北海道からの四本目

 

此の三徳は石堂(輝秀)の手になる物だそうで、地金も独特ですね。其処を見込んで、黒打ちを磨きにして欲しいとの事。それ以外にも、様々な箇所に手を入れる必要が有りました。

前例の有る工程ではマチの磨きと峰の磨き、そして今まで経験の無い作業は黒打ちの磨き。しかし、難易度と言うか困難は伴うものの、工程は想像が付きます。

一番、心配だったのは朴柄に付いている水牛の部分。その欠損部分を何とかする事、更には柄に張られていたであろうシールの痕跡を目立たなく、との事でした。

 

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研ぎ前、右側全体

 

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研ぎ前、刃部アップ

 

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研ぎ前、左側全体

 

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同じく、峰

 

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込みの部分、左側には反対側に比して瘤状の膨隆が。

 

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マチの部分は随分、荒々しいですね。

 

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木部と接する水牛部の欠損

 

 

 

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先ずは、ダイヤモンド鑢で膨隆を削ります。

 

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その流れで、マチの凹凸を均します。その後ペーパーに移行し、段階的に砥ぎ目を細かく。

 

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次に、予て用意の荒い布ペーパーで黒打ちの下の状態を把握。

 

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同じく左側。

 

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120番と240番辺りで繰り返し。あと、GC240番の大きな小割り?も投入。

 

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同じく左側。

 

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平の磨きを進め、切り刃をキングハイパーの硬軟で整形。

 

 

 

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研ぎ上がり。作業開始直後に柄の揺れを感じ、抜けそうでしたので別々に作業しました。中子の錆も軽く落として有ります。

 

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中子の錆が進んで細くなったのでは無く、柄の方が乾燥で縮退したのでしょうか。一部ヒビが入っていますが、打ち込む時にも起こり得るので不明ですね。

 

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欠損部を削りながら周囲との兼ね合いを取りました。磨いた肌を均一にする為、最終的には全周囲に及びましたが。過去に朴+プラ製の柄では試した事が有りましたが、十分な仕上がりは得られませんでした。其の為、最後まで心配でしたが何とか問題無い範囲に纏りました。

水牛部は恐らく、研磨剤を塗布した羽布には適わないであろうとの想いは有りましたが、確かに艶は未だ控えめながら色調は本来の自然な色合いに。やや白みがかった部分や茶色がかった部分が出現。黒一色にも見えていた物に複雑な多様性が。

 

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研ぎ後、右側全体

 

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研ぎ後、刃元部分アップ

切り刃が薄いので、更に刃元を薄くするのは避けました。私の画像は粗が隠れない様に映しているので、特に今回は切り刃の表面に何段階かで砥ぎ目の残り方をしているのが分かると思います。

 

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研ぎ後、左側全体

 

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込みの左側と峰の状態

 

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マチの状態

 

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刃先拡大画像

 

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あ、巣板から千枚・八枚と来て最終は上の中山並砥です。相性がかなり良くて助かりました。

今回は作業内容も箇所も多様で、工程の画像を残す余裕に乏しかったです。しかし人造中砥までの砥ぎ感と試し切りでは、柔らかく粘り重視の焼き入れかと思われた刃金が、研ぎ進めると十分な硬さと切れを感じました。

之まで砥いだ刃物の中で、一番似通った印象を受けたのは玉鋼の包丁で、鼈甲飴を擦る様な感触と欠け難い仕様でした。そっくりそのまま、と迄は言えませんが近い性格なのは確かです。そう言えば、地金も錬鉄よりは和鉄地金に近い外観でしたね・・・。磨いた平にも、光の当て方で油膜状・層状に模様が見えます。

 

 

 

北海道のT様には、今回最初に御送り頂いた4本には画像上でOKを頂きましたので、明日にも御指定の内容で御返送したいと思います。急遽、追加で御送り下さった本焼きも間を置かず御届け出来ると思います ので、宜しく御願い致します。

 

 

 

 

 

「北海道からの四本目」への4件のフィードバック

  1. 本日受け取りました。引いてしまうほど凄すぎます。
    切り出しですが、こんなに直刃に研げるのか!これはロケット等の精密機械クラスです。
    他に3本あるので見本にと思っておりましたが、ハードルが高すぎで見本ではなくなってしまいました。
    服部ナイフですが、これでもか!という位整っていて切れないはずは無いです。
    平を磨いて頂いたのも大正解で全体が調和しています。
    洋出刃ですが、これも本当に尽力頂いて申し訳ありません。刃面のカーブも自然でこの包丁の最高の姿になったと思います。
    最後に石堂。
    凄すぎます。テレビのビフォーアフターを見ているかの様です。
    地金の美しさや柄の自然な仕上げ等美しく、お願いして良かったです。
    本当に有難うございました。

    1. 毎回、拘りの刃物達を御任せ下さり感謝致します。私に出来る範囲に限られますが、少しでも御期待に近付ける様に無い知恵を絞りコツコツと手順を踏むのみです。

      相変わらずシンプルな道具で泥臭く進めていますが、それでも刃物達の切れや外観が向上して来ると嬉しく、やって良かったと思わせてくれます。私の腕を買って頂いて居る、持ち主にも御満足頂きたいですが、刃物達自身や製作者にも悪く無いと思って貰えればと念じつつ当たって居ります。

      直近の例として、昨日は日野浦さんに会って来ましたが自分の手元に置いて置きたいから司作三徳の研ぎを私にと。数年前から話は出ていましたが、こうして実際に頼まれるならば御世辞では無かったなと安心しました。作者に嫌がられない研ぎが出来ている証左かなと思いますが、柳はもう少し掛かるそうです。複雑ですね。

  2. 村上様

    日野浦さんが認める研ぎとは。
    一流が一流を認めるということですね。

    最近刃物が良くても、研ぎが駄目なら意味ないという事を強く再認識しております。
    司柳は時間かかりそうですね。
    2年待ちを覚悟していたカウリXが先に来て、あんまり一気に来ると楽しみが続かないので、頃良いと思う様に致します。

    今後とも宜しくお願いします。

    北海道T

    1. T様

      御待たせしては居りますが、イベント関連も落ち着いたので流石に取り掛かってくれるそうです。第一段階までは進んで居たみたいですので、第二段階に入るのでしょう。

      デモンストレーション用に研ぎを施した三徳が有れば来客に対応する際に便利とか。あと、厄介な(研ぎに付いての要求を受けた?)時は村上に回せるだろうとか何とか・・・。此方は冗談でしょうか。本気なら、それはそれで有難い様な緊張する様な・・・。

      研いだ状態を見て貰うと、いつも「俺のじゃ無いみたいだ」と言われます。其れは昨日も同じで、研ぎに強い拘りと自信を持ちながら相手の程度も的確に測れるのは、流石だと思わされます。

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