カテゴリー別アーカイブ: 砥石の選別

新しい道具

 

22日の日曜に、亀岡に行って来ました。大方の目的はやはり砥石探しだったのですが、お待たせしている方には申し訳ない結果で、ご希望に副う物は採掘に時間が掛かりそうです。

代わりに、自分用の物として変形の原石ですが、まずまず厚みのある蓮華混じりの巣板を見つけました。長さで16センチ、厚さ6センチのサイズがあり、面直しの際に自分は電着ダイヤを下に敷いて砥石を動かす為、やや負担になってくる重さです。勿論、刃物研ぎの最中に上下の向き変えでも少し気を使います(泥が付いていると良く滑ります)。

しかし、かなりの砥粒の細かさ・その割りに目の立った感触・中庸な硬さの砥面を評価して購入しました。硬さと目の立ち方から、圧力とスピードを加減しなければ傷が入りやすい可能性も考えましたが、其の分研磨力が有れば中継ぎとして良いし、鉄分を吸って硬さが増せば改善されるのは経験上分かっていたので問題にはしませんでした。

 

砥面

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尖った方の側面  巣が平行に

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広い方の側面   巣が見え難く

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砥面の蓮華が多い部分

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裏側

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裏の蓮華の多い部分

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この砥石も、加工場に在った物をそのまま持って来たので上下の面は平面ではありません。特に底面は、面付け機で巣の層を粗方落とした上部と違って切り出したままです。そこで上は巣の名残を落とす為・底は座りを良くする為、何時もの様に電着ダイヤで削り落としました(直線では無い部分の面取りは、ダイヤシャープナーを使用です)。

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右半分の巣が無くなった辺りで試し研ぎをした所、まだ巣の影響があるのか砥粒の目が立っている所為か、刃金・地金ともに傷が消しきれない印象。しかし其の分、前段階の傷は速く消えるとも言えそう。

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次の日、更に砥面を均しつつ包丁でも試してみると、硬めの刃金では結構光り気味に仕上がる物もあり。前日の切り出しで再び試せば、確かに地金では変化が薄いものの刃金は最終仕上げでも良いかと思える仕上がりでした。巣の影響の多寡だけなら地金の変化(研ぎ目の細かさの向上)ももっと大きい筈で、これは初期の予想通りの展開だと思われます。

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念の為にマイクロスコープで確認しても問題ない様でした

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もう一つ、以前から興味のあった道具を試す事が出来ました。パールクレンザーがそれで、月山さんから使っていて性能が良いと何度か話に出ていましたが、大容量且つ結構な値段と言うことで、其の内に買う事もあるだろうと保留にしていました(そう勧める本人はユニークな入手方法で調達できているそうで良いなと思いつつ)。

それが帰宅したらポストに入っていたレターパックから出てきました。かずかずけん様から御裾分けのようで、早速有り難く使わせて頂きました。鋼のペティに付いた変色レベルの錆に対して試しましたが、かなり確り落とす割りに傷が付いたり無闇に光らせる訳でもなく、扱い易いものでした。

ペティは巣板・千枚(やや粗い)・大谷山(軟らかい)の其々、小割りした砥石で側面も磨いている仕様なので、これまでの通常のクレンザーは言うまでも無く傷が入るし、クリームクレンザー(各種研磨剤含む)でも表面の質感・光り方が変わります。其れが出ないのは、パールクレンザーの成分が珪酸系鉱物(天然)、あとは活性剤(陰イオン系)との表示があるのでその組成(研磨剤としては天然素材のみ)に因る物でしょう。ある意味、これも一つの天然仕上げの範疇に入るのかも?と思うと楽しい気分になりますが、実際にこれで処理した刃物で食材の味に変化があるのか試してみるのも興味があります。

かずかずけん様、この度は有り難う御座いました。ただ、余り気に入ってしまうと、自分もゆくゆくは大容量を大人買いする事になるのかと不安も残ります・・・。

 

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本焼き用の砥石の選別

 

今回は、かずかずけん様より本焼きの刃紋が出易い砥石を、との依頼もあり、亀岡に行ってきました。

刃紋の程は、現物の包丁を当ててみない事には確実には分かりませんが、自分の経験でその傾向が強いと思われるコッパを選んでみました。

 

 

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上の白巣板二種ですが、どちらも「巣無し」の質との事で、特に下は以前のコッパ(下画像)と同系統で、更に研ぎ易い硬さ・泥の出方をするものです。勿論、最新の白の例に漏れず、鋼を良く下ろしてくれます。

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此方は「敷き内曇り」ですが、かなり卵色巣板寄りの蓮華混じりです。卵の蓮華はやや硬めが多いと思いますが、中庸な硬さで砥粒の質的にも研磨力があるタイプと見ました。

 

 

 

次の二種は、土橋さん的には白巣板の巣無しの質との事ですが、自分の見立てではほぼ、敷き内曇り。しかも、一年程前に合いさや戸前に隣接して採掘された敷き内に近いと思います。当時は、やや硬めであり、かなり鋼を下ろす代わりに粗い砥粒混じりなのか、傷が入り易く感じました。それに比べて今回は研ぎ易さ・仕上がり共に向上しています。

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この二つは、これも以前の下画像のコッパに特徴が似て居ます。ですので、やはり鋼を良く下ろすのは一緒ですが、仕上がりは完全に曇り傾向です。

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以下は、手持ちの本焼きを試した結果です。この包丁では、最初の二種(画像二番目の砥石)よりも相性が良かった最後の二種の内、やや柔らかい方(画像四番目の砥石)で仕上げました。

 

先ずは最初の状態(手持ちの白巣板蓮華仕上げ)

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次に今回の仕上がり

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元々の状態がまずまず刃紋が出ている所からのスタートで、且つ近い仕上がりだった事により、違いがはっきりしていないと思われるかも知れません。しかし、厳密に比べれば後者の方が僅かにくっきりしています。

今回は、刃紋云々よりも全鋼包丁たる本焼きを、より研ぎ易い砥石の方に軸足を置いた選別になっています。と言うのも先に触れた様に結局は現物と現物の相性や研ぎ方次第になるからです。とすれば、刃紋を研ぎ出す手前までの研磨力と傷が消える仕上がり(勿論切れも)を両立した性能が有ってこそ、になるでしょう。それを疎かにしては刃紋どころでは無い筈です。

そう言う訳で、全体としては細かさは申し分無い割りに、硬さと研磨力が目立つ取り合わせです。お陰で合わせの包丁などでは(平面の刃物と比べて)地金に傷が入り易かったり、刃金でも注意しないと刃先に返りが出過ぎたりします。本焼きの切り刃でさえ包丁・砥石共に平面同士でないと研ぎ斑が出る程です(もしそれを完全に消すなら、柔らかい砥石やそれを小割りした物で均す必要も)。この上、更に刃紋を引き立てるには、根気良く様々な砥石や研磨剤で試し、又天然砥石の粉末の配合も調整し、適合するまで長い挑戦・・・・となるでしょう。

 

後はこれらを、かずかずけん様に試し研ぎの上、御判断頂ければと思います。

 

 

 

興味があった田村山

 

今回の連休中は去年同様、砥取家の常連ばかり数人で集まり、会合みたいな状況でした。

色んな人と色んな話をしたり砥石を試したり、鍛刀を見学したり牡丹鍋を作ったりしましたが、自分にとってのトピックは、以前から興味があった若狭の砥石・田村山を手にする機会を得られた事です。

過去に田中清人さんから中井産の砥石を頂いていましたが、採掘場所としては其処からやや離れており、石の傾向も違う田村山を尚さんから三つ(おまけ付き)、共名倉も三つ分けて頂きました。

若狭の砥石は結構、特殊鋼の類と相性が良いとの話を伝え聞いておりましたので、試し研ぎは青紙一号の今井義延と青紙スーパーの重春、共に切り出しで行いました。砥取家にて試した折は、石の感触の割りに少し傷が残る感じがありましたが、予想したとおり溜め水の影響だったらしく、自宅での使用に際しては問題なく仕上がりました。

 

 

先ずは、丸尾山の卵色巣板で下研ぎです。

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卵色巣板による仕上がり

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田村山(八枚の系統と言われた様な?)  「戸前(上層部)でした」

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上画像の砥石による仕上がり

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田村山の戸前浅黄

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上画像の砥石による仕上がり

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同、刃先拡大画像

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田村山の浅黄か千枚っぽい物  「戸前(表層)でした」

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上画像の砥石による仕上がり

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田村山の八枚?  「再び戸前(上層部)でした」

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上画像の砥石による仕上がり

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同、刃先拡大画像

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以下はおまけで頂いたコッパと共名倉です。

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研ぎ感としては、丸尾山の硬口千枚系統に近い物と、大谷山に近い物に分かれる感じでしたが、緻密な砥粒と硬目で泥の少ない割りに、地金を引いたり上滑りする事も無く研ぎ易いと思います。

ここ二年程は、巣板や通常の合砥以降に当てる、カミソリ砥の手前の砥石を充実させたくて取り組んで来ましたが、正に希望通りの性格の砥石達で良かったです。これで最終仕上げに必要な砥石群は、ほぼ揃って来ましたので仕事の上で刃物に適した砥石選びが楽になると思います。

 

 

 

砥石の選別 3

 

日曜は、先週辺りから研ぎ依頼されていた常連さんの包丁を、やっと受け取りに行けました。その流れで、更に前(つまり前回の選別直後)から頼まれていた(こちらも御馴染み)、直近のやや硬口・研磨力自慢の白巣板を当たって来ました。それともう一つは、質の良い戸前系・細か目の砥粒の物、という注文でした。

 

先ずは戸前系から

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上画像は、本戸前・色物・60型で、ほぼ、自分が「三色」と分類している物です。研磨力・仕上がり・切れ・扱い易さのバランスが良い優等生で、尚且つ砥粒がかなり細かい物です。硬さも程よいレベルで、平面の刃物を研ぐに当たっては、心配しようも無い砥石です。

 

 

 

以下はいよいよ、月山さん・かずかずけんさん・そして自分用の白巣板です。月山さんと私は、平面管理など取り回しの観点から、割合形状やサイズに拘りは少なく、定寸・直方体でないコッパやレーザー型でもと思っていました。しかし、砥取家にて次男氏から例の原石の一派と示されたのは十分に綺麗な物で、サイズも80型(近辺の物含む)でした。

今回も、青紙と思われる小刀で試しましたが、大きな差は無く近い性能の砥石達でした。

 

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上画像は、今回の白シリーズで最も研磨力が強く、その割には、かなり細かい砥粒に助けられて、傷の量・深さ共に問題無い仕上がりです。

 

 

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先の物より、僅かにマイルドかな?という性格ですが、ほぼ誤差の範囲と言って良いでしょう。

 

 

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上画像は、40型あり、性格も小鮎さんに送った物と近いと思います。(研ぎ手のアプローチの仕方による仕上がりに、特に幅が出る)その為、小さめの砥石で十分と思っていた筈が興味深さに負けて自分用に買ってしまいました。

 

 

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上画像は、80型には少し幅が足りないサイズですが、今回の白の中では 多少、自然な感じの泥が出る砥石で、幾らか研ぎ初心者や柔らか目好きにも対応出来そうです。ですから販売用としても無難で、且つ又自分の予備としても問題無いので確保してきました。

 

 

 

其れとは別に、カミソリ砥など、鏡面に仕上げる際に必要な共名倉も頼まれていました。実は以前に大上系の共名倉を紹介していましたが、今回は更に上を目指せる物を希望との事です。小さい砥石が数十個入っていた木箱から二個、探し出しました。

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上画像は、戸前系(敷きか?少し、いきむらさき部分有り)の物で、石自体がやや硬めなので希望から外れ気味にて自分用としました。只、砥粒自体の細かさは十分で、緩衝・研磨・張り付き防止の役割はこなしてくれます。

 

 

 

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上画像は、表裏が緑灰色と赤褐色の恐らく戸前と合さの境界でしょう。どちらも使えますが、緑の方が細かく仕上がります。石自体も砥粒も、先の物よりやや弾力があり、その割に仕上がりも綺麗だと思いました。こちらを送る事とします。

 

 

 

因みに、自宅にて大谷山で共名倉としての性能をテストした画像です。

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自分的には、この辺りまで仕上がれば問題無いと思います。

 

 

 

 

おまけです

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かなりの厚さです。巣が狭いピッチで入っていますが、研ぎ減りが少な目なので、巣を落とすサイクルは見た目程に慌ただしく無いと思います。

加工場から持って来て表裏、面付けして購入しましたが(だから之も判子など無しですね)、微かに黒蓮華の印象を受けます。砥面が細かく硬めでありながら、砥粒の目が立っているのか平面同士(刃・石)でも研ぎ肌にやや傷が入りやすい傾向がそう感じさせるのでしょうが、錆びが出易いとか巣が黒いとかも有りません。ましてや黄鉄鉱みたいな光る粒も硝煙みたいな匂いもありません。

そういう意味では扱いに気を使う程度は知れています。しかし、性格は異なりますが直近の白巣板と同様、鋼を強力に下ろして前段階の傷を消す役目を果たしてくれそうです。(刃物のサイズ的に、40型を使うまでも無い場合はこれで十分ですね)

 

 

砥石の選別 2

 

前回の選別の追加です。

 

先ずは、必ずしも自分の使用する砥石のルートに含まれないにも関わらず、以前に確保した敷き戸前です。十分な細かさと、弾力あるやや硬口の砥石です。それに違わず精細な刃付けと、不相応な研磨力を見せてくれます。

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そして今回、再度食いつくような巣板その他を探してきました。

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上画像の白巣板は最新の物です。この一年ほど、新白巣板と呼ばれるかなり硬口の物が多かったのですが、これはやや扱いやすい硬さに戻った感じを受けます。巣も割合、はっきりしてきて、その間隔も広いものもあります。

これは、24型の厚物でかなり豪華な外観ですが、それだけでは在りません。「食いつくような」との意向に沿うかどうかは分かりませんが、間違いなく最高に刃物に食いついて鋼を下ろしてくれます。その上、研がれた刃先は対象物に鋭く食いつきます。その研磨力は、従来の巣板が青砥だとすると、天草に匹敵します。元々、丸尾山の巣板は研磨力が強く、それを評して「研ぎ過ぎに注意」等と言われて来ましたが、掛け値無しに文字通りの現象が起きます。刃線の狂いに注意が必要でしょう。

本来は、硬めの砥粒で目の立っている砥石や、柔らかく続々と泥が出る砥石が研磨力の強い砥石の代表ですが、その良いとこ取りの印象です。前者は強引に下ろすが故に傷が消え難く、後者は砥面が狂い易い上、泥が邪魔になる事もあります。この砥石は傷が入るのを心配する程のやや硬い研ぎ感でありながら、刃金は傷少なく光気味、尚且つ巣板としてはほぼ望める限りの切れ味に仕上がります。

実は数個ある中で、小さめの物に続き二個目に試したこれが良かったのですが、立派過ぎるのでは?との土橋さんからの意見で厚みの少ない三個目も試した所、やはり仕上がりに違いを感じ、改めて選択しました。(裁断や面付けなど加工は次男氏の渾身の作だそうで)削ろう会その他に向けて在庫しておきたいとの事でしたが、私にならと分けて頂きました(24型は勿論、以下の砥石達を選別できたのは、今回も完全に幸運でした)。

 

 

 

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敷き内曇りの24型、やや長さ不足といった所です。先の白巣板の前に選んでいたのがこれでした。実は以前に自分が一度もって帰った事のある砥石で、その後、性質の異なる敷き内曇りと交換して貰いました。理由は手持ちの同種とキャラが被ったのと(敷き内だけで1ダースは有ります)、包丁よりは平面の刃物に向くと判断しての事でした。

前述の、やや泥の出易い敷き内曇りで、鋼も地金も均等に下ろし、仕上がりも斑なく綺麗で、切れも十分な性能です。やはり自分の好みの質の物で、紅葉に近い蓮華が結構入っており、赤と紺の小さな点々が特徴的でしっとりとした研ぎ心地です。

結局、白巣板が現れたので、其方が適合品かも知れませんが、比較対象として確保してきました(しかしこれは、贅沢すぎる品定めですね)。

 

 

 

見た目の形状や表の筋がやや評価にマイナスとなりやすいですが、質的には優れた敷き内曇り蓮華入りです。

「表」

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「裏」

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表も裏も砥面とすることが出来る砥石で、表はやや硬さと細かさに優れ、裏はやや柔らかく研磨力に優れています。本来的な意味で両面使えるのは稀有な事です。表を使えば、通常の巣板としてはかなり細かく精細な刃付けが出来るでしょう。

 

 

 

此処からは以前の戸前祭りの名残が続いていた様で、戸前系の砥石です。

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画像は天上戸前の色物(いきむらさき系統)ですが、やや本戸前寄りです。と言うのも、これとは別に完全な天上があったのですが、如何にも天上らしく、組織の疎な部分が砥面に斑点状に出ていましたが、之には見当たりません。研ぎ感も中間よりは本戸前寄りで、言ってみればハーフではなく、クウォーターでしょうか。自分はどうしても、戸前系でも大上・合さ系統でも本戸前寄りを選んでしまうので此方を選択しました(カーブの有る小刀では差を感じ易いものの、鉋ではどちらも大差無く、錬鉄の研ぎ肌や鋼の仕上がりも遜色ありませんでした)。

 

 

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これは一見、柄的には完全に天上戸前いきむらさきですが、本戸前です。分類は色物になりますが、いきむらさき寄りではあるでしょう。その所為か、硬さ細かさ・泥の出は大差なくても、三色の色物や八枚風などとは違います。研磨力を抑える研ぎ方(泥の量と圧力の加減)をしなければ、やや地金の傷や斑に繋がり易いかも知れません。この系統は、面直しをしても乾いてくると細波の様な光の返し方をするのですが、それが影響しているのでしょうか。鋼には特に注意は必要ありません。その辺りは基本通りの本戸前の研ぎです(細波は白巣板にも出ている物あり)。

 

 

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ほぼ上記の物と同一の砥石があったので、此方は自分用として確保しました。どうも元々の本戸前好きがぶり返して来たようです。

 

 

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同じく本戸前ですが、今回最も細かく硬い(僅かにですが)細長いこれも自分用に確保しました。流石に他と比べれば、やや研ぎにくい形状ですが、研ぎにくいのには慣れている上、質的な満足を優先する性格ですので、嬉しいものです。

 

 

 

24型の白巣板と同質の白巣板です。やや細かさで差がありますが、最新の白について、月山さんも興味を持つかと思われるので、サンプルとして送ろうかと考えています。これも鋼をがんがん下ろして切れ味良く仕上げてくれればと思います。

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最後は、共名倉として貰って来た物です。敷き内曇りの蓮華の共名倉は調子が良かったので之も、と思ったのですが(敷き内の紅葉では無く)割れた表面の風合いから、卵の紅葉でしょう。これはこれで又、色々と試して楽しめそうです。

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砥石の選別

 

以前から、自分の砥石選別に関して二・三、依頼や問い合わせがあり、それらに応える形で本日、砥取家にて幾つか砥石を選んできました。

ホームページや砥取家経由などで問い合わせてきた一般の方には情報提供で対応していますが、今回は知り合い三人からの要望に即した選別を行いました。「噛み付くような巣板」や「キングの1000番に繋ぐ包丁に向いた巣板」、後は「手放した極上の本戸前と同等品」です。

 

 

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画像は、「白巣板巣なし」(厚物30型)です。所謂「巣なし」の構造は鱗片状に積層されているらしいのに対し、これは普通の白巣板の砥粒構造に近いようです。その為、刃金は勿論、地金にも斑が出難く研ぎやすい上、泥の質や出方が邪魔になりません。さらりとした適度な泥で、上滑りしたり断続的に突っ張ったりせず、均一な滑りで黒い研ぎ汁を出してくれます。黒蓮華系統ほどには滑走感が強くも無いので、圧力やスピードを一定にして研ぐ際に適しています。之まで、同様の砥石は敷き内曇りの混じった物しか手元に置かずに来た理由が、刃物(特に地金)を選ぶ気難しさを嫌っての事でしたが、この砥石には無縁の様です。更に、性能だけでなく形状や色・柄共に文句無く、間違いなく自分の経験上、最高の「白巣板巣なし」でした(「巣なし」の癖を求める人には物足りないかも知れませんが)。

 

 

 

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画像は「卵色巣板」に蓮華が混じっています。サイズ的にはレーザー型に近いでしょう。質としては、卵寄りの敷き内曇りに近いかと思われます。その為、恐らく純然たる卵色巣板よりも研ぎやすく、刃金を良く下ろしてくれる特性の様に感じました。(和・洋包丁問わず適す)

 

もう一つ、少し小さいですが特に質の高い「白巣板」が在りました。

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上の卵は表面上、ぱさっとした当たりで、さらりとした泥が出ると思いますが、こちらはすべすべした当たりで泥はややとろっとしており、より地金を斑無く綺麗に研ぎやすいと思います。(炭素鋼和包丁向き)

 

 

 

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あと一つは、「本戸前」です。前回薦めた物とほぼ同様の、朱と濃紺と緑灰色の「色物」で、自分が特に好む本戸前の三種の一つです(他は「浅黄」と黄褐色の「八枚風」)。只、細かさや仕上がりは同等ですが、僅かに硬いので、扱い易さは前回の方がやや上でしょう。しかし泥が少なく、上級の方には却って研ぎ易く感じるかも知れません。二・三、筋が通っていますが、それほど邪魔にはならないかと思います。特に和包丁では影響が少ないでしょう。兎に角、本戸前の上物は合砥としては、刃金は勿論、地金も均一に研ぎやすい稀有な砥石です。

 

 

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最後に、おまけで付けて貰った切れっ端(加工場で探して来ました)ですが、少し墨流しに蓮華が入っています。蓮華と黒蓮華が半々の白巣板(研磨力と錆び難さが同居する)はかなり、自分好みですが、それに近い感触です。細かさはやや物足りない気もしますが、鉄を吸って硬さと細かさが増せば十分でしょう。

 

今回の全ての砥石は、「自分が買うとすれば」の基準で選んでおり、想定した相手に選ばれずとも、自前の物としても良い程の性能です。砥取家ホームページにアップされずに残っていたのは、今後の採掘予定を鑑みての事だそうで、誠に僥倖でした(土橋さんにはやや迷惑か)。勿論、想定した相手に気に入られたなら嬉しいですが、どれも資料として確保する(本音は偶に使ったり眺めたりしてにやにやする)に足る品質で、やや複雑でもあります。