北海道から講習に

 

昨日は北海道の常連様であるS様が、講習に御出で下さいました。直前に海産物を御送り下さっているにも関わらず、御菓子と酪農製品を御土産に頂き恐縮です。私の方は、前日のプライベートな不調法が当日にも波及し、些かバタバタしてしてしまい申し訳無かったです。

本来なら、時間に余裕が有れば近隣の多少は真っ当な店で御馳走しようとか策を練っていたりしたのですが・・・帰り際、咄嗟に最低限、手持ちの中で御返しに成るかもと大宇陀の本葛と葛湯(直近に購入)を手渡せました。森野旧薬園の製造で、大通りに面したアンテナショップ?である葛の館で購入の物。当地では、下画像の様な甘味も食せます。葛饅頭も買えますが少量です。

 

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葛餅

 

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本蕨粉のわらび餅

 

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本題の研ぎ講習ですが、事前に御自身の包丁を(知人の方の分、共々)送って頂いて居ましたので、其れを題材にして説明と実演と成りました。

御自身でかなり、使いつつ手入れをされているヘビーローテーションの柳だそうですが、鎬も乱れず切り刃の凹凸も目立ちません。厚みも抜けて居り刃先も鋭利。紙の束を切っても、まずまず不満は出ません。ですが強いて改善すべきポイントを挙げれば、刃元側の厚みが少ないまま角度も鋭角過ぎる・刃先最先端が強度的にギリギリの角度である・切っ先カーブと少し手前の厚みが他の部分より残存、と言った所です。

人造の400・1000・3000番で解説しながら修正研ぎをして、天然に移行した時点でバトンタッチです。切り刃に付く研ぎ目の違いを利用して、説明通りの当て方・研ぎ方が出来ているかのチェック。

 

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スピードを上げるより、角度の安定にこそ注意を払うべきと助言しました。それ以外は、基本的な研ぎ方の範囲で大きな問題も無さそうでしたので。

ゆっくりでも、正確に任意の角度で狙った個所を当てられれば、どんなに複雑な研ぎ方も可能に成ります。技術向上への捷径は、正確さだと御理解頂けた様です。

後は、少しの研ぎ方や刃先角度・使用する天然仕上げ砥石の僅かな違いでも、切れと永切れ・・・特に切れの軽さに影響する点も実感して貰えたかと思います。

 

 

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最終的に、此の段階まで到達しました。外観・切れ・永切れの各要素で、ほぼ不足の無い状態と言っても差し支えないでしょう。後は、もう少しだけ手直しをして御返送したいと思います。

但し、御送り頂いた中で知人の方の薄刃が残って居りますので、其れを仕上げてからと成りますが宜しくお願い致します。

 

 

 

 

それ以外の身の回りの方の分。既に御返送に及んでいます。

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研ぎ前の全体。切っ先とカーブが損耗していますね

 

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刃先は少し薄過ぎる位ですが、刃線の繫がりが乱れている事も有り、摩耗した最先端とでは切れ難い状況。

 

 

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研ぎ後です。刃線を修正しましたが、その際に少々、厚みが出ました。しかし其れを逆手にとって、(側面もテーパーを上乗せで強調した上で)小刃の幅を広げつつ角度を切っ先へ向けて鋭角化。最先端は鈍角化して行くハマグリで仕上げました。

 

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切れと永切れ、頑強さをも備えた刃先(自分好み)にしましたが、初期状態が薄目だったので此れで問題無いのか心配して居りました。結果的に、図らずもハードなテストにもパスしたとの事で安心しました。その後の打ち物にまで支障なく使えたとあっては、面目躍如と言わねば成りません。因みに手持ちで今回のUX10に向いていたのは、中山の並砥でした。

 

 

 

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研ぎ前ですが此方は、ほぼ新品の状態での摩耗と言うべき状態。所謂、小刃の研ぎ直しで充分と言う奴です。但し、使用者は結構、切れに対する感覚が真っ当な方と見えて鳥の皮が切れないとの事。其れを力技で対処しようとしないのが立派です。S様が村上の研ぎをプレゼントしようと、粋な計らいに及んだのにも納得ですね。包丁全体の扱いも丁寧ですし。

 

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最先端の摩耗と、極少々の刃毀れ程度です。

 

 

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研ぎ後ですが、全体画像では変化に乏しいですね。

 

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只、上画像のUX10に施した処置と同様の内容を盛り込んでいます。若干の簡略化と極小範囲に収める格好では有りますが。効果の程は、使用者の弁として切った手応えが無い(いや無くは無いでしょうけど)との評価であった由にて安堵しております。此方の最終仕上げは、硬口の中山赤ピンです。

 

 

 

S様には、最初期から御贔屓にして頂いている筆頭と言っても過言では無く、今回の様に周囲の方々への広報的な活動までも含めて御世話に成って居ります。

私自身が、押し売りは嫌だの宣伝は苦手だの言っているので、業を煮やした知り合いの方々の方が熱心にしてくれる始末。その中でも、S様の御高配で評価下さる方が増えつつある現状には感謝しか有りません。

御返し出来る物が他には無い物ですから、精一杯の研ぎと砥石の選別で喜んで貰える様に、精進を重ねたいと思います。此の度は、遠い所まで足を御運び頂き有難う御座いました。直接に御目に掛かれて嬉しかったです。今後も宜しく御願い致します。

 

 

 

 

 

「北海道から講習に」への3件のフィードバック

  1. お忙しい中お時間を作って頂き有難う御座いました!
    目の前で村上さんの研ぎを、ご説明頂きながら勉強させて頂き感動でした。

    ブログやメールで沢山教えて頂いた角度の事も、目の前で教えていただけて疑問が解けました。

    村上さん優しくブログに書いて下さいましたが、自分は一番大切な手の揺れ、角度の安定が出来て居ない。
    自分ではできてるぜ俺!と思ってましたが大間違いで、それが正確な研ぎを妨げているのを納得しました。

    いくら良い砥石や包丁を持っていても、正確に研がないと、正確な角度変化も施さないですから本末転倒ですよね。

    そして、自分の身体をコントールする難しさ、それに繋がる研ぎ多角度に変化させる研ぎを考えたら、完璧に研げました俺!と言えるのは途方もなく大変な事で…

    それを完璧に村上さんに講習して頂けて幸せでした。

    刃物の話、砥石の話とっても楽しくてあっという間に時間が過ぎてしまい、今度はもう少し時間に余裕を持ってお伺いしたいと思います。

    ジャイアンの心無いハードなテストに耐えた牛刀の研ぎ、確信犯のジャイアンも流石と驚いておりました。

    三徳は最高のホワイトデーになりました。

    これからも宜しくお願い致します!

  2. 申し訳有りません。
    文書が間違ってましたので修正…

    それを完璧にこなす村上さんに講習して頂けて幸せでした。と書きたかったです!

    1. S様

      丁寧に、修正まで頂いたコメントを有り難う御座います。意味合いは感じ取れていましたので大丈夫でした。内容は私への過分な評価でしたので余り大丈夫では・・・。

      文章での遣り取りだけでは御不明な点も有ったかも知れませんが、実際に御覧頂けた事で少しでも御理解に繋がりましたら幸いです。

      私の標準仕様は、汎用性の高い性能を目指すものですから一辺倒な研ぎでは有りません。従って、各要素を盛り込む為に必要とされる手順や行程を、話や文章だけで理解するのは困難かも知れません。

      そうなると矢張り講習で無ければ成らず、今回は僭越ながら良い機会と言えました。私の能力(研ぎ・砥石選別)を高く買ってくれる方には其の内容や効果の裏付けを、正確に知っておいて欲しいと感じるからです。そう云った想いが昨日は、幾らかでも果たせた気がして嬉しく思って居ります。

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