先週の砥石館イベント

 

先週末は、亀岡にある天然砥石館のイベントに参加していました。イベントは土曜と日曜に渡っていて、肥後守を刀剣風に仕上げる一日目、砥石の目利き講座とハマグリ研ぎ講習の二日目でしたが、その内容の全てに申し込まれている方も居られ、その熱意に驚かされました。

 

 

(館内には新し設えも増えていました。)

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一日目の肥後守の研ぎからですが、意外と研ぎ自体が初めてと言う方もいらっしゃったので適宜、説明や形状の修正も加えながら進んで行きました。

基本的には人造の400番あたりからのスタートで、次に1000番を経て青砥、中硬の巣板(相当の合砥)の順に移行します。

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青砥も個体ごとに個性が有る為、相応に使い勝手も異なり、幾分は手こずる場面も。硬さ・泥の出方・滑走の程度がマチマチで、目的に応じて選択出来たりを楽しめるとも言えますが。

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最後は巣板です。

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仕上げに、天井巣板(奥殿産)の小割りを用いて、化粧研ぎです。より、地金部分の曇りを強調したり、研ぎ目を細かく揃えて綺麗に。

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二日目の前半の砥石の目利き講座ですが、事前の打ち合わせで私の砥石選びに於ける、選別の基準となる見解を砥石館側と共有しました。イベント進行用の簡易な分類表を作る場面から、白熱した議論も交えつつ大枠での指標が完成。

 

現館長と前館長も熱が入る打ち合わせ時の画像

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当日は、田中館長の仕入れた砥石と、下画像の私が持ち込んだ砥石を三つの分類に分けて並べました。其々、イメージが伝わり易い様に簡略に、サラサラ・スベスベ・ツルツルと呼んでいます。

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私自身が普段使っている砥石から、三つの代表的な物を俎上に上げて研ぎ跡を観察し、確認して貰う手筈だったのですが。地金が過敏に反応して研ぎ斑が出易いタイプ・少し敏感なタイプ・敏感で無いタイプの切り出しを用意し、その過敏な切り出しと難渋しそうな砥石達との組み合わせで挑んだにも関わらず、何れも問題無く仕上がってしまいました(笑)。

砥石選別に影響する要素の一つに上げていた、「研ぎ手の技量」が悪い方?に作用した形でしたが、参加者のY様の砥石が登場したので御本人の刳り小刀を試し研ぎ。見事、砥ぎ難いと言われた当該砥石で問題無く仕上げられ、申し訳無いですが持ち主との研ぎ上がりの差で御理解いただけたと思います。

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面白かったのは、と言うより新たな気付きを与えて貰う出来事も有りました。上記のY様(地元の生産者の自家消費分っぽい物や、鰹節の部位別などの御土産も御持参でした)が、御自身のポータブル顕微鏡で砥面を覗くと、私が分類した三種に一定の差が見られると教えてくれました。

自分では、指先の感覚で相当にハッキリ触知できる事・過去に見た拡大画像(低倍率のルーペ・200倍相当のモバイル顕微鏡)では余り判然としなかった事から、選別時に目視を重視して来ませんでした。けれど、今回は100倍前後の倍率が最適だった様で、砥粒の集まりの密と粗・先端の尖り具合・高低差が、かなり明瞭に比較できました。

そのポータブル顕微鏡ですか?勿論、帰宅後にAmazonから購入しました(笑)。御本人は以前、とても格安で購入との事でしたが、当日に複数人が検索・購入したからか相当、価格が上がって居ましたが・・・其れでも安価でしたので予備を含めて二つ。

 

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本体にはLED内蔵ですが、スマホのカメラを通すと白く飛ぶ為、側面から別の光源を当てて撮影しました。肉眼では、内臓の光源との相性が良いのか観察し易くて便利です。

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二日目の後半、ハマグリ研ぎ講習でも、Y様の装備が活躍しました。元々、砥石館で用意されていた、XYZ軸からの角度変化の其々を、リアルタイムでパソコン画面上に表示出来る機材の後継機種の様でした。

他の方は、砥石館の物を使って御自身の手振れのチェックに挑まれたり。

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中には、プラスチック素材に鉋を掛ける作業をされて居る方も。切れと永切れの両立を図りたいとの事で御参加でした。

此方には、(切れ優先の本体のハマグリは措いて置き)刃先ハマグリとしての多段研ぎ、つまり最先端へ向かうに連れて急激に鈍角に、且つ面積を狭く研ぎ進める研ぎ方を試して頂きました。

研ぎ上げた鉋の刃先を拡大してみれば、正に言葉通りの仕上がりに成って居り、驚きました。言われて直ぐに実現可能な難易度では無いと思って居ましたので(笑)。しかし同時に、安定した研ぎが出来る方にとっては、理屈通りに操作すれば別段、不思議では無いだろうとも。

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流石に、普段に相手にしている素材は御持参では無かった為、代替として檜の肌を確認されると、過去に例の無い位に鈍角に研いだ差は気にも関わらず、マズマズの艶を保っていた様子で、効果を実感して頂けたと思われます。

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あと、各種包丁類で切れのテストには新聞の束や、其れを捩った物・サランラップの芯を用いて確認しました。

どんどん手強い対象を相手にして行くと、抜けの軽さが重要に成って来るので、刃先の処理だけでは足りず、刃体本体の仕立ても問われる事に成るのが分かって頂けたと思います。

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土・日の各イベントに御参加下さった皆様には、有難う御座いました。

あと、今回は参加されないと認識していたのですが、直前に御参加を決定されて当日に対面を果たしたM様には、別れ際に失礼しました。意識から若干、離れてしまって居たので「出来上がったら連絡を」との御言葉に対して咄嗟に「先輩からは四月中に完成の予定との文面が」と答え損なってしまいました。そんな訳で、もう暫しの御待ちを御願い致します。

 

 

 

 

 

最近の事(近所の方への研ぎ講習や御返送の柳)

 

手伝い先の方(一応、担当部署は隣ですが御一緒する事も)の包丁を、仕事場で名刺大の砥石にて簡単に刃先調整した所、その性能から興味を持たれた様子で・・・早速、研ぎ講習を依頼されました。

砥石での研ぎは初めてとの事でしたので、完全に壱からの説明と動作の見本を示し、試し切りで切れを確認しつつ、その結果を拡大画像から推測する流れで進めました。

御持参の18cmと21cmの牛刀で其々、紙一枚・紙の束・捩った紙の束・サランラップの芯も使い、切れと切れの軽さを比較しつつ、320番⇒1000番⇒対馬⇒丸尾山の巣板⇒中山の順で仕上げました。勿論、各工程で私が研ぎ直しを加えながら。

取り敢えず、切れと永切れ・抵抗の低減を企図して、初期状態の小刃より少し鋭角に研ぎ直し。その後、刃先に鈍角目の糸引きを入れ、逆に小刃の開始部分の凸部に対しては、鋭角目に(寝かせて)砥石を当てて貰いました。

 

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工程を経る毎に、切れの滑らかさと鋭利さが増すだけでなく、抜けや走りの軽さ(側面抵抗の低減)を実感して貰えました。此の先も、自主練で研ぎの向上を目指して頂ければと思います。

 

 

 

 

後、先日に研ぎ上げて御返送済みの柳に付いてですが、結果を知る事が出来ました。現地に集まった其々、研ぎ済みの包丁(同一鍛冶屋・同一寸法での比較も有った由、レギュレーション?)による対決で、優秀な成績だったと。

と言っても、他の殆どはベタに糸引きだったそうですので、二種類のハマグリ(+切っ先への角度変化)を盛り込んだ私の研ぎ方は、もしかすると反則と言うかレギュレーション違反に問われる可能性も(笑)。まあ当然、現実には制限など有る訳も無いのですが。

しかし此れは、例えばボクシングや柔道のテクニックのみで総合格闘技の大会に出場するが如きで、客観的に不利と言わざるを得ないでしょう。評価が「切れ・永切れ・掛かり・走り・抜け」の各項目を問われる内容であるなら、ベタ研ぎ乃至はベタに糸引きでは刃先の強度に不安が出たり、段差による抵抗・側面抵抗の不可避が付き纏うからです。まあ仮に、世間一般でハマグリと認識される研ぎ方であっても、効果的な形状や計算通りの角度変化で無ければ、期待外れと成りますが。

従って今回、私の研ぎが他の全てと一線を画す評価に成ったとしても殊更、驚くに値しない事に成ります。審査項目に最も合致した方法論が、其の儘の結果に結び付いたに過ぎないからです。しかし乍ら巷間、特に最近に散見される尤もらしい言説、「ハマグリ研ぎにはデメリットが多い」に与する方々には、再検討を願いたい所です。少なくとも、何処の誰のハマグリ研ぎも同じでは無い、と言う当然の事実から目を背ける事無く向き合って頂けましたら幸甚です。(因みに大阪サミットでしたか、あれが有った際にも同様の試し切りが行われたそうですが、今回と同様の結果だったと聞き及んでいます)

 

ハマグリはロマン???私にとっては、実用一点張りですね。

 

 

 

 

現在、ホームページ不調の為、御面倒を御掛けして居ります。研ぎの御依頼・御問い合わせの方は、下記のアドレスから御願い致します。

togiyamurakami@gmail.com

 

 

 

 

 

北海道の料理人の方からの御依頼

 

北海道のS様の御知り合いの、料理人の方から研ぎの御依頼を頂きました。本焼きの柳ですが、平に装飾の彫刻が入って居ます。

裏も表も鏡面で、平の装飾・凝った柄と合わせて非常に綺麗ですね。ただ形状としては若干、奔放さも有りまして(笑)。裏を平面上に当てると、中央部分が接地しても切っ先側の6~8cmと刃元の3~4cmが浮き気味でした。加えて、軽くプロペラ状の捻じれも。

其の所為で、特に刃元の裏押しが進まず(裏押しの先端が又、角度を付けた糸引き状でも有りましたので余計に)考えた末に、刃元以外の裏押し部分を削り落とし(切り刃幅を狭め)、刃元の裏押しを基準に他の部分を作り直しました。

途中、矯め木なども用いて刃体の浮き上がりを軽減しつつ上記内容を進めましたが、他にも切り刃自体の不均等にも対処が必要でした。長軸方向で先側半分が凸面、元側半分が凹面傾向で、その接続部分が最も厚みが残存している状態でした。

つまり切っ先側に厚みを抜くには、薄目に成って居る元側の厚みよりも、中央の最も厚い部分を薄くしなければ成りません。しかし、盲目的に其れを行なうと切っ先付近に近付く程にペラペラに成ってしまいます。

常識的な範囲で、先側に必要とされる厚みから逆算し、中央部の厚みを減らしました(元側の薄さとの兼ね合いも勘案しつつ)。

 

 

 

研ぎ前の状態

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研ぎ始めは320番からです。元側の厚みが薄い上に、ホロー気味なのが分かりますね。(元側の切り刃幅の中央部分に溝状に)

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1000番と3000番で精度を上げつつ傷を浅く。

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当たりのソフトな1000番で、更に傷を浅く。

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天然に移行し、対馬です。

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余りに裏が揃わないので、珍しく焼結ダイヤの二種で追い込んで見ようかと(笑)。

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其れでも不十分でしたので、遣り取りを通じて大胆に削ってくれても構わない、との御意向を受けて(そうは言っても貧乏性なので最低限に済ませる意識は持ちつつ)刃元以外の裏押し部分を研ぎ落とす事に。

改めて320番の後、研磨力の強い1000番の二種で切り刃幅を狭めると共に凸部を減らし、出来るだけ凹面も均しつつ、境界部分の破綻も起こらない様にバランスを取りました。

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再度、対馬を経て丸尾山の巣板、中硬の各種形状の物で仕上げ研ぎ。この後、敷き内曇りと白巣板蓮華も用いて追い巣板。

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中山の巣板層、何故か並砥や戸前っぽい各種、硬口の物で最終仕上げです

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研ぎ上がりです。

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刃部のアップ

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凹面だった箇所は、削りシロが少ない為、研磨痕の残存も多目です。

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刃先拡大画像

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此の度は、M様には研ぎの御依頼を頂きまして有り難う御座います。御仕事場では、各所から研がせた包丁が複数、集まって居るそうですので羨ましい限りです。使い比べると大変、勉強に成りそうですが・・・私以外は名の通った諸賢(大阪二か所・三重・埼玉・神奈川・動画勢その他)の手に成る物だそうですので、末席に加わるのでさえ野良の雑種としては、身に余る事で恐縮です。

まあ以前にも、似た状況での比較の際(S様へ御返送した柳)、私の研ぎで余り問題が無かったと側聞していますので、今回の個体の調整が首尾よく仕上がってさえ居れば、また大きな御不満を抱かせずに済むのではと願って居ります。

 

 

 

 

 

名古屋のM様が、再度の研ぎ講習に

 

砥石館でのハマグリ研ぎイベントに御参加下さった後、私の自宅にて研ぎ講習を受けられたM様が、再び研ぎ講習に御出で下さいました。

事前のメールにて今回は、私が行なっている複合的なハマグリ研ぎの内、切れ優先のハマグリに御興味が有るとの由。そこで、先ずは切り刃自体に切れ優先を施した後、永切れ目的の鈍角化ハマグリを加える事無く、其の儘の性能を体験して頂きました。

とは言え、ほんの僅かに刃先の角度は起こして居ますが、初期刃付けの切り刃と大差ない状態から。明確に効果の判定をする為には、強靭さを持つ物が相応しいので今回は、サランラップの芯を選びました。鈍角化が殆ど為されていない刃先は、食い込む一瞬こそ確かに鋭く切り進むものの、其処から先は進行を阻むに充分な重さを感じられました。

これは刃先から切り刃の終わり迄、一定角度の(ほぼ)平面が続く為、刃が進む程に切り込んだ対象からの摩擦による側面抵抗が増すばかりと成るからです。其の上、刃先最先端は大き目の捲れが複数、発生していました。

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次に、刃先の角度を更に5度ほど鈍角に研ぎ直し、同様に試して貰いました。予想されていたよりも、刃先の切れが鈍る感触は少なく、逆に切り込む際の抵抗は僅かに軽減している事を実感された様子。刃先の捲れの程度も半減していました。

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更に、もう一段階だけ5度ほど鈍角化してみると、(浅く削るのでは無く)深く切り込もうとすれば、多少は意図的に刃体を起こす必要は有るものの、切れの重さは相当に軽減され、刃先の損耗は殆ど見られなく成りました。

下画像の切断面の艶が物語る様に、初期刃付けの角度から10度以上の鈍角化を施しても、充分な切れが得られて居ます。柔弱な対象では、刃体が受ける抵抗が小さく、刃先角度の違いに因る効果の差が判然としないので一見、ベタに研いだ鋭角な刃こそが最も抵抗が小さく、対象に負担を与えないかに見えるかも知れませんが、この結果から見ると何処まで其れが真実なのか疑問も感じます。切断する際に使用者の負担が少ないなら、切断されている側の負担も少ないのでは?と。

因みに、私が良くイメージを伝えるのに使うのは、大小の傘の組み合わせです。大きな傘(ベースの切り刃)を小さく開いて、その上に小さな傘をフルに開いて翳せば、大きな傘に雨が掛かるの(刃が切り進む際に対象から受ける抵抗)を大幅に低減してくれると言う物です。

切り刃に小刃を付ける場合でも、ベースの切り刃の角度より一定以上に大きな角度(私のテストでは1.5倍前後、つまり1.4~1.7倍の範囲内)で無ければ意味を成しません。其れ以下では明確な効果が薄れ、其れ以上では切れ自体が別物に成る傾向に在ります。

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御持参の包丁でも研ぎと試し切りをして頂きましたが概ね、ナイフでの実験結果を後押しする格好に成り、私が刃先にも鈍角化のハマグリを施す理由に納得して頂けた模様。

最終的には、薄物に仕立てられた牛刀(焼き入れも特別に硬い訳では無い)の刃先でも、切れと永切れの両立を狙った仕様の研ぎで、サランラップの芯に対応でき始めていたので良かったです。

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あと、下画像の砥石も御買い上げに。元々の御希望であった水浅葱は大判(60型2本分)しか無かったので、其れを分割して貰ってから御送りする予定にしました。色合い的には浅葱系統にも見える此の砥石なのですが、中硬~やや硬口の質でした。しかし御手持ちの中に少ない其の性質が、逆に御気に召したそうで。

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御土産も頂きましたので後日、有り難く食べたいと思います。多少は各地の御菓子も見聞きしている心算でしたが、まだまだ知らない品が有るんですね(笑)。

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数日後、田中砥石にて大判の水浅葱を3分割して貰って来ました。訪問前に依頼していた、相岩谷の在庫も見せて貰え、中硬メインで2つ、選別して来ました。

 

元々、底面が一定では無く厚みも差が有りましたので、出来上がりも若干ですが個体差が。現状、現れている砥面での比較に限れば、右端の物が僅かにキメ細かく均一かなと。減って来れば又、変わって来るでしょうから入れ替わりも出そうですが。ただ、何故か他より幅が狭いですね(笑)。

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相岩谷は、ほぼ同寸ですが色味が異なります。強いて言うなら、左の方が柔らか目で泥も出そうです。

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対馬の名倉も追加で。戯れに、手近に有った箱も付けてくれましたが何となく、判も相俟って焼き物っぽい印象に成りましたね。

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日本でも、凡そ十年後には量子コンピューター、十五年後には核融合炉が稼働しそうな情勢に成っているにも関わらず、鎌倉時代から珍重されて来た自然の石(中山を始めとする高雄の砥石)が未だに活躍の場が有るのが面白いですね。勿論、その他の仕上げ砥・中砥・荒砥の天然も含めて。

科学の力で、性能を再現して代替品を造るとなると、採算度外視にせざるを得ないので、コスト面から市場に出せないのが大きいのでしょうけど。

 

 

 

 

M様には此の度も、遠くからの研ぎ講習受講、有り難う御座いました。11時間の講習は最長記録タイでした。以前の13時間の方は、最後の2時間がマクドナルドでのインタビューと成りましたので、純粋に自宅での滞在時間としては、と言う意味で(笑)。

水浅葱に付きましては、厚目の物をとの御要望でしたので、最も薄い物を除いた何れかを御送りする事に成ると思いますので、宜しく御願い致します。

 

 

 

 

 

北海道のT様から本焼きの御依頼

 

北海道のT様から、二本の本焼きを送って頂きました。柳と先丸タコ引きですが双方、いつもの御希望の仕様変更の他に、裏押しに付いての記載が有りました。

裏押しの幅が広がった部分が有るので、其処は狭められるだろうか?そして全体的に狭めて欲しいと。柳は、山脇刃物の物だそうですが、其処では裏に砥石の傷を付けない方針だったという事で、御自身で裏押しをしてみた所で御依頼と成りました。

 

 

 

初期段階で明確な小刃が付いている以外は、表(切り刃)の状態としては特筆すべき点は無さそうです。余分な凹凸も少ない、均等な研削が施されている印象です。

ただ、小刃の広い部分を狭めるには、(新品段階で裏を作り変えると言う非現実的な方法は論外ですので。しかも見事な鏡面でも有りますし)切り刃を研いで刃幅を狭める(必要であれば鎬筋を上げる)しか有りません。

最も気に成る裏押しの幅広の部分は、切っ先カーブ付近でしたが幸い?デザイン的に其の辺りの切り刃が広く取られて居た(幅として削りシロが多い)ものですから、切り刃の他の部分との整合性が崩れない範囲で処理できそうでした。

 

研ぎ前の状態

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研ぎ始めは、人造の320番ですが此の時点から、裏面には養生テープを張って居ます。裏の鏡面を傷付けない様にとの御要望なので人造、特に荒い段階では最もリスクが高いからです。

研ぎが進むに従って、端から砥泥が蓄積し続けるだけで金属には浅い傷に成り得ますので、頻繁な洗浄も心掛けます。

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研削痕の浅い1000番・3000番で320番の傷を消して行きます。

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次に、当たりのソフトな(変形しやすい事にも繋がりますが)1000番で、均し研ぎです。

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流石に、荒砥を用いて刃先を減らし続けて来ましたので(相応に返りが発生しますので)裏押しも挟む必要が有ります。しかし、養生テープを剥がすと薄っすら変色が。

養生テープの端の、刃体との段差部分に水分が溜まっての事でしたが、変色と言っても軽い錆では有りますので確実に落とさねば成長する可能性が高いです。

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先ずは、対馬砥石で中仕上げをするに当たって、其の泥(荒過ぎず細か過ぎず)をも有効活用し、錆の除去を試みました。

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著変が無かった為、目の細かいダイヤモンドペースト各種で細かい順に試し、効果が有った所から逆に戻って仕上げました。

除去には成功しましたが仮にも錆びでしたので、極微細な痕跡は残存してしまい恐縮です。しかし、短時間で機械的に作業するよりも手間暇を要するので、傷を避けるか錆を避けるかの二択を迫られるとも言え、悩ましい所です。

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天然に移行し、丸尾山の中硬の巣板各種で仕上げ研ぎです。

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次いで中山の巣板(若干戸前っぽくも有る)やや硬口で最終仕上げを狙って見ます。

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切れは充分乍ら、切り刃の斑が僅かに気に成ったので、近い種類ながら少しずつ性格の異なる小さ目で、グラデーションの使い勝手を活かしつつ研ぎ目を揃えました。

ただ、相性の良さに気を良くして此処まで進んで来ましたが、そもそもの仕上がりの御希望は曇り方向だったのを思い出しました(笑)。しかし、まあ一応は現状を御覧頂き判断は其の時に御願いしようと保留に。

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どうしても、返りの処理の(恐らく気の所為レベル)不均等が気に成り、刃先と裏押しに軽く水浅葱も当てて置きました。

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研ぎ上がり、全体画像です。

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切り刃のアップ

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刃先拡大画像

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裏押しは、ほぼ狙い通りの仕上がりに近いと思われます。

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先丸の方は、裏押し関連の御希望以外にも、刀で言う所の帽子の部分でも切れる様にして欲しいと。そして出来れば、他の裏押し部分と同一角度で押せる様に出来ないかと。

 

研ぎ前の状態

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研ぎ始めは、人造320番から。研ぎ始めると明確に成る点が二つ見つかりました。切り刃の切っ先側の半分は刃幅の中央が凸で、刃元側の半分は刃幅の中央がホローに成って居ます(厚さも後ろ側ほど少ない)。

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切っ先手前の部分も切れる様に・・・と研ぎ始めましたが此方も、横手筋の手前部分がホローの二重に。余り追い込むと帽子部分との厚みの段差が出来てしまいますし、もしも薄くした部分に合わせて切っ先まで漸次、薄くすれば帽子部分がペラペラに成る為、御互いがソコソコでバランスが取れる兼ね合いを探ります。

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先側半分は基本的に、凸部を減らしつつ刃先へ向けて放物線的なハマグリに研げば良い訳ですが、1000番・3000番で傷消しに取り掛かると、刃元側の切り刃の不均一さが比較に因り更に目立ちますね。

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小割りの人造各種で、此れ以上は最低限しか減らしたく無いと思いつつ、均し研ぎを試みました。

すると、刃元寄りの部分の特に深い凹部がハッキリしただけで無く、鎬筋の中央部すぐ下にも凹部が確認出来ました。

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改めて、当たりのソフトな1000番で均し研ぎです。

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対馬砥石で中仕上げです。何とか、切り刃の凹凸を軽減しつつ厚みのテーパーを形成して行きます。

切っ先寄りの半分は、先側より元側を薄くするべき乍ら、刃元寄りの半分はホローを均す為に薄くする必要上、其の儘では境界部の段差がキツク成ります。

其の部分も含めて破綻しない様、御互いのバランスが取れる範囲で歩み寄らせるしか有りません。その意味では、厚みのテーパーを補助してくれる角度のテーパー(刃元から切っ先方向へ鋭角化)が役立ちます。

更に加えて、裏押しの幅の広い部分を狭め、均一に近付ける目標も有ります。今回の個体では、刃元と切っ先カーブ付近が幅広でしたので、先丸タコ引きのデザインを活かし(通常、刃線・鎬筋・峰のラインが平行に近いカーブを描く)、初期状態より刃線をカーブさせつつ削る事で、刃元付近の刃幅を狭めました。

結果的に此の操作も、刃先部分の厚みを増す事に繋がりテーパーを整形するのに貢献してくれました。ただ、切っ先カーブ付近の刃幅はデザイン上、帽子が小さく成ったり(其れに対応するには鎬筋を上げざるを得ず、そうなれば鎬筋のカーブの比率が乱れます)しますので、或る程度までで控えました。

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丸尾山の敷き内曇り、軟口で均し研ぎです。

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馬路の中硬の巣板で、更に形状を整えます。

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丸尾山の白巣板・大平の蓮華巣板で、もう一押し。

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丸尾山の白巣板、やや軟口で傷消しです。

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赤ピンの中硬で仕上げ研ぎ。

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曇り方向での仕上がりを御希望でしたので、丸尾山の白巣板巣無し(研磨力と仕上がりが異なる)で最終仕上げです。

砥石の不定形な形状を活かし、凹面が残る切り刃の部分にも、余り鋼の減りを助長しない範囲で積極的に当てに行きました。

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切れを確保する為と、裏押しの精度を上げる目的で、水浅葱で刃先と裏を仕上げました。

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研ぎ上がり、全体画像

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刃先拡大画像(刃元の少し先)

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同じく鎬筋の中央

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切っ先付近

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刃先拡大画像

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T様には、いつも御用命を頂きまして、有り難う御座います。私の拙い技術と、砥石を始めとする限られた道具類ですがフルに活用し、可能な範囲で御要望に沿える様、務めて居りますが止むを得ず不足が出る場面も予想されます。その折りは御容赦を願えましたら幸いです。

御手元に到着後、もしも切れに関する問題など有りましたら、御連絡を頂けます様、御願い致します。今後も私で御役に立てる場合は、宜しく御願い致します。

 

 

 

 

現在、ホームページ不調の為、御面倒を御掛けして居ります。研ぎの御依頼・御問い合わせの方は、下記のアドレスから御願い致します。

togiyamurakami@gmail.com

 

 

 

 

 

最近の事(砥石館イベントの御知らせ)

 

来月の下旬、亀岡にある天然砥石館で、イベントが行われる予定です。二日間で三種類を楽しめる(一種類は二回)盛り沢山な内容で、聞いた時は私も驚きました(笑)。

過去にも開催された実績の有る、肥後守の研ぎとハマグリ研ぎ講習の他に、今回は砥石の目利き(選別の基準)に触れる講座も含まれます。

 

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また少し前に、田中砥石店へ出掛けて来ました。理由は二つで、上掲のイベント(砥石の目利き講座)に関連し、私の選別した砥石群を展示即売用に準備する為です。殆どがコッパになると考えて居ますが、砥石館の田中館長が用意する中には少し、立派な物も含まれるかも知れません。

もう一つの理由は、三月の上旬に個人的に当方で研ぎ講習を希望されているM様から、砥石に付いても御要望を承ったからです。仕事場で使える水浅葱と、他にも何か有ったら・・・との事で。

M様は以前に砥石館で行なわれた、第一回目のハマグリ研ぎ講習に参加された後、私の自宅での講習をも受けて頂いた経緯が有ります。そして昨年末に、再び研ぎ講習をとメールを頂いて居たのですが今年、内々に砥石館での第二回を打診された事を御伝えした所、やはり「多人数よりも個人的に」との御意向を尊重しました。余談ですが、従って今月末に掛けては普段サボり続けている、身の回りの整理整頓は避けられない見通しと成って居ます。

 

 

持ち帰った分ですが此方は、殆どが前々回までに取り置きして頂いて居た物です。水浅葱(二年くらい前に採掘の分を発見)から巣板っぽいの・戸前っぽいの迄、様々です。

この水浅葱は恐らく、当時に持ち帰る途中で買いたいと申し出が有って御買い上げに成った、砥石館の常連かつ手伝いに活躍中のY様の水浅葱の、片割れと思われます。面白いので今度、御会いした時にでも渡そうかと。殆ど全く、同一と言って良い天然砥石を持つ事は、中々に難しいので。

前回の選別前には、M様の要望に適う水浅葱の注文をしていたのですが其れは、また改めてと成ってしまいました。ですので、明日(もう今日ですが)の全別では、私の予備も含めて2~3個を持ち帰る事が出来ればと期待しています。

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此方は、一~二年前から自宅で保管していた(まさかの時用の?)販売予定の在庫の分です。

M様の御要望には少し薄いので、(ここ最近での選別分が充足するか如何ですが)北海道のS様に送る分に成るかも知れません。

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下画像は、最近に採掘の巣板層だそうですが、此処までハッキリと蓮華が出たのは初めてらしいです。此れは村上が持っていて欲しいと言う事で、他の物と一緒に。

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砥面を直し、試し研ぎした所、蓮華部分は結構なジャジャ馬で。もう少し減って来ると安定するかも知れませんが、筋など難の有る所も極端に邪魔には成らず、其れ以外の部分は相応に扱い易くて充分な性能でした。

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下画像も、二~三年くらいは取り置きボックスに入れっ放し立った物で、相岩谷の中硬・やや軟口です。

私は超硬口から軟口まで使うのですが、中硬から軟口の砥石は減りが速い為、多めに確保して置きたい種類と成って居ます。従って、立派な箱も探し出して付けて貰ったにも関わらず、販売用にした物かどうか悩み処では有りますね。今後も相当数の当該種類が頻出するなら話は別なのですが(笑)。

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おまけは、田中さんがサンプル的に製造した人造だそうで、天然砥石の粉末を混入した砥石です。特に左側は、黄板の粉が使われて居るそうです。此の先、何かの機会に試してみるのが楽しみです。

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あと、しばらく前に頼んでいた味方屋作の三層利器材(ステンレスで炭素鋼を挟んだ鋼材を鍛造した物)の三徳が届きました。

思い出したかの様に、偶に問い合わせを頂くのですが、司作だけでなく昨今は味方屋作の方も普段、注文してから長期間の待ち時間を要するので、最低限の在庫として用意しました。

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一般家庭向け御薦め包丁の研究

 

以前から時々、家庭用の包丁を購入するなら、どんな物を買うのが良いのか?との質問を、ネット上のやり取りよりも特に対面した方々から頂く事が有りました。

しかし実際の御家庭で、使用される肉や野菜・魚の比率が不明だったり、包丁の扱えるレベルや研ぎの選択(自宅で御自身・家人任せ・研ぎ屋利用)、研ぎ用具の選択(砥石・簡易研ぎ器)、俎板の素材等も関わって来る為、一概に此れと薦めるのも中々に困難でした。

其処で苦肉の策として、自宅周辺にある大き目のスーパーやホームセンターで、各種包丁類が揃っている事が多い関の孫六(貝印)から、使用用途と御好みで選んでみては?と答える事が多かったのですが・・・其れだと選択肢が多過ぎて、却って迷うとの御意見も。そう言われてしまっては、何らかの代案を考えざるを得ません。しかし無い知恵を絞って見ても、自らの経験を基に発展させる以外に思い付かず、条件に見合うのはヘンケルスかなと思い至りました。

子供時代、最初に「まともなステンレス包丁」に接したのがヘンケルス(ロストフライ)でした。恐らくは、頂き物と思われる箱入りの三徳・牛刀・ペティの三本セット。其れまでに使った事が有ったのは、合わせ(炭素鋼)の柳・出刃包丁以外、柔らかくて切れが甘いステンレス三徳のみ。何とか研げたのは人造の中砥と仕上げ砥だけで、何故か家に有った青砥・超硬口の合砥では双方、満足に研げず引け傷が入るばかりの物でした。

流石に当時は、天然砥石の個体差や品質・相性などにも考えが及ばず、天然は扱い辛いなあ・・・と感じるのみでしたが、その後に試す事に成ったヘンケルスは万全とは行かずとも、拙い研ぎにも関わらず何とか目的に適う仕上がりと成りました。切れに関しても、仕立ての薄さに因る物とばかりは思えない差を感じ、自分の中ではステンレス包丁の基準とも成る出会いでした。

硬さと粘り、研ぎ易さのバランスに優れる例としてですが、詳細に分類すれば硬さに対する粘りは、やや優って居る傾向であり其の硬さも中庸と言うには僅かに柔らか目では有りました。所有していたアメリカ製・日本製のナイフ類と比べて、体感でHRCの56前後かとの認識でした。少なくとも、58は下回るだろうと。

 

 

 

下画像は、断続的ながら30年前後、自宅(生家は食堂だったので其方に保管が長かった)で使用して来た物。錆・汚れ防止に全面を磨いて有りますが、厚み取りとしては殆ど変化を付けていません。その必要性が低い程に元々、薄目の仕立てであった為です。

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此れ迄の記事で触れていますが、通常は三徳に比べ、牛刀は厚みが薄い傾向に在ると思われますが、此の三本組みでは殆ど変化が無いですね。かなり三徳の方が刃幅は広いのですが。

製造段階で鋼材の種類を絞る狙いも有るかも知れませんが、家庭での一般的な使用者は、刃を前後に動かさず押し当てるだけの切り方が多いので、その際の切れ込みを(耐久には目を瞑って)重視している可能性も有りそうです。

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そして今回の御題ですが・・・過去に御試し用(私の研ぎ方を確認したい方へ向けて)として最廉価版と思われる、中国製のヘンケルスを研いで見た位しか近年のモデルに触れていなかった事を鑑み、現行モデルの国内生産と思われる物を主体として、幾つかテストしてみました。其の程度は把握していないと、初心者向けの包丁に対するアドバイスが無責任に成りますので。(一部、ヘンケルスの銘柄違いであるツヴィリングも比較対象に含む)

 

下画像は、当該の廉価版です。とは言え、より薄手な刃厚・柔らかい熱処理・ブレードとグリップの境界の強度は控え目、との気に成る点は有れど、切れ・研ぎ易さ(組織の細かさ+返りの取れ易さ)はマズマズの物。切れに限定すれば実用上は充分と言っても過言では無いレベルです。

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以上を踏まえて、改めて下の二本を購入。件のセーフグリップと、安定のロストフライですが、此方は食洗器にも対応の樹脂製グリップに成って居ます。昔のは、積層の木材でしたので長時間の水仕事、就中、漬け込み洗いの様な扱いをされると表面の傷みや膨張・反り、タング(中子)の錆の心配が出て来ました。

実際、私の手持ちは刃体のみならず、グリップ表面も(カシメより厚く成った部分)薄く削って有ります。因みにこの二本は、手伝い先の持ち場の方(主婦)の自宅で、耐久テストをして貰う事も兼ねて購入・研ぎを施しました。

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また、知人に頼まれてヘンケルスのHIスタイルの修理(ハンドルの分離・プレートの剥離の補修)を請け負った際、研ぎも行ないったのですが・・・研ぐ動作での操作感・試し切りの使い勝手に、やや驚いた経緯から当該系列のデザインにも興味を持ちまして、以下のモデルを購入。(其の際、同系列のデザインでの追加を考えるならツヴィリングのアークを推薦し、代理で購入も)

基本的に、オーソドックスなデザイン・シンプルなハンドル形状を好んで来ましたが、有機的な形状でも案外、使い勝手を強制・規定され過ぎる訳でも無いなと。ただ此れは、自分の手のサイズが小さ目の為スペースに余裕が出た事に因る可能性は有りますが(笑)。

ブランドとしてはツヴィリングの分類ですが、其の中ではエントリーモデルの立ち位置で、凝ったデザインのハンドルとサブゼロ処理(フリオデュア)済みのブレードながら、ロストフライに多少の上乗せの価格と成って居ます。因みに、名前はフィットですが旧型です。新型は、より牛刀(シェフナイフ?)に寄せたデザインで、シャープな感じです。

上位モデルより少し、低温度合いは譲るとは言え、サブゼロを施された刃体は確りした刃先を提供してくれます。しかし過去のロストフライとは明確な差を感じさせるものの、現行のロストフライは改善が続けられて来たからでしょうか其処まで大きな差では無いと感じる人も居そうです。

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下は、フィット・旧ロストフライ・セーフグリップ・現行ロストフライの、三徳です。同じ18cmの寸法ですが、切っ先の角度や刃幅まで殆ど同一。唯一、フィットに付いては若干、長いのですが此れは、ハンドルの先端から顎までの距離が少し、離れているからでしょうか。加えて、ハンドル自体も長目ですので、ホンの僅かに大柄に見えない事も有りません。

ロストフライ同士の比較では、ハンドルの素材が変更に成って居る所為か、樹脂製の現行品はハンドルの角が尖って居る印象です。まあ此れは、自分の手が小さいので食い込み易かったり、昔のロストフライのハンドルの角を幾分は、手入れの際に意図せず丸めている可能性も有りますが。現行品を入手した方で、同じ点が気になる様でしたら、サンドペーパーや簡易な鑢みたいな物で角を丸めても良いと思います。

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ブレードを峰から観察しても分かり難いですが、刃元から見ればセーフグリップの薄さが際立ちますね。

 

 

後は、ロストフライの中型の三徳と、其れに近かったツヴィリングのツインポルックスの小型。後者は、通常モデルに関してはハンドルが太めの設定で、確り把持したい人向けらしいですね。此の比較では、刃体形状とハンドルの太さが近いので、使い比べ安いかと。

結果は、刃の性能は近似であり、ハンドルの好みに成りそうです。ツインポルックスの方も角は立ち気味ながら、全体が緩やかなアーチで構成されて居るので、部分的に細すぎる・太すぎると感じない人には持ち易さに繋がると思われます。

私的には押し切り(ロッキングとかロコモーションとか言われる動作も含め)で入力し易いツインポルックスも良いですが・・・馴染んだ形状、かつ切っ先の向きを無意識で制御し易いロストフライとは甲乙付け難い所です。

刃厚に関してはツインポルックスの方が全体的に薄い仕立てであり、初期刃付けの違い(個体差の可能性)も相俟って、箱出しの段階から切れが良いのもアドバンテージでしょう。

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因みに、同じ三徳でもサイズの異なるフィットとツインポルックスでは切っ先の直ぐ後ろから刃幅も異なり、牛刀との違いが出て居ますね。

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最後に、ツインセルマックスも買っておきました。此方は未だ、研ぎも使用もしていませんが、鋼材はZDP189と目され、一般の市販品の包丁としては最も硬いHRC(ロックウエル硬度)と思われます。サブゼロも、フリオデュアより低温での処理となるクリオデュアと言う事です。口金(鍔)とバットキャップが金属製の為、ハンドルが他の如何なるモデルよりも重厚ですので、やや手元重心なのは勿論、全体の重量も結構な物に。硬さ故の欠けさせない扱いと、相応の砥石・研ぐ技術に加え、或る程度の体力を要求される可能性が高いです。

下は三徳モデル。

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此方は牛刀ですが、確か21cmでは無く20cmだったかと。アメリカ向けとかヨーロッパ向けでは、cmやインチでキリの良い数字に成っている事が有るので、其の所為でしょうか。出来れば日本人からすると、牛刀は21cmが欲しい所ですね(笑)。

古い18cm牛刀との比較では、長さ以外に峰の形状(ライン)も異なりますが此れは、エルゴノミクスデザインと言うかアークやフィットの流れに則った物でしょう。上の三徳でも見られましたが、より顕著に表れて居ますね。

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此処までの比較を経て、一般の方からの御質問「家庭で使うには、どの包丁が御薦めか」に対する回答を強いて挙げるなら、「キッチンの広さ・俎板の広さに合うサイズのロストフライが良いでしょう」に成ります。使用者の体格や筋力にも因りますが、普通サイズの三徳か牛刀で切る対象が野菜主体なら前者、肉・魚主体なら後者。どうしても小振りな物が良ければペティでと(中型の、小三徳も候補に上がります)

先ずは薄目のステンレスですので、無理な切り方をしなければ良く切れて錆び難い・ハンドルも含めて(私は余り推奨しませんが)食洗器にも対応している・(私は余り推奨しませんが)簡易研ぎ器シャープナーでも切れを保てる期間が長い、以上の点から御薦め出来ます。勿論、入手の利便性や品質の安定性もポイントですね。

ただ一点、牛刀は折角、刃幅が狭くて引き切りの際の側面抵抗が小さいのに、刃渡りが(刃幅の広い)三徳と同じなのが勿体ない気もします。菜切り的な、ある程度の刃元での刻み仕事を割り切って居るからには、刃渡りの長さで柔らかい対象・寸法の大きな対象に対応できればなあと欲が出てしまいます。

まあ、切っ先付近の刃幅の狭さを活かし、細々した作業を熟せるのは牛刀のメリットですが。考えように因っては、三徳とペティの二本分の仕事をしてくれるとも言えますので、包丁の扱いに成れる程に御得かも知れません。

次点で、フィットです。ハンドル形状が気に入り、その造形料とフリオデュアの手数料(性能少し向上)の分の価格を支払っても良いと言う方には、御薦めです。(ツインポルックスの小も)

もっと確りした刃体(フィットより高硬度)と、金属の鍔が付いたハンドル等、上級モデルが御望みであれば、アークと言う選択肢も有りますし、其の上にはツインセルマックスも有りますが、此処まで来ると、もう自己満足とか言われかねないレベルに成って来ますので(笑)。あと、硬い鋼材を活かした熱処理が為されて居れば、相応に研ぐ機材や道具・技術も要する訳ですので、(一度の研ぎで性能が長く続くとは言え)メンテナンスもネックに成る方が多いでしょう。(価格面も無視は出来ませんし)

 

 

 

 

個人的には、予想以上にフィットが気に入ってしまったので、色んな料理に使って見ました。先ずはミネストローネから。

カットトマトの缶詰めと、パプリカ・人参・玉葱・セロリ・ズッキーニの他、ローリエの葉・クミン・タイム・オレガノ・マジョラム・タラゴン等のホールが入って居ます。

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何度かに分けて食べた残りに、手羽元をバラした物を加え、

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骨の方は焼いてからスープを煮出し、

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シナモン・ナツメグ・クローブ・セージの粉末と各種カレー粉を混ぜ、

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チキンカレーに。

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特段、強度重視の研ぎを施していないにも関わらず、軟骨ごと鶏肉を切ったり、骨に切っ先を喰い込ませたりも交えながら大きな刃先の損耗も無く、無事に調理を終えられました。硬過ぎず柔らか過ぎず(欠け難い割には捲れも小さい性質)切れも良いフィットなら、毎回の使用後には研がずに居られない私でも、大らかに構えて普段使いが出来そうな気がしました。常に、万全の体制を維持しなくても良い、そんな良い意味で神経質に成らずに済む感覚でいられる対象は、自分にとって少数派なので有り難いです。

ブレードとハンドルの間に、赤いスペーサーが入って居たり、ハンドルエンドにツヴィリングのマークが入って居たりするのも自分の柄では無いと思いつつ、御洒落では有ります。元来は質実剛健・実用的な物を好むタイプですが、此れは此れで悪く無いと感じるのは年を取って丸くなったとか、好みのブレと言うよりも、受け入れる幅が広く成ったと思いたい所です(笑)。

 

 

 

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最近の事(牛刀くらべ?)

 

最近の事、と言っても本当は昨年の後半、或る程度の期間に亘って少しずつ興味の有った事柄を、確認したりして居ました。(7月22日の記事より随分と後)

期間が掛かったのは、なけなしの資金を少しずつ使い、サイズの違う同種の包丁を買い足していたからです。これで昔から、ぼんやりと疑問に思って居た内容を確認出来ました。

それは包丁の種類によって、サイズの違いが(シルエットは其の儘に)単なる拡大・縮小に留まらないのでは?と言う物です。和包丁(三徳・薄刃・柳・出刃など)のサイズ違いは大抵が、刃渡りが延びるに従い、切っ先付近の刃幅から刃元付近の刃幅まで、順当に広く成って居ます。

しかし例えば牛刀に関しては余り、刃長が変わっても切っ先からカーブ付近の形状に殆ど変化が見られない事が見受けられます。

 

 

下画像は、藤寅作の牛刀で18cm・21cm・24cmの三本です。元々、ダマスカス(積層地金バージョン)24cmは購入済みでしたし、その後に使い古しの三層バージョン24cmも追加していたのですが、更なる追加に踏み切りました。まあ一応、手伝い先の作業に因っては投入するかも・・・と無理に自分を納得させての蛮勇ですね(笑)。

一目瞭然で、刃渡りと刃元の幅は大きく異なるのですが。

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三本を重ねて見ると、殆どズレ無く揃います。他のメーカーも同様とは限らないでしょうが、その傾向は有りそうですね。此の辺りは、次回の記事でも触れてみる予定では有ります。

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序でに念の為、厚みの違いも確認すると、やはり長い方が厚く成って居ます。

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其れとは違い、同型の(トージローと藤寅では有りますが)24cm牛刀同士で比べると、

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マズマズ古い研ぎ減った物を、厚み抜きして使用中なので現行の新品との単純比較は無理ですが、意外と厚みの違いが有る気もします。予め、年式も違えば構造も異なるダマスカス24cmとの比較では納得できそうな物ですが、年式の違いのみで差が出る事も有るかも知れませんね。

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今回の内容は次の記事に関連する、包丁のデザインの比較の一環としての意味を持つ為、シンプル過ぎるキライは有ると思いますが、私としては積年の思い込みを払拭する良い機会に成りました。

過去から最近までの期間を掛けて購入した、寸法違いの牛刀が手元に有るだけで無く、其れなりに使い込む経験を経た故の気付きが、間違って居なかった事が確認出来たからです。

特に切っ先付近での作業時に付いてですが、柳はメーカや鍛冶による厚み・刃幅にバラツキが大きいので、良くも悪くも其れ程には使用上の違和感が有りませんでした。しかし、薄刃や出刃では寸法の違いに因り、切っ先付近の刃幅が大きく異なります。それ故、細かい作業に成るとサイズの小さい物の利点が活きるので、同一モデルでも各種のサイズを揃える価値が大きいと感じて来ました。(勿論、厚さも異なるので余計に)

しかし牛刀だけは、打ち物をするには刃幅が広い方が良いので、長めの寸法の物を選んでも、切っ先カーブから先での作業に(細かい作業に対して)支障は無く、先寄り・元寄りで使い分けられるなと。つまり自分の作業上、「引き切りに必要な長さの刃渡り」や「打ち物に必要な刃幅」のモデルを購入すれば、切っ先付近の使い勝手は不変に近い。

上記が逆にデメリットに成る可能性も有りますが(先寄りで厚みの有る対象を千切りにしたい等)、他の包丁には無い位に、適切な長さの牛刀を購入すれば扱い方を変えずに済む・使用感が大きく違わない点が特性だと改めて理解出来ました。切っ先カーブから先の、厚さ・角度・刃幅が殆ど一定であり、後ろが長く成れば其れに比例して厚く成って行くという構造が、そんな性格を形成していた訳ですね。

 

 

 

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日本剃刀の研ぎの御依頼

 

新潟県のO様から、日本剃刀を送って頂きました。数年前にも包丁の研ぎの御依頼を頂いた事が有るのですが、今回は大掃除で発見した御祖父様の御使用品だった此方を、研ぎ上げて仏壇に供えたいとの御意向で。

 

 

御依頼を頂いた際、文面と共に画像も拝見出来たのですが、改めて現物を確認した所、結構な範囲にソコソコの錆が出ていました。箱の外観から分かる通り、相当に古い物でしょうから、手入れが中断したままに長期間の経過と在っては、致し方ないでしょう。

とは言え、地金部分は兎も角、裏の刃金部分が心配だったのですが・・・表よりも状態が厳しい様に見受けられました。

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余りに警戒して、各種方法で試しながら錆取り・梳き直しを進めた為に、画像には残して居なかったのですが(笑)・・・先ずは網状の研磨シート・粗いサンドペーパーで錆落とし。梳き直しは始め、安定のリューターとダイヤモンドシートで進めました。

しかし、熱が上がり易い割りに研削が控え目だと感じ、ダイヤモンド鑢で取り掛かると案外、(以前は困難だったのですが)狙い通りの結果を得られました。

其の後は裏表共に、耐水ペーパーで番手を上げて行き、最終的には高番手の模型用布ペーパーとダイヤモンドペーストの併用で仕上げました。

 

 

 

刃付けの初期は、320番からでしたが其の後、平面維持に優れつつも研磨力も有るタイプの1000番で。

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次に研削痕の浅い1000番・3000番で精度を上げて行きます。

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天然に移行し、対馬です。

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やや軟口~中硬の巣板で研いだ後、中山の硬口の巣板や戸前系統で仕上げ研ぎ。

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更に中山の水浅葱各種で、相性を見ながら最終仕上げです。

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研ぎ上がりです。

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O様には、此の度も研ぎの御依頼を頂きまして、有り難う御座いました。今後も私で御役に立てる場合は、宜しく御願い致します。

 

 

 

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到着した包丁

 

関の先輩に特注していた各種包丁と、日野浦さんからの追加の五寸が到着しました。

前者は、手伝い先の料理人の方からの提案を形にした物で、形状としては骨スキ改と言うべきでしょうか、より広範に使用できる性能を企図した物です。基本的に、裏方の仕込み作業での活躍を期待し、捌き関連を一身に背負える包丁を、との事で。

発案者の要望を受け、長目の骨スキをベースに、やや鋭角な切り刃と敢えて過剰とも取れる尖らせた切っ先を持つ形状により、6割の骨スキ・2割の筋引き・2割の洋出刃との印象を伝え、協議を重ねて纏め上げました。

御本人の意向で、18cmの刃渡り・35mmの刃厚が基本路線と成りましたが、私の好みを反映した、16cm・4mm刃厚のアレンジバージョンも同時に発注しました。北海道のS様とT様にも連絡をした所、其々に18cmと16cmを選択されました。

仕様の違いは、細かく言えば私の分だけは紫檀ハンドルで、残りは黒柿です。一部、黒色のスペーサーの有無の差が有ったりしますが、ハンドルの固定は何れもステンレス+ニッケルシルバーのカシメです。そして、又しても私の分だけステンレス+ステンレスですが、此れは以前に作って貰った幅広ペティと揃える為です。更に、ブレードの表側のみミラーフィニッシュにした物と、サテンフィニッシュの物との2種に成って居ます。

まあ結局、完成した物が良すぎたので来年の追加分では、18cmのミラーフィニッシュを注文するつもりでは有りますし、仕事で使える様にマイカルタハンドルの16cmモデル(サテン)まで欲しく成って居ます(笑)。後、既に21cm牛刀(ベスパのディ―ラーの方)・24cm洋出刃(S様)・16.5cmペティ(T様)の御注文が有りますので、先輩には此の先も頑張って貰いましょう。

 

下画像が今回、送られて来た物ですが左からT様・S様・発案者・私の分となります。因みに右端は、ブログを通じての知人の方のペティです。特にミラーフィニッシュの刃体に高精度の切り刃、黒柿のアウトドアナイフ風のハンドルの組み合わせは、包丁と言うより料理に特化したカスタムナイフの風情ですね。実際、刃厚が充分ですので刃先角度さえ考慮に入れれば、枯れ枝から箸を削り出したり焚き付けを作ったりは熟せそうですので。

全て、鋼材はVG10の無垢材であり、サブゼロ処理も依頼済み。事前の話では、サブゼロ無しの場合よりロックウエル硬度で2前後は向上する為、叩いて使用するモデルには不適との事でしたが、研いで使用しての感想では、無駄に硬い事も無く寧ろ粘りも充分で、ぽろっと欠ける心配も無さそうです。

硬さと粘りが特筆するに値しないレベルだと言えば、特徴が無い様に聞こえますが、欠けるよりは捲れる方が扱い易いので(特に調理の場面で欠けは問題に成る為)バランスが良いと言えます。研ぐ際の難易度も、差程は高く無いのはハードに使う人にとって大きなメリットです。

しかし、最も感心したのは組織が細かく均一な点で、VG10の製品としては切れと掛かりの良さで抜きん出ていると言っても過言では無いでしょう。

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T様の分とペティは、研ぎを入れての発送に成りますが、今回も自分用が一緒ですので、事前に研いで試しつつ最終仕上げに使う砥石の選定に役立てました。

研ぎ前の状態。

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始めは、3人造の20番から。初期の小刃付けが少々、角度の斑が出て居ましたので確り一定角度で揃う所まで削ります。

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表は、刃元40度から切っ先30度で研いで行き、次いで1000番と3000番で小刃の角度を鋭角化して行きます。(25度から20度強まで)

しかし、その途中で切り刃の中央部分が砥面に接触しましたので、もう全体を研いで見るかと言う流れに。

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実際に、改めて320番から切り刃を研ぎ始めると、事前の予想を遥かに上回る研ぎ易さ。期待した2倍くらいの平面度合いにより、ベタ研ぎ派にも優しい親切設計である事が判明。嬉しい誤算と言っては少々、製作者に悪いでしょうが(笑)。

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滑走と研磨力に優れる1000番に繋ぎます。

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研ぎ目の浅い3000番です。切り刃全体を、刃先方向に向かって切れ優先ハマグリに。

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対馬で研ぎ目を細かく、刃先角度を刃元40度から切っ先30度に。

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丸尾山の巣板各種で仕上げ研ぎ。

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中山の巣板各種で。しかし後程、更に相性的に見合う砥石が判明し、より硬く緻密・均一な物で仕上げました。

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形状から、肉や魚に向いているのは明白ですが、野菜に対しては根菜類が最後に割れやすい傾向は否めない事を除き、不満は無いですね。特に、千切り・細切れには両刃の万能包丁を凌ぐ扱い易さでした。ミネストローネで、何時もの各種野菜を切って見た他にも、余り自ら購入する機会が無いカリフラワーも。脆い蕾の部分も綺麗に切り分けましたが、田舎住みの親から送って貰った新鮮なカリフラワーなら、塩茹でにしただけで旨いのだと思い知りました。

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さて本番の研ぎです。双方、表側ミラーフィニッシュですが、下画像の手前がT様の18cmモデルです。

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刃厚2mm程のペティも、ミラーフィニッシュに成って居ます。此方は両面が同様です。

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そして銀三のペティ、今回のロットの最後の分です。

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刃先のみの研ぎですが、小刃の中に角度の研ぎ分けを盛り込みます。表の最終刃先角度は、刃元40度から切っ先30度までの可変、小刃のベース角度は30度弱で、裏は殆どの範囲で30度強。

人造の320番・1000番・3000番で、順に研ぎ目を細かく。

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天然に移行し、対馬です。

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自分の分の研ぎを反映し、最も相性の良かった中山の硬口の戸前系で最終仕上げです。

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同じ仕様であるペティも此れに準拠。

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以前に判明した銀三には、この後で水浅葱も当てました。

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他にも、味方屋作の黒打ちステンレス(芯材は炭素鋼)が合わせて届きましたので、K様への発送が出来ます。

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皆様には長らく、御待たせして居りましたが到着した全て(研ぎ依頼込みの分)、万全の掛かりと滑らかさを併せ持った刃先に成りましたので愈々、明日には発送させて頂きます。後暫しの猶予を御願い致します。

 

 

 

 

現在、ホームページ不調の為、御面倒を御掛けして居ります。研ぎの御依頼・御問い合わせの方は、下記のアドレスから御願い致します。

togiyamurakami@gmail.com

 

 

 

 

 

研いだ包丁のビフォーアフターなどを載せていきます。