中屋平治作 三徳 黒打ち
中屋平治作 イカサキ・磨き
続いて両刃の和包丁、水戸の中屋平治作です。おまけは同・イカサキの霞仕上げと鏡面仕上げ(知り合いに頼まれていた分を戯れに研いだ鏡面なので、略式ですが)です。
こちらは白紙一号と同等以上とも云われるスエーデン鋼の刃金で出来ており、地金は研ぎ易い上質な極軟鋼です。三徳は珍しい三枚打ちで、イカサキは伝統的な鋼付けです。司作もそうですが、焼き入れは松炭を使用しての水焼き入れで脱炭防止と確実なマルテンサイト化を実現。加えて均一で微細な組織である事も相俟って、粘りを備えながらも硬質な刃先を感じられます。
近頃は何でもかんでも芯に刃金(炭素鋼・ステンレス鋼に関わらず)が入っていれば、割り込みと呼称されます。鋼材メーカーで、(積層含む)地金で芯材をサンドしたものと、鍛冶屋が刃金一枚・地金二枚の計三枚を鍛接した物は一緒にするべきではないし、断面で見るとV字型の地金が刃金をくわえ込んだ本当の割り込みが存在する限り、軽々しく割り込みの呼び方を氾濫させるべきでも無いと思います。
どちらが優れているとか、高級だとか、性能に違いが有るかは製造段階の適切さや製作者の経験・知識・技術に依る所が大きいので、一概に言えない所もあります。であるならば、尚の事きちんと分けて表示・販売すべきでしょう。一般人には説明が難しいというならば、製造・販売側の怠慢であるし、高級そうなイメージや高性能をほのめかす意図があるならば、更に問題だと思います。利器材でも三枚でも割り込みでも、機械化がどれ程の割合でも、作り手が値段と性能のバランス内で切磋琢磨され、その刃物の良さを公明正大に世に問われる事を望みます。そして使用者側もそれを的確に判断でき、是々非々を認識出来るようにならなければと思います。