先行していた御依頼が途切れるタイミングで、キャンプ用のナイフの研ぎ依頼をO様から頂きました。その御蔭で、珍しく到着後の二日間で仕上がった作業となりました。

 

 

研ぎ前の状態、右側面全体画像。刃先の一部に割り合い、大きな二つの刃毀れと、小さな幾つかの欠けが。

 

刃部のアップ。刃体の厚みと幅から見て、切り刃が狭く鈍角目に感じますが、頑丈さを重視しての設計かと思われます。

初期刃付けの段階で、切っ先カーブから切っ先までは、殊の他、切り刃が狭く成って居り、カーブ部分の厚みの残存も多目です。

 

同じく、左側面画像です。

 

此方側からもハッキリ欠けが見えますね。

 

 

 

人造の320番から研いで行きます。欠けを研ぎ落す為に、或る程度の刃幅が減りますので、（切り刃が狭い事も有り）鎬筋をその分だけ上げます。

加えて、僅かながらも鋭角目にしつつ、切っ先へ向かって鋭角化も狙って研ぎます。カーブから切っ先に掛けの切り刃の幅も、他の部分に遜色なく広げました。

 

人造の1000番で切り刃の中の厚みを、切っ先に向かって漸次、抜いて行きます。

 

 

人造の3000番で、更に研ぎ目を細かくしつつ形状を整えます。

 

 

 

天然に移行し、対馬で研ぎ目を細かくしつつ、最終刃先角度を切り刃角よりも僅かに鈍角化。此れを想定して、前段階で切り刃角事態を鋭角化して置いた訳です。

 

丸尾山の巣板各種で仕上げて行きます。

 

八木の島の巣板・馬路の戸前で更に。

 

最終仕上げは、中山の合いさ硬口で。

 

 

 

研ぎ上がり、全体画像です。

 

刃部のアップ。

 

刃先拡大画像。

 

最大の欠けの部分は、研ぎ進めると奥の部分が崩れる傾向が。強硬に研ぎ減らしても良かったのですが、他の部分は整っているのに無駄に減らすのは憚られ、研ぎ期間も料金も変わって来ますので、此の段階で留めました。

 

同じく、左側面です。

 

此方側から見る方が、欠けの痕跡は目立たないですね。

 

 

 

此の度は、O様には研ぎの御依頼を頂きまして、有り難う御座いました。

初期刃付けの状態よりは、切れ・抜け共に向上している筈ですが、物理的に鈍角だった状態よりは「欠け・潰れ」に繋がる条件には御留意の上、御使用を御願い致します。