年末にパソコン持参で、稽古事の纏め役として御世話に成って居る方を訪問しました。メールサーバーの不具合や、DVDが映らなくなった事などの相談を兼ねてでしたが、其処で包丁の相談も受けたり。仕事も立て込んでいないので、御礼に研いで来ますよ・・・と安請け合いの仕儀と成りました(笑)。
件の包丁は親類の方から譲り受けたそうなのですが、良く切れて使い勝手が良かったそうです。特に野菜などに便利だったとの事ですが、様々な用途で使って居た所、冷凍食品で問題発生。硬い部分など無かった物の、大き目の欠けが。
研ぎ前、全体画像
恐らくは低温脆性なのでしょう、三層の利器材(刃金となる芯材が炭素鋼・地金のステンレスが両側面)が使われていますが元々の鋼材自体が薄い上に、刃先部分が以上に薄く仕上げられていました。
やっと導入出来た、マキタの小振りなグラインダ―を用いて、過熱に留意の上で少しずつ削った所。
顎の部分も欠けていましたが、御意向により今回は其れを上回る大欠け部分まで削り落とす事に。結果的には、ほぼ全ての刃金部分が無く成りました。
未だ未だ薄目では有りますが、使用の上で薄さのメリットを享受して来られた事を鑑み、地金部分を調整。視覚的には、平と切り刃に分かれているかの様な仕上げでしたが、実際には段差は皆無と成って居ましたので、新たに切り刃を作る感じで。
ダイヤモンドシートを使って、ステンレス地金を削ります。相当に薄い鋼材から作られて居ても、切っ先カーブ周辺に厚みが残って居るのは、もうお約束なんでしょうね。其処への対処も含め、刃元から切っ先へ向かい、厚みが漸減する様に進めて行きます。
ダイヤの研削痕は深いので、更に形状を整える意味も含めて人造砥石の小割り各種を用いて均して行きます。
切り刃を大まかに仕上げたら、電着ダイヤ砥石で刃先周辺の研ぎを行ないます。
人造砥石の400番・1000番各種
人造の最後は3000番で。
天然砥石に繋いで、奥殿の天井巣板中硬のカラス其の他。
相性的に優れていた、硬口の中山の巣板で仕上げました。相性が良ければ、砥面の硬さを感じずに下りの良さと仕上がりの良さを齎してくれます。仕上がりとは勿論、切れと永切れですね。
研ぎ上がりです。一気に数ミリの刃幅が減ったので、流石に全体画像で見るとスリムに成ったのが分かります。良く見て貰うと、(特に右側面)刃金の出方が切っ先へ向かう程に多く成って居るのが確認出来るのですが、切り刃の厚み・刃角が漸減している為です。
刃部のアップですが、通常よりも荒さが目立ちます。実は、作業中に包丁の持ち込み依頼を頂いたので、かなり駆け足に成ってしまいました。
まあ、御受けする時点で「使える状態にしてくれれば良い」との事でしたので、今回は此れで様子を見て貰います。
刃先拡大画像。地金の外観は兎も角、刃先の仕上がりは充分だった様です(笑)。