現在在庫がある包丁達です。
黒打ち三徳
中屋平治作・黒打ち三徳(鍛接三層)は通常品よりフロントヘビーを改善する為、柄周辺を一回り大きくして貰っています。又、切り刃・刃先は入荷後、当方で天然砥石(巣板・合砥)で軽く均し研ぎを加えてあります。切り刃の面をより揃え、刃金の研ぎ目をより細かく光り気味に。相乗効果で黒い皮膜以外の部分も錆びにくくなっております。込みの部分には簡略ですがシリコンで防水加工しております。
イカサキ・磨き
中屋平治作・イカサキ(鋼付け)の磨きは、裏梳き・平共に錆対策の為、入荷後、目を細かく磨きました。切り刃は巣板で均し研ぎ、刃先は合砥で研ぎ目をより細かく、裏押しはカミソリ砥クラスで仕上げましたので、切れ味は勿論、此方も錆びにくくなっております。込みの部分は簡略ですがシリコンで防水加工しております。
三徳・磨き(司作)
司作・割り込み三徳の磨きは、通常品よりも剛性を上げる為、やや厚い作りにになっております。出荷時から鋭利な刃先とほぼ鏡面の綺麗な切り刃になっておりますが、使用者によっては先鋭的に過ぎるかも知れませんので、天然砥石にて標準的な刃先の霞仕上げで発送する予定です。勿論オリジナル状態を御希望であれば、その旨お申し出頂く事でそのまま発送致します。
三徳・磨き(味方屋作)
味方屋作・ ステンレス地金(三層利器材)三徳の磨きは、刃先の炭素鋼以外がステンレスで錆びに対する注意が軽減されます。剛性向上の為、利器材ながらやや厚めに作って貰っていますので、やわな不安定感は軽減されていると思います。刃先がやや強度を持たせたしあがりですので、発送前に天然砥石にて少し切れが軽くなる様に研ぎを施して発送する予定です。勿論オリジナル状態を御希望でしたら、御要望に添います。
全体画像や詳しい説明は、ホームページをご参照下さい
研ぎ前の状態
研ぎ後の状態
研ぎ前 刃先拡大画像
研ぎ後 刃先拡大画像
研ぎ前の状態
研ぎ後の状態
研ぎ前 刃先拡大画像
研ぎ後 刃先拡大画像
知人から紹介頂いた研ぎ依頼のペティ(箱には牛刀とあった様な)と牛刀です。これまでも研ぎに出されていたそうですが、刃持ちと側面の傷が気になるとの事でした。
鋼材的に、ペティは切れ味は良いものの、硬度は通常のもの。しかし牛刀は切れ味・硬度共に、水準以上で優れていました。とは言え、これまでの研ぎでは、元々厚みはそれほどでも無い割にブレード側面まで研がれており、ほぼ刃先までベタ研ぎ状態。どれほど優秀な鋼材でも刃持ちは期待出来ないと思われました。おまけに研ぎ傷が均一では無く、かなり深い物もあり、確かに気になるだろうという印象でした。
以上の事から、ブレード側面のテーパーのバランスに留意しながら傷を取り、刃先は小さめの小刃(一定幅・一律角度では無い)を、対象への切れ込みと刃の通りを確認しつつ調整しました。薄さで切り込むだけでは無い、厚みの変化と角度の変化による切れ心地が分かって貰えればと思います。
研ぎをするにしても、研ぎに出されるにしても、表面的な切れ味のみに気を取られると、包丁の刃先の鋭利さだけ・厚みの薄さだけに囚われ、道具として構造上弱くなったり、刃先の欠け・切れ止みに繋がる恐れがあるので注意が必要です。勿論、刃身の肉抜きが不十分な刃物は厚み取りも必要ですが、今度は求める性能に適う完成予想図が描けているかどうか、の問題が出てきますので、これも理解と経験が必要でしょう。実際に研いで使って確認しないと分からない事は多いと思います。
研ぎ前の状態
研ぎ後の状態
研ぎ前 刃先拡大画像
研ぎ後 刃先拡大画像
研ぎ前の状態
研ぎ後の状態
研ぎ前 刃先拡大画像
研ぎ後 刃先拡大画像
研ぎ依頼を頂いた刃物です。和式ナイフ・・・と言うよりは剣鉈でしょうね。自分でも同じ作者の副え鉈と渓流刀を持っており、研いだ経験もありましたが、鏡面には難しかった覚えがあります。しかし今回、大物の方を鏡面にとの事で、色々やって何とかサンプルで貰っていた閉山中の君谷の合砥で研ぎ上げました。昔のモデルよりも金属組織が細かくなってきているのか、嘗ては持っていなかった砥石との相性か、兎も角ご満足頂けたようで良かったです。小さい方は霞仕上げとは言え、刃金はかなり細かく光り気味に仕上げてあり、そういう意味では切れ味・錆びにくさで遜色ないと思われます。(小さい方は特に地金がステンレスの様だったので)
因みに、未使用で初期刃付けの状態からの研ぎでしたが、刃先の拡大画像で分かるように、出荷時と研ぎ上がりでは大きく違っております。刃物は最初の状態がベストだとお考えの方が多いですが、本当にベストで出荷されているメーカーや作家は少ないです。これは良い悪いでは無く、刃物は研ぎながら使うもので、最初に使用者が好みの刃を付けてから使い出すという慣例があった為。又、輸送中の破損や使用者のレベルが予測できないので、強度を持たせる為でもあります。(コスト的に困難でしょうが、手間暇掛けて使用者の利便性を優先した刃身の厚み抜き・刃付けをする所もあります)
ですから、販売時に研ぎを施してくれる専門店があったり、それとは逆に、勝手に刃を付けないでくれと言う使用者が居たりしましたが、現在では余程の事が無い限り、吊しで買ってきてそのまま使う人が多いと思いますので、使用前には自身で研がれるか、きちんとした所に研ぎに出される事をお薦めします。
重春 左久作
水野鍛錬所 メーカー・材料共に不明の両刃
中屋平治
左久作アップ
自作アップ
刃物によっては、出来るだけ平面が望ましい、又は平面で無ければならない場合もあります。代表的なのは大工道具の類いでしょうか。但し、切り刃や刃先に目的に応じた設えを施す場合もかなりあると聞きました。しかし、それもほぼ平面を出せる技術を持った上での事でしょう。平面にしていないのと平面に出来ないのでは、仕事の出来や効率が、やはり色々違ってくると思われます。
又、鏡面仕上げをする場合も、少なくとも平面を出した砥石を使う場合、平面の出た刃物が望ましいでしょう。もしこれが凹面・凸面であれば、恐らく間違いなく刀剣研磨のように小さく割った砥石の小片で研ぐ事になるのではないでしょうか。
包丁で言えば、裏押しは完全に面が揃う必要性が高いものの、切り刃側は構造上、物理的に困難・実際の必要性は使用者の判断次第・ベタ研ぎだけで済ませると実用上刃先に問題が出易いところから、大工道具ほどには一般的では無いようです。勿論、ベタ研ぎ+段刃・糸引きの組み合わせはオーソドックスだと思いますし、自分も嫌いでは無いです。
画像ですが、普通は鉋や鑿で表現されると様になるのですが、まだしも一般的な感のある切り出しで平面を狙って研いでみたものです。元々、平面を出す必要性は無いとか、裏押しが出来なくなり、裏切れになっても問題無いなど、制作側・使用者側からも言われる事もある切り出しですが、やはり裏・表共に面が揃った綺麗な研ぎ肌や安定して繊細な切れ味を求めてしまいます。
そんな訳で、少し以前の画像ですので、精度が甘い部分もありますが、京都重春の青紙スーパーに和鉄地金、左久作のアーサーバルファーに三原鉄地金、水野鍛錬所の青紙二号に極軟鋼地金、おまけは20年前の安物の両刃小刀たぶん青紙、自作切り出し白紙二号に極軟鋼地金とその最終仕上げに使った砥石です。
中屋平治作 三徳 黒打ち
中屋平治作 イカサキ・磨き
続いて両刃の和包丁、水戸の中屋平治作です。おまけは同・イカサキの霞仕上げと鏡面仕上げ(知り合いに頼まれていた分を戯れに研いだ鏡面なので、略式ですが)です。
こちらは白紙一号と同等以上とも云われるスエーデン鋼の刃金で出来ており、地金は研ぎ易い上質な極軟鋼です。三徳は珍しい三枚打ちで、イカサキは伝統的な鋼付けです。司作もそうですが、焼き入れは松炭を使用しての水焼き入れで脱炭防止と確実なマルテンサイト化を実現。加えて均一で微細な組織である事も相俟って、粘りを備えながらも硬質な刃先を感じられます。
近頃は何でもかんでも芯に刃金(炭素鋼・ステンレス鋼に関わらず)が入っていれば、割り込みと呼称されます。鋼材メーカーで、(積層含む)地金で芯材をサンドしたものと、鍛冶屋が刃金一枚・地金二枚の計三枚を鍛接した物は一緒にするべきではないし、断面で見るとV字型の地金が刃金をくわえ込んだ本当の割り込みが存在する限り、軽々しく割り込みの呼び方を氾濫させるべきでも無いと思います。
どちらが優れているとか、高級だとか、性能に違いが有るかは製造段階の適切さや製作者の経験・知識・技術に依る所が大きいので、一概に言えない所もあります。であるならば、尚の事きちんと分けて表示・販売すべきでしょう。一般人には説明が難しいというならば、製造・販売側の怠慢であるし、高級そうなイメージや高性能をほのめかす意図があるならば、更に問題だと思います。利器材でも三枚でも割り込みでも、機械化がどれ程の割合でも、作り手が値段と性能のバランス内で切磋琢磨され、その刃物の良さを公明正大に世に問われる事を望みます。そして使用者側もそれを的確に判断でき、是々非々を認識出来るようにならなければと思います。
味方屋 三徳・磨き
司作 三徳・磨き
司作 ペティ・黒打ち
片刃が代表的な和包丁ですが、両刃の物もあります。多くは一般向けのシリーズになるかと思いますが、洋包丁と和包丁の利点を併せ持つ便利さもあります。
片刃の和包丁では、切り刃の反対側は裏梳き・裏押しが無ければなりません。これは裏の平面を保ち、食材の張り付き防止の観点から必須です。これが両刃となると、両面に切り刃が施される事になります。一見、鈍角且つ張り付き易そうな見た目から、片刃和包丁が劣化しただけと思われる向きもあるかも知れませんが、仕組みを理解して特性を活かせば、独自の活躍も期待出来ます。
そもそも殆どの洋包丁は厚みの変化は兎も角、ブレードがフラットな構造で、刃先は小刃と言われるエッジが付いているシンプルな構造です。元々の厚みが薄いとは言え、張り付き防止や切り抜け重視で、ブレード本体を肉抜きしようとしても、理解や技術を伴わないと難しいでしょう。しかし、和包丁には平と切り刃の角度の違いがあり、その上、刃先に糸引きや段刃を施す調整幅があります。つまり、平の厚み自体は難しくても、切り刃を鋭角にして切り込む抵抗を減らしたり、ハマグリ状に研いで張り付きを軽減する事。そしてその帳尻合わせや更なる追求を刃先で調整出来る、多角的な作り込みで目的の効果を得やすいのです。
勿論、使用目的によっては、両側の切り刃や刃先の角度を均等から6:4や7:3他、不均等な仕様にも出来、片刃和包丁とも洋包丁とも違う、独自の境地を持っていると思います。刃金に純炭素鋼を使用したものは、ステンレスとは一味違う切れ味・研ぎ味・食材の味を楽しめるので、その辺りに目覚めた方や意欲のある人には、長所を使い分けて有意義なキッチンライフ(調理・食事・研ぎ)を送って頂きたいです。
画像は、日野浦さんの実家の鍛冶屋銘、味方屋作のステンレス地金に炭素鋼刃金(白紙二号)を挟んだ三層利器材使用の三徳、霞仕上げ。そして司作の極軟鋼に白紙二号を割り込んだ三徳、霞仕上げと鏡面仕上げです。おまけは、地金が鍛え地の雲龍ペティ鏡面仕上げです。
河内の守 国助 出刃・薄刃(五寸五分)
同、正夫(尺一)
水野鍛錬所 本焼き柳刃(尺)
同、薄刃(六寸五分)
同、本焼き薄刃(五寸五分)
酔心 柳刃(尺)
同、柳刃(尺一)
洋包丁と違って、伝統的な和包丁は片刃が多いです。切れ味に優れており、特に削ぎ切り・薄切りに適していると思いますが、使い方に習熟しないと切り込める角度の制限の違いや刃の進み具合に方向性がある為、両刃よりはとっつきにくいと思われます。
しかし、一度その構造から来る、使い心地や操作性の違いを体験すると、そういう成り立ちの意味が理解出来、やはりこの目的にはこれ。という意識になると思います。
特に柵から刺身を引く、柳刃を代表とする所謂刺身包丁は、その長さ・厚み・刃幅のバランスが独特で、他では代用出来ない使い心地で作業内容をこなしてくれると思います。刃先の鋭利さのみならず、切り刃の状態・裏の精度・仕上げる砥石にも依りますが、食材の風味を一番引き出せるのは、純炭素鋼製の和包丁だと感じています。
画像は初期に手に入れた河内守国助・水野鍛錬所・酔心の手持ちの包丁です。これらが今のところ、和包丁の中では、最も使用している相棒達です。基本的に、自分は白紙をメインに使っており、1号から3号まで、それぞれ特性と目的に応じて刃の付け方・仕上げる砥石を調整しています。
司作 山小刀・黒打ち・鎚目
司作 副え鉈・鍛え地・磨き
司作 角鉈・黒打ち
司作 角鉈・鍛え地・雲龍・黒打ち
その一番好きな鋼の状態になっている刃物達です。ありとあらゆる製品を試した訳ではありませんので、万人に最適だとか、全ての中で最高だとかは勿論分かりません。しかしこれまで巡り会ったものの中で、硬さ・粘り・切れ味・研ぎ肌・研ぎ易さの総合で最も納得いったのは間違い有りません。
こちらで通常、使用される刃物鋼は白紙2号Aなので、素材的に理屈の上では白紙1号やスエーデン鋼等の方が組織が細かい、或いは玉鋼の方が高性能などと云われそうですが、実際に刃付けによっては自作のカウリXナイフ(ロックウエルのCで67以上)に近い刃先剛性と耐摩耗性、そしてそれを上回る切れ味と研ぎ易さ・綺麗な研ぎ肌を経験し、粉末冶金法熱から冷ましてくれました。白紙という鋼材が、本来持っている性能を充分に発揮させる事さえ出来れば、錆びに対する用心以外では、ほぼ満足すべき鋼材がずいぶん昔から有った事に気づかせてくれた刃物達です。
刃部 アップ
表 刃先拡大画像 200倍
裏 刃先拡大画像 200倍
三重県松阪の月山さんと共に、新潟県三条の日野浦さんの所に鍛冶体験で切り出しを作りに行った時のものです。
かなり以前から作品を買いに、ほぼ毎年の様に刃物祭りに行っていましたが、工房まで行く事はなかなか無いだろうと思っていました。しかし、鋼の仕上がりでは最も自分の好みの刃物を作っているところで、直接指導を受けながら体験させて貰えたのはとても有り難い経験でした。
実際の製造工程と、逐一同じとは行かないまでも、かなり正確な手順と諸注意を守って進めたので、出来上がった切り出しは製品レベルに近い仕上がりでした。僅かに焼き戻しでもたついたからか硬度はやや甘いかなと言う印象ながらも、切れ味と粘り・研ぎ肌の精細な仕上がりは充分実用に耐えうる以上のものでした。
少し以前の研ぎの約200倍の拡大画像でも、まずまず均質な研ぎ肌と刃先で、研ぎ進んだ最近は更に安定しているようです。これなら司作に準じる出来と言っても過言ではないなと喜んでいます。
画像は数年前に注文し、砥取家の土橋さんにプレゼントした切り出しで、携帯で撮ったので鮮明ではありません。
初めは切り刃と裏を除いて、がさがさした焼き肌で、それを落とす所から出発しました。ペーパーや研磨剤で磨いていき、ガンブルーで染め、更に軽く磨きました。又、裏梳きも研ぎ目を消し、磨いてあります。(主に研ぎ最中と保管中の錆対策です)
粗砥(電着ダイヤ400/1000と240番)から人造中砥、天然中砥、巣板・合砥・カミソリ砥で仕上げました。研ぎ肌の見本も兼ねて、完成時より、やや鋭角に研いであります。
最後の2枚は、数ヶ月前に錆や刃毀れが酷かったので、ほぼ取れるまで修正の研ぎを加えた時の物です。
新品から、いきなり完全平面の鏡面仕上げを求めると、刃先が出てからも更に研ぎ下ろしていかないと均一な面が出ないので、勿体ない事になります。普通は、使いながら研ぎ直す度に平面度を上げていくのが望ましいでしょう。それまでは霞仕上げで追い込んでおいて、いよいよ整ってからは勇躍次の段階へ。と言う具合です。純然たる観賞用で無い限りは、研ぎ費用の面からも、刃物の寿命からも、その方がお勧めです。
研いだ包丁のビフォーアフターなどを載せていきます。