手伝い先の方の中には、研ぎに関して興味が有る物の、御自身の研ぎ方に不足を感じたり、包丁の形状（主として刃線）の修正を希望される事が有ります。
過去にも御一人、御依頼を頂いた事が有りましたが、その後にも御二方から其々、時期をズラして同様の御依頼を頂きました。
先ずは、計二本を時間差で研いだ二人目の方の筋引きからです。
業務初期から使い続けていたと思われる、研ぎ減った状態でしたので、電動工具を用いて切っ先5ｃｍ程を切断。その後は刃元以外の刃幅を、可能な限り減らさない方向で刃線を整えます。
ダイヤモンド砥石にて広目の小刃と言うより、狭めの切り刃に近付けるべく削って行きます。
400番で切り刃の幅を広げつつ、僅かに切っ先方向へ鋭角化。
1000番から3000番に繋いで傷を浅くしつつ、切り刃も拡張。
天然に移行し、対馬砥石で改めて切り刃の成型。
愛宕辺りと思しき、中硬～やや軟口の砥石で傷を浅くしつつ、刃先方向へ鎬筋から急激に鋭角化し、刃先直前から急激に鈍角化。
中山の巣板、硬口の各種で仕上げ研ぎ。このモデルは柔らか目の焼き加減ですので、或る程度以上は細かい砥石で仕上げた方が刃先の確り感が出易いですね（砥石の研削痕による刃先の山と谷のサイズ・数の関係で、接地圧が分散されるので）。此の段階位からの粒度が、適正かなと思われます。
もう一段の性能向上を目指し、水浅葱で最終仕上げです。
上掲の仕上がりが御気に召したのか、次の殆ど新品の筋引きも、側面をピカピカにして欲しいとの事で。恐らく、汚れが落とし易くて錆も出難いので、便利だと認識されての事でしょう。勿論、刃も研ぐのですが其処は新品同様ですので、やや小刃の幅を広げて切っ先カーブ手前に在った「鶴首の成り始め」の修正程度で。
ただ、ピカピカと言っても仕上がり（追い込んだ傷消し・厚みの適正化など）と作業量により代金も嵩む為、汚れ・錆対策ゆえに程々までとしました。
右側面、全体画像。テープが巻かれて居るのは、滑り止めにペーパーを巻いたりもする様で、その際にアンカー見たいです。（人体へのテーピングの際、目的とする部位を挟んだ場所に、土台にする為に巻いて置くアレ）
刃部のアップ
左側面
研ぎ始めは人造の400番からです。刃先の摩耗・刃線の歪みを削り落としますが、可能な限り刃幅を狭めない様に留意します。
人造の1000番と3000番で傷を浅くして行きます。
天然に移行し、愛宕あたりの中硬～やや硬口の砥石で更なる傷消し。
中山の巣板～合いさっぽいので仕上げ研ぎです。
研ぎ上がりです。
右側面、全体画像
刃部のアップ
左側面
最後は別人の所有の品（同一モデルではある）ですが、大幅に研ぎ減った訳では無いものの、特に切っ先寄りは新品時より刃幅が狭く成って居る状態です。
ただ、御意向を伺うと裏（左側面）はベタで研いで行く方針、との事で裏は出来るだけ平面に仕上げて行く方向に。
研ぎ前の状態、右側面。
刃部のアップ
左側面
研ぎ始めは、人造の180番です。刃線の歪みと刃先の損耗を削りつつ、刃幅の減りを最低限に抑えます。
400番で傷を浅く、小刃の幅も広げて行きます。
1000番と3000番で、更に傷消しと小刃の精度向上を。僅かに切っ先方向へ向けて鋭角化して有ります。
天然に移行し、対馬です。小刃の始まり（鎬筋に当たる部分）から、刃先方向へ急激に鋭角化・刃先直前からは急激に鈍角化。
赤ピンの中硬～やや軟口で傷消し・仕上げ研ぎです。
中山の巣板各種（実際には他にも、数種の巣板系の砥石を取り混ぜて）使用し、平面度を上げつつ相性の良い組み合わせを模索しました。
三本とも同じモデルの製品ながら、各人・各状態に合う仕様に仕上げられたと思いますので、仕事場で活躍してくれる事を願っています。此の度は研ぎの御依頼を頂きまして、有り難う御座いました。
現在、ホームページ不調の為、御面倒を御掛けして居ります。研ぎの御依頼・御問い合わせの方は、下記のアドレスから御願い致します。