名古屋のM様が、再度の研ぎ講習に

 

砥石館でのハマグリ研ぎイベントに御参加下さった後、私の自宅にて研ぎ講習を受けられたM様が、再び研ぎ講習に御出で下さいました。

事前のメールにて今回は、私が行なっている複合的なハマグリ研ぎの内、切れ優先のハマグリに御興味が有るとの由。そこで、先ずは切り刃自体に切れ優先を施した後、永切れ目的の鈍角化ハマグリを加える事無く、其の儘の性能を体験して頂きました。

とは言え、ほんの僅かに刃先の角度は起こして居ますが、初期刃付けの切り刃と大差ない状態から。明確に効果の判定をする為には、強靭さを持つ物が相応しいので今回は、サランラップの芯を選びました。鈍角化が殆ど為されていない刃先は、食い込む一瞬こそ確かに鋭く切り進むものの、其処から先は進行を阻むに充分な重さを感じられました。

これは刃先から切り刃の終わり迄、一定角度の(ほぼ)平面が続く為、刃が進む程に切り込んだ対象からの摩擦による側面抵抗が増すばかりと成るからです。其の上、刃先最先端は大き目の捲れが複数、発生していました。

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次に、刃先の角度を更に5度ほど鈍角に研ぎ直し、同様に試して貰いました。予想されていたよりも、刃先の切れが鈍る感触は少なく、逆に切り込む際の抵抗は僅かに軽減している事を実感された様子。刃先の捲れの程度も半減していました。

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更に、もう一段階だけ5度ほど鈍角化してみると、(浅く削るのでは無く)深く切り込もうとすれば、多少は意図的に刃体を起こす必要は有るものの、切れの重さは相当に軽減され、刃先の損耗は殆ど見られなく成りました。

下画像の切断面の艶が物語る様に、初期刃付けの角度から10度以上の鈍角化を施しても、充分な切れが得られて居ます。柔弱な対象では、刃体が受ける抵抗が小さく、刃先角度の違いに因る効果の差が判然としないので一見、ベタに研いだ鋭角な刃こそが最も抵抗が小さく、対象に負担を与えないかに見えるかも知れませんが、この結果から見ると何処まで其れが真実なのか疑問も感じます。切断する際に使用者の負担が少ないなら、切断されている側の負担も少ないのでは?と。

因みに、私が良くイメージを伝えるのに使うのは、大小の傘の組み合わせです。大きな傘(ベースの切り刃)を小さく開いて、その上に小さな傘をフルに開いて翳せば、大きな傘に雨が掛かるの(刃が切り進む際に対象から受ける抵抗)を大幅に低減してくれると言う物です。

切り刃に小刃を付ける場合でも、ベースの切り刃の角度より一定以上に大きな角度(私のテストでは1.5倍前後、つまり1.4~1.7倍の範囲内)で無ければ意味を成しません。其れ以下では明確な効果が薄れ、其れ以上では切れ自体が別物に成る傾向に在ります。

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御持参の包丁でも研ぎと試し切りをして頂きましたが概ね、ナイフでの実験結果を後押しする格好に成り、私が刃先にも鈍角化のハマグリを施す理由に納得して頂けた模様。

最終的には、薄物に仕立てられた牛刀(焼き入れも特別に硬い訳では無い)の刃先でも、切れと永切れの両立を狙った仕様の研ぎで、サランラップの芯に対応でき始めていたので良かったです。

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あと、下画像の砥石も御買い上げに。元々の御希望であった水浅葱は大判(60型2本分)しか無かったので、其れを分割して貰ってから御送りする予定にしました。色合い的には浅葱系統にも見える此の砥石なのですが、中硬~やや硬口の質でした。しかし御手持ちの中に少ない其の性質が、逆に御気に召したそうで。

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御土産も頂きましたので後日、有り難く食べたいと思います。多少は各地の御菓子も見聞きしている心算でしたが、まだまだ知らない品が有るんですね(笑)。

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数日後、田中砥石にて大判の水浅葱を3分割して貰って来ました。訪問前に依頼していた、相岩谷の在庫も見せて貰え、中硬メインで2つ、選別して来ました。

 

元々、底面が一定では無く厚みも差が有りましたので、出来上がりも若干ですが個体差が。現状、現れている砥面での比較に限れば、右端の物が僅かにキメ細かく均一かなと。減って来れば又、変わって来るでしょうから入れ替わりも出そうですが。ただ、何故か他より幅が狭いですね(笑)。

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相岩谷は、ほぼ同寸ですが色味が異なります。強いて言うなら、左の方が柔らか目で泥も出そうです。

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対馬の名倉も追加で。戯れに、手近に有った箱も付けてくれましたが何となく、判も相俟って焼き物っぽい印象に成りましたね。

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日本でも、凡そ十年後には量子コンピューター、十五年後には核融合炉が稼働しそうな情勢に成っているにも関わらず、鎌倉時代から珍重されて来た自然の石(中山を始めとする高雄の砥石)が未だに活躍の場が有るのが面白いですね。勿論、その他の仕上げ砥・中砥・荒砥の天然も含めて。

科学の力で、性能を再現して代替品を造るとなると、採算度外視にせざるを得ないので、コスト面から市場に出せないのが大きいのでしょうけど。

 

 

 

 

M様には此の度も、遠くからの研ぎ講習受講、有り難う御座いました。11時間の講習は最長記録タイでした。以前の13時間の方は、最後の2時間がマクドナルドでのインタビューと成りましたので、純粋に自宅での滞在時間としては、と言う意味で(笑)。

水浅葱に付きましては、厚目の物をとの御要望でしたので、最も薄い物を除いた何れかを御送りする事に成ると思いますので、宜しく御願い致します。

 

 

 

 

 

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