サンプル決定と予備検査

先日は、研究目的の各種検査機材に適応する試料のサイズ等の最終的な打ち合わせと、当日持ち合わせた通常サイズの刃物でも測定出来る機材を選んで試験的に測定してみました。

 

切り出しは、新品と研磨済みの二種類、イカサキは販売用の軽く均し研ぎ済みとほぼ本刃付け済みの二種類。三徳は現物一種類です。

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使用した機材では表面の粗度と同時に面自体の凹凸やうねりも測定出来、仕上がりの細かさや面の均一性や破綻の無い連続性等が確認出来ます。

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ほぼ新品のイカサキを測定中

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これらによって、刃物自体の状態が判断出来るのみならず、任意の砥石の任意の番手(♯・グリッド)で研いだ際、センサーの振幅を読み取る事によって研ぎ目の細かさも測定出来ます。つまり砥石から転写された研ぎ傷のサイズにより、実際の砥石の性能判断にも役立ちます。以上は主として人造砥石の再確認といった所ですが、一例を挙げれば天然砥石、所謂合砥辺りはおおよそ8000番前後と言い習わされて来ましたが、それが確認出来ました。

 

そして、ほぼベタ研ぎで刃先近くからやや角度を付ける仕様にした物は、本当にそのものズバリの線がグラフ上で再現されていて納得もし、それ以上に面白く感じました。下画像は上の刃物とは関係ない、又切り刃とも確定出来ないサンプルとしての画像ですが、このような振幅と全体のラインで表示する事も可能です。

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小さな試料しか対応不可の機材用に、製品レベルの仕事を施した上で規定のサイズに納めたサンプルを、無理を聞いてくれる鍛冶に依頼しました。これで鋼材メーカーから出たばかりのテストピースに熱処理しただけではない、実際の刃物と同等の条件での測定に道筋が付きました。

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研究用の包丁(少し趣味の世界)

 

最近は御近所様から持ち込みで依頼をされたり、メールでの依頼・問い合わせを頂いたり(何故か以前から東からばかり)しつつも、明日の研究最終打ち合わせ兼手持ちサンプルでの試験運用開始に備えていました。

金属標本的な物で無く、性能的に製品レベルに達した資料製作は、既に親しい鍛冶に相談してあったので、後は機材に適した形状・サイズが確定次第それに従って加工して貰い、自分で研ぎ上げれば測定に掛かれます。それまでに出来る検査として、通常サイズでも可能な測定機によって先ず刃物自体の面精度辺りから取り掛かるべく包丁を研いでいました。勿論、製造段階で削られた部分は戻せないので、本当に理想通りの形状とは行かないまでも、より近付けるよう、そして研ぎ面に凹凸や歪みが無いように更に追加で研いでいた訳です。

所が、巣板を小割した物で表面を均したり化粧研ぎをしたりはして来ましたが、以前手に入れた柔らかめの千枚の木っ端を弓鋸で挽いて小割し、その際の粉末も用いて化粧研ぎをしてみると、巣板とも鏡面砥石とも又違った仕上がりとなりました。研究用の均し研ぎでなく趣味の化粧研ぎに近い感覚で楽しんでしまい、美観を追求する余り面精度が低下していないか一抹の不安もありましたが、一味違う仕上がりの包丁達を見ていると、やはり嬉しさの方が勝ってしまいます。

 

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御依頼のコスミックスチール包丁

 

御依頼頂いた洋包丁ですが、恐らく今まで研いだことが無かった鋼材かと思われます。コスミック鋼と箱に記載がありました。昔、ナイフマガジンで何度か読んだ記憶があります。

研ぎ前 全体

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研ぎ前 刃部アップ

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研ぎ前 刃先拡大画像

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主たる目的は、側面に入った傷消しとの事でしたので、ペーパー400番から2000番、その後は研磨剤にて3000番から15000番で磨きました。研ぎについてはキングの1000・1200番から黒蓮華2種、千枚2種からのカミソリ砥仕上げとしました。かなり刃毀れのきつい箇所も見られたので、標準的な角度よりも最後はやや刃先を立てて見ました。鋼材的にはやや傷が消しづらい傾向でしたが、相性の合う砥石(共名倉含む)で丁寧に当てると徐々に研ぎ目は細かくなります。しかし一部、どの行程だかで熱により組織が荒れたのか(その為か錆びもきつい)、目が細かくなり切れませんでしたが、減って行くに従いそこは無くなる物と思われます。

 

研ぎ後 全体

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研ぎ後 刃部アップ

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研ぎ後 刃先拡大画像

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同、傷みの激しかった部分

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良い刃が付きにくいとの体験談も見聞きする鋼材でしたが、なかなか細かい刃付けも出来、硬さの割に長切れし易い様な印象を受けました。上手く砥石と研ぎ方さえ合ってくれれば問題無く扱えると思います。まあ、逆から言えば、誰がどんな砥石でどう研いでも大丈夫(そんな鋼材は余り無いでしょうが)とは行かない所は人や砥石を選ぶと評価され得るのでしょうか。

 

研究に使えそうな機材色々

 

先日、研ぎ文化振興協会繋がりで京都府中小企業技術センター関連施設において、此方で実証を目指している試験項目の相談と、希望する研究に使えそうな機材の見学をさせて頂きました。

大きく分けて

①表面の粗度・硬さ(表面のみでは無いが)・組織の性状や組成分析用

②立体物の寸法や形状計測用(接触・非接触あり)

③金属の対候試験用(温度、湿度のみ・塩分含有雰囲気下での曝露)

があり、項目によっては、それぞれに能力の程度や使用する物(分光やX線など)による違いで、単一目標にも関わらず複数用意されていました。

 

以下は見学の際説明を受けながら撮った画像です。

 

CNC三次元座標測定機 X・Y・Z方向でプローブの接触により計測

IMG_0533三次元座標測定器

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画像測定機 CCDやレーザープローブによる光学計測

IMG_0534画像測定器

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下画像は、最初にある物の簡略型で、直線上をレコードの針で表面をなぞる様にX軸方向(上下方向)のみに数値を出しますが、複数列繰り返せば、ある程度の面積にも対応出来ると言う事です。

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非接触三次元測定装置ですが、あまり大きな試料には対応出来ないようです。レーザープローブ式。

IMG_0537非接触三次元測定装置

 

下は硬さを計測出来ますが、かなり新しく、高度な測定が出来ます。例えば、従来のロックウエルやビッカースと違い、余り表面に傷を付けずに軽い接触で可能です。

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5%食塩水を噴霧して、耐蝕性能を比較するのに用います。通常、数十時間から数日の範囲で運用するとの事です。

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上の物より一般的な(塩分含有雰囲気での曝露でない)温度湿度サイクル試験機です。此方の方が実際の使用条件に近いテストが出来そうです。

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下はやや旧式で、倍率も比較的控えめだったと思いますが、研磨の表面を通常観察するには手頃かと感じた顕微鏡です。それ以上の新型・高性能な物は、減圧下で試料を拡大しつつ成分を分析出来たりする優れものですが、入れられるサンプルが小さい物限定であったり、磁気を使用する為に金属は不対応だったりします。しかし、機材によっては所謂ステンレスの酸化皮膜自体を計測し、極表層、中央、最下部で酸素の含有量まで分析可能との事です。

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以上の機材を用い、刃物の研ぎ肌の粗度、形状の精度(平面度合い・目標とする形状との差異)、天然砥石仕上げの耐蝕性などを調べられればと考えています。これらによって、良い刃物は勿論、適切な研磨とそれを支える砥石の価値が見直される事を願っています。

 

 

 

おなじみさんから

 

過去に何度も研ぎの依頼を頂いていましたが、少し前にうちから購入頂いた最新の包丁も含めて、今回は三本の包丁です。

 

司作 五寸五分 三徳

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刃部拡大

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刃先拡大画像

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研ぎ後

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刃部拡大

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刃先拡大画像

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味方屋作 四寸 和ペティ

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刃部拡大

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刃先拡大画像

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研ぎ後

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刃部拡大

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刃先拡大画像

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ステンレスペティ

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刃部拡大

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刃先拡大画像

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研ぎ後

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刃部拡大

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刃先拡大画像

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司作については、作者からの納品段階で極めて薄く鋭利な刃付けに成形されているので、私のホームページ上では、販売時に一般向けの刃先となるように研ぎを施す事にしています(但しオリジナル状態を御希望の場合は除く)。今回研いだ物は敢えてオリジナル状態を希望され、そのまま使用した包丁です。普通、ここまで鋭利だと使い方や力加減・使用する俎板まで問われてきますので、ややピーキーですね。加えて身の厚みの変化は出ている物の、切り刃の厚みが均一に近い事も刃元の強度を頼りにするという逃げが打ちにくい訳です。ですので、刃先の角度の違いを出すように研ぎましたが、今後は切り刃の厚みにも変化を持たせる方向で研ぎ進めて行けば、より広範な使い方にも対応しやすくなると思います。

味方屋作は、刃金は白紙二号で地金も軟鉄と錆びには注意が必要ですが、切った食材の味を引き出す上では申し分ない素材の組み合わせです。切れ味も問題無いですが、刃先の糸引きが切り刃に対してやや鈍角な印象です。その為、司作よりも刃先の損耗は幾らかましだったようです。しかし、もし同程度の刃付けが施されていれば間違いなく司作の方に分があります。そこはやはり利器材使用と割り込み鍛接の違い、また鍛造量や焼き入れの加減によって粘りは近い物があるとはいえ、組織の細かさやそれに支えられた硬さが違い、結果切れ味と刃持ちに違いが出ています。いずれにしても刃物の仕上がり状態や使用目的に応じて研ぎを施す事により、刃物の長所を引き出したり使用者の負担を減らす事が肝心だと思います。

 

 

 

魚介類まとめ買い

 

近所のスーパー四カ所の内、二カ所はまずまず魚介類が充実しているので、そこへの買い出しの折りには入荷状況にも依りますが、数種類のまとめ買いになる事が多いです。今回は、鯨の生食用とツブ貝の刺身その他を購入しましたが、手間無く食べられる上記二種を食べてから残りの準備を始めました。

下の画像は、刺身用剣先イカが安かった為、イカサキで裁いてみた所です。当然名前通りに使いやすく、確実な切れが出ていればこの刃渡りで結構な相手でも充分刺身包丁として通用します。

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身の裏は格子状に皮一枚切れ込みを入れ、糸造り的に。えんぺらとゲソは皮を剥いて適当な大きさで。あと、カラスと呼んだりする嘴の周り。

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更に、わたの中でいけそうな所を煮てみました。

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次に小鯵を開いて塩を振り、キッチンペーパーで包んで翌日焼いたり揚げたりに備えるわけですが、この際同時に粉末塩麹も振っておくと風味の劣化が少なく、身の保水性も増す様です。解凍した鶏肉のドリップを除去する為にペーパータオルで包む時にも同様にする事で、食感・風味共に改善できます。

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以前テレビ番組で、ある会社から鮪漁船に同行研究する社員の話題が在り、目的はPH調整剤か保存料についてだった様で、しかも食品添加物表示には当たらない分類をされているとの事でした。つまり捕られた次の瞬間からそういった物とは無縁ではいられない現状なのかも知れませんが、普段の食生活の中で出来るだけ加工度合いの低い食品を選ぶ事で、身体に掛かる負担を減らして行くべきかなと考えます。そういった意味では、カット・漂白されていない丸のままの野菜と同様に、調理・加工済で無い丸のままの魚の割合を増やしていくのが近道ではと思います。僅かな量で割高なカット済みに比べ、上手く使い切れば経済的で、安全性も確保しやすい丸のままの素材を自らの手で調理する事は、もっと重視されるべきでは無いでしょうか。

 

 

検査の準備

 

包丁は、普及品の利器材使用品(新品)との対比用に、手持ちの中からやや高級な利器材使用品の包丁(新品)、手打ちの包丁(新品)を考えており、加えて手打ちの包丁に研ぎを施した物で仕上がり形状の違いが出ればと思います。

 

その研ぎの種類として、刃先以外はほぼベタ研ぎで、切り刃の厚みもほぼ一定にした物の例です。これは、包丁の身自体が刃元から切っ先に掛けてある程度テーパー状に造形されているからです。

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白巣板仕上げ

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これも刃先以外はほぼベタ研ぎながら、切っ先に掛けて切り刃の厚みを意識的に抜いた物です。これは上記の物とは違い、両端以外は身自体の厚みの変化が少なかった為です。

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敷内曇り仕上げ

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此方は身のテーパーがかなり強調されている仕上がりだったので、切り刃の厚みは一定気味。しかし鎬から刃先まで極緩いハマグリ刃にしてあります。やや欠けやすい白紙一号Aである事も関係しますが、普及品の大半が多段・若しくはハマグリ風の刃付けになっているのと対比が出来ればとの想いからです。

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千枚仕上げ

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最後にもう一度研ぎ直した普及品の切り出しです。

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研磨の精度

 

これまで研ぎに於いては、刃の厚みや角度の連続的且つ不可逆的な変化、また面の連続性・平滑性・平面度合いの向上を重視しつつ取り組んで来ました。それは刃先の切れ味と並ぶ重要項目である、「掛かり・走り・抜け」に直結するからです。つまり対象に切り込み始めてから刃が受ける抵抗(スライドしつつ進むので縦横2種類の方向からの抵抗になりますが)が一定・或いは軽減しながら切り進む状態に仕上がるかどうかに関わります。これが実現されれば、綺麗に野菜の皮を剥く・切り分ける、肉や魚を傷めずに切ると言った事が出来るだけで無く、それに必要な筋力も少なくて済みます。

しかし製造段階での刃身の状態や出荷直前の刃付けにより、どの程度研磨すれば問題無いレベルにまで仕上がるかは大きく左右されます。大まかに言えば値段の高い製品程、良い状態で販売されている確率が高い訳ですが、各項目全てに十分なコストが掛けられる最上級品を除き、材料・デザイン・本体の表面処理・刃身や刃付けの歪み取り等、それぞれ何処かに絞られています。勿論コスト以外にも製造側の技術的な限界もあり、一定以上のレベルに仕上げるには多かれ少なかれ購入後の調整研ぎが必要になります。(和包丁は洋包丁よりも調整範囲が広く、より大変になります。)

結果として、安い刃物だから研ぎも安く済ませたい、といった感覚は良く理解出来る物の、現実的には逆に正確な状態に仕上げるまでのハードルが高くなります。使用されている鋼材は硬度の低い物が多い為、研磨は楽に思われそうですが、これも逆に粘りが強すぎて返りが取れなかったり下りが悪くて刃が付きづらい事も多いです。従って快適に使える仕様に調整するには研ぎ手や砥石に要求が多い刃物とも言えます。

上記の「掛かり・走り・抜け」では刺身など、主に引き切り(プルスライド)の場面で重要になりますが、反対に押し切り(プッシュスライド)の場合は楔効果で割り開く働きが得られ、植物性の繊維を断つのに効果的です。効率的では無いので薦められない刃を真っ直ぐ押しつける落とし切り(ドロップカット)では関係ない様に思われますが、この場合も切り刃の断面形状によって対象への侵入時の抵抗が違ってくるので、最低限「直圧による刃の通り」だけでも考慮するべきだと思います。

 

以上の要素を突き詰めてきちんと研げているかを研究する為、遠からず産業総合研究所的な施設で平面精度や表面の平滑度合いを検査して貰う予定で居ます。具体的には凹凸を色違いで画像に表したり、厚みの変化のバラツキの程度が可視化出来ないかと考えています。そこで手始めに普及品の切り出しを仕上げて新品との違いを確かめる準備です。

 

新品時の画像

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一端ここまで仕上げましたが

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GC240番、電着ダイヤ1000番、キングデラックス1000・1200番からのシャプトン1000・2000番

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敷内曇り

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白巣板蓮華

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本戸前

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千枚

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カミソリ砥

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他には、下画像のホームセンターで販売されている三徳包丁に対して、自分の手持ちの三徳の新品、更にはそこから研ぎを加えた物で比較して違いを見たいと思います。包丁の値段の違いによる差異が明確になれば、それぞれの値段なりの包丁の価値が再認識され、的確に目的の形状に研磨されている事が実証されれば、研ぎの正確性や重要性が確認出来ます。

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新入りの最近の状態

 

まずまず形が整ってきたので、地金の厚みをテーパー状に抜きながらほぼベタ研ぎ・刃金の部分のみを鏡面状態でややハマグリに仕上げました。更に傷を無くせば完全となります。

先ずは先日の加藤さんの三徳 五寸五分 刃金は白紙一号A   との事

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次に中屋平治作 三徳 六寸 刃金はスウエーデン鋼

(これは新入りでは無いですが三徳同士の比較用)

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最後は司作 三徳 六寸 刃金は白紙二号A

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どれも刃金は組織の細かさ・硬さ・粘りで(バランスはそれぞれ乍ら)文句なく、当然切れ味も良いですが、特筆すべきは研ぎ易さも備えている所です。この硬さからは想像以上の下りで、面が揃ってからは特にその傾向が顕著です。地金も同様で、特に加藤さんの物が硬口の砥石で地を引き難い様ですが、他の二つも標準的な物よりもかなり優れています。とは言え、完全ベタ研ぎで全面鏡面は大変なので、刃金の辺りをカミソリ砥で、地金は巣板で仕上げました。これなら幾らか手軽に出来ます。コントラストとしては一番分かり易いのかも知れません。

 

説明文 8               (研ぎ屋むらかみHPより)

共名倉について

 元々は名倉砥石という砥石があり、単体で使用されていたものの、他の砥石に摺り合わせ、研ぎの補助として砥泥を出す用途にも使われ出した為に代名詞的な呼称になったと思われる。(その主たる目的以外に、砥石本体の目詰まりを取る・目起こしをする・平面維持を助ける働きもある)同じ用途でそれ以外の砥石が使われる場合は共名倉と呼ばれる。一般的には仕上げ砥たる巣板・合砥に対して、同系統の砥石が使われる状況を指す。そもそも補助を必要とする状況とは、大きく分けて以下の二つの場合だろう。一つは研磨力の向上を企図したもの、もう一つは傷を消す為のものである。

 前者は文字通り、研磨力の劣る砥石に研磨力の期待できる共名倉を摺り合わせて、作業効率を高める為の使い方である。この場合、次々に砥泥が出て新しい砥面で研げる柔らかい砥石よりも硬めの砥石、そして砥粒の目が立っている砥石よりは寝ている砥石にこそ使われるのが順当である。その為、これに合わせる共名倉には逆に、余り硬くなく、砥粒の目が立っているものが望ましい(仕上がりを問わず、研磨力優先なら硬い共名倉を使う事もあり得る)。

 後者を更に分類すると、傷(研ぎ傷・研磨痕)を消す為のものと、傷が入るのを防止する為のものがある。傷を消す使用法は、硬軟どちらの砥石に対してもあり得るものの、共名倉としては兎に角より細かく、より柔らかく、尚且つ砥粒の目は適度に立っているものが目的に適う。余りにソフトな当たりでは、前段階の傷を消せない為である。

 傷の防止とは、特に硬口で目の立っている砥石の場合は地金を引く(軟鉄部分に引っ掻き傷を作る)ことが多い為、予め研磨の潤滑材として、研ぎ汁(水+砥石から剥離した砥粒+研ぎ下ろされたれた金属粒子)が出る前から砥面上の水膜にコロイド状に砥粒を分散させておくものである。

単にベアリングとクッションの役割だけで良ければ、砥粒は大きく、柔らかく、目の立っていないものが最適である。しかし求める研ぎ肌の仕上がりや刃先の切れ味によっては、潤滑性能とのトレードオフにはなるが、砥粒の性質を硬く、細かく、目も立っている方向に変更する必要が出てくる。つまり傷を消す事と傷を防止する事はかなりの部分、二律背反の関係にある訳だ。しかし使用者の選択一つで、同じ砥石でも共名倉の違いにより切れ味は勿論研ぎ肌も違ってくる。地金・刃金双方の景色が透明感のある明るいものから、陰影に富んだ渋い仕上がりまで、様々な表情を見せる。正しく、天然砥石の対応出来る幅を広げ、刃物の性能や美観までもアレンジしてくれるものである。

やや特殊な例としては、剃刀の最終仕上げで使う砥石は、名倉の精粗で三段階の研ぎをそれ一つで済ませる事があるという。これは超堅口の砥石一つに三役を担わせる、つまりこれまでに述べてきたほぼ全ての名倉の役割を総動員する使用法と言え、その為かつては土台たる砥石は兎に角硬くて細かければ、後は名倉で何とかなるとまで考えられていた節もある。本来は砥石そのものも吟味されるべきであろうが、確かに究極の名倉活用法ではある。もし本当にそれが出来ていたのであれば、その名倉が途轍もなく優秀であった証左となるが、現在そのような名倉砥石は稀少であり、検証するのも簡単では無くなっているようだ。

注)

その後、知り合った方から厚意で頂いた黒名倉は性能的に満足出来る物で、仕事内容により、使わせて頂こうと考えています。又、同じく(別の知人から)頂いた三河のボタンは普通に研げるサイズであったため、泥を出す用途では使っていません。