カテゴリー別アーカイブ: 砥石の選別

この度の砥石を得て

 

前回、手に入れた砥石達は予てからの私の希望、或いは願望を満たしてくれる物でした。流石は、古来より名品と名高い中から選んだだけの事は有ります。

具体的には、巣板・合砥(曇り~薄曇りに仕上がり、切れも充分な)を超える切れと微細な仕上がり(半鏡面~鏡面)を実現し、尚且つカミソリ砥クラスの弱点克服と言うか、更なる高望みを叶えてくれる砥石です。

以前にも多少記載しましたが、カミソリ砥の弱点(やや難癖に近いですが)と感じるのは、研がれた刃物が「一様な仕上がり」に成り勝ちな事。平面以外の立体的な形状への追従性が低い事。鋼材・仕上がり等に因っては、結構適応範囲が絞られる事。感覚として線の細い切れと、唐突な切れ止みも・・・。端的には、対応可能な範囲で鋼材の個性を均質化しつつ金属粒子を微細化、平面の切り刃へ特化した砥石と言えるでしょうか。

上記の印象から、之まではステンレス(炭素鋼に比べて個性の幅が狭い)以外では、相性によって巣板・戸前系・千枚系で刃金部分を仕上げて来ました。しかし、もう一段上を実現できない物かとの想いも拭い切れませんでした。切れ・長切れ・仕上がり(美観・防錆の兼備)で、より満足いく砥石は無いものかと・・・。

千枚系統では、大まかには納得できる場合が多く、若狭の系統も取り混ぜれば上位互換や守備範囲拡大を狙えます。この上、全性能(切れ・長切れ・仕上がり)を上乗せし、守備範囲も広くて研ぎ易い砥石を望むなど、欲張りすぎだと自分を納得させていたのですが、巡り合わせの妙で幸運にも期待通りの石に辿り着きました。

結果的には、組織の粗い炭素鋼を始め、廉価なステンレス(ふにゃふにゃ)・中級品の癖の有るステンレス(柔い粘い)・焼入れと戻しが変則的なステンレス(ハシカイVG10)・粉末冶金鋼(カウリY但し実用硬度)にも最も優秀な性能を発揮。主眼の炭素鋼は当然として、特にステンレスへの長切れ効果は驚きました。あくまでも最終仕上げなので、手前の各段階で夫々の石は必要ですが。

 

 

其れが前回の砥石達でしたが、中でもこの浅葱。小振りながら、同系統の中でも目的を絞って厳選した物。一緒に試した30型や40型、大判含めた黄板等色物とは異なる反応と仕上がりに大満足です。(何故かレーザー型の色物には刃金の仕上がりが同等な石が有り、確保して来ました)

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刃金はほぼ鏡面、地金も透明感ある仕上がり。平面の刃物であれば、カミソリ砥に繋いで完全鏡面への移行も楽。

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しかし白眉は、曲面(刃・地、共)にも対応してくれ、斑の無い微細な研ぎ肌で鋭利な切れ(画像は説明用に刃金の中央で明確な研ぎ分け)。更には地金も引かず、中々の滑走感を併せ持っています。つまり砥石に当てる面積広く硬軟両部分あり、完全平面がほぼ存在しない刃物である包丁に最適。

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切り刃は千枚で刃金(先側半分)は浅葱です。刃金に比べれば地金の仕上がりは、少し補正が必要な場合も。なので、千枚の本体・小割りした物にて均し研ぎ。

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今後は要件にも因りますが、合わせの包丁については基本的に此の仕様を標準としたいと考えています。地金の千枚仕上げは変色と錆びを軽減し、刃金の○○仕上げ(今は伏せておきます)は考え得る最良の刃先を実現してくれると思います。

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おまけは、此方も探していた蓮華入り巣板で粒度細かく硬さ中庸の物(側面には蓮華だらけ・砥面には黒っぽい模様の中に蓮華が出始め)。いうなれば本焼きの標準仕様に必要な石です。

以前からの手持ちにはコッパで大中小の白巣板蓮華がありますが、やや硬目でしたので有り難いです。此で大まかに仕上げ、部分的な均し研ぎはコッパで行う事になるでしょう。

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下はその予備?(墨流し+蓮華)ですが、上の石とほぼ近似の石も取り置き依頼中

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因みに、私は心配性なので今回掲載の浅葱は勿論、前回掲載画像のレーザー型・色物の予備も揃えるべく三度、選別して来ました。幸い、意外なほど驚異的にほぼ同質の石(数個ずつ)を見つけ出せたので、今後はそれらを仕上げの主力として最大限、自分の理想とする研ぎ上がりを追求したいと思います。

 

あと、S様に御送りした石の質もやはり気に成り、近い物を手持ちに加えてしまいました。続いて御依頼頂いた青砥は、もしかすると余り御待たせせずに見つかるかも知れませんのでお楽しみに。もし、サイズ・予算で御希望があれば御知らせを。上手く行けばかなり自由が利く可能性もありますので。

 

 

選別の結果

 

北海道のS様より、砥石の御注文を頂いていましたが、やっと相応しいと思える砥石が見つかりましたので御報告まで。

 

本焼き包丁に向く巣板と、糸引きや裏押しに向く硬口の砥石との御希望でした。当初は白巣板の「巣無し」や「蓮華」を考えていましたが現時点では余り弾数が無い様子。そこで暫く様子見した結果、巣の少ない敷き内曇りを砥取り家の次男氏から受け取りました(白巣板層は、巣の有無で砥粒の形状・積層も違う様で)。

 

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恐らく、前述の純粋な白系統よりも、やや曇りは強いかも知れませんが、研ぎ易さと砥粒の出方の違いから、研ぎ斑は出難いのではと思います。試した切り出しの裏(鋼部分)も良い状態に仕上がりました。

 

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もう片方は従来と異なる砥石群になりますが、幾つか試した硬口の内で最も裏押し(糸引きは何れも良好)に優れると判断した石です。

勿論、平面同士など条件が合えば、切り刃自体から研ぎ下ろせる性能でもあります。兎も角、鋼部分の目の細かい仕上がりと砥面の狂い難さ、其れに相反する扱い易さで際立っていました。

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S様、以上の二つの砥石ですが、近く御送りしますので試して頂きたく思います。もし、質的な相性やサイズ的な問題で交換を御希望の際は御遠慮なく御願い致します。但し、今度は何週間か或いは何ヶ月掛かるか分かりませんので、気長に御待ち頂く事になると思いますが。

 

 

 

 

おまけは、序でに選んだ自分用の物と、正におまけで貰った物です。

 

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上画像の物は、之までの手持ち(大谷山・御廟山以外の鏡面系)の上位互換や相性探しの選択の幅を広げてくれる有難い物でした。特に鋼の鏡面(又は近辺)仕上げ・地金の鏡面(又は一歩手前)仕上げに役立ちます。

勿論、これらも裏押しでの使用に際しても、扱い易さと性能に不満は出ないレベルです。確かに超~超超硬口での仕上げとは、極僅かに違いが有るやも知れませんが、それらは性能を発揮せしめる能力を求められる上に、扱い難さを克服する必要があります。失敗の確率も上がり易いでしょうから、現実的には今回選んだ砥石達が重宝すると考えられます。

 

他にも、ほぼ真っ白な(薄っすら柄あり)定型のが気に成りましたが、資金が貯まる迄はと予約して取り置きにしました。まあ、あれは完全に資料(愉しみ用)ですので、急ぐ必要も無いのが幸いです。

 

 

11月22・23日の砥石選別

 

この連休に、亀岡に行ってきました。目的の半分は、以前北海道から本焼きの柳の研ぎ依頼を頂いたS様に相応しい砥石の選別でした。

結果としては、通常使用では中々の物が多く在りましたが、本焼きに適する上に出された条件に見合う物は、もう少しじっくり探したいと思いました。S様には、値段・期間の幅を取って頂きましたので、短期(週単位)での選別ではなく、やや中期(月単位)で対応したく存じます。

 

 

代わりに、私の仕事用(本当かな?)の砥石で追加と変更をしてきました。

先ずは小さい白巣板ですが、之は特殊用途専用です。和包丁の切り刃を仕上げる際、複雑な面構成に成る所への対応は大きく二つ。一つは狭い範囲毎に小割りした砥石で分割、もう一つは其の面に合わせて砥石表面を変形させ、そこで研ぐ方法です。

下画像の砥石は、後者の方法に使用する目的で選びました。選定基準は、石そのものがやや当たりが柔らかく、肌理細かく尖っていない砥粒で傷が消え易い物です。小さ目が在り難いのは、当然大きい物で同様に使うと平面管理が面倒なこと、作業のテンポが遅くなる事、砥石の性格として、その目的に対して最大に振り切った物が少ない事からです(絶対数と、其に伴う確率の問題)。

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一応、切り出しを研いで見ました。目的通りの仕上がりですね。問題は平面以外での働きですが、それも現地で試し研ぎ用の置き包丁(来週生ハムスライス予定にて)を研いでテスト済みです。

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次は、八枚と表示が在りましたが、ほぼ千枚ですね。此方は、少し前に白巣板と共に購入した敷き内曇りが、やや性格的に似すぎていたので交換して貰った物です。

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刃金は、この系統としても可也良い状態です。

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最後は、砥取家で集合していた常連の一人、小鮎様から頂いた中山の並砥です。どうやら、再生品?に近い砥石で大きく厚かった物を加工されたそうです。経験値を上げて貰えるプレゼントを、何時も有り難う御座います。

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刃金は、上の砥石に比べてやや曇り加減ですが元々は結構、柔らか目だったそうなので其れ故でしょうか。対して、地金は此方の方がやや明るく仕上がり、そう云う違いも面白い所ですね。そして、層が変わって硬さも激変したとの由、又鉄を吸っての変化もあるでしょうから、今後はどうなって行くかも楽しみです。とは言え、充分な綺麗さと切れではありますが。

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次の日曜も、同様の予定ですが前回よりも大変そうです。春からの動きや予定が確定したり方向性が示されるかも知れません。それに亀岡周辺での動きも連動して来る筈ですので。

 

しかし其れとは別に、依頼を頂いた砥石の選別は抜かりなく行なうつもりではあります。

 

 

取り敢えず一応の準備

 

オーストリアでのイベントに招聘される事になったのは良いのですが、予想外に遣り取りが遅滞気味です。此方の質問項目を翻訳しての問い合わせとは言え、慌ただしい本国から大使館に返答が来ないとの事。最初のごく大まかな当日の予定をメールで見て以来、具体的な要望や現場の設え、観衆の種類やレベルなども不明の為、やらなければならなくなる可能性のある事柄、全てに準備をしています。

パスポートを二十数年振りに申請したり着る物(親の家に在った作務衣的な服)を用意したり近所からスーツケースを貰ったり。研ぎに関しては取り敢えず、人造・天然の砥石を用意する事から始め、簡単な展示が必要かもと、手持ちの包丁(柳と三徳メインで)を研ぎ直しました。人造砥石は五本に絞りましたが天然砥石の方は、機内持ち込みの荷物には重量制限も在るらしい事に加え、移動中の損傷・紛失も警戒すると余りサイズ・性能・値段(知れていますが)のレベルが高い物は憚られます。かといって普段使いの実用一点張りシリーズは、やや見栄えに難があります。

と言う訳で先日の日曜に探しに行って来ました。大き過ぎず、性能にも不満が無く、見た目もまずまず整っている巣板を二つ選び出す事が出来ました。

 

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白巣板にややナマズが入っています。その割りに中庸からやや硬めですが、刃金の傷は直ぐに消し、地金の仕上がりも若干粗め乍ら斑無く仕上がります。

 

 

 

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此方は通常の白巣板よりは敷き内曇りに近い物で、やはりナマズが入っています。しかし硬さは上の石を更に上回り、刃物を当てると巣板より合砥っぽく感じる程で、粒度もより細かいです。その為、仕上がりは刃・地共に先の状態よりも僅かに細かいです。

 

 

 

之まで、同じ役割で使って来たのは下の二つ、敷き内曇りの蓮華と紅葉です。両方、特に蓮華の方は平面ではない刃物の地金に斑が出易い傾向以外は存分に働いてくれます(他の蓮華にも同様の傾向は見られました)。

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しかし、今回は多少形状が整っている新入り二つに初陣を飾って貰うとしましょう。働いて、もう少し鉄を吸って帰ってからは、硬さ・細かさが向上するでしょうから、寧ろ今から其れが楽しみでもあります。あとは戸前系(若狭産)、千枚系、カミソリ砥の合砥を加えて出張用のチームを作ろうと思います。

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あと、研ぎ直した包丁ですが、日中に自然光で写さないと余り様になりませんが、以下の様な感じです。

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最初の通知メールによると当日イベントでは、最後の方で偉い方のスピーチの後、パフォーマンスとか書かれていましたが、持ち時間の長短や説明の内容・レベルとその有無、試し切りの可否や展示の有無も不明なままですので、大半の準備が無駄になるかも知れませんが出来る範囲で万全を期し、ウィーンでの仕事自体が無駄だったと思わずに済むようにしたいと思います。

 

連休中に小鮎様と

 

連休中に、小鮎様と砥取家にてミーティング?をして来ました。旧交を温めると言うか、お土産交換会と言うか砥石の品評会でしょうか。稀少な銘柄や豪華なサイズなど、手持ちの殆どが実用一点張りの自分では適わない砥石たちを披露頂きました。

 

その中で、幾つか共名倉にと頂いた石があります。黄色が中山産、グレーが奥殿産(浅葱)、褐色が関東の合砥?クリームが伊予砥との事です。

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共名倉といえど、当然小さい刃物ならば普通に研げる訳で、実際前回の剃刀研ぎでは、その種類の中でほぼ手持ち中、一番小さいサイズの砥石たちを幾つか使いました。

今回頂いた砥石を試す前に、自分の普段使い用の本戸前の切れ端で砥いで見ます。

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次に千枚(これは最初、極めて形状が歪だったので、面を均しながら使える所を使っています)

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奥殿産

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中山産

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因みに、共名倉は絶対性能よりも馴染みを優先して八枚です

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試した結果、本戸前⇒千枚⇒中山・奥殿の順で刃金が鏡面に近づく様です。地金も同じ順で明るく仕上がりますが、中山と奥殿では刃金の違いが少ない割りには、奥殿の方が地金の明るさ(反射)はかなり上となりました。

小鮎様、砥石の知見を広めさせて頂き、又楽しい石たちを有難う御座いました。前回亀岡から連れ帰った、いきむらさきの共名倉もお役に立てば幸いです。

 

 

 

おまけは、今回の亀岡行きで購入できた新たな千枚です。今現在、最も鉄を吸わせていないので成るべく使用頻度を抑えて性状を維持したいと思っています(使用して行く内、水分・鉄分・塩素も?で硬くなり勝ち・弾力が無くなりパサつきが出る傾向が多い印象です)。

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小鮎様からの質問で(九月六日の砥石選別含む)

 

少し前に、共名倉用の肌理が細かく柔らか目で刃金を光らせる石は?との質問を頂いたので、其れについて自分の手持ちを参考までに。

昨日は本来、天上戸前うぐいすを狙っていましたが探し当たらず、代わりに卵色巣板のこっぱと共名倉用の戸前いきむらさきを選んできました。

 

購入時

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持ち帰って面付け後

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購入時

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表裏面付け後

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卵色巣板は、鉋の刃や切り出しなど特に平面を研ぐ用途専用に、面が崩れる間もなく小振りな砥石をローテーションする為、複数揃えています(白の後で卵複数はお奨めです)。今回の卵もそれに役立つと思いました。

 

平面用卵色シリーズ

1 やや黄色巣板寄りと思われる物

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2 少し紅葉の混じった物

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3 黒付け坊主に近いらしき物

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4 これも少し紅葉混じりですが茶・灰でなく緑褐色

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5 一つだけ有る天上巣板層の卵

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何故此処まで卵を載せたかと言えば、砥取家に贈った切り出しの手入れを兼ねて共名倉の実例を示そうと考えたからです。それらの切り出しは、欠けや錆が出る度に研ぎ直しをして来ており、一度仕上げてから確か三度目の手入れになります(錆びや欠けを狙って研ぐので初期よりも平面度合いが甘くなっており、次回行なうとしたら人造の1000番辺りから再び精度を出して進める事になりそうです)。

左久作 大小刀 アーサーバルファー鋼に和鉄地金(三原鉄だったかと)

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中屋平治  錬鉄切り出し スェ-デン鋼に錬鉄地金

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これの手入れに使うのが卵シリーズと言う訳で、その後に大谷山と共名倉で仕上げる場面では今回購入したもう一つを俎上に上げようと。

 

 

自分が鏡面を狙って使う共名倉は以下の通りです(共名倉に求める性能・性質はHPの記載も御参照頂ければ)。

八枚

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大上

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やや軟らかい大上

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いきむらさき寄りの戸前系

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硬軟二種の戸前(一本松)

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千枚系らしきもの

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特に大上二種は適応範囲・扱い易さ・仕上がりで抜群です(但しこれらは、この目的に沿って選別した石であり、同銘柄でありさえすれば同じ働きが期待できるとは限りません)。

 

 

先ずは裏の錆を落とし、梳き部分を磨いた後、白巣板で裏押しをしました。表は白巣板からですが、砥粒の目が立ち気味とまったりの二種で刃金・地金双方の反応を窺いながら進みます。

 

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まずまずの結果だったので、続いて購入し立ての卵を試しますが、これも充分な性能。砥ぎ感は黒付けと紅葉入りの中間、つまり目が細かく泥も出るが多すぎず、研磨力はやや目の立った砥粒で(トロトロではなく)さらりと研げる(地金・刃金共に均等に仕上がる)印象です。過去の3つ程の経験上、黒付けに近いほど、(特に硬くない限り)泥がやや多めで地金に優しい様です。

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念の為、従来の卵と比較してみても遜色ない様子。

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ここから、本来はやや硬口で目の細かい合砥(千枚・八枚系か、特に細かい大上・戸前系)に繋ぐ所ですが、鋼材・砥石の質・更に相性も良かったのでこのまま大谷山(三つ有る手持ちの中で扱い易さが最も優れた石)へ。

そして合わせる共名倉はいよいよ、新入りのいきむらさきです。

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使い勝手・仕上がり共にまずまず。

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しかしもう一声と、万能タイプの大上(やや軟らかめ)を使用。

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潤滑性・クッション性が適度で、接点の状態が正確に伝わる研ぎ心地で扱い易い上、仕上がりも更に向上しました。此方に比べると、このいきむらさきは共名倉としては中の上くらいでしょう。

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只、そんないきむらさきも通常使用では、鋼を結構明るめに仕上げてくれます。逆に言うと、この段階でこうならない合砥は鏡面狙いの共名倉としては不足と言う事になります。

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裏側の緑褐色ではやや粗い砥粒なので扱い難いですが、これはこれで共名倉のコンビ砥石?みたいで面白くもありますね。

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小鮎様には参考にして頂けましたでしょうか。お役に立てば幸いです。

 

七月十一日の砥石選び

 

今月は十一日の土曜に、亀岡に行って来ました。何時もの様に、注文されている層の偵察と自前の補充を兼ねて。そして以前から話が出ていた対外的な活動開始への進捗を聞く為でした。

 

まず顔を合わせると、これから採れたばかりの巣板を切ってしまいたいので待ってくれとの事。その間、手近な木箱や台上の砥石を選んでいました。結果、10本ばかりの尺長や厚めの真四角な上物が切り分けられましたが、自分の希望する硬さ・弾力をやや上回っており、一応サンプルとして小さいのを購入するに留めました。

因みに、白巣板層らしいですが、敷き内よりは黒蓮華気味だと思います。匂いもうっすらそんな感じ。

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帰宅後、砥面・底面共に電着ダイヤで面を出し、養生をしてから試し研ぎ。結果、砥粒の細かさ・目の立ち方は上々で、研磨力・傷の消えに不足はありません。丸尾山の巣板としては硬過ぎず弾力が有るタイプなので研ぎ減りは少なめ。其れに影響されてか、食いつき方もグイグイ来る感じで言ってみれば若狭(田村山)の砥石を彷彿とさせる印象でした。

 

 

 

待っている間に見ていた方ですが、戸前系でやや千枚風味を感じさせる物です。

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天井戸前や敷き戸前の色・柄に近い外観ながら、一部にグレーや緑褐色以外の色調を含んでいる。研いで見ると明らかに普通の戸前系と違った研ぎ感や仕上がりになる。そんな物が偶にありますが、これもそんな砥石です。勿論、戸前寄りと千枚寄り、どちらに近いかは個体差があり、一様ではありませんが、今回のは若干の千枚寄りでしょう。

 

 

 

更に千枚寄りだったのは以下の画像。以前、戸前系ばかり数十個纏めて切り出された時に選んで来た物です。側面から見るとグレーと緑褐色で綺麗に分かれており、半々といった所でしょう。

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そして最も千枚に近い物も同時に手に入れていました。手持ちの千枚際戸前?の中では一番大きい物。

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最後は、此れも変わった物です。共名倉兼、小さい刃物用として購入しましたが、カミソリ砥に合わせると予想以上の性能で、研磨力・潤滑力・仕上がりと三拍子揃った働きを見せてくれました。通常使用としてはやや硬い(丸尾山産合砥としては)かなと思いましたが、結果的に鏡面用の超仕上げ「三大共名倉」として重宝しています。(因みに他の二つは、特に砥粒が細かく適度に目の立った大上の硬軟それぞれです。)

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画像側面は、いき紫特有の赤っぽい色が出ているので、どう影響するか気になっていましたが、少なくともその部分が表面に出ない限り他の千枚寄りと異なる挙動は無さそうです。以前、天上戸前いき紫を持っていた時、赤色とその周辺でとても違いを感じたので、その時が楽しみなような心配なような複雑な気分です。

 

 

六月七日の砥石の選別

 

七日の日曜日に亀岡に行ってきました。千枚採掘までにまだ間が在るのは分かっていましたが、土橋さんから前の週に電話があり、久し振りに会う事に。

勿論、行けば砥石を見るのはお決まりですが、月山さんから「使い勝手の良い白巣板は常時募集」との依頼もあり、先ずはそれを探しました。3~4個ばかり選んだのですが、新潟からの来客用に20個ほど入用だとの事にて其れは断念、代わりに面付け機まで仕上がった段階の中から80型相当のコッパ2個と薄めのレーザー型1個を送って貰う事にしました。

他にも、打ち合わせのような会話で、日仏での匠村計画の内容を聞いたり、当日居合わせた二人の来客に丸尾山砥石の説明をしつつ、自分用の砥石も探しました。今回選んだのは以下の物です。

 

本戸前 色物のレーザー型

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試し研ぎ用にしている青紙一号に極軟鋼地金ですが、丸尾山の本戸前としては結構、光り気味に仕上がりました。単体で研ぎ感が似ていると感じたのは御廟山の戸前色物(黄色主体)です。

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少し前に手に入れた別の本戸前の色物ではもう少し曇りがちだったと思います。研ぎ感としては三色に近い此方が好みなんですが。

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実は合砥の中で最も研ぎ感が好きなのは本戸前なので、以前はそれだけで複数持っていました。しかし仕上がりの差別化や切れの性格(料理用として)から、千枚系にシフトした経緯があります。

本戸前色物の中でも特に朱・紺・褐色の三色タイプ(朱が多目)が好みで、その他に八枚風、梨地混じり(少な目)と続きます。三色は適度に泥が出て研ぎ易く研磨力もあるタイプ(曇り気味)。八枚風は泥少な目で下ろすよりも磨くタイプ(やや光り気味)で、それ故に刃も石も減りが少ない。

上記二つに比べて個体差が大きいと思われる梨地は、其れが多いと精細な研ぎに邪魔をする場合も在る様です。また、ある程度硬くないと泥による張り付きや平面維持の低下になり、中々これはと思う物が少ない印象でしたが、以前偶々おまけで頂いた小さなコッパ(少し梨地入り)は、使いやすく良い仕上がりでした。尤も、初期は泥が出過ぎの柔らかいだけの印象だった物が鉄分を吸って硬くなってからでしたが。それに従い、刃物にも因りますが、仕上がりは過去手に入れた本戸前としては一、二を争うほど光り気味になりました。(それが以下の砥石です)

 

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今回手に入れた砥石は、初期から適度な硬さで面の崩れや研ぎ減りも少ない。そして粒子の細かさ仕上がりの綺麗さで、手持ちは勿論、これまで砥取家で試した分を含めて丸尾山産本戸前のトップレベルかと思われます。

初めは手持ちの予備、或いは普段使いやバラエティとして求めたのでこの結果には少し驚いていますが、ラッキーだったと思います。しかしこうなると、やはり本戸前は諦め切れず、レーザー型でも良いので好みのシリーズを再構築するべく、見て行きたいと云う誘惑に駆られつつあり危険な兆候ですね。

 

 

 

※  因みに 本文中に言及した御廟山の戸前色物は、以下の砥石です。厚みはあれどレーザー型としては、やや狭い砥面。只、元々取り回しや平面管理のし易さから80型やレーザー型は実用的だと捉え、重宝してきました。その基準で考えればメリットの方が勝るかも知れません。

御廟山としてはやや軟らかい為、刃金は完全には鏡面にならず、地金も同様です。しかしそれだけに、気難しさも控えめで、其処も気に入っています(手持ち御廟山の難易度別で三段階の初級)。

 

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五月五日の神戸にて

 

五月五日に削ろう会・神戸大会に行ってきました。勿論、参加する訳ではなく精々見学。より正確には知人(何時もの顔馴染み)に会う為ですね。前回の二個の砥石については、両方購入して頂けるとの事で当日お支払いも頂きました。有り難う御座いました。

以前の清水大会にも、近くを通ったので立ち寄りましたがその折、記念品代わりに水木原の卵色巣板みたいな砥石を購入した事がありました。だからと言う訳ではありませんが、今回は奥殿の巣板を買ってみました。元来、産地・有名銘柄には余り拘らない方ですが、巣板好きとしては古来より評判が良い巣板の代表格とされる奥殿は、一つくらい有っても良いかと考えていました。

しかし、急に思い立ったので予定外の出費となりましたが、前述の砥石代に気づいて何とかなりました。砥石の代金で砥石を買っていては収入が増えないので困ったものですが。

 

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白巣板に蓮華が結構混じっていますね。

 

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裏の中央部には、石英の白い部分(透明感のある乳白色)が見られます。裏をダイヤで下ろそうとしてもその辺りが特に硬い感触。

 

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試し研ぎでは泥よりも研ぎ汁が出易い様子。購入時確認した手触りよりは硬口な印象でしたが、場所によって少し感触の異なる研ぎ心地。しかし致命的な研ぎ傷・研ぎ斑・研ぎ難さも無く、まずまずの仕上がりでもあります。硬い割りに研磨力も有る方で、良い買い物だったと思います。

 

 

 

その上、もう一つ砥石が増えました。天然砥石尚さんから、天上巣板のカラスを頂戴しました。何でも以前、購入・物々交換した折に、気に入って頂けた石の御返しにとの事で、誠に恐縮です。

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長さは22~23cm程あります。

 

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厚みは6cm程。

 

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研いで見た所、上記の砥石とは違い、適度に泥も出て圧倒的に研ぎ易いですね。刃金・地金の仕上がりも申し分ありません。筋にも言及されていましたが、通常使用では特に困る事も無さそうです。

 

 

参考までに、下は丸尾山の天上卵色巣板のカラスです。此方は、泥の質としてはもう少しサラッとしており、当たりも弾力が少なめです。見た目も全体的に黒色を基調(カラスが大量に出ている面ではほぼ真っ黒)としており、褐色は殆ど見られません。

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しかし似ている所もあります。

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上は確か二回目か三回目に丸尾山に登った時に拾った欠片で、土橋さんからは八枚だと聞きました。これが後に鏡面仕上げ用として大谷山に合わせる共名倉、第一弾となりました。

 

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次に之は、コッパと言うか共名倉用?として棚にあった物ですが、八枚に近い外観です。少なくとも、千枚近辺ではあるでしょう。

 

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そしてこれは、以前おまけに頂いた若狭の砥石です。上の二つと、色・柄・研ぎ心地が結構近いと思います。やはり天然ですから、同じ山・層でも其々違った砥石が採れるのと同時に、逆に山・層を越えて似た物が出てもおかしくないのかも知れません。

 

 

頂いた、あと二つのおまけは普段使い用のペティやナイフを研ぐ為に台所へ置いてあります。タッチアップに近い研ぎ用ですね。

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普段の積んだ状態

 

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左上は大谷山に登った折、貰って来た巣板っぽい物(軟口)。右上は昔から家にあったカミソリ砥(質が均一でなく、小さなクレーターが散在する硬口)。下二つは、硬さ・均一さ・泥の出方がかなり違う若狭砥石(硬口と中庸)。これらを手に持ってささっと研ぐ訳ですが、其々、どの組み合わせ・順番が最も早く研げるか。或いはどれを共名倉にするのが最適な仕上がりか、等と試行錯誤をしながら楽しんでおります。

尚さんには、若狭の砥石を触る機会を度々設けて頂き、感謝しております。何の御返しも出来ませんが、おまけ以外に取ってある若狭砥石たちに、仕事上で活躍して貰う事が御礼になるかもと考え、今後は仕上がりの相性を探って活用していければ良いなと思っています。有り難う御座いました。

 

 

四月二十九日 砥石の選別

 

祝日(昭和の日)、亀岡に砥石を探しに行ってきました。到着するなり、次男氏から「ホームページにアップしたので残っていないです」との事。

しかし大きさや形状で難があったり(お買い得品)、加工が間に合わなかった物は少しは残っている筈、と見て回りました。案の定、棚と加工場に其々、狙いの物が在りました。

今回のは少し前、メールにて依頼されたステンレス包丁用の黒蓮華です。(もう一つは、自分の補充用として)

 

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黒蓮華のコッパです。厚みは程々ですが、中々広い砥面と適度な硬さ、細かいが少し目の立った砥粒で申し分ありません。その上、黒蓮華でありながら蓮華の赤も混じっている自分好みの質です。この手の物は、同等の煙硝気を持つ砥石と比べて炭素鋼を研ぐ場合、錆や着色が少なく、刃物への当たりも優しい傾向の様です。

しかし側面の黒い部分が示すとおり、黒蓮華の成分は強めでもあるので、研ぐ事で鉄分を吸収して行く内、将来的には全体としてかなり黒色と硬さが増してくると思われます。その際、蓮華が混じっている事の有り難さが利いて来るでしょう。以上の内容はこれまでの数例の経験からです。

 

 

 

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此方は、次男氏曰く黒巣板に分類されるであろう砥石です。自分も通常の黒とは違って巣が少なく、表面に走っている事が多いひび割れ状の模様も無く(裏面には在り)、敷き内曇りに良く見られる紺色の点々が在る事から変り種だと思います。

側面の黒い部分は上の砥石と近い感じで、此方も使う内に(ステンレス専用なら殆ど変化は無いですが)黒色や硬さが増して来そうです。砥粒は細かく、目も立っていない方なので、硬さが増すと研磨力は余計に控え目になるでしょうが、鋼材との相性次第でどう転ぶか分からない為、手持ちの砥石達と比べても誤差の範囲内と判断しました。

 

 

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因みに、切り出し(刃金は青紙1号)で試した所、特に硬くは無いものの、細かい砥粒(目は立っていない)が詰まっている印象そのままに刃金・地金共に傷無く、艶も明るめに仕上がりました。

 

 

 

おまけは、土橋さんから御裾分けに貰った筍です。

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帰宅後、早速皮ごと湯がいて鰹と昆布の出汁で煮てみました。途中で、冷蔵庫の中に伊勢の答志島で購入した塩蔵ワカメが在るのを思い出し、若竹煮としました。

 

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毎年春頃になると、若牛蒡・蕗(出来れば蕗の薹も)・山独活・そして筍を食べたくなるのですが、今年はこの筍で目出度くコンプリートです。新物ではありませんでしたが、この若布も戻した状態が大変良いとの触れ込みに違わず良い仕上がりになりました。あくが少なく瑞々しい筍と相俟って、之までで一番の出来だったと思います。感謝致します。