両刃の和包丁(中屋平治作)

 

中屋平治作 三徳 黒打ち

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IMG_0099平治三徳初期6

 

中屋平治作 イカサキ・磨き

IMG_0152 平治作 イカサキ 5IMG_0199 平治作 イカサキ 5

 

IMG_0231平治イカサキ霞仕上げ

 

IMG_0229平治イカサキ鏡面仕上げ

 

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続いて両刃の和包丁、水戸の中屋平治作です。おまけは同・イカサキの霞仕上げと鏡面仕上げ(知り合いに頼まれていた分を戯れに研いだ鏡面なので、略式ですが)です。

こちらは白紙一号と同等以上とも云われるスエーデン鋼の刃金で出来ており、地金は研ぎ易い上質な極軟鋼です。三徳は珍しい三枚打ちで、イカサキは伝統的な鋼付けです。司作もそうですが、焼き入れは松炭を使用しての水焼き入れで脱炭防止と確実なマルテンサイト化を実現。加えて均一で微細な組織である事も相俟って、粘りを備えながらも硬質な刃先を感じられます。

近頃は何でもかんでも芯に刃金(炭素鋼・ステンレス鋼に関わらず)が入っていれば、割り込みと呼称されます。鋼材メーカーで、(積層含む)地金で芯材をサンドしたものと、鍛冶屋が刃金一枚・地金二枚の計三枚を鍛接した物は一緒にするべきではないし、断面で見るとV字型の地金が刃金をくわえ込んだ本当の割り込みが存在する限り、軽々しく割り込みの呼び方を氾濫させるべきでも無いと思います。

どちらが優れているとか、高級だとか、性能に違いが有るかは製造段階の適切さや製作者の経験・知識・技術に依る所が大きいので、一概に言えない所もあります。であるならば、尚の事きちんと分けて表示・販売すべきでしょう。一般人には説明が難しいというならば、製造・販売側の怠慢であるし、高級そうなイメージや高性能をほのめかす意図があるならば、更に問題だと思います。利器材でも三枚でも割り込みでも、機械化がどれ程の割合でも、作り手が値段と性能のバランス内で切磋琢磨され、その刃物の良さを公明正大に世に問われる事を望みます。そして使用者側もそれを的確に判断でき、是々非々を認識出来るようにならなければと思います。

 

両刃の和包丁(味方屋作・司作)

 

味方屋 三徳・磨き

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司作 三徳・磨き

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司作 ペティ・黒打ち

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片刃が代表的な和包丁ですが、両刃の物もあります。多くは一般向けのシリーズになるかと思いますが、洋包丁と和包丁の利点を併せ持つ便利さもあります。

片刃の和包丁では、切り刃の反対側は裏梳き・裏押しが無ければなりません。これは裏の平面を保ち、食材の張り付き防止の観点から必須です。これが両刃となると、両面に切り刃が施される事になります。一見、鈍角且つ張り付き易そうな見た目から、片刃和包丁が劣化しただけと思われる向きもあるかも知れませんが、仕組みを理解して特性を活かせば、独自の活躍も期待出来ます。

そもそも殆どの洋包丁は厚みの変化は兎も角、ブレードがフラットな構造で、刃先は小刃と言われるエッジが付いているシンプルな構造です。元々の厚みが薄いとは言え、張り付き防止や切り抜け重視で、ブレード本体を肉抜きしようとしても、理解や技術を伴わないと難しいでしょう。しかし、和包丁には平と切り刃の角度の違いがあり、その上、刃先に糸引きや段刃を施す調整幅があります。つまり、平の厚み自体は難しくても、切り刃を鋭角にして切り込む抵抗を減らしたり、ハマグリ状に研いで張り付きを軽減する事。そしてその帳尻合わせや更なる追求を刃先で調整出来る、多角的な作り込みで目的の効果を得やすいのです。

勿論、使用目的によっては、両側の切り刃や刃先の角度を均等から6:4や7:3他、不均等な仕様にも出来、片刃和包丁とも洋包丁とも違う、独自の境地を持っていると思います。刃金に純炭素鋼を使用したものは、ステンレスとは一味違う切れ味・研ぎ味・食材の味を楽しめるので、その辺りに目覚めた方や意欲のある人には、長所を使い分けて有意義なキッチンライフ(調理・食事・研ぎ)を送って頂きたいです。

画像は、日野浦さんの実家の鍛冶屋銘、味方屋作のステンレス地金に炭素鋼刃金(白紙二号)を挟んだ三層利器材使用の三徳、霞仕上げ。そして司作の極軟鋼に白紙二号を割り込んだ三徳、霞仕上げと鏡面仕上げです。おまけは、地金が鍛え地の雲龍ペティ鏡面仕上げです。

 

和包丁は気持ちが引き締まる感覚

 

河内の守 国助   出刃・薄刃(五寸五分)

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同、正夫(尺一)

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水野鍛錬所    本焼き柳刃(尺)

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同、薄刃(六寸五分)

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同、本焼き薄刃(五寸五分)

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酔心   柳刃(尺)

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同、柳刃(尺一)

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洋包丁と違って、伝統的な和包丁は片刃が多いです。切れ味に優れており、特に削ぎ切り・薄切りに適していると思いますが、使い方に習熟しないと切り込める角度の制限の違いや刃の進み具合に方向性がある為、両刃よりはとっつきにくいと思われます。

しかし、一度その構造から来る、使い心地や操作性の違いを体験すると、そういう成り立ちの意味が理解出来、やはりこの目的にはこれ。という意識になると思います。

特に柵から刺身を引く、柳刃を代表とする所謂刺身包丁は、その長さ・厚み・刃幅のバランスが独特で、他では代用出来ない使い心地で作業内容をこなしてくれると思います。刃先の鋭利さのみならず、切り刃の状態・裏の精度・仕上げる砥石にも依りますが、食材の風味を一番引き出せるのは、純炭素鋼製の和包丁だと感じています。

画像は初期に手に入れた河内守国助・水野鍛錬所・酔心の手持ちの包丁です。これらが今のところ、和包丁の中では、最も使用している相棒達です。基本的に、自分は白紙をメインに使っており、1号から3号まで、それぞれ特性と目的に応じて刃の付け方・仕上げる砥石を調整しています。

 

包丁以外のお気に入りの刃物

 

司作 山小刀・黒打ち・鎚目

IMG_0059  司作 山小刀IMG_0060 司作 山小刀

 

IMG_0077  司作 山小刀

 

IMG_0063 司作  山小刀

 

 

司作  副え鉈・鍛え地・磨き

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司作 角鉈・黒打ち

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IMG_0119 司作鉈 3.5

 

 

司作 角鉈・鍛え地・雲龍・黒打ち

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その一番好きな鋼の状態になっている刃物達です。ありとあらゆる製品を試した訳ではありませんので、万人に最適だとか、全ての中で最高だとかは勿論分かりません。しかしこれまで巡り会ったものの中で、硬さ・粘り・切れ味・研ぎ肌・研ぎ易さの総合で最も納得いったのは間違い有りません。

こちらで通常、使用される刃物鋼は白紙2号Aなので、素材的に理屈の上では白紙1号やスエーデン鋼等の方が組織が細かい、或いは玉鋼の方が高性能などと云われそうですが、実際に刃付けによっては自作のカウリXナイフ(ロックウエルのCで67以上)に近い刃先剛性と耐摩耗性、そしてそれを上回る切れ味と研ぎ易さ・綺麗な研ぎ肌を経験し、粉末冶金法熱から冷ましてくれました。白紙という鋼材が、本来持っている性能を充分に発揮させる事さえ出来れば、錆びに対する用心以外では、ほぼ満足すべき鋼材がずいぶん昔から有った事に気づかせてくれた刃物達です。

 

自作切り出し

 

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刃部 アップ

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表 刃先拡大画像 200倍

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裏 刃先拡大画像 200倍

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三重県松阪の月山さんと共に、新潟県三条の日野浦さんの所に鍛冶体験で切り出しを作りに行った時のものです。

かなり以前から作品を買いに、ほぼ毎年の様に刃物祭りに行っていましたが、工房まで行く事はなかなか無いだろうと思っていました。しかし、鋼の仕上がりでは最も自分の好みの刃物を作っているところで、直接指導を受けながら体験させて貰えたのはとても有り難い経験でした。

実際の製造工程と、逐一同じとは行かないまでも、かなり正確な手順と諸注意を守って進めたので、出来上がった切り出しは製品レベルに近い仕上がりでした。僅かに焼き戻しでもたついたからか硬度はやや甘いかなと言う印象ながらも、切れ味と粘り・研ぎ肌の精細な仕上がりは充分実用に耐えうる以上のものでした。

少し以前の研ぎの約200倍の拡大画像でも、まずまず均質な研ぎ肌と刃先で、研ぎ進んだ最近は更に安定しているようです。これなら司作に準じる出来と言っても過言ではないなと喜んでいます。

 

切り出しの本刃付け

 

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画像は数年前に注文し、砥取家の土橋さんにプレゼントした切り出しで、携帯で撮ったので鮮明ではありません。

初めは切り刃と裏を除いて、がさがさした焼き肌で、それを落とす所から出発しました。ペーパーや研磨剤で磨いていき、ガンブルーで染め、更に軽く磨きました。又、裏梳きも研ぎ目を消し、磨いてあります。(主に研ぎ最中と保管中の錆対策です)

粗砥(電着ダイヤ400/1000と240番)から人造中砥、天然中砥、巣板・合砥・カミソリ砥で仕上げました。研ぎ肌の見本も兼ねて、完成時より、やや鋭角に研いであります。

最後の2枚は、数ヶ月前に錆や刃毀れが酷かったので、ほぼ取れるまで修正の研ぎを加えた時の物です。

新品から、いきなり完全平面の鏡面仕上げを求めると、刃先が出てからも更に研ぎ下ろしていかないと均一な面が出ないので、勿体ない事になります。普通は、使いながら研ぎ直す度に平面度を上げていくのが望ましいでしょう。それまでは霞仕上げで追い込んでおいて、いよいよ整ってからは勇躍次の段階へ。と言う具合です。純然たる観賞用で無い限りは、研ぎ費用の面からも、刃物の寿命からも、その方がお勧めです。

 

初期刃付けと本刃付け

 

購入時の状態

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人造 中研

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人造 中仕上げ

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人造 中仕上げ(細かめ)

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人造 仕上げ

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天然 巣板

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天然 巣板(細かめ)

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天然 合砥

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天然 カミソリ砥

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初めから面が出ている刃物は少ないものです。多くは、切り刃(勿論、刃先も含めて)を任意の形に再構築する必要があります。

今回は、ホームセンターで手に入れた普及品の切り出しを大まかに面が出るまでの経過を撮ってみました。砥石は、電着ダイヤや240番からキングデラックス・キングハイパー、過去の天然砥石配合人造砥石の対馬名倉バージョン・巣板バージョン、巣板・合砥、カミソリ砥と、12種類を使い、6時間ほど掛かりました。

実質1000円程の切り出しでしたが、案外組織は細かく、錆びも出にくい、切れ味の良い製品で、特に長切れを異常に求めなければ、研ぎ肌の美しさも含めて、十分な仕上がりでした。

問題は、値段からは想像出来ない程の、研ぎに対しての応えてくれ具合では無く、その本体価格を遙かに上回る事になる研ぎの費用をどう捉えるかでしょう。確かに吊しの状態とは比較にならない面精度、美しさと錆びにくさを併せ持つ切り刃、より繊細な刃先がもたらす滑らかな切れ味は意味のあるものです。

その価値を認め、その違いを求める人には納得して頂けると思います。しかし、普通は高価な刃物には拘りの研ぎが相応しく、そうで無いものには研ぎもそれなりになるのでしょう。とは言え、一人の道具好き、特に刃物好きとしては、どんな物でもより綺麗に、より性能を引き出してやりたくなってしまいます。

この、確か梅鉢龍馬といった切り出しも、一本は研ぎの見本とプレゼントを兼ねて知人の元に贈り、もう一本は自分の雑用にと購入しましたが、予想以上に研ぎに応えてくれるのが分かると、やはり手荒くは扱えなくなりそうです。