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説明文 5               (研ぎ屋むらかみHPより)

天然仕上げ砥石の特徴について

 1:切れ味を引き出しやすい

   *研磨力が適度な為、刃先に「返り」(刃返り・バリ)が大きく出にくく、研ぎ傷が消し易い。

   *研磨が進むに従い、砥粒が微細になるため、仕上がりの番手を調節出来る。

 2:永切れ効果

   *鋼材の組織中の軟質の部分を優先的に研ぎ下ろす為、刃金表面を特に硬質の部分で

     揃える事になり、実質的に対摩耗性が上がる。又、天然成分による緩やかな表面的な

     腐食で硬度変化の可能性もある。

 3:防錆性能

   *研磨剤としての砥粒の硬度が低く、鈍角な形状の為、鋼材に深い傷を付けにくい。即ち表

     面積が大きくならず、錆の発生が抑えられる。又、鏡面に近づく程錆にくくなって行く。

 4:材料それぞれの研ぎ肌を表現できる

  *刃金(鋼鉄)と地金(軟鉄)で構成されている刃物であれば、その硬度差により、違った仕上

    がりの研ぎ肌となって現れる。人造砥石では、一律の研磨状態となるところ、素材の違いは

    勿論、同じ地金の中でも刃金由来の炭素の移動による景色の違いが現れたりもする。

    材料二種の硬度による違いだけでなく、刃金単体であっても「鋼材の組成、鍛造の程度焼

    き入れ・焼き戻しの違い」による「硬さ・粘り・組織の細かさ」など、刃物の個性・バラツキよっ

    ても研ぎ上がりが変わってくる。それは一つの天然砥石で全ての刃物を均一に仕上げられ

    ないと言う事でもあるが、反面、個々の刃物に最適の砥石を探し出してやれる可能性がある

    事も意味する。

    研ぎ肌が綺麗である事は、只美観の為のみならず、総合的に刃物の刃先・切り刃がその鋼

    材なりの良い状態(研ぎ傷が消え、精細な刃先形成による鋭利な切れ味。光の反射にムラ

    が無く、表面積の小さい錆びにくい状態。)を実現できた指標ともなる。

    逆から見れば、過去の経験から特定の鋼材に相性が良いと判断できる砥石群を用いて、同

    一の鋼材の刃物を研いだにも関わらず、研ぎ上がりが違ったり、上手く研げなかったりする

    場合、今度は刃物の素性や出来を判断する材料にもなり得ると言える。

説明文 4               (研ぎ屋むらかみHPより)

刃付けと切れ味について

  物が切れると言う現象については未だ解明されていない部分が有るかもしれないが、一般的に切れ味と言われている手応え・感触については、影響する要素は大きく分けて二つだろう。一つは刃物の厚み、もう一つは刃の角度だ。

 厚みは対象物を削る場合は未だしも、切断する際にはまともに抵抗となる。端的に言えば、強度的な問題が無ければ刃厚は薄ければ薄いほど良く切れる。しかし実際は、強度や精度、果ては重量までも必要とされ、様々な厚みの刃物がその要求に基づいて制作されている。

 刃の角度についてもほぼ同様で、鋭角であるほど良く切れるが、強度が反比例する為、あまり極端な角度の物は特殊なものに限られている。

 上記は刃物一般についての傾向だが、鉋や鑿など刃渡り全域が終始対象に接触し続けるものと違い、むしろ対象より長い場合もある刃渡りにおいて、対象と接触する部分が移動しつつ切って行く刃物では、その際の刃の厚みや角度の変化によっても大きく切れ味を左右されることになる。

 例えば包丁では、厚みは目的の作業に必要とされる最低限の強度が確保されていて、角度はその作業時間内に切れ味が低下し過ぎない範囲で鋭角であれば切れ味に不足は無い理屈だ。

ところが実際に刃をスライドさせつつ切り込んで行くとなると、対象に接するのが後になる部分ほど厚みや角度が小さくなければ楽には進んで行かないもので、少なくとも後の方が厚い・鈍角では話にならない。現実には、どちらか一方だけでも条件を満たす事を目指さざるを得ない。

 ところが、出荷前の刃付けの段階で峰から刃先・刃元から切っ先にかけて正確にテーパー状に厚みが抜けている仕上がりと共に、刃先角度がその鋼材の特性と刃物の使用目的に応じた角度で研がれている事は稀である。刃角は店頭に並ぶまでの破損防止と不注意なユーザー側の刃欠け対応で鈍角になっているのかも知れないが、厚みの方はグラインダーなどで刃元と切っ先付近が削り過ぎている状態が多く見受けられる。ユーザーが普通に研いでいたのでは刃元は長期間砥石に当たらず、調理の段階では食材を切りかけてすぐに中央の厚い所でブレーキが掛かってしまう。そして強度が落ちるほど薄くなった切っ先手前の切り刃とは逆に、すぐ後ろの峰の厚さが残り過ぎている事もブレーキになる。

このように、作業内容に見合った包丁の研ぎとなると、単に刃先の鋭利さのみならず、刃全体の厚みの変化や切り刃の肉の取り方、刃先の角度の繫がりが問題無いかをまず確認し、適宜目的に応じた対処が必要になってくる。(あまりに切っ先まで厚い場合は平をテーパー状に薄くしたり、刃の角度を先に行くほど極端に鋭角にしなければならなくなる)

 これらを踏まえると、魚肉を引き切る刺身包丁や出刃包丁、牛肉・鶏肉を引き切る事が多い牛刀は刃元から切っ先まで厚みや刃先の角度が緩やかに減少して行くように、対して薄刃包丁は野菜を押し切り(前方へスライドしながら切り下げる)使い方が多い為、あまり厚みや角度に変化が付かない研ぎ方が妥当と言えるだろう。

説明文 3               (研ぎ屋むらかみHPより)

ブレードの角度と刃の角度(包丁・ナイフについて)

  1.製造段階では、普通はフラットグラインドと呼ばれる刃先まで平坦に研削された物・コンベッ  クスグラインドと呼ばれる外に膨らんだカーブで研削された物・ホローグラインドと呼ばれる内側に抉れたカーブで、しかし先はやや厚みを持たせて研削された物が代表的である。(西洋剃刀はコンケーブというホローよりも薄く、先まで厚みが増えない研削である)

  2.和包丁の場合、表は平から先は大抵がベタ研ぎと呼ばれるフラットグラインドか或いは蛤刃と呼ばれるコンベックスグラインドである。しかも裏は裏梳き等と呼ばれる言わばホローグラインドになっている。これにより、表はある程度の強度を確保しつつ、同時に裏は切る対象が張り付くのを防ぐ構造になっている。(片刃構造)

  3.洋包丁の場合は、ブレードの背から刃先まで両側が均等なフラットグラインドの物が基本となる。しかし製造メーカーにより、左右の研削角や後述する小刃の角度を非対称に設定されている物もある。(両刃構造ながら、利き腕の側の刃付けが鈍角である方が、対象を削ぐように切る場合に抵抗を受けにくい。又、その場合切断するラインが利き腕側にズレにくい)更に、和包丁的に平からしのぎにかけてのデザインが取り入れられている物もある。

  4.ブレード本体の構造上の角度に対して、対象に切り込む刃先の角度は、大抵の場合、僅かに或いは遙かに大きく設計されている。大まかに言えば二段階の刃付けになっている訳だがこれは、切る対象に対して刃先の強度に余裕の有る場合と、そうでない場合でその二段双方の比率が違ってくる。

 4.1.刃先の強度が必要な場合、その組み合わせは本体鈍角×刃先鈍角であり、反対に不必要な場合は本体鋭角×刃先鋭角である。現実にはブレードの厚みも加わって、その間にいくつもの組み合わせが考えられる。例えば、鋭い切れ味は必要だが、外力に対する耐久性と耐摩耗性を必要とする場合、鋭角の本体角と鈍角の刃先角の組み合わせが考えられる。

 4.2.しかし、角度以外にも刃先に与える影響が大きい物として、二段目の研削面の幅の大小がある。これには糸引きと言われる、光を当てての確認が必要な程ごく狭い幅の物から、段刃と言われるかなり大きい物まで目的により使い分けられている。当然幅が狭いほど抵抗なく切り進むが、その分強度や耐摩耗性には劣る事になる。つまり、二段目の刃を付ける場合に限ってみても、広く鋭角の刃を付けるか、狭く鈍角の刃を付けるか、目的によって選択の余地があることになる。(洋包丁やナイフの二段目に付ける刃については、小刃と呼ばれる事が多い)

 4.3.糸刃については困難かも知れないが、段刃にはその段を無くし、蛤刃に仕上げるものも含まれるだろう。単に一段目と二段目のつなぎ目を丸めたものから、刃先まで無段階に緩やかカーブを描くものまで様々である。(欠け防止や長切れ目的で、段刃や蛤刃に更に糸引きを加える事もある)

  5.一段目の刃付けのままフラット又はそれに近い刃付けで使用されるのは、一部の人の和包丁や、大工・木工関係に限られてきている。現実には極限の切れ味や切削対象の精度を求めるので無ければ、製造段階は言うに及ばず使用者に於いても二段階・三段階の刃付けがなされている訳だ。

説明文 2               (研ぎ屋むらかみHPより)

   刃金の状態とその要因(主として炭素鋼について)

 刃物の性能の要となるのは鋼鉄から出来ている刃金の性能である。つまりこの炭素鋼がどういう状態に熱処理されているかで大きく特性が異なる。例えば硬度であるが、基本的に炭素量が多ければ多いほど硬くなるが、3%前後になってくると鋳鉄の範疇になり、粉末冶金でも無い限り、脆さが顕著になる。やはり1%を大きく超えない辺りが常識的な範囲となる。

 更に焼き入れの適正温度にも妥当な範囲があり、低すぎる温度では硬さは出ないものの、高すぎる温度からの焼き入れでは脆さや、却って柔らかくなってしまう事もある。又、刃物の厚さや形状によって、適正範囲内でも何処を選択するのが最適かの判断は経験が必要になるという。

 その鋼材なりの硬度が出る焼き入れが成功したとしても、そのままでは実用上、圧力や衝撃に対して耐久性に問題が出易いものである。そこで粘りを加える為の焼き戻しが必要になってくる。焼き鈍しは加工性を上げる為に硬度を下げたり、組織の炭化物が大きく育つのを改善するもので、これとは異なる。飽くまでも実用範囲における硬度を保持しつつ、欠けや折れを防止するもので、設定の硬度を下回っては意味が無くなる。

 この方法は、古来からの焼き入れ直後にそのまま炉で低温域内で再加熱後水冷する方法や、現在主流の温めた油に漬けておく方法がよく知られている。炉で温めるには基準の見極めが必要であり、油に漬けるには設定温度と保持時間の選択に掛かってくる。最適な解を見つけるのはどちらも簡単では無い。

 硬度と粘りだけでは刃物を語れないのは、やはりその鋭利さ故に求められる刃先性能が極めて

レベルの高いものになるからだろう。これがある程度の厚さを伴う先端であれば、剛性が助けてくれるし、薄くても硬度が必要ないなら、粘弾性の方に逃げられる所である。

 狭い面積に比較的大きな圧力や摩擦が掛かる刃物には、金属組織の状態が切るという目的に適しているかどうかも関わってくる。炭素鋼とは鉄と炭素が結びついた状態ではあるが、何処を取っても全てが均一な大きさや並び方をしているとは限らない。寧ろ、炭素が結びついた炭化物が大きく成りすぎたり、不均一に繋がり・分散していることもある。その例が、拡大した時に樹状や網状に見える組織である。これが即、質が悪いわけでは無いものの、傾向としてはやはり微細な球状の組織が均一に分布している方が鋭利な刃先の形成と耐久性には有利に働くだろう。

 これには焼き入れ段階で熱処理が適正であるだけで無く、以下の点でも注意が必要となる。

鍛接時の温度を可能な限り低く抑える。又、鍛造時、回数ごとに加熱温度を下げていく事。炉での保持時間を長くし過ぎない。冷間での鍛造を必要なだけ行う事など。金属試験では温度管理と打撃による外力の双方で球状化が認められている様だが、それを鍛冶仕事の中で両立出来れば出来上がった刃物の物性が適正、或いは安定しているのはある意味当然と言える。

  (鍛接温度が高すぎたり、炉での保持が長すぎると炭化物が大きく育つ。又、刃付けや刃研ぎ で温度が上がりすぎると焼き戻りで硬度低下や欠けが出るリスクが高まる。)

 注:此処では、「ロックウェル『かたさ』計」などで計測される金属の所謂『かたさ』を硬度と表記しています

説明文 1               (研ぎ屋むらかみHPより)

 

これまで、幾つか御質問やお問い合わせを頂いたのですが、それらの内、ブログだけ、又はホームページの一部のみ見て、場合によっては殆どの説明を読まないままと受け取れる事が在りましたので、ホームページの説明の欄に書いていた事を此方にも載せてみます。(どちらに書いてあっても読まずに質問・問い合わせの人には効果無いかも知れませんが)以下は自分が関の刃物会社に居た時に経験・勉強した事やそれ以前から本・雑誌・資料から得た知識、子供の頃から刃物を研いできた体験をベースに、近年は様々なホームページやブログなどでの記述を照らし合わせて違和感の無い考えを参考に、現状考えられる大きな間違いが無いと思われる内容で書いた物です。(数個在ります)

極大まかな料金の説明や依頼を受けてからの説明はホームページの方で御確認下さい。

 

鍛造作業の手順(切り出し小刀の一例)

1. 地金(軟鉄)と鋼の材料を任意のサイズに切り分け、用意する。

2. 接合時、双方の隙間が出来るのを防ぐ為、鋼の材料の面取りをする。(断面が台形にな

 るように地金に乗せる)

3. 地金を加熱し、硼砂を乗せた上に鋼を置き、圧迫する。その後、鍛接温度まで加熱する。

 4. 手槌で手前から軽く叩き、安定したら強く叩き接合させる。

 5. 平(平面)やコバ(側面)を叩きながら整形していき、刃元から切っ先を造形する。(手作業・

    ベルトハンマーで伸ばしながら薄くしておく)

 6. 焼き入れ温度くらいまで加熱し、徐冷する。(ゆっくり冷やす事による焼き鈍し)

 7. 回転砥石で表面を均す。外周を削り、形を決める。面取りをして歪みを取る。

 8. 焼きムラ防止の脱脂。(有機溶媒やサンドブラストなど)

 9. 砥の粉(砥石の粉など)を水で溶き、塗布して乾燥させる。

 10.柄を暖めた後、焼き入れ温度まで加熱し、水冷。(急激に冷やす事による焼き入れ)

 11.状態により、この段階や後行程で歪み取りを行う。

 12.軽く加熱して再び水冷。(焼き入れ温度より大幅に低い温度からの急冷による焼き戻し)

 13.水研機で裏を梳き、刃を荒削りする。更に細かい目で刃付け。

 14.手研ぎによる砥石での仕上げ研ぎ。

  後半では合間に冷間で裏を叩き出したり、鍛造・鎚目付けが加わる事もある。

  注:硼砂・・・鍛接剤。硼酸や酸化皮膜などを調合して鍛冶が独自に作る場合が多い

たまに使う刃物

 

包丁だけが料理に必要な刃物と言う訳では無く、これも基本的な道具の一つでした。出汁を引く為に使いますが、下の道南産真昆布はそのまま使うので関係ありません。(熟成風にするため葉書サイズにして純米酒を塗ってから金網を敷いたダッチオーブンでキツネ色手前まで炙っておきますが。そして冷蔵庫へ。)

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使うのはこの枕崎産本枯れ節をかく時です。

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母が持っていた鰹節削り器で、小学生の頃はまず日曜毎に削らされていました。台が割れたので三木の常三郎で相談して台と鉋刃を見繕いました。幅のサイズは55㎜の台そのままで合いましたが、元よりもかなり厚かったので削って送るとの事でした。しかし到着すると、同時にまな板削り用に買った55㎜鉋と同寸の台のままでした(長さはぴったりに切り詰めてありました)。結果的には、引き出しが引っかかるのと蓋が浮くだけで使えてはいます。

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裏の鍛接線上にバリが出た物を安くして貰いましたが、青紙一号と錬鉄の合わせで、切れ味・研ぎ味共に文句ない性能です。但し本枯れ節の硬度か角度の問題か、欠けが出易かったので鈍角且つ糸引きを入れて対処する内に欠けが改善されてきています。初期のパラ付きだったかも知れません。

下は丸尾山敷内曇り仕上げの状態です。

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下画像の左は同時購入のHAP40と極軟鋼合わせです。最初は刃金と地金の耐摩耗性の違いから、地金の方が先に下りて鋭角になり勝ちでしたが、角度維持よりも刃金と合う砥石で刃先を研磨する意識により改善されました。因みに相性が良かったのは丸尾山の千枚でした。

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下がその千枚仕上げHAP40のベタ研ぎ刃先です。

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これで鰹節を削りますが、一度にほぼ使い切ります。だから切れ味が落ちてからは無意識に力に頼り、欠ける要因だったかも知れません。

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使用目的にもよりますが、極上品な出汁を取るなら上の状態の物を昆布で取った出汁に加えれば良いわけです。しかし煮物その他でやや濃い味付けの出汁の素として、下の鯵・鯖・鮪の類いで作られた製品とブレンドしてパックを作っておき、冷凍保存します。

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あとは海塩と薄口醤油(長崎のチョーコー・超特選 生が好み)、純米酒くらいでの味付けを基本にしています。下は菜の花(恐らく菜花の間引き菜)を下ゆで後に上記の出汁に放り込んだだけです。

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味見をすると、すぐに刃が気になってくるので、さっさと研いでしまいます。出汁の素を作っておく理由は、度々では面倒と言うだけでは無く、半分は使った刃物は例外を除いて直後に研いでおかないと落ち着かない性分のせいだと思います。

 

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刀鍛冶の三徳包丁

 

月山さんの所で、加藤さんに包丁を打って貰うが一緒にどうか、とのお誘いで頼んでいた物です。

 

新品時全体画像

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新品時刃部画像

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下は240番GCから1000・1200番キングの人造砥石で研いだ後、対馬名倉入り・巣板入り人造から丸尾山白巣板・敷内曇りで仕上げた画像です。

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最後は刃先の200倍拡大画像です。まだ初期のパラ付く傾向が見られますが、組織は細かく粘りも不足ではないので、更に研ぎ込めば揃って来るでしょう。

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白紙一号と軟鉄の組み合わせとの事ですが、外観からは割り込みで無く三枚打ちに見えます。焼き入れのみならず、鍛造・鍛接段階でもコークスでなく松炭使用との事です。当然刃金は脱炭の気配も無く、どちらかと言えばやや堅焼きの印象です。他の白紙一号やスウエーデン鋼の感触同様、細かく目の立った切れ味です。研ぎに於いては刃金・地金共、ある程度硬さを感じさせるものの、下りが悪い事は無く自然な研磨。寧ろ双方均等に近い研げ加減のバランスが印象的で、ある意味基準としても良い程の安定した仕上がりでした。

 

亀岡周辺はいいところ

 

勝手に桜の名所認定

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上の画像は、大阪から亀岡に向かう道沿いにある、自分が一~二年前から勝手に「ぷち千本桜」と思っている場所です。道中には、公園・川沿い・小学校や神社付近に大きな古木の単独や小ぶりな若木の集団・一列縦隊という、絵になる桜が多数存在しますが、地形を活かしたこの場所はスケールと合わせて個性的です。勿論、有名どころは妙見山ですが。

 

下の画像は同日、砥取家さんと合流して、嘗て採掘していた休眠中の山へ下見に訪れた際の物です。此方は採掘権云々でなく、砥取家の持ち山だと言う事です。後日、研ぎ文化振興協会から行政への説明として、担当の方々とも再訪した場所です。

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大小数カ所、採掘跡が在りました。

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そして、下の一つ目は様子見のサンプルとして、付近で切れっ端を採取して面を付けた物です。他の二つは比較用の君谷(休眠中)と大谷山です。

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サンプルで持ち帰った物は薄層に剥がれ易い状態の、はつって落とされた部分の様でした。その為か野晒しによる風化、或いは冬場の凍てによってかやや脆さを感じ、上図の大谷山や君谷よりも硬さ・細かさで及ばないものの、通常使用には問題無い範囲と思われます。それは、下の普及品の切り出しによる試し研ぎ画像でも明らかでしょう。今後の再採掘にも期待が持てるといった所でしょうか。

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新入りの経過

 

少し前に購入して知人に贈った切り出し(普及品)の片割れです。多少使うくらいでは余り傷まないので、普通に考えれば必要以上に研いでいます。それでも未だ、切り刃が整いつつあるレベルですが、その確認を兼ねてカミソリ砥で研いでみました。今後は面の乱れや刃先角の不一致を揃える意識であれば、自然と平面が出てくるでしょう。

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此方は初期刃付けの面が中央に半分程残っていますが、小割した砥石で研ぎ目を揃えつつ当たる面を広げています。刃金の先側、半分は研ぎ肌がやや安定してきており、刃先も同様です。硬さよりも、粘りが勝っている傾向の様で、やや荒れてもタッチアップで戻り易い様に思います。

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最後は平面度合いが少し上がってきましたが、鏡面にすると未だ未だ均一な研ぎ肌になっていません。刃先の性能的には完全に安定してきており、硬さ・粘りのバランスは均等、組織の細かさも充分です。

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切り出しなどは特に平面で無くても言い、とはよく言われます。しかも使用者や鍛冶屋でも聞かれる事です。しかし段刃・糸引き・ハマグリなど、それぞれの切れ味や、切られた対象の切断面には違いが有ります。その使用感や目的に応じて選択するべき物で、条件の違う者に対して正解めいた事は言えません。自分では、目的の使用に耐える強度を確保した上で可能な限り良く切れる様にしています。ベタ研ぎで持たないならば小さな糸引き、更に駄目ならはっきりと二段に。或いは刃の通りを考えて刃先付近にハマグリを、と言った具合です。

切り刃までの鏡面は半分、自己満足ですが、残りの半分は使い勝手と味を考えての事です。食材の成分や水分が付き難く、錆や変色が少ない。更に切られた食材の鮮度や風味に対する悪影響も少なく感じます。但し満足いくまで仕上げようとすると、新品から考えれば数時間では済みません。十数時間、ヘタをすれば二~三倍でしょうか。勿論、荒い砥石から各段階、均一な研ぎ傷になるまで確実に仕上げながら進めば早いです。しかし出来るだけ研ぎ減りを少なくしようと、一段細かい砥石では傷が取れず後戻りをしたり、頻繁に確認する程、手間が掛かります。まあ、各種研磨剤や余り硬くなく、光沢を出す性能に優れた人造砥石であれば、この様な無駄とも言われそうな手間は必要無いでしょう。硬めの天然砥石なればこその面倒さですが、仕上がりの表情はやはり天然ならではの研ぎ肌で、他では代え難いです。更に同じ錆びにくさを得ようとすれば、人工的な研磨剤では1.5~2倍程度の粒度(番手・♯)を要する印象です。これはどの天然砥石でも概ねそうですが。その違いを解り、それに価値を見出す人には意味のある事だと考えています。

 

 

 

前回の修正

 

表 全体像

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表・刃部 アップ

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裏 前方画像

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表・刃先 拡大画像

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裏・刃先 拡大画像

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前回の利器材使用麺切りの研ぎ後、改善して欲しい旨、連絡がありました。曰く、①切り込みで滑る・②抵抗がある・③包丁の進む方向がばらつく・④特に刃が右に逸れていく、等でした。

上記の要因として考えられるのは、①もしも、1本目の包丁に比べてであるとすると、伝統的な鍛造品と利器材使用品の違いも有るでしょう。これまでも、良く出来た鍛造品の方が組織の細かさ・締まり方ともに優れている印象があります。そこから鋭利さや長切れも違って来易い様です。②については、研磨中に硬度に対してやや粘りが少ない感じを受けたので、1本目よりも長切れし易い小刃にしたのが影響したかも知れません。③と④に対する考察ですが、まず依頼に於いて、初期刃付けの機械研ぎの研磨痕を消す事が含まれていました。そこで、表は通常通りとし、裏は刃金を含む地金の一部(当たった部分は2.5~3.5㎝幅)を平面度合いを増しながら摺り合わせをしました。この為、それ以外の範囲と僅かとは言え厚みと、平面精度に違いが出た事は考えられます。そこで、蕎麦を切る段になって駒板の枕に包丁を押しつけて切り始めると、摺り合わせた面とそこから上の面で角度が変わり、極端に言えば刃先が「く」の字に麺帯に入る事になったのでしょう。蕎麦を仕上げる例として、1.8㎜×8枚・2㎜×8枚・1.5㎜×112枚・1.7㎜×12枚の範囲があり、それに加えて駒板の枕は28㎜との事ですから、このパターンでは、少なくとも合計約50㎜の範囲は面が一律で無いといけない計算になります。

麺切りの裏の面積は、和包丁としては最大級と思いますが、これを平面精度に気を付けながら全面摺り合わせるとなると、膨大な手間暇と費用が掛かります。ですので、初回の仕様を提案しての結果だったのですが、他に片刃和包丁が右に切り進む現象の理由はあり得ないので、今回は70㎜の範囲で摺り合わせてみました。後、気になったのは平の厚みが違う事です。数字的にはしのぎの部分で計ると、先が1.8~1.9㎜、中央が2.2~2.3㎜、元が2.0㎜ほどでした。平を整形し直すのなら、製造元の方へ依頼すべきですし、無理に切り刃だけ合わせに行くと、しのぎが崩れます。そこで、小割した砥石で切り刃の中だけをある程度揃えておきました。最後に小刃は、折角裏を整えたので、其れを活かす為に表よりも鋭角ながらも幅を狭く仕上げました。加えて、表も前回よりは鋭角にしてあります。

これで考えられる範囲、対応出来る範囲で最大限希望に添う形だと思われますが、もしもまだ不満が出る様であれば、適切な対応を取らせて頂きますとお伝えしました。

砥石についてですが、より切れ込み感が強い方が良いのかと、千枚系の砥石に同じ系統の共名倉で仕上げました。とは言え、カミソリ砥クラスに次ぐ細かく滑らかな刃先なので、使用感も何ら劣る事は無いと思います。