使いながら研ぎ進め、整える

 

数日前に、日野浦さんと話した際に10月には柳を仕上げて貰えるとの事。本当にそうなれば、やっと京都の料理人の方や小西さんに御届け出来る事に成ります。

可能であれば、三条に伺って以前に持ち帰った分の手持ち、その後の現状も見て欲しいと考えています。先ずは、地金の種類が変わって従来の仕上がり方とは差異が出ているので、其の確認。次に、修正途中で受け取った柳たちの進捗状況。

永切れする包丁ですから、通常使用での切れ止む毎に研ぐ、と言うパターンでは追い付かないのでデモンストレーションに活用して来ました。主に紙の束とかですが、その甲斐あって?ちょくちょく研いで来ました。直近の、国際博物館会議の場でも活躍してくれました。

勿論、日常でも刺身を引くのに使用して来ましたが、修正中の切り刃構造を踏襲して取り急ぎ仕上げたままでしたので、鎬筋の整列・切り刃に残存する研削痕の消退を主眼に研いで来ました。やっと、想定している半分の道のりを経過したと思われますので、作者に見せても大丈夫かなと。

 

 

 

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持ち帰った頃の画像、一番下の黒打ちから磨きへ移行しかけの柳です。

 

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現在の状態

 

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刃の状態

 

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切っ先寄り

 

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中央部

 

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一番の問題は、切っ先カーブ部分の裏切れと歪みでした。刃先の研ぎ減りと裏押しが進んだので、切れていた部分が半減。歪み取りも何度か行ない、僅かに。

 

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刃元の研削痕以外は、殆ど切り刃には傷が無くなり、鎬筋も整って来ました。実用に耐える仕立てに成っているのであれば、無駄に減らさずに使いつつ、研ぎ直す度に形状を整えて行くのが望ましいと思います。その方が包丁の特性を理解しつつ、厚みや刃線などに適切な研ぎが施せると考えています。

 

 

 

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序でに、数年前から試し研ぎその他で使って来た切り出しも整って来ました。

切っ先周辺の表裏が、削られ過ぎて厚みが無くなっていました。加えて、表の切っ先寄りには地金が被って来ていて刃金が刃線に出て来るまでにも期間を要しました。

 

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表は、ほぼ問題無しですね。

 

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裏も、切っ先部分以外は殆ど裏押しが整いました。現在の主要な役割は、牛乳のパックを開く作業ですが研ぎ上がり・形状変化のチェックだけでなく、片刃で対象を切る練習にも成ります。

 

 

 

昔から、刃物の形状が完全に整ってしまうと安心して仕舞い込む性格ですので、どうしても手近に置いてヘビーローテーションに成るのは、何かと難の有る包丁に成ります。その後、時間と手間を掛けて長く一緒に居る内に愛着も出るので、いよいよ整って来ると使い減りが気に成り仕舞い込み、次の新品を・・・の繰り返しに。

まあ、此れは良い例では無いのですが、日常の手入れの度に整った完成形を目指して研ぎ進めて行かれる事をお勧めしたいと思います。日々の気に成る点の改善や、理想の形状への構想が性能・使い勝手の向上に直結する筈ですので。

それと一旦、切り刃の形状さえ整えば、数回は刃先と裏押し(両刃なら左右の刃先研ぎ)で切れの延命が可能ですので、和包丁の研ぎも毎回の様に大掛かりにする必要は無い点も申し添えて置きます。

実際、私が研いだ後は前述の様にして性能を維持し、其れが困難に成って来れば研ぎの依頼を出す常連様も。当然、此の場合は研ぎ料金も低くて済みます。逆に御自身で切り刃全体を研いだ結果、整っていなかった場合は高くなります。特に凹面に成った砥石で裏押しをしたと思われる柳などは、修正にも限度が有りますので、何処まで行なって貰うかは難しい所です。

 

 

 

 

 

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