以前から、日野浦さんに依頼されていた砥石を漸くの事、発送出来ました。正確には田中砥石へ代金を支払いに行った流れで、丁度集荷に来た佐川へ其の儘まま出して貰いました。
寸法に関しての相談の結果、現状の定寸より大き目のままで良いとの事で。
質的にも、普通以上なら良いとの事でしたが・・・現場に自前のダイヤ・切り出しを持ち込んで確認の結果は当たり品で安心して送る事が出来ました。
其の上で折角、出掛けた訳ですから(最近の産出・過去の採掘済み原石の加工品)サンプルに丁度、良さそうな小振りな物を幾つか持ち帰りました。
下画像は、大平の巣板ですが裏面です。反対側が本来、砥面に成る方です。
此方は、中山の巣板層から掘り進めて出た様子。並砥・合いさも狙えるとの見込み通り、黄緑と薄紫の混じった色調。研ぎ感と仕上がりからは、超硬口で鏡面的な浅葱に準じる性能を確認出来ました。残念ながら、面積の上半分には当たる筋が数本、走って居るので避けて研ぐ必要は有りましたが。
之まで、私は幾つかの中山の並砥を購入しましたが、此処までの硬口・細かさは経験が有りません。明らかな合いさに至っては、全くの未経験です。もしも、此の砥石の質で大き目が出て呉れるなら、大いに楽しみにしたいと思って居ます。
此方の巣板は、中硬よりも硬口と言うべき硬さと細かさで、性能的には之までと同様の物でした。
下画像の巣板も、硬口に近いですが上の石よりも若干は中硬寄りです。以前の巣板と此の二つから、巣板の層の硬さ・細かさの分布と云うか・・・現在採掘中の層に於ける石質の配分が朧気乍ら理解出来るかなと。
此方は、以前からの取り置き水浅葱の最後の物です。水浅葱の採掘場所と、巣板~合砥を目指している箇所は、流石に違うそうです。
全く同じ個所では無いかも知れませんが、画像を頂きました。予想していたよりも、数段は奥まで進んだ場所だそうで驚きました。二十数メートルだか四十数メートルだか聞いた様な気がしますが・・・当然ながら、改めて安全優先で御願いしたいですね。
あと、天然砥石館の上野館長が出張で九州に出掛けていたのですが・・・取材と買い付けを終えて帰って来ました。
熊本・長崎あたりを回って来たみたいですが、取り敢えず持ち帰ったメインは天草砥の様です。
早速、試し研ぎを依頼されましたので、常連さんの炭素鋼の出刃と廉価なステンレス包丁で。近頃は、硬口で泥の少ない天草が多く見受けられるのではと思いますが、適度な硬さと泥の出方で、初心者でも研ぎ易いでしょうし和包丁の切り刃を当てるのも容易でした。
この後、天草全体を二人で面取りしたのですが、八割方が研ぎ易いタイプでしたので、館長の目論見通り二井宿砥との組み合わせにも合致するでしょう。
少し前から、遣り取りして居たという二井宿砥で仕上げ。但馬砥と会津砥の個性を合わせた感じの砥石で、水分量や圧力の掛け方で砥面の性状が変わり易いタイプとの印象。仕上がりの細かさは中砥相応ながら、切れは充分なレベル。
備水の元と成ったのか?鬢の水との印章が。其方に産する砥石を備水、虎柄の天草の中で白い物は上白、でしたか。一般的には混同されがちな砥石かも知れません。
佐賀産でしたか、こま砥らしいです。「こま」は細かい、の意味では無いかとの事です。底面は刳って有り、安定を図って居る物と思われます。つまり此の状態で据え付けて研がれていたそうです。