カテゴリー別アーカイブ: 依頼の刃物

切り出し10本を纏めて仕上げ

 

予定通り展示用の切り出しを進めていたのですが、請求書に記載する順序の関係で一気に仕上げる事になりました。本来は、少しづつ春までに・・・と考えていたのですが。ですので少々、前の作業内容です。

用意した切り出しは、超廉価版よりは切り刃の不均一さはマシですが、今回は展示される各種砥石による砥ぎ肌を表現する素材としての意味合いが有りますので、それなり以上の平面精度が必要です。

そして表面ですが、恐らくは天然仕上げ砥のみならず天然中砥も俎上に上がるでしょう。その意味では、仕上がりは其処まで細かい必要は無いかも知れません。

しかし一旦最終仕上げレベルにまで持って行かねば、製造段階の傷や面の崩れが確実に修正されているかの判断をしかねる事。そして、その状態から改めて中砥で砥ぐ事で、砥粒による本来の面粗度を引き出し当該砥石の性状を観察できるからです。

 

 

1484652062227

先ずは電着ダイヤと研承の400番・1000番から、シャプトンの1000番です。此れに備えて鎌砥サイズを二本用意しておきました。相対的に、ある程度は面積が小さ目の方が砥石も平面精度が出し易いと感じます。

 

 

1484652072609

その後は3000番以降(傷が消えにくい物はキングハイパー併用)、天然です。但馬砥・青砥・三河のボタンと目白・白巣板数種・敷内曇り数種・千枚・八枚・中山の巣板など。砥石の硬さや砥粒の精粗、泥の出方で傷消しや平面向上のどちらに合うかを見定めます。

 

 

1484652080276

相性も有り、硬い方が良く下りたり。同じ作者の切り出しでも地金の反応も一様で無く。各種取り混ぜ精度上げをしつつ、傷消しも進めて行きます。

 

 

1484652033447

平面研ぎ用に用意している卵色巣板で更に平らに。その後はひたすら、白巣板と敷内曇りで再度の傷消し。

 

 

1484652009822

最後は東物の巣板と中山の黄色いの等で最終仕上げ。今回は切れ味でなく砥ぎ肌の表出が目的ですので、新品から一気に形状修正した事による細かい刃毀れは糸引きで落としてあります。それでも取り切れなかったり、完全平面で無い物も一部残っていますが、再度相方の砥石が決まった折りに修正しつつ砥げば切り刃の問題は解消されるでしょう。

 

 

1484651999375

久しぶりに(10本とは言え)数日間掛かり切りの研ぎとなりました。これで切り出しは一段落と思いつつ、完了前日に届いていた常連様からの宅配箱を開けると何時もの包丁に加え、切り出しが二本入っていたのでした。と言う訳で、切り出しとの格闘は第二ラウンドに突入です。

 

 

他にも、場所は砥取家の研ぎ場を御借りしてになりましたが、九州からの希望者様を迎えて研ぎ指導を行う事が出来ました。

先方には予定変更からの流れとなった形でしたが、結果的には満足頂けた様です。私としても、文書作成を終えたばかりでしたが其れを実地に試用しての講習は、交流開館での予行演習ともなり良い勉強でした。

長崎のS様、遠路かつお土産持参で恐縮しました。経験を今後に活かしたく思います。有り難う御座いました。

 

 

あと、以前知り合った方から久々に連絡を頂きました。フランスに帰国後、あちらでも包丁研ぎを仕事にされようとしている様です。日本国内とは環境が違い、御苦労も有ると思いますが頑張って頂きたいです。

私に手伝える事があれば微力ながら御協力致しますし、先々日本に御立ち寄りの際は、天然砥石館も御覧頂ければと思います。お互いに研ぎの重要性や難しさ、楽しさ迄も含めて伝えて行ければ良いですね。

 

 

 

バリソン ベンチメイドの蝶

 

少し変わったナイフの御依頼を頂きました。バタフライナイフで有名なバリソンの物です。左のリカッソに蝶の刻印があります。

アクション映画などで華麗なクルクルを強調され易いですが、実際はオープンした時の強度も安定性も高い構造だと思います。ただ、ブレード形状が作業向きで無いデザインのタイプが多い様です。

之も、その範疇と言えますが(セイバークリップと言ったでしょうか)御使用の用途は専ら魚の締めや料理との事です。その場面で、先述のデザインも有って切れに不満があると。ついては鎬を上げても構わないから、切り刃構造(ベタでも良し)にでもして鋭利に仕上げて欲しいとの御依頼でした。

 

1478784737857

 

 

1478784745564

 

 

1478784753804

エッジ部分のアップ

 

still_2016-11-10_181415_60-0x_n0002

刃先拡大画像。この部分は此れで、きちんと砥げていますね。そう言えば、某刃物店店主の講習を受講済みでしたか。

 

1478784760674

ダイヤとGCの荒砥ぎからです

 

1478784769203

小割りした各種人造砥石で

 

1478784798895

特に黒蓮華系統の巣板と極めて相性良く、その後の御廟山でもまずまず。御廟山は、糸引きとも言えない程に切り刃の角度と違わない位で刃先を撫でました。但し、切っ先カーブから先は魚に突き刺すように切り込む事が予想されるので、ストレート部分より僅かに鈍角に。

 

img_1707

刃元の部分は、初期のホローグラインド気味の研削痕が残っています(特に右側)。しかし、完全に消すとブレードの強度低下に加え、抜けに不可欠な厚みの変化(厚い元⇒薄い切っ先)に逆行しかねないので程々に。同じ理由で、厚みが取り切れていなかったカーブ近辺の肉抜きは逆にしっかりと。

 

img_1708

大きな段刃を無くし、緩いハマグリでほぼ刃先まで。切れ味優先との希望により、刃先の鈍角化は通常の半分以下。鋼材としては予想より細かい組織でしたが、硬度は控えめなので御廟山で刃先の最先端を撫でて仕上げとしました。

 

1478784818907

上記による厚みと刃先の操作で、掛かりは勿論のこと走りや抜けが数倍、改善しました。これで料理の際に食材から抵抗を受けたり、その所為で俎板に勢い良く打ち付けるのが軽減するでしょう。

 

still_2016-11-10_214258_60-0x_n0004

 

 

img_1705

 

 

M様、この度は直接お届けの上で研ぎの御依頼を頂き、有難う御座いました。再びお受取りに立ち寄られました折に、仕上がりを御確認下さい。また使用の上で問題が有りましたら、研ぎ直しも致しますが、もしも気に入って頂けましたら幸いです。

あ、切れが劇的に変わっておりますので、クルクルはお勧めできません。ご注意下さい。

 

 

 

御依頼の切り出し

 

久々に、切り出しの御依頼を頂きました。

も作の和鉄地金です。刃先は1ミリ弱の厚さで付いていない状態。

 

1477924857421

 

 

1477924883715

 

 

1477924869855

 

 

 

GC240番から始めましたが、研磨力と平面維持の点からダイヤにバトンタッチ。無添加石鹼を加えて荒下ろしです。

1477924989270

 

 

その後はシャプトンの320番と1000番で。

1477925031112

 

 

此処からは天然、先ずは但馬砥。特に地金の相性が良く、上滑りせずに砥ぎ易いです。

1477925003915

 

 

裏は千枚や八枚で。表は白巣板各種。

1477925014849

 

 

研ぎ上がり。

1477924934555

 

 

1477924942040

 

 

1477924956705

 

裏は最初、破線の様な当たり方でしたが最終的にはほぼ、全体が当たるように。只、新品時の特性か切れのテストで紙を切った際、刃先の脆さが気になりました。返送準備前に再度試しましたが同様で、僅かに鈍角に研ぎ直して終了としました。

包丁などでも時折り、新品は数ミリ減ってからが本当の状態と言われますし、実際自分でもそんな例を体験しました。ですから之も心配は無いと考えています。

そもそも今回は、一気に形状を整えてしまわずに使いながら、その都度砥ぐ事で育てて行く方針でした。新品時より切り刃全体が精度向上した訳ですから、次回以降はより形状は整い、酷く傷めない限り研ぎの料金も安くなるでしょう。

 

天然砥石館の開館日を挟み、以前より日数を要しましたがN様、この度は研ぎの御依頼、有難う御座いました。

 

 

 

お隣の市から御依頼

 

隣接の市にお住まいのO様より、研ぎの御依頼を頂きました。たまたまですが、此方もダマスカス模様ですね。

余り研がれた形跡が無い状態ですが、かなり多数の刃毀れが見られます。

 

大小、二本の先ずは大きい方

IMG_1562

 

 

IMG_1563

 

 

Still_2016-06-30_020726_60.0X_N0001

 

 

小さい方です

IMG_1564

 

 

IMG_1565

 

 

Still_2016-06-30_020851_60.0X_N0003

 

 

 

研ぎ方は、最終仕上げの砥石以外は共通です。GC240番で欠けを取り、シャプトン1000番・2000番で大まかに刃の形を作ります。

IMG_1566

 

黒蓮華系の白巣板で更に形状を整えます。

IMG_1568

 

若狭の戸前で傷を消し、刃先を細かく均一に。

IMG_1569

 

中山の並砥で最終仕上げ。

IMG_1570

中山産の並砥・水浅葱でも試したのですが、小さい方は相性的により良かった若狭の戸前で仕上げました。

 

 

 

IMG_1572

 

 

IMG_1574

 

 

Still_2016-06-30_051721_60.0X_N0004

 

 

 

 

IMG_1575

 

 

IMG_1576

 

 

Still_2016-06-30_051854_60.0X_N0005

 

それぞれ、研ぎ後の拡大画像では最も大きな欠けの痕跡の部分を写していますが、使用時に障る物では無いので此に留めました。

 

 

和包丁(平もですがどちらかと言えば切り刃)・洋包丁を問わず、製造時の刃付けの段階で刃元や切っ先周辺よりも中央部の厚みが目立つ仕上がりの物が散見されます。仮に刃付け前の金属板の状態で、テーパーになって居るならまだしも、そうで無ければ二重に問題になるでしょう。切り抜け(引き切り・所謂走り)で抵抗が余分に増えるからです。

今回の小さい方は、切っ先周辺にも肉取りが不十分で厚みが残っていました。ですので、いつもより峰側まで研ぎましたが通常、私は洋包丁の研ぎでは刃先の2.5ミリから3.5ミリの範囲程度を研ぎます。それは、以前にも記載した事がありますが極端な刃付けの変更に及ぶ広範な研ぎ下ろしは製品コンセプトから外れるだけで無く、研ぎ料金の高額化に繋がる為です。

もしも4ミリを超えて、5㎜・6㎜以上の範囲で研ぐなら和包丁の基準になって来ますので、刃物の設計上バランスがおかしかったり修理や研ぎ減りで刃幅が狭くなり、余りにも鈍角過ぎて用をなさない場合以外はお薦めしていません。

ではどのように対処しているのかと言えば、その2.5ミリ~3.5ミリの研ぎ幅の内、刃先側半分と峰側半分で目的別に研ぎ分けています。一般に洋包丁で小刃と呼ばれる刃先の段刃は、顎から切っ先まで一定の角度・幅で研がれるか、或いは切っ先に向かって徐々に鋭角に研がれるかの二択です。

しかし、私は前述の中央付近に厚みを残した製品への対処として小刃の峰側半分で、研ぐ量を変えています。つまり抵抗が増える程に厚い箇所は、その部分に対して元寄りに位置する箇所よりも厚みを抜きます。その上で刃先側半分は、刃先へ向かってより鈍角で且つ切っ先へ向かって徐々に鋭角にしています。二段階に分ける事で、刃先の効果的な角度変化の足を引っ張る、側面の厚み残りに対して緩衝帯の働きをさせる訳です。

以上で対象への切り込みと切り抜けが改善されますが、この対処で間に合わない様になれば、初めて広範な研ぎ下ろしを検討します。

 

 

O様、以上の様な研ぎを施して有りますが、お使いになって問題などありましたら御知らせ下さい。仕様を変更しての研ぎ直しにも対応させて頂きます。土曜の昼頃にはクロネコより御返送致します。この度は研ぎの御依頼、有難う御座いました。

 

 

カウリXの柳

 

北海道のS様から送られて来た、カウリXの柳刃包丁です。

 

IMG_1540

 

IMG_1541

 

 

IMG_1542

 

 

Still_2016-06-24_005510_60.0X_N0001

 

 

製造は、やはり服部なのでしょうか。私が居た頃のカウリダマスカスの柄(がら)付けに近い印象を受けます。

刃付けとしては、かなり教科書通りで上出来。刃体の捻れ・反りも殆ど見られません。裏の精度も抜群。使用者の刃先の研ぎも、やや角度の付け始めが先寄りかなと感じる程度。

 

 

 

IMG_1543

取り敢えず、裏押しの確認と表の精度を確かめつつ、人造中砥から始めます。返りは出易い物の、取れ易くもあるので甘めの焼き加減と共に研ぎ易い仕立てに成っています。

 

IMG_1544

巣板二種と千枚

 

IMG_1545

やや黒蓮華がかった白巣板

 

IMG_1547

敷内曇り

 

IMG_1548

千枚から水浅葱

 

IMG_1549

刃金の傷が消え難いので、千枚・水浅葱の前にシャプトンの2000番に戻った為、結構光っています。

 

IMG_1550

刃先の最終角度付近と裏押しは、完全に天然砥石仕上げです。刃金全体は水浅葱で撫でた程度。紙の束での試し切りでは、中央から切っ先手前までに小さな捲れが連続して出現。硬度と刃先の厚み次第では、カウリだからと無闇に耐摩耗性に優れる訳では無いと分かりました。

 

Still_2016-06-24_044309_60.0X_N0004

刃先の手前には水浅葱で取り切れ無かった、2000番の研ぎ目が薄く残っています。

 

 

 

と、この状態で留めても良かったのですが、拡大画像の状態と試し切りでの捲れの発生が気になり次ぎの日、もう一度研ぎ直し。

中山の巣板と並砥も追加。後、若狭の戸前。

IMG_1551

 

 

IMG_1553

中山の巣板から若狭の戸前では、手持ちの(甘焼きでない)カウリダマスカスが割合、傷消しが上手く行ったのですがもう一つ。

 

IMG_1554

刃先に水浅葱、裏押しには質の違う水浅葱。これで切れには問題無いのですが。

 

IMG_1552

思いついた並砥。これが良かった様です。思えば、両親の所に置いてあるカウリYのフィレナイフにも相性が良かったので、この系統で特に硬焼きでない物には合うのかも知れません。

 

IMG_1555

完全に天然仕上げなので、刃金は暗くは無いですが曇り仕上げ

 

IMG_1556

地金は、小割りと小さな薄片での千枚仕上げ。積層部分は確か、ニッケルと420J2が交互にだったと思います。ですので強度・柔軟性が均一で無く、その意味では地金の傷消しも簡単ではありませんね。部分的に落としに行くと歪になるので、切る為の形状が整ってしまってからの(刃先以外の)残り傷は、無理には取っていません。

 

Still_2016-06-25_040831_60.0X_N0006

研ぎ目は最も均一に見えます。

 

 

現状、カウリXについては確立した仕上げ方が見つかっていないので、暫定的に此の様に仕上げてみました。ですので、特に見た目的には統一感が無い様な好みの問題の様な感じがしています。

製造段階でも、刃金と地金の耐摩耗性の差による減り方の違いで、境界付近で妙な段差が見受けられ、一面的な研ぎでは当たらない箇所も在ります。その為、傷が残り易かったりしますが地金部分は案外千枚と相性が良く、研ぎ易く仕上がりも良かったです。

ダマスカス模様を際立たせる為に施されていた黒染め(確か硝酸だか塩化第二鉄だったかでの腐食)ですが、私の好みと所有者の「食材を切る刃物に黒はどうなのか」という意見から平は軽く磨いておきました。しかし、一旦腐食してからなので薄く表面に凹凸が出ています。腐食無しの磨きは気づかない程に繊細で上品ですが、此方の方が見落とされる事は無さそうで、製品的には切り刃の天然仕上げと合いますね。

S様、こんな所ですが週明けにも御送りしますので、一度お試し下さい。仕様に於いては問題無いと思いますが、今回の仕上がりでも悪くは無いと感じて頂けましたら幸いです。

 

 

 

 

つい、研ぎ直してしまいました。

黄色と紫です。泥が出易く、斑が出難い筈でしたが、もう一つ。

IMG_1557

 

 

奥殿と東物(中山か菖蒲)の巣板で何とか。

IMG_1558

 

 

地金も、黒蓮華・敷き内・千枚で再度。

IMG_1559

 

 

 

IMG_1561

 

ほんの少し、面の繋がりと研ぎ目の揃い方が改善された様です。

 

 

 

府下からの研ぎの御依頼

 

大阪府下のY様より、研ぎを御依頼頂きました。包丁はミソノの炭素鋼です(刻印にはスウエーデン鋼とあります)。切れ味への拘りが感じられますね。

ある程度、錆が出ていますが新品状態から磨かずの使用であれば、かなり優秀なレベルだと思われます。

 

IMG_1515

 

 

IMG_1518

 

 

IMG_1517

 

 

IMG_1516

 

 

Still_2016-06-09_005118_60.0X_N0009

刃先も酷い損耗は見られず、全く切れない状態ではありません。しかし、刃体の厚みが綺麗にテーパーになっている割りに、切り抜けがもう一つ。

 

 

IMG_1519

先ずは人造の1000番で、小さな刃毀れ(欠けと捲れ)を取りながら研ぐ範囲を少々広げ、緩いハマグリに。その後、耐水ペーパーの二段階(1000番・2000番)と研磨剤三段階で錆・汚れを落としておきます。

 

 

IMG_1520

白巣板(サラサラ下りる)で研ぎ目を消しながら、刃先の角度を切っ先に向けて徐々に鋭角に研いで行きます。

 

 

IMG_1521

敷内曇り(砥粒の目が立っていて細かい)で更に追い込み・・・

 

 

IMG_1522

千枚に繋ぎます。

 

 

IMG_1523

最終仕上げは浅葱で。左上のは共名倉に使用した中山の黄色いのです。

 

 

IMG_1525

 

 

IMG_1524

 

 

IMG_1526

 

 

IMG_1527

 

 

Still_2016-06-09_023155_60.0X_N0011

 

 

鋼の包丁を御使用との事で、つい応援したくなり通常よりも磨きを入念に行いました。磨きその物の御依頼では無かったので完全ではありませんが(そもそも拙い手作業でもあります)。水を弾き、汚れを取り易くする事で錆や変色を遠ざけられるからです。又、それで切られた材料の味にも好影響を与えます。

今後も、使用後にクリームクレンザーを御使用になる事で、ほぼ同状態の維持が可能でしょう。(怪我防止の為に俎板等の上に包丁を安置して、キッチンペーパー・ティッシュ・布に付けて磨いて下さい)

 

確認画像では了承を頂けましたので、明日にも御返送致しますが、実際の御使用に於いても使い勝手が改善されている事を願っております。Y様、この度は研ぎの御依頼、並びにブログ掲載への御協力を頂き有難う御座いました。

 

 

いつもの常連様から

 

私のベスパやパソコンで御世話になっている常連様から、研ぎ依頼を受けました。まあ、パソコンを持ち込んでメンテナンスを御願いしたので、ついでにと言った感じですね。これら以外にも、アメリカ製のマスプロナイフも研いだりしつつでしたが・・・。

 

 

以前から研いでいた包丁、研ぎ前。

IMG_1503

 

確か青紙スーパーの三徳

IMG_1504

 

鋼(恐らく日立白紙に準じる刃物用炭素鋼)のペティ

IMG_1505

 

ステンレスの牛刀

IMG_1506

 

 

 

大半は同一行程にて、代表して三徳の画像を

IMG_1507

シャプトンの1000番で小さな欠けと厚みを取ります。

 

 

IMG_1508

巣板で傷を消しながら、刃先を鋭く。

 

 

IMG_1509

今回は、目の細かい合いさで更に鋭利に。

 

 

IMG_1510

浅葱で最終仕上げ。

 

 

 

IMG_1511

研ぎ上がり

 

 

IMG_1512

地金は、千枚仕上げです

 

 

IMG_1513

平は耐水ペーパーで、切り刃(地金部分)は小割りした巣板・千枚です。これは薄く製造されているので、切り刃の錆や傷などは人工の研磨剤ではなく、減りの少ない天然で落としていこうかと考えて居ます。あ、刃先は又、少しばかり気になって撮影後、研ぎ直しています。

 

 

 

IMG_1514

この手のステンレスとして、期待出来得る最大限の切れが得られたのは、砥石との相性の良さが際立った為でしょう。可笑しな話ですが、殆どのステンレスで性能を引き出しつつも、中級とそれ以下の物に、特に恩恵があります。具体的には切れ味と長切れです。柔いステンレスが採用されている包丁ほど、よりはっきりと改善された刃先を実感して貰えるのではと思います。

 

今回は二本が和包丁でしかも両刃でした。本来なら、(洋包丁基準より高い)和包丁基準の料金になる上に、片刃の二倍の料金になる両刃です。しかし、三徳は切り刃が狭い仕様で且つ形状が整って来ている為、片刃と同一料金(しかも最低ライン)。ペティは切り刃が広いものの、研ぐ部分が未だ刃先周辺に限定的で切り刃自体は磨きが主体である事から、此方も片刃と同一且つ最低ラインとなりました。

 

色々御世話になっており、研ぎの依頼も頂き有難う御座います。過去に御購入頂いた包丁・鉈の仲間入りするであろう特注の鉈は、いつもの様に数ヶ月~一年程かかるかも知れませんが、気長にお待ち頂ければと思います。この度も、有難う御座いました。

 

 

香港からの御依頼

 

香港のS様から包丁購入の御依頼が有りました。その際、お任せでの研ぎを併せて申し込まれておりました。

新品への最初の研ぎでもあり、半分サービスの意味合いもある研ぎでしたが、鋭利過ぎる刃先は通常でもお好みで糸引きを入れて来ました。ですので、もう少し完成形に近付く様に仕上げて行きました。

 

新品状態。人造砥石ながら、かなり追い込んだ研ぎが施されています。

IMG_1464

 

刃部のアップ

IMG_1465

 

 

天然砥石にて研ぎを開始。先ずは巣板から。白巣板・敷き内曇り系統。

IMG_1462

 

巣板での研ぎあがり。曇り仕上げ。

 

IMG_1466

 

千枚での研ぎ

IMG_1467

 

刃金は半鏡面レベルと言うべきか、かなり明るく仕上がっています。地金も小割りした巣板から千枚で。

IMG_1468

 

浅葱での研ぎ

IMG_1469

 

更に明るく仕上がり、刃金は準鏡面に。地金も再度、千枚(小割り)で仕上げ研ぎ。

IMG_1470

 

刃部のアップ

IMG_1471

 

 

研ぎ上がり

IMG_1476

 

新品から余り研ぎ減らすのも気が引けるので、人造の研ぎ目は大まかに消す事に留め、刃金部分を刃先へ行くほど鈍角の極緩いハマグリで、強い刃先と軽い切れ味に仕上げました。

これで、切れを保ったまま頑丈さと長切れを両立し、錆びや変色にも人造砥石仕上げに比して耐性が付きました。食材を切っても食味が損なわれにくいでしょう。

 

 

S様には、前回画像を上げた砥石にも興味を持って頂いた様子にて、包丁と砥石の値段は勿論、この司作三徳包丁の仕上がりを見て御判断を頂きたいと思います。

この度は包丁・研ぎ・砥石の御依頼、有難う御座いました。

 

 

府内からの御依頼

 

 

和泉市のF様より、研ぎの御依頼を頂きました。刃物の種類は小さな剣鉈と言うか、副(え)鉈でしょうか。

 

研ぎ前

IMG_1438

全体画像。柄のチェッカリングが細かい細工ですね。

 

IMG_1439

刃部アップ。地金部分はブラスト処理でしょう。

 

Still_2016-03-31_032049_60.0X_N0002

刃先拡大画像

 

 

 

研ぎ手順

IMG_1440

GCの240番とシャプトンの320番から。その後キングハイパーの1000番、硬軟二種。この段階で、平の傷も(特に裏でした)大まかに落としておきます。錆びる素材であれば作業中の防錆も兼ねています。

 

 

IMG_1441

巣板で研ぎ目を細かくしつつ、軽く均し研ぎ。柄の養生はラップの上から各種テープで役割り分担です。

 

 

IMG_1442

更に形状を整えつつ、刃先を研ぎ出します。地金部分は、通常品+小割りした巣板・粒状の巣板で仕上げます。

 

 

IMG_1443

中山の並砥と思われる物。かなり相性良く、仕上がり・下り共に不満の無いレベル。

 

 

IMG_1445

より長切れ狙いの為、撫でる程度ですが中山の浅葱で最終仕上げ。

 

 

 

研ぎ後

IMG_1446

全体画像

 

 

IMG_1447_1

刃部アップ

 

 

Still_2016-04-01_061537_60.0X_N0003

先拡大画像

 

 

初めの予定では、切り刃から研ぎ下ろして自分の標準的な形状をと考えていましたが、鎬筋から刃金までの間が予想以上にホローグラインド的に仕上げられていた為に変更しました。

フラット近辺まで持っていくには、かなり研ぎ減らさねばならず、そうなれば刃幅の減退は避けられないからです。その代わり、刃金部分の厚みと角度・地金部分の厚み双方を、先に向けて漸減。そしてカーブから切っ先までの切り刃幅減少傾向を改善しました。

以上の作業内容により、刃先の切れ・刃体断面形状に因る切り抜けが充分だと判断し、今回は新品からの研ぎという事もあり無理に減らさない研ぎとしました。勿論、厚み抜きと角度調整を施した刃先も、初期状態から殆ど減らさずに仕上がっています。

 

 

F様、作業の進行に伴って仕上がりを此の様に纏めました。使用する上では問題無いと考えますが到着後、御好みに適わない所があれば御返送頂ければと思います。先ずは此の度の御依頼、有難う御座いました。

 

 

 

北海道からの本焼き第二段

 

北海道のS様から、先丸蛸引きが送られて来ました。今度、注文する同型の練習も兼ねて御家族から譲り受けた物との事。

到着後、一見して分かる問題点は無いような。まあ、切ってみないと何とも・・・。と紙を切るも問題なし。ああ、厚みのある対象には抜けが・・・?と紙束を切るとやや手応えが重いかもレベル。つまり、欠けがちらほら有るのと刃体の捻じれがある以外は、通常は切れに関して問題視されないと思われました。

捻じれは水本焼きという事もあり、余り強引に戻すのは困難でしたので半減させる程度で。それ以上は鏨を打って伸びを惹起し、然る後に何割か鏨目を研ぎ去るしか無いでしょう。そこまでのリスクを取らずとも実用には差し支えない範疇かと。あと、研ぎに於いても裏押し時に砥石上で面を合わせられないのが改善されましたので。

恐らく、欠けが多発する傾向は水焼きの本焼きであるだけでなく、上記も原因となって居た可能性があります。研ぎながら調子を見て、適宜そこそこ戻しを掛けていく内に裏押しで砥石に食い込むのが収束して行きました。

 

IMG_1410

黒檀の柄と鞘で、水本焼きに相応しい装い。ピンの材質も御揃いです。

 

 

IMG_1407

全体的には大きな問題は見受けられず。

 

 

IMG_1409

切り刃もかなり均等に厚みが抜かれており、切っ先に向かってテーパー状。敢えて言えば、刃先へ続くハマグリの開始位置が急角度だった点、それとは逆に最先端の角度が僅かに鋭角(この鋼材の仕上がりとしては)だった様に思います。

 

 

IMG_1411

裏は捻じれの関係かやや不安定。あとは変色など。

 

 

IMG_1413

一番目立つのは切っ先周辺。本来は刀の帽子状のデザインですが、厚みを抜くのと切れるように研いだ様子。通常、磨く程度で砥石は当てない部分でしょう。

 

 

Still_2016-03-11_032336_60.0X_N0027

拡大しても、欠け以外の部分は良く研がれて居ます。しかし最終角度はやはり、ベタ気味の鋭角。刃先の欠けや捲れに繋がり易いですね。

 

 

 

今回も、荒砥を使うまでも無くキングハイパー1000の硬軟二種からスタートです。それで更に厚みの最適化を図り、切っ先の成型・刃先の欠け取りを行ないます。

 

IMG_1412

後は天然砥石です。切っ先を但馬砥で研ぎ進め。

 

 

IMG_1414

切り刃を柳用砥石で均して行きます。此れは蓮華・ナマズ入りの敷き内曇り。柔らかく研ぎ易い上に仕上がりも良いので、初期の全体的な均しや最後の纏めに向きます。

 

 

IMG_1415

他にも標準的な敷き内やナマズ・卵寄り(此れはやや硬い割りに今回、良い相性)で、部分毎や個別の課題毎に対応。

 

 

IMG_1416

続いて従来からの本焼き用白巣板蓮華巣で仕上げようと考えていたのですが、相性がいま一つ。急遽、最近のも取り混ぜて調子を見つつ進めます。

 

 

IMG_1425

裏押しにも2~3、試しましたがもう一声ですか。此れはその内の一つでS様に御送りした裏押しに適す硬口にかなり似た質の物。この段階では未だ裏が不安定だった様子。

 

 

IMG_1426

上(中山)で傷消し・中(奥殿)で仕上げ、下(中山)で裏押しはまずまず。

 

 

IMG_1421

 

 

IMG_1420

 

 

IMG_1422

 

 

IMG_1423

 

 

Still_2016-03-11_065456_60.0X_N0029

 

 

 

 

この時点で終了としても良かったのですが、切っ先の状態と欠けの痕跡が気になり、研ぎ直し。特に切っ先の仕上がりが切り刃に対して合っていない気がしました。

 

IMG_1433

関で使っていたGC砥石(800・1000・1200・1500)

 

 

IMG_1434

頂き物の白のボタン

 

 

IMG_1432

白の目白

 

 

IMG_1435

ボタンは良く下ろしますね。目白は硬く細かく、合砥の様。

 

 

IMG_1430

刀の帽子で云う所のナルメでしたか、そんな感じの研ぎ。

 

 

IMG_1431

本焼き用(地金には優しくなく、刃金を良く下ろす)コッパで研ぎ目を細かく。

 

 

 

 

 

IMG_1359

 

最後は奥殿の蓮華巣板で切り刃を仕上げ、裏押しはカラス入りで仕上げました。工場出荷時の形状とは違うかも知れませんが、持ち主が今後研いで行く上で、自然に形状を維持し易いと思われる物にしました。

一番大きな欠けの名残や、刃先が2~3の僅かな乱れ程度に収まった時点で研ぎを留めました。普通に御使用頂き刃先の研ぎを数回、行なって頂ければ解消されるでしょう。

今回の切り刃と切っ先の研ぎ上がりに付きましては、御依頼主の判断を仰ぎたいと思いますが先ずは、この度も御依頼頂きまして有り難う御座いました。

 

 

IMG_1427

 

 

IMG_1428

 

 

IMG_1429

 

 

IMG_1437

 

 

 

 

S様

メールでも記載しました刺身包丁の種類に因る使い勝手に付きまして、他にも気になる方が有るやも知れませんので、此方にも一部転載させて頂きたく思います。

柳に比べて切り方での違いが出易い様な気がします。柳は対象に当てながら引いていけば、ある程度自然な切れ込みをしますが、蛸引きは「弓切り」を明確に意識する必要が有ると。先ず柵を俎板の手前ぎりぎりに置いて、更に柵の手前ぎりぎりに包丁を構えます が、包丁の刃元を柵の角付近、切っ先は柵の上空の60~70度の角度で立てます。そこから、包丁を引きながら倒して行くのですが「柵と包丁の 接触点」の視点からは、回転鋸の刃が進んで来る様に感じるようで無ければいけません。この場合の蛸引きでの難しさは、直線的な刃線を動きにより曲線的に作用・接触させていく運行を強いられる部分でしょう。

蛸引きよりも(殆どの刺身包丁よりもですか)反りのキツイ先丸では、前後へのスライド(押し切り・引き切り)を伴わない「押し付け」だけでも対象に切れ込む効果が期待されますが、逆に刃線が先へ行くに従って後退している訳ですので、刃先の接触点を常に維持して(引き切りで)切り進めるのには極端に言えば、他の包丁より押し付け 続ける努力を要する事になります。蛸引きは蛸引きで、先丸は先丸で、各々に扱い方は違えど独自の難しさが有る事になります。

代わりに、柳や菖蒲よりも刃幅が狭く薄めである事の多い蛸引きや先丸蛸引きは、対象へ切り進んでいる最中 の方向転換や角度の急変を受け付けてくれると思います。特に先丸だと、接触するのが面>線>点の関係性で言う所の後ろ寄りになるでしょうか ら、自由度が高いです。その特性を活かした使い分けを試して頂ければと思います。但し、柳の複合的な刃線カーブと先細りの切っ先は、取っ付き易さと万能性で誘惑が強いと思いますが。

以上は、之までの経験・知識から自分が理解している程度ですので拙いとは思いますが御参考になれば幸いです。因みに以前、私の先生は刀で切る際の刃の運行・軌跡につい て、刺身包丁の刃の働かせ方との関連を指摘された事があったように記憶しています。