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四月二十九日の砥石選別

 

今年は桜のシーズンに遅れ、藤のシーズンになりました。指示のタイミング不安定なナビに惑わされ、想定外の経路(茨木回り)でしたが景色は良かったです。しかし余裕が無く写真も撮れず。

北海道用と松阪用、それに香港用の砥石を探してきました。結果的には、一勝一敗一分けでしょうか。

 

先ずは、北海道へと考えて選んだ東物の巣板

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旗星の判子の痕跡が見えます。やや硬口で巣無しの蓮華・墨流し入り

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ほぼ本焼き用として選んだので、地金には余り優しくは無いかも。

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しかし、主目的に対しては良い仕上がり。

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以前購入した自分用の此れ(下画像)と比べると、硬さが僅かに増した分、扱い易さは若干低下。その代わり、使いこなせれば砥面の変形減少・仕上がりの光り方向上に繋がるでしょう。何より形状の確かさと、底面周辺の焼け気味の難が無い為に、砥石としてのランクが違って来ますね。

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どちらを選ばれても、又どちらも選ばれなくても問題は有りませんので御心配なく。この品質と性能であれば手元に置いておくのに何の痛痒も・・・と言うより傍に居てくれると有り難いレベルです。

 

 

 

此方は、仕事用の予備として追加した物です。

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以前の此れ(下画像)が強い研磨力の割に期待以上の細かい仕上がりを見せてくれたのでもう一つ有ればと。この手は、巣が巣として邪魔になり難いタイプの様です。見かけと研ぎ感は荒々しいのに不思議な事です。

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松阪に送った三つの内、一つは同じタイプです。それ以外は黄色の軟口のカラス入り、水浅葱(これも私の持ち物と同タイプですが、ややまったり気味)。扱い易い千枚も頼まれていましたが、其処は希少種ゆえ簡単には出会えませんでした。まあ、其れを承知でなければ銘柄・品質を指定しての選別など叶いませんが、軟口カラス入りが代替出来る筈と踏んで選んでおきました。

 

 

 

最後は、現在香港から司作の包丁について問い合わせを頂いている方が、千枚・八枚の砥石についても興味があるとの事。ついては、其方にも相応しい砥石をと見てきましたが、前述の通り。

止む無く、もしも御急ぎで千枚に準じる石でも良ければと、以前購入の此の砥石を参考に上げさせて貰いました。

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戸前と敷き戸前の中間という可能性も有りますが、色調・使用感から天上戸前と千枚ではと思われます。

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実際に研いで見れば、仕上がりは充分。標準的な千枚と比較して、地金の細かさ・明るさ共に順当、刃金はやや明る目かなと。少なくとも性能面から見て、千枚系統に伍するのは間違いありません。

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包丁は兎も角、ペイパルやEMSなど、改めて聞いたり調べたりで手間取っており、恐縮ですので御要望に及ばない迄も、せめて近しい石をと紹介してみました。

 

 

 

因みに上記の砥石達は、個々に研ぎ上げた状態そのままでも充分な性能を発揮しますが(或いは夫々が何れかの分野で最適な可能性も)、そこから鏡面仕上げに持っていく繋ぎとしても有用です。

下画像は、小物を対象としている手持ち最小の大谷山と、鏡面仕上げ用共名倉の大上。

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掛かる手間隙は直前に使用する繋ぎの性能にも因りますが、概ね今回画像に上げた砥石達ならば何れも数分以内で、此の仕上がりに達します。

刃金だけなら大抵1分前後ですが、特に癖の有る地金を速く仕上げるならば間にもう一段階、挟んだ方が良いかも知れません。

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やはり鋼材や刃物に応じて相性を探り、設定した最終段階まで持っていけるルートを構成する砥石群は、大抵の要望を満たしてくれるので心強いです。そして可能な限り一段階を小さく、多くの石で繋いであるなら、より滑らかに上がって行ける訳です。

更にそのルートの用意が複数ならば、組み合わせ次第で或る程度は不測の事態にも対応できる為、仕上げ砥石枠を幾つか御持ちであれば、コンビネーションを探っておかれるのが良いと思います。共名倉の使い分けに限っても、効率や仕上がりに差が出ますので。

 

 

 

府内からの御依頼

 

 

和泉市のF様より、研ぎの御依頼を頂きました。刃物の種類は小さな剣鉈と言うか、副(え)鉈でしょうか。

 

研ぎ前

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全体画像。柄のチェッカリングが細かい細工ですね。

 

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刃部アップ。地金部分はブラスト処理でしょう。

 

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刃先拡大画像

 

 

 

研ぎ手順

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GCの240番とシャプトンの320番から。その後キングハイパーの1000番、硬軟二種。この段階で、平の傷も(特に裏でした)大まかに落としておきます。錆びる素材であれば作業中の防錆も兼ねています。

 

 

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巣板で研ぎ目を細かくしつつ、軽く均し研ぎ。柄の養生はラップの上から各種テープで役割り分担です。

 

 

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更に形状を整えつつ、刃先を研ぎ出します。地金部分は、通常品+小割りした巣板・粒状の巣板で仕上げます。

 

 

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中山の並砥と思われる物。かなり相性良く、仕上がり・下り共に不満の無いレベル。

 

 

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より長切れ狙いの為、撫でる程度ですが中山の浅葱で最終仕上げ。

 

 

 

研ぎ後

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全体画像

 

 

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刃部アップ

 

 

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先拡大画像

 

 

初めの予定では、切り刃から研ぎ下ろして自分の標準的な形状をと考えていましたが、鎬筋から刃金までの間が予想以上にホローグラインド的に仕上げられていた為に変更しました。

フラット近辺まで持っていくには、かなり研ぎ減らさねばならず、そうなれば刃幅の減退は避けられないからです。その代わり、刃金部分の厚みと角度・地金部分の厚み双方を、先に向けて漸減。そしてカーブから切っ先までの切り刃幅減少傾向を改善しました。

以上の作業内容により、刃先の切れ・刃体断面形状に因る切り抜けが充分だと判断し、今回は新品からの研ぎという事もあり無理に減らさない研ぎとしました。勿論、厚み抜きと角度調整を施した刃先も、初期状態から殆ど減らさずに仕上がっています。

 

 

F様、作業の進行に伴って仕上がりを此の様に纏めました。使用する上では問題無いと考えますが到着後、御好みに適わない所があれば御返送頂ければと思います。先ずは此の度の御依頼、有難う御座いました。

 

 

 

北海道からの本焼き第二段

 

北海道のS様から、先丸蛸引きが送られて来ました。今度、注文する同型の練習も兼ねて御家族から譲り受けた物との事。

到着後、一見して分かる問題点は無いような。まあ、切ってみないと何とも・・・。と紙を切るも問題なし。ああ、厚みのある対象には抜けが・・・?と紙束を切るとやや手応えが重いかもレベル。つまり、欠けがちらほら有るのと刃体の捻じれがある以外は、通常は切れに関して問題視されないと思われました。

捻じれは水本焼きという事もあり、余り強引に戻すのは困難でしたので半減させる程度で。それ以上は鏨を打って伸びを惹起し、然る後に何割か鏨目を研ぎ去るしか無いでしょう。そこまでのリスクを取らずとも実用には差し支えない範疇かと。あと、研ぎに於いても裏押し時に砥石上で面を合わせられないのが改善されましたので。

恐らく、欠けが多発する傾向は水焼きの本焼きであるだけでなく、上記も原因となって居た可能性があります。研ぎながら調子を見て、適宜そこそこ戻しを掛けていく内に裏押しで砥石に食い込むのが収束して行きました。

 

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黒檀の柄と鞘で、水本焼きに相応しい装い。ピンの材質も御揃いです。

 

 

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全体的には大きな問題は見受けられず。

 

 

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切り刃もかなり均等に厚みが抜かれており、切っ先に向かってテーパー状。敢えて言えば、刃先へ続くハマグリの開始位置が急角度だった点、それとは逆に最先端の角度が僅かに鋭角(この鋼材の仕上がりとしては)だった様に思います。

 

 

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裏は捻じれの関係かやや不安定。あとは変色など。

 

 

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一番目立つのは切っ先周辺。本来は刀の帽子状のデザインですが、厚みを抜くのと切れるように研いだ様子。通常、磨く程度で砥石は当てない部分でしょう。

 

 

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拡大しても、欠け以外の部分は良く研がれて居ます。しかし最終角度はやはり、ベタ気味の鋭角。刃先の欠けや捲れに繋がり易いですね。

 

 

 

今回も、荒砥を使うまでも無くキングハイパー1000の硬軟二種からスタートです。それで更に厚みの最適化を図り、切っ先の成型・刃先の欠け取りを行ないます。

 

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後は天然砥石です。切っ先を但馬砥で研ぎ進め。

 

 

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切り刃を柳用砥石で均して行きます。此れは蓮華・ナマズ入りの敷き内曇り。柔らかく研ぎ易い上に仕上がりも良いので、初期の全体的な均しや最後の纏めに向きます。

 

 

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他にも標準的な敷き内やナマズ・卵寄り(此れはやや硬い割りに今回、良い相性)で、部分毎や個別の課題毎に対応。

 

 

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続いて従来からの本焼き用白巣板蓮華巣で仕上げようと考えていたのですが、相性がいま一つ。急遽、最近のも取り混ぜて調子を見つつ進めます。

 

 

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裏押しにも2~3、試しましたがもう一声ですか。此れはその内の一つでS様に御送りした裏押しに適す硬口にかなり似た質の物。この段階では未だ裏が不安定だった様子。

 

 

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上(中山)で傷消し・中(奥殿)で仕上げ、下(中山)で裏押しはまずまず。

 

 

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この時点で終了としても良かったのですが、切っ先の状態と欠けの痕跡が気になり、研ぎ直し。特に切っ先の仕上がりが切り刃に対して合っていない気がしました。

 

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関で使っていたGC砥石(800・1000・1200・1500)

 

 

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頂き物の白のボタン

 

 

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白の目白

 

 

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ボタンは良く下ろしますね。目白は硬く細かく、合砥の様。

 

 

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刀の帽子で云う所のナルメでしたか、そんな感じの研ぎ。

 

 

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本焼き用(地金には優しくなく、刃金を良く下ろす)コッパで研ぎ目を細かく。

 

 

 

 

 

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最後は奥殿の蓮華巣板で切り刃を仕上げ、裏押しはカラス入りで仕上げました。工場出荷時の形状とは違うかも知れませんが、持ち主が今後研いで行く上で、自然に形状を維持し易いと思われる物にしました。

一番大きな欠けの名残や、刃先が2~3の僅かな乱れ程度に収まった時点で研ぎを留めました。普通に御使用頂き刃先の研ぎを数回、行なって頂ければ解消されるでしょう。

今回の切り刃と切っ先の研ぎ上がりに付きましては、御依頼主の判断を仰ぎたいと思いますが先ずは、この度も御依頼頂きまして有り難う御座いました。

 

 

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S様

メールでも記載しました刺身包丁の種類に因る使い勝手に付きまして、他にも気になる方が有るやも知れませんので、此方にも一部転載させて頂きたく思います。

柳に比べて切り方での違いが出易い様な気がします。柳は対象に当てながら引いていけば、ある程度自然な切れ込みをしますが、蛸引きは「弓切り」を明確に意識する必要が有ると。先ず柵を俎板の手前ぎりぎりに置いて、更に柵の手前ぎりぎりに包丁を構えます が、包丁の刃元を柵の角付近、切っ先は柵の上空の60~70度の角度で立てます。そこから、包丁を引きながら倒して行くのですが「柵と包丁の 接触点」の視点からは、回転鋸の刃が進んで来る様に感じるようで無ければいけません。この場合の蛸引きでの難しさは、直線的な刃線を動きにより曲線的に作用・接触させていく運行を強いられる部分でしょう。

蛸引きよりも(殆どの刺身包丁よりもですか)反りのキツイ先丸では、前後へのスライド(押し切り・引き切り)を伴わない「押し付け」だけでも対象に切れ込む効果が期待されますが、逆に刃線が先へ行くに従って後退している訳ですので、刃先の接触点を常に維持して(引き切りで)切り進めるのには極端に言えば、他の包丁より押し付け 続ける努力を要する事になります。蛸引きは蛸引きで、先丸は先丸で、各々に扱い方は違えど独自の難しさが有る事になります。

代わりに、柳や菖蒲よりも刃幅が狭く薄めである事の多い蛸引きや先丸蛸引きは、対象へ切り進んでいる最中 の方向転換や角度の急変を受け付けてくれると思います。特に先丸だと、接触するのが面>線>点の関係性で言う所の後ろ寄りになるでしょうか ら、自由度が高いです。その特性を活かした使い分けを試して頂ければと思います。但し、柳の複合的な刃線カーブと先細りの切っ先は、取っ付き易さと万能性で誘惑が強いと思いますが。

以上は、之までの経験・知識から自分が理解している程度ですので拙いとは思いますが御参考になれば幸いです。因みに以前、私の先生は刀で切る際の刃の運行・軌跡につい て、刺身包丁の刃の働かせ方との関連を指摘された事があったように記憶しています。

 

 

更に身内へ向けまして

 

前回紹介した砥石の仲間達です。今回は、中山産ばかりだと思います。因みに前回の後半二種もそうなのでしょう、〇カの判子が有りましたので。浅葱は一つを除く全てに・・・レーザー型とコッパにも判子付きは有ります。

しかしそれらは持ち帰って側面を濡らしたり、明るい場所で見てから改めて気付く事も。入手ルートは緘口令が敷かれたままにて伏せますが、大元の出所は確実なので安心です。

私は元々、少ないラインナップから渋々ピックアップするのは性に合わないのと、有名処へのブランド信仰も別段強くないので過去には余り注目して来なかった砥石達です。しかし多くに触れる機会があり、その中の50~60個を撫でて確認し、選んだ30個程を試しに研ぎ、最終的に十数個を手に入れました。

所謂、東物で中山主体。尚且つ〇カも相当量散見される中で、納得いくまで探せた為に本当の実質重視で選べました。〇カが付いている傾向が強い質や形状。しかし例外的な物や首を傾げたくなる個体。逆に何故これに判子が無いのか理解出来ない程の性能を見せる個体(只単に付ける前だったと考えれば納得いきますが)。色々興味深く勉強させて貰いました。

大判や尺長、完全均一な黄板や色物も含めて試し、実際一度は少し見栄えのする立派な黄色(或いは黄土色)を持ち帰ったものの、後に浅葱と交換しました。他に選んであった浅葱の幾つかも、欠けの無い綺麗な30型・40型を返品し、形状は不完全・サイズも小さく成りはしましたが、操作性・仕上がりの良さを優先した同系統で選び直しました。

以下の砥石達がそれで、自分にとっては納得の銘有りと、平均的な銘有りをも凌ぐ驚異の銘無しと言う訳です。

 

 

之まで幾度か画像を上げた浅葱。最初に選んだ石の一つで基準・或いは目標となった物。硬口で泥は余り出ず、滑走感強い。

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その予備

上の石を基準とすれば、やや硬めで刃金は更に鏡面気味。しかし滑走感はかなり低下。

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同じく硬めで鏡面傾向強い。滑走感は更に低下。

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やや柔らか目で研ぎ易く仕上がりと滑走感は基準に近い。砥粒の目は僅かにまったり?

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最も基準と近い質。厳密に言えば、直上画像の石の成分を僅かに基準に混ぜた感じです。

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以上の浅葱はどれも自分の研ぎに合い、特に刃金の処理は秀逸で最上の刃先を提供してくれます。中山の特徴的な模様なのか、妙な表現ですが「瘡蓋と其処から伸びる枝」みたいなのが在るようです。これは鉋や剃刀を極限まで研ぎ込む場合に、注意が必要かも知れません。まあ問題ならその部分を避けて使えば良い事ではありますが。

ネットの画像や知り合いの持ち物、しかも黄色や緑の石についても見た覚えが有るので結構普遍的に現れる共通項なのかも知れません。あと、裏に直径2ミリ前後の小さく綺麗な球状陥没が見られる物も。

兎も角、最初期から高い基準となる浅葱と出会い、それに比肩しうる予備達を追加出来た事は、真に僥倖でした。

 

 

 

次はレーザー型です。同じ色物でも、レーザー型には浅葱に近い刃金の仕上がりを見せてくれる物があり、之はやはりレーザー型と云うだけあって剃刀と合う質の石が選ばれているのかも知れませんね。

だとすれば、単に小さく採れたからそのサイズなりに仕上げるのとは違い、見識ある対応と見極める能力、そして贅沢な選択も賞賛されるべきだと思います。大きく採れた原石を敢えて小さく仕上げるのは、採算性から考えれば忌避される行為の筈ですので。

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と言いつつ、先ずは浅葱系です。 しかし浅葱系の中では最も柔らかいです。何故か色物とは逆に、この外観・サイズに限っては浅葱であり乍、硬口では無い物を幾つか確認しました。それでも刃金が光って来るのは流石。画像の石には、前述の球状陥没の痕跡が砥面にも見えますね。

 

 

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やはり浅葱寄りかも知れません。反応も近い感じ。しかし此方は柔らかくは無いです。最初に選んだ石の一つですが、その後は中々近似の物に出会わず

 

 

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色物らしく、ややまったりした研ぎ感。地金は浅葱系統より曇り勝ち。此方も最初に選んだ一つでしたが、幸い同系統が見付かりました。

 

 

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上の砥石と、ほぼ近似の反応。

 

 

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以下同文ですが、少し刃金はしゃきっと。しかし側面を見る限り、レーザー型の中では一番巣板っぽいような。

 

 

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レーザー型では、と言うより全体の中でも地金・刃金共に鏡面に近いです。

 

 

変な形ですが性能はまずまず。

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これだけは表裏、面付けされていない状態で選んだので何か分からずでした(暗い中で巣板っぽいのを探したのですが)。仕上げてみると並砥なんでしょうか、小鮎様から頂いた中山並砥に近い研ぎ感と仕上がり。しかし頂いた石と同様、硬さ・細かさが控えめに感じたので鉄を吸わせて育てた所、同様に改善されました。

砥面の性状として、濡らした状態では砥粒の凝集性がややクラスター状、例えれば丸尾山の天井戸前うぐいすに度々見られる感じになります。繋ぎに使えば良いかと考えていましたが、普通に使う刃物で不満は余り出ない質になって来ています。これも後になって判子に気付きました。

 

 

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黄色ですが、研ぎ易さと仕上がりのバランスが良かったので、相性探しのバラエティにと選びました。刃先の性能も問題なし。

 

 

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紫系統ですが、同じく研ぎ易い割りに仕上がりも充分。研いだ刃先の性能は、黄色と比べて同等若しくは其れ以上です。

 

 

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おまけで貰った物と購入したカラス入り。右と下は黄色・紫同様ですが、カラスは殊の外硬くて中々減らないでしょうね。使い道も切り出しなどに限られるでしょうから余計に。しかし全く地金を引かず鏡面で切れ味良く仕上げてくれるので、サイズ以外の点では完璧と言えます。

 

 

 

(業務連絡: こんな感じで選んだけれど、好みが近いなら納得の品揃えかと。先々そっちの手が空いたら選びに行く日を連絡されたし。予定を合わせて選別に。助言・手伝いは問題なし。)

 

 

 

S様(と身内)向けに巣板の紹介

 

S様には次の石(菖蒲産?)と同様な物(実用には高価過ぎ?)に御興味を持って頂いたり

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下の石(これも菖蒲?)を参考として御紹介したりしましたが・・・

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確定的ではありませんが、他にも次の二種類の巣板で選別が可能かも知れませんので、その際の御参考になればと載せてみます。

 

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白巣板っぽいですが、巣無しなのか余り側面からは巣板らしさは感じ難いです。研いで見れば当たりは硬すぎず中庸で、そこそこ泥も出ます。

 

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試しに研いで見ます

 

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切り出しでは地金は曇りはするものの、やや明るめと言うか光沢もあります。刃金も結構光り気味。

 

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本焼きの包丁でも試しましたが、以前の奥殿と同等の仕上がりで尚且つ研ぎ易いです。その代わり砥面の変形はやや早く感じます。

 

 

もう一つの方ですが、此方はかなり硬いです。奥殿と同じかそれ以上で砥粒の目も立っている印象です。しかしその分、特に刃金は明るく光り気味になります。

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試しで研ぎ上げた包丁画像だけになりますが、研ぎ目の細かさ・光り加減は巣板としてはかなり上級と言えそうです。

 

 

今回の後半二種は中山の砥石ですがサイズ的な理由などにより、一番目の砥石に比べれば未だ現実的かなと思いますので、どうしてもあちらが好みと言う訳でなければ、候補として今回の系統も当たってみたいと考えています。自分に出来る限りの範囲で努めますが、確約とは行かない点は御理解頂ければと。

 

 

昨年同様、和食の祭典へ

 

京都の歌舞練場での和食イベント、和食道に参加して来ました。昨年は月初めでしたが、今年は月末でした。

 

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亀岡まで向かい、砥取家の土橋さんと同行しました

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去年とほぼ同じ場所にブースを設置。今回は、参加する企業・店舗の名前が前回より有名処が多くなっていた様です。

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砥石の展示。あと来場者にトマトや人参(未使用でしたが)を切り比べて、包丁の違い・研いだ石による違いを確認して貰いました。

炭素鋼とステンレスの牛刀を千枚で研いだ物、ステンレスの三徳をキングの8000番で研いだ物を使ってのテストでしたが、記憶している限り全ての方が違いを認識された様子でした。

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当日は研ぎ指導・解説役として、一流の料理人の協力を得られました。調理の現場で培われた具体的なアドバイスや研ぎの手本を享受でき、来場者の方々には貴重な体験だったのではないでしょうか。

御本人とは、砥取家で数回御一緒したり、土橋さんと食事に伺わせて頂いた事もある間柄で、安心して相互に役割を果たせたと思います。

 

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最年少は三~四歳の女の子から、御年配の主婦まで研ぎを体験されたり研ぎ指導を受けられたりしましたが、初めて研いだ中では前述の女の子が最も筋が良かったかも知れません。

不要な力みや恐れも無く、一定の角度と速度で身体を操作できる素質と、指示を実行しようとする意識、相手の動きを自分で再現する吸収力に才能を感じました。特に直前にトライしていた外国の少年(六~七歳?)が速度・角度・指示した動作が不安定、且つ時間経過で飽きたか成功の実感を得られない故か、投げ遣りになって行ったのとは好対照で民族性か男女差か?と興味深かったです。

あ、直上の画像で研いでいる方はその少年ではないです。明るくて気さく、色々と興味を持って話し掛けて頂き、楽しくコミュニケーションが取れました。リスニングに追いつかない片言会話なので、相手が不完全燃焼気味なのはいつも通りでしたが。

 

 

 

お立ち寄り頂いた中にT様夫妻がいらっしゃって、砥石や研ぎに付いてのお話しや、私が研いだ包丁を御覧頂く機会もありました。

後日、千枚のコッパを選別する依頼をメールにて頂きましたので、此処に参考画像として載せてみます。

 

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表です

 

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裏です

 

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切り出しで試し研ぎ

 

メールでも御説明しましたが、御依頼後の最初の亀岡行き(会合目的)で偶然、待ち時間の一瞥で加工場から見つけました。裏表とも面付けされていなかったので、持ち帰って電着ダイヤで面を付け、試し研ぎしました。千枚にしては、やや硬さと細かさが控え目かなと感じましたが、鉄を吸わせる目的で五~六回研いでは置きを繰り返す内に、千枚として標準的な反応になりました。

大きさは小さ目のレーザー型程度、裏・砥面もやや不均一・不安定ですが、千枚は出るのが不定期な点・極稀な程に短い期間で見つかった点を考慮して判断して頂く事としました。

大きさ・形で、目的とお好みに合いますか分かりませんが、御考慮の上で良いとなれば御連絡お願い致します。因みに、御提示の予算の75パーセントの価格です。勿論、今回のは見送って、次回いつか出るであろう石を御待ち頂いても差し支えありません。

 

 

砥石と、選別依頼に付きまして

 

S様に御送りした裏押し用の硬口砥石、それに前回掲載した自分用の白巣板蓮華や浅葱・レーザー型は、之までとは違ったルートで入って来た東物でした(巣板は判別待ち?で他のも未だ伏せます)。後続として、同系統の白巣板蓮華その他もと算段していましたが、価格的に厳しくなる可能性が出てきました。仕入れが同程度の値段でなくなる訳です。

その為、S様の硬口の質と性能の砥石をあの値段で出すのは難しくなりそうです。可能ならば、巣板も回せるようにと考えていたのですが、有ったとしても普段使い用としてお奨め出来る価格になるかどうか。これは私にとっても同様で、取り置き分の確保も不確定です。

砥取家製(丸尾山)も数年前より高目になって来て、以前にも増して見栄えのする砥石は気軽に購入し難い状況になっている昨今、辛い所ではありますが。とは言え、私の仕事用の砥石は、巣板各種・通常の合砥・平面と曲面対応の鏡面近辺を狙える合砥・各種小割りした砥石含め、一生分で必要な量は確保出来たと言えば出来ました。

 

例えば、本焼きに使用を想定している巣板(蓮華入り)ですが、現在は以下の砥石達で対応しています。

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鎌砥に近いサイズですが筋を避ければ結構、良い仕上がりに。

 

 

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変形ですが、上の砥石より粒度細かく砥面の狂いも少ない。更に上の仕上がりを提供してくれます。

 

 

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上二つを足して割った様な使い勝手です。

 

 

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そして最近仲間入りした物

 

 

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此れもですね

 

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因みに、仕上がりはこんな感じ

 

 

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此方(奥殿)は資料みたいな気持ちでの購入でしたが

 

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予想以上に使えますね。と言うか、最も優れるかも知れません。

 

 

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他には、元祖本焼き用としていた白巣板巣無し(敷き内気味?)もあります。

 

 

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それら本焼き用の手前で地均しをしてくれる頂き物の若狭産

 

これらの砥石達以外にも、目的別に各種・各サイズ・複数の性質に亘って大抵揃いましたので、以前とは違ってせっつく気持ちに惑わされる事も無くなり、冷静に見ていく構えで居られます。

 

 

 

 

あと。S様用の青砥ですが、手頃なのを持って帰れました。サイズは、幅が5.5cm強~6cm弱。長さ20cmの厚さ5cmといった所です。

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大まかに面付けしましたが、質としては硬さ・細かさ・研磨力共にバランスが取れ、文字通り優等生だと思います。割れに繋がるヒビも目立つ物無く、強いて言えば底面がまっ平らでない事でしょうか。一応、砥面以外は石ちゃんを塗っておきました。

 

 

 

参考までに手持ちの青砥ですが、あと二本(硬さ中庸のややシャリと、柔らか目のトロ)は親の家に置いてあります。トロッとした泥がやや多めに出るのが好みです。シャリは、何処かスリガラスのイメージが。

 

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トロでしたが硬い部分が増えて行き、かなり使い勝手が変わってしまいました。大きくて重いので余計に使わない状況に。幅と厚みは8cm位。

 

 

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青戸とは思えない硬さで先ず脱落した物。

 

 

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砥取家で、おまけに貰った物。性能はややシャリっと以外は、満足且つ好みの物。

 

 

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細いですが、性能・砥ぎ感共に最も優れると感じている物。

 

S様、以上の様な青砥(五つ上の画像)ですが、良ければ送らせて頂きます。値段的には、硬口の八掛け程度になりますので御判断下さい。

 

この度の砥石を得て

 

前回、手に入れた砥石達は予てからの私の希望、或いは願望を満たしてくれる物でした。流石は、古来より名品と名高い中から選んだだけの事は有ります。

具体的には、巣板・合砥(曇り~薄曇りに仕上がり、切れも充分な)を超える切れと微細な仕上がり(半鏡面~鏡面)を実現し、尚且つカミソリ砥クラスの弱点克服と言うか、更なる高望みを叶えてくれる砥石です。

以前にも多少記載しましたが、カミソリ砥の弱点(やや難癖に近いですが)と感じるのは、研がれた刃物が「一様な仕上がり」に成り勝ちな事。平面以外の立体的な形状への追従性が低い事。鋼材・仕上がり等に因っては、結構適応範囲が絞られる事。感覚として線の細い切れと、唐突な切れ止みも・・・。端的には、対応可能な範囲で鋼材の個性を均質化しつつ金属粒子を微細化、平面の切り刃へ特化した砥石と言えるでしょうか。

上記の印象から、之まではステンレス(炭素鋼に比べて個性の幅が狭い)以外では、相性によって巣板・戸前系・千枚系で刃金部分を仕上げて来ました。しかし、もう一段上を実現できない物かとの想いも拭い切れませんでした。切れ・長切れ・仕上がり(美観・防錆の兼備)で、より満足いく砥石は無いものかと・・・。

千枚系統では、大まかには納得できる場合が多く、若狭の系統も取り混ぜれば上位互換や守備範囲拡大を狙えます。この上、全性能(切れ・長切れ・仕上がり)を上乗せし、守備範囲も広くて研ぎ易い砥石を望むなど、欲張りすぎだと自分を納得させていたのですが、巡り合わせの妙で幸運にも期待通りの石に辿り着きました。

結果的には、組織の粗い炭素鋼を始め、廉価なステンレス(ふにゃふにゃ)・中級品の癖の有るステンレス(柔い粘い)・焼入れと戻しが変則的なステンレス(ハシカイVG10)・粉末冶金鋼(カウリY但し実用硬度)にも最も優秀な性能を発揮。主眼の炭素鋼は当然として、特にステンレスへの長切れ効果は驚きました。あくまでも最終仕上げなので、手前の各段階で夫々の石は必要ですが。

 

 

其れが前回の砥石達でしたが、中でもこの浅葱。小振りながら、同系統の中でも目的を絞って厳選した物。一緒に試した30型や40型、大判含めた黄板等色物とは異なる反応と仕上がりに大満足です。(何故かレーザー型の色物には刃金の仕上がりが同等な石が有り、確保して来ました)

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刃金はほぼ鏡面、地金も透明感ある仕上がり。平面の刃物であれば、カミソリ砥に繋いで完全鏡面への移行も楽。

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しかし白眉は、曲面(刃・地、共)にも対応してくれ、斑の無い微細な研ぎ肌で鋭利な切れ(画像は説明用に刃金の中央で明確な研ぎ分け)。更には地金も引かず、中々の滑走感を併せ持っています。つまり砥石に当てる面積広く硬軟両部分あり、完全平面がほぼ存在しない刃物である包丁に最適。

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切り刃は千枚で刃金(先側半分)は浅葱です。刃金に比べれば地金の仕上がりは、少し補正が必要な場合も。なので、千枚の本体・小割りした物にて均し研ぎ。

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今後は要件にも因りますが、合わせの包丁については基本的に此の仕様を標準としたいと考えています。地金の千枚仕上げは変色と錆びを軽減し、刃金の○○仕上げ(今は伏せておきます)は考え得る最良の刃先を実現してくれると思います。

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おまけは、此方も探していた蓮華入り巣板で粒度細かく硬さ中庸の物(側面には蓮華だらけ・砥面には黒っぽい模様の中に蓮華が出始め)。いうなれば本焼きの標準仕様に必要な石です。

以前からの手持ちにはコッパで大中小の白巣板蓮華がありますが、やや硬目でしたので有り難いです。此で大まかに仕上げ、部分的な均し研ぎはコッパで行う事になるでしょう。

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下はその予備?(墨流し+蓮華)ですが、上の石とほぼ近似の石も取り置き依頼中

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因みに、私は心配性なので今回掲載の浅葱は勿論、前回掲載画像のレーザー型・色物の予備も揃えるべく三度、選別して来ました。幸い、意外なほど驚異的にほぼ同質の石(数個ずつ)を見つけ出せたので、今後はそれらを仕上げの主力として最大限、自分の理想とする研ぎ上がりを追求したいと思います。

 

あと、S様に御送りした石の質もやはり気に成り、近い物を手持ちに加えてしまいました。続いて御依頼頂いた青砥は、もしかすると余り御待たせせずに見つかるかも知れませんのでお楽しみに。もし、サイズ・予算で御希望があれば御知らせを。上手く行けばかなり自由が利く可能性もありますので。

 

 

選別の結果

 

北海道のS様より、砥石の御注文を頂いていましたが、やっと相応しいと思える砥石が見つかりましたので御報告まで。

 

本焼き包丁に向く巣板と、糸引きや裏押しに向く硬口の砥石との御希望でした。当初は白巣板の「巣無し」や「蓮華」を考えていましたが現時点では余り弾数が無い様子。そこで暫く様子見した結果、巣の少ない敷き内曇りを砥取り家の次男氏から受け取りました(白巣板層は、巣の有無で砥粒の形状・積層も違う様で)。

 

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恐らく、前述の純粋な白系統よりも、やや曇りは強いかも知れませんが、研ぎ易さと砥粒の出方の違いから、研ぎ斑は出難いのではと思います。試した切り出しの裏(鋼部分)も良い状態に仕上がりました。

 

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もう片方は従来と異なる砥石群になりますが、幾つか試した硬口の内で最も裏押し(糸引きは何れも良好)に優れると判断した石です。

勿論、平面同士など条件が合えば、切り刃自体から研ぎ下ろせる性能でもあります。兎も角、鋼部分の目の細かい仕上がりと砥面の狂い難さ、其れに相反する扱い易さで際立っていました。

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S様、以上の二つの砥石ですが、近く御送りしますので試して頂きたく思います。もし、質的な相性やサイズ的な問題で交換を御希望の際は御遠慮なく御願い致します。但し、今度は何週間か或いは何ヶ月掛かるか分かりませんので、気長に御待ち頂く事になると思いますが。

 

 

 

 

おまけは、序でに選んだ自分用の物と、正におまけで貰った物です。

 

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上画像の物は、之までの手持ち(大谷山・御廟山以外の鏡面系)の上位互換や相性探しの選択の幅を広げてくれる有難い物でした。特に鋼の鏡面(又は近辺)仕上げ・地金の鏡面(又は一歩手前)仕上げに役立ちます。

勿論、これらも裏押しでの使用に際しても、扱い易さと性能に不満は出ないレベルです。確かに超~超超硬口での仕上げとは、極僅かに違いが有るやも知れませんが、それらは性能を発揮せしめる能力を求められる上に、扱い難さを克服する必要があります。失敗の確率も上がり易いでしょうから、現実的には今回選んだ砥石達が重宝すると考えられます。

 

他にも、ほぼ真っ白な(薄っすら柄あり)定型のが気に成りましたが、資金が貯まる迄はと予約して取り置きにしました。まあ、あれは完全に資料(愉しみ用)ですので、急ぐ必要も無いのが幸いです。

 

 

三度、御依頼を頂きまして

 

 

以前、小刀と和剃刀の研ぎ依頼を頂きましたI様より、更に御問い合わせが。一転してアメリカンナイフの古典的なモデル、BUCK社の110です。

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ナイフ好きの方には説明の必要も無いフォールディングナイフで、勿論?自分でも持っています。父親の持ち物でしたが、アルマーのフォールディング(SERE)が大き過ぎたので交換しました。その後、チタンモデルや112?も追加した経験があります。

今回、アウトドアでは使う予定は無くいので、代わりに紙がすうっと滑らかに切れるのが御希望と。

 

研ぎ前 刃先

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皮砥で仕上げた結果、切れが今一に・・・との事で、角度を鈍角にしてしまったのが原因として考えやすいですが、初期の小刃(エッジ)角度がやや鈍角であったのかも知れません。アメリカのファクトリーナイフでは割合、多いパターンだと思います。

 

研ぎ前 刃先拡大

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角度を変えて、拡大画像の二枚。かなり、狭い範囲で其の割にきついカーブで砥石あるいは皮砥が当たっている様に見受けます。

 

 

今回の使用砥石、人造から。シャプトンの1000と2000。

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刃先の角度の再調整と僅かな刃毀れ取り

 

 

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そこから、研ぎ目の微細化とミクロのハマグリ気味に

 

 

天然は右から丸尾山の、薄っすら黒蓮華(墨流し模様入り)・戸前・田村山の戸前

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黒蓮華に硬めの伊予砥名倉

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丸尾山の戸前に卵色巣板(紅葉)名倉

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田村山の戸前に卵色巣板(紅葉)名倉

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研ぎ後 刃先

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研ぎ後 刃先拡大

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今回の鋼材(元は425モディファイトで現在は420でしたか)と、使用した天然は予想以上に相性が良く、研ぎ易さと仕上がりの良さに感心しました(合わせた名倉の後押しも有るでしょうが)。

このセットは狙ってはいたのですが、ウィーンのイベントで向こうの包丁(大半が硬さ控え目)に効果的だった組み合わせです。そこで、近い硬度であろうと試した結果、覿面だったと言う訳です。

 

 

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一応、御希望に副って紙が滑らかに切れるとは思いますが、更に髪も切れる程度には正確な刃先になって居ます。極端に其れに特化した鋭角研ぎでは無い為、材質にも因るかも知れませんが・・・。しかし、代わりに通常ナイフが相手にすると想定される対象には問題なく使えるでしょう。アウトドアも含めて。

料金的には、刃渡りが8.5cmで状態が1cm当たり100円レベルでしたので、8.5cm×100円+税で、918円でした。

 

 

I様、この度も有り難う御座いました。この仕様がお好みから外れていた場合は勿論、研ぎ直し致しますので御遠慮なく御願い致します。