大阪府下のB様から、BUCK110を御送り頂きました。私自身も、112と合わせて所有していますし、之までに幾人かの方から研ぎの御依頼を頂いた事も有るナイフですが、製造時期に因り結構な違いが有ると感じます。
手持ちの物では少し、硬さより粘り重視かなと思って居たのですが、その後に研いだ新しいモデルでは硬さが追い付いて来た印章に。但し金属の組織としては、若干の粗さも感じないでは無かったです(尤も、鋼材自体も初期の425モディファイから420に成って居たんでしたか)。
そして今回の物は(製造の時期・鋼材までは分かりませんが)一番、バランスが整っていたかも知れません。荒砥から中砥段階までは、刃先の軟らかさも有りましたが、仕上げに入って刃先が整って来ると確り感が増しました。
研ぎ前の状態、左側面。恐らくは、初期刃付けの段階での切れに不満が有ったのかと察せられる、鋭角目な研ぎ跡が有ります。ただ、研ぎ目は粗いので鋭利さを感じるには更に細かい研ぎ目の方が良さそうです。
同じく、右側面。研ぎ目の均一性・研ぎ角の安定性はマズマズながら、特に左の刃元寄りの刃線は、凹気味でしたが・・・初期刃付けからの影響も否定し切れませんね。
刃部のアップ。鋭角目に研ぎ直されている心情を鑑み、其れを踏襲する様に、僅かですが広目の小刃の幅で(荒目の研ぎ目を消す意味も含め)研いで行きます。
研ぎ始めは、人造の320番からです。研磨力も重要ですが、平面維持にも優れるタイプが重宝します。特に、形状が或る程度以上に整っている場合は。
続いて、研磨力の有るタイプと研ぎ目の細かいタイプ、共に平面維持にも優れる1000番で。
3000番で最終的な小刃の幅と形状を決めます。今回は此処まで、小刃その物は殆どベタ研ぎで来ていますが、刃線中央から切っ先にかけては幾分、鋭角目に研いで居ます。
天然に入り、硬目・細か目の対馬で。基本的には3000番までの研ぎ方と同様です。
八木の島の蓮華巣板(中硬)で傷消し。
馬路の戸前(やや軟口)で更に仕上げつつ、小刃の幅の半分程で、刃先に向かって極僅かに鈍角化。
最終仕上げとして、中山の硬口~超硬口の戸前系。刃先最先端を漸次鈍角化+切っ先方向に鋭角化し、小刃の形状を整えます。
研ぎ上がり、左側面です。
同じく、右側面。
刃部のアップ。
刃先拡大画像です。
B様には、此の度は研ぎの御依頼を頂きまして、有り難う御座います。御任せとの御意向でしたので、通常(切れ・永切れ両立)よりは切れ優先で研いでみましたが、もしも御手元に届いた際、御不満が有りましたら、更に鋭利に微調整も致しますので、御気軽に御連絡を御願い致します。