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気になっていた買い物

 

先月あたりから、琺瑯のやかんの傷みが激しくなっていました。外観は、底の一部(琺瑯と塗装)が剥離している程度に対して内面は酷い錆に。

恐らく、幾度かの空焚きで負担を掛けた所へ持って来て備長炭を常時入れっぱなしだったのが良くなかったのでしょう。去年までの十数年(或いはもっと)、よく耐えてくれたと思います。

そこで、新たな品をと考えてみましたが、一つは珈琲のドリップに使えて(備長炭搭載でも)錆びない物。もう一つは水(茶)の味が良くなるとも言われる鉄瓶にしました。

 

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鉄瓶の方は、一般に沸かした水に鉄分が溶け込み①水が円やかになる②茶が円やかになる③茶(特に紅茶)が薄くなる(特に色・苦味)と聞き及んでいました。他には珈琲の色は濃い目とか、沸かした湯を煮物に使うと旨いとか。糠(糠漬け)に古釘から考えるに、植物の色素を良く安定・発色させる効果も有りそうですね。

此のメーカーの製品は、錆止めに使う漆の味が付くのを防ぐ為、内側には使わなくなっているそうで、やや錆が出易いのかも知れません。そういう意味では未だ内側の肌が安定していませんが、現状では白湯・日本茶・紅茶・珈琲の何れでも、大きな悪影響は感じません。

確かに苦みや渋みは幾分少なく感じます。私は一度に多めに淹れて小分けしつつ飲むので、後々往々にして渋くなり湯で割る事になりますが、その分量が少なくて済みます。その割には、初期の味や香り・水色の変化は軽微です。強いて言えば、鉄の風味が味の幅を広げている感覚でしょうか。

これは、包丁でも言える変化かも知れません。炭素鋼の刃で切られた食材は、味や香りが強く・或いは重層的に感じる一方、食材(特に生魚・酸の強い青果物)によっては鉄(錆)の味が付いたりします。様々な場面で、鉄/ステンレスの葛藤が付いて回るのも面白い物です。

 

 

 

 

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あと、以前から洋包丁に使われるエボニーやローズウッド等のハンドルで、やや経年変化の強い物に対して多少なりとも保護する表面処理は出来ないかと探していました。ナイフも可能性は有りますが、明らかに料理に使われる包丁の柄が対象ですから、安全性が重要です。

そこで見つけたのが次の二種で、一つはビンテージワックスのクリアー。荏胡麻が主原料で安全性が高いですが、此れを下地にして更に殆ど無害なもう一つの製品である蜜蝋を上塗りするのが良いと考えました。後者は実際、箸などにも使用可能との事で安心して使え、手持ちの箸やペティのハンドルで試しても良い印象です。

 

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画像は関で働いていた際、自宅に持ち帰ったカウリX(主としてダマスカス)の仕上げ前の物を耐水ペーパーで磨く時に使っていたのですが、此の度、和剃刀の梳き直しに使うかもと引っ張り出して磨いてみました。水分や汚れを吸収しにくくなってくれたと思います。

 

 

 

天然砥石館の展示用品準備

 

来年四月(頃?上旬?)の本格オープンに向けて、天然砥石館で展示する品の準備をしている所です。研ぎ体験と研ぎ講習会で使用する事に成るであろう、テキストとまでは言えないですがレジュメ的な文書の作成が大まかには完成しましたので、久々に月山義高刃物店に物品を仕入れに行って来ました。

順次、ローテーション風に変えながら展示されるであろう天然砥石ですが、更に当該砥石を実際に使って砥がれた刃物の状態も併せて御覧頂くべく、切り出しの研ぎが必要となります。砥石の粒度・性質等を端的に表現し、何故に段階別や銘柄別に砥石を使い分けたりしなければ成らないか、一般の方にも御理解頂く狙いから、砥面の状態をそっくり転写し易い切り出しの平面研ぎです。

之までは、平面の研ぎと言えば電着ダイヤとキングハイパーの硬軟、シャプトンの1000番あたりが下研ぎで使用する標準砥石でした。しかし、以前のイベントで月山さんと尚さんが企画した砥石を試用させて貰い、もっと有効な組み合わせが可能かもと興味を持っていました。

 

そこで、切り出しを(取り敢えず)10本頼む序でに、研承ブランドの出来立て(三段階中の特に硬め)1000番と一番期待していた400番を仕入れて来ました。

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未だ、今回の切り出しは砥いで居ませんが、手持ちで試すと期待に違わず良い印象です。具体的には、研削力が強めの割りに砥面の狂いが少なく精度が高い状態での研ぎがし易い。例えるなら、1000番はキングハイパー(硬)よりもやや、傷は深めで下りが速い。但し、シャプトン1000番よりは若干研磨力と平面保持が弱いかも。

しかし、平面管理の為に使う電着ダイヤのダメージは少なく、その作業も楽。対して400番は更に傷の深さに頓着せず、研削力と平面維持に全振り。双方使い手次第で上手く個性が活かせそうです。食い付き重視で滑り難いのが好みなら、今後出て来る1000番の軟・中の焼き加減が良いかも知れません。

 

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研承400番

 

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研承1000番(硬め)

 

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以前に送って貰った3000番

 

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白巣板・卵色巣板・千枚

 

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試し研ぎ用に持ち帰った黄色いの

 

結論から言えば、1ミリ未満の欠けなら今回の400番で消し、他の何れかの1000番と3000番前後で傷を浅くすれば、天然仕上げ砥に繋げられると思います。しかし、可能な限り砥面の平面精度を維持しつつ研ぎ進めるならば、電着ダイヤなどによる頻繁な面直しの際の作業性が大きく関わって来ます。

そう言う観点から判断するなら、この400番と1000番は目が詰んで砥石自体の研ぎ減りが少なく、平面が崩れ難いにも関わらず面直しが楽。単なる研削力自慢では無い、使い勝手の良さと長持ちが有り難い砥石でした。こうなると次の研承3000番?も気になりますね。今の3000番は、やや減りが速いのが心配ですので。

今、手元に有る砥石で組み合わせるなら、電着ダイヤ⇒研承400⇒研承1000⇒3000番⇒天然砥石でしょうか。天然の前に入れるに相応しい3000番辺りが出て来てくれれば嬉しい所です。

 

 

 

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後は、この10本に掛かるとします。

 

 

追記

後日、研承の6000と8000も送って貰いました。味方屋の三徳で刃金部分を試すと、研ぎ易い硬さと滑らかさの割りに、随分鋭い刃先に。

一般的に柔らか目の鋼材を柔らか目の砥石で仕上げると、其処まで鋭利には成り難いものです。今回の組み合わせが殊更に柔らか目同士と言う訳では有りませんが、事前の予想を裏切ってくれました。普段が天然の硬めを多用している立場では余計に。

恐らくは砥石に使用されている研磨剤の品質・種類・量などが、製造方法や完成した硬さと相俟っての結果なのでしょう。正直、係りの良さ・永切れを含めて可なり、不満の無い製品に成っていると思います。

こうなると益々3000と、最後の高番手である10000に興味が出ますね。まあ、10000番は削ろう会等への対応を念頭に開発された風なので、普通の方々には8000の性能で御釣りが来そうですが。

 

 

 

11月26日・27日 (天然砥石館・五回目)

 

11月の最終土日に、改装工事前の特別期間(研ぎ体験・簡単な指導無料サービス)が無事に終了しました。

再び、結構な人数の御運びを頂きましたが中でも拘りの強い一組は、和剃刀を研ぎに御出での方とナイフを御持ち頂いた方。

前者は過去に、砥取家で御目に掛かった事がありますが(人の名前や容貌を覚えるのが極端に苦手な自分としては)珍しく記憶に残っておりました。お連れの方は研ぎには余り親しんで来ずとは言え、自宅の屋上で鹿を焼いたりもする実用派。

ナイフもオピネルと言えば一般的ながら、海外仕様と珍しい物。それとビクトリノックス。砥いで行く内に楽しさにハマり、小さな原石に面付けを行ってからは、アマゾンに持って行こうかとの発言も。

 

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菖蒲産の浅葱で試し研ぎ

 

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その和剃刀ですね

 

 

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此方は珍しいグリーンの柄のオピネル

 

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他にも、御偉方の視察時に御出でだった方の再訪やいつもの御常連(持参包丁多数)、それに匹敵する以上の包丁を御持参の御夫妻。そして鉋の試し研ぎをされた方など。

 

 

 

 

和剃刀が出た序でと言う訳では有りませんが、上野さんが道中剃刀(箱に入っており、剃刀と砥石が同梱可能)を入手。それを砥いで欲しいとの事で土日を通して砥いで居ました。

形状は現在一般的な和剃刀よりも更に古い原型と思われる物で、浮世絵などでは恐らく同一と考えられる姿が見られます。

 

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問題は、後になってグラインダーかリューターらしき物で表を鋤かれていた事。それをベタにしてくれとの希望で、ダイヤから始めました。

 

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一日目の終了時。ダイヤ・人造中砥・巣板まで。二日目は各種巣板で平面出しと傷消し。

 

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最後(三日目)は自宅で鏡面前後になりそうな各種小さ目の砥石で試しながら仕上げました。恐らくタタラによる刃金(玉鋼)と地金(軟鉄)でしょうが、余り硬くない所為か光り気味にはなりません。しかし地金の模様は精緻で優雅な物でした。

 

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おまけは、火曜になりましたが以前より来て頂きたく思っていた新潟県三条の日野浦司さんに、夫婦揃って亀岡までお越し頂きました。

前日までの二日間、京都市で会合が有っての御立ちよりでしたが、砥石の産地で実際に現物を前に意見交換が出来、以前からの砥石を通じた交流に加え、地域や職種を超えた連携に繋がればと願っています。

 

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おまけのおまけとして、テレビ番組制作の方が下見の一分野として来られるそうですので、幾らかでも御役に立てればと思います。私が長年、好んで視聴してきた番組でもありますので、楽しみでもあります。

 

 

 

11月19日・20日 (天然砥石館・四回目)

 

今回は砥ぎ体験(指導希望含む)の絶対数は少なめでした。しかし代わりと言っては何ですが、土曜の午後から御偉方の来訪が。

桂川亀岡市長と、近くの大学で講演を終えられた近藤誠一元文化庁長官が視察に。講演では、世界に向けて日本文化を発信して行く方向性が堅持されている内容の御話もあったとの事で、我々も御役に立てる事が有れば幸いです。

 

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画像は私が砥ぎ上げた刃物を軸に、天然砥石の効果と価値・刃物に対する研ぎの役割などを説明していた場面です。上野さんに頼んで一枚撮って貰うつもりが結構な枚数に。しかし枚数からも分かる様に、拙い説明ながら予想以上に関心を持って見聞きして頂けたので有難い限りです。

 

 

実は直前に土橋さんから連絡があったので急遽、両親の家の俎板(大中小三枚)を削ったばかりの鉋を研ぎ直し、預かっていた切り出しと自前の包丁と共に持参しました。

何故なら、自分の研ぎの主体は包丁ですが相手は文化庁長官をされていた方。どちらかと言えば建築や木工を含めた工芸の方が専門とされていたか、多くを対象とされていた公算が大。となれば当然、少ない手持ちながら大工道具関係くらいは必要と考えてでした。

しかし何分、急ぎの事にて前回研いだ仕上がりには若干及ばない鉋刃での展示となり、少々忸怩たる思いもありました。之までもそうでしたが、何かの予定が決まっていたのならば前日や直前に伝えるのは勘弁して頂きたいです。私の自己満足を満たせない程度なら良いですが、先方に落胆や失望を与えかねません。

 

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また、常連となったヘビーユーザーの方は出席日数がトップなのは勿論のこと、家での自主トレにも余念が無く腕前は鰻登り?ハッキリ言って刃先の切れに限定するならば、(病気レベルのプロは除いて)ほぼ完璧と言える程。

流石に、電着ダイヤ・人造中砥・天然仕上げの王道三点セットを速攻で揃えた行動力と、研ぎ指導の勘所を押さえる理解力は伊達では無いですね。正に三日会わざれば刮目して見よ。まあ、男子では無く御婦人なのですが…。

他にも手持ちの得物を御持参の方々ばかりで熱意が伝わります。半分くらいは、砥ぐのが初めてらしかったですが。しかし今回の催しが研ぎへの後押しとなったとすば、此方も甲斐があったと云うものです。

 

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砥取家次男氏の知人も御参加。家にあった青砥を持ち込まれました。面白かったのは、御持参の包丁が以前に私の祖母が使っていたのと同一モデルだった事。20年から10年くらい前までは、かなり出回っていた記憶がある三層利器材(鋼をステンレスで挟んだクラッド鋼)の和風三徳。

 

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此れはある程度、研ぎ易さ・切れ・手入れの容易さ・手頃価格でバランスの取れた優れものなのですが、最近は少ない様です。中に御一方、この手の包丁を購入予定との相談?をしてくれたのですが、私の在庫にも有るのを忘れて伝え損ねました。

まあ元々、先方から問われない限り此方からは言わないタイプなので同じだったでしょうが。説明を参考にして頂き、良い包丁に巡り合って欲しいと思います。

 

 

最後は再び、地元大工の方から御菓子の差し入れが。更に、前回相談していました鰹節を削る鉋台の歪みに対し、台直し鉋でもって修正して頂きました。これで次からは、どの鰹節削り器でも問題なく使って頂けます。有難う御座いました。

 

 

 

11月12日・13日 (天然砥石館・三回目)

 

今回の土・日では、再び土曜が空いていました。しかし昼を回った頃に御一人の来訪を受け、寧ろ好都合となりました。と言うのも、以前から研ぎ文化振興協会の事務局での業務やイベントを通じ、協力頂いた内の一人で先々、中の人に成りえる方。それに向けて研ぎ指導を御希望との事でした。

持ち込みの包丁は出刃と柳で、先ずは出刃からとの御意見に従い実地に砥いで貰いましたが、私が説明や指摘をする度にほぼ必ずと言って良い程、難しいとの述懐を聞かせてくれました。

当方としては、御自身の予想を遥かに超える困難さ・・・初期の状態の問題点、錆や欠けを修復する度のバランス取りの必要性、刃物と砥石を頻繁にチェックする重要性を実感された事で、第一歩としては成功かと思います。

 

他には、年季の入ったサバキと言うか骨スキでしょうか、やや研ぎ癖の付いた包丁を苦労して修正されていた方や、三層の利器材ながら少数派である(ステンレスで無く)軟鉄の地金と思しき菜切り包丁を御持参になり、研ぎと天然砥石を楽しまれた方を始め・・・。

 

本日の御来場で、包丁研ぎに親しまれた御主人と、研ぎにハマりそうだと見るや「家じゅうの刃物を宜しく」と連続アピールに余念が無かった奥方。しかし実は試し研ぎでの導入部では、婦唱夫随の様相を呈していました。確かに御主人は理論派で、一つ一つの項目について不明な点を明らかにしつつ理解を深めていらっしゃいました。

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出刃を大小二本お持ち頂いた、川魚を主に捌かれる男性。従来、砥いで居ても思うように仕上がり難いとの事で御相談。砥いで貰いつつ確認していると、程度の差こそあれ双方ともに鋼の方に引かれて地金中央が張り出しています。

此れでは裏押しをしても刃先が整わないのでやむを得ず裏からも最低限、角度を付けて返り取りをしました。この症状は実は前述の一人目、中の人の柳でも見受けられたので、今後は一つ鎌砥にアールを付けた物も用意しておかねば成らないかも知れません。

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途中では、連日研ぎ修行中の砥取家次男氏に指導したり、上野さんが展示してあった希少な中砥の試し研ぎを抑えられなくなったり、小割りした砥石での研ぎ研究をしたり。

因みに、浄教寺を研いでいた時には尻馬に乗って少し砥いでみましたが、感触としては木目の見た目通りの木肌感の有る接地感、砥粒としては柔らかい天草に三河のボタンを加えた様な優しい感触でした。多分、希少ゆえ最初で最後の体験となるでしょうね。

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之は、上下ともに謎の大理石風の石です

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浄教寺(きよんどさんから)

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そうこうして居る内に、研ぎの実力者も御来場。聞けば、某刃物店での試し研ぎ会や100均包丁研ぎ選手権にも参加されたとの由。生憎、得物を御持参で無かったので、平面の刃物の範疇という事で私の切り出しで試して貰いました。

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複数の中砥や合砥で、楽しんで頂けた様子にて良かったです。

 

 

最後の方では、度々立ち寄って頂く地元大工の方に珈琲の差し入れを貰ったりして居る内に閉館時間となりました。この土・日も、御来場下さった皆様の御蔭で自分の役目を果たせました。有難う御座いました。

 

 

 

11月5日・6日(天然砥石館・二回目)

 

先週の来場者は、土曜に大差を付けて日曜の御運びが多かったのですが、今週は殆ど同じ割合でした。其の為タマキ様には一番乗りでお越し頂いたものの、考えていた程ゆっくりと応対が出来ず仕舞いで申し訳無かったです。

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辛うじて、予て用意の平面に向いた千枚・中山の水浅葱・大谷山のカミソリ砥を(何れも小粒ですが)試して頂けました。想像通りと言うか同じ結論に達した内容は、どちらの最終仕上げに繋げるにしても千枚を通り、そこから派生して目的別・相性別・好み別の選択になるだろうとの事。

出来るだけ、御希望に叶う大谷山を小まめに当たって行きたいと思いますので今回に懲りる事なく、御都合の許す限り試し研ぎには又、お越し頂きたいと思います。

 

 

他にも洋食の経歴を御持ちの方が、有名な(特徴的な模様の)鍛冶の本焼きペティを特注、それを和式に変更した珍しい包丁を御持参下さいました。鍛冶研ぎの初期形状の修正を試みるも困難に付き、対処出来ないかとの内容でした。保存用では無く、使用目的との事。

結果的には、破線の緩いS字カーブと手前半分の厚み取り、その繋ぎのバランスを取りつつ面の均一さを狙い、少なくとも問題点は半減したかと思います。今後は使いながら、研磨力控えめの砥石で刃元側半分をやや多めに研ぎ進める様に御願いしておきました。

そして、やはり地元だけあり砥石(人造も勿論ですが)の持ち込みもあります。産地直送と言うより地産地消?の過去の青砥や少し前の青砥。其々保存している方、使用中の方、色々ですね。而して持ち込み勢の半分程は、包丁も大量持ち込みである確立が高い様です。

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中には近所の包丁を掻き集めて、研ぎを教え欲しいと研ぎにハマった常連さんも。家族でダイヤ砥石・人造中砥石・天然砥石と一式揃えた入れ込み様には脱帽で、嬉しい限り。おまけに天然砥石館のヘビーユーザーだけあって閉館の頃合いには片付けまで手伝って頂いており、感謝の念に堪えません。

 

 

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ナイフと包丁を其々、御夫婦で持参される方や、研ぎ文化振興協会で設えた柳葉包丁を購入される方にも御満足頂けた様子。

 

 

 

あと、持参された包丁の状態が千差万別で、現場での対応が困難な物を除いて軽微な汚れ・錆は落としたいなと・・・。それに付随する内容ではありますが、中の人にも、包丁の研ぎや手入れの知識・方法を覚えて貰っています。

私が自宅で使用する人工的な研磨材や道具は、一般的な耐水ペーパー(2000番まで)や下画像の研磨剤を主としております。他には特に高番手の布のペーパーやラッピングフィルムもあります。

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時折り聞かれるので参考までにと。ペーパー類は立方体の木片や硬質・軟質のゴムに固定して使ったり、研磨剤は各種の紙やマイクロファイバー不織布?みたいなのを併用しているのですが。

今回、精度は多少犠牲にしても現場で使い易く大仰でない道具を見つけたので導入しました。下画像のジグソー風の物です。

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之を使って貰ったところ、かなり好評でした。自分でも、特別精度を気にしないなら和包丁の裏の錆取りや磨きの際、斑が出難いのではと予想しておりました。結構使えそうで良かったです。

 

 

 

通常(仮)開館初回

 

イベント後、通常モード(仮)での初回の土日を終えました。展示されていた砥石は一部を残して撤収されていますが、鰹節を削ったり天然砥石を実際に砥ぐ体験(包丁の用意も有り)・研ぎ指導(包丁主体ですが)も受け付けています。

土曜は流石に来場者は少しでしたが、日曜には引率の方に付き添われた小学生の小集団。それと主婦の方々(包丁持参、中には自前の砥石も)。その内の複数名に研ぎを体験して頂き、簡単な指導も行いました。最多の包丁持参数は母娘での参加で約10本。

あと、過去に譲られた手持ちの天然砥石を確認して欲しいと訪れた男性も御二方。その内の恩人の一人は、パネルに収められている故人(直近の出来事)であったりして、何やら不思議な縁を感じる場面も。斯界の先達に対し、謹んで御冥福をお祈り申し上げます。

 

砥石の採掘・加工の様子のパネル

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上野さんの尽力により、天然砥石の地質学的な分類や、採掘地の地図上での分布(世界各地・日本各地・京都周辺)を表したパネルも充実して来ました。

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子供達にも体験希望という事で。皆、砥ぎは未経験だった様ですが、中には家族の研ぎを見ていたからか上手く熟していた子も。

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砥取家の次男氏にも、包丁研ぎについて助言しつつ練習して貰いました。単なる研ぎ技術習得のみならず、包丁その物について理解を深めると共に、鋼材やメーカー毎の違いと砥石への相性を実体験で探る契機になればと思います。

そして現場で実際に砥いで見せる必要が生じたり、最大限の切れを体感して欲しい時用に、幾つか普段使わないサイズの手持ちの砥石を持参しているのですが、不足分の補充に協力頂きました。

下の砥石がそれで、御廟山のコッパの原石(この前の御廟山で選んだ逆の法)、黄色タイプの中庸かやや柔らかい物。自分の経験上では、永切れでは水浅葱に一歩譲るものの、組織が大き目でやや焼きが甘い鋼(炭素鋼)や、特にステンレスには鋭利でありながら掛かりの良い刃を付ける最右翼だと考えています。

 

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最後は、切り出しの参考にと自作を持ち出してみたのですが若干、錆が浮いていたので持ち帰って早速研ぎ直し。それにしても此れを見ていると、再び日野浦さんの所で鍛冶体験をしに行きたくなりますね。

特注刃物の最終確認で、近々電話をする必要も有りそうなので此の際、先方の都合が良い時期のお伺いを立ててみるとしますか。

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私の切り出しは大谷山の戸前浅葱(カミソリ砥)で仕上げましたが、明日は御依頼を頂いた切り出しを仕上げるとしましょう。それに付いては、巣板での曇り仕上げになる予定です。

 

 

 

 

常設展示へ向けて(当分は仮ですが)

 

イベントを終えたばかりですが次の週末からは、ひと月余りの期間、砥ぎ体験(出来れば少々の展示も)が開始となります。一応、22・23日で行った内容を踏襲する形となるので要領は掴めており、不安は無くなっているのですが。

ただ、砥ぎ体験と銘打ってのイベントでも砥いで欲しい要望の他に、得物の御持参無く砥いでみたい方もいらっしゃいました。その場合、事前に用意した試し研ぎ包丁をお渡しするのですが唯一、鋼の和包丁に不満がある品揃えでした。

実際は、洋包丁での試し研ぎの御希望が大半でしたが、以前から気になっていたので関の刃物祭りで購入して来た和包丁を試し研ぎに使える状態にしておきます。

 

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アジ切りと言うか両刃のイカ割きと言うか、廉価なラインの和式の包丁です。刻印には青刃金入りとあり、地金は極軟鋼でしょう。まあ、フルサイズの出刃や柳刃では扱いに困る層向けです。ベテランの方は是非、相棒を御持参で。

 

 

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切り刃には荒い研削痕がくっきりで、形状も多面的です。なので上画像の小割りした各種人造で修正と均し研ぎ。自分では此処まで種類も消費も無いので、月山さんから貰っての加工品。

柄には石ちゃん(多少防水と汚れ防止狙い)を塗り、中子との隙間にはコニシのウルトラ多用途を塗布して養生しておきました。

 

 

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次いで、巣板(小割りと本体)にて更に均し研ぎ。これにより、当初の問題点を半減。以降の仕上げて行く手応えは、試し研ぎでのお楽しみとしておきます。

天然砥石の質の違いによって、仕上がる刃先の違い・刃金と地金の砥ぎ肌の違いなど、砥ぎの醍醐味は和包丁の方がより強く感じられると思います。

 

 

 

以下は春以降の本格稼働時に使う予定で、同じく関で購入した物です。

 

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幾ら洋包丁と言えども、砥ぎと天然砥石をテーマにした場所で置いてあるのが百均と、それに近い物ばかりなのはどうかと思っていました。

一応、百均包丁も目的(極限の腕試しとか)によっては有効ですし、砥石と研ぎが良ければ充分切れるので意味は有るのですが。しかし、例えば海外からの来場者等に対して、そんな変化球・実力テストはどう受け取られるでしょうか。

そこは、形状・強度・鋼材のレベルで砥ぎ易い、包丁メーカー製造による試し研ぎ包丁が相応しいと思います。以上の判断から、入門用として手頃なマサヒロの包丁を選びました。上級品は、本職も使用している所です。

 

 

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此方は、行く行くは鋼材・研ぎ技術・砥ぎ目の細大・砥石の人造・天然による、切られた食材の味の変化を体験して貰うコーナーも作りたいと考えて用意しました。

上画像は、全く同じステンレスのペティですが此れを砥ぐ砥石に違いを付け、変化を感じるか試して貰う予定です。ミソノは、特に洋食界隈では有名な所ですね。

 

 

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上画像は、逆に砥石は同一で鋼材による味の変化を実感して貰うべく、同一の仕様である牛刀でステンレスと鋼(炭素鋼)の二種類を購入。

従来から研ぎ文化振興協会や、月の会での催しの時?に行われていた内容でしたが、不特定多数の一般に門戸を広く開放して常時となった暁には、より多くの方々に体験して頂けると思います。

 

 

春以降、常時開設に向けて他にも、展示している其々の砥石(或いは同等品)で砥がれた刃物(切り出し)をセットで観察する事で砥石の粒度・山や層の違い等を理解しやすくする。其の為の切り出しの準備・出来れば石と刃物の拡大画像の準備に、十二月から三月までの期間を充てたいと考えています。

 

 

 

亀岡オープニングイベント

 

十月二十二・二十三日の両日、「森のステーションかめおか」のオープニングイベントとして、亀岡市交流会館内の天然砥石館でも御披露目イベントが行われました。周辺では、木工・レストラン・音楽・公演など様々な催しも。

天然砥石館は改装前の仮設ながら、天然砥石の展示・研ぎ体験のみならず鉋での薄削りや鰹節削り、ちょうなでのはつり・銅細工・刀剣研磨の実演も行われました。

 

画像は、いつも通り殆どが来場前の準備中を少々。

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纏め役として砥取家の土橋さん、実行委員役の上野さん、研ぎの付き添い・指導として私以外にも月山義高刃物店の藤原さんや、元研ぎ文化振興協会で以前にもイベント関連経験者のお二方にも協力頂きました。

かずかずけん様や小鮎様にも御来場頂き、久し振りの再会で嬉しく思いました。又、小鮎様には御自宅で、自慢の得物にて試して頂きたく最新の千枚をお渡ししましたので評価が楽しみです。

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なにぶん、補充要員が有ったとは言え少人数でしたので、研ぎの体験を御希望された中には、混み合っていた時間帯に於いて断念された方が有ったやも知れず、その場合は誠に申し訳無かったと感じています。もし再度、訪問頂けましたら今回程の混雑は考え難いので大丈夫と思われます。

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当日の現場で対応不可な物はお断りする場面も有りましたが、結果的に来場者が持参した刃物は充分に切れる状態に、そして研ぎ指導させて頂いた方には或る程度、研ぎの技術の片鱗は御理解頂けた様に思います。有難う御座いました。

 

 

 

 

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イベント後の天然砥石館の予定

簡単な包丁研ぎ指導(今だけ無料)
10/29(土)、30(日)
11/5 (土)、6 (日)
11/12(土)、13(日)
11/19(土)、20(日)
11/26(土)、27(日)
お気軽にお越しください(10:00~16:00)
(この後、改装のため一旦休館します。)
場所:亀岡市交流会館
Home Page: http://togi-bunka.com/

 

 

 

研ぎ物の追加

 

もう一本、数年前に砥取家の為に酔心の社長さんから試し研ぎ用として提供して頂いた柳も有りました。

 

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表面の研磨痕を消す程度に軽く研ぎ、現地へ置いてあったのですが、欠けや錆が目立って来ていたので之も研ぐ事に。

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キングの1000番と1200番で大まかに切り刃を研ぎます。以降は各種人造砥石の小割りから天然の小割りへ繋いで均し研ぎ。

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巣板と千枚、八枚で刃金部分と裏押しを。裏押しの最終は、鏡面青砥です。

 

取り敢えず、特に変哲の無い実用研ぎ(普通に使用可能) で仕上げました。つまり切り刃の、刃金部分の角度変化は付けて有りますが地金部分は殆どベタです。おまけに巣板での曇り仕上げのまま。

此方は何か、試しに切って貰っても良いかも知れません。特に、完全なベタでないと切れないと考えている層の感想に興味が有りますし。

 

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一番の常連さんに、特別オーダーの参考にして貰いたく先日の鉈を持参した所、包丁の研ぎも依頼されました。

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更にAmazonからナイフを購入時、配達先を私の住所に指定する事で直接送り付けて研がせようという離れ業も披露して頂きました。

此の二本はイベント後に研いで、お届けしようと思いますが存外ナイフの方が(少なくとも)小刃の状態は鋭利だったので、研ぐべきか迷います。御意向を確認してからにしましょうかね。

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やっぱり、研ぎ直してしまいました。刃先の切れ感、刃金の表情、平の錆の除去具合、何れも今ひとつ満足出来ず。

刃金を巣板⇒本戸前⇒千枚(二種)で研ぎながら、角度変化を更に明確化。これで一先ず、及第とします。

 

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