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動画を上げてみました

 

昨日、柳の進捗や最近の玉鋼包丁に付いて日野浦さんと話していたのですが、研ぎに関する内容で半信半疑かなと感じた部分が有りました。長い付き合いで説明もして来たし、複雑な形状で拘った研ぎをしているのは何の為だと・・・(笑)。

私が、ヤワな包丁でも砥石と研ぎの工夫で切れ・永切れを付与する事も可能だと言ったのが其れですが、鍛冶屋(多分、製造側の意味も有るんでしょうか)の前でそんな事を言ったら、納得しないで突っ込みを入れる者がいるだろうねと。実証して見せるので大丈夫だと答えたのですが・・・直近の休みに三条へ行って見て貰おうかとも思った物の、先方の予定が付かず。

それならと数年ぶりに、デジカメで動画を急いで撮ってみました。雑な仕上がりで恐縮ですが、紙の束と氷を荒っぽく切ったり削ったりした後でも切れが続くのか?或る程度は参考にして頂けるかと思います。過去に知り合いが上げていて消えた、私の試し研ぎ動画を少し前に上げ直した物も有りますので、良ければ御笑覧ください。上野館長からアドバイスの有った本焼きの研ぎ動画は、自宅では(角度や明るさで)難しそうですので、今後の課題かなと考えています。

 

 

 

 

 

 

 

 

最近の身近な事

 

道着の補修をして頂けるとの事で、関西の纏め役の方の所へ御届けした際に、可成り多方面に話が及んで研ぎに関しても。出刃と柳は以前にも研がせて頂いたのですが、御持ちのペティは自力で研いでいるし充分な切れだと思うと。それでは、どの程度の差が有るのか無いのか、補修の御礼に研いで見ましょうと持ち帰りました。

 

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左側にはフレンチの鉄人の名前でしょうか、印刷されています。モリブデンバナジウムの材料ですが、グラインド・熱処理は結構良い感じです。引き出物として貰ったが、良く切れると言っていただけは有りますね。

 

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刃先は微細な欠けと摩耗が有るので、切れは期待出来ない(紙の束には数ミリも切り込めず)状態です。しかし、研ぎ自体は一般の方の普通レベルとも言える砥石への当たり方で、摩耗が無ければ其れなりに切れていたと予想されます。

 

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特に硬い仕上がりでも無いし、刃先の損耗も酷くは無いので人造伊予砥(サンプル品)から。研ぎ目も浅いので、天然に繋ぎ易いです。

 

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黒蓮華で砥ぎ目を消しつつ、小刃の調整。顎から切っ先へ向けて徐々に鋭角化。刃先最先端は片側30°⇒20°⇒10°に。小型ナイフやペティは此の角度で研いでいますが、鋼材や焼き加減によっては(刃物が耐えられない場合)、洋包丁と同じく40°⇒30°⇒20°に。

 

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中山の戸前(合いさ?)で仕上げた後、奥殿の天井巣板の硬口で最終仕上げ。切れを確認した所、十分過ぎる切れなので若干、角度を起こして置きました。

 

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研ぎ上がり、全体ですが著変無しですね。

 

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刃部のアップは、少し小刃に変化が見えるでしょうか。

 

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刃先を拡大すれば、銀色と黒っぽい縞が七層に成っていますね。刃先へ向けて角度を変えて有る現れです。

切っ先への鋭角化と共に、刃先への鈍角化ですが、此れで切れと永切れの両方を満足させられます。御届して使って頂き、話の内容を体験の上で確かめて貰えればと思います。

 

 

 

 

あと、行きつけの店と以前の記事にも記載しましたが、其処の店長と話が弾んだ拍子に話題が砥石や研ぎ関連にも。砥石に因る切れや味の違いに関しては、興味をそそられつつも半信半疑そうでしたので、体験して貰う為にペティ二本を持参しました。

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一番使い込んでいる、VG10と古い炭素鋼の物。炭素鋼の方は、組織も荒く硬度も低い仕上がり。

目の前でナイロン袋や紙の束を切って渡し、氷を削ったり野菜を切って試して欲しいと伝えました。手持ちの包丁も交えて様々、試した上で包丁の仕様によって味が違うと。切れない包丁では野菜の苦みが口の中で残る事に驚いてくれました。

切れのテストで遠慮していた様子なので、ピザを食べた後にもう一度、氷を削ってから切って見たらと勧めて試して貰うと、更に驚いてくれたので此方も楽しくなりました。近隣の店舗にも宣伝してくれるとのコメントも。

 

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私の印象で再現すると、例えば此の氷の天辺を

 

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2cm程、削ってから

 

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ナイロンを切る。の流れですね。

 

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紙の束もいつも通りの。

 

少しは営業みたいに成ると良かったのですが、偶にパンを御土産に呉れるので御返しに、奥殿産巣板の白の細いのを御礼に渡したりしたもので、単なる同好の士(彫刻の経験者とかで)の盛り上がりに成ってしまいました。

プレゼントした砥石に説明通りに包丁を当てると、別物の切れに成ったとか。性能向上して何よりですが此れでは研ぎ依頼に繋がらないかも知れず・・・ですが刃物好き・切れ味マニアと分かり合えたので良しとしましょう。

この話をオイル交換に行った際、ベスパのディーラーの方(研ぎ依頼の常連でも有ります)にすると、準備している包丁が国際博物館会議でも店の方にも売れなければ自分が買ってやると。和菓子屋の旦那以外にも、色んな方に心配されてしまっているのが如実に分かってしまい、有難いやら申し訳ないやら。もう少し売り込んで行かないと行けませんね。

 

 

 

 

 

もう一つ準備で

 

国際博物館会議での実演が近付いてきたのですが、念の為とは言え販売可能な物が一本と言うのも何だか・・・と感じましたので追加でもう一本を。と言っても刃先の調整だけですが、初期状態が刃体は薄目・刃先は鋭角と成っていますので、切り刃を弄る猶予が殆ど無い位の仕立て。余程、不都合が出る事でも無い限り刃先研ぎのみで性能維持が可能です。

逆に言えば一般の方が不用意に俎板に叩き付けたり、こじったりすると刃先の傷みが心配でも有ります。ですので、基本的に私が御渡しする場合は刃先調整後としています。強度の向上に加えて、人造仕上げ砥で問題になりがちな掛かりの弱さへの対処でも有りますが。天然の仕上げ砥で、相性を探る事で切れ・永切れと共に掛かりの強弱も選択可能です。

 

 

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以前に御依頼を頂き、注文した際の予備でした。ステンレス地金で炭素鋼を挟んだ、三層利器材のペティ。

 

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切り刃・刃先共に余分な厚みが除去されており、鋭利な仕立て。

 

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研ぎ減らす必要は無いので、天然のみで。伊予砥の少し硬くて細かい物から。刃先の角度を多段階・切っ先へ向かって鋭角化。

 

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会津砥で多段階をなだらかに繋ぎ、刃先を整えます。

 

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中硬の巣板で砥ぎ目を細かく。

 

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奥殿の硬口の巣板で最終仕上げ。目的の性能に合致する相性でしたが、更に掛かりを求めるならば天井巣板の各種で狙う事も可能です。

 

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此の砥石は、ベルギーのコティキュールみたいな感じで白と茶色の二層が一体に成っています。性格は違いますが、何れも有用な砥石なので使い分けています。(白・茶色は単体でも別に有るので、無理に両面から使わなくて済んでいます)

 

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画像では明らかな差は分かりませんね。ですが、将来の使用者にとって扱い易さや性能の持続に関わる部分ですので疎かにはしたく無い部分です。

 

 

 

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先に仕上げておいた、上画像の三徳と合わせて一安心です。ただ、行きつけの店の方が私の扱う包丁や研ぎに興味が有るとの事で。少し詳しく仕事の内容を話す機会が有り、関心を持って頂けました。国際博物館会議で需要が無かった場合は、其方に見て貰う事に成っていますので、今回の準備も無駄に成らずに済むのではと考えています。そして案外、身近な所にも刃物好きが存在している物だと改めて思わされました。面白い物ですね。

 

 

 

 

 

今日の講習 柳などを御持参

 

昨日の昼過ぎに、偶々ですが私の出られるタイミングで電話が。講習の問い合わせで、明日か明後日に希望との事。何とか双方の時間や予定をを繰り合わせて本日の午後、受講して頂きました。

九州に在住ですが、大阪に里帰りでしたかM様は、柳二本と出刃を御持参で。切れの説明と実演をしていると、研ぐ前と後で刺身を切って見たいなと。此れ又、偶々ですが天然のハマチの柵が有ったので切って貰う所から始めました。

 

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研ぎ前の状態。左は、玄海さんの河豚引きだそうで。右の柳も、恐らく作者は同一ではと。此方は結構研ぎ減って居り、練習用にしているそうです。

右上に見切れているのは、私の18cm正夫で状態の悪いのを直し直し使っている物です。

 

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刃先拡大画像。ほぼベタに糸引きですが、角度にブレが見られます。加えて、切り刃の厚みにも不均等が。河豚引きには切っ先カーブ手前にS字状と云うべきか、凸部が二か所と間に凹。柳はカーブ辺りに緩やかな盛り上がりと言った所。

 

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その所為も有って、私の正夫(短い上に鈍角)に比べて刃渡り・鋭利さで有利な筈の河豚引き・柳ともに切れが鈍く感じたと。加えて、切っ先周辺の切れに格段の違いが有り衝撃とも。

 

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上画像が、私の正夫。30年以上前に、初めて和包丁を買って見た物で、可成り安価でした。刃体の精度も甘く、焼きも甘いので常に修正研ぎが必要+鈍角仕上げで無いと刃先が捲れる始末。

但し現在は、適した研ぎ・砥石により、目の前で荒っぽく氷を削ってから紙を切って御覧に入れた通りの性能を発揮しています。

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M様にとっては客観的な情報や、既成概念から予見される結果と異なる体験に、悔しくも有り興味深くも有りとの事。一概に、薄く鋭利にしさえすれば切れる訳では無いとの事前説明に、納得の様子。

 

 

 

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私が研ぎの説明と凹凸の均し方を例示をした後、御自身でも切り刃を整える研ぎを実践。敢えて残存させた痕跡を仕上げて貰いました。

切り刃の後は、糸引きでの角度維持や砥石の使いこなしも。思っていたよりも安定していないと御理解して頂く為に、拡大画像も併用しながら練習。

徐々に刃先も揃って来ましたが、意図せぬ多段階の当たり方を払拭するのは今後の精進を期待ですね。以下の画像は、私の修正研ぎも含んだ刃先です。

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河豚引きの方が、若干ですが鋼の状態が良い様子。紙を切るテストでも良好だった様に見受けました。

 

 

 

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研ぎ後です。切り刃の厚み調整と、刃先の糸引きの状態も先ず先ずに。

 

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折角なので、少し比較実験を。切れで河豚引きに劣る筈の、研ぎ減りして刃幅狭く切り刃鈍角の柳ですが、刃先の調整だけで河豚引きに迫る切れが出せるのか?刃元から切っ先へ向けて角度変化を加えます。元は、45度の一律でしたが可変に。更に、刃先から少し後方もなだらかに切り刃に繋ぎます。結果は、遜色ない切れ・・・と言うより刃の入り・抜けが良く手応えが軽いと。双方、講習前より格段に改善されているのは同様ですが。

しかし総合的な評価では、複雑な研ぎを駆使し最も多機能を盛り込んだ私の正夫が際立って居り、その値段分を鑑みるに(私のは数千円でしたから数十倍になりますね)大差が付く筈の性能差を、逆転させる事が砥石と研ぎで可能だと御理解頂けました。

 

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M様には、自宅まで御越し下さり有難う御座いました。少し想像以上の内容で複雑な心境に成られたかも知れませんが、本来の仕立てや成り立ちでは御持ちの包丁の方が圧倒的なアドバンテージが有りますので、じっくりと安定した研ぎを心掛けて頂ければ納得の性能を見せてくれる筈です。

練習に当たっての御質問なども御待ちして居りますし、今後も御役に立てる様でしたら宜しくお願い致します。

 

 

 

 

 

本日の持ち込み研ぎ

 

少し前に(余り遠く無いのでしょう)H様から、午前中に持ち込み午後から引き取りたいので都合の付く日を、と御要望が。そこで双方の日程を調整し、今日が其の当日と成りました。

牛刀らしき文面でしたが、渡されたのは筋引きでしょうね。二か所ほど、欠けが集中しているものの全体的には未だ新しくマズマズの状態。

 

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研ぎ前、全体画像

 

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刃部のアップ。欠けの集中している部分、中央の方。

 

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刃先拡大画像。切っ先カーブ、欠けていない部分。

 

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刃先拡大画像。欠けの集中している部分、刃元の方。

 

 

 

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400番で欠けを取りつつ、刃線の修正。中央やや先側がタナゴっぱら、且つ欠けの集中有り。

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緑と白の1000番で傷を浅く。刃線と小刃の整形。

 

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白の3000番の後、新しい研承の1000番を使って見ました。当たりがソフトでありながら、平面維持に優れる此の砥石は長い刃物に正確な刃を付ける用途には便利ですね。研いだ傷が浅い所も、仕上げ直前に使う事を躊躇わせません。

 

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中硬の巣板の後、緑板で仕上げ研ぎ。この後で最終を選択?と思っていましたが、相性的には問題無く其のまま終了。硬さ控え目で粘りがちな焼き加減の包丁でしたが、刃先に厄介な特性が出なくて良かったです。

 

 

 

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研ぎ後、全体画像。側面の、ちょっとした汚れや錆は軽く落として置きました。ややキツ目の錆でも、黒っぽく安定している箇所は其の儘に。

 

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刃部のアップ

 

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刃先拡大画像。刃元の、最大の欠けが有った部分。

 

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刃先拡大画像。切っ先カーブ辺り。

 

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裏の全体。初期は、少し擦過傷が目立つ上に返りの取り方が曖昧な印象でしたので、気に成った所を改善。裏からは15度弱の角度で返り取り(欠けの出方を考慮して強め)。

 

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初期よりも、切れと耐久の両立(やや切れ優先ですが)を実現できたかと思います。

 

H様には、御持参と引き取りで御足労を頂きまして有難う御座いました。御希望に沿った研ぎ内容に成っていると思いますが、実際の御使用で問題が無ければと願って居ります。

基本的に、御送り頂いての作業に成っていますので持ち込み、其の上引き取りまで当日と言うのは機会が限られますので御注意を御願いして置きたいと思いますが、今後も御役に立てる様でしたら宜しくお願い致します。

 

 

 

 

 

昨日の講習 西洋剃刀

 

昨日は、現在は和歌山からでしたかH様が剃刀の講習に来られました。出迎えて暫く遣り取りしていると、天然砥石館でお会いした事が有る事が判明。通りで、薄っすらとですが見覚えが有る様な?感じがしていました。野菜や河豚で試し切りと試食をしていた所に御連れと御来館になり、巻き添えにした経緯が。

其の際には思いもよりませんでしたが今回、カミソリと仕上げ砥石を御持参で研ぎ方を教わりたいと。曰く、研ぎ方が正しいのか不明であり、使っている砥石も思う様な切れが出せない気がすると。

カミソリ用として入手された大小、二種類の中山産と見受けられる砥石でしたが、触った感じではマズマズの印象。可能性としては、研ぎ方・砥石の平面管理の二つだと感じましたので、其の検証から。

 

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最初の全体画像

 

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刃部のアップ

 

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刃先拡大画像。剃刀としては何故か欠けが?錆や汚れを落としたからか、光っている割に切れが不十分。因みに、切れの確認にはナイロンやビニールの中から三段階、難易度の違いに因り選別した対象で。現状では、三段階の下レベルでも切り込めず。

 

 

 

人造の3000番で、欠けを取りつつ刃先の状態を観察。右側の刃先側の半分程の刃線が、手前と先端側で当たり方が違う事が判明。其れも揃える事を目指して、更に研いで行きます。先端の1cm弱を残して揃った時点でテスト。3000番仕上げでは三段階の下レベルには合格。

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続いて、中硬の巣板で中仕上げ。刃先の先端の当たりも改善が進み、切れのテストでは三段階の中レベルに合格。

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御持参の砥石をダイヤで平面を出し、柔らか目の小さい方で研いでから硬目の大きい方で仕上げ研ぎ。三段階の上レベルでも合格する切れに成りました。

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参考までに、私の水浅葱でも砥いで見ましたが(剃刀の性能自体を確認したかったので)相性的には大変良く、一番切れた気がしました。但し、泥や水の量・共名倉などを工夫すれば、御手持ちの砥石でも同等の性能を目指せると判断、奥殿本巣板の白を用いた所、狙い通りの結果に。(画像は水浅葱仕上げ)

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普段の御使いの砥石に問題は無いと判断し、天然砥石での研ぎと並んで、砥石の平面出しの練習をして頂きました。

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初見では砥面に不均一な面と(面直しに使っているダイヤの)傷が目立ちましたが、上記の練習を経て充分な状態に。御自身では、特に大きくて硬い方の砥石に御不満だった様ですが、硬い天然を(大き過ぎも小さ過ぎもですけど)平面にするのは難しいですので無理も無いかなと。今後は、余り面が狂わぬ先に直して、ダイヤ自体も人造砥石の面直しで目の立ち過ぎを改善し上で御使用下さいとアドバイスさせて頂きました。

本日に成って、使い易さが向上し永切れしそうだと感想メールを下さったので、安心しました。今後も訓練を続けて、存分に性能を発揮させて頂ければと思います。此の度は遠い所を有難う御座いました、又御役に立てる様でしたら宜しくお願い致します。

 

 

 

 

 

柳を御持参で研ぎ講習

 

一昨日は包丁御持参で、T様が新潟から研ぎ講習に御出で下さいました。

御自身では和包丁に興味が有りつつも、ボランティア研ぎで預かるのは洋包丁なので、何方の講習を受けるか迷う所も有ったそうです。和包丁の刃先の処理は、洋包丁の研ぎと通じる所も有りますので、先ずは柳からの講習に。

既に、結構な仕上がりを見せている柳であり、特に刃先は可成り鋭利。少々鋭角過ぎるとは感じましたが、鋼材と焼きの加減で其れでも何とかギリギリ、耐久は満たしている印象で紙の束も切れました。但し、僅かに捲れは確認出来ましたし、研ぎの精度が上がれば更に鈍角にしても此れ以上の切れも実現可能と説明しました。

 

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研ぎ前の状態

 

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刃部のアップ

 

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刃先拡大画像

 

 

何時もの様に、人造の1000番二種と3000番で下地を作り、天然砥石で練習して貰いました。人造での練習には、削り過ぎの問題が付いて回りますので。

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研ぎの角度の調整・狙った形状へ整えて行く練習をしつつ、各工程での結果を拡大画像で確認。試し切りも交えて、動作の可否を実感して貰いました。

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ベタ気味に研いだ切り刃に、糸引き・多段階の糸引き・より明確なハマグリなど。柳が一段落したら、牛刀でも。双方を通じて、研ぎの違いを理解して頂けた様です。

 

 

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最後に仕上げ研ぎを施し、参考までに小割りの砥石で切り刃を均し研ぎ。

 

T様には、遠い所を御足労頂き有難う御座いました。研ぎの初歩は、既に身に付けていらっしゃったとも言えますので割合、細かい説明が多目に成り面倒だったかも知れません。

ただ、正確な研ぎにより大き目の角度でもナイロンなどに切り込める事を楽しんでおられた様子にて、退屈はさせずに済んだかなと安堵して居ります。今後も、御役に立てる様でしたら宜しくお願い致します。

 

 

 

 

 

古い包丁の持ち込み

 

祖母の家から出て来たのだが、良さそうなので普通に使える様にして欲しいとの御要望で。之まで砥いで来た中では結構な錆び具合でしたので、特に裏の凹みから来る刃先への影響などに付いて御説明した上で御受けしました。

 

研ぎ前の状態

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刃部のアップ

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裏ですね

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布のペーパー?の荒いのから中までで大まかに錆を落とし、耐水ペーパーで1500番まで。その後は研承の400⇒1000⇒3000番。

 

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裏の錆も、ギリギリ使える深さだった様です。まあ、鋼に充分な厚さが有る限りは工具で削れる理屈では有りますが。

 

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どうも一部分に傷が入り易いと感じ、キングハイパーの中硬と軟口でも。途中で気付いたんですが、この包丁は全鋼で作られていたんですね。

 

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中硬の巣板で。

 

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中山の緑板ですが相性的には、もう一声と言った所。

 

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中山の並砥で、十分な切れに。やはり、合う物で研ぐと速く良い仕上がりに成ります。

 

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裏押し部分も良いですね。ただ、刃体の切っ先側の半分程に歪みが出ていましたので、コジ棒で修正。半分程度に成りましたが、切っ先寄りの裏が切れている格好に。研ぎ方で対応して使える状態にはしましたが、研ぎ進めて揃って来る迄、持ち主が砥ぎ上げるのは難しいかも知れません。

 

 

研ぎ上がりです。

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切り刃の凹凸を、対象の切断時に支障が出ない範囲まで軽減。刃元から切っ先に向かい、刃先の角度を鋭角化。

 

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刃部のアップ。鎬線の刃元側がRの字の右下みたいでしたので、少し他のラインに合わせて置きました。

 

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裏の錆は、殆ど刃先へ出なかったのですが、刃線の一部に数か所。殆どは顎周辺でしたが、一か所だけ中央部に。

 

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裏の状態。表よりも水を弾く表面に成りましたので、今後の使用途中に上乗せで錆びて来る事は抑えられると思います。

 

此の度、H様には研ぎの御依頼に加えて持ち込みと御引取に御足労頂き、有難う御座いました。今後も、私で御役に立てる様でしたら宜しくお願い致します。

 

 

 

 

 

待機期間に準備研ぎ

 

ナイフの記事を掲載したからでしょうか、バックとガーバーのナイフの研ぎに付いて問い合わせが。珍しく、電話に出られるタイミングでしたので少し御説明。遠からず、御送り頂けるとの事。

 

其れを待っている合間、少し前に予定外に届いた司作の黒打ち三徳を研ぎ直し。切り刃の厚み取りの調整と刃線が若干、S字気味の様でも有り気に成りました。

上野館長から、一月余り先に京都市で開催されるイベントに誘われた事も影響しています。何でも、世の中には世界博物館会議みたいなのが有るそうで、同時に展示会も行われると。天然砥石館も仲間入りの勧誘を受けたそうですが・・・大英博物館やスミソニアンも居並ぶ、ちゃんとした組織に入れて貰えるとは。亀岡市も鼻が高いのでは無いでしょうか。気を使う場面も有るかもですけど。

私は切れの実演などをする担当みたいですが、もしかすると其の刃物が欲しいとか言われかねないなと考え、一本位は用意しておくかなと。通常イベントで使う柳と三徳は、司作を想定していますので。

 

到着時

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研ぎ前の全体

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刃部のアップ

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左側面

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人造の1000番二種と、3000番で刃線を直線的に。少々タナゴっ腹に感じたので、抑揚を減らす方向で。

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人造の小割りで、切り刃中央~切っ先側の厚みを集中的に減らして行きます。

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左側の切り刃の角度が僅かに起きているので、右に近付けて置きます。

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中硬の巣板で整形と傷消し。

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赤ピン・緑板などで相性を確認しつつ仕上げ研ぎ。

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今一決まらないので、バラエティを増やしたり。

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研ぎ上がりです。現行の司作は、白紙系統の統廃合でアイテム数が減っている様ですが、その炭素量の上限寄りの方は、硬さと粘りのバランスが中央若しくは硬さ方向かな?と感じます。しかし、欠けや砥ぎ難さには繋がらず、永切れでは極めて優秀な性能を見せます。確りとした鍛冶技術が有っての事ですが、大変気に入っています。切れ味も、白一のカシカシし過ぎる程では無く、白二の滑らかさを併せ持った感じで好みです。

但し、地金の方は近年の製品(現代の極軟鋼)に成っているので、以前に使われていた物とは研ぎ上がりなどで差が有ります。人造では余り関係無いかも知れませんが。

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刃部アップ

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左側面。

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取り敢えず、形状と砥ぎ肌の両面から調整が済みました。此れでイベント時に売り物は無いのかと聞かれても何とか成るかなと思います。まあ、展開次第で自分用にしても良いのは何時も通りです。

 

 

 

 

 

ガーバーのハイスの御依頼

 

稀に頂く、ガーバーのハイスシリーズの御依頼です。東京のM様から二本、送って頂きました。クローム鍍金されていない刃先の錆を落とした所、切れが落ちたとの事で。

 

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研ぎ前の画像

 

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刃部のアップ。片方には、少々の欠けが二つ三つ。

 

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欠けの有る方の拡大画像

 

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もう一方の拡大画像

 

 

 

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人造の400番⇒1000番⇒3000番で。ハイスの中でピクシーやミニマグナムは、そうでも無いのですがショーティや其れ以上の厚みを持つモデルは結構、刃線中央近辺がリカーブに成っています。それも左側が出易い様ですが、やはり今回も確認出来ました。

 

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研いでいた感じから、黒蓮華で中継ぎ。此れは当たりだった様で、切れも仕上がりも問題無し。

 

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次に、奥殿の本巣板茶色硬口・天井巣板硬口・天井巣板超硬口では、まあまあ。中山の緑板中硬で、万全の切れに。

因みに、ガーバーの初期刃付けに近い角度と幅で研いでありますが、切れの軽さと抜けを改善する狙いで小刃の最先端と後方は角度変化・刃元から切っ先まで若干の角度変化を付けて有ります。

 

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研ぎ上がり画像

 

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刃部アップ

 

 

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欠けの有った方の拡大画像

 

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もう一方の拡大画像

 

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荒砥(400番)で作業中、泥を流しつつ研いでいたのですが不十分で、押さえていた側面に擦過傷が。申し訳無かったので、元とは変わってしまいますが磨きましょうかと伺った所、実用するので其の儘でと。ほんの僅か、油断してしまいましたね。

 

 

 

今回、M様には研ぎの御依頼を頂きまして有難う御座います。擦過傷への御配慮と、ブログ記載への御協力にも重ねて感謝致します。今後も、私で御役に立てる様でしたら宜しく御願い致します。