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試しに送って貰った人造砥石

 

数か月前ですが自宅からは幾分、離れているものの地元で様々なワークショップを開催されて来た会社の方から、研ぎ講習の声をかけて頂きました。予定している来月末に向けて打ち合わせ等を進めていた所、使用する砥石に関する問題が。余りに初心者向けの安価な物では、直ぐに摩耗したり(慣れない人には)サイズが不足な印象が。

刃物店の知人に相談した所、最近の人造砥石の傾向と言うか変更点などと共に、開発中の砥石が近日仕上がるので試してみるか?との事。それが届きましたので即日、試してみました。

 

 

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水分を吸収させ(未だ不足気味でしたが)、隅々に有る若干のバリの除去・平面向上を狙い、ダイヤで摺ったらテストです。

 

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相手は普段使いに一番、活躍中でもある試し研ぎ兼用の切り出し(そう言えば此方も同じ刃物店での購入)。研ぎ前の状態ですが、通常は最終に若狭の切り落としで仕上げています。

 

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外観の印象からは、キングハイパーに近いのかと思って居ましたが中々、確りしています。どちらかと言えば面の狂いが遅い方向性を狙った設計なのでしょう。

研磨力が有る上に硬目、という事で研ぎ目は浅くは無いですが、研承の緑の1000番よりは均一で控え目。ガンガン減らしたい時は前者を選択、それ程で無ければ此方で・・・との使い方が浮かびます。

 

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奥殿の巣板の切れっ端で傷を浅く

 

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中庸の戸前系(合いさ気味?)で更に

 

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八枚の切れっ端で追い込み

 

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中山の切れっ端で仕上げ。かなり前に採って来ていた物を最近、ハツって面を付けました。

 

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充分な仕上がりでしたが、通常の状態に戻す為に若狭の切り落としで最終仕上げ。

上のテストでは、何時も通りに天然砥石で段階的に仕上げて行きましたが、予定している講習では一般人の洋包丁向けの設定ですので、人造の仕上げ砥(研承の緑3000とか6000辺り)を併用するつもりです。

一応、天然も数個は持参の予定ですが、上画像までの様に不定形だったり砥面が底面と平行で無かったりは有りませんので御安心を(笑)。自分では性能が良ければ気にせず使っていますが(特に自前の刃物)、流石に初心者が大半と合っては直方体メインの品揃えで臨みます。

 

 

 

今回の人造砥石は、平面の刃物よりも包丁の刃金の厚みを狙う意図を明確に開発されたそうですが、普遍的な使い勝手も持ち合わせていて好感が持てました。少なくとも私の手持ちの中では性格が被っている物は無く、研ぎ講習云々は置いておいても幾つか手元に・・・との思いが。

仕上げ砥を使うのが前提との事で、その部分は(一般的な製品と比べれば)割り切った設計思想とも言えますが、単独の使用でも普通の人が普通に使う分には問題とは感じないかも知れません。研ぎの最後で圧力の加減や左右の合わせは必須でしょうけれど。

ただ話によると販売用と言うよりは、自身での使用・講習用らしいので、今回の当方の予定が確定したら少量だけ譲って貰えればと考えています。

 

 

 

 

 

何時もの常連様からの御依頼、二本

 

少し前、芦屋での食事会の折りにベスパのディーラーの方から預かっていた物です。

二本共に炭素鋼、と言っても片方(下画像下側)は特殊鋼に近い青紙スーパーですね。それででしょうか、地金の方が錆に弱い様子。

 

 

研ぎ前の状態。双方、未だ切れると言える位ですが、全体に軽く摩耗して居り、何箇所かに小さな欠け・捲れが有ります。

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青紙スーパーの方、刃部アップ

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裏です

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人造の1000番二種・3000番から研ぎます。

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天然は中硬の巣板⇒中山の天井巣板超硬。以前に中山の中腹から山頂へ案内を受けた際に、サンプルとして得た物です。ほぼ奥殿の天井巣板超硬と似て居り(まあ隣の山ですし)、滑らか且つ掛かりの良い刃を付けてくれます。

おまけに返りの処理が難しいタイプの鋼材・熱処理の仕上げの刃物への最終仕上げにも向いているので便利。

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研ぎ上がり

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研ぎ後、刃部アップ

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刃先拡大画像

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牛刀の方も、人造に関しては同様。ただし、此方は刃先の厚みが若干ですが邪魔に成って来ていましたので、小刃の幅を広げつつ(その幅の中で特に右側中央~切っ先に目立った)厚みを調整。幅の先側半分で刃先へ向かってハマグリ。切っ先へ向かってテーパー状に刃先を角度調整。

天然の仕上げには、以前に採って来ていた原石(かなり昔の切り落とし)を、昨日ハツって面を付けたばかりの物。手持ちの炭素鋼のペティに対して、嘗て無い種類の刃を付けてくれたので、小さいながらも使って見ましたが大当たりでした。

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研ぎ上がり

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研ぎ後、刃部アップ

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刃先拡大画像。欠けや錆の痕跡が殆ど影響しないレベルに成った時点で研ぎを留めました。

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T様には何事によらず、御世話に成っておりますが此の度も研ぎの御依頼を頂き、有難う御座います。今後もベスパ・パソコン関係その他、御面倒をお掛けすると思いますが宜しくお願い致します。

 

 

 

 

 

五本の御依頼、最後の一本

 

でっかい三徳と言うか、三徳っぽい菜切り(やや大)と言うべきか、多数派には含まれない感じの包丁です。全体に薄い赤錆・一部に深い錆(と黒っぽい錆)が有りましたが欲を出すと大事に成りそうですので、今回は軽い作業で落ちる赤錆びのみを狙って落としました。

 

研ぎ前の状態。

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人造から研いで行きます。刃先の錆と欠け・摩耗をチェックしつつですが、当初は目立たなかった刃元の摩耗が予想外に厄介。

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中砥で傷を消して刃先を揃えます

 

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一旦、巣板まで仕上げたのですが試し切りにて、どうしても厚みが邪魔をするので(仕上げた刃先の後ろ側を)研いで行きます。特に切っ先寄りの三分の一が初期刃付けの段階からと思われますが抵抗に成っていました。

 

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再度、中硬の奥殿天井巣板で。

 

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相手を選ぶ傾向にある、奥殿敷巣板茶色際?で最終仕上げです。かなりの相性の良さを見せてくれました。

 

 

 

研ぎ上がりです。

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刃先の拡大画像。側面からは摩耗や錆の痕跡が刃線に掛かっている様に見える部分も有りますが、切れに影響しない段階までは研ぎ進めました。

 

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此れで、今回の五本は仕上がりましたので本日、御返送の運びと成りました。明日には到着との事でしたので、H様には御手元に到着の際に御確認の上、問題など有りましたら御知らせ頂きたいと思います。

此の度も研ぎの御依頼を頂きまして、有難う御座いました。今後も御役に立てる場合は宜しくお願い致します。

 

 

 

 

 

五本の御依頼、次の二本

 

刃先のみの研ぎで問題が無いと判断された、二本の和包丁です。柳と出刃ですが、切り刃の状態・刃先の状態ともに私の研ぎに若干ですが近い感じ。

紙の束への切り込み・抜けも通常は納得いくレベルでしたが、最終の刃先角度は鋼材・熱処理由来の特性から見ると、ギリギリの強度かと思われました。

あと、出刃の切っ先の欠けは知れていたのですが、双方ともに先寄りの四割程度が表側(地金側)に反っていました。八寸の出刃は厚みが厚みなので現物に合わせて研いで行き、柳の方は三分の一程度まで反りを減らして研いで行きました。

出刃は、本格的に修理すると表から鏨を入れて削っての大手術に成りますし、柳も反りを追い込むと裏の歪みに逃げられない範囲で留めました。砥石への載せ方で対応出来るレベルであれば何とか成るとも言えます。

 

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研ぎ前です。刃金部分の研ぎは、初期刃付けの痕跡と思われる角度の不均一。地金部分も幾分は厚みの不安定も有りますが、一般家庭的には許容範囲でしょうか。

 

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同じく裏。表もですが、薄っすらと錆び(少し濃い変色レベルが大半ですが)も。

 

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柳の刃部のアップ

 

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刃先の拡大

 

 

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出刃の刃部のアップ

 

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出刃の刃先の拡大

 

 

 

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人造の緑1000⇒白1000⇒3000番で刃先の形成。刃先周辺の厚みを増やさずに、先へ行く程に鈍角化。そして、切っ先へ向かって50°⇒40°⇒30°の角度変化。

 

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奥殿の中硬天井巣板で傷消しと形成の仕上げ。次に中硬の中山赤ピン。最終は、同じ中山赤ピンながら硬口の物。

 

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研ぎ後、刃部のアップ

 

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同じく、刃先の拡大

 

 

 

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出刃も、人造は同じ工程です。但し、角度変化は刃元から70°⇒50°⇒30°としています。

 

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巣板までは天然も同じですが、中山の緑板各種で相性を見て。

 

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研ぎ後の刃部アップ

 

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同じく、刃先の拡大

 

 

 

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研ぎ上がりです。切り刃全体も、奥殿の軟質天井巣板の小割りで撫でて研ぎ目を浅くしています。多少は錆対策に成るかと。

 

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裏も、研磨剤(細か目)で変色を減らして置きます。

 

 

 

H様には現在、此れで問題が無いか画像添付メールにて判断を仰いでいます。大丈夫であれば此の二本は終了となりますが、今回の二本は刃先メインの研ぎでしたので、和包丁基準では無く洋包丁基準での研ぎ料金と成ります。

それも、洋包丁基準の中でも低(1cm当たり100円+税)・中(1cm当たり200円+税)の段階。因みに柳が前者・出刃が後者です。切り刃に問題さえなければ、この様な場合も有ります。逆に、当方で切り刃を適切に砥ぎ上げて置けば、暫くは刃先を御自身で研いで維持管理も可能となります。

H様には御連絡を御待ちしつつも、最後の一本を仕上げて参りますので、今少しの御待ちを御願い致します。

 

 

 

 

 

纏めて五本の御依頼、二本分

 

さて東京のH様からの御依頼品です。先行して洋包丁の方が二本、研ぎ上がっていましたので其方から。

和包丁(柳・出刃)に関しては、初期の状態で充分な切れが確認出来ましたので、若干の心配が有る刃先の研ぎだけでも良いか?の質問をしました。併せて、上記二本の画像を添付し状態確認をしてほしい旨、メールしました。結果、和包丁は刃先のみで良いと。洋包丁の仕上がりに言及は無かったので、まあ大丈夫だったのかなと判断しました。

 

 

 

研ぎ前の状態。三徳っぽい牛刀と言うか。

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刃部のアップ。刃先に少し、厚みが出始めています。或る程度の摩耗と、そこそこの欠けも。

 

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人造から研いで行きます。刃先の2mm程度の幅から、3mm程の幅に変更して鋭角目に研ぎます。切っ先10°~刃元15°弱と云った所でしょうか、或る程度は刃先周辺が薄くなった段階で、(1mm前後幅で)先へ行く程に角度を鈍角に。

最終刃先角度は刃元⇒中間⇒切っ先へ、40°⇒30°⇒20°の変化付き。小刃の幅が左右で違っていましたので、右側優先を踏襲。

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軽く錆も落として天然へ移行。中硬の巣板から。

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中山の緑板で仕上がりました。

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研ぎ上がりです。

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次に、ペティです。此方は、殆ど新品の状態。多少、シャープナーで擦った様な痕跡は有りますが。

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人造は、前述の内容と同じ。天然に入ってからは、黒蓮華。

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中山の緑は同様ですが、僅かに硬さと細かさが上回る物。返りの出方や取れ難さへの対処が、変更の主な目的です。其の上で切れの仕上がりに不足が無ければ合格。

440系統にしては、素直な仕上げの熱処理との印象を受けます。ステンレス系統は結構な割合で、(中山なら)浅葱や並砥で仕上がる事が多いのですが。

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研ぎ上がり。小刃の範囲を極僅かに広げて、刃先側と反対側で角度変化を。抵抗の低減と、耐久の向上を図ります。切っ先へ向けての鋭角化も施しますが、視覚的には判別困難でしょう。狙い通りに仕上がりました。

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H様には此の後、錆のより多い菜切り様?の三徳でしょうか、其方に掛かりますので宜しく御願い致します。仕上がりましたら順次、出刃・柳へ進みたいと思っております。

 

 

 

 

 

節分に気紛れで

 

前回の麻婆豆腐に不満がの頃ましたので、も少しマシな物を作ろうかとボンヤリ考えていたのですが・・・行きつけのスーパーで良さそうな鰯(明太子搭載型)を見付けました。

丁度、時節柄ですし(二月四日現在でしたが)節分風に行くかなと。現在は忙しかったり製作に自信が無い場合は、海苔巻きの材料も市販の製品で殆ど揃いますから便利ですね。祖母が存命中は高野や椎茸など、全て手作りでしたので隔世の感が有ります。

 

 

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過去にも御依頼を頂いていた東京のH様から、包丁達が届いていたのですが二本を仕上げて其の合間に。

 

 

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中心迄火を入れつつも、焦がさない加減が難しいですね。しかし、嘗てもそうでしたが此の製品は、青魚の油脂に弱い私でも負担が少なく有難いです。恐らくは、鮮度か処理が違うんでしょうか。

 

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有明の一番摘みの海苔と記載の商品を選びましたが・・・薄くて千切れやすいのと水分の吸収性が高いので四苦八苦。使った事が有る海苔たちは、弾力が有って強かった物ですから取り扱いが異なりましたね。半面、風味は過去に経験した全ての物を上回り、軽やかで癖も無い仕上がりでした。

砥石館の常連さんからのもらい物の米でシャリを炊いたのですが、新米という事も有り柔らか目に。引っ付き易いのと薄い海苔で予想以上に苦戦しました。そして序でに、下画像の二種も。

 

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一番好きな鉄火とカッパ。鮪は普通の?キハダの赤身。胡瓜は、普通に切った物と、刻んで梅・紫蘇の粉末で和えて絞った物。

 

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野菜不足に気付いて、有り合わせ。菜の花の煮浸し的な。此処まで、三つの器は数年前に丸柱で手に入れた物。上画像の物は、小さな壷の製作途中で破裂したのの再利用品?ですが、もしかすると高度な計算による演出かも(右が底・左が口です)。

 

 

予想以上に手間と時間が掛かった割には、やはり此方も巻きが今一で・・・急いては事を仕損じるを地で行く結果に。この反省も、今後に生かしていきたいと思います。

 

 

 

 

 

日本剃刀の御依頼

 

埼玉のI様から、日本剃刀の研ぎの御依頼を頂きました。カミソリの系統は稀に御依頼が有るのですが・・・私にとっては得意分野・専門分野とまでは言えませんので、飽くまでも出来る範囲でと断った上で御受けしています。

 

 

 

到着時の状態。中梳きの部分が減っています。つまり、砥石に当たる面積が増加している。研ぎ難い程では無い物の、刃先を安定して砥ぎ上げる事には若干、気を遣う傾向に有ります。

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裏は逆に、当たっている面積が少な過ぎる位です。あと、刃線の両端が不定形・・・特に先端は欠けている状態。

 

 

 

研ぎの前に、軽くですが梳き直して置きます。此の手の作業にしか使わないリューターの出番です。その後は砥石の小割りや細切り、ペーパー類で。

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人造の400番から3000番まで。

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天然です。刃金に向いた中硬の巣板から。硬さの割りに、地金には優しくない(均一な研ぎ肌を現わし難い)ですが今回の役割は刃金重視ですので。

 

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少し硬さと細かさが上回る巣板。剃刀の刃先は、繊細さを重視される筆頭ですので、細かい段階分けを経て仕上げて行きます。

 

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更に上の八枚。

 

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奥殿の本巣板。

 

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最終仕上げは、中山の水浅葱系統の二つ。こんな事も在ろうかと、予て用意のレーザー用です。

やや変形している此の砥石は、初めて中山の砥石を購入する機会に選んだ砥石達の内でも、最初の物。其れも在って思い出深いのですが、綺麗な長方形の物と合わせて今回の剃刀には、可成りの相性の良さを見せてくれました。

御尻に確認できる例の判子は、かなりフランクに捺されていて愉快です。此処まで適当?なのは珍しいレベル。

 

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両者、細かさでは甲乙付け難いのですが、硬さは僅かに長方形が上。其の所為か、切れの仕上がりでも凌駕していました。やはり同質・同性能と思えても、相性の差は厳然と存在する様です。

 

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硬くて細かい砥石の代表でも有りますが・・・刃物の切れの性能は、極限までの硬さ・細かさに依拠する・階層に比例するとは限らない気がします。鋼材の組織の状態次第で、ベストと言える仕上がりに差が出るからです。

まあ、通常は其処までの追い込み方は為されないとは思いますし、煎じ詰めれば?の話しでは有ります。しかし、折角ですから対象の実力を少しでも引き出して、刃物が持ち主に惚れ直して貰える事を望んでいます。

 

 

研ぎ上がりです。

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刃先の拡大画像。返りの処理と全体の均一性に不足を感じたので、この後に何度か研ぎ直して何とか改善しました。

 

 

 

I様には今回、研ぎ依頼を頂きまして有難う御座います。到着後の御使用に於いて、問題など有りましたら調整し直したいと思いますので御知らせ下さい。

 

 

 

 

 

最近の事(食べ物編)

 

生来、食い意地が張っている訳では無いのですが(完全否定も仕切れませんが)、実家が食堂だったり自身が栄養学部だったりした事も有り幾分、料理には興味を持って来ましたので食べ物の記事も偶に有る訳です。

 

十日ほど前、(和菓子屋の旦那に付き合って貰って)日本橋にパソコン関連のパーツを買いに行った折り、ベトナム料理の店に気付きました。一週間後、現場近くに在る車のディーラーへの所用の序でに立ち寄ってみました。

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牛肉のフォー。色々と馴染みのないメニューも有ったのですが、味付けその物の特徴を知りたかったので、一般的な材料の物を選びました。

 

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同じ理由で、鶏肉の串焼きです。何れも、ハーブやスパイス数種を使って爽やかな風味で、味のベースとしては甘みが必須なのかなと。フォーの方が(牛肉使用だったからか)素材の持ち味をストレートに出している印象。

 

 

 

 

一昨日は、御世話に成っているベスパのディーラーの方から電話で御誘いが。ミラノで料理人をされている共通の知人が、帰国したので一緒に食事に来ないかと。

芦屋に在る店まで寒さに耐えつつベスパを飛ばし、懐かしい方(以前に研ぎ講習を受けて頂いた経緯も有ります)との再会と、優れた料理との出会いと成りました。

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何れも濃過ぎない味付けながら、素材の味を引き出す・飽きさせない料理ばかりで感服しました。何でも、大使公邸で仕事をされて来た料理人の方が腕を振るっているとの事で、和食の括りでありつつも?和洋折衷(だから日本料理、の枠では無いのでしょう)の良い例を見せて頂きました。

ベスパのディーラーの方には、当夜も御世話に成りました。研ぎの御依頼も頂き、併せて感謝です。懐かしい方には、今後の和包丁の講習で御待ちして居ります。

 

 

 

 

直接に関係は無いと思いますが昨日、見かけた若牛蒡を買って炊いてみました。丁度、前日に馴染みの豆腐店で田舎豆腐・田舎揚げも購入していましたので・・・その昔、祖母が作っていた(確か当時は厚揚げ仕様だったと思いますが)のを思い出しながら。

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豆腐その物は、麻婆豆腐に。余り、ミンチは使わないので豚肉の小間切れを更に細切れに。其れを冷凍していた大蒜・生姜少々と豆板醤・豆鼓醤・甜麺醤等で炒めて調味・出汁投入からの豆腐。

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ですが、此れ全部は多過ぎた様です。普段は通常の木綿を一丁でしたが、間隔が空きすぎて量の加減を忘れていました。

 

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通常の山椒以外に、少し前に買い足していた花椒も使って見ました。日本の物に比べて、より華やかな(重層的・幅広)香りですね。

 

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若干、豆腐のボリュームに負けてしまいましたが、味的には問題が無かったので良しとして置きましょう。目分量や勘で作るならば今後は、やはり定期的に作らないとと思いました。

 

 

 

 

 

市内からの御依頼、サイズ違いの洋包丁

 

大阪市内のO様から、三本の研ぎ依頼を頂きました。かなり包丁屋研ぎに拘りを御持ちなのかも知れません。同一銘柄で揃っている他、刃先周辺と刃先その物の研ぎに明確な方針を御見受けしました。

それだけに、届いた状態を踏襲するべきか悩むところも有りましたが・・・わざわざ御送り下さった事でも有りますし、今後の研ぎの参考にして頂くのも悪く無いかなと中庸を選びました。つまり、相当に薄く研がれている刃先周辺までは手を付けず、小刃の範囲だけで刃先へ行く程にキツクなる微細なハマグリ+切っ先へ向けて鋭角化を施しました。(厚みの出て来ているペティは除く)

 

 

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一部に少々の錆が有ったりしますが、(刃先周辺の角度と併せ)刃先の糸引きの幅と角度は鋭利さ重視でありつつも、(此の鋼材に見合った)耐久性も考慮されており見事です。

 

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一番、良い状態を維持していた中の牛刀の刃先。上記を証明しています。

 

 

以下に、研ぎ完了後にO様に宛てたメールの文章を一部、転載してみます。

簡単に到着時の状態などを御説明しますと、牛刀の大は刃先まで平滑で鋭利な研がれ方・糸引きの幅や角度も切れを重視。其の為に紙の束には効果的に切り込めましたが、捩った束には纏わり付かれて抜けが重かったです。

中は逆に、刃先の角度と刃先までの角度に少し差が有りました。其の為に、紙の束には手応えを感じつつも切り込め、捩った束には纏わり付かれる割合が少なかったです。

ペティに関しましては、厚みが増してきていたからでしょうか、刃先までの部分の処理に不足が有った様子。結果的に、紙の束や捩った束には苦戦する状態。
以上の内容から、其々の不足分を補う方向で研いで行きましたので、(もしも之までに研ぎ分けて居られたのならば)切れ心地に特徴が無くなったと感じられるかも知れません。しかし、私が必要と感じる性能は確保できたかと思われます。しかし、到着時の刃先角度は鋭利でありながら或る程度の永切れも満たしていて、良く考えられている刃先だったと感じました。
到着後に御使用の結果、問題など有りましたら御連絡下さい。

 

 

 

研いで行きますが、ペティ以外は厚みも無く欠けも微細なレベルでしたので、今回は人造の3000番から。

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ペティのみ、刃先までの数ミリ部分は厚みを取りつつ刃先へ向けて鋭角に。次に、最後の1mm程は刃先へ向かって鈍角に。

 

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次に、中硬の巣板で研磨痕を浅くしつつ、更に形状を整えます。

 

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最後は中山の戸前、緑板で仕上げました。

 

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大の牛刀は、刃先のみの研ぎです。しかし小刃の範囲内(2㎜未満)でペティに準拠した内容を盛り込みます。特に、切っ先寄りの数センチは抜けの重さへの対応の為、角度変化を兼ねて厚みの調整。

 

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牛刀の中は、大よりも若干ですが小刃を鋭角化。但しバランスを取る為に刃先の鈍角化は明確に。

しかし緑板では返りの出方が(大と比べて)強かったので、中山戸前の黄緑で。結果は返りも小さく緻密な刃先に。

 

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しかし、(大と比べて)切れが僅かに重かったので中山の合いさっぽい物で最終仕上げ。此れで大と中の差を埋められたかと。

 

 

 

研ぎ上がりです

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牛刀の大、刃先拡大画像

 

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牛刀の中、刃先拡大画像

 

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ペティの刃先拡大画像

 

 

 

O様には此の度、三本の包丁を御送り頂き有難う御座いました。御好みの切れ加減に成っていましたら幸いですが、御使用に於いて問題などが有りましたら調整し直したいと思いますので、御遠慮なく御知らせ下さい。今後も、私で御役に立てる場合は宜しくお願い致します。

 

 

 

 

 

北海道の常連様からの御依頼、三本目

 

T様からの包丁、三本目は司作の出刃、流水飛紋です。

御自身で軽く研いで見たものの、狙い通りの仕上がりに成らなかったとかでしたか・・・刃先の状態は殆ど問題無かったのですが(裏押しとの整合性は少し不足気味?)、切り刃の角度の最適化・厚みのテーパー状の変化は要改善でした。

 

 

研ぎ前の状態

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結構、良く纏っている様にも見えます。実際、刃先その物の切れ・刃先から数ミリの範囲での切れ込みは、マズマズ。

しかし切り刃は、切っ先から5cm・10cmの辺りに凸部が。又、初期刃付けからの傾向か、切り刃の角度自体が少し鈍角気味。加えて切っ先へ向けての角度・厚みのテーパーが不足。

其の辺りを改善しつつも、外観が大幅に変更に成らない様に仕上げて行きました。刃金部分近辺は、何時もの刃先へ向かって二次曲線的に鈍角になって行くハマグリ(切っ先へ向かって可変鋭角)です。

 

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裏押しは、もう少し追い込むと揃って来そう。

 

 

 

人造の400・1000の二種・3000番で均して行きます。

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人造の小割りで、微調整。此の作業は、後に何度も必要に成る工程でした。

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天然に移行し、中硬の巣板で。

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最終仕上げで、中山のコッパ二種を試します。結果、緑よりも黄色の方が相性的に優れて居り、万全の仕上がりに。

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研ぎ上がりです。

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研ぎ乍ら、何度も切れ加減をテストした甲斐があり?、切り刃の外観は初期と比べても著変無しに。複雑な計算を盛り込み、刃先の変更と合わせ、切れ込み・抜け共に性能的には大幅改善なのですが・・・(笑)。

 

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刃金部分では、何時も通りに刃先へ向かうに従って角度が急に(砥ぎ目の幅が狭く)成っていますね。

 

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拡大しても同様。刃元~切っ先まで、柳の50度➡40度➡30度に対して70度➡50度➡30度と成っていますので、角度変化が顕著に。

 

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裏も、切っ先周辺の数ミリ以外の部分は裏押しが整いました。

 

 

 

T様には、今回も大事な包丁達を御任せ下さり、有難う御座いました。仕上がりに関しては、メールでもOKを頂きましたので明日にも御返送の予定です。

いつも研ぎの御依頼、有難う御座います。今回は、奥殿天井巣板の小割り三種の内、二種を多用しましたが御自身での御手入れ用に、幾つかの小割りを同梱しておきますので、お役立て頂けましたら幸いです。