先月あたりから、琺瑯のやかんの傷みが激しくなっていました。外観は、底の一部(琺瑯と塗装)が剥離している程度に対して内面は酷い錆に。
恐らく、幾度かの空焚きで負担を掛けた所へ持って来て備長炭を常時入れっぱなしだったのが良くなかったのでしょう。去年までの十数年(或いはもっと)、よく耐えてくれたと思います。
そこで、新たな品をと考えてみましたが、一つは珈琲のドリップに使えて(備長炭搭載でも)錆びない物。もう一つは水(茶)の味が良くなるとも言われる鉄瓶にしました。
鉄瓶の方は、一般に沸かした水に鉄分が溶け込み①水が円やかになる②茶が円やかになる③茶(特に紅茶)が薄くなる(特に色・苦味)と聞き及んでいました。他には珈琲の色は濃い目とか、沸かした湯を煮物に使うと旨いとか。糠(糠漬け)に古釘から考えるに、植物の色素を良く安定・発色させる効果も有りそうですね。
此のメーカーの製品は、錆止めに使う漆の味が付くのを防ぐ為、内側には使わなくなっているそうで、やや錆が出易いのかも知れません。そういう意味では未だ内側の肌が安定していませんが、現状では白湯・日本茶・紅茶・珈琲の何れでも、大きな悪影響は感じません。
確かに苦みや渋みは幾分少なく感じます。私は一度に多めに淹れて小分けしつつ飲むので、後々往々にして渋くなり湯で割る事になりますが、その分量が少なくて済みます。その割には、初期の味や香り・水色の変化は軽微です。強いて言えば、鉄の風味が味の幅を広げている感覚でしょうか。
これは、包丁でも言える変化かも知れません。炭素鋼の刃で切られた食材は、味や香りが強く・或いは重層的に感じる一方、食材(特に生魚・酸の強い青果物)によっては鉄(錆)の味が付いたりします。様々な場面で、鉄/ステンレスの葛藤が付いて回るのも面白い物です。
あと、以前から洋包丁に使われるエボニーやローズウッド等のハンドルで、やや経年変化の強い物に対して多少なりとも保護する表面処理は出来ないかと探していました。ナイフも可能性は有りますが、明らかに料理に使われる包丁の柄が対象ですから、安全性が重要です。
そこで見つけたのが次の二種で、一つはビンテージワックスのクリアー。荏胡麻が主原料で安全性が高いですが、此れを下地にして更に殆ど無害なもう一つの製品である蜜蝋を上塗りするのが良いと考えました。後者は実際、箸などにも使用可能との事で安心して使え、手持ちの箸やペティのハンドルで試しても良い印象です。
画像は関で働いていた際、自宅に持ち帰ったカウリX(主としてダマスカス)の仕上げ前の物を耐水ペーパーで磨く時に使っていたのですが、此の度、和剃刀の梳き直しに使うかもと引っ張り出して磨いてみました。水分や汚れを吸収しにくくなってくれたと思います。