追加の切り付け

 

四本中の二本が完了した時点で、北海道のT様から追加を送ったとのメールが。玄海さんの若い頃の作では無いかとの事。

勿論、本焼きなのですが既に結構しっかりと研がれて有ります。一見して邪魔な厚みは見られません。ですが、紙束を切るテストでは予想と違って刃が進みません。刃先も鋭角なのに変ですね。

 

1538988336428

研ぎ前、全体画像

 

1538988345603

研ぎ前、刃部アップですが、切り刃は薄いし、刃先も鋭角。

 

1538988325412

研ぎ前、裏側全体画像

 

Still_2018-10-07_014819_60.0X_N0001

刃線中央の欠け部分

 

Still_2018-10-07_014840_60.0X_N0002

切っ先カーブ寄りの欠け部分

 

 

元からかテストの所為か、目立つ欠け二つを落としながら切り刃を砥いで行きます。

 

 

1538988379377

白1000番から砥いで行きます。詳しく触ったり砥石に当てると、切り刃は薄いながらも中央から切っ先カーブ途中までに最も厚みが残っています。その次に切っ先周辺、最後に刃元が一番薄いですね。当然、其の辺りを補正する意識で進めます。

 

1538988397913

白3000番で細かく。

 

1538988410358

キングハイパーで全体を均します。

 

1538988433430

巣板で傷を細かくしつつ精度向上。

 

1538988445265

仕上げを狙って中山の巣板。

 

1538988455753

傷が消え難い箇所を白巣板蓮華で攻めます。

 

1538988478824

其の上でもう一度、前工程に。刃先と裏押しは、奥殿の蓮華巣板です。

 

 

 

1538988487767

研ぎ上がり、全体画像

 

Still_2018-10-07_041901_60.0X_N0003

研ぎ後、刃先拡大画像

 

1538988512352

切っ先の手前の厚みの不均一、

 

1538988505009

鎬筋の中央付近の初期の研削痕、

 

1538988528140

刃元周辺の厚みの不均一、此れらに消し切れていない部分が残りますが全体の厚みと傷消しが整ったので留めました。

刃先最先端は初期より二倍程度の鈍角にしました。其れにも関わらず、紙束でのテストで(僅かに切るのみに終わった)初期の状態より、三分の一位の労力で最後まで切れました。

捲れや欠けを出さない為に十分な刃先角度を得ながら、切る際の抵抗を受けず楽に切り進めるには切り刃の形状が合理的で無ければなりません。特に、刃先強度に不安が有る焼き加減の刃物には重要です。最終的に、何となく薄いだけで高性能が実現出来る事は稀でしょう。

 

 

 

あと、鞘の磨きもとの事で 、下画像は初期の状態。

1538988632823

 

1538988644395

 

 

次にペーパーで磨き、

1538988661593

 

1538988669589

 

 

最後に蜜蝋を少し。

1538988677360

 

1538988684619

 

 

 

T様、画像での御確認の上、OKを頂きまして有難う御座います。此の個体の詳細はメールにて御知らせしました通りです。明日には御返送致しますので、現物が御手元に届いたら又、最終確認を御願い致します。特に、鞘は初めて行いましたので・・・。寧ろ本焼きよりも緊張したかも知れません(笑)

 

 

 

 

 

「追加の切り付け」への2件のフィードバック

  1. 村上様

    包丁が、この時を待っていたと思えてなりません。長い長い眠りから目覚めました。

    一本は欲しいと思っていた玄海でしたので、上手く仕上げて頂いて大変嬉しいです。

    まだ手元に研いで頂いて無い20本近くの包丁があり、全てお願いしたいと思うのですが、、、。
    村上様に研いで貰った包丁は幸せです。

    北海道T

    1. T様

      御手元に届いても、御満足頂けましたら幸いです。

      それにしましても、とても多くの包丁を御持ちなのですね。ちょっとびっくりしました。私の経験・知識、技術で宜しければ是非、御役に立ちたいと思います。御都合に合わせて御用命ください。

むらかみ へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>