天然仕上げ砥石の特徴について
1:切れ味を引き出しやすい
*研磨力が適度な為、刃先に「返り」(刃返り・バリ)が大きく出にくく、研ぎ傷が消し易い。
*研磨が進むに従い、砥粒が微細になるため、仕上がりの番手を調節出来る。
2:永切れ効果
*鋼材の組織中の軟質の部分を優先的に研ぎ下ろす為、刃金表面を特に硬質の部分で
揃える事になり、実質的に対摩耗性が上がる。又、天然成分による緩やかな表面的な
腐食で硬度変化の可能性もある。
3:防錆性能
*研磨剤としての砥粒の硬度が低く、鈍角な形状の為、鋼材に深い傷を付けにくい。即ち表
面積が大きくならず、錆の発生が抑えられる。又、鏡面に近づく程錆にくくなって行く。
4:材料それぞれの研ぎ肌を表現できる
*刃金(鋼鉄)と地金(軟鉄)で構成されている刃物であれば、その硬度差により、違った仕上
がりの研ぎ肌となって現れる。人造砥石では、一律の研磨状態となるところ、素材の違いは
勿論、同じ地金の中でも刃金由来の炭素の移動による景色の違いが現れたりもする。
材料二種の硬度による違いだけでなく、刃金単体であっても「鋼材の組成、鍛造の程度焼
き入れ・焼き戻しの違い」による「硬さ・粘り・組織の細かさ」など、刃物の個性・バラツキよっ
ても研ぎ上がりが変わってくる。それは一つの天然砥石で全ての刃物を均一に仕上げられ
ないと言う事でもあるが、反面、個々の刃物に最適の砥石を探し出してやれる可能性がある
事も意味する。
研ぎ肌が綺麗である事は、只美観の為のみならず、総合的に刃物の刃先・切り刃がその鋼
材なりの良い状態(研ぎ傷が消え、精細な刃先形成による鋭利な切れ味。光の反射にムラ
が無く、表面積の小さい錆びにくい状態。)を実現できた指標ともなる。
逆から見れば、過去の経験から特定の鋼材に相性が良いと判断できる砥石群を用いて、同
一の鋼材の刃物を研いだにも関わらず、研ぎ上がりが違ったり、上手く研げなかったりする
場合、今度は刃物の素性や出来を判断する材料にもなり得ると言える。