北海道のＴ様から、四本纏めて御依頼頂いた残りの二本分です。中屋平治作の柳とイカ割き。
先ずは柳から。二本とも通常の研ぎ以外に、平と峰・顎からマチの磨きも御所望で。
研ぎ前の状態。刃先に角度斑の箇所が有り、其れが顕著な顎と切っ先カーブの辺りには錆も。
刃部のアップ
裏押し部分が切っ先手前で狭い傾向。他にはカーブの辺りで刃線の屈曲が少々、急であり厚みの残存も。それ以外は切り刃の厚み取りは、ほぼ整っている様です。
峰から裏側に掛けての角にも角度の斑。其処は同じく荒い砥ぎ目だからでしょう、錆も同様で。
荒砥でカーブと其の手前の二か所の厚みを狙って下ろし、シャプトン1000の小割りでテーパーを目指して更に均し研ぎ。
同様にキングハイパーと、その小割りで。
巣板各種と其の小割りで仕上げて行きます。
中山・奥殿で最終仕上げ。
最後に御希望のコントラストを付ける為に、地金部分を八枚で。
研ぎ上がり。
刃部のアップ。聊か御急ぎの意向を受けての作業でしたので、必要以上の傷消しはせずに留めました。
刃先拡大画像
峰の状態。
顎からマチに掛けての状態。
裏押しの狭い部分ですが、返り取りが出来る位には砥石に当たるので他の部分のデメリットを勘案し、無理に広げませんでした。
イカ割きです。仕上がり条件は柳に準拠。
研ぎ前の状態。切っ先カーブで刃線の繋がりが急なのと厚みが有るのは共通ですね。
此方は、裏押しの狭い範囲が中央下寄りの部分。鎬筋と刃線は顎に向けて、少し下がっていると言うか広がっています。
400番で厚みの調整と鎬筋の一体感を。その後は緑1000・白1000・白3000と順に。
キングハイパーで大まかに纏め。
巣板各種と本戸前で傷を消しつつ仕上げ研ぎ。
奥殿の各種で最終仕上げ。地金は同じく八枚でコントラストを。
研ぎ上がりです。
刃部のアップ
刃先拡大画像
峰の状態。
顎からマチに掛けて。
此方も 裏押しの狭い部分も最低限は当たる状態です。双方共に、乱暴な扱いをされる類の包丁では無いので大丈夫でしょう。出刃の場合なら、強度に不安が残るので裏押しも広く取らねば成りませんが。
柄の意匠は違えど同一の作者の包丁で、仕上げ方を揃えたので一体感が有りますね。
北海道のＴ様、此の度も大切な包丁類を多く研がせて頂き有難う御座います。メールでの遣り取りを通じて、より御希望の仕上がりに近付けたかと考えております。
本日、此の二本を御返送しましたので一両日は掛かると思いますが、到着した現物を確認された際に御気に召して頂けたら幸いです。
ブログ記載への御協力も併せて、感謝致します。今後も御役に立てる様でしたら宜しくお願い致します。
村上様
今回も有難うございました。
中屋平治様＋村上様のお二人の最高技術の結晶となったと思います。
第一陣も完璧な仕上がりで、その刃物のベストの研ぎで、かつ美しく、申し分ありません。
素人では分からない、痒い所に手が届く高レベルの研ぎで、ここまで繊細に対応して頂けるのは恐らく村上様しか居ないと思われます。
今回もお願いして良かったと、心より思っております。
第二陣の到着を楽しみにしております。包丁もそうですが、特に八枚砥石を試してみたいですね。
今後とも宜しくお願い致します。
北海道T
北海道Ｔ様
いつも御依頼を頂きまして有難う御座います。第一陣も問題無く仕上がっていましたら安心です。
私が出来る範囲は限られており、しかも特別な設備や才能は持ち合わせていませんので、せめて可能な限り丁寧に取り組むしか有りません。
その結果、刃物の性能を作者と所有者に不満が出ない程度に仕上げられれば合格かなと考えています。まして、御要望に沿って砥ぎ上げた結果に御満足頂ければ冥利に尽きます。
使い惜しみの予備の千枚と八枚、是非ともお試し下さい。楽しんで頂ければ何よりです。各所各様、御試しの結果、御用命の光栄に浴する事が出来まして幸甚に存じます。