遅ればせながら、掲載の許可を頂けたので

 

丁度一ヶ月前に御手元に御返送となった小刀?でしたが、次回の御依頼の序でに、件の小刀研ぎ作業の掲載許可を頂きました。

御送りした時点では、外観の美しさに関して過分な評価を頂いてはいたのですが、改めて直近の御使用に於いても問題が無かったとの文面を頂戴し、安心して記事にアップできると言う物ですね(笑)。

 

 

研ぎ前の状態。かなり、小振りな刃部と独特の柄・・・と云うか中子なんでしょうか?刃体は積層した地金で左右から、炭素鋼の刃金を挟んだ利器材と見受けました。

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軽症から中等度手前の錆は有りますが、そもそも研ぐ部分に発生した分は手入れの際に消えて行きますし、刃先の損耗は殆どが僅少。精々が、一部に欠けと云うか捲れ・一定の長さに渡る摩耗程度でした。

ただ現物を拝見するまでは、大まかに錆を落とした後に刃先周辺の軽い研ぎで切れが出るかもと考えていたのですが、峰の厚みと刃幅の狭さから切り刃全体を殆どベタ研ぎする必要が認められました。

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大幅に研ぎ落す必要性が低いので、人造砥石は研削力と研削痕の浅さのバランス的に、ややソフトな砥石群で。

600番では刃先の損耗を研ぎ落としつつ、完全ベタ研ぎで。

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1000番では、ほんの僅かに刃元⇒切っ先へ向けて、よりテーパーを強調しつつ研ぎ目を軽減。

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4000番で、刃先最先端に向けて見分けられない程に角度の鈍角化。此れは、前述の峰厚・刃幅の関係から、鋭さを出すには切り刃角に余裕が無い為です。まあ、そもそも本当に完全ベタではカーブ部分は研げませんけれど。

鋼材と熱処理の関係から、本来は耐久に不安の無い角度まで鈍角な最終刃先にしたい所でしたが・・・文面からは余り、硬い対象・ハードな使用とは限らないのかなとの印象も有り。

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天然に移行し、丸尾山の白巣板・敷き内曇りで研ぎ目の微細化と形状の仕上げです。

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中山の巣板、やや軟~中硬・中硬・超硬口の各種で、下ろし方を見極めつつ切れもチェック。

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上の段階で普通以上には仕上がったのですが・・・切っ先カーブで妙に返りが出易く、其れが取れない箇所が有り、何とか相性的に収まる物はと試し、硬口~超硬口ながらカラス混じりの同じく中山巣板でギリギリ研ぎ上げました。

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研ぎ上がりです。サイズと形状からは想像できない程に手間暇が掛かってしまいましたが、刃金の敏感さ(研ぎ目を均一にする難易度高目)と、カーブの返りが取れ難い(砥石の面の正確性への要求高目)が原因で。

恐らくは、粘りの割りに全体的に硬度が低めである事と、カーブに関しては何らかの時点(初期刃付け・再研磨時)で過熱が有ったのかなと。

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T様には、前回の御依頼とブログ記載への御協力に感謝致します。次回以降も小刀は御送り頂ければと思いますし、お尋ねの包丁の方も、御知らせしました条件を御勘案の上、御判断を御願い致します。此の度は研ぎの御依頼、有り難う御座いました。

 

 

 

 

 

割り合い御近所のO様から、重ねて御依頼

 

以前にも研ぎの御依頼を頂いたO様から、包丁を送って頂きました。一度目は、熱処理から来る鋼材の特性を鑑み、やはり常道どおり切れと永切れのバランスを取る為に、自分の中で(テストの結果を反映した)相場と成って居る角度変化(刃元から切っ先に掛けて最終刃先角度は片側35~40度⇒30~35度⇒20~25度)で仕上げて見たのですが。

次の御依頼では、もう幾許かの切れの上乗せをとの御要望を頂戴し、夫々の角度を5~10度ずつ鋭角化。そして今回、その二回目ぐらいの研ぎ方で、との指定で研ぎ進めました。

 

 

 

研ぎ前の状態。炭素鋼ですので、普通に使って居れば薄錆は出て来ますね。浅い錆なら、軽い手入れで充分に維持できます。

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恐らくは包丁のコンセプトとして、硬さが売りの仕立てでは無いので(捲れは出ても欠けが少なく、研ぎ直し易い)、通常より鋭角気味の仕様では如何かと多少の心配も有ったのですが・・・適正な御使用を為されたと拝察されます。微細な欠け(と言うか捲れですね)がカーブ辺りに連続・刃元近くに単独の欠け程度で。

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何れも軽症でしたので、人造砥石は幾分、研磨力の大人しいシリーズから研ぎ進めました。先ずは600番で刃先の荒れを取りつつ、小刃の本体を。

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次に、1000番で研削痕を浅くしつつ、刃元~切っ先に向けた角度変化を明確に。

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人造の最後は、4000番で。小刃本体の先端、最終刃先へ向かって鈍角化+最終刃先角度も切っ先へ向かって鋭角化。

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天然に移行し、丸尾山の白巣板・白巣板巣無しを用いて、刃先の形状の仕上げ研ぎ。

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梅ケ畑の赤ピン、中硬と硬口で最終仕上げ・・・を狙ったのですが、僅かに相性的に今一歩の感。

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中山の巣板、中硬と硬口で更なる向上を試した所、上手く性能を引き出せた様です。此処で言う性能とは、切れと永切れ・掛かりの良さと滑らかな切れ加減の両立の事です。其れ等、全ての要素を網羅しようと欲張るならば、どうしても使用砥石の精選を避けられない事に成ります。

普通で良いと言う事なら、マトモな砥石で適正に研ぐだけで何とか成るのですが、折角研ぐのですから(砥石も刃物も減る訳ですし)可能な限り性能を引き出したい物ですね。

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研ぎ上がりです。

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O様の様に、切れに対する御自身の御好みを把握しつつ、其れに相応しい扱い方をされるのは、大変に適切な刃物の運用方法だと思います。もし仮に、刃にダメージを与える素材で出来た俎板の使用・乱暴な力加減・刃物の耐久力を超えた対象への切り付け、等を避け得ない方であれば、如何に薄い刃先の鋭角が齎す切れを望んだとて、詮無い事でしょうから。

今後も、私の能力の許す限りに措いては、刃先形状・角度の調整等の種類を問わず、御希望に沿える様に努力して行きたいと思いますので、宜しく御願い致します。

 

 

 

 

 

今週の砥石選別

 

少し前に、理容業界の知人であるM様から、フェイスブックを通じて砥石選別の御依頼が。曰く、「村上が考える此れぞ中山巣板と言える物を」との事で。

其処で今週の頭に田中砥石へ出掛けて来ました。まあ、度々の訪問ごとに取り置きをして貰っても居ますので、其方の引き取りも順次・・・と云った面も有ります。

M様の用途としては恐らく、剃刀用と思われますので(包丁類への御使用も考えられますが)、硬さと細かさ以外に砥面の均一さをも考慮して原石・加工途中の膨大な石を見て行きました。結果的にはサイズ・形状・質的な要件で想定に合致する物が探し当てられなかった為に、次回以降に持ち越しへ。

 

 

 

下画像の左側に見えるのは、中山の水浅葱の中でも珍しい外観と質を持つ石だそうで。結構、前に紹介して頂いた時は二回り程は広い面積の不定形だったので、長方形に加工して貰った状態です。

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水浅葱としては、やや白っぽい色調に一見カラス的な模様が入って居ますね。田中さんに拠れば、浅葱の風化が進んで行く過程で、緑板?への移行途中ではと。

私の印象では、或る程度の中山(特に浅葱・黄板・一部の巣板)に特有の模様が派手に現れた物かなと。

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参考までに、手持ちの中から幾つか。先ずは、以前に購入の近い質の物。

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砥取家経由の畑中砥石由来の物。数個を購入した中で、約半分に観察できますが、相当に模様が強く出ている方だと思って居ました。しかし、こうして比べると今回に購入の石は際立って模様が多い様です。

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硬口で細かいのは浅葱として水準以上で、仕上がりは刃金・地金共に鏡面です。特筆すべきは研磨力ですが、泥が出る・やや荒いと言う要素に頼る事無く良く下ろします。緻密で均一な砥粒が適度に目が立って居る感触で、幾らか組織が荒目の鋼材の刃物でも(個性を潰す事なく)性能を引き出せました。

良く出来た刃物(一部特性が尖っているキワモノを除く)は相対的に砥石・研ぎ手に優しいと言うか、要求が高く無かったりしますが、熱処理的に硬さ・粘りのバランスを欠く仕上がりだったり、組織が粗い・均一さにバラツキを生じた場合には砥石の方でフォローする必要性が高まります。其の場合、高性能な性質である事が前提と成りますが、砥石のバラエティーに助けられる傾向が多分に有ります。

之までの選別で、想像以上のバラエティーを見せてくれた巣板系統に続き、浅葱系統でも相当に幅広く対応出来る砥石が揃って来たので、安心感も一入と云った所ですね。

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今回、取り置きを頼んだ一つは下画像の大きい方。小さい方は持ち帰りましたが、双方ともに合いさに近い質だと見受けました。

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其の小さい方ですが、超硬口で相当に細かい砥面に成って居て期待が持てます。目立つ筋が有りますが、側面から判断すると先々では半減する事が見込めます。また現状でも余程、過敏な地金で無ければ普通に使える状態です。

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研いで見ると、やはり硬さ・細かさが存分に反映され殆ど鏡面に仕上がります。硬さから考えると、充分以上の研磨力で滑走の加減もマズマズ。

ただ、此処まで硬くて細かいのならば、浅葱系統の同等品との差異が小さく成って来ますね。とは言え、やはり得意とする鋼材×熱処理の状態は全くの同一では無いので、相性探しのグラデーションとしては在り難いと言えます。違いが僅差に成る程、選ぶ難易度は上がりますが(笑)。

自分としては中山の中で一番、馴染みの無い層が合いさですので、今後の採掘が進んで行く中で最も興味深く見守って行きたいと思わされる今回の石の性能では有りました。

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一方、もう一つは並砥に近い質と思われる石でした。此方は硬口~やや硬口で、多少の泥も出て滑走良く研ぎ易いです。

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研ぎ上がりは、半鏡面~鏡面です。幾つか有る手持ちの並砥と比べて、泥の質と出方の違いも有り、より滑らかな感触でした。

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今後も御依頼の石・自分用の追加・販売用の少量を選別する為に適宜、出掛けて来たいと思って居ます。とは言え、巣板系統・浅葱系統の手持ちは充実して来ましたので、先々の異なる層へと進んだ際には又、夫々に必要なバリエーションを揃える事に成りそうですね。

 

 

 

 

 

ステンレス刀の残欠の御依頼

 

近所?の知人のS様から、ステンレス刀の残欠を砥いで欲しいとの御依頼が有りました。以前は普及品の斧や普通の包丁も研がせて頂いたりしましたが、刀剣にも興味を御持ちである事も知悉して居り就中、ステンレス製の物に御執心であると。

ただステンレスの刀は、中々に研磨して貰い難いそうで困っている様子も窺えましたので(過去に経験した事も無いし、刀剣などは研がない方針ですが)、今回の残欠は二つ返事で御受けしました。余談ながら自分としては、実用面で刀として使えるならば玉鋼以外の素材でも、別枠としてでも認めてあげれば良さそうな物だと思うのですが、世の中は難しいですね。

 

件の現物は、愛着豊川市に在った旧日本海軍の豊川海軍工廠で作られた軍刀の刀身で、1940年頃のマルテンサイト系ステンレスを用いた物と見られるそうです。御依頼の内容としては、通常の実用的な刃付けでは無く(今回の残欠は刃引きされていました)、日本刀の使用鋼材としての適性・現代のステンレス刃物と比較しての感想等を求められました。過去に例を見ない程のマニアックさですね(笑)。

とは言え、恐らくは二尺三寸程度の刃渡りだったであろう頃の、全体的な弾力・耐衝撃(構造的な強度)等は推し量るにも限界が有りますので、刃物用ステンレス鋼材としての熱処理後の仕上がりを、近年のステンレス製刃物と比べた感想・・・程度に御伝えする事に。

 

 

研ぎ前の状態。中子の一部に、青棒の痕跡も有りましたし人口の研磨剤仕上げ(或いは直近の手入れが其れ)と見受けられます。

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砥石に当てた研ぎ感と、切り刃の研ぎ肌だけでは比較検討が部分的に過ぎますので、一応は刃先を研ぎ出します。先ずはダイヤからですが、左の切り刃が予想以上に不均等。余り追い込んでも右との差異が拡大しますし、双方を大幅に研ぎ減らすのも勿体ないので、刃物としての性能を満たすレベルまで整えばOKかと。

削れ方から見ると、柔らか目の熱処理では有りますが、返りの出方が酷くは無いので鋼材の組織が均一・小さ目なのかも知れません。研削痕が一定で、引け傷に成らないのも研ぎ易さに繋がって居ます。(組織が粗い・粘りが勝ち過ぎでは逆になり易いです)

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人造の1000番、やや軟口で研磨力に優れた物。此処でも、引け傷は入らず、何方かと言えばステンレスの割りにサクサク下ります。刃先の返りが少ないのも同様です。

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人造の3000番で上記砥石の研ぎ目を細かく。既にこの段階で、鋭利な刃先が揃いつつあります。硬度は低め乍ら、粘りとのバランスは秀逸な印象。

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人造の小割り各種(200番台・1000番の二種)で、全体的に均し研ぎ。傷の消え方は普通か、やや消え易い方だと感じます。

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天然に移行し、刃先側を優先に当てつつ研ぎ進めます。使用したのは、奥殿の天井巣板(軟口)と五千両の天井巣板(中硬)。

天然砥石に対しても、余り選り好みはしない様子で無難に研ぎ進める事が出来ます。

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巣板の小割りで、均し研ぎ。使用したのは、主に丸尾山の白巣板と中山の巣板。此処に至って、流石にステンレスとしての耐摩耗性の片鱗を見せます。(特に、素性の良い)炭素鋼に比べると傷の消え方に遅滞を生じる感じ。砥石の種類を変えても、大きな違いは無さそうで。

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セーム革で裏打ちした千枚・八枚系統の小割りが少なく成って来たので、追加製作です。

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上記砥石を使っての均し研ぎと並行して、刃先最先端を八枚・千枚で仕上げ研ぎ。此方は、適応範囲の広さを見越して選別した石だっただけの事は有り、軟鉄・鋼鉄・ステンレスを問わず仕上がって行きました。

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最終仕上げは、硬口・やや硬口の中山巣板を用いて、相性を見つつ慎重に。

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研ぎ上がりです。

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今回のステンレス刃物としての私の評価は、研ぎ易さと切れの良さは近年のステンレス製刃物と比べて、勝る事は有っても劣る物では無い。耐蝕性では殆ど、440Cと同等以上と見ても良いでしょう。(研磨済みでは無い、切断面の荒い表面に水分・砥泥の長時間の付着でも錆びず)

往時のステンレス軍刀の優秀さに想到する、と云った結果に成る程には優れたステンレス鋼材と熱処理の妙を実感する研ぎでしたので、S様には感謝したいと思います。ですが、何時でも何個でもどうぞ、とは言い難い程には難易度が高かった事も事実ですので、変わり種は休み休みで御願い出来ましたら幸いです(笑)。近々、御渡し出来ると思いますので宜しく御願い致します。

 

 

 

 

 

一昨日の砥石選別

 

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一昨日は日野浦さんへ送る砥石を選別する為に、田中さんに予約を入れていた日でした。加えて、数日前にショッピングカートを通じて砥石を購入された千葉県のS様から、サイズと予算の御希望を頂いたので、追加の砥石も合わせて見て来ました。

当日は大きな原石を二つと小さ目の原石を一つ、田中さん自ら店先で切ってくれたのですが、二十四型相当の4~5本が取れました。其の中から最も良いと思った一つを先ずは確保。同時に、S様の御希望のサイズ通りに切って貰った二つを含めて数個、小振りな砥石も出来たのですが・・・質的に私が望むタイプとは少し、違って居ました。代わりと言う訳では無いのですが、大きなサイズとして切り分けられた一本が、加工途中で二つに分離。予定とは異なるサイズと成りましたが、大き目のレーザー型を選びました。

もう一方の巣板は、前回の選別で見かけた充分なサイズの物。やや硬口で高性能なのは間違い無いので、いつかは必要に成る事も有るかと取り置きを頼んでいたのですが、こんなに早く出番が来るとは思いませんでした(笑)。恐らく、S様にとっては予定より大き目に成るかと思われますが、端の方に少々ですが当たる筋が有りましたので、其の分は割安に出来ると考えて決めました。

 

 

下画像は今回の持ち帰り分の唯一の大型砥石、24型の水浅葱です。現地でも自らダイヤで平面度を上げて見たのですが、自宅で更に向上をと考えて持ち帰りましたので、判子が無い状態です。

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硬口で粒度も細かいですが、力加減次第では研磨力も相当に出ました。仕上がりも申し分ない、優秀な砥石でした。

此の状態で田中さんへ送付し、判子を押した上で新潟へ発送して貰う予定です。

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S様に選んだ水浅葱です。砥石の質としては、上画像の砥石と殆ど同じ物でした。

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此方も、平面度を上げる為に自力でも頑張りましたので、砥面の判子は殆ど消えています(側面のは健在)。とは言え、外縁部には平面が届いていない部分も残って居ます。そして砥石の質が同様ですので、仕上がりの状態は判別が困難な程に似通って居ますね。

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次は巣板です。硬さ・細かさで相当に優秀なバランスを持ちながら、扱い難い程では無いタイプで、滑走よりは食い付きを感じる印象です。

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超硬口で無い巣板としては珍しく、半鏡面以上と言えるレベルの仕上がりです。

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下は、白っぽい水浅葱ですが、中央に僅かながら干渉しそうな極細のヒビが有ります。過敏な反応をする地金でも無ければ、そう問題には成りませんので(取り置きしているカラスっぽい水浅葱の親戚らしいですし)、自分用に持ち帰りました。

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裏は、之までの浅葱系統でも一番、白い気がしますね。

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どうやら、此の手のタイプはクリーミーなパウダー状の感触を持つ様で、研磨力と滑走のバランスが良く、仕上げた刃先の掛かりも良好でした。

期待どおり?面直しを少々、頻回に行なうとヒビも減少して来たので、更に使い勝手も向上し、今後の活躍に期待です。

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最終的にS様は今回、浅葱の方だけを購入されるとの事でしたので、持ち帰った巣板は自分用として養生しました。想定していたよりも大分、早く入手する事には成りましたが、高性能かつ之までの巣板とはキャラクターを異にする砥石の追加は、仕事上で遭遇する様々な刃物に対応出来る幅を広げてくれるので、心強い物です。

S様には、此の度の水浅葱の御買い上げに感謝致します。御手持ちの刃物に適応し、活躍してくれる事を願って居ます。

 

 

下画像の奥は、小さなコッパですが中々に良さそうな巣板を選別出来ましたので、先々には販売用に持ち帰る予定です。

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後日、到着した水浅葱の性能を確認されたS様から、巣板も送って欲しいとの旨、連絡が有りましたので、予定通りに二つとも御手元に届く事に成りました。

先々、自分用としての活躍も楽しみに成って居た矢先ですが(笑)、S様の元で実力を発揮してくれるのも嬉しい事では有りますね。

 

 

 

 

 

東京から和式ナイフ?の御依頼

 

東京のY様から、凝った造形の刃物の御依頼を頂きました。一部の脇差しや短刀を彷彿とさせる形状だなとの印象でしたが、冠落としと云うそうです。作者の方の、狩猟体験からのフィードバックだそうですが、熱処理にも拘った作品だとか。刀では鵜の首造り?とか言うのも有ったかと思われますが、昔に見た記憶にある其の姿に似ている気がしますね。

 

 

研ぎ前の状態。切り刃・刃先に大きな問題点は無さそうでしたが、切っ先カーブに一か所、欠けが有った事と切り刃の三か所が入江と云うか湾の様に広く削り過ぎた状態でした。

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下画像の辺りもそうですが、右側は刃元から5cm・15cm。左側は刃元から7cm程の場所が他よりも低く、全体にツライチにしようとすれば刃は薄く・身幅は狭くなる事を避けられません。従って、切り刃が全体的にテーパーに成り、刃先の切れに影響しない程度に整った時点で留め置く方向で。

他には、鎬を立たせる事とヒルトを磨く事を御所望でした。切り刃側から鎬をギリギリのラインで攻めるのは兎も角、落とされた峰側の面構成が結構な複雑さでしたし、深追いすると樋の並びからずれてしまいそうでしたので、此方も妥当なラインを見付けるのが肝要かなと。ですので耐水ペーパー各種で、深過ぎる傷以外を消しつつ、面の平滑化と鎬筋を幾分ですが直線的に。かつ切り刃との稜線がダレない様に作業する事に。

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人造の砥石で刃先周辺を研ぎ、同じく人造の小割りで切り刃の中に残存する厚みの調整。主として切っ先方向へのテーパー化と、凹面部分の均しを狙った工程です。平面の角砥石のみで進めて行くと元来が、やや複雑な面構成である此のナイフ(本焼きの剣鉈に近い気がしますが)を、破綻無く仕上げるのは困難そうでしたので。

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天然に移行して、丸尾山の各種巣板。

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中山の合いさっぽい物。この後、丸尾山の巣板の小割り・八枚系統の小割りで全体的に均したのですが、効果が薄く。

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中山の巣板、中硬で。此の刃金は白紙二号だそううですが、鍛造・熱処理の何れか、又は双方の相乗効果か、砥石を選ぶ傾向が有りました。今回は、人造の小割り・天然の小割りの種類を相当数、用意して挑みましたが・・・砥石に因って削れる・削れない(滑る)以外に、傷が消え難い・普通に消えて行く、の違いが顕著な性格。

其の為、全体を均す為の小割りも、特定の硬さ・細かさの中山の巣板で無ければ奏功しませんでした。よくぞ、前以て数種類の小割りを用意していたなと。ただ、御依頼内容の内から、コントラストを出す事にも配慮すべきかと考え、地金部分は奥殿の天井巣板の中硬小割り(弾力タイプ)を用いました。

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刃先の最終仕上げは中山の巣板、やや硬口で。最後に、水浅葱の泥で全体を拭って完了です。

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研ぎ上がりです。

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鎬は、其れなりに揺れが減って、鋭角化も達成出来た様です。

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刃先の拡大画像。やや柔らか目の焼き入れと感じましたが、組織自体は細かい様子で、切れは相当に良好でした。

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カーブに在った欠けは、研ぎ進める内に何分の一かに低減されて来ましたので、他の部分が整った時点で通常の切れに影響しない事を確認し、留め置きました。

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Y様には、形状・熱処理ともに希少な刃物を研ぐ機会を頂きまして、有り難う御座いました。本日夕刻、クロネコから御返送しましたので、御手元に届きましたら御希望に叶う仕上がりかを御確認下さい。

御期待通りであれば幸いですが、不都合など有りましたら御遠慮なく御知らせ頂きたいと思いますので、宜しく御願い致します。

 

 

 

 

 

先週の砥石の選別

 

一週間ほど前に、頼んでいた砥石の確認に行って来ました。と言っても主目的の水浅葱は、未だ原石を確認して切って貰う事の打ち合わせ段階です。此方は、さる方から砥石の選別を相談された日野浦さんから、代行を頼まれた分の続きとして。

其の他に関しては、私が仕事で使う(言い訳?)心算の物の予備の予備、或いは其の又予備を選んで来ました。しかし稀にでは有りますが、私の手持ちの砥石を御所望の方も現れる為、(私が入手可能かつ)産出量に余裕の有る種類に限り、或る程度の砥石は多目に持っていないと駄目かなとの考えも有ります。其れに当たるのは現状、中山の巣板です。

 

 

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上画像は、いきなりですが次回以降へ向けた取り置き分です(笑)。中山の巣板と水浅葱ですが、儲からない研ぎ屋にとっては聊か以上に立派なサイズでした。それにしても水浅葱としては、相当に珍しい模様・・・浅葱系統なのに、カラスみたいですね。聞いた所では、極偶に産出するらしい希少品でありつつ、性能も優れた物とか。確かに、自分で触れた際にも独特な感覚でした。此のカラス風化水浅葱、確か田中さんは惑星とか呼称していた様な。

あと序でに、前々から不思議だった事も尋ねました。昔から、中山の巣板でカラスの話しは聞いた覚えが無かったが、直近の採掘では巣板の大部分がカラス混じりなのは何故だろうかと。答えは簡単で、古の職人たちが掘って居た箇所・方向とは、敢えて異なる部分へ掘り進めたからだと。成る程、嘗て採掘していた先達と情報を遣り取りしつつ、より意欲的?な掘り方をしているならば異質な砥石群も取れる筈だと納得しました。

 

 

 

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上は、以前に依頼されて選別した大きな砥石の切り落としです。直近の中山の巣板にしては、ハッキリとした巣が綺麗に並んでいるタイプ。硬さは、やや軟口~中硬と云った所ですが、刃金の仕上がりは充分な細かさと言えます。

 

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今回のテストに使用したのは、刃金が青紙一号の硬焼き・地金も少々、硬目の物。因って、砥粒の目が立って居る・砥面が硬い程に、綺麗に仕上げようとすれば苦労が伴います。

 

 

 

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若干ですが、戸前風味を感じる巣板。砥面の反射も独特な風情の硬口でした。

 

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充分な硬さ・細かさを反映して、仕上がりも良いですね。

 

 

 

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此方も、戸前寄りかと思われる質でした。硬さは、中硬~やや硬口の物。

 

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今回の巣板シリーズでは1、2を争うレベルの硬口~超硬口でしたが、此方は純粋な巣板としての性質を見せる物。しかし、側面から見れば一部の範囲で極めて色濃くカラスが観察できる、変わり種。通常、強烈なカラスの層は、筋や巣の周辺に出る確率が高いと思われますが、巣無しの巣板では珍しいですね。

 

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此処まで硬くて細かく成ると、巣板と言えども浅葱系統による仕上がりに、遜色が無い様です。

 

 

 

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やや硬口~硬口の細身の物。研磨力・滑走共に優秀でしたので、小さな刃物用に。

 

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此方はも相当な硬口で、やや並砥っぽいかなと感じる研ぎ感でしたが、仕上がりには特に、特異な点は有りませんでした。やはり一定以上の硬さと細かさでは、顕著な差は出難く成って行くのでしょうか。

 

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上画像は完全に、並砥と言っても良いレベルの硬口砥石でした。未だ砥面が揃ってはいませんが。

 

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仕上がりは、一級品の仕上げ砥である事を証明する物。砥石のサイズや形状は、研ぎ易さに直結する要素で重要では有るのですが・・・仕上がりに拘るならば、其れよりも石自体の性能が問われるのは、論を俟たないですね。

 

 

 

以上は、幾分ですが神経質(傷が入り易く消え難い)な刃金と地金の切り出しを使用しましたので、砥石に因っては研ぎ傷が残り勝ちでした。逆に、敏感過ぎない組み合わせの切り出しでは、最初の中硬の砥石以外、全体的に刃・地共に鏡面前後まで綺麗に仕上がってくれました。

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自分用に選んだ砥石達は、何れも細身だったり小振りだったりしましたが、性能的には間違いの無い物ばかりでしたので、今後の作業に使っても支障が出ないどころか、大いに助けてくれそうです。

 

 

 

 

 

兵庫県のT様から、ガーバーの初期モデルの御依頼

 

兵庫県のT様から希少な、最初期モデルに近いと思われるガーバーのナイフを御送り頂きました。

1946と刻印が有りますので、(本格的に生産され始めたのが1945年位だったとか?)資料によると、エンジンのピストンを溶かしてハンドルを作って居た頃の製品なのかなと。其処にハイス(ハイスピードツールスチール)のブレードを鋳込んだ、次ぎ目や方の出ない構造とした先駆けなのでしょう。

あと、形状的な特徴としては、フラットグラインドに小刃付けされて居る後年のモデルとは違い、疑似的な平・切り刃・小刃と成って居ます。とは言え、販売された時に小刃が付いていたのかは判然としない部分も有りますね・・・。兎も角、ステーキナイフやカービングナイフ主体で販売を始めた頃の製品と思われ、御依頼主からのコメントによると、1747年以前のモデルの特徴ではと。

 

 

到着時の全体画像。部分的な錆と、かなり広範囲に錆の痕跡。刃体その物は、切っ先以外の部分で均一な刃厚(長軸方向)。短軸方向では峰よりも、ほんの僅かですが鎬筋の辺りの方が厚い印象でした。

切り刃部分ではカーブの辺りから切っ先に掛けて、厚みが増していました。引き切りに於いて、其の抵抗を活かす様にS字の出っ張り(+αとしての厚み)に引っかけて切る方法も無くは無いかなと思ったり。しかし、小刃のみ研いだ状態では、新聞の束相手には不利でした。

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刃部のアップ。側面には初期の研削痕と思われます。小刃には欠けと云うよりも、角度の不安定さが見えますが、此れには刃元~切っ先カーブまで緩いS字の刃線と成って居る仕様も影響して居そうですね。

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左側面です。

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切り刃は、右側面より厚みが少ない様子ですが、カーブの辺りからは鈍角な切り刃に。

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人造の1000番で、小刃を研いでみます。

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傷を浅くする為に、天然砥石配合の物で。この時点で、S字状の為に平面の砥石では普通には当たらない箇所が明確に。そして試し切りの際、カーブ部分の厚みが抵抗に成りストップしました。切っ先部分に来ると、其れなりに抵抗は低減されるのですが。

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人造の400番で、切り刃自体の幅を広げつつ、厚みも切っ先へ向かってテーパー化。

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人造の研ぎ目の細かい1000番。

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更に当たりがソフトな1000番。

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天然に移行し、丸尾山の巣板各種。此処で、平を磨いて置きますが其の際、切っ先方向へ幾らかテーパー状に成る意図を持って作業。

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切り刃の半分程も、平と研ぎ目を揃える為に磨いた後、刃先を仕上げに掛かります。先ずは、中硬~やや軟口の赤ピン。刃先の掛かりはマズマズ。

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奥殿の天井巣板、超硬口。切れと掛かりは良いのですが、もう少し滑らかさが有っても良いかなと。

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中山の巣板、各種で。試し切りと刃先拡大画像で、もう少し追い込みたいなと(笑)。もう充分と言えば充分なんですが・・・。

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最後は、超硬口の中山の巣板層、殆ど戸前で。研ぎ上がり画像です。

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刃部のアップ。刃元にのみ、S字の名残り残存。

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左側面。

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カーブの辺りの造形も、左右差が減少。

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刃先拡大画像です。問題の無い箇所は、押しなべてこの状態に仕上がりました。

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御依頼時から指摘を頂いて居た、ヒビの箇所。

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しかし、把握されていたのは一か所だったそうですが、近傍にもう一本のヒビが。まあ、何方も致命的では無さそうですし、無理しなければ折れる事は勿論、切れへの影響も軽微かと。

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其れよりも厄介だったのは、カーブ辺りに出て来る欠けと言うか捲れ。研ぎ進めて行っても、返りが出る事無く画像の様な状態に。此れは他でも案外、見受けられた現象で、恐らくは初期刃付けの際に高温に晒された影響ではと考えています。

物によっては、粘っこく成って当該箇所のみ返りが取れなかったり、逆に捲れと成って剥離したりする様です。ただ此れは、やや硬口~硬口の中山での仕上げですので、この後に超硬口の赤ピンと超硬口の殆ど戸前で試し、より良い相性を見せた後者で仕上げる事により更に改善はしました。

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T様には今回、此れ迄で最も初期型のガーバーに触れる機会を頂きまして、感謝致します。此の当時のハイスは、硬さは控え目ながら切れは相当なレベルで有った事が分かりました。

自分では、余り刃体構造や表面の初期の風合いを激変させたくない方ですので、この様な仕上げ方と成って居ます。(性能的には幾つかの項目で改善されている筈ですが)もしも、薄さで切る方向・永切れの要求が低い場合は、使用の変更も出来ますので、御知らせ頂ければと思います。

本日、発送致しましたので実際に御試し頂き、御確認下さい。また今後も、私で御役に立てる場合には宜しく御願い致します。ブログへの御協力と合わせて、研ぎの御依頼、有り難う御座いました。

 

 

 

 

 

先週の砥石の選別

 

一週間ほど前に、田中砥石で砥石を選別して来ました。と言っても、御目当ての砥石は既に事前に下見・取り置き依頼済みの物が大半でした。

御二方からの御依頼品と、自分用の小振りな物でしたが、其れ以外にも満足すべき結果と成って一安心です。特に、大きな物は文字通りに肩の荷が下りたと感じたのですが・・・。

 

 

下画像が其れで、品質と難の無さでは文句無し・サイズ的には想定以上のレベルと成りました。大きな一塊から切り分けて貰い、更に一回り大きな方は、(先代・先々代の頃の見本と並べる為に)田中さんの所で最近の良品を代表する見本として、置いて置かれるとの事。

ただ、御依頼の文面では中山の戸前とは言え、毛色の違う方だった事を、返信のメールを送信する時点に成って気付きました。過去には無い様な勘違いでしたが、御依頼主には次回、御希望品を期待と云う事で御了承を頂き恐縮です。先々には、日野浦さん用と並んで鋭意、努力したいと思います。

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下画像は、加工途中も含む参考画像として、もう一方の御依頼主に確認して頂く為に。此方も、豪華なサイズで品質も良さそうですので、御満足頂けるかなと。少なくとも、茶色の方は確実に取り置いて貰える筈の物です(笑)。白いのは、交渉・取り合い?に成るかもですが、今後も同等品の採掘を期待出来るとの事ですし、焦る必要は無さそうです。

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下画像は、小振り乍ら超硬口で粒度も細かい、中山の巣板です。

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研いで見れば、硬口以上の砥石で見られる仕上がりで期待通り。

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数年前、砥取家経由で畑中砥石の砥石を入手しましたが、其の中にはレーザー型の中山巣板も幾つか。下画像もその一つですが、一部模様や研ぎ感が今回の砥石と似ていると感じました。硬さや研ぎ感は酷似して居り、これは往時、採掘されていた層に近い部分へ掘り進んで来た為かなと想像したり。

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次の砥石も中山の巣板ですが、此方は幾分、弾力も有る硬口。

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仕上がり的には一つ目の超硬口に近いですね。研ぎ易さを併せ持つ分、研ぎ手に優しいですが恐らくは神経質なタイプの刃物にも優しいかと(笑)。

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此の砥石に関しては、カシューで養生したので判然とし難いのですが、側面に赤紫っぽい層が見えました。

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下画像は、ある畑中砥石の側面ですが・・・かなり派手に同様の色の層が確認出来ます。以前は、こんな色の層を挟んだ巣板は有るのか?中山の層の、どの辺りかと訝しんでいたのですが今回の砥石で、図らずも答え合わせが出来た感じですね。

色柄・質とも奥殿は巣板のバラエティーが豊かですが、振り幅では及ばないかも知れませんが、良く見れば中山の巣板も結構な個性が有りますね。グラデーションで揃えて行ければと思います。

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下画像は、今回で最も小振りでしたが質と形状で魅かれた物。

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中硬でしたが、此方も仕上がりは他の石に遜色の無い仕上がり。

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下画像は、加工前に選んでいた物ですが、想像以上に変わった色彩と相当な軟口でした。此処まで来ると、色柄的にはカラスと言うより乳牛でしょうか。

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更に驚いたのは、軟口にも関わらず相当に細かく光り気味の仕上がり。このタイプは、手持ちにも殆ど有りません。特殊な使い道に備えて、待機していて貰いましょう。

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最後も、加工前から取り置きにしていた物。予想していた通り、筋は多く入って居ましたので、部分研ぎ・小割りを想定しての選別でした。

研磨力が強く、硬過ぎない中硬と、やや軟口の物が一つづつでしたので相応しい内容の作業の際には、活躍して貰う予定です。

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あと、加工途中の大き目砥石の切り落としも取り置きして来ましたので、次回訪問の際は其方もと。中山の巣板としては、明確な巣の層が入っているタイプですが、性能に特色があるタイプの可能性が。

畑中砥石の一つに、同様の巣の入り方の砥石が有り、切り出し等の平面の刃物に好適だった、其の手持ちの小振りな物に準じる性能を期待しています。

 

 

 

 

 

和式のナイフを和式の研ぎで

 

同じく大阪府下では有りますが、南寄りの市からY様が和式ナイフを御送り下さいました。白紙一号で、作者の方からは強めに焼きを入れ、切れに拘ったとの説明だったそうです。

御依頼の内容としては、狩猟に御使用だそうですが・・・切っ先の鋭すぎ問題(皮剥ぎの際に突き破るとか)・欠けが出易い問題への対処と共に一度、初期刃付け以上の確りした研ぎをとの御要望でした。

 

 

研ぎ前の状態。予想とは違い、結構なホローグラインド風味の切り刃と成って居ました。ぱっと見では、刃先のみの調整でも行けるのでは?と考えましたし、逆にフラット気味に仕立て直してテーパー状にすると、相当に削り落とす範囲が広く成るのを懸念しました。

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先ずは、刃先から研いで様子を見る事に。人造の1000番、研磨力の有るタイプで滑走にも優れる物から。

下画像は同一角度での小刃研ぎでしたが、小刃の幅に結構な違いが。つまりは(ホローグラインドとは言え?)切り刃の厚みの抜き方が中央に多く残っている傾向に在る訳です。

この時点で、切り刃全体から整える方向の研ぎに修正。

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続いて人造の1000番、傷の浅い物。小刃の方から研ぐ面積を広げて行き、ホローの傾向を小さく。其の上で、刃先・切っ先へ向かって鋭角化のハマグリ形状に。

あと、切り刃のベース角度と言うよりは、厚みの残し方が左右で違う事も判明(左ふっくら・右ベタ寄り)。人造の小割り・天然の小割りを駆使して、厚みの残存箇所を集中的に減らして切っ先方向へテーパー状に。加えて、残すべき厚みの箇所を除き、初期刃付けの研削痕を消して行きます。

上記内容を施した事により、小刃の幅が均一に成って来て居るのが分かりますね。(寧ろ幾分、切っ先へ向けて鋭角化も進めたので小刃が広がる傾向の筈です。しかし、そう成らないのは切り刃自体の厚みのテーパー化が奏功している為です)

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天然に移行し、丸尾山の白巣板・敷き内曇りの中硬・やや軟口で傷消し・形状の仕上げ。

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中山の巣板、やや硬口と中硬で更に仕上げて行きます。刃元から切っ先に掛けて、刃先最先端は片側35度・30度・25度で。欠けを警戒して、繊細な使用を強いられるとの事で、幾分は用心を。

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最終は、同じく中山の巣板の硬口でと思ったのですが、刃先の拡大画像と切れのテストで未だ追い込めていないなと。

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熱処理の加減か、かなり鈍角であっても研ぎのストロークが僅かに揺れるだけで、ミクロの欠けを誘発する粘りが少ないタイプの様子。

従って、砥面の崩れが少ない硬さを持ち、尚且つ引けを生じさせる相性では無い相性の砥石を要しました。中山の巣板層の近辺で取れた戸前相当の物で何とか。

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研ぎ上がりです。切っ先カーブから切っ先は、殆どホローの痕跡も消退。残りの部分でも、刃元以外は鎬側に3~4割り、浅く残存するのみと成って居ます。

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刃先拡大画像

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切っ先に関して、一番の安全策はポイントを2mm程、落として丸める事では有るでしょうが・・・簡単に出来るが簡単に戻せない方法は最終手段だとの認識です。ですので切っ先寄り1cm位の範囲は、最終刃先角度を片側70度で研いで見ました。此れでも、頑張れば鉛筆を削れるレベルです。柔らかい物に、そっと押し付けた程度では切り込めませんが。

逆に、他の部分は刃線の全てに渡って、髪やナイロン相手でも「対象に押し付け過ぎずにブレずにスライドさせれば」切り込める、何時もの仕様です。

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Y様には、時間的にも料金的にも制約が少ない条件での御依頼を頂きまして、有り難う御座います。切っ先の処理で問題が無いかが一番の懸念事項ですが、他の部分に関してもお気づきの点が有りましたら、御知らせを頂ければと思います。

現状で御満足頂けましたら別状、不都合が有る様でしたら、どの部分でも仕様の変更・微調整は可能ですので、宜しく御願い致します。

 

 

 

 

 

研いだ包丁のビフォーアフターなどを載せていきます。