昨日の研ぎ講習 出刃包丁

 

昨日は、小坊主様が研ぎ講習に来られました。三重への御出掛けの帰りに立ち寄って頂き、久し振りに御会い出来ました。

御持参の包丁は出刃でしたが、近隣の方から預かってボランティアで研いでいる包丁も持ち込み、研ぎの方向性に付いて尋ねるなど、以前にもまして熱心さを感じました。

 

 

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研ぎ前の状態。先ず、出刃に有り勝ちな厚みの残り方や薄くなり過ぎる傾向にある箇所を指摘して置き、実際に砥いで行く事で違いが出るかどうかを観察して貰いました。

刃元が薄く、切り刃中央から切っ先カーブの鎬側に厚みが有るとの予測でしたが、大まかにはその傾向通りで。但し、刃先の切れもまずまずで其れを酷くスポイルしない程度の状態でした。

 

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研承の400番で切り刃全体を。柔らかいので、包丁の形状に馴染んで全体的に当たってくれている様に見えます。

 

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しかし硬目と成る1000番では、当たっている部分とそうで無い部分の違いが明らかに。

其の後、傷の浅い1000番・3000番で余分な厚みを取りつつ、角度変化を狙い通りに近付けて行く研ぎを施します。各工程をクリアする度に、切れの変化を体験して貰いつつ。

 

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小割りの人造砥石で、更に切り刃を均し研ぎ。

 

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もう一段、細かい物でも同様に。

 

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天然に移行し、説明通りの当て方・研ぎ方が出来るか試して貰います。

 

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形状・切れに問題が無く成って来たので、この後は戸前や赤ピンなどで糸引き・裏押しの練習を。切れに違いが出る事も良く理解して頂けた事と思います。最終は、巣板の小割りで切り刃を仕上げて浅葱で刃先と裏押しで仕上げました。

 

 

 

今回は、大変長く様々な会話をしました。物事の概念や、抽象的な事象の捉え方などに付いての質問に答える形が多かったと思います。研ぎに直接関連する内容から、少し離れた部分・思想信条など色々ですが此処では詳細は伏せます。

しかし、突っ込んで聞いてくれた部分には、頭を整理させられたと言うか伝え方が舌足らずだったと気付かされた部分も。下画像は、私がハマグリに付いて説明する時に言いたかった事を略図にした物です。鎬筋から先の、切り刃(両刃)と考えて下さい。

一般に、ハマグリ刃と云うと鈍角で刃先が厚い・切れないと捉えている層が存在しますが、それは①の研ぎ方しか念頭に無いからでしょう。つまり、BとB´からAに向かって砥ぎ減らしながら刃先へ向かって角度を起こしつつ(カーブを描いた点線の形状を目指して)砥いで行く。

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しかし②の様に、逆にAを起点としてB・B´へ向けて厚みを抜いていく事でハマグリにする事も可能です。其の場合は、元の角度・厚みよりも薄く鋭角に仕上がるので、「ハマグリが切れない」との言説が如何にあやふやか分かろうと云う物です。

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私が良く言う、「耐久性重視のハマグリ」が①であり、「切れ味優先のハマグリ」が②である訳ですが、自分で研いでいるのは複合的な形状です。

個体其々で違って来ますので、一辺倒に語れませんが基本的には切り刃全体を②の(緩い)ハマグリで研ぎ、刃先の3mm前後で①のハマグリで仕上げます。その際、切り刃も刃先も顎から切っ先に向けて鈍角から鋭角に変化を付けています。切り刃・刃先の双方に其々、最適な変化を付け分けて効果を最大限(しかし研ぎ減らす量は最小限)に狙います。

模式的には、②の上に①が載っているイメージでしょうか。切れと永切れを両立させるためにはと、研いで使って考えた結果が此の形状に成りました。汎用性の高さは抜群だと思っています。

 

 

 

小坊主様には、興味深い御話しの中で各分野に亘って頭の整理や内面の見直し?も出来ましたので、受講頂いた事と併せて感謝致します。少々、遠方からに成りますので度々は難しいと思いますが、御説明しました今回の内容を周辺でのボランティア研ぎに活かして頂けましたら幸いです。有難う御座いました。

 

 

 

 

 

御近所の繫がりで御依頼

 

半月ほど前でしたか、日頃から通っている和菓子店で聞いていたのですが、買い物に来られた中に研ぎを希望する方が現れたと。店内には私の名刺や関係した本を置いてくれているので、来客時に目に留まり興味を持たれたとの事。

三日前の帰宅時、自転車で追尾して来たのが御当人で、その場で依頼されて包丁を受け取りました。一般の方は、予備の包丁が少ない場合も有りますので、急いで返却した方が良いのかと翌日に間に合わせたので簡単に御紹介です。あ、記事への記載は確認していませんでしたが、和菓子好きの近所のよしみと云う事で。

 

 

研ぎ前、全体画像。研がれた形跡は有りますが、現状では切れなくなっていました。側面の傷は気に成りますね、その効果も余り無さそうですし。

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研ぎ前、刃部アップ

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研ぎ前、刃先拡大画像

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研ぎ前、左側面

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人造の400⇒1000⇒3000番から、中硬の黒蓮華⇒赤ピン⇒中山並砥です。やはり、この系統のステンレス(質と硬さ)には並砥の相性が際立ちます。

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研ぎ後、全体画像。特に御要望が有った訳では無いのですが、大きな傷くらいは目立たなくしようかと。

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研ぎ後、刃部アップ

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研ぎ後、刃先拡大画像

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研ぎ後、左側面

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御依頼主は、結構な包丁好きとの事で、キッチリ研いでくれる所が良いとの事でしたが、届けた際には此の位の外観の変化でも綺麗に成ったと。使って見た結果、切れと永切れでも今回の研ぎに満足して頂ければ幸いです。そして、間を取り持って頂いた和菓子店の旦那にも感謝です。有難う御座いました。

 

 

 

 

 

司作出刃、流水飛紋

 

北海道のS様を介しての御依頼は、司作の出刃に私の研ぎを施す事でした。日野浦さんに問い合わせた所、偶然にも御希望のサイズに近い出刃が。

ただ、地金の種類としては最高額となる流水飛紋でしたので、少々気に成ったのですが問題無いという事で取り寄せました。

 

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研ぎ前、全体画像

 

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研ぎ前、刃部アップ

 

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研ぎ前、刃先拡大画像

 

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同じく裏

 

 

 

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人造の400⇒1000⇒3000番

 

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人造の小割りで地金部分の均し研ぎ

 

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成の1000番で全体を

 

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中硬の巣板の後、中硬の中山赤ピン

 

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地金部分を巣板各種で

 

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刃金部分を硬口の奥殿巣板(天上・本)の後、中山の戸前

 

 

 

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研ぎ上がり、全体画像

 

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研ぎ上がり、刃部アップ

 

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研ぎ上がり、刃先拡大画像

 

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同じく、裏

 

 

元から可成り整えられた切り刃でしたが、中央とカーブの鎬筋側の厚みが気に成り、角度変化と共に調整しました。あと、刃先最先端まで薄目に成っていたので、刃金部分全体に鈍角に研ぎ直して更に最先端は刃元60度強⇒切っ先30度強。

刃体その物が薄目でしたので、刃先角度も其れに合わせて極端には強度優先にはしませんでした。それでも通常使用では十分な刃持ちだと思われます。上手く扱えば髪の毛に押し付けるだけで切れる程度には鋭利ですが。

本日中には、クロネコから御送りできると思いますので、現物が届きましたら御確認を御願いしたいと思います。お気に召して頂けましたら幸いです。此の度は有難う御座いました。

 

 

 

 

 

昨日の研ぎ講習 出刃包丁

 

二か月ほど前でしたか、柳を御持参で受講して頂いたA様が、今回は出刃を研ぐために講習にいらっしゃいました。

 

研ぎ前の状態。刃元寄りの切り刃の厚みが減らし過ぎ・逆に刃金部分は少々、効果が薄い段刃なっていました。他には、切っ先カーブの後ろ側の鎬筋付近にも厚みが残存。

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先ずは、私が問題点を改善する為に400⇒1000⇒3000と、番手を上げつつ研いで行きます。研ぐ前に解説し、途中で角度変化・部分研ぎの痕跡を敢えて残した研ぎ目で確認、逐一その効果を試し切りで体感もして貰います。

通常は、その後で天然に移行して、御本人にも問題改善に必要な研ぎ工程を作業して頂くのですが・・・研承の成シリーズに興味が有るとの事で試し研ぎも。

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一段落した所で、より実務的な部分研ぎも披露。前段の研ぎによって其の頃には半減して来ていた厚みの残存箇所を、更に人造の小割りでピンポイントに狙います。

効果的な均し研ぎには不可欠な工程であり、また傷消しも兼ねてシャプトンの1000番で荒仕上げの後、柔らかい1000番でも。最後は、奥殿の天井巣板内曇り。

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切り刃自体が整いましたので、次は各種の天然砥石の違いに因る、刃先性能の差を体験して頂きました。糸引きと裏押しですね。

私が例を示した上で、御自身でも。研ぐ人間による違い・巣板同士の仕上がりの違い・赤ピン同士の仕上がりの違いを実感し、予想以上の差に驚かれた様子。

下画像は、奥殿の天井巣板カラスを試している場面です。私が直接、砥石達が山裾までズリ落ちて来ていた辺りで採掘した一つ。山頂の超硬よりは一~二段階、柔らかいですが研ぎ上がった刃先の滑らか且つ掛かりの良さは、流石に同系統と思わされます。

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各種、工程を経て形状・性能・外観ともに向上した出刃。

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帰り際には、奥殿の天井巣板カラスのサンプルをプレゼント。因みに、此方も前出の画像の砥石と同日に採掘して来ました。

前回の赤ピンに付いても質問を受けましたが、天然にも御興味を持たれている様子。先々、真剣に向き合おうと成れば、御参考にして頂けましたら幸いです。

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A様には、此の度も研ぎ講習に御出で下さり、有難う御座いました。次回は、更に大きな出刃に関して御予約を頂きましたので、楽しみにして居ります。

 

 

 

 

 

次の研ぎを前に

 

数年前に一度、研ぎ依頼を頂いた事がある方から御連絡が有り、二度目の送付を御待ちしている間に・・・。

 

 

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北海道のS様に御依頼を頂いていた、VG10の無垢で出来たペティが届きました。服部に居た頃の先輩に頼んでいた物ですが、序でに自分用にも一本、余分に作って貰いました。(画像下側)

仕様は、1050度焼き入れ(硬度62)・160度焼き戻し120分・数か所の計測で硬度61±0.5です。

 

 

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此方は、数年前に譲って貰った同様のペティ。ブログでも度々、例として取り上げて来ました。仕様も殆ど同じはずですが、ブレードもグリップも仕上げの磨きが違うので、かなり印象が違いますね。ステンレスでは普段から一番、使っていますが切れと永切れに不満は無く、扱い易いです。天然砥石で追い込もうとすると、幾分は砥石に好き嫌いを言いますが其処も面白いと感じます。

 

 

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此方は購入依頼を頂いた際に、運良く日野浦さんの元に在った出刃です。私の研ぎが入っているのが条件との事で、後は研ぐばかりと成っています。

次の送付を頂く時期次第では、ボチボチ砥ぎ始めていても良いかも知れませんね。何れにしても、出刃の御届けもゴールが見えて来ましたので、もう少しだけ御待ち頂ければと思います。

 

 

 

 

 

刃物店から直接届きました

 

結構、前から届いていた北海道のT様の柳。刃物店から直接、当方へ御届けで・・・此れは、「御世話に成っているベスパのディーラー方式」と同様ですね。

色々と兼ね合いが有りましたが、他の御依頼が一段落したので取り掛かれました。通常の研ぎに加えて、裏の鏡面も御希望との事でした。

 

 

研ぎ前、全体画像

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刃部アップ

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400番から砥ぎますが、結構なホロー気味・凹み有りの切り刃ですね。その割には、均一・浅目では有りましたが。ただ、刃金に関しては面の精度が地金よりも高く、初期切れに貢献していると思われます。

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1000番

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3000番

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其の後、キングハイパーで均してから人造小割り220番で。

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1000番の小割り

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布のペーパー3種と紙の方、4種で

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軟口の巣板

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中硬の中山戸前では、普通の切れでしたので硬口の奥殿本巣板黄色で。完璧に近い相性で、場合によってはそっけない反応にも感じる此の砥石が、下りと仕上がりに於いて文句無しでした。

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研ぎ後、全体画像

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刃部アップ(平は布ペーパーの荒目で軽く磨き済み・地金は奥殿天井巣板内曇り仕上げ)

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刃先拡大画像

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裏の全体

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一部アップ

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今回の白木作の柳ですが刃金の質は、適度な硬さに加えて粘りに留意した傾向に感じました。組織の細かさも可成りな物で、各要素を総合した切れ自体は超一級品。ザクザク感よりは滑らかさに寄せた切れ感で、刃持ちも十分に期待できます。

依頼文からは値段的に手頃で有った様子が伺えますが、研削や刃先性能、裏梳きの精度・反りや捻じれの少なさから見ると、購入時の仕立ての素性の良さは充分でしょう。T様におかれては、更に上級の仕立てを盛り込み完成度の向上を狙われたと思われますが、御期待に沿えていましたら幸いです。今後も宜しくお願い致します。

 

 

 

 

 

本焼きの鰻裂き

 

東北に御住まいのS様から、本焼きの江戸裂き(東京型の鰻裂き)の御依頼を頂きました。私としては触った事が無いタイプでしたし、ましてや使って見た事も無かったので如何なものかと考え、率直に伝えた上で専門家や販売店への御依頼を提案してみました。

しかし、送って頂けるとの事で可能な限り御意向に沿いつつ、確認した現物の状態から逆算して仕上げようと考えました。具体的には、切り刃の面精度を上げつつ厚みの不均衡を正し、正確な段刃(御希望では50度位)に仕上げる。

 

 

研ぎ前の状態

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刃付けされた段刃の上から、刃先寄りを中心に研ぎ直されている状態に見えます。

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切り刃は、ホローグラインド的な刃付けで、且つ刃元寄りは刃先側が薄い・逆は鎬筋寄りが薄い。厚みは横手筋と言いましたか、其の辺りに掛けて残存傾向。

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裏は割合、整っているのですが切っ先から5mm・1cm・4cm辺りに欠けが有ります。

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人造の400番から砥いで行きます。少しでもホローの軽減を狙いつつ、切り刃から。

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1000番です。直線部分の段刃の両端が、弧を描いています。それを修正しつつ研ぎ減らしながら、角度も御希望に寄せて行きます。

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しかし、50度近辺を狙って砥いで行くと、大きく返りが出易い為か刃先が荒れ気味に。特に、切っ先寄りの三か所の欠けが何度か再現される程で。そこで若干、鋭角目(45度強)で砥いでから、刃先を起こして指定角度の近辺へ。

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中硬の巣板の後で、硬口・超硬口の巣板で仕上げました。

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研ぎ後、全体画像。

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刃部アップ

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刃先拡大画像

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裏ですね。軽く磨いて錆予防。

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今回、研いで見て分かりましたが、通常の包丁に大きく段刃を付けるのとは些か異なる認識が必要です。段刃が極めて明瞭な為に切り刃の面と対等な、端的に言えば多面体の立体を仕上げる感覚を要すると。

その主要な要因は、横手筋が有る為です。其れを挟んで隣り合う、切り刃面同士・段刃面同士にズレが生じない状態を維持しつつ研ぎ進めなければ成りません。厚みにしても角度にしても大差が付くと面倒に成りますし、刃先の減り方が違って来ると目も当てられませんね。

ですので、余りバランスを崩さない範囲内で調整するに留めました。切っ先寄りは、欠けが無くなって角度が狙い通りに成る段階で・直線部分は、両端のアール部分が減り、刃先最先端と裏押しが何とか繋がった段階で。

ある方から伝え聞いたのですが、江戸裂きの研ぎは専門家に委ねるのが相場で代金も2.5倍近くなると。成る程、他の包丁とは違うアプローチが必要とあっては無理も無いと感じました。

 

 

 

S様には、貴重な機会を頂きまして有難う御座いました。御返送後には仕上がりに問題無いとのメールを頂きましたが、初期の御要望から余り離れていなければ幸いです。今後も御役に立てる様でしたら、宜しく御願い致します。

 

 

 

 

 

業務連絡です

 

偶に記載している内容ですが、やはり此方のパソコンに着信しないメールが有るみたいです。常連様から、御知り合いがメールしているが跳ね返って来ると連絡を頂き把握できました。

そこで、ホームページに載っているアドレスで上手く行かない場合は、カートなどに使っているGメールの方へ御連絡を御願いしたく思います。下記に成りますので宜しくお願い致します。

 

togiyamurakami@gmail.com

 

 

常連様、御連絡を頂き有難う御座いました。

 

 

 

 

 

嘗ての中山の作業小屋を見学

 

昨日は、嘗ての中山の採掘鉱周辺でクヌギの伐採に行くとの事で、加工場だった小屋の現存している方を見学して来ました。

 

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此方の小屋は無事ですが少し下には、水間府と其の横に佇む小屋が有りますが、倒木や土砂で傷んでいます。

 

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トロッコが引かれていたとの事でしたが、確かに実物が遺されていました。

 

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画像中央には、レールを曲げてカーブさせる道具も。トロッコの敷設・保守の道具類ですね。

 

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反対側には、トーチ類が。

 

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地面に残るレール。

 

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勿論、採掘されていた原石なども転がっていました。

 

 

 

サンプルとして二つ、採集して来ました。

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黄板として見ていましたが、砥面を見ると結構な範囲で紫が見られます。白や黄色に紫が混じる傾向が強いのは、奥殿の特徴かと感じていたのですが山が近い為か、似た外観を呈しています。

 

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砥いで見た感じは、流石に其れ程そっくりと迄は行きませんが仕上がりは近いかも知れません。

 

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巣板の方ですが此方も、驚く程に奥殿の天井巣板の超硬口とそっくりでした。

 

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研いでも、仕上がりと切れ方に類似点を感じます。

 

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おまけに、ダイヤで擦ると泥の色まで紫が混じってそっくりです。

 

 

 

序でに、伊那の削ろう会で月山さんから譲って貰った研承成、1000番です。

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可成、砥面が硬くて平面維持に優れます。其れに比して研磨力も備えており、特に平面の刃物は勿論、精度の高い裏押しや刃先形成としては包丁にも有難いです。

 

 

 

その後は、敢えて仕上げ砥で傷消しをして行きます。今回も、電柱を建て替える為に掘り起こした場所から選んで来たので、試し研ぎを兼ねてです。

赤ピン

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戸前系と言うより、並砥みたいです。

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緑板

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何れも、超仕上げとまでは行かない研磨力重視タイプでしたので、浅目とは言いいながら1000の傷でしたが消退して行きました。

 

 

 

 

 

伊那から三条・佐渡へ

 

少し前に、数日間を掛けて遠出をして来ました。長野の伊那を皮切りに、三条から佐渡へ。

 

伊那へは、削ろう会で出店するブースの手伝いで。

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月山さんと尚さんの砥石が並んでいます。天然の田村山と人造の研承が代表的ですが、研承の方は最新のシリーズである成の御披露目でもありました。

 

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此方は、高雄の砥石。何れも試し研ぎが可能で、興味のある方々に触って頂きました。

 

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伊那で合流した、宮崎兄弟と車を並べて新潟へ移動。弟の桶職人、光一氏は途中で下車。三条へは兄の春生氏と到着。

翌日は、藤虎のオープンファクトリーや三条鍛冶道場を見学。その後は日野浦刃物工房で鍛冶二人の顔合わせ。以前から話をして来た通り、司さんに春生さんを紹介出来ました。

御二方とも利器材で無く、鍛え地を自ら鍛造・鍛接する所も共通点であり、若い鍛冶職人として勉強熱心な春生さんには得る物が多いのではとの御節介でした。白紙の切れを理解している同士、というのも同様ですね。

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鍛冶道場には、特に過去の刃物類の展示が。

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数軒の刃物製造所の作品も。味方屋も幾つか。

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各種、研磨機や集塵機・コークス炉が並んでいます。

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日野浦さんに挨拶し、先ずは依頼されていた黒打ち三徳を確認して貰いました。

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其の後、春生さん持参の地金(錬鉄)と小だたらで作ったという玉鋼。

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更に、大昔に作られたと云う玉鋼も。実際に赤めたり叩いて試して貰いたかったとの事。

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あと、作って来ていた包丁も見て貰っていましたが、かなり高評価でした。

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最後は、フェリーで佐渡島へ。小木でたらい船の船頭をしている金子さんが迎えてくれ、その後も何くれと無く御世話に成りました。

到着すると、千石船の展示館で作業が出来る事になっていた様です。小木は、北前船の寄港地・造船所でも有ったそうで、海運で栄えていたのでしょう。

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近くの建物にも独特な物が。元、小学校と思われる役場として使われていた展示館と、宝物庫?と言うべきか重要な文書や道具類を納める収蔵庫。側面に幾つも、通気口と目される出っ張りが有りました。

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此の辺りは、伝統的に板屋根に石の重しが多い様です。

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海辺には小さな集落が有りますが、水路に沿って少し迷路みたいです。

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佐渡では、たらい船に乗れる場所が幾つか有りますが、景観・乗船時間・回遊距離で断トツなのは宿根木らしいです。

千数百年前?でしたか、火山の噴火で海底が盛り上がり、従来の船では底が閊える様に成ったのがたらい船の発祥とか。水深が浅く、入り組んだ入り江を移動するには予想以上に重宝しそうでした。速度も想像以上でしたし、漕ぎ手の他に三人以上の人間も乗れます。

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徳島の樽職人である原田師弟と宮崎兄弟、その御尊父・御母堂に加えてきしな屋の岸菜さんで分担をしつつ作業が進みます。父上は和船のプロジェクトを企画したり五島列島で自給自足を目指したりと、バイタリティー溢れる方ですが、それは作業中も遺憾なく発揮。私も今回のイベントに御招き頂けて感謝です。

先ずは、樽の底板・側面になる杉材の削りが続きます。

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正直台と言いましたか、材の方を乗せて動かす方式の大きな鉋です。

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鉋掛けは少し試す程度でしたが、それよりは役に立ったかなと思われるのは、此の竹釘作りです。日野浦さんの刃物も持参しました。他の方にも使って見て貰ったり。

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あと、タガを作る為に必要な竹も切りに向かいます。余り肉厚で無く、しなやかな質の竹であり昔から上物として出荷されて来たのも頷けるとか。

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私と春生さんは、此の辺りまでで帰途に就いたのですが、作業は三十石の樽の完成まで続けられます。無事の成功を祈ります。

今回、数日に渡る貴重な体験をさせて頂けて、本当に有難く思っております。御世話に成った皆さんに感謝致します。

 

 

 

 

 

研いだ包丁のビフォーアフターなどを載せていきます。