研いだ画像では、敢えて研ぎ目(角度変化を現わす縞々)を残してありますが、当然ながら消す事も出来ます(笑)。

次回の記事では、少し前に研ぎの御依頼を頂いた方との遣り取りで、研ぎ方の違いと効果(使い方の当否で効果が解り辛い?)が伝わり難かったので、其の説明をと考えて居ります。

今回のナイフ類は、同じハマグリ(鋭角化オンリーで切れ優先・鈍角化も追加で耐久性アップ)と言えども、其々にメリットとデメリットが有るので、実際に使って体感して貰うべく用意したと言う訳です。後は、切っ先方向へは鋭角化していても、小刃その物はフラット・対して、緩いハマグリの小刃の先を鈍角化した物の違い。

鋼材や熱処理如何では鋭角なままの研ぎでは、実用たり得ない刃物も想像以上に多いです。私は研ぎ後の試し切りで強度不足が判明した場合、不足が無いと思われる角度まで調整して仕上げていますが・・・俎上に上げたナイフ類は何れも、やや軟らかい仕立てと成って居り、鈍角化していない方ではヘタリが早いと予想しています。

従って切れに満足が行く研ぎであっても、実際に使って見ると頻繁に研ぐ必要が有る結果に終わったり、逆に耐久力・永切れに優れる研ぎで有りながら、研ぎ方によっては切れの重さを軽減しつつ、抜け・走りも含めて不満が出難い事も有ります。

 

 

 

 

 

出刃二種とナイフの御依頼

 

外回りの途中で立ち寄れるからと、御近所?のO様からステンレス出刃の問い合わせが。しかし、対面して御持参下さった物を見れば、炭素鋼の出刃とステンレスのナイフを合わせた三本。

基本的に、釣りで持ち帰った魚を捌く目的での御使用とか。ナイフも、締めと頭の落としに使っているとの事でしたが、何れも満足の行く切れが出ないそうで。

 

炭素鋼の出刃、研ぎ前の状態

KIMG2090

KIMG2091

KIMG2092

 

 

人造の1000番、研磨力の有るタイプで。

KIMG2101

KIMG2102

 

 

人造の1000番、傷の浅いタイプ。

KIMG2103

KIMG2104

 

 

丸尾山の白巣板、中硬と軟口で。

KIMG2108

KIMG2107

 

 

中山の巣板、硬口で最終仕上げです。裏押しの一部が、未だ刃先まで到達して居な部分も二か所ほど有りますが、次回・次々回の研ぎでは揃うと思われます。

刃元側の数cmは、裏からも角度を付けて小刃が付いていましたので、其れを踏襲して有ります。表側、刃元から切っ先までは70度⇒50度⇒30度と角度を変えて有ります。

KIMG2110

KIMG2112

 

 

研ぎ上がり、全体画像・刃部アップ・刃先拡大画像・裏です。切り刃(軟鉄部分)も、顎から切っ先・鎬筋から刃先へ向かって、軽くテーパー状を狙いつつ均してあります。

KIMG2127

KIMG2128

 

Still_2022-04-21_140708_60.0X_N0003

KIMG2129

 

 

 

ステンレス出刃、研ぎ前の状態です。

KIMG2095

KIMG2096

KIMG2097

 

 

人造の1000番、二種で。その後は、3000番も。

KIMG2114

KIMG2115

 

 

奥殿の天井巣板二種の後、奥殿の敷巣板(黒蓮華)二種で最終仕上げです。硬口・超硬口の内、前者との相性が良かったです。

KIMG2119

KIMG2121

 

 

研ぎ上がり、全体画像・刃部アップ・刃先拡大画像・裏です。此方の切り刃は(洋包丁基準で研ぎましたので)、或る程度だけ均してあります。やはり、カーブから切っ先までが厚さの残存し易い傾向に在りますね。

KIMG2130

KIMG2131

 

Still_2022-04-21_141311_60.0X_N0004

KIMG2132

 

 

 

ナイフの研ぎ前の状態です。画像では判別が難しいですが、カーブ周辺に結構な数の欠け・捲れが点在。

KIMG2098

KIMG2099

KIMG2100

 

 

人造の1000番、二種で。その後は3000番も。

KIMG2122

KIMG2123

 

 

中硬の赤ピン⇒奥殿の天井巣板カラス・中山の天井巣板カラスで相性を探り、最終仕上げは中山。

KIMG2124

KIMG2125

 

 

研ぎ上がり、全体画像・刃部アップ・刃先拡大画像・裏です。

カーブの部分には相当数、欠けや捲れが有りましたが、一か所の痕跡を除いて消退しました。その段階で、他の部分が整った為に研ぎ進めるのを留めました。

KIMG2133

KIMG2134

 

Still_2022-04-21_141949_60.0X_N0005

KIMG2135

 

 

 

O様には本日、引き取りに来て頂きましたが・・・明日の釣行で良い結果と成り、包丁達が活躍してくれる事を願って居ります。此の度は研ぎの御依頼、有り難う御座いました。

もしも御使用で、刃角度などに問題が有りましたら、調整いたしますので宜しく御願い致します。

 

 

 

 

近場のK様から日本剃刀の御依頼

 

同じ大阪市内同士として?自転車で御持参下さったK様の剃刀ですが・・・御依頼自体も作業完了も先だったものの、ブログ掲載への許可を頂いた順番が、たまたまN様と前後しましたので記載の順もそう成って居ます。

此方のつらゆきは或る程度の梳きが残ってはいましたが、やはり研ぎ易さ・刃先精度の出し易さの観点から、梳き直してから研ぎ進めました。

 

 

研ぎ前の状態

KIMG2002

 

KIMG2005

 

KIMG2006

 

 

 

リューター・ダイヤモンドシート・粗い布ペーパー・細かい布ペーパー等で、梳き直してから研ぎ始めました。

先ずは人造の1000番、三種です。硬さ・滑走感・研磨力・傷の浅さに差異が有りますので、目的に応じて使い分けたり傷を小さくして行く並びで使用して天然に繋げます。

研ぎ感・下りの速さから、鋼材としては少し柔らか目な印象。研ぎ易いとも言えますが、圧力の掛け方次第で裏表の平面・刃線の直線が狂う恐れも。特に、砥石の平面維持に留意しないと容易に影響されます。

KIMG2011

 

KIMG2012

 

KIMG2013

 

 

 

3000番まで進めば、次は天然です。スタートは中硬~やや軟質の赤ピンが合いそうだと思ったのですが、予想通りでスムーズに仕上がって行きました。

ただ、傷消しに有効な、当たりのソフトさ・泥の多さは有難いのですが、平面管理に気を使います。通常より面直しの頻度は高く、かつ使用するダイヤ砥石も選別した高精度の物(切り出し・剃刀の研ぎでは常用しています)で。

KIMG2014

 

次いで奥殿の天井巣板、中硬で。

KIMG2015

 

奥殿の敷巣板、超硬口の白と茶色。硬く細かい粒度で平面維持に優れ、しかし研磨は相応以上に速く、相性の良さを見せてくれました。

KIMG2017

 

先述の通り、柔らか目で繊細な刃先の個体ですから再度、やや当たりのソフトな砥石を経てから最終仕上げたる浅葱系統へと。此処で選んだのは中山の巣板硬口。

KIMG2019

 

中山の水浅葱と奥殿の浅葱で研ぎ比べてみた所、相性的に良かった奥殿の方で仕上げました。

KIMG2028

 

 

 

研ぎ上がりです。

KIMG2044

 

KIMG2045

 

KIMG2047

 

Still_2022-04-04_210320_60.0X_N0001

 

 

 

 

あと、本当に使える仕上げ砥石なのか(加えて、銘柄的にも合って居るのかと)御依頼時に相談を受けた砥石です。

硬さと細かさは浅葱相当とも思われましたが、どの程度までかは試し研ぎで判断しますと、剃刀と共に御預かりしていました。

KIMG2032

 

先ずは大平の蓮華巣板で曇り仕上げの状態に。

KIMG2033

 

次に件の砥石で研いで見ると、結構な光り方に。ただ、地金に研磨痕がチラホラ入るのみならず、刃金にも引け傷が。普通の?刃物には使えても(ステンレス洋包丁などですね)、剃刀の類には刃先へのダメージも予想される為、後者の用途に御薦めするのは厳しいと言うのが正直な感想でした。

ただ、名倉や共名倉の活用次第では、或る程度は改善も見込めると思います。此の砥石のウイークポイントは、砥面に現れている砥粒の集合度合いに密と粗が有る点だと考えられますが、より細かい砥粒且つ滑走に寄与する性質の砥石との擦り合わせは、充分に期待出来ます。

KIMG2034

 

再度、大平の蓮華巣板⇒中山巣板のやや硬口⇒中山の水浅葱で研ぎ直せば、やはり硬口の浅葱系統として充分な仕上がりに。しかし扱い方や刃物との相性(さらに言えば使い手との相性)で、何処の何と言う砥石が奏功するかは未知数ですので、定評の有る物だけで無く、意外性を求めた物・たまたま巡り合った物、等も組み合わせつつ調べて行くのも楽しいですね。

KIMG2040

 

 

 

 

此の度はK様には、研ぎの御依頼を頂きまして有り難う御座いました。又、御手持ちの砥石に付いての御相談を頂いた御蔭で、経験の無いタイプに触れる事も出来ました。ブログ掲載への御協力も含めて、感謝して居ります。今後も何か私で御役に立てる様でしたら、宜しく御願い致します。

 

 

 

 

 

京都から日本剃刀の御依頼

 

京都のN様から、日本剃刀の研ぎ依頼を頂きました。ほぼ梳きが無く成って居る状態故にか、今一つ?切れが出ないとの事で。

 

研ぎ前の状態、殆どベタ研ぎの状態ですね。理屈の上では、裏と表から平面で研ぎ、必要な刃先角度に成って居れば実用に足るのでしょうが、現実的には難易度が上がるとは思います。

KIMG2007

 

KIMG2009

 

KIMG2010

此方は対照的に、万全に近い状態でしたが・・・先端に近い部分は角度が不安定に成って居ました。

 

 

 

リューター・ダイヤモンドシート・荒い布ペーパー・細かい布ペーパーで梳き直し、人造の1000番三種で。先寄りの刃先が幾分、角度が不安定・元寄りの刃先が他の部分に比べて、若干ですが直線に揃っていない様子も見受けられました。

気に成る箇所が無くなる迄、砥石を交代しつつ研いで居ると又、梳きが狭く成って来ましたので、再度の梳き直しから3000番。

KIMG2067

 

KIMG2068

 

KIMG2069

 

KIMG2070

 

 

天然砥石に移行し、奥殿の天井巣板二種で。

KIMG2071

 

中山の巣板、中硬・やや硬口・硬口で順に研ぎます。

KIMG2074

 

最終仕上げは、中山の水浅葱。奥殿の浅葱と研ぎ比べつつ、より相性の良かった方を選択しました。

KIMG2080

 

 

 

研ぎ上がりです。

KIMG2083

 

KIMG2085

 

KIMG2089

 

刃先拡大画像

Still_2022-04-12_001340_60.0X_N0004

 

元寄りの部分ですが、僅かに欠けの痕跡が見えます。この後、更に研ぎ込んで見えない程度には仕上がりました。此処に至るまでにも、相当に研ぎ込んで有ったのですが。その所為で、やや砥面に接する面積が増えてしまいました。

中仕上げの段階で、幾ら研いでも無く成らない欠けが数個、出たり消えたりしました。恐らくは、表・裏の角度と面の精度を上げて行く途中、最も誤差のしわ寄せが出た部分だったのかなと。

Still_2022-04-12_001157_60.0X_N0003

 

 

 

今回の岩崎の玉鋼ですが、過去にも触れた事の有る同等品を含めて、全ての刃物の中で一・二を争う程の切れが出ました。硬さ・粘りのバランスも良く、何より組織の細かさを感じました。

N様におかれては(恐らくは研ぎ易さも改善されている筈の)此の切れの良い剃刀を、大事にしつつも存分に活躍させて頂けましたら幸いです。此の度は研ぎの御依頼、有り難う御座いました。

 

 

 

 

 

砥石の選別(下見?)

 

御二方から一本ずつ、日本剃刀の研ぎ依頼を頂いて居たのですが、一本目が研ぎ上がった翌日である昨日、久し振りに田中砥石店に出掛けて来ました。以前、研ぎ講習を受けて頂いた事も有るK様から、中山の巣板と浅葱の選別依頼を受けての訪問です。

事前に伝えて居た事も有ってか今回も、巣板をメインに相当な量と種類の原石が置かれていました。其の中から、御依頼に適う石を探しては見ましたが・・・流石に、加工前の段階と在っては確証が持てませんので、幾つかの気に成る物を取り置いて来ました。更に浅葱に付いては、別に置かれていた大きな厚物の原石を出して貰えましたので、次回の訪問までに大き目に切り分けて頂く事にしました。

 

 

 

其れ等とは別に、折角ですので予備の薄物浅葱(しかし超硬口)を始め、幾つか選別してみました。ですが今回、持ち帰ったのは資料的な目的で選んだ三点です。

 

之まで掘り進めていた巣板層の、端まで行った部分の石らしいのですが、戸前に近い質に成っている様子。嘗て、採掘をしていた方が確認された際も、同様の見立てだったそうで。

KIMG2048

 

 

巣板層では有りますが、色・柄・砥粒の状態から天井巣板相当かと思われます。研いだ感触も、硬口乍ら弾力を強く感じます。其の両方の特色に因り、極端に研ぎ減りが少ない性質と成って居ます。

KIMG2049

 

 

最後は、変わり種?と見受けましたが、馬路の巣板です。巣と巣の感覚は狭いですが、特に軟質でも無いし、巣も当たり難い質なので使い勝手に悪影響は小さいとの判断で。

KIMG2054

 

 

 

試し研ぎですが、上掲の順とは逆と成ります。

KIMG2056

予想以上の細かさで、薄曇り以上、少なくとも刃金部分は半鏡面に近い仕上がりです。サラサラとしつつも、泥が出て来ると適度な食い付きが見られます。

 

KIMG2058

此方は更に硬く細かく、半鏡面と言うよりは鏡面に近いです。相当な弾力と、強い食い付きにより、軽く滑らかに研ぎたい人にとっては扱い難く感じるかも知れませんが、個人的には面白くて好みの性質です。

 

KIMG2066

適度な硬さと幾分、サラリとした研ぎ感でしたが鏡面と言える仕上がりと成りました。

 

 

 

次回の訪問時には、浅葱と共に巣板の目ぼしい物が見つけられればと考えていますので、K様にはもう暫くの御待ちを御願い致します。

御二人目の日本剃刀の御依頼を頂いて居る、N様の作業は梳き直しが終了して居り、後は研ぐだけと成って居ますので同じく、もう暫くの御待ちを御長い致します。(御一人目は現在、仕上がり確認画像付きメールを御送りして返信待ちです)

 

 

 

 

 

静岡のM様からの御依頼、司作副鉈

 

M様から司作の副え鉈の研ぎ依頼を頂きました。鍛え地の磨きでしたが、形状的には新品状態ながら幾分は表面に傷や錆が有り、何方かと言えば外観の仕上がり重視でとの事でした。

とは言え、使用に於いての性能向上を目指して形状改善、を旨とする自分の研ぎ方ですので、先ずは切り刃の厚みを正確なテーパー状に・鎬鋤から刃先へ向けて鋭角化の緩いハマグリ・刃先手前から最先端へ向けて鈍角化のハマグリに整えつつ、錆も落として行きました。

 

 

研ぎ前の状態

KIMG1963

 

全体的には、不備も無さそうに見えますが。

KIMG1964

 

刃先手前に擦過傷と言うか、木材でも切った後の灰汁の痕跡にも見えます。あと、平も所々に傷が。

KIMG1965

 

左側面と峰に錆が少々・・・ですが、積層された地金の小さな陥凹を中心に軽い腐食と言った風情。

KIMG1966

 

 

 

人造の1000番、研磨力の強い物から。いつも通り?左側面はフラット気味・右側面はふっくらですので、右のカーブ近辺の厚みを低減。

KIMG1969

KIMG1970

 

同じく1000番ですが、傷の浅い物。より、面の連なりと傷消しを重視して進めます。

KIMG1972

KIMG1973

 

更に、研ぎ目が細かい物で刃金部分を重点的に。此処で基本的な刃先へ向けた角度調整を終えます。最先端は、天然に入ってからに成ります。

KIMG1974

KIMG1975

 

平に関しては、特に御要望も無かったと思いますが・・・部分的に傷が気に成るのと、最終的な切り刃の研ぎ肌との違いが目立つ事を考慮し、おまけで簡易的ながら磨いて置く事に。

日野浦さんの積層には、ついつい力が入ってしまう傾向は自覚しています(笑)。先ずは人造1000番の小割りから開始です。

KIMG1976

 

峰の錆を除去。

KIMG1978

 

 

 

丸尾山の中硬の巣板で切り刃の傷を浅く。平も同じく、奥殿産巣板の小割りで。

KIMG1979

KIMG1980

 

 

丸尾山の八枚の小割りで、平と切り刃を均します。

KIMG1983

KIMG1984

 

 

切り刃には天然の仕上げとして、中山の巣板各種。平は更に、丸尾山の千枚の小割り二種。中山の巣板でも同系統と言えど、4~5個も順に当てて行けば、僅かな硬さ・細かさの違い以上に弾力の多寡による反応の違いが相性の差となって現れますね。

KIMG1982

 

刃金部分の全体は、最終仕上げとして中山の水浅葱、二種で。

KIMG1985

KIMG1986

 

 

 

研ぎ上がり、全体画像です。今回の個体は最近の(刃金は白紙の統廃合後・極軟鋼は近年仕様)モデルでは無く、以前の物の様でしたので、10年ほど前の自分の手持ちに合わせて揃えた砥石・小割りが存分に効果を発揮してくれました。

まあ、極軟鋼の単体地金よりは、錬鉄との積層である鍛え地・雲竜の方が差異は小さいので、最近のモデルでも困る程では無かったとは思いますが。

KIMG1999

 

刃部のアップ

KIMG1992

 

刃先拡大画像

Still_2022-03-03_223538_60.0X_N0003

 

左側面です。やはり此方側は刃金の出方が多いですね。

KIMG1995

 

 

 

静岡のM様には、此の度は研ぎの御依頼を頂きまして、有難う御座いました。本日、御返送を完了しましたので、到着後に何か問題など有りましたら御知らせ頂きたいと思います。

或る程度以上の外観には仕上がっていると思われますが、形状・面の連なりを崩してまで小傷を消す方向には成って居ませんので御理解を頂けましたら幸いです。観賞用としては完璧では無いかも知れませんが、もしも何かの機会に御使い頂ければ形状の意味を実感して頂ける事と考えて居ります。内心、そんな機会が巡って来てくれる事を期待する気持ちも抱きつつの御返送でした。

 

 

 

 

 

週初めに京都へ行って来ました

 

田中さんから先々週、以前からの採掘で多方面(採掘口)へのアクセスを可能にし、多様な原石を持ち帰ったとの連絡を頂いたので、早速ですが週初めに伺って来ました。

今の所、急ぎでの砥石選別の御依頼は無いのですが(一件は、条件が厳しいので中・長期の構えで当たる事にしています)、私が過去に取り置いていた分を持ち帰る事、そして最近の原石を確認する為でした。相岩谷も数個、取り置いていたのですが其れは、又次回に。

 

 

KIMG1919

先代が掘っていた中の物だったでしょうか、馬路山の戸前系?やや軟口です。傷消しに役立ってくれればと選んでいた石です。

 

 

KIMG1920

中山の巣板、中硬~やや軟口です。砥粒の目は細かいですが、此方も最終仕上げの目的よりも、傷消し等の中間的な役割を期待しての取り置きでした。

 

 

KIMG1921

上画像は中山の水浅葱、硬口です。予定には無かったのですが、私の好みや必要としているラインナップを把握している店主からの御薦めで(笑)、ついつい買ってしまう砥石は有る物です。

 

 

KIMG1922

八木乃嶋だったかと思いますが、蓮華巣板です。此方も良ければとの事で、分けて貰いました。蓮華は、筋が入っている部分に特徴的に出て来る様ですが、小さい砥石とは言え全体に分布しているのは少数派でしょうね。

筋・焼け・巣の痕跡など、難の部分は避けて研いだり、酷く当たらない様に加減しつつ研げば良いだけで。少なくとも、適応する刃物・部位などを適正に当てれば充分に活躍させられます。

 

 

KIMG1925

上画像は、嘗て砥石が大量に生産されていた頃の販売促進用のグッズでしょうか、幾つか見つかったとの事で、選ばせて頂きました。私が喫煙者なら、他の浅目の物を選んだ所ですが、小物入れ用にと大き目を。

 

 

KIMG1926

此方も、過去の息吹を伝える砥石。電動工具に取り付けて使われていたのでしょうか、大きな原石からの削り出しとは贅沢な感じがしますね。初見では、人造にも見えたり粒度も中砥レベルか思われましたが、天然でした。直径と厚さは、14cm×10cm。

 

 

KIMG1923

最後は、田中さんの所で製造している1000番の砥石をサンプルで一つ、購入してみました。予想よりも、やや厚手な製品で硬目な性質と相俟って、長持ちしそうです。

 

 

 

KIMG1924

その人造1000番ですが、均等に配分された密粗のバランスの為か滑走に優れる印象。食い付きは良いのに研ぎ感に必要以上の重さを感じさせない理由にも成って居そうですが、もう一つは砥粒の目が立って居ながら、砥面の構成要件により食い込みが深過ぎない点でしょうか。

 

 

KIMG1930

丸い砥石ですが、面直しをすると但馬砥と三河白の中間と言うよりは、かなり三河に近い研ぎ感で、中硬・中程度砥粒の巣板の一歩手前な感じです。硬さ的には、やや硬口で変形し難い物。

 

 

KIMG1936

やや軟口の馬路は、其処から繋ぐのに適役で、上手に傷を浅くしてくれます。

 

 

KIMG1937

蓮華巣板に繋げば、より細かい砥粒かつ平面維持力が上がるので、一気に仕上がりに違いが。既に、普通に使える状態とも言えます。

 

 

KIMG1947

中山の巣板ですが、硬口では無くとも充分な砥粒の細かさが活きて、かなり細かい仕上がりに。当然、刃先も普通以上に切れる状態に。

 

 

KIMG1959

水浅葱で最終仕上げです。今回、持ち帰った砥石達は偶然にも、炭素鋼の切り出しなら(荒研ぎは別として)段階を追って研ぎ進められるルートを構成するチームとして使えました。

何れも、鋼材や熱処理次第で、相性的に万全で無い刃物との接触では性能を活かし切れない場面も有るかも知れませんが、各砥石ともに守備範囲は相応に広そうです。

 

 

 

いつも御世話に成って居ますが田中さんには今後も、砥石の選別や研究(趣味要素多目)に御協力頂けましたら幸いです。